JPH04362309A - 摺動部材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は摺動部材、特に、相手部
材との摺動面を持つ表面層を備えた摺動部材に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種摺動部材として、前記表面
層をＰｂ−Ｓｎ系合金より構成したすべり軸受が知られ
ている（特開昭５６−９６０８８号公報参照）。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】この種すべり軸受は、
エンジンにおけるクランクシャフトのジャーナル部、コ
ンロッドの大端部等に適用されているが、エンジンが高
速、且つ高出力化の傾向にある現在の状況下では、従来
のすべり軸受の表面層は、そのオイル保持性、つまり保
油性が十分でないため耐焼付き性が乏しいという問題が
ある。

【０００４】本発明は前記に鑑み、表面層の構造を、特
定することによって、その表面層に十分な保油性を持た
せ、これにより表面層の耐焼付き性を向上させた前記摺
動部材を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、相手部材との
摺動面を持つ表面層を備えた摺動部材において、前記表
面層は、表面に略放射状に突出する角錐体状突起および
角錐台状突起の少なくとも一方を持って前記摺動面を形
成する複数の塊状体を有し、前記摺動面における前記塊
状体の面積率を５％以上に設定したことを特徴とする。

【０００６】

【実施例】図１，図２において、摺動部材としてのすべ
り軸受１は、エンジンにおけるクランクシャフトのジャ
ーナル部、コンロッドの大端部等に適用されるもので、
第１および第２半体１１　，１２　よりなる。両半体１
１　，１２　は同一構造を有し、裏金２と、その裏金２
の内周面に形成されたライニング層３と、そのライニン
グ層３の表面に形成されて相手部材ｘとの摺動面４ａを
持つ表面層４とを備えている。裏金２およびライニング
層３間には銅メッキ層が、またライニング層３および表
面層４間にはニッケルメッキバリヤ層がそれぞれ必要に
応じて設けられる。

【０００７】裏金２は圧延鋼板より構成され、その厚さ
はすべり軸受１の設定厚さにより決められる。ライニン
グ層３は銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系
合金等より構成され、その厚さは５０〜５００μｍ、通
常は３００μｍ程度である。表面層４はＰｂ合金より構
成され、その厚さは５〜５０μｍ、通常は２０μｍ程度
である。

【０００８】表面層４を構成するＰｂ合金は、８０〜９
０重量％のＰｂと３〜２０重量％のＳｎとを含有し、必
要に応じてＣｕ、Ｉｎ、Ａｇ、Ｔｌ、Ｎｂ、Ｓｂ、Ｎｉ
、Ｃｄ、Ｔｅ、Ｂｉ、Ｍｎ、Ｃａ、Ｂａから選択される
少なくとも一種を１０重量％以下含有する。

【０００９】Ｃｕ、Ｎｉ、Ｍｎは表面層４の硬さを向上
させる機能を有するが、その含有量が１０重量％を上回
ると、硬さが高くなり過ぎて初期なじみ性が低下する。 Ｃｕ等を添加する場合には、表面層４の硬さＨｍｖが１
５〜２５になるように、その含有量を調整するのが望ま
しい。

【００１０】Ｉｎ、Ａｇ、Ｔｌ、Ｎｂ、Ｓｂ、Ｃｄ、Ｔ
ｅ、Ｂｉ、Ｃａ、Ｂａは、表面層４を軟化して初期なじ
み性を改善する機能を有するが、その含有量が１０重量
％を上回ると、表面層４の強度が低下する。Ｉｎ等を添
加する場合には、表面層４の硬さＨｍｖが８〜１５にな
るように、その含有量を調整するのが望ましい。

【００１１】表面層４は、電気メッキ法により形成され
るもので、メッキ液としては、１リットル当り４０〜１
８０ｇのＰｂ２＋、１リットル当り１．５〜３５ｇのＳ
ｎ２＋、必要に応じて１リットル当り１５ｇ以下のＣｕ
２＋を含むホウフッ化系メッキ液が用いられる。またメ
ッキ液の温度は５〜５０℃、陰極電流密度は３〜１５Ａ
／ｄｍ２　にそれぞれ設定される。

【００１２】図３は、摺動面４ａにおけるＰｂ合金の結
晶構造を示す電子顕微鏡写真（１０，０００倍）である
。表面層４は８重量％のＳｎと、２重量％のＣｕとを含
有するＰｂ合金よりなる。その表面層４は銅合金製ライ
ニング層３上に形成され、表面層４を形成する際の電気
メッキ処理における陰極電流密度は１０Ａ／ｄｍ２　に
設定された。

【００１３】図３〜図５に明示するように、表面層４は
、摺動面４ａを形成するマトリックス部Ａと、そのマト
リックス部Ａに分散する塊状体Ｂを有する。マトリック
ス部Ａは、頂点ｃを摺動面４ａ側に向けた角錐体状突起
、図示例では四角錐体状結晶６の集合体よりなり、その
四角錐体状結晶６は、ライニング層３より延出する柱状
晶５の先端部を形成する。塊状体Ｂは、その表面に略放
射状に突出する角錐体状突起、図示例では四角錐体状結
晶７を有するもので、柱状晶５の先端部が異形化したも
のである。摺動面４ａ、したがってマトリックス部Ａに
おける塊状体Ｂの面積率は５％以上、５０％以下が好ま
しく、図３の例では５０％である。

【００１４】図６は、マトリックス部ＡにおけるＰｂ合
金結晶のＸ線回折図であり、ミラー指数で（２００）面
および（４００）面の回折ピークのみが認められる。

【００１５】ここで、結晶面の配向性を表わす指数とし
て配向指数Ｏｅを、 （ただし、ｈｋｌはミラー指数、Ｉｈｋｌは（ｈｋｌ）
面の積分強度、ΣＩｈｋｌはＩｈｋｌの総和）と定義す
ると、或（ｈｋｌ）面において、その配向指数Ｏｅが１
００％に近ければ近い程、その（ｈｋｌ）面と直交する
方向へ配向した結晶面が多いことになる。

【００１６】Ｐｂ合金結晶の（２００）面および（４０
０）面における積分強度Ｉｈｋｌおよび配向指数Ｏｅは
表１の通りである。

【００１７】

【表１】

【００１８】表１より、Ｐｂ合金結晶の（ｈ００）面に
おける配向指数Ｏｅは１００％であり、したがってＰｂ
合金結晶は、結晶軸ａ，ｂ，ｃにおいて各軸方向に配向
した結晶面、即ち（ｈ００）面を持つことになる。

【００１９】このように、結晶面を（ｈ００）面と直交
する方向に配向させると、Ｐｂ合金の結晶構造が面心立
方構造であることから、配向方向における原子密度が高
くなるので、マトリックス部Ａの硬度が増してその耐焼
付き性が向上する。

【００２０】図７，図８は、他の摺動面４ａにおけるＰ
ｂ合金の結晶構造を示す顕微鏡写真（１，０００　倍）
であり、図７の場合は、摺動面４ａにおける塊状体Ｂの
面積率が１０％であり、図８の場合は、摺動面４ａにお
ける塊状体Ｂの面積率が３０％である。

【００２１】図９は、さらに他の摺動面４ａにおけるＰ
ｂ合金の結晶構造を示す顕微鏡写真（５，０００　倍）
であり、この摺動面４ａは、その全体が塊状体Ｂより構
成されている。したがって、摺動面４ａにおける塊状体
Ｂの面積率は１００％である。

【００２２】図１０は、従来例表面層の摺動面における
Ｐｂ合金の結晶構造を示す電子顕微鏡写真（１０，００
０倍）である。この表面層は８重量％のＳｎと、２重量
％のＣｕとを含有するＰｂ合金よりなり、表面層は電気
メッキ処理により銅合金製ライニング層上に形成された
もので、エンジン用クランクシャフトのジャーナル部に
適用される。

【００２３】図１１は、従来例表面層におけるＰｂ合金
結晶のＸ線回折図である。本図からは特定の結晶面への
配向は認められない。種々の（ｈｋｌ）面における積分
強度Ｉｈｋｌおよび配向指数Ｏｅは表２の通りである。

【００２４】

【表２】

【００２５】図１０および表２から明らかなように、従
来例Ｐｂ合金の結晶形状は結晶面がランダムに配向した
不定形状である。これに起因してＰｂ合金の硬度は前記
（ｈ００）面配向のＰｂ合金に比べて低くなる。

【００２６】表３は、各種すべり軸受において、その表
面層の組成、マトリックス部Ａの（ｈ００）面における
配向指数Ｏｅ、結晶形状等を比較したものである。

【００２７】

【表３】

【００２８】本発明（１）は図７のＰｂ合金に、本発明
（２）は図８のＰｂ合金に、本発明（３）は図３のＰｂ
合金に、本発明（４）は図９のＰｂ合金にそれぞれ該当
する。本発明（１）〜（４）を比較すると明らかなよう
に、陰極電流密度の上昇に伴い塊状体Ｂの生成量が増加
する。

【００２９】比較例（１）は前記従来例、したがって図
１０のＰｂ合金に該当し、その結晶形状は不定形状であ
る。比較例（２）は本発明（４）と略同一の組成を有し
、また比較例（１）と略同様の結晶形状を有する。比較
例（１），（２）の陰極電流密度は不明である。

【００３０】図１２は、本発明（１）〜（４）および比
較例（１），（２）の焼付きテスト結果を示す。

【００３１】焼付きテストは、回転軸に各すべり軸受を
摺擦させ、そのすべり軸受に対する負荷荷重を漸次増加
させることにより行われた。図１２は各すべり軸受の表
面層が焼付きを発生したときの面圧を求めたものである
。

【００３２】テスト条件は次の通りである。回転軸の材
質　　ＪＩＳ　　Ｓ４８Ｃ材に窒化処理を施したもの、
回転軸の回転数　　６０００ｒｐｍ　、給油温度　　１
２０℃、給油圧力　　３ｋｇ／ｃｍ２　、負荷荷重　　
１ｋｇ／ｓｅｃ　。

【００３３】図１２から明らかなように、本発明（１）
〜（４）は、比較例（１），（２）に比べて優れた耐焼
付き性を有する。これは、本発明（１）〜（３）におい
ては摺動面４ａのマトリックス部Ａが四角錐体状結晶６
より形成されると共に塊状体Ｂがその表面に四角錐体状
結晶７を有することから、摺動面４ａの表面積が拡大さ
れて表面層４が十分な保油性を有するからである。ただ
し、塊状体Ｂの面積率が５％未満になると、摺動面４ａ
の表面積拡大効果が減少し、一方、５０％を超えると、
塊状体Ｂが粗大化することがあり、表面層４の強度維持
を図る上で好ましくない。本発明（４）においても、同
様に塊状体Ｂによる表面層４の保油性向上効果が得られ
る。ただし、マトリックス部がＰｂ合金の粒状晶で、そ
こに塊状体Ｂが分散しているような場合には、塊状体Ｂ
の面積率が５％未満になると、表面層４の保油性向上効
果が得られない。

【００３４】本発明には、マトリックス部Ａが、図１３
，図１４（１０，０００倍の電子顕微鏡写真）に示すよ
うに、上底面ｄを摺動面４ａ側に向けた四角錐台状結晶
（角錐台状突起）８のみから形成される場合ならびに図
１５に示すように、四角錐体状結晶６および四角錐台状
結晶８から形成される場合も包含される。また塊状体Ｂ
がその表面に四角錐台状結晶９（角錐台状突起）のみを
有する場合ならびに図１５に示すように四角錐体状結晶
７および四角錐台状結晶９を有する場合も包含される。

【００３５】さらに、マトリックス部Ａと塊状体Ｂとよ
りなる複合領域が摺動面４ａの一部を形成する、即ち、
複合領域が分散状態で存在するものも本発明に包含され
る。この場合、摺動面４ａにおける複合領域の面積率は
５０％以上に設定される。

【００３６】前記のように優秀な摺動特性を得るために
は、マトリックス部Ａにおける四角錐体状結晶６および
四角錐台状結晶８の傾きが問題となる。

【００３７】そこで、図５，図１６に示すように、四角
錐体状結晶６の底面側に、その結晶６を突出させて摺動
面４ａに沿う仮想面Ｅを規定し、また四角錐体状結晶６
の頂点ｃと底面中央部ｆを通る直線ｇが、底面中央部ｆ
を通り仮想面Ｅに垂直な基準線ｈに対してなす傾き角を
θと規定すると、四角錐体状結晶６の傾き角θは０°≦
θ≦３０°に設定される。傾き角θが、θ＞３０°にな
ると、表面層４の保油性および頂点ｃ側の優先的摩耗性
が低下する。

【００３８】四角錐台状結晶８の場合の傾き角θは、図
１３，図１７に示すように上底面中央部ｋおよび下底面
中央部ｍを通る直線ｎと下底面中央部ｍを通り仮想面Ｅ
に垂直な基準線ｈとがなす角度として規定される。この
場合にも傾き角θは、０°≦θ≦３０°に設定される。

【００３９】前記実施例では、表面層を電気メッキ法に
より形成したが、その他の表面層形成方法としては、Ｐ
ＶＤ、イオンプレーティング、ＣＶＤ、スパッタリング
等の気相を介する形成方法を挙げることができる。また
摺動面における角錐体状突起等の形成に当っては、化学
エッチング、電気エッチング、気相エッチング（ボンバ
ード処理）等のエッチング法、転写、切削等の機械加工
等を適用することが可能である。

【００４０】なお、本発明はすべり軸受に限らず、他の
摺動部材にも適用される。

【００４１】

【発明の効果】本発明によれば、表面層の構造を前記の
ように特定することによって、その表面層の耐焼付き性
を向上させた摺動部材を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】すべり軸受の分解平面図である。

【図２】図１の２−２線断面図である。

【図３】摺動面の第１例におけるＰｂ合金の結晶構造を
示す顕微鏡写真である。

【図４】摺動面の第１例を示す要部概略平面図である。

【図５】表面層の第１例を示す要部概略斜視図である。

【図６】表面層の第１例におけるＰｂ合金結晶のＸ線回
折図である。

【図７】摺動面の第２例におけるＰｂ合金の結晶構造を
示す顕微鏡写真である。

【図８】摺動面の第３例におけるＰｂ合金の結晶構造を
示す顕微鏡写真である。

【図９】摺動面の第４例におけるＰｂ合金の結晶構造を
示す顕微鏡写真である。

【図１０】従来例摺動面におけるＰｂ合金の結晶構造を
示す顕微鏡写真である。

【図１１】従来例表面層におけるＰｂ合金結晶のＸ線回
折図である。

【図１２】焼付きテスト結果を示すグラフである。

【図１３】表面層の第２例を示す要部概略斜視図である
。

【図１４】図１３に対応するＰｂ合金の結晶構造を示す
顕微鏡写真である。

【図１５】摺動面の第５例を示す要部概略平面図である
。

【図１６】四角錐体状結晶の傾き角測定法を示す説明図
である。

【図１７】四角錐台状結晶の傾き角測定法を示す説明図
である。

【符号の説明】

１　　　　　　　　すべり軸受（摺動部材）４　　　　
　　　　表面層 ４ａ　　　　　　摺動面 ６，７　　　　四角錐体状結晶（角錐体状突起）８，９
　　　　四角錐台状結晶（角錐台状突起）Ａ　　　　　
　　　マトリックス部 Ｂ　　　　　　　　塊状体 ｘ　　　　　　　　相手部材

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】　　相手部材（ｘ）との摺動面（４ａ）を
   持つ表面層（４）を備えた摺動部材において、前記表面
   層（４）は、表面に略放射状に突出する角錐体状突起（
   ７）および角錐台状突起（９）の少なくとも一方を持っ
   て前記摺動面（４ａ）を形成する複数の塊状体（Ｂ）を
   有し、前記摺動面（４ａ）における前記塊状体（Ｂ）の
   面積率を５％以上に設定したことを特徴とする摺動部材
   。
2. 【請求項２】　　相手部材（ｘ）との摺動面（４ａ）を
   持つ表面層（４）を備えた摺動部材において、前記表面
   層（４）は、前記摺動面（４ａ）を形成するマトリック
   ス部（Ａ）と、そのマトリックス部（Ａ）に分散する塊
   状体（Ｂ）とを有し、前記マトリックス部（Ａ）は、角
   錐体状突起（６）および角錐台状突起（８）の少なくと
   も一方の集合体よりなり、前記塊状体（Ｂ）は、その表
   面に略放射状に突出する角錐体状突起（７）および角錐
   台状突起（９）の少なくとも一方を有することを特徴と
   する摺動部材。
3. 【請求項３】　　前記マトリックス部（Ａ）における前
   記塊状体（Ｂ）の面積率を５％以上、５０％以下に設定
   した、請求項１記載の摺動部材。