JPH0367702B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は医療用ベツド装置に係り、殊に自力で
動けない人を、その人体に苦痛を与えずに楽に目
的地まで移動させるための手段に関する。

（従来の技術） 医療用ベツド装置として、自力で動けない病人
などを昇降自在に懸吊されたハンモツクに載置
し、モータのような駆動手段を用いてこのハンモ
ツクを上昇させた後、移動装置により目的地まで
移動させる手段が用いられてきた。

（考案が解決しようとする課題） しかしながら上記従来の医療用ベツド装置にお
いては、人の移動姿勢が定まらず不安定な状態の
まま移動させられるため、首部、腰部、ひざ部な
どに過大な負担がかかり、移動時に苦痛を伴う問
題があつた。

したがつて本発明は、人体に苦痛を与えずに楽
に目的地まで移動させることができる手段を提供
することを目的とする。

（課題を解決するための手段） このために本発明は、ハンモツク１２と、この
ハンモツク１２の両端部を懸吊して、人体の頭部
側と脚部側を巻上げる吊紐１４，１５と、各吊紐
１４，１５を巻き上げる巻上げドラム１０，１１
と、これらの巻上げドラム１０，１１の駆動用モ
ータ２０とから成る懸吊部と、この懸吊部をXY
方向に移動させる移動装置とから医療用ベツド装
置を構成し、人体の脚部側を吊り上げる上記一方
の巻上げドラム１０を円筒状ドラムとするととも
に、人体の頭部側を吊り上げる上記他方の巻上げ
ドラム１１を、円筒部１１ａと、テーパ状拡径部
１１ｂから形成された異形ドラムとし、かつこの
異形ドラムに、吊紐１５のガイド溝２３を形成し
たものである。

（作用） 上記構成において、ハンモツク１２に人が載荷
された状態で、巻上げドラム１０，１１の駆動用
モータ２０を正回転させると、巻上げドラム１
０，１１が各々吊紐１４，１５を巻き上げて、ハ
ンモツク１２の上端部（頭部側）と下端部（腰部
側）が同速で巻き上げられるが、ドラム１１が円
筒部１１ａとテーパ状拡径部１１ｂから形成され
た異形ドラムであるため、ハンモツク１２がある
程度の高さまで上昇し、吊紐１５がテーパ状拡径
部１１ｂに達すると、ハンモツク１２の上端部が
下端部よりも速く上昇する。そしてハンモツク１
２に載荷された人は、上半身を起立させかつひざ
部を山形に屈曲させた状態のまま、移動装置の駆
動によりXY方向に移動し、目的地に達する。ま
たハンモツク１２を下降させる際には、モータ２
０を逆回転させると、まずハンモツク１２の上端
部が下端部よりも速く巻き戻され、ある程度の高
さまで下降すると、ハンモツク１２の上端部と下
端部が同時に下降する。

（実施例） 次に、図面を参照しながら本発明の実施例を説
明する。

第１図は医療用ベツドの背面図、第２図は同側
面図であつて、この医療用ベツドは、後に詳述す
るように、支持フレーム１側に昇降自在に懸吊さ
れる人体の懸吊部と、この懸吊部をXY方向に移
動させる移動装置とから構成されている。

第２図及び第３図において、１０，１１はＹフ
レーム８（後述）の上部に同軸的に配設された巻
上げドラムであつて、一方のドラム１０は円筒状
ドラムから形成され、他方のドラム１１は、ドラ
ム１０の径と同一の径を有する円筒部１１ａと、
テーパ状拡径部１１ｂから成る異形ドラムから形
成されている。１２はハンモツク、１４，１５は
ハンモツク１２の両端部を懸吊する吊紐である。
２３は上記ドラム１１の側面に形成されたガイド
溝であつて、吊紐１５はこのガイド溝２３に案内
されながら巻回されるので、ドラム１１に規則正
しく巻回される。上記ドラム１０に巻回された吊
紐１４は、吊具１６，１７を介して上記ハンモツ
ク１２の下端部（脚部側）を懸吊し（第１図も併
せて参照）、またドラム１１のガイド溝２３に巻
回された吊紐１５は、吊具１８，１９を介してハ
ンモツク１２の上端部（頭部側）を懸吊してい
る。２０は上記巻上げドラム１０，１１の駆動用
モータ、２１はその前部に配設された減速機であ
る。このように、ハンモツク１２、吊紐１４，１
５、巻上げドラム１０，１１、巻上げドラム１
０，１１の駆動用モータ２０等から、人体の懸吊
部が構成されている。

上記構成において、モータ２０が正回転する
と、ハンモツク１２の上端部と下端部はドラム１
０，１１により同速で巻き上げられるが、ある程
度の高さ（ひざ部が屈曲可能な高さ）に達する
と、ハンモツク１２の上端部が下端部よりも速く
巻き上げられる。すなわち、上述のようにドラム
１１は円筒部１１ａと、テーパ状拡径部１１ｂか
ら形成された異形ドラムであるため、吊紐１５が
ドラム１０と同径の円筒部１１ａに巻回される間
は、ドラム１０，１１の巻き上げ速度は同一であ
り、したがつてハンモツク１２の上端部と下端部
は同速で巻き上げられるが、吊紐１５がテーパ状
拡径部１１ｂに巻回されるようになると、ドラム
１１の巻き上げ速度がドラム１０の巻き上げ速度
よりも速くなるため、ハンモツク１２の上端部が
下端部よりも速く上昇する。すなわち本装置は、
ハンモツク１２を上昇させる場合、始めは吊紐１
４と吊紐１５は同速度でそれぞれのドラム１０と
ドラム１１の円筒部１１ａに巻き上げられるの
で、人体を水平に寝かせている姿勢のままで持ち
上げるが、途中から、頭部側の吊紐１５はドラム
１１のテーパ状拡径部１１ｂに巻き上げられるよ
うになるので、頭部側の上昇速度は脚部側よりも
次第に速くなり、したがつてハンモツク１２の上
昇が完了すると、第２図に示すように人体の上半
身を自然に起立させることができる。そしてこの
ように上半身を起立させた状態で、移動装置（後
述）により人体を目的個所へ移動させる。

またモータ２０が逆回転すると、吊紐１５はま
ずテーパ状拡径部１１ｂから巻き戻されるので、
ドラム１１の巻き戻し速度がドラム１０の巻き戻
し速度よりも速いため、ハンモツク１２の上端部
が下端部よりも速く下降する。そしてある程度の
高さまで下降し、吊紐１５が円筒部１１ａから巻
き戻されるようになると、ドラム１０，１１の巻
き戻し速度は同一になり、したがつてハンモツク
１２の上端部と下端部は同時に下降する。すなわ
ち、第２図に示すように人体の上半身を起立させ
た状態で、上昇位置にあるハンモツク１２を下降
させる場合、始めは、吊紐１５はテーパ状拡径部
１１ｂを巻き戻されることから、頭部側の吊紐１
５の巻き戻し速度は脚部側の吊紐１４の巻き戻し
速度よりも速く、したがつて上半身を後方に次第
に倒しながらハンモツク１２は下降する。そして
上半身が後方に倒れて人体が水平に寝ている姿勢
になると、吊紐１４と吊紐１５はそれぞれ同径の
ドラム１０と円筒部１１ａに巻き戻されて下降す
るので、人体は水平に寝ている状態のままベツド
上に着地する。

このように本装置によれば、ハンモツク１２を
上昇させて人体を持ち上げるときは、人体は水平
に寝ている状態から上半身を起立させる状態にス
ムーズに移行でき、且つその姿勢で目的箇所移動
させることができる。またハンモツク１２を下降
させるときは、上半身を起立させている状態か
ら、水平に寝ている状態にスムーズに移行できる
ので、人体に不要な肉体的負担をかけずに、人体
の昇降や目的箇所への移動を行なえる。

第３図に示すように、上記支持フレーム１の上
部には、互いに平行な一対のＸレール３，４が配
設されており、また下部にはキヤスター２が取着
されている（第１図も併せて参照）。５は上記Ｘ
レール３，４に沿つてＸ方向に摺動するＸフレー
ムであり、その上部にはＸ方向と直交するＹ方向
に、互いに平行な一対のＹレール６，７が架設さ
れている。８はこれらのＹレール６，７に沿つて
Ｙ方向に摺動するＹフレームである。このＹフレ
ーム８の上部には、上述のように巻き上げドラム
１０，１１が配設されており、その下方に吊紐１
４，１５等を介してハンモツク１２が懸吊されて
いる。２２はＹフレーム８の中央部に装着された
送りナツトである。なおＸフレーム５とＹフレー
ム８の下部には、各レール３，４，６，７上を転
動するベアリング２４，２５が装着されている
（第１図及び第２図参照）。

次に第１図と第３図を併せて参照しながら、Ｘ
フレームとＹフレームの摺動駆動手段を説明す
る。

２６はＸフレーム５に装着されたＸモータ、２
７はこのＸモータ２６の駆動により回転するピニ
オンである。このピニオン２７は、支持フレーム
１の内側にＸレール３，４と平行に架設されたラ
ツク２８に沿つて、Ｘ方向に移動する。また３０
はＸフレーム５に装着されたＹモータであり、こ
のＹモータ３０には、送りねじ３１が連結されて
いる。上記送りナツト２２はこの送りねじ３１に
螺着されており、この送りナツト２２が送りねじ
３１に沿つてＹ方向に移動することにより、Ｙフ
レーム８はＹレール６，７に沿つてＹ方向に摺動
する。このように、Ｘフレーム５、Ｘモータ２
６、ピニオン２７、ラツク２８、Ｙフレーム８、
Ｙモータ３０、送りねじ３１、送りナツト２２等
は、上記懸吊部の移動装置を構成している。

この医療用ベツドは上記構成より成り、次に全
体の動作を説明する。

ベツドにハンモツク１２を載置し、その上に人
が仰臥した状態（第１図参照）でモータ２０が正
回転すると、巻上げドラム１０，１１は同速度で
各々吊紐１４，１５を巻き上げ、ハンモツク１２
の上端部と下端部は同時に上昇する。そしてさら
にモータ２０が正回転すると、ドラム１１の巻き
上げ速度がドラム１０の巻き上げ速度よりも速く
なり、ハンモツク１２の上端部が下端部よりも速
く上昇する。この状態では人は上半身を起立さ
せ、ひざを山形に屈曲させることができる（第２
図も併せて参照）。

そしてハンモツク１２を上昇させた状態でＸモ
ータ２６が正回転すると、ピニオン２７はラツク
２８に沿つて第１図において右方へ移動し、これ
とともにＸフレーム５はＸレール３，４に沿つて
右方へ摺動してＸ方向の位置決めを行う。次にＹ
モータ３０が正逆回転すると、送りねじ３１が回
転して送りナツト２２はＹ方向に摺動し、これと
ともに送りナツト２２に装着されたＹフレーム８
はＹ方向に摺動してＹ方向の位置決めを行う。こ
のようにしてハンモツク１２を目的地（バスタ
ブ、トイレ、車椅子等の載置位置）の上方まで移
動させて、モータ２０を逆回転させると、ハンモ
ツク１２は下降して目的地に達する。ここで人か
らハンモツク１２をはずす。その後再び人にハン
モツク１２を装着してモータ２０を正回転させる
と、ハンモツク１２は上昇し、この状態でＸモー
タ２６、Ｙモータ３０を逆回転させると、ハンモ
ツク１２はXY方向に移動してベツドの上方に達
する。そしてモータ２０を再び逆回転させると、
まずハンモツク１２の上端部が下端部よりも速く
下降し、ある程度の高さまで下降すると、上端部
と下端部が同時に下降してベツド上に帰還する。

以上のようにドラム１１は、ドラム１０と同径
の円筒部１１ａと、テーパ状拡径部１１ｂから形
成された異形ドラムであるため、ハンモツク１２
が上昇する際には、ハンモツク１２の上端部と下
端部は同時に巻き上げられるが、ある程度の高さ
に達すると上端部が下端部よりも速く巻き上げら
れる。またハンモツク１２が下降する際には、ハ
ンモツク１２の上端部が下端部よりも速く巻き戻
され、ある程度の高さに達した段階でその上端部
と下端部は同時に下降する。したがつてハンモツ
ク１２上の人を、その首部、腰部、脚部などに過
大な負担をかけずに楽に目的地まで移動させるこ
とができる。

（発明の効果） 以上説明したように本発明によれば、ハンモツ
ク１２を上昇させる際には、まずその上端部と下
端部を同速で巻き上げた後、上端部を下端部より
も速く上昇させ、このままの状態でハンモツク１
２をXY方向に移動させるので、ハンモツク１２
上の人体を、始めは水平に寝ている姿勢のままで
持ち上げ、途中から上半身を起立させながら持ち
上げることができ、且つこのように上半身を起立
させた状態で、目的箇所へ移動させることがで
き、またハンモツク１２を下降させる際には、始
めは上半身を後方に倒しながら下降させ、人体が
水平に寝ている姿勢になると、その姿勢のままベ
ツド上に着地できるので、人体に不要な肉体的負
担をかけずに、人体を楽な姿勢で昇降させたり、
目的箇所へ移動させることができる。またハンモ
ツク１２の上端部を懸吊する吊紐１５は、ドラム
１１に形成されたのガイド溝２３に案内されて巻
回されるので、ドラム１１はこの吊紐１５を規則
正しく巻回できる。

【図面の簡単な説明】

図は本発明の実施例を示すものであつて、第１
図は医療用ベツドの背面図、第２図は側面図、第
３図は部分平面図である。 １０，１１……巻上げドラム、１１ａ……円筒
部、１１ｂ……テーパ状拡径部、１２……ハンモ
ツク、１４，１５……吊紐、２０……巻上げドラ
ムの駆動用モータ、２３……吊紐のガイド溝。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ハンモツクと、このハンモツクの両端部を懸
   吊して、人体の頭部側と脚部側を巻き上げる吊紐
   と、各吊紐を巻き上げる巻上げドラムと、これら
   の巻上げドラムの駆動用モータとから成る懸吊部
   と、この懸吊部をXY方向に移動させる移動装置
   とを備えた医療用ベツド装置において、人体の脚
   部側を吊り上げる上記一方の巻上げドラムが円筒
   状ドラムから成るとともに、人体の頭部側を吊り
   上げる上記他方の巻上げドラムが、円筒部と、テ
   ーパ状拡径部から形成された異形ドラムから成
   り、かつこの異形ドラムに、吊紐のガイド溝を形
   成したことを特徴とする医療用ベツド装置。