JPH045856B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 (イ) 産業上の利用分野 この発明は例えば自動車や産業車両等のデフア
レンシヤル装置に供されるトルクダンパに関す
る。

(ロ) 技術的背景及び問題点 例えば、デフアレンシヤル装置において、片側
車輪が泥地等で空転しかけたときにデフケースと
サイドギヤの相対速度差を検出し、その検出値が
設定値以上となつたときに前記デフケースとサイ
ドギヤとを摩擦ロツクさせるためのアクチユエー
タとして、米国特許第3831462号公報に記載のア
クチユエータの代わりにトルクダンパが使用さ
れ、異音発生の軽減、組付け性の向上等を図つた
ものが存在することは既に知られている。

従来のこの種のトルクダンパとして、例えば流
体の剪断抵抗を利用したものがある。

このトルクダンパは、流体例えばシリコン油を
封入したダンパケース内に多数の溝を設けた回転
子と固定子とを内蔵し、溝間のシリコン油が剪断
させるときの剪断抵抗により、回転軸に抵抗を与
えようとするものである。

しかしながら、このように流体の剪断抵抗のみ
で回転軸に抵抗を与えるものでは、回転軸の抵抗
が連続的に増加するのみで、抵抗によつて回転軸
を停止させることは困難である。このため、デフ
ケースとサイドギヤの相対速度差が設定値になつ
たときの摩擦ロツクの作動レスポンスが前記米国
特許のように機械的に係合させるものに比較して
低下する恐れがあつた。

(ハ) 発明の目的 この発明は上記問題点に鑑みなされたもので、
コンパクトで回転軸を停止させ易いトルクダンパ
の提供を目的とする。

(ニ) 発明の構成 この発明は上記目的を達成するために、流体を
封入し一対の側壁を有するダンパケースと、この
ダンパケースに連続回転自在に軸装された回転軸
と、前記ダンパケース内に配置され、且つ前記回
転軸に軸方向移動可能で回転方向に係合されると
ともにダンパケース内を二つの流体室に区分する
回転板と、この回転板の軸方向両面に設けられた
一対の回転板側カムと、この一対の回転板側カム
と係合し前記一対の側壁に各別に設けられた一対
のケース側カムと、前記回転板が回転板側カムと
ケース側カムによつて前記回転軸の軸方向へ移動
するときに二つの流体室相互間の流体移動を可能
にする絞り通路とからなる構成とした。

(ホ) 実施例 以下、この発明の一実施例を図面に基づいて説
明する。

第１図〜第３図に示すトルクダンパにおいて、
１は円筒形状のダンパケースであり、このダンパ
ケース１は開放端がキヤツプ２で密閉されて例え
ばシリコン油からなる流体３を封入している。

ダンパケース１のボス部には回転軸４が軸封状
態にされて回転自在に嵌挿されている。

回転軸４には、ダンパケース１内を流体室Ａと
Ｂとに二分する回転板としての回転円板５がスプ
ライン結合により回転方向に係合されると共に軸
方向に移動可能に支持されている。

回転板５には、前記流体室Ａ，Ｂの相互を連通
する複数の絞り通路６が周方向に沿つて一定間隔
をもつて設けてある。

かかる回転円板５の両面には、そのボス部両端
にて一対の回転板側カムとしてのカム５ａ，５ｂ
一体形成されている。

一方、ダンパケース１とキヤツプ２のそれぞれ
の内壁面（側壁）には前記カム５ａ，５ｂのそれ
ぞれに接触してカム５ａ，５ｂと共にカムクラツ
チを構成するケース側カムとしてのカム１ａ，２
ａが一体形成されている。

これらのカム１ａ，２ａ，５ａ，５ｂにおい
て、回転円板５の片面側で互いに接触するカム５
ａと１ａは回転軸４の回転時に回転円板５を一方
向にスライドさせ、かつ回転円板５の反対面側で
接触するカム５ｂと２ａは回転円板５を他方向に
スライドさせるようになつている。

従つて、回転円板５は回転軸４の回転時におけ
るカム５ａ，１ａと５ｂ，２ａとの交互作用によ
り往復スライドさせられる。

このように構成されたトルクダンパは第４図に
おいて、ダンパケース１が接触するデフケースに
固定されてデフアレンシヤル装置に組み込まれて
いる。

このデフアレンシヤル装置において、ドライブ
ピニオン（図示せず）からリングギヤ（図示せ
ず）を介して入力するトルクで回転駆動されるデ
フケース１０には左右一対のサイドギヤ１１，１
２が差動回転可能に軸支されている。

これらのサイドギヤ１１，１２には、ピニオン
シヤフト１３に嵌着されたピニオンギヤ１４が噛
合させてある。

デフケース１０とサイドギヤ１１との間には、
それら相互の差動機能を実質的にロツクするため
のコーンクラツチ１５と、これを付勢手段１６に
抗して作動させるためのカム機構１７が設けられ
ている。

そして、前記デフケース１０の外周側にダンパ
ケース１が固定保持され、かつコーンクラツチ１
５に回転軸４の外端が噛合連動させてある。

つぎに上記実施例の作用を説明する。車両走行
時に、片輪スリツプ等によりデフケース１０とサ
イドギヤ１１とに相対速度差が生じると、トルク
ダンパの回転軸４が回転する。

その回転によるカム１ａと５ａおよび２ａと５
ｂとの作用で回転円板５がスプラインに案内され
て軸方向に移動する。

もつて、回転円板５で圧縮される側の流体室Ａ
内の流体が絞り通路６を通つて他方の流体室Ｂ内
に流れる。同時に、回転円板５の全面が流体抵抗
を受けることによつて、前記回転軸４は自らの回
転速度に比例したトルクをカム１ａと５ａおよび
２ａと５ｂを介してダンパケース１に機械的に伝
達する。

前記デフケース１０とサイドギヤ１１との相対
速度差が設定値に達すると回転軸４がデフケース
１０に対して略停止され、コーンクラツチ１５の
回転が抑制されてコーンクラツチ１５とサイドギ
ヤ１１との間のカム機構１７が作動する。従つ
て、コーンクラツチ１５がデフケース１０に押し
付けられて、デフケース１０とサイドギヤ１１と
がロツク状態となり、悪路での車両の走行をスム
ーズに行なわせることができる。

なおこの発明は上記一実施例に限定されない。
例えば、カムクラツチは一方側にのみ設け、他方
側は弾性部材にすることもできる。

(ヘ) 発明の効果 以上より明らかなようにこの発明の構成によれ
ば、カムクラツチを介して絞り通路を通過する流
体の流通抵抗と回転板の全面で受ける流体抵抗と
により回転板の軸方向移動を抑制し、カムクラツ
チにより回転軸に機械的に抵抗を与えることが可
能となり、回転軸を容易に停止できる。従つて、
デフケースとサイドギヤとの相対速度差を検出し
てロツクアツプさせるためのアクチユエータとし
て使用した場合には、コンパクトでしかも組付性
の向上を図ることができるほか、ロツクアツプの
作動レスポンスを向上させることが可能となる。

【図面の簡単な説明】

図面はこの発明の一実施例を示すもので、第１
図はトルクダンパの分解斜視図、第２図は同組立
状態の断面図、第３図は同作用状態の断面図、第
４図はデフアレンシヤル装置の断面図である。 １…ダンパケース、３…流体、４…回転軸、５
…回転板、６…絞り通路、１ａ…ケース側カム
（カムクラツチ）、２ａ…ケース側カム（カムクラ
ツチ）、５ａ…回転板側カム（カムクラツチ）、５
ｂ…回転板側カム（カムクラツチ）、Ａ…流体室、
Ｂ…流体室。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 流体を封入し一対の側壁を有するダンパケー
   スと、このダンパケースに連続回転自在に軸装さ
   れた回転軸と、前記ダンパケース内に配置され、
   且つ前記回転軸に軸方向移動可能で回転方向に係
   合されるとともにダンパケース内を二つの流体室
   に区分する回転板と、この回転板の軸方向両面に
   設けられた一対の回転板側カムと、この一対の回
   転板側カムと係合し前記一対の側壁に各別に設け
   られた一対のケース側カムと、前記回転板が回転
   板側カムとケース側カムによつて前記回転軸の軸
   方向へ移動するときに二つの流体室相互間の流体
   移動を可能にする絞り通路とからなることを特徴
   とするトルクダンパ。