JPH0325654B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、回転振動吸収可能なクラツチデイス
ク、特にゴム弾性体を振動吸収のための弾性部材
として用いたクラツチデイスクに関する。

［従来の技術］ 従来一般に使用されているクラツチデイスクは
多段の振動吸収特性を出すために異なつたバネ係
数を有するバネを組合せて各段毎の捩れ特性を出
すように構成しているが、この方式は機構が複雑
化すると共に各段毎の捩れ特性は線型に止まると
いう問題があり、より簡単な構成でかつ所望の振
動吸収特性（一般に非線型捩り特性として与えら
れる）を備えたクラツチデイスクが期待されてい
た。

ゴム弾性体を用いたクラツチデイスクは、ハブ
と、ハブに対して一定角度相対回転可能に配され
外周部にフエーシングを備えた内周部にゴム弾性
部材を回転固定的に備えたドライブプレートとを
有し、該相対回転範囲内において前記ゴム弾性部
材を介してハブとドライブプレート間の回転トル
ク伝達を行なうと共に振動吸収を行なう形式のも
のがある。

例えば、ゴム弾性体をハブとドライブプレート
間に介在させて所定角度範囲内の捩れを行なうデ
イスクプレートは米国特許第3385082号、第
3148756号、第2556624号に開示されているが、こ
れらの米国特許に開示のクラツチデイスクは、い
ずれもゴム弾性部材による１段の捩れ特性しか有
しないものである。

［発明が解決しようとする課題］ ゴム弾性部材による捩れ特性は、捩れ角度に対
応する捩れトルク特性（以下捩れ特性と称する）
線図において一般に非線型特性を示し、従来慣用
のコイルスプリング等のバネを用いた場合の線型
特性に比し振動吸収性の点では一般的に優れてい
ると言える。しかしながら、ゴム弾性部材を１段
式で用いることによつては、クラツチデイスクと
して望ましい２つの特性、即ち高速回転時ないし
は空転時や制動時に必要な低トルク微小振動の吸
収と低高速トルク時における大きな振動の吸収と
対応する２つの捩れ特性を満足することはできな
かつた。

そのため、例えば実公昭第45−12970号公報に
開示の如く、ハブとハブの外周に配したフランジ
部との間の所定角度内の捩れを両者間に介在させ
たゴム弾性体を介して行なうことにより第１段の
捩れ特性を求め、さらに従来慣用のバネを介した
第２段の捩れ特性を該フランジ部と主プレート
（ドライブプレート）との間に配したバネにより
得ている。しかしながらこの構成によつては第２
段の捩れ特性は依然として線型に止まり望ましい
非線型の捩れ特性は得ることができず、また従来
のバネを介して第２段以降の捩れ特性を得るた
め、従来同様複雑な構成とならざるを得ないとい
う欠点がある。

本発明は、上述の如き従来技術の欠点を解消
し、ゴム弾性部材の非線型捩れ特性を有効に作用
させ、クラツチデイスクとして望ましい多段の捩
れ特性を備え、かつ、簡単な構造のクラツチデイ
スクを提供することを目的とする。

［課題の解決手段及び作用］ 即ち、本発明は冒頭に掲記の形成のクラツチデ
イスクにおいて、前記ドライブプレートは、第１
段ゴム弾性部材を介して（即ち相対回転可能に）
ハブと回転結合されると共に、ハブとの間に第１
段相対回転角度範囲内において相対回転可能に配
されかつ第１段相対回転角度範囲を越える第２段
相対回転角度範囲内において第２のゴム弾性部材
を介して（即ち相対回転可能に）回転結合可能と
され、第１段ゴム弾性部材により第１段相対回転
角度範囲内において微小振動を吸収すると共に第
２段ゴム弾性部材の付加的作用を介して第２段相
対回転角度範囲内の相対的に大きな回転トルク振
動を吸収可能とし少くとも２段の非線型捩り特性
を有することによつて前記課題を達成する。

即ち、本願の第一発明によれば、上述の形式の
クラツチデイスクにおいて、 前記ドライブプレートは、前記ドライブプレー
トに固定された補助プレートおよび前記ハブにカ
ラーを介して一体に回転固定される第１のゴム弾
性部材を介してハブと相対回転可能に回転結合さ
れると共に、 前記ドライブプレートは、ハブに対して第１段
相対回転角度範囲内において相対回転可能に配さ
れかつ第１段相対回転角度範囲を越える角度範囲
内において該ハブと一体回転可能に前記ハブの外
周に配されたサブプレートおよびこのサブプレー
トと前記補助プレートの間に介在された第２のゴ
ム弾性部材を介してハブと回転結合可能とされ、 前記ハブと前記サブプレートの中心孔部に前記
第１段相対回転角度の遊び角をもつて回転結合可
能な当接面が配設されることにより 少くとも２段の非線型捩り特性を達成する。

即ち、サブプレートは、所定範囲でハブに対し
相対回転可能かつそれを越えるとハブと一体回転
する様配設される。

さらに、本願の第２発明によれば、第１発明の
構成（サブプレート＝第一サブプレートとする）
に加え、さらに前記ドライブプレートは、前記ハ
ブに対して第１段相対回転角度範囲及びこれを越
える第２段相対回転角度範囲以内において相対回
転可能に配されかつ第２段相対回転角度を越える
角度範囲内において該ハブと一体回転可能に前記
ハブの外周に配された第２サブプレート及びこの
第２サブプレートと前記補助プレートの間に介在
された第３のゴム弾性部材を介してハブと回転結
合可能とされ、 前記ハブと第２サブプレートの中心孔部に前記
第１段及び第２段相対回転角度範囲の遊び角をも
つて回転結合可能な当接面が配設されることによ
り、 少なくとも３段の非線型捩り特性を達成する。

［実施例］ 以下本発明について図面に示す実施例を基に詳
述する。第１〜３図に示すクラツチデイスク１は
中心に軸（図示しない）と回転固定されたハブ２
と、ハブ２に対し所定角度範囲内で回転可能に係
合され、外周部にフエーシング４を備えたデイス
ク状のドライブプレート３と、ドライブプレート
３に固定ピン６により固定されたカツプ状の補助
プレート５と、該補助プレート５のカツプ部５ａ
内外周面に固着された夫々リング状の第１、第２
のゴム弾性部材７，８と、第１ゴム弾性部材７の
内周に固着されハブ２の外周にその切欠き面２ａ
に対応して形状係合してハブ２と回転固定された
カラー９と、第２ゴム弾性部材８の外周にカツプ
部１０ａの内周面を固着され、かつ、ハブ２の外
周と規定角度α（逆向きにはβ）の相対回転遊び
をもつて係合するカツプ状のサブプレート１０と
から基本的に構成される。ドライブプレート３は
ハブ２との間に所定角度γ（逆向きにはγ′）の回
転遊びをもつて以後回転固定されるよう公知の回
転ストツパ機構（図示しない）を介して係合して
いる。

第１、第２のゴム弾性部材７，８と、補助プレ
ート５のカツプ部５ａ、サブプレート１０のカツ
プ部１０ａ、或いはカラー９の外周との間の固着
は、ゴムの加硫焼付け、接着、摩擦係合等の公知
の手段によつて行なうことができる。

サブプレート１０の中心孔１０ｃには、ハブ２
の外周切欠き面２ａ，２a′に対応した角度位置に
中心孔内部へ突出した一対の当接面としての斜面
１０ｄ，１０ｅ及び１０d′，１０e′が形成され、
斜面１０ｅ，１０e′はサブプレート１０が矢視Ａ
方向へ角度α回動したときハブ２の切欠き面２
ａ，２a′に当接して第１段（後述の捩り特性線
図、第４図）の終点角度位置αを規定する。斜面
１０ｄ，１０d′は同様にして、矢視Ａの逆向きに
サブプレート１０が角度β回動したときにハブ切
欠き面２ａ，２a′に当接して第１段（逆転）の終
点角度位置βを規定する。この斜面による構成は
大きな当接面と大きな遊び角を取るのに好都合で
ある。なお、当接面はハブ側とサブプレート側の
間に介在すればよく、ハブ側部材としてハブに固
定したカラー状体を用いてもよく、凸部関係を逆
としても、所定の遊び角をこえたとき当接して一
体回転するものであればよい。

サブプレート１０の軸方向外側にはサブプレー
トの軸方向固定リング１１がハブ２の外周に固定
（打込、ピン止めその他公知の手段−図示しない
−により）され、サブプレート１０のハブ２から
の抜け止めをなしている。

第１、第２ゴム弾性部材７，８は夫々公知のゴ
ム弾性部材の中から、目的に応じて選択し例えば
耐熱性があり温度による剛性の変化が少ないもの
でSBR（スチレンブタジエン系ゴム）、NR（ニト
リルゴム）等を用いることができる。第１、第２
ゴム弾性部材は、上述のゴム材料等から肉厚、形
状、剛性等を適宜選択して夫々に適当な特性を生
ずるようにすることができる。

以上の実施例においては、夫々カツプ状の補助
プレート５、及びサブプレート１０を用いて、リ
ング状の第１、第２ゴム弾性部材７，８の内、外
周面において相互に固着したが、この配置はクラ
ツチデイスクの軸方向の幅を小さくできる利点が
ある。この他の結合の仕方、例えば、第５図に図
示の通りカラー９′を円板状として第１ゴム弾性
部材７をカラー９′の円板部９ａと補助プレート
５′の円板部５b′との間に介在させ固着させるこ
ともできる。また同様にして第２ゴム弾性部材８
は、サブプレート１０′の円板部１０b′と補助プ
レート５′の円板部５ｃ（第１ゴム弾性部材７の外
方）との間に介在させて相互間に固着せしめるこ
ともできる（なおこの場合補助プレート５′は省
略することもできるが加硫焼付けを施す場合、補
助プレートを用いることが加工上有利である）。

また、軸方向の幅が許容し、半径方向の幅に限
度がある場合には、第１と第２のゴム弾性部材は
軸方向に並列して配することもでき、ドライブプ
レート３の両側に配することもできる。また、上
述の第１、第２ゴム弾性部材７，８の配置の各種
の組合せから成る配置も目的に応じて選択するこ
とができ、セグメント状、リブ形状又はこれらの
組合せともできる。

さらに、第１と第２のゴム弾性部材７，８と補
助プレート５、サブプレート１０及びカラー９
（又はこれらに代わる均等機能を有する部材）と
のセツトは、単に１セツトのみならず、複数セツ
ト用いることも当然に本発明に属する。

第６図には、さらに、本願の第２発明に係る別
の実施態様を示し、これは付加的に第３段目の特
性線図領域を与えるため、第３ゴム弾性部材１２
をさらに付加的に補助プレート５と第２サブプレ
ート１３との間に介在固着せしめたものである。
第２サブプレート１３はハブ２の切欠き面２ａ，
２a′との間に正方向α′、逆方向β′の相対回転角度
をもつて係合される（α＜α′，｜β｜＜｜β′｜）。
これによつて、第４図特性線図に点線をもつて示
す第３段捩り特性がえられる。

同様にしてさらに第４段以上の多段特性線図を
形成することは、本発明によれば第１段、第２段
（或いはさらに第３段）ゴム弾性部材を基本とす
ることにより容易に可能である。それによつて構
造が複雑化することは、従来の多数のバネによる
場合と異つてほとんどないという利点がある。

第４図の捩れ特性線図について説明すると、実
線で示す曲線が第１の実施例（第１〜３図）に
対応するもので正方向α、逆方向βの捩れ角の範
囲が第１段の微小振動吸収特性、以降正方向γ、
逆方向γ′に達するまでが第２段の高トルクの振動
に対する吸収特性を示す。第５図に示す実施例に
よつても第１の実施例（第１〜３図）と同様の特
性をうることができる。曲線のトルクＴ方向の
幅はヒステリシス幅を示す。

次に、正方向捩れ角α′、逆方向β′から正γ、逆
γ′に至るまでの点線で示す特性曲線は、第６図
に示す実施例によるもので、一例としてα，βお
よびγ，γ′を第１、第２の実施例と同一にとつた
場合における第３段目の特性曲線を示す。これに
よればさらに非線型度の高い捩れ特性を設定する
ことができる。

なお、一点鎖線は、従来のゴム弾性部材１段
の場合における、本発明の第１段のゴム弾性部材
と同じ素材を用いたときの仮想捩れ特性曲線を示
す。

以上のいずれの態様においてもゴム弾性部材は
単なる伸縮変形（この場合バネと本質上大差がな
い）を及ぼされる状態で用いられるのではなく、
剪断変形又は回転捩り変形の状態で用いられるこ
とにより、非線型特性を生ずるものである。

［発明の効果］ 即ち、第１段用ゴム弾性部材によるドライブプ
レートとハブ間の常時の回転結合、及び第１段相
対回転角度範囲では遊び角によりハブと相対回転
自在の第２段用ゴム弾性部材による第２段相対回
転角度範囲におけるドライブプレートとハブ間の
回転結合の達成により、少なくとも２段の非線型
捩れ特性が達成される。

以上詳述の通り、本発明によれば極めて簡単な
構造により、クラツチデイスクに望まれる少なく
とも２段の非線型捩れ特性を備えたクラツチデイ
スクを得ることができ、ゴム弾性部材は３段以上
に組合せて構成することも容易である。組付けも
従来のバネにより多段の捩り特性を備えたものと
比し部材数、部材及び組付けの精度等において格
段に簡単となり、コスト低減にも寄与すること大
である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す軸方向断面図
（第２図−矢視）、第２図は第１図−矢視
部分断面図、第３図は第１図矢視方向平面図
（部分切開）、第４図は捩れ角θ（横軸）と捩れト
ルクＴ（縦軸）との関係を示す捩れ特性線図、第
５図は第２の実施例の部分断面図、第６図は他の
実施例の部分概略図を、夫々示す。 １……クラツチデイスク、２……ハブ、３……
ドライプレート、５，５′……補助プレート、７，
７′……第１ゴム弾性部材、８，８′……第２ゴム
弾性部材、９，９′……カラー、１０，１０′……
（第１）サブプレート、１２……第３ゴム弾性部
材、１３……第２サブプレート。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ハブと、ハブに対して一定角度相対回転可能
   に配され外周部にフエーシングを備え内周部にゴ
   ム弾性部材を回転固定的に備えたドライブプレー
   トとを有し、前記相対回転範囲内において前記ゴ
   ム弾性部材を介してハブとドライブプレート間の
   回転トルク伝達を行なうと共に振動吸収を行なう
   形式のクラツチデイスクにおいて、 前記ドライブプレートは、前記ドライブプレー
   トに固定された補助プレートおよび前記ハブにカ
   ラーを介して一体に回転固定される第１のゴム弾
   性部材を介してハブと相対回転可能に回転結合さ
   れると共に 前記ドライブプレートは、ハブに対して第１段
   相対回転角度範囲内において相対回転可能に配さ
   れかつ第１段相対回転角度範囲を越える角度範囲
   内において該ハブと一体回転可能に前記ハブの外
   周に配されたサブプレートおよびこのサブプレー
   トと前記補助プレートの間に介在された第２のゴ
   ム弾性部材を介してハブと回転結合可能とされ、 前記ハブ側と前記サブプレートの中心孔部の間
   に前記第１段相対回転角度の遊び角をもつて回転
   結合可能な当接面が配設され、 少くとも２段の非線型捩り特性を有することを
   特徴とするクラツチデイスク。 ２ ハブと、ハブに対して一定角度相対回転可能
   に配され外周部にフエーシングを備え内周部にゴ
   ム弾性部材を回転固定的に備えたドライブプレー
   トとを有し、前記相対回転範囲内において前記ゴ
   ム弾性部材を介してハブとドライブプレート間の
   回転トルク伝達を行なうと共に振動吸収を行なう
   形式のクラツチデイスクにおいて、 前記ドライブプレートは、前記ドライブプレー
   トに固定された補助プレートおよび前記ハブにカ
   ラーを介して一体に回転固定される第１のゴム弾
   性部材を介してハブと相対回転可能に回転結合さ
   れると共に、 前記ドライブプレートは、ハブに対して第１段
   相対回転角度範囲内において相対回転可能に配さ
   れかつ第１段相対回転角度範囲を越える角度範囲
   内において該ハブと一体回転可能に前記ハブの外
   周に配された第１サブプレートおよびこの第１サ
   ブプレートと前記補助プレートの間に介在された
   第２のゴム弾性部材を介してハブと回転結合可能
   とされ、 前記ハブ側と第１サブプレートの中心孔部の間
   に前記第１段相対回転角度の遊び角をもつて回転
   結合可能な当接面が配設され、 さらに、前記ドライブプレートは、前記ハブに
   対して第１段相対回転角度範囲及びこれを越える
   第２段相対回転角度範囲以内において相対回転可
   能に配されかつ第２段相対回転角度を越える角度
   範囲内において該ハブと一体回転可能に前記ハブ
   の外周に配された第２サブプレート及びこの第２
   サブプレートと前記補助プレートの間に介在され
   た第３のゴム弾性部材を介してハブと回転結合可
   能とされ、 前記ハブ側と第２サブプレートの中心孔部の間
   に前記第１段及び第２段相対回転角度範囲の遊び
   角をもつて回転結合可能な当接面が配設され、 少くとも３段の非線型捩り特性を有することを
   特徴とするクラツチデイスク。