JPH0340250B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の目的］ （産業上の利用分野） 本発明はプランジング型の動力伝達継手、特に
動作中に関節状に動くことができる継手に関す
る。さらに詳細にはこの継手をブーツによりシー
ルしたものであつて、ブーツとしてゴムのような
柔軟性のあるものを使用しないでシールしたもの
である。

（従来の技術） 変速機からその車の駆動される車輪へ動力を伝
える手段としてプランジング型等速駆動継手が自
動車工業において広く用いられている。内部駆動
継手としてプランジング駆動継手部材が用いら
れ、その外側に配置される非プランジング継手部
材である外部駆動継手部材と組み合わされて、駆
動輪と変速機との間に生じるあらゆる変化に対応
するように構成されている。この駆動継手は、ほ
こりその他の外部汚染物が入らないように、かつ
潤滑剤を保持するためにシールされている。

従来のこのシールは、ブーツと称される部材に
よつてなされるが、ゴムのような柔軟性のある部
材でひだをつけた可撓性のあるもので覆う構造と
していた。

この継手は、特に前輪駆動車に用いた場合、走
行中に生じる振動又は旋回に応じて入力軸と出力
軸とは関節状運動、すなわち揺動するとともに、
入力軸と出力軸とが直線的に移動することもあ
る。このような揺動及び直線動に従来のブーツは
柔軟性があるので、十分に対応することができ
た。

しかしながらこれらのブーツは非常に高価であ
り、しかも可撓性であるため継手への取り付けは
手作業で行なわなくてはならない。このようなこ
とは作業工程を自動化するうえにおいて妨げとな
り、コスト低減を図ることができなくなり、より
高価となる。

そのうえこのブーツは強度には弱いので路上の
物体に接触などして穴があけられることがあり、
さらには温度差によつて材質が劣化することがあ
る。

さらに、柔軟性があり、ひだをつけられている
ので、内部容積が大きくなり、そのため充填する
グリースの量が多くなり、かつ全体として小型に
することができない。

また、一般的にゴムのような柔軟性のある物質
はグリースに弱く劣化するのでより一層寿命が短
くなる。

（発明が解決しようとする課題） 本発明は上記従来の柔軟性のある部材を用いて
シールすることによる不都合を除いた、すなわ
ち、人手によらずシールすることができ、かつ路
上の物に接触しても十分な耐久性があり、小型
で、劣化せず、そのうえ長寿命のシールされた継
手を提供することを課題とするものである。

［発明の構成］ （課題を解決するための手段） 本発明は、円筒形の密封表面を有する外部継手
部材と、この外部継手と間隔を置いて設けられた
内部継手部材と、前記外部及び内部両継手部材の
いずれか一方が動力源からトルクを受け、そのト
ルクを他方の継手部材に伝える動力伝達部材とで
継手部分を構成させ、上記外部継手部材の円筒状
密封表面に密封状態で摺動自在に設けられる円筒
形端部を有する非可撓性材料で構成されたブーツ
部材と、前記内部継手部材に密封されるととも
に、その内部継手部材を揺動自在に前記ブーツ部
材の他方の端部に係合する揺動部材とからなるブ
ーツとを備えたことを特徴とするものである。

上記ブーツは非可撓性材料で構成されるが、な
るべくは熱硬化性物質のような半硬質の重合物質
で作ることが望ましい。

また、上記ブーツ部材の一端は上記のように外
部継手部材の筒形の密封表面を囲むようにして摺
動するが、外部継手部材の筒形の密封表面を覆
い、その表面に沿つて円筒状溝を有する溝部材を
外部継手に固定し、この筒溝内を前記ブーツ部材
の一端を摺動させるようにすることが望ましい。
また前述した筒形とは円筒に限るものではない。
他の形状であつてもよい。

前記ブーツ部材は、したがつて筒状の部分を有
するが、他方の端部は筒でない形状とされてい
る。例えば球の一部を構成する形状とすることが
望ましい。このブーツ部材の球形とされた端部に
も先端からその形状に沿つて溝を設け、一端側が
内部継手に密封されて固定され、他端側が前記ブ
ーツ部材の非筒形端部の形状と対応させた形状と
して揺動部材のその端部を前記溝に挿入して溝内
で自由に回転できるようにすることが望ましい。
上記溝を形成させて、他の部材の先端をこの溝に
挿入する場合は、いずれも密封状態で摺動、回転
等ができるようにする。

（作用） 例えば、外部継手部材にトルクが加わると伝達
部材によつてそのトルクが内部継手部材に伝達さ
れる。上記外部継手部材は円筒形の密封表面を有
し、ブーツのブーツ部材はその表面上を密封を保
つた状態で摺動できる。さらに内部継手を密封し
ている揺動部材がこのブーツ部材に揺動自在に係
合される。したがつて、外部及び内部継手部材は
ブーツによつて密封され、かつ、内部継手部材は
外部継手部材に対して軸方向に移動できると同時
に関節運動、すなわち揺動することもできる。

（実施例） 第１図はプランジング型等速駆動継手１１の１
実施例である。この駆動継手はフランジ装着型と
して示されており、乗物例えば自動車の変速機
（図示せず）に連結される周縁フランジ１３を通
じて入力部１２に動力を受け、出力端１５から延
びている出力軸１４にその動力を伝える。本発明
は上記周縁フランジ型に限定されるものではな
く、ステム装着等速駆動継手などにも利用するこ
とができるのはいうまでもない。

従来と同様に動力は入力端部１２から軸受保持
器１７の中に円周方向に並べられている複数（通
常は６個）の球１６によつて出力端部１５へ伝え
られる。

軸受保持器１７は球面状内面１９を有し、内部
継手部材２０の芯合せをするばかりでなく、長手
方向に保持されるように、その球面状内面１９は
内部継手部材２０の球面状外面１８に係合する。
軸受保持器１７はその一端に隣接して部分球面状
の外面部２１も有する。この外面部は外部継手部
材２３を介して円筒穴２２に係合する。

動作時には、入力端部１２と出力端部１５は、
それらの端部の間の正常な軸線方向の向き（第１
図）から任意の方向に折り曲がる関節状の動き、
すなわち揺動させられる。前輪駆動自動車の前輪
駆動用の内部駆動継手の場合には、その関節状運
動の大きさは各方向に20度のオーダーである。こ
の運動は例えばその自動車の路上走行による正常
な振動と衝撃及び旋回のときに生じる。また、プ
ランジング型の等速自在継手の駆動継手１１は、
出力端部１５に対する入力端部１２のある大きさ
の軸線方向の動きをも吸収できるようになつてい
なければならない。

駆動継手１１は精密機械加工された要素を含
む。それらの要素は潤滑しなければならず、かつ
ほこりその他の汚染物質によつて汚染されること
がないようにしなければならない。そのため本実
施例駆動継手１１はその内部を密封するブーツ２
４が設けられている。このブーツ２４は駆動継手
１１が受ける関節状の動き及びプランジングを密
閉を継続したまま行なえなければならない。ま
た、自動車に適用した場合にはその機能を長年に
わたつて維持できなければならない。

前記したように入力端部１２と出力端部１５の
間のかなり大きい揺動を吸収できなければならな
い。軸線方向の動きの吸収は、駆動継手１１の外
部手部材２３に円筒形外面２５を形成することに
よつて達成される。その円筒形外面２５は直円筒
形にすることもできれば、非円形の筒形、たとえ
ばクローバーの葉の形を断面を有する筒形とする
こともできる。また、軸線方向の動きは、ブーツ
２４の溝部材を構成する第１のブーツ部分２６
と、第２のブーツ部材２７とによつて吸収するこ
とができる。各ブーツ部分は適当な半硬質材料す
なわち非弾性材料で作られる。

溝部材２６は筒形の内部部材２８を有し、この
内部部材は外部継手の円筒形外面２５を密封する
ようにその円筒形外面を密着して囲む。この溝部
材２６は、内部部材２８を囲んでそれとともに筒
形外面２５に沿つた筒形溝３０を形成する外部部
材２９も有する。第２の半硬質ブーツ部材２７の
筒形端部３１は、溝部材２６の筒型溝３０の中に
滑りつつ密封するように受けられ、フランジ１３
が軸１４に対して軸線方向に動くときに、筒形溝
３０の中を前後に自由に動く。

ブーツ部材２７は、前記筒形端部３１から延び
て軸１４に密封するように取り付けられ、駆動継
手１１の密封を完結する手段３２を有する。本実
施例においては上記揺動手段となる手段３２は上
記ブーツ部材２７とは別部材であり、同様に半硬
質の材料で作られている。ブーツ部材２７の筒形
端部３１と反対側は非円筒形とされ、ここに密封
溝３３が設けられている。この密封溝３３の中に
それと相補形の断面を有する揺動部材３２の非円
筒形端部３４が滑りつつ密封するように受け入れ
られる。

駆動継手１１のフランジ１３が入力軸１４に対
して関節状に動いている間は、揺動部材３２の端
部３４がブーツ部材２７の密封溝３３の中を上下
（図面上）に動いて駆動継手１１の密封を維持す
る。

揺動部材３２の他端部に筒形部分３５を設け、
これを出力軸１４に取り付けて出力軸１４の密封
が行なわれる。この筒型部分３５は、入力軸１４
の一部を囲んで取り付けられている。軸１４の円
周方向リブ３７と筒形部分３５に設けられた円周
方向くぼみ３６の間できついしまりばめを行なわ
せるために、その円周方向リブ３７を受ける円周
方向くぼみ３６が筒形部分３５に設けられる。

前記のようにブーツを形成する各部材２６，２
７，２８は半硬質の非弾性から作られる。ガラス
含浸ナイロン（ポリイミド）を使用することが望
ましい。これは引つ張り強度が強く、高温と低温
に耐え、かつグリースに強い。

ブーツの各部材は、その表面の一部が継手内の
潤滑剤に接触しており、継手が動作しているとき
その遠心力で各ブーツ部材の表面が一様に付着す
るので、このブーツ２４は潤滑剤を保つている。
また、本ブーツ２６はひだつき可撓性の部分を含
まないので、その内部容積は減少し、したがつて
駆動継手に充填せねばならない潤滑剤の量も減少
する。さらにブーツ２４は半硬質であるので、そ
の寸法はかなり正確であり、その結果として自動
組立技術でブーツを組立てることができる。した
がつて組立コストを低減する。さらにブーツ２４
は、可撓性のものの場合に固定するために使用す
るバンドなどの保持手段を使用しないで駆動継手
１１の要素に組付けることもできる。これにより
材料費と組立費が一層低減される。

上記のように溝部材２６を用いることが望まし
いが、外部継手部材の外面が筒形で、その筒外面
の上を密封状態で前後に滑ることができるように
ブーツ部材２７が形成されていれば省略すること
もできる。そうする場合はブーツ部材２７の筒形
部分が外部継手部材の外面に対する良好な密封機
能を維持するために外部継手部材の筒形表面部分
の断面形状を円形とすることが望ましい。

第２図は他の実施例の等速駆動継手１１１であ
る。この駆動継手１１１は、プランジング密封ブ
ーツ１２４が異なるだけで第１図のものと特に変
るところはない。このブーツも当然駆動継手１１
１の入力部材１１３と出力部材１１４との間の軸
線方向の動き及び角運動を吸収できなければなら
ない。

必要があれば、駆動継手１１１の外部継手部材
１２３に筒型外面１２５を設けることによつてブ
ーツ１２４により軸線方向の動きを部分的に行な
わせることができる。その筒形外面１２５は直円
筒形とすることもできれば、クローバーの葉の形
を筒形とすることもできる。また、適当な半硬質
材料すなわち非可撓性重合材料で作られた２つの
部材１２６，１２７でブーツ１２４を構成させる
ことによつて軸線方向の動きを行なわせることが
できる。この部分は第１図の実施例と同じ構成と
されている。すなわち溝部材１２６は筒形の内部
部材１２８を有し、この内部部材は外部継手部材
の円筒形表面１２５を密封するようにその円筒形
表面を密着して囲む。この溝部材１２６は内部部
材１２８を囲んで、内部部材とともに筒形溝１３
０を形成する外部部材１２９を有する。ブーツ部
材１２７の筒形端部１３１は、溝部材１２６の筒
形溝１３０の中に密封状態で摺動できるように挿
入されている。したがつて、入力部材１１３が出
力部材１１４に対して軸線方向に前後に動くとき
に筒形溝１３０の中を軸線方向に前後に自由に動
く。

ブーツ部材１２７は、前記した筒形端部の反対
側は出力部材を密封したまま揺動させる手段１３
８を形成させられている。この手段１３８は端部
１３２に形成させた半径方向の密封溝１３３と、
この溝内を摺動しつつ密封する揺動部材１３４と
によつて構成されている。出力部材１１４が揺動
するときに揺動部材１３４は溝１３３内を摺動し
て密封状態を保つ。

揺動部材１３７は環状ビードの形状をしたもの
であり、中央を出力部材１１４に密封状態で固定
し、周辺部を前記密封溝１３３内で摺動自在に配
置している。この環状ビードの揺動部材１３７と
密封溝１３３とで本継手１１１の出力側の密封を
行なつている。

これらのブーツの各部材は前述の例と同様にガ
ラス含浸ナイロン（ポリイミド）の非可撓性材料
で作られる。この素材が引つ張り強度に強く、高
温、低温に耐え、グリースによる劣化に強いのは
前述の通りである。

以上、前輪駆動車用の等速駆動継手として用い
る例について本発明を説明したが、等速動作を求
められない場合には、等速動作特性を有しない自
在継手に本発明を用いることができ、かつ航空機
その他の機械プランジング自在継手にも用いるこ
とができる。

［発明の効果］ 上述したように本発明は、ブーツとして筒型端
部を有する構造とし、その筒型端部を外部継手部
材の筒型の表面を摺動するように構成しているの
で、入力端と出力端との直線方向へ変化に対応さ
せることができ、さらにブーツを構成するブーツ
部材の筒型端部の反対側端部を揺動部材で出力端
に揺動自在に係合させているので、入力端と出力
端との角度的な動きの変化にも対応することがで
きる。

さらに、本発明は外部継手部材の外側に筒状の
溝を形成させ、その溝の中にブーツ部材の先端部
を摺動自在に収納させたので、継手部材が高速で
回転しても遠心力によつてブーツの密封が破れる
などの遠心力による悪影響をなくすことができ
る。

さらに本発明は、グリースなどに劣化しやすい
部材を一切使用しないので、長寿命とすることが
できる。これは自動車に使用するうえできわめて
有利である。

しかも本発明に使用したブーツは非可撓性の部
材を用いて密封しているので、小型にすることが
でき、グリースの使用量を少なくして、安価とす
ることができる。そのうえ材料費が安く、しかも
機械的な組立てを行なうことができるのでコスト
低減に一層役立てることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の１実施例のプランジング等速
駆動継手の一部断面側面図、第２図は他の実施例
のプランジング等速駆動継手の一部断面側面図で
ある。 １１，１１１……等速駆動継手、２０……内部
継手部材、２３……外部継手部材、２４，１２４
……ブーツ、２６，１２６……溝部材、２７，１
２７……ブーツ部材、３２，１３２……揺動部
材、２８，１２８……内部部材、２９……外部部
材、３０，３３，１３０，１３３……溝。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 機械的な動力伝達継手であつて、 筒形の密封表面を有する外部継手部材と、 前記外部継手部材と間隔を置いて設けられた内
   部継手部材と、 前記外部及び内部両継手部材のいずれか一方が
   動力源からトルクを受け、そのトルクを他方の継
   手部材に伝える動力伝達部材と、 前記外部継手部材の筒型密封表面を密封状態で
   覆い、その密封表面に沿つて筒状溝３０を形成さ
   せた溝部材２６を有するとともに、筒状に形成さ
   れた端部が前記筒状溝に筒の長手方向へ摺動自在
   に挿入された非可撓性材料で構成されたブーツ部
   材２８を有し、さらに一端側が前記内部継手部材
   にこれを密封するように固定され、他端が、前記
   内部継手部材を角度的に任意の方向に折れ曲げ自
   在となるように前記ブーツ部材の他方の端部に係
   合される揺動部材３２を設けたブーツ２４と、 を備えることを特徴とする機械的動力伝達継手。 ２ 前記筒形の密封表面の断面形状が円である特
   許請求の範囲第１項記載の機械的動力伝達継手。 ３ 前記筒型の密封表面の断面形状が円でない他
   の形状である特許請求の範囲第１項記載の機械的
   動力伝達継手。 ４ ブーツ部材の他端が非筒形とされ、その非筒
   形の端部に溝を形成させる一方、前記揺動部材の
   ブーツ部材への係合端部を上記非筒形端部の形状
   と対応させ、その端部を前記溝に密封状態で折れ
   曲げ自在に挿入した特許請求の範囲第１項記載の
   機械的動力伝達継手。 ５ 前記ブーツ部材の溝を設けた端部の形状を球
   形の一部を構成する形状とした特許請求の範囲第
   １項記載の機械的動力伝達継手。 ６ 前記ブーツ部材の溝が前記揺動部材のを挿入
   して余裕のある深さである特許請求の範囲第５項
   記載の機械的動力伝達継手。 ７ 前記機械的動力伝達継手が等速型自在継手で
   ある特許請求の範囲第１項記載の機械的動力伝達
   継手。 ８ 前記機械的動力伝達継手が前輪駆動自動車の
   前輪駆動継手である特許請求の範囲第７項記載の
   機械的動力伝達継手。 ９ 前記前輪駆動継手の入力軸と出力軸とは正常
   な動作中に相対的に各方向に少なくとも20度折れ
   曲がることができる特許請求の範囲第８項記載の
   機械的動力伝達継手。 １０ ブーツ内に充填される潤滑剤がブーツの各
   部材の内面の少なくとも一部に接触して、一の部
   材を他の部材に対して潤滑された状態でそれぞれ
   相対的に移動する特許請求の範囲第９項記載の機
   械的動力伝達継手。