JP2996896B2 - 差動装置 - Google Patents

差動装置

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JP2996896B2
JP2996896B2 JP7150528A JP15052895A JP2996896B2 JP 2996896 B2 JP2996896 B2 JP 2996896B2 JP 7150528 A JP7150528 A JP 7150528A JP 15052895 A JP15052895 A JP 15052895A JP 2996896 B2 JP2996896 B2 JP 2996896B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車の左右または前後
駆動輪の回転差を許容する差動装置に関し、特に差動制
限機能を持った差動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の差動装置は、車両がカーブを走
行する際の左右駆動輪の回転差、または四輪駆動車にお
ける前後駆動輪の回転差を許容する装置であり、構造的
には出力軸に連結された一対のベベルギヤの間にピニオ
ンギヤを介在させ、ピニオンギヤのシャフトに外側から
回転力を加えると、差動時にはピニオンギヤが自転して
各出力軸の回転差が許容されるように構成されたものが
一般的である。
【0003】ところが、一方の駆動輪のみが雪や砂等、
摩擦係数の極端に少ない路面に乗り上げると、差動によ
り一方の車輪が空転して全体の駆動力が失われ、その場
から脱出できなくなるという状態に陥り易かった。ま
た、カーブを高速走行する際に遠心力によって内側の車
輪の荷重が極端に減少した場合にも、その車輪が空転し
てカーブを高速で走行するための駆動力が失われ易いと
いう欠点もある。
【0004】このような欠点を補うために、例えばクラ
ッチディスク圧着式等の差動制限機構を備えたものがあ
るが、これは一方の駆動輪が接地していないときでも、
駆動力を得るためにクラッチディスクに予圧を与えてい
る場合が多く、それによってこのタイプはエンジン側か
ら駆動力が入力されていない非駆動時及び減速時におい
ても各駆動輪同士が拘束され、アンチロックブレーキシ
ステムのように各車輪の回転に独立性が要求される装置
との組合わせに難点があった。
【0005】また、最近ではビスカス・カップリングを
用いた回転感応型の差動制限機構が多く使われている。
ビスカス・カップリングは一種の粘性クラッチであり、
粘性流体(シリコンオイル等)の剪断抵抗を利用してト
ルクを伝えるようになっている。従って、このタイプで
は回転差に応じてスムーズな差動制限効果を得ることが
できるが、粘性流体によって初期抵抗が与えられるた
め、先に述べたクラッチディスク圧着式ほどではないが
各駆動輪同士の拘束を受ける結果になる。
【0006】そこで、非駆動時及び制動時は各駆動輪の
拘束が少なく、駆動時に差動を制限する機構を持った差
動装置としては、例えば特開平4−271926号に記
載されているように、ウォームギヤの組合わせによるト
ルク感応型のものも知られている。このタイプでは、同
軸上を互いに独立して回転可能な一対のネジ状のウォー
ムと、これに直角な回転軸を有する複数のウォームホイ
ールとが噛み合わされており、各ウォームを回転させる
とウォームホイールはスムーズに回転するが、逆にウォ
ームホイール側から回転させようとした場合は回転が困
難であるというウォームギヤ特有の性質を利用してお
り、これにより条件に応じた差動及び差動制限効果が得
られるという特徴を備えている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ビスカ
ス・カップリングに代表される回転感応型の差動制限機
構では、トルク伝達率が流体の粘性のみに依存するた
め、温度が変化すると流体の粘性が変わり、常に安定し
た差動制限効果が得られないという欠点があった。ま
た、このタイプでは、回転差が生じてから差動制限が行
われるまでに時間差があり、走行動作の変化に瞬時に対
応することができないという問題点もあった。一方、ウ
ォームギヤを用いた差動装置では、差動制限が機械的に
行われるため差動制限効果は安定しているが、その反
面、部品点数が多く構造が複雑であるとともに、部品の
加工及び組立に極めて高い精度が要求され、しかも許容
トルクに比べて装置全体が大型になるという問題点があ
った。
【0008】本発明は前記問題点に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、簡単な構造によって
確実な差動制限効果を得ることのできる差動装置を提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成
するために、互いに周面を径方向に対向して同軸状に配
置された一対の回転体と、各回転体を収容し、内面側の
所定部分を各回転体に軸方向に接触可能に対向させた
ース体と、各回転体の径方向の対向面間に配置された複
数の転動体と、各転動体の径方向の対向面間に配置さ
れ、ケース体と一体に回転する保持体とを備え、前記保
持体には各回転体の軸方向に延びる複数の案内部を各回
転体の径方向に貫通して設けて各案内部に各転動体を移
動自在に収容し、各回転体の径方向の対向面には各転動
体に係合する溝を回転体の周方向に連続して設け、各溝
を各回転体に回転差が生ずると各転動体が前記案内部に
沿って各回転体の軸方向に往復移動するように形成し、
各回転体の溝は、転動体を前記案内部の一端側から他端
側に向かって移動させる第1の案内区間と、転動体を案
内部の他端側から一端側に向かって移動させる第2の案
内区間とを周方向に連続して有し、一方の回転体の第1
の案内区間を第2の案内区間よりも周方向に長く形成
し、他方の回転体の第2の案内区間を第1の案内区間よ
りも周方向に長く形成している。
【0010】また、請求項2では、互いに周面を径方向
に対向して同軸状に配置された一対の回転体と、各回転
体を収容し、内面側の所定部分を各回転体に軸方向に接
触可能に対向させたケース体と、各回転体の径方向の対
向面間に配置された複数の転動体と、各転動体の径方向
の対向面間に配置され、ケース体と一体に回転する保持
体とを備え、前記保持体には各回転体の軸方向に延びる
複数の案内部を各回転体の径方向に貫通して設けて各案
内部に各転動体を移動自在に収容し、各回転体の径方向
の対向面には各転動体に係合する溝を回転体の周方向に
連続して設け、各溝を各回転体に回転差が生ずると各転
動体が前記案内部に沿って各回転体の軸方向に往復移動
するように形成し、前記各回転体の溝は、転動体を前記
案内部の一端側から他端側に向かって移動させる第1の
案内区間と、転動体を案内部の他端側から一端側に向か
って移動させる第2の案内区間と、転動体を案内部の所
定範囲内の位置に保つ第3の案内区間とを周方向に連続
して有し、一方の回転体では第1の案内区間内に第3の
案内区間を設け、他方の回転体では第2の案内区間内に
第3の案内区間を設けている。
【0011】また、請求項3では、互いに軸方向に対向
して同軸状に配置された一対の回転体と、各回転体を収
し、内面側の所定部分を各回転体に軸方向に接触可能
に対向させたケース体と、各回転体とケース体の径方向
の対向面間に配置された複数の転動体と、一方の回転体
側の転動体と他方の回転体側の転動体とを転動自在に保
持する複数の保持体とを備え、前記ケース体には各回転
体の軸方向に延びる複数の案内部を設けて各案内部に各
転動体を移動自在に係合し、各回転体のケース体との対
向面には各転動体に係合する溝を各回転体の周方向に連
続して設け、各溝を各回転体に回転差が生ずると前記保
持体及び各転動体がケース体の案内部に沿って各回転体
の軸方向に往復移動するように形成し、各回転体の溝
は、転動体を前記案内部の一端側から他端側に向かって
移動させる第1の案内区間と、転動体を案内部の他端側
から一端側に向かって移動させる第2の案内区間とを周
方向に連続して有し、一方の回転体の第1の案内区間を
第2の案内区間よりも周方向に長く形成し、他方の回転
体の第2の案内区間を第1の案内区間よりも周方向に長
く形成している。
【0012】
【0013】
【0014】また、請求項4では、互いに軸方向に対向
して同軸状に配置された一対の回転体と、各回転体を収
し、内面側の所定部分を各回転体に軸方向に接触可能
に対向させたケース体と、各回転体とケース体の径方向
の対向面間に配置された複数の転動体と、一方の回転体
側の転動体と他方の回転体側の転動体とを転動自在に保
持する複数の保持体とを備え、前記ケース体には各回転
体の軸方向に延びる複数の案内部を設けて各案内部に各
転動体を移動自在に係合し、各回転体のケース体との対
向面には各転動体に係合する溝を各回転体の周方向に連
続して設け、各溝を各回転体に回転差が生ずると前記保
持体及び各転動体がケース体の案内部に沿って各回転体
の軸方向に往復移動するように形成し、前記各回転体の
溝は、転動体を前記案内部の一端側から他端側に向かっ
て移動させる第1の案内区間と、転動体を案内部の他端
側から一端側に向かって移動させる第2の案内区間と、
転動体を案内部の所定範囲内の位置に保つ第3の案内区
間とを周方向に連続して有し、一方の回転体では第1の
案内区間内に第3の案内区間を設け、他方の回転体では
第2の案内区間内に第3の案内区間を設けている。
【0015】また、請求項では、請求項1、2、3ま
たは4記載の差動装置において、前記各回転体の溝内に
転動体の移動に抵抗を付与する粘性流体を充填してい
る。
【0016】
【0017】
【0018】
【作用】請求項1、2、3及び4の差動装置によれば、
ケース体及び保持体を軸心回りに回転させると、この回
転力は各転動体を介して各回転体の溝に伝達され、各回
転体がケース体と一体に回転する。ここで、各回転体に
回転差が生ずると、各転動体が各回転体の溝に案内され
て転動し、各回転体の軸方向に往復移動する。その際、
各回転体の溝には各転動体から軸方向の反力が作用する
ので、各回転体がケース体の内面側に押し付けられて各
回転体とケース体との間に摩擦力による回転抵抗が生
じ、これが差動制限力となる。この場合、請求項1及び
3では、一方の回転体の溝は第1の案内区間が第2の案
内区間よりも周方向に長く形成され、他方の回転体の溝
は第2の案内区間が第1の案内区間よりも周方向に長く
形成されていることから、各回転体の溝において各転動
体を軸方向に反転させる位置が互いに周方向にずれるよ
うになっている。また、請求項2及び4では、一方の回
転体の溝では第1の案内区間内に第3の案内区間が設け
られ、他方の回転体の溝では第2の案内区間内に第3の
案内区間が設けられていることから、各回転体の溝にお
いて各転動体を軸方向に反転させる位置が互いに周方向
にずれるようになっている。即ち、転動体が溝の反転位
置に達したときは転動体と溝との間で力を伝達すること
ができないので、各溝の反転位置を互いに周方向にずら
すことにより、全ての転動体が同時に反転位置に達する
ことがなくなる。また、溝と転動体の間で発生する反力
の大きさは溝の形状によって決まる。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】また、請求項5の差動装置によれば、請求
項1、2、3または4の作用に加え、前記回転体の回転
速度差が大きくなると、各転動体が粘性流体から受ける
抵抗が増大し、この抵抗によっても差動が制限される。
この場合、差動制限は粘性流体の性質上、各回転体の
回転速度差に応じて徐々に大きくなるように発生する。
【0024】
【0025】
【0026】
【実施例】図1乃至図6は本発明の第1の実施例を示す
もので、図1は差動装置の側面断面図、図2は図1のA
−A線方向矢視断面図、図3は差動装置の分解斜視図で
ある。
【0027】本実施例の差動装置は、ギヤケース1と、
ギヤケース1の一端を閉塞するギヤケースカバー2と、
互いに同軸状に配置された一対のボールディスク3,4
と、各ボールディスク3,4間に配置されたボールホル
ダ5と、ボールホルダ5に転動自在に保持された多数の
ボール6とから構成されている。即ち、各ボールディス
ク3,4は回転体を、ボールホルダ5は保持体を、各ボ
ール6は転動体をそれぞれ構成している。
【0028】ギヤケース1は一端を開口した筒形をな
し、その中央には一方のボールディスク3を支持する軸
受け1aが設けられている。ギヤケース1の周囲にはフ
ランジ1bが設けられており、フランジ1bにはボルト
挿通用の多数の孔1cが設けられている。
【0029】ギヤケースカバー2は円盤状に形成され、
その中央には他方のボールディスク4を支持する軸受け
2aが設けられている。ギヤケースカバー2の周囲には
フランジ2bが設けられ、フランジ2bにはボルト挿通
用の多数の孔2cが設けられている。即ち、ギヤケース
カバー2は各フランジ1b,2bを締結するボルト7に
よってギヤケース1に組付けられる。
【0030】一方のボールディスク3は筒状に形成さ
れ、その一端には車輪側のドライブシャフト8を連結す
るための連結部3aが設けられている。このボールディ
スク3の外周面には各ボール6が転動自在に係合する溝
3bが設けられ、溝3bは周方向に連続して形成されて
いる。図は各ボールディスク3,4を平面状に展開し
たもので、図中の角度0゜〜360゜は周方向の位置を
示す。即ち、溝3bは、図に示すようにボール6をボ
ールディスク3の軸方向一端側から他端側に向かって移
動させる第1の案内区間3b−1と、ボール6をボール
ディスク3の軸方向一端側から他端側に向かって移動さ
せる第2の案内区間3b−2とを交互に連続して有し、
第2の案内区間3b−2は第1の案内区間3b−1より
も周方向に長く形成されている。また、ボールディスク
3の端面とギヤケース1との間にはスラストワッシャ3
cが介装されている。
【0031】他方のボールディスク4は筒状に形成さ
れ、その一端には車輪側のドライブシャフト8を連結す
るための連結部4aが設けられている。このボールディ
スク4は内径が一方のボールディスク3の外径よりも大
きく形成され、その内側には一方のボールディスク3が
挿入されている。ボールディスク4の内周面には各ボー
ル6が転動自在に係合する溝4bが設けられ、溝4bは
周方向に連続して形成されている。溝4bは一方のボー
ルディスク3と同様、図に示すようにボール6をボー
ルディスク4の軸方向一端側から他端側に向かって移動
させる第1の案内区間4b−1と、ボール6をボールデ
ィスク4の軸方向一端側から他端側に向かって移動させ
る第2の案内区間4b−2とを交互に連続して有し、第
1の案内区間4b−1は第2の案内区間4b−2よりも
周方向に長く形成されている。即ち、各ボールディスク
3,4の対向面においては、各溝3b,4bの軸方向一
方の反転位置が径方向から見て一致したときは、他方の
反転位置が互いに周方向にずれるようになっている。ま
た、ボールディスク4の端面とギヤケース1との間には
スラストワッシャ4cが介装されている。更に、ボール
ディスク4の一部は軸方向に分割されており、この分割
部4dは多数のピン4eを介してボールディスク4に連
結されているが、これはボールディスク4の溝4bの加
工を容易にするためと、組立時にボール6を各溝3b,
4aの間に入れるための構造である。
【0032】ボールホルダ5は筒状に形成され、各ボー
ルディスク3,4の間に配置されている。ボールホルダ
5の周面には各ボール6を転動自在に収容する多数の長
孔5aが周方向に等間隔で設けられており、各長孔5a
は軸方向に直線状に延び、それぞれ径方向に貫通して設
けられている。即ち、各長孔5aは案内部をなす。ま
た、ボールホルダ5の一端にはフランジ5bが設けら
れ、ボールホルダ5はフランジ5bの周面に設けた溝5
cに嵌合する多数のピン5によってギヤケース1内に
固定されている。この場合、ギヤケース1内にも各ピン
に嵌合する溝1eが設けられている。
【0033】各ボール6はボールホルダ5の各長孔5a
に収容され、それぞれ各ボールディスク3,4の溝3
b,4bに係合している。
【0034】以上のように構成された差動装置において
は、ギヤケース1のフランジ1bにエンジンからの駆動
力を伝達するリングギヤ(図示省略)が取付けられ、装
置全体がギヤケース1の軸心回りに回転する。即ち、ギ
ヤケース1に駆動力が入力されると、ギヤケース1と一
体にボールホルダ5が回転し、この回転力は各ボール6
を介して各ボールディスク3,4の溝3b,4bに伝達
され、各ボールディスク3,4に連結された左右のドラ
イブシャフト8に伝達される。
【0035】ここで、前記差動装置の動作を、各ドライ
ブシャフト8に回転差が生じていない場合と、各ドライ
ブシャフト8に回転差が生じた場合と、一方のドライブ
シャフト8のみが空転し易い状態に陥った場合について
説明する。
【0036】まず、車両が摩擦力の十分な路面を直進し
ているときなど、各ドライブシャフト8に回転差が生じ
ていない場合は、各ボールディスク3,4には回転差が
生じないので、各ボール6の転動は起こらず、各ボール
ディスク3,4はボールホルダ5と一体に回転する。
【0037】次に、車両が摩擦力の十分な路面を旋回し
ているときなど、各駆動輪にトルクが均等に伝わってい
る状態で各ドライブシャフト8に回転差が生じた場合に
は、以下に示す動作によって各ドライブシャフト8の回
転差が許容される。即ち、各ドライブシャフト8とそれ
ぞれ一体に回転する各ボールディスク3,4互いに回
転差生ずると、各ボール6は各ボールディスク3,4
の溝3b,4bに案内されて転動し、ボールホルダ5の
各長孔5a内を往復移動する。この場合、各ボール6は
一つおきに半数ずつ各溝3b,4bの軸方向一方の反転
位置に達するが、各ボールディスク3,4では各溝3
b,4bの反転位置が軸方向一方で一致したときに他方
では互いにずれるようになっているので、全てのボール
6が同時に各溝3b,4bの反転位置に達することはな
い。つまり、ボール6が各溝3b,4bの反転位置に達
したときは、ボール6と各溝3b,4bとの間で力を伝
達することができないので、全てのボール6が同時に各
溝3b,4bの反転位置に達しないようにする必要があ
る。
【0038】次に、一方の駆動輪が路面との摩擦力を失
ったときなど、片方のドライブシャフト8のみが空転し
易い状態に陥った場合には、以下に示す動作により各ド
ライブシャフト8の差動が制限される。即ち、各ボール
6に伝達される駆動力により、各ボールディスク3,4
の溝3b,4bに各ボール6から軸方向の反力が作用す
るので、各ボールディスク3,4がギヤケース1の内面
側に配置されたスラストワッシャ3c,4cにそれぞれ
押し付けられて各ボールディスク3,4と各スラストワ
ッシャ3c,4cとの間に摩擦力による回転抵抗が生
じ、これが各ドライブシャフト8の差動制限力となる。
【0039】ここで、図5及び図6を参照し、前記差動
制限効果の原理について詳述する。まず、図5はボール
6と溝3b(4b)を差動装置の径方向から見た場合で
あり、同図に示すようにボール6の中心には主軸(ギヤ
ケース1の回転軸)回り回転力Aが作用している。
【0040】ここに、 A≒A′ …(1) この時、溝3b(4b)にはボール6との接触面に垂直
な力Cが発生し、その分力は回転力Aと平行なA′と、
A′と垂直なBである。Cはボール6との接触面に垂直
であるので、ボール6の中心を通る線分上に位置し、
A′とCとのなす角度(以下、接触角という)をαとす
ると、Cの大きさは、 C=A′×1/cosα …(2) で表される。
【0041】次に、図6に示すようにボール6と各溝3
b,4bを主軸Sに直交する方向から見ると、実際には
各溝3b,4bとボール6との接触面に作用する垂直方
向の反力はD1 ,D2 であり、その分力は主軸Sに平行
なE1 ,E2 と、E1 ,E2に垂直なC1 ,C2 であ
る。以下、E1 ,E2 をスラスト力という。D1 ,D2
はボール6との接触面に垂直であるので、ボール6の中
心を通る線分上に位置し、D1 ,D2 とC1 ,C2 との
なす角度(以下、接触角という)をβ1 ,β2 とする
と、D1 ,D2 の大きさは、 D1 =C1 ×1/cosβ1 D2 =C2 ×1/cosβ2 …(3) で表される。また、スラスト力E1 ,E2 の大きさは、 E1 =C1 ×tanβ1 E2 =C2 ×tanβ2 …(4) で表される。
【0042】式(1) 、式(2) 及び式(3) より、反力D1
,D2 は次式のとおりである。
【0043】 D1 =A×1/cosα ×1/cosβ1 D2 =A×1/cosα ×1/cosβ2 …(5) C1 ,C2 は、式(1) 及び式(2) より、 C1 =A×1/cosα C2 =A×1/cosα …(6) また、スラスト力E1 ,E2 は式(1) 、式(2) 及び式
(4) より、 E1 =A×1/cosα ×tanβ1 E2 =A×1/cosα ×tanβ2 …(7) で表される。
【0044】即ち、ボール6が各溝3b,4bから受け
る反力D1 ,D2 はC1 ,C2 及びE1 ,E2 の成分に
分けられ、スラスト力E1 ,E2 によって各スラストワ
ッシャ3c,4cが軸方向に押し付けられることによ
り、主軸回りに滑り摩擦が発生して差動制限効果が得ら
れる。その際、ボール6と各溝3b,4bとの接触角
α,β1 ,β2 の大きさを任意に設定することにより、
必要に応じた差動制限効果を得ることができる。尚、ス
ラストワッシャ3c,4cの代わりにベアリング等の他
の介在物を用いることにより、スラスト力E1 ,E2
よる差動制限効果の効き具合を任意に設定することも可
能である。
【0045】ところで、各溝3b,4bが同一のボール
6に接する位置は、図6に示すようにボールディスク3
の溝3bは内側、ボールディスク4の溝4bは外側から
接する。従って、同一のボール6であっても各溝3b,
4bとの接触面から主軸Sまでの距離L1 ,L2 が異な
るため、各ボールディスク3,4側に発生するスラスト
力E1 ,E2 も異なる。そこで、スラスト力E1 ,E2
等しくなるように各距離L1 ,L2 に応じて各溝3
b,4bとの接触角β1 ,β2 の大きさを設定すること
により(β1 >β2 )、各ボールディスク3,4側に発
生する差動制限効果を常に等しくすることができる。
尚、図6では各ボールディスク3,4間のボールホルダ
5の図示を省略しているが、前記スラスト力Eを発生さ
せる力はボールホルダ5からボール5に加わる駆動力に
よるものである。
【0046】このように、本実施例の差動装置によれ
ば、各ボールディスク3,4に設けた溝3b,4bと、
これに転動自在に嵌合する多数のボール6との噛み合わ
せによって各ボールディスク3,4の相互の回転運動を
連動させ、各ボールディスク3,4の一方から回転力が
加わった場合は、各ボール6が溝3b,4bとの接触面
から受ける反力、特に軸方向の反力によるスラストワッ
シャ3c,4cの摩擦力によって差動を制限するように
したので、差動制限効果を得るための特別な機構を追加
する必要がなく、しかも動作の確実なトルク感応型の差
動制限効果を得ることができる。従って、従来では例の
ない極めて小型で低コストな差動装置を実現することが
でき、しかも各ボール6と各溝3b,4bとの接触角の
大きさを任意に設定することにより、必要に応じた差動
制限効果を得ることも可能である。更に、本実施例では
各溝3b,4bの反転位置が軸方向の一方で一致したと
きに他方では互いにずれるように設け、全てのボール6
が同時に各溝3b,4bの反転位置に達しないようにし
たので、ボール6の駆動力を確実に各ボールディスク
3,4に伝達することができ、構造的な完成度を高める
ことができる。
【0047】図7及び図8は本発明の第2の実施例を示
すもので、第1の実施例とは溝の形状が異なっている。
尚、前記実施例と同等の構成部分には同一の符号を付し
て示す。
【0048】即ち、同図に示す溝3d,4dは、ボール
6を各ボールディスク3,4の軸方向一端側から他端側
に向かって移動させる第1の案内区間3d−1,4d−
1と、ボール6を各ボールディスク3,4の軸方向他端
側から一端側に向かって移動させる第2の案内区間3d
−2,4d−2と、ボール6を各ボールディスク3,4
の軸方向所定範囲内の位置(この場合は軸方向一定位
置)に保つ第3の案内区間3d−3,4d−3とを周方
向に連続して有し、第1の案内区間3d−1,4d−1
及び第2の案内区間3d−2,4d−2は第1の実施例
と同様、溝3d,4dがボール6から受ける反力の大き
さが互いに等しくなるように形成されている。各ボール
ディスク3,4では第1の案内区間3d−1,4d−1
内に第3の案内区間3d−3,4d−3が設けられ、各
ボールディスク3,4を径方向に対向させると、第1の
実施例と同様、軸方向一方の反転位置が互いに重なり合
ったときは、他方の反転位置が互いにずれるようになっ
ている。また、各溝3d,4dは各ボールディスク3,
4の回転角が90゜でボール6を径方向に一往復させる
ように形成されており、これを直線状に展開すると図
のようになる。即ち、各溝3d,4dは方向の反転位
置と、第3の案内区間3d−3,4d−3ではボール6
と各溝3d,4dとの間で力を伝達しないが、力を伝達
している第1の案内区間3d−1,4d−1と、第3の
案内区間3d−3,4d−3を除く第2の案内区間3d
−2,4d−2では、第1の実施例で説明したように常
に一定のスラスト力が発生する。例えば、図におい
て、a≦a′,b≧b′,c≦c′,d=d′の条件を
満たすように溝3d,4dの全体を形成すれば、任意の
ボール6が力の伝達されない位置にあるときは他の何れ
かのボール6力の伝達されるところに位置させること
ができ、これによりディスクプレート7が如何なる回転
角であっても常に有効なスラスト力を発生させることが
できる。
【0049】図9乃至図12は本発明の第3の実施例を
示すもので、図9は差動装置の側面断面図、図10は図
9のA−A線方向矢視断面図、図11は差動装置の分解
斜視図である。
【0050】本実施例の差動装置は、ギヤケース10
と、ギヤケース10の一端を閉塞するギヤケースカバー
11と、互いに同軸状に配置された一対のボールディス
ク12と、各ボールディスク12の間に配置された多数
のボールホルダ13と、各ボールホルダ13に転動自在
に保持された多数のボール14とから構成されている。
即ち、各ボールディスク12は回転体を、各ボールホル
ダ13は保持体を、各ボール14は転動体をそれぞれ構
成している。
【0051】ギヤケース10は一端を開口した筒形をな
し、その中央には一方のボールディスク12を支持する
軸受け10aが設けられている。ギヤケース10の周囲
にはフランジ10bが設けられており、フランジ10b
にはボルト挿通用の多数の孔10cが設けられている。
ギヤケース10の内周面には各ボール14及びボールホ
ルダ13を係合する多数の溝10dが設けられ、各溝1
0dはギヤケース10の軸方向に直線状に延び、周方向
に等間隔で設けられている。即ち、各溝10dは案内部
をなす。
【0052】ギヤケースカバー11は円盤状に形成さ
れ、その中央には他方のボールディスク12を支持する
軸受け11aが設けられている。ギヤケースカバー11
の周囲にはフランジ11bが設けられ、フランジ11b
にはボルト挿通用の多数の孔11cが設けられている。
即ち、ギヤケースカバー11は各フランジ10b,11
bを締結するボルトによってギヤケース10に組付けら
れている。また、ギヤケースカバー11の内面にはギヤ
ケース10の各溝10dに連続する同一断面形状の多数
の溝11dが設けられている。
【0053】各ボールディスク12は中空構造を有し、
その一端には車輪側のドライブシャフトを連結するため
の連結部12aが設けられている。各ボールディスク1
2は互いに等しい外径を有し、その一端面同士を対向さ
せている。各ボールディスク12の外周面には各ボール
14が転動自在に係合する溝12bが設けられ、溝12
bは周方向に連続して形成されている。図12は各ボー
ルディスク12を平面状に展開したもので、図中の角度
0゜〜360゜は周方向の位置を示す。即ち、各溝12
bは、図12に示すようにボール14をボールディスク
12の軸方向一端側から他端側に向かって移動させる第
1の案内区間12b−1と、ボール14をボールディス
ク12の軸方向一端側から他端側に向かって移動させる
第2の案内区間12b−2とを交互に連続して有し、一
方のボールディスク12では第1の案内区間12b−1
が第2の案内区間12b−2よりも周方向に長く形成さ
れ、他方のボールディスク12では第2の案内区間12
b−2が第1の案内区間12b−1よりも周方向に長く
形成されている。即ち、各ボールディスク12において
は、第1の実施例と同様、各溝12bの軸方向一方の反
転位置が周方向で一致したときには、他方の反転位置が
互いに周方向にずれるようになっている。また、一方の
ボールディスク12の端面とギヤケース10との間、他
方のボールディスク12の端面とギヤケースカバー11
との間にはスラストワッシャ12cが介装されている。
【0054】各ボールホルダ13は一方のボールディス
ク12の周面から他方のボールディスク12の周面まで
延びる板状に形成され、ギヤケース10及びギヤケース
カバー11の溝10d,11dに摺動自在に係合してい
る。各ボールホルダ13は一方のボールディスク12側
のボール14と他方のボールディスク12側のボール1
4をそれぞれ一つずつ収容する計2つの孔13aを有
し、各ボールディスク12側のボール14を一定の間隔
を保持した状態で溝10d,11dに沿って各ボールホ
ルダ13の軸方向に往復するようになっている。
【0055】各ボール14は各ボールホルダ13の孔1
3aに収容され、それぞれギヤケース10の溝10dと
各ボールディスク12の溝12bに係合している。
【0056】以上のように構成された差動装置において
は、各ボールディスク12に回転差が生ずると、各ボー
ル14は各ボールディスク12の溝12bに案内されて
転動し、各ボールホルダ13と共に各ボールディスク1
2の軸方向に往復移動する。ここで、路面との摩擦力が
一方の駆動輪のみ低下すると、第1の実施例と同様、
ボールディスク12の溝12bに各ボール6から軸方向
の反力が作用するので、各ボールディスク12がスラス
トワッシャ12cにそれぞれ押し付けられて各ボールデ
ィスク12と各スラストワッシャ12cとの間に摩擦力
による回転抵抗が生じ、これが各ドライブシャフト8の
差動制限力となる。
【0057】尚、本実施例では各溝12bを第1の実施
例と同様に形成したものを示したが、第2の実施例と同
様に形成することも可能である。
【0058】図13及び図14は本発明の第4の実施例
を示すもので、図13は差動装置の側面断面図、図14
は図13のA−A線方向矢視断面図である。即ち、本実
施例は第3の実施例の変形例であり、第3の実施例と同
等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0059】本実施例ではギヤケース10の内周面と各
ボールディスク12の外周面との間に所定の隙間が形成
され、この隙間に多数のボールホルダ15が摺動自在に
収容されている。この場合、各ボールホルダ15はギヤ
ケース10及び各ボールディスク12の周面に沿って湾
曲しており、この湾曲形状により各ボールホルダ15の
摺動が各ボールディスク12の軸方向のみに規制される
ようになっている。
【0060】従って、本実施例ではギヤケース10の内
周面には各ボール14のみを係合する多数の溝10eを
設ければよく、各溝10eはボールホルダ15を係合し
ない分、構造が簡単になるという利点がある。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】図15乃至図17は本発明の第の実施例
を示すもので、図15は差動装置の側面断面図、図16
は図15のA−A線方向矢視断面図、図17は差動装置
の分解斜視図である。
【0082】本実施例の差動装置は、ギヤケース30
と、ギヤケース30の一端を閉塞するギヤケースカバー
31と、互いに同軸状に配置された一対のボールディス
ク32と、各ボールディスク32の間に配置された多数
のボールホルダ33と、各ボールホルダ33に転動自在
に保持された多数のボール34とから構成され、ギヤケ
ース30内には各ボール34の移動する空間に粘性流体
35が充填されている。即ち、各ボールディスク32は
回転体を、各ボールホルダ33は保持体を、各ボール3
4は転動体をそれぞれ構成している。
【0083】ギヤケース30は一端を開口した筒形をな
し、その中央には一方のボールディスク32を支持する
軸受け30aが設けられている。ギヤケース30の周囲
にはフランジ30bが設けられており、フランジ30b
にはボルト挿通用の多数の孔30cが設けられている。
ギヤケース30の内周面には各ボール34が係合する多
数の溝30dが設けられ、各溝30dはギヤケース30
の軸方向に直線状に延び、周方向に等間隔で設けられて
いる。即ち、各溝30dは案内部をなす。また、各溝3
0d内にはボール34との間に隙間を形成する流体通路
30eが設けられ、この流体通路30eには粘性流体3
5が流通できるようになっている。
【0084】ギヤケースカバー31は円盤状に形成さ
れ、その中央には他方のボールディスク32を支持する
軸受け31aが設けられている。ギヤケースカバー31
の周囲にはフランジ31bが設けられ、フランジ31b
にはボルト挿通用の多数の孔31cが設けられている。
即ち、ギヤケースカバー31は各フランジ30b,31
bを締結するボルトにより、シール用のOリング31d
を介してギヤケース30に組付けられている。また、ギ
ヤケースカバー31は粘性流体35を充填するための充
填孔31eを有し、充填孔31eは粘性流体35が充填
された後にボール31fで封鎖され、充填孔31eの周
囲を圧潰することによりボール31fを固定している。
この場合、充填孔31eは注入用と空気抜き用として径
2箇所以上に設けられている。更に、ギヤケースカバー
31の内面側には、注入された粘性流体35をギヤケー
ス30の周方向に分散させるための環状の溝31gが設
けられ、溝31gは各充填孔31eに連通するように形
成されている。
【0085】各ボールディスク32は中空構造を有し、
その一端には車輪側のドライブシャフトを連結するため
の連結部32aが設けられている。各ボールディスク3
2は互いに等しい外径を有し、その対向面同士を回動自
在に結合している。各ボールディスク32の外周面には
各ボール34が転動自在に係合する溝32bが設けら
れ、溝32bは周方向に連続して形成されている。即
ち、本実施例においても第1または第2の実施例と同
様、各溝32bの軸方向一方の反転位置が周方向で一致
したときには、他方の反転位置が互いに周方向にずれる
ようになっている。また、各溝32内にはボール34
との間に隙間を形成する流体通路32cが設けられ、こ
の流体通路32cには粘性流体35が流通できるように
なっている。各ボールディスク32の対向面には中空部
分を閉塞するディスクキャップ32dが取付けられ、各
ディスクキャップ32dの外周面と各ボールディスク3
2との間にはシール用のOリング32eが介装されてい
る。また、一方のボールディスク32の端面とギヤケー
ス30との間、他方のボールディスク32の端面とギヤ
ケースカバー31との間にはスラストワッシャ32fが
介装され、各ボールディスク32の連結部32aと軸受
け30a,31aとの間はオイルシール32gによって
密閉されている。更に、各ボールディスク32の周面に
は溝32bとボールディスク32の端面とを連通する複
数の流体通路32hが設けられ、ギヤケースカバー31
の充填孔31eから注入された粘性流体35が流体通路
32hを通じて溝32b内に充填されるようになってい
る。
【0086】各ボールホルダ33は各ボールディスク3
2の周面とギヤケース30との間に配置され、一方のボ
ールディスク32の周面から他方のボールディスク32
の周面まで延びている。各ボールホルダ33は一方のボ
ールディスク32側のボール34と他方のボールディス
ク32側のボール34をそれぞれ一つずつ収容する計2
つの孔33aを有し、各ボールディスク32側のボール
34を一定の間隔を保持した状態で各ボールホルダ33
の軸方向に往復するようになっている。また、各ボール
ホルダ33の間にはスペーサ33bが設けられ、各ボー
ルホルダ33及び各スペーサ33bによってギヤケース
30の溝30dと各ボールディスク32の溝32bが覆
われるようになっている。
【0087】各ボール34は各ボールホルダ33の孔3
3aに収容され、それぞれギヤケース30の溝30dと
各ボールディスク32の溝32bに係合している。
【0088】粘性流体35はシリコンオイル等からな
り、各ボールディスク32の溝32b内を含む領域、即
ちギヤケース30内の各オイルシール32gによって密
閉された空間内に充填されている。
【0089】以上のように構成された差動装置において
は、各ボールディスク32に回転差が生ずると、各ボー
ル34は各ボールディスク32の溝32bに案内されて
転動し、各ボールホルダ33と共に各ボールディスク3
2の軸方向に往復移動する。その際、第2の実施例と同
様、各ボールディスク32の溝32bに各ボール34か
ら軸方向の反力が作用するので、各ボールディスク32
がスラストワッシャ12cにそれぞれ押し付けられて各
ボールディスク32と各スラストワッシャ32fとの間
に摩擦力による回転抵抗が生じ、これが差動制限力とな
る。また、各ボールディスク32の回転速度差が大きく
なると、各ボール34が粘性流体35から受ける抵抗が
増大し、この抵抗によって差動が制限される。即ち、各
ボールホルダ33とスペーサ33bによって密閉された
溝30d,32b内を各ボール34が転動すると、各溝
30d,32bの流体通路30e,32cを粘性流体3
5が流通するため、その際の流通抵抗が差動を制限する
力として作用する。この場合、差動制限効果は各ボール
ディスク32の回転速度差に応じて徐々に大きくなるよ
うに発生する。
【0090】従って、本実施例ではボール34が溝32
bから受ける反力によるトルク感応の差動制限効果に加
え、ボール34が粘性流体35から受ける抵抗による回
転感応の差動制限効果も得ることができるので、走行状
態に応じて常に的確な差動制限を行うことができる。
【0091】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1、2、3
及びの差動装置によれば、差動制限効果を得るための
特別な機構を追加する必要がなく、しかもトルク感応の
安定した差動制限効果を得ることができるので、極めて
小型で低コストに製造することができる。また、差動制
限効果を用途に応じて任意に設定することができるの
で、汎用性に優れているという利点もある。更に、全て
の転動体が同時に溝の反転位置に達することがないの
で、転動体と溝との間で確実に駆動力を伝達することが
できる。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】また、請求項の差動装置によれば、請求
項1、2、3または4の効果に加え、各回転体の回転速
度差に応じて徐々に大きくなる回転感応の差動制限効果
を得ることができるので、トルク感応の差動制限効果
併せて有効に作用させることができる。
【0096】
【0097】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す差動装置の側面断
面図
【図2】図1のA−A線矢視方向断面図
【図3】差動装置の分解斜視図
【図4】溝の展開図
【図5】ボールから溝に加わる力の作用説明図
【図6】ボールから溝に加わる力の作用説明図
【図7】本発明の第2の実施例を示す溝の展開図
【図8】溝の要部展開図
【図9】本発明の第3の実施例を示す差動装置の側面断
面図
【図10】図9のA−A線矢視方向断面図
【図11】差動装置の分解斜視図
【図12】溝の展開図
【図13】本発明の第4の実施例を示す差動装置の側面
断面図
【図14】図13のA−A線矢視方向断面図
【図15】本発明の第の実施例を示す差動装置の側面
断面図
【図16】図15のA−A線矢視方向断面図
【図17】差動装置の分解斜視図
【符号の説明】
1…ギヤケース、3…ボールディスク、3b…溝、3b
−1…第1案内区間、3b−2…第2案内区間、3d…
溝、3d−1…第1案内区間、3d−2…第2案内区
間、3d−3…第3案内区間、4…ボールディスク、4
b…溝、4b−1…第1案内区間、4b−2…第2案内
区間、4d…溝、4d−1…第1案内区間、4d−2…
第2案内区間、4d−3…第3案内区間、5…ボールホ
ルダ、5a…長孔、6…ボール、10…ギヤケース、1
0d,10e…溝、12…ボールディスク、12b…
溝、12b−1…第1案内区間、12b−2…第2案内
区間、13…ボールホルダ、14…ボール、15…ボー
ルホルダ、30…ギヤケース、30d…溝、32…ボー
ルディスク、32b…溝、33…ボールホルダ、34…
ボール、35…粘性流体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−136167(JP,A) 特開 昭59−180153(JP,A) 特開 昭60−40863(JP,A) 特開 昭60−179563(JP,A) 特開 昭63−192618(JP,A) 特許30183(JP,C1) 特許38050(JP,C1) 米国特許2220432(US,A) 米国特許2841036(US,A) 米国特許5577423(US,A) 独国特許発明801421(DE,C2) 欧州特許670439(EP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 35/04,15/40,25/06 B60K 17/20

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに周面を径方向に対向して同軸状に
    配置された一対の回転体と、 各回転体を収容し、内面側の所定部分を各回転体に軸方
    向に接触可能に対向させたケース体と、 各回転体の径方向の対向面間に配置された複数の転動体
    と、 各転動体の径方向の対向面間に配置され、ケース体と一
    体に回転する保持体とを備え、 前記保持体には各回転体の軸方向に延びる複数の案内部
    を各回転体の径方向に貫通して設けて各案内部に各転動
    体を移動自在に収容し、 各回転体の径方向の対向面には各転動体に係合する溝を
    回転体の周方向に連続して設け、各溝を各回転体に回転
    差が生ずると各転動体が前記案内部に沿って各回転体の
    軸方向に往復移動するように形成し、 各回転体の溝は、転動体を前記案内部の一端側から他端
    側に向かって移動させる第1の案内区間と、転動体を案
    内部の他端側から一端側に向かって移動させる第2の案
    内区間とを周方向に連続して有し、一方の回転体の第1
    の案内区間を第2の案内区間よりも周方向に長く形成
    し、他方の回転体の第2の案内区間を第1の案内区間よ
    りも周方向に長く形成したことを特徴とする差動装置。
  2. 【請求項2】 互いに周面を径方向に対向して同軸状に
    配置された一対の回転体と、 各回転体を収容し、内面側の所定部分を各回転体に軸方
    向に接触可能に対向させたケース体と、 各回転体の径方向の対向面間に配置された複数の転動体
    と、 各転動体の径方向の対向面間に配置され、ケース体と一
    体に回転する保持体とを備え、 前記保持体には各回転体の軸方向に延びる複数の案内部
    を各回転体の径方向に貫通して設けて各案内部に各転動
    体を移動自在に収容し、 各回転体の径方向の対向面には各転動体に係合する溝を
    回転体の周方向に連続して設け、各溝を各回転体に回転
    差が生ずると各転動体が前記案内部に沿って各回転体の
    軸方向に往復移動するように形成し、 前記各回転体の溝は、転動体を前記案内部の一端側から
    他端側に向かって移動させる第1の案内区間と、転動体
    を案内部の他端側から一端側に向かって移動させる第2
    の案内区間と、転動体を案内部の所定範囲内の位置に保
    つ第3の案内区間とを周方向に連続して有し、一方の回
    転体では第1の案内区間内に第3の案内区間を設け、他
    方の回転体では第2の案内区間内に第3の案内区間を設
    けたことを特徴とする差動装置。
  3. 【請求項3】 互いに軸方向に対向して同軸状に配置さ
    れた一対の回転体と、各回転体を収容し、内面側の所定
    部分を各回転体に軸方向に接触可能に対向させたケース
    体と、 各回転体とケース体の径方向の対向面間に配置された複
    数の転動体と、 一方の回転体側の転動体と他方の回転体側の転動体とを
    転動自在に保持する複数の保持体とを備え、 前記ケース体には各回転体の軸方向に延びる複数の案内
    部を設けて各案内部に各転動体を移動自在に係合し、 各回転体のケース体との対向面には各転動体に係合する
    溝を各回転体の周方向に連続して設け、各溝を各回転体
    に回転差が生ずると前記保持体及び各転動体がケース体
    の案内部に沿って各回転体の軸方向に往復移動するよう
    に形成し、 各回転体の溝は、転動体を前記案内部の一端側から他端
    側に向かって移動させる第1の案内区間と、転動体を案
    内部の他端側から一端側に向かって移動させる第2の案
    内区間とを周方向に連続して有し、一方の回転体の第1
    の案内区間を第2の案内区間よりも周方向に長く形成
    し、他方の回転体の第2の案内区間を第1の案内区間よ
    りも周方向に長く形成したことを特徴とする差動装置。
  4. 【請求項4】 互いに軸方向に対向して同軸状に配置さ
    れた一対の回転体と、 各回転体を収容し、内面側の所定部分を各回転体に軸方
    向に接触可能に対向させたケース体と、 各回転体とケース体の径方向の対向面間に配置された複
    数の転動体と、 一方の回転体側の転動体と他方の回転体側の転動体とを
    転動自在に保持する複数の保持体とを備え、 前記ケース体には各回転体の軸方向に延びる複数の案内
    部を設けて各案内部に各転動体を移動自在に係合し、 各回転体のケース体との対向面には各転動体に係合する
    溝を各回転体の周方向に連続して設け、各溝を各回転体
    に回転差が生ずると前記保持体及び各転動体がケース体
    の案内部に沿って各回転体の軸方向に往復移動するよう
    に形成し、 前記各回転体の溝は、転動体を前記案内部の一端側から
    他端側に向かって移動させる第1の案内区間と、転動体
    を案内部の他端側から一端側に向かって移動させる第2
    の案内区間と、転動体を案内部の所定範囲内の位置に保
    つ第3の案内区間とを周方向に連続して有し、一方の回
    転体では第1の案内区間内に第3の案内区間を設け、他
    方の回転体では第2の案内区間内に第3の案内区間を設
    けたことを特徴とする差動装置。
  5. 【請求項5】 前記各回転体の溝内に各転動体の移動に
    抵抗を付与する粘性流体を充填したことを特徴とする請
    求項1、2、3または4記載の差動装置。
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Citations (4)

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