JPH0461185B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［技術分野］ 本発明は、エンジンの過渡燃料増量装置に関す
る。

［背景技術］ エンジンの加速時には、急激な加速操作を加え
た場合でも、エンジンの各燃焼サイクルに対して
略一定量の加速燃料を持続して供給することによ
り、エンジンのもたつきを防止し、エンジンの円
滑な加速性能を確保することが望まれる。

また、エンジンの減速時には、急激な減速操作
による燃料の供給停止によつて、続く加速時にお
ける燃料供給に遅れを生じ、エンジンの回転ダウ
ンないしは停止、即ちエンジンストールの発生を
防止するために、減速燃料を補給することが必要
とされている。すなわち、エンジンにあつては燃
料供給経路に液膜燃料が溜まり易く、この液膜燃
料の霧化状態がエンジンの運転状態の変化によつ
て変動し、結果として空燃比の変化に大きな影響
を与えるものがある。しかるに、このようなエン
ジンにおいて、高速運転時には、燃料供給経路の
燃料流速が早いため、少量の液膜燃料の霧化で適
正な混合比が可能である。ところが、急減速時に
は、燃料流速が急に遅くなり、液膜燃料を十分霧
化できなくなるため、一時的に空燃比が薄くなる
結果、適正な空燃比を形成するたための新たな減
速燃料の補給が必要となる。したがつて、一般的
には、急減速時に、スローポートあるいはアイド
ルポートからの燃料の吸い出しによつて空燃比の
濃化が可能であるが、上述の如くの液膜燃料が溜
まり易いエンジンにあつては、上述の如くの液膜
燃料の霧化状態の変動が空燃比に与える悪影響を
回避するため、上述の如くの新たな減速燃料の補
給が必要となるのである。

ところで、従来の加速燃料増量装置として、特
開昭59−3154号に示されるように、「気化器のス
ロツトル弁の閉動作に連動して燃料を吸入し、ス
ロツトル弁の開動作に連動して燃料を吐出する加
速ポンプと、上記加速ポンプの吐出口に燃料流入
通路を介して連通し、エンジンの燃料供給経路に
燃料流出通路を介して連通するとともに、加速ポ
ンプの吐出燃料を一時的に貯留可能とするアキユ
ムレータと、上記燃料流入通路に介在され、加速
ポンプ側からアキユムレータ側へ向かう燃料の流
れのみを許容する逆止弁を有してなり、上記アキ
ユムレータに連なる燃料流出通路を、気化器のス
ロツトル弁より吸気上流側部位に位置する加速ノ
ズルに連通してなる加速燃料増量装置」が提案さ
れている。この既に提案されている加速燃料増量
装置によれば、エンジンの加速時に、加速ポンプ
の吐出燃料はアキユムレータ内に一時的に貯留さ
れた後、逆止弁の存在によつて加速ポンプ側に戻
ることなく、一定時間持続して加速ノズルからエ
ンジンの燃料供給経路に供給される。したがつ
て、エンジンの加速時に連続してスロツトル弁の
開閉動作を繰り返すことにより、開閉動作回数に
比例する吐出量の燃料をアキユムレータ内に貯留
する状態下で、エンジンの各燃焼サイクルに対し
て略一定量の加速燃料を持続して供給することが
可能となり、加速操作の速度にかかわらず、エン
ジンの円滑な加速性能を得ることが可能となる。

しかしながら、上記既に提案されている加速燃
料増量装置は、エンジンの急減速時における減速
燃料の補給にはなんら関与するものでなく、この
加速燃料増量装置のみの装着によつては、前述の
液膜燃料の霧化状態の変動に起因するエンジンス
トールの発生を防止することができない。

［発明の目的］ 本発明は、加速時に燃料を持続して供給し、エ
ンジンのもたつきを防止するとともに、急減速時
にも燃料を補給し、液膜燃料の霧化状態の変動に
起因するエンジンストールの発生を防止すること
を目的とする。

［課題を解決するための手段］ 本発明は、気化器のスロツトル弁の閉動作に連
動して燃料を吸入し、スロツトル弁の開動作に連
動して燃料を吐出する加速ポンプと、上記加速ポ
ンプの吐出口の燃料流入通路を介して連通し、エ
ンジンの燃料供給経路に燃料流出通路を介して連
通するとともに、加速ポンプの吐出燃料を一時的
に貯留可能とするアキユムレータと、上記燃料流
入通路における加速ポンプ側からアキユムレータ
側へ向かう燃料の流れのみを許容する逆止弁とを
有してなるエンジンの過渡燃料増量装置におい
て、上記アキユムレータに連なる燃料流出通路
を、エンジンの燃料供給経路における気化器のス
ロツトル弁より吸気下流側部位に、アキユムレー
タ側からエンジンの燃料供給経路側へ向かう燃料
の流れを阻止可能とする開閉弁を介することな
く、連通してなるようにしたものである。

［作用］ 本発明によれば、下記、の作用効果があ
る。

エンジンの加速時には、加速ポンプの吐出燃
料が、逆止弁の存在によつて加速ポンプに戻る
ことなく、(a)加速ポンプの吐出力によつて燃料
流出通路から燃料供給経路に供給され、かつ(b)
アキユムレータに一時的に貯留される。すなわ
ち、加速時には、上記(a)により、燃料をある一
定時間持続的に供給し、エンジンのもたつきを
防止できる。

エンジンの急減速時には、上記(b)のアキユ
ムレータに貯留されている燃料が、燃料供給経
路に生ずる大きな吸気負圧によつて燃料流出通
路から燃料供給経路に供給される。これによ
り、エンジンに空燃比の濃い混合気を供給し、
液膜燃料の霧化状態の変動に起因するエンジン
ストールの発生を防止できる。

なお、上記(b)ではアキユムレータに貯留され
る急減速時用燃料は、下記理由（）〜（）に
より、加速時、通常時の吸気負圧によつて流出す
ることがない。

() 吸気負圧は、急減速時、通常時、加速時の
順で小となり、エンジンのクランキング速度が
中高速時の慣性によつて大なる状態下でスロツ
トル弁が急閉される急減速時において極めて大
である。

() このため、加速時に燃料供給経路に供給さ
れる燃料は、加速時の小なる負圧によつて吸引
し流出せしめられるのでなく、上記(a)のとお
り、加速ポンプの吐出力によるものである。即
ち、加速時には、アキユムレータに一旦貯留さ
れたものが吸気負圧によつて流出するものでな
く、加速ポンプの吐出燃料のうちアキユムレー
タに貯留されない分がその吐出力によりそのま
ま流出するのである。

() そして、通常時には、中位の吸気負圧が作
用するものの、この程度の負圧では、アキユム
レータの貯留室容積が収縮して貯留室内の燃料
を吸引可能とするように該アキユムレータの構
成部材を弾性変形させることができない。この
ため、通常時には、アキユムレータに貯留され
た燃料の流出を生ずることがない。なお、急減
速時には、大なる負圧により、アキユムレータ
の構成部材を弾性変形させ、アキユムレータの
貯留室容積を収縮せしめることから、上記の
如くにアキユムレータに貯留された燃料を流出
せしめ得ることになる。

また、常に、アキユムレータから燃料を吸気
管に補給しながらエンジンを減速できることの
理由は下記（）のとおりである。

() 急減速時にアキユムレータの燃料を供給し
た後、再度急減速することは、一旦エンジンを
高い回転数まで加速した後でないとあり得な
い。そして、この再急減速前の加速時に、アキ
ユムレータには次の急減速に備えて、急減速時
用燃料が供給されることになる。したがつて、
減速前には、必ず、アキユムレータに燃料を貯
留され、結果として、常に、アキユムレータか
ら燃料を吸気管に補給しながらエンジンを減速
できることになるのである。

［発明の具体的説明］ 第１図は本発明の一実施例が適用されてなる船
外機用２サイクルエンジン１０の全体構成を模式
的に示す断面図である。

エンジン１０は、エンジン本体１１に、クラン
ク軸１２、連接棒１３、ピストン１４を収容する
とともに、クランク室１５、燃焼室１６、掃気通
路１７、排気通路１８を備えている。

エンジン１０のクランク室１５には、リード弁
１９が内蔵されてなる吸気管路２０を介して、気
化器２１が接続されている。気化器２１は、フロ
ート室２２、ベンチユリ部２３を形成してなる吸
気通路２４、主ノズル２５、チヨーク弁２６、ス
ロツトル弁２７を備えている。

ここで、気化器２１の吸気通路２４、吸気管路
２０、エンジン１０のクランク室１５、掃気通路
１７は、本発明における燃料供給経路を構成して
いる。即ち、エンジン１０の吸気行程において、
クランク室１５に生ずるクランク室負圧がリード
弁１９の開作動によつて吸気管路２０に作用し、
これによつて吸気管路２０に生ずる吸気管負圧が
吸気通路２４に作用する状態下で、気化器２１が
生成する混合気を上記燃料供給経路から燃焼室１
６に供給可能としている。

なお、エンジン１０の急減速時に、慣性力によ
るクランキング作用とスロツトル弁２７を絞るこ
とによる作用とにより、エンジン１０のクランク
室１５、掃気通路１７、吸気管路２０、気化器２
１の吸気通路２４には、通常運転時の負圧の例え
ば1.5〜２倍以上の大なる負圧を生ずる。

気化器２１は、スロツトル弁２７の開閉動作に
連動して作動する加速ポンプ２８を備えている。
加速ポンプ２８は、ポンプ室２９を画成するピス
トン３０と、ピストン３０に固定されてなるピス
トンロツド３１と、ポンプ室２９の内部に配設さ
れてピストン３０を上方に押上げ可能とするスプ
リング３２を有している。また、加速ポンプ２８
は、フロート室２２に連通する吸入口３３を備え
るとともに、吐出口３４を備えている。３５は吸
入口３３に配設されてなる逆止弁であり、３６は
スロツトル弁２７の開閉動作に連通してピストン
ロツド３１を上下動するリンク機構部である。即
ち、加速ポンプ２８は、スロツトル弁２７の閉動
作に連動するピストン３０の上昇により、フロー
ト室２２内の燃料を吸入口３３から吸入し、スロ
ツトル弁２７の開動作に連動するピストン３０の
下降により、ポンプ室２９内の燃料を吐出口３４
から吐出可能とする。

３７はアキユムレータであり、ダイアフラム３
８の一方に貯留室３９を形成し、他方に大気室４
０を形成している。４１は大気連通孔、４２はダ
イアフラム３８を背面支持するスプリング、４３
はスプリング４２を介してダイアフラム３８を原
位置に設定するねじ、４４はダイアフラム３８の
大気室４０側への最大変形位置を規制するねじで
ある。アキユムレータ３７の貯留室３９は、燃料
流入通路４５を介して加速ポンプ２８の吐出口３
４に連通し、燃料流出通路４６を介して気化器２
１における吸気通路２４のスロツトル弁２７より
吸気下流側に連通するとともに、ダイアフラム３
８の原状態から大気室４０側への変形状態下で加
速ポンプ２８の吐出燃料を一時的に貯留可能とし
ている。４６Ａは燃料流出通路４６の吸気通路２
４に開口してなる流出口である。このとき、燃料
流出通路４６は、アキユムレータ３７側から吸気
通路２４側へ向かう燃料の流れを阻止可能とする
開閉弁を介することがない。この開閉弁が燃料流
出通路４６に介在する場合には、エンジン１０の
急減速時における後述する減速燃料の供給が不可
能となるのである。

上記燃料流入通路４５の中間部には、加速ポン
プ２８側からアキユムレータ３７側へ向かう燃料
の流れのみを許容する逆止弁４７が介在されてい
る。

なお、加速ポンプ２８の吐出燃料の一部は、燃
料流入通路４５における逆止弁４７の配設部位よ
り加速ポンプ２８側から分岐されてなる燃料通路
４８、該燃料通路４８に介在される逆止弁４９を
介して、気化器２１における吸気通路２４のスロ
ツトル弁２７より吸気上流側に供給可能とされて
いる。

次に、上記実施例の作用について説明する。

エンジン１０の加速時には、加速ポンプ２８の
吐出燃料が、逆止弁４７の存在によつて加速ポン
プ２８に戻ることなく、(a)加速ポンプ２８の吐出
力によつて燃料流出通路４６の流出口４６Ａから
吸気通路２４に供給され、かつ(b)アキユムレータ
３７の貯留室３９に流入し、該燃料の流入圧力の
作用によつてダイアフラム３８が大気室４０側へ
変形する状態下で拡張してなる貯留室３９に一時
的に貯留される。すなわち、加速時には、上記(a)
により、燃料を一定時間持続して燃料流出通路４
６の流出口４６Ａから吸気通路２４に供給し、エ
ンジン１０のもたつきを防止できる。

他方、エンジン２０の急減速時には、吸気通路
２４に生ずる大なる負圧がアキユムレータ３７の
貯留室３９に作用し、ダイアグラム３８が前記拡
張状態または原状態から大気室４０に対する反対
側へ変形する状態下で、上記(b)によつて貯留室３
９に貯留されている燃料を吸気通路２４に吸込
み、燃焼室１６に空燃比の濃い混合気を供給し、
液膜燃料の霧化状態の変動に起因するエンジンス
トールの発生を防止可能とする。

なお、アキユムレータ３７の貯留室３９に連な
る燃料流出通路４６を、燃料流出通路５１又は５
２を介してエンジン１０の急減速時に大なる負圧
を生ずるエンジン１０のクランク室１５又は掃気
通路１７に連通し、エンジン１０の急減速時に、
アキユムレータ３７の貯留室３９に貯留されてな
る燃料をそれらクランク室１５又は掃気通路１７
に供給するものとしてもよい。

なお、リード弁１９とスロツトル弁２７の間の
吸気管路２０に開設された流出口４６Ａ（あるい
は４６Ｂ）から燃料を流出すると同時に、クラン
ク室１５又は掃気通路１７に燃料を供給する場合
には、燃料流出通路４６に連なる燃料流出通路５
１，５２の中間部に、クランク室１５又は掃気通
路１７に生ずる正圧を遮断可能とする逆止弁５３
を配設する。流出口４６Ａ（あるいは４６Ｂ）が
ない場合には、クランク室１５又は掃気通路１７
に生ずる正圧が逆止弁４７によつて遮断可能であ
るため、上記逆止弁５３を配設する必要がない。

また、アキユムレータ３７の貯留室３９に連な
る燃料流出通路４６の流出口４６Ａを、符合４６
Ｂで示すように、全閉側に位置するスロツトル弁
２７の周縁部に臨む吸気通路２４の通路面に開口
するものとしてもよい。この部分には急減速時に
より大なる負圧が発生するものであることから、
減速燃料をダイアフラム３８の貯留室３９から安
定して吸気通路２４に供給することが可能とな
る。

第２図は本発明の変形例を模式的に示す断面図
である。この変形例が第１図の実施例と異なる点
は、逆止弁４７を徹去するとともに、ダイアフラ
ム３８の略中央部に逆止弁６０を一体化したこと
にある。すなわち、このアキユムレータ３７は、
ダイアフラム３８の大気室４０側への変形状態下
で加速ポンプ２８の吐出燃料を貯留可能とすると
ともに、貯留室３９に開口する燃料流入通路４５
の開口部に対する逆止弁６０の接離動作により、
加速ポンプ２８側からアキユムレータ３７側へ向
かう燃料の流れのみを許容可能としている。

したがつて、この変形例においても、前記第１
図の実施例におけると同様に、加速時に燃料を持
続して供給し、エンジンのもたつきを防止すると
ともに、急減速時にも燃料を補給し、液膜燃料の
霧化状態の変動に起因するエンジンストールの発
生を防止することが可能となる。

なお、本発明４サイクル内燃機関にも広く適用
可能である。

［発明の効果］ 以上のように本発明によれば、加速時に燃料を
持続して供給し、エンジンのもたつきを防止する
とともに、急減速時にも燃料を補給し、液膜燃料
の霧化状態の変動に起因するエンジンストールの
発生を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例が適用されてなるエ
ンジンの全体構成を模式的に示す断面図、第２図
は本発明の変形例を模式的に示す断面図である。 １０…エンジン、１５…クランク室、１７…掃
気通路、２０…吸気管路、２１…気化器、２４…
吸気通路、２７…スロツトル弁、２８…加速ポン
プ、３３…吸入口、３４…吐出口、３７…アキユ
ムレータ、３９…貯留室、４５…燃料流入通路、
４６，５１，５２…燃料流出通路、４６Ａ，４６
Ｂ…流出口、４７，６０…逆止弁。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 気化器のスロツトル弁の閉動作に連動して燃
   料を吸入し、スロツトル弁の開動作に連動して燃
   料を吐出する加速ポンプと、上記加速ポンプの吐
   出口に燃料流入通路を介して連通し、エンジンの
   燃料供給経路に燃料流出通路を介して連通すると
   ともに、加速ポンプの吐出燃料を一時的に貯留可
   能とするアキユムレータと、上記燃料流入通路に
   おける加速ポンプ側からアキユムレータ側へ向か
   う燃料の流れのみを許容する逆止弁とを有してな
   るエンジンの過渡燃料増量装置において、上記ア
   キユムレータに連なる燃料流出通路を、エンジン
   の燃料供給経路における気化器のスロツトル弁よ
   り吸気下流側部位に、アキユムレータ側からエン
   ジンの燃料供給経路側へ向かう燃料の流れを阻止
   可能とする開閉弁を介することなく、連通してな
   ることを特徴とするエンジンの過渡燃料増量装
   置。