JPH04117175U - フユーエルデリバリパイプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】燃料噴射式自動車用エンジンにおいて、燃料を
噴射ノズルへと供給するフユーエルデリバリパイプを樹
脂で成形し、加工を容易にすると同時に剛性を確保して
変形を防止する。 【構成】直線状に延びる燃料通路を内部に有する金属製
の連通管の上面全体が樹脂製の被覆体で覆われ、この被
覆体の長手方向に沿って所定の間隔で燃料噴射弁取付用
の筒状ソケット部分が形成される。被覆体はモールド成
形によって連通管の表面上に密着して固定される。連通
管の裏面上に密着させることもできる。 【効果】樹脂の断熱効果によって連通管内部を流れる燃
料のベーパ発生が防止される。連通管の振動が樹脂によ
って緩衝され、異音の発生が防止される。樹脂の変形は
金属製連通管によって阻止される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、燃料噴射式自動車用エンジンの燃料加圧ポンプから送給された燃料 をエンジンの各吸気通路あるいは各気筒に燃料インジエクタ（噴射ノズル）を介 して供給するためのフユーエルデリバリパイプの改良に関し、特に燃料通路を有 する連通管と燃料噴射弁を取付けるソケットとの接続構造に係るものである。

【０００２】

【従来の技術】

従来のフユーエルデリバリパイプは、例えば、実開昭５９−４０５７７号「デ リバリパイプ」に示すように、燃料噴射弁の導入軸を受入れる複数個の円筒状ソ ケットが、円形又は四角形断面の連通管により相互に内部で連通するように接続 され、一定方向に一定の間隔をおいて配設されている。円筒状ソケットは、連通 管に溶接されるタイプと連通管と一体形成されるタイプとがあり、溶接タイプの 場合、ソケットは平滑な内周面を有する筒状体で構成され、その外端側はテーパ 状に拡開されて燃料噴射弁との接続が容易になるように作られている。

【０００３】 ソケットが金属製の連通管に溶接されるタイプでは、ソケット自体の製造につ き複雑で精密な加工を行なう工数と時間を必要とし、さらにソケットと連通管と の接続作業において、仮付け及びろう付け工程の後で高い寸法精度を得るために 型合せによる全数検査工程を必要とする等、コストの上昇等を招いていた。加え て、金属製の連通管はエンジンの振動によって、いわゆるスピーカ効果に基づく 共鳴音を発生し、異音が発生してユーザーに不快感や不安感を引き起こすことが 指摘されていた。また、金属製のフユーエルデリバリパイプはその周囲からエン ジンの熱を吸収して高温になり、内部を流れる燃料がベーパを発生する可能性が あることも指摘されていた。

【０００４】 ソケットが連通管と一体に作られるタイプでは、例えば実開昭５９−１０７０ ５０号「デリバリパイプ装置」に開示されるように、フユーエルデリバリパイプ 全体がアルミダイカストやアルミ押出材で作られるが、全体を成形した後で表面 処理を行なうため表面処理が不均一になりやすいこと、成形用の型に抜き勾配を 必要とするため肉厚が大きくなって重量が増加すること、内部の巣等の欠陥を発 見することが困難であり品質の保証が得られないこと、設計変更に対処しにくい こと等の欠点があった。

【０００５】 実開昭６０−１４２７６号「内燃機関用燃料分配管」では、フユーエルデリバ リパイプ全体が、強化繊維材料を合成樹脂に混入させた複合材料によって成形さ れているが、耐熱強度が不足すること、熱による伸縮によって全体が撓んだり歪 んだりして変形してしまうこと、燃料が内部を通過することによって合成樹脂が 膨潤を起こして劣化すること等の欠点があった。

【０００６】

【考案が解決しようとする問題点】

本考案の目的は、樹脂の利点を生かしながら熱による伸縮変形を抑制し、充分 な剛性を保つことが可能な樹脂製のフユーエルデリバリパイプを提供することに ある。 本考案の他の目的は、フユーエルデリバリパイプのスピーカ効果を減少させて 異音の発生を防止することにある。 本考案のさらに他の目的は、フユーエルデリバリパイプが外部の熱によって熱 せられて高温になるのを抑制し、燃料内でベーパが発生するのを防止することに ある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案の前述した目的は、直線状に延びる燃料通路を内部に有する金属製の連 通管と、この連通管の上面全体を覆って長手方向に延伸する樹脂製の被覆体とを 備え、前記被覆体にその長手方向に所定の間隔をおいて複数の燃料噴射弁取付用 の筒状ソケットが配列されているフユーエルデリバリパイプによって達成される 。

【０００８】 かかる構成によれば、フユーエルデリバリパイプの内部に金属製の連通管がイ ンサートされているので、全体の剛性が保たれ、連通管を覆う樹脂は熱変形が妨 げられて元の形状を保つことになり、製造中及び使用中における熱変形が防止で きることになる。 金属製の連通管は、その上面全体が樹脂によって覆われるので、外部からの熱 に対する断熱作用が確保され、内部を流れる燃料が高温になるのが防止されて、 ベーパの発生を防止する効果が得られる。

【０００９】 樹脂製の被覆体は、溶接時の高温に比べると比較的低い温度で成形されるので 、製造時の熱変形が防止されて寸法精度が保たれ、燃料インジエクタとの接続が 容易になるという利点が得られる。 加えて、樹脂製の被覆体は、金属製の連通管が共鳴音を発生するのを防止する ダンパーとして作用するので、フユーエルデリバリパイプのスピーカ効果を減少 させ異音の発生を防止できることになる。

【００１０】 樹脂製の被覆体はモールド成形によって前記連通管上に密着して被覆されるよ うに成形することが望ましい。好適な実施例において、この樹脂被覆は連通管の 表面及び裏面にわたって密着して被覆させることができる。 また、樹脂製の被覆体と金属製の連通管とは、その一方又は両方に突起や折り 曲げ部分を設けた凹凸部分を介して緊密に固定することが望ましい。 また、ソケットと連通管との接続部分には各種のシール部材を介在させて密封 性を高めることが好ましい。これは特に、連通管とソケットの熱膨張係数に大き な差がある場合に、両者の間に隙間ができるのを防止する点で有効となる。 本考案の他の特徴及び利点は、添付図面の実施例を参照した以下の記載により 明らかとなろう。

【００１１】

【実施例】

図１は、本考案の好適な実施例によるフユーエルデリバリパイプ１０の全体を 表わしており、金属で一体に形成された連通管組立体１１の上面全体を合成樹脂 製の被覆体２１が密着して覆っている。 被覆体２１は連通管組立体１１に沿って長手方向に延伸しており、その上部に は長手方向に所定の間隔で燃料噴射弁取付用の円筒状ソケット部分２２が３個設 けられている。図示のフユーエルデリバリパイプ１０は、１対が組み合わされて ６気筒のＶ型エンジンに用いられるので、ソケット部分２２は３個設けられてい るが、Ｖ型８気筒エンジンに用いられる場合は、ソケット部分２２が４個設けら れることになる。

【００１２】 被覆体２１で覆われる前の状態の連通管組立体１１は図４に示すような構造を しており、その一端側には燃料ポンプから送出された高圧の燃料を圧力調整弁を 介して導入するためのフランジ１３が連結され、他端側には余った燃料を他のシ リンダや燃料タンクへと送り出すための接続管１４が連結され、これらはそれぞ れ溶接又はろう付けによって直線状のパイプ部材１２に取付けられている。 パイプ部材１２にはさらに、フユーエルデリバリパイプ１０をエンジンに取付 けるための厚肉で堅固なブラケット１５が溶接又はろう付けによって固着されて いる。

【００１３】 図２、図３は、本考案がその主題とする連通管組立体１１と被覆体２１との接 続構造を断面で表わしている。 図２に示すように、被覆体２１は連通管組立体１１のパイプ部材１２の上に密 着して被覆されており、ソケット部分２２の内部はパイプ部材１２の壁面に形成 された孔１８を介してパイプ部材内部の燃料通路１７と連通している。

【００１４】 図３において、フランジ１３の内部へと供給された燃料は、パイプ部材１２内 部の燃料供給通路１７を通って前方へと送られ、壁面の孔１８からソケット部分 ２２の内部を通過して燃料噴射弁へと送り出される。一方、余った燃料は燃料供 給通路１７から接続管１４を通って他のシリンダ又は燃料タンクへと送られる。

【００１５】 ソケット部分２２を有する被覆体２１は、連通管組立体１１が図４に示す構造 に作られた後でモールド成形機にセットされ、合成樹脂により一体にモールド成 形される。 このモールド成形は、パイプ部材１２上にフランジ１３、接続管１４、ブラケ ット１５を溶接し、表面処理を施した後で、実施するのが有利であり、この方法 によれば、表面処理後に溶接やろう付けを行なった場合に生じる表面の汚れや耐 食性の低下を防止することができる。

【００１６】 図３に示すように、パイプ部材１２のフランジ側の端面付近には円周方向に連 続する帯状の突起２８が形成されており、この突起２８は被覆体２１がモールド 成形されたときにできる突出部３０と協働して、被覆体２１がパイプ部材１２上 で連通管の軸線方向に移動しないように固定する働きをする。 さらに、被覆体２１のフランジ側端面とフランジ１３との間には接着剤その他 のシール部材３１を付着させて、燃料が洩れるのを防止することが望ましい。 また、パイプ部材１２の接続管１４側端面１９は内側向きに折り曲げられて、 その内部に接続管１４が挿入されるような構造に作られており、被覆体２１の端 面２６がこの部分に被さるようになっている。この部分にもまたシール部材３２ を付着させて、燃料洩れを防止することが望ましい。

【００１７】 図４に示したパイプ部材１２は、図５に示すような金属製平板４０を円筒のま わりに巻き付けてプレス成形することにより管状に形成することができる。平板 ４０の段階で、その側端縁に半円形の切り欠き１８Ａ，１８Ｂを設けておけば、 管状に丸められた状態でこれらの切り欠きが協働し、接合線３５に沿って接合す れば図４に示すような孔１８が形成されることになる。

【００１８】 図６は、本考案の他の実施例によるフユーエルデリバリパイプ６０を縦断面で 表わしており、金属で一体に形成された連通管組立体６１のパイプ部材６２の表 面及び裏面の全体を合成樹脂製の被覆体６５が密着して覆っている。 被覆体６５は連通管組立体６１に沿ってパイプ部材６２の上下を長手方向に延 伸しており、その上部には長手方向に所定の間隔で燃料噴射弁取付用の円筒状ソ ケット部分２２が３個設けられている。 このような樹脂被覆体６５は、パイプ部材６２の内部に心金を挿入して樹脂注 入穴から連通管の内面（裏面）へと樹脂を注入し、モールド成形する手法によっ て成形される。

【００１９】 図６に示すパイプ部材６２を形成する場合は、図５に示した金属製平板を図７ のような金属製平板７０に修正し、その側端縁の半円形の切り欠き１８Ａ，１８ Ｂに加えて、樹脂注入用の穴７２を所要の間隔であけておくようにする。この穴 ７２は被覆体６５とパイプ部材６２を相互に固定する凹凸部分としても働くこと になる。

【００２０】 図８に示す金属製平板８０は、図７に示した金属製平板の変形例を表わしてお り、このように円形の切り欠き１８Ｃを中心部分に並列し、その周囲に樹脂注入 用の穴７２を配置することもできる。

【００２１】

【考案の効果】

以上詳細に説明した如く、本考案によれば、金属製の連通管がインサートされ ていることにより全体の剛性が保たれ、連通管を覆う樹脂は熱変形が妨げられて 元の形状を保つことになる。金属製の連通管は、少なくともその上面全体が樹脂 によって覆われるので、外部からの熱に対する断熱作用が確保され、内部を流れ る燃料が高温になるのが抑制されて、ベーパの発生が防止される。樹脂製の被覆 体は、溶接時の高温に比べると比較的低い温度で成形されるので、熱変形を生じ ることなく寸法精度が保たれ、燃料インジエクタとの接続が容易になる。さらに 、樹脂製の被覆体は、金属製の連通管が共鳴音を発生するのを防止するダンパー として作用するので、フユーエルデリバリパイプのスピーカ効果を減少させて異 音の発生が防止できることになる。

【００２２】 複数のソケットは同時にモールド成形されるので、従来のように複数のソケッ トを連通管に取付ける際の間隔や角度の調整作業が不要になり、組付けや検査の 工程が著しく単純化される。溶接作業後にモールド成形を行なえば、表面の汚れ や耐食性の低下を防止することができる。かくして、充分な剛性と寸法精度を有 するフユーエルデリバリパイプが得られ、品質の向上とコストの低減が達成され るようになる等、その実用的価値には顕著なものがある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案によるフユーエルデリバリパイプの全体
を表わす斜視図である。

【図２】連通管を横断する方向に沿って切断したソケッ
ト部分の横断面図である。

【図３】連通管の軸線方向に沿って切断したフユーエル
デリバリパイプの縦断面図である。

【図４】金属製の連通管組立体を表わす斜視図である。

【図５】パイプ部材を成形するための板状の素材の平面
図である。

【図６】本考案の他の実施例によるフユーエルデリバリ
パイプの縦断面図である。

【図７】図６の実施例のパイプ部材を形成するための板
状の素材の平面図である。

【図８】図７の板状素材の変形例を表わす平面図であ
る。

【符号の説明】

１０ フユーエルデリバリパイプ １１ 連通管組
立体 １２ パイプ部材 １７ 燃料供給
通路 １８ 孔 ２１ 樹脂製被
覆体 ２２ ソケット部分 ２８，３０ 凹
凸部分

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 直線状に延びる燃料通路を内部に有する
   金属製の連通管と、この連通管の上面全体を覆って長手
   方向に延伸する樹脂製の被覆体とを備え、前記被覆体に
   はその長手方向に所定の間隔をおいて複数の燃料噴射弁
   取付用の筒状ソケットが配列されていることを特徴とす
   るフユーエルデリバリパイプ。
2. 【請求項２】 前記被覆体はモールド成形によって前記
   連通管の表面上に密着して被覆されている請求項１記載
   のフユーエルデリバリパイプ。
3. 【請求項３】 前記被覆体はモールド成形によって前記
   連通管の表面及び裏面上に密着して被覆されている請求
   項１記載のフユーエルデリバリパイプ。
4. 【請求項４】 前記被覆体と前記連通管とは凹凸部分を
   介して相互に固定されている請求項１記載のフユーエル
   デリバリパイプ。