JPH026270Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は車両用摩擦クラツチのクラツチデイス
クに関し、特にその捩れ角変位が大きくとれるよ
うに改良したクラツチデイスクに関するものであ
る。

（従来技術） これまでのクラツチデイスクとしては、クラツ
チハブのフランジとデイスクプレート及びサブデ
イスクプレートとの間に、圧縮コイルスプリング
やゴムなどの弾性体を部分的に介在させ、クラツ
チハブと両デイスクプレートとが相対的に角変位
したときにこれらの弾性体を圧縮させるように構
成したシヤータイプのものが一般的であつた。し
かしながら、このシヤータイプのクラツチデイス
クは、その捩れ特性が第３図の点線で示すＡ特性
となり、クラツチハブと両デイスクプレートとの
相対的な捩れ角変位の初期において捩れトルクが
急激な立上りをみせる。すなわち、このタイプの
特性は捩れ角変位の初期に必要とされる低い捩れ
剛性の範囲が少く、クラツチデイスクの特性とし
て好ましくない。

また、近年、クラツチハブと両デイスクプレー
トとの相対的な捩れ角を大きく設定し、クラツチ
ハブ側に固定したピンと両デイスクプレートを結
合したピンとをゴム等の素材よりなる弾性リング
で結合した構造のクラツチデイスクが提供されて
いる。この形式のクラツチデイスクによれば、捩
れ角変位の初期において捩れ剛性の低い範囲を広
く設定することができる。ところがその反面、ク
ラツチハブと両デイスクプレートとの相対的な角
変位により、上記の弾性リングは引張力を受けて
伸長及び収縮を繰り返し、これによつて上記の各
ピン（通常はピン外周のブツシユ）と弾性リング
との間に比較的大きな摩擦が生じる。この結果、
これらの接触部分に摩擦熱が発生し、弾性リング
の早期劣化を招くおそれがあつた。

（考案の目的） 本考案の目的は、クラツチハブと両デイスクプ
レートとの相対的な角変位を大きく設定すること
ができ、かつ捩れ角変位の初期における低捩れ剛
性の範囲を広くでき、さらには耐久性に優れたク
ラツチデイスクを提供することである。

（考案の構成） 本考案の上記目的は、クラツチハブに固定され
たピンと、前記両デイスクプレートを相互に結合
したピンとが半径方向にずらせて配置されている
とともに、これらのピンは円周方向に連続する円
板状の弾性体によつて連結され、しかもこの弾性
体には前記クラツチハブに固定されたピンの近傍
で、かつ前記両デイスクプレートを結合している
ピンに対し半径方向にずれた位置において中空部
が形成されていることで達成される。

（実施例） 以下、本考案の構成を、図面で示す実施例に従
つて説明する。

クラツチデイスクを一部破断平面で表した第１
図および第１図の−線断面図を表した第２図
において、クラツチハブ１には一対のフランジ１
ａ，１ｂが一体に形成されており、両フランジ１
ａ，１ｂの間は環状溝２となつている。各フラン
ジ１ａ，１ｂの外側にはデイスクプレート３及び
サブデイスクプレート４がそれぞれ配設されてい
て、両デイスクプレート３，４はこれらの円周方
向に関する複数個所においてピン６で相互に結合
されている。なお、これら各ピン６の外周には鍔
付ブツシユ７が組みつけられている。

また、上記クラツチハブ１のフランジ１ａ，１
ｂに対しては、二種類のピン１１，１２がその円
周方向に沿つて交互に配設されている。これら各
ピン１１，１２のうちの一方のピン１２はそれぞ
れの端部が延長され、両デイスクプレート３，４
に形成された円弧状のストツパー孔１３内に位置
している。つまり、クラツチハブ１と両デイスク
プレート３，４とは上記のピン１２とストツパー
孔１３との円周方向に関する間隙の範囲で相対回
転可能となつている。なお、上記の各ピン１１，
１２の外周にも鍔付ブツシユ１４がそれぞれ組み
つけられている。

上記クラツチハブ１のフランジ１ａ，１ｂと両
デイスクプレート３，４との間には周知のように
板間摩擦材５が介在されている。また、上記デイ
スクプレート３の外周にはデイスクスプリング８
が固定され、かつデイスクスプリング８の両側に
はフエーシング９が固定されている。

さて、上記クラツチハブ１のフランジ１ａ，１
ｂと両デイスクプレート３，４との間にはクラツ
チハブ１とフエーシング９との間に捩れトルク
（捩れ剛性）を決定するための弾性体１５が介在
されている。すなわち、この弾性体１５は中心孔
を有する円板状に形成されていて、その内周寄り
部分は両フランジ１ａ，１ｂ間の前記環状溝２内
に嵌合されており、かつ外周寄りの部分は両デイ
スクプレート３，４の間に位置している。そして
この円板状の弾性体１５により、両デイスクプレ
ート３，４を結合している各ピン６のブツシユ７
外周とフランジ１ａ，１ｂに固定されている二種
類の各ピン１１，１２のブツシユ１４外周とが互
いに連結されている。しかも、弾性体１５には、
クラツチハブ１と両デイスクプレート３，４との
相対的な角変位の初期における低捩れ剛性の範囲
を大きくするために複数個の中空部１６が形成さ
れている。また、弾性体１５と各ピン６，１１，
１２のブツシユ７，１４外周とを例えば焼付固定
にして、この弾性体１５とブツシユ７，１４との
間の摩擦摺動を避けている。

上記構成のクラツチデイスクにおいて、そのフ
エーシング９側とクラツチハブ１側との間のトル
ク伝達は、前記の両デイスクプレート３，４を結
合しているピン６、円板状の弾性体１５、及びク
ラツチハブ１のフランジ１ａ，１ｂに固定されて
いるピン１１，１２を通じて行われる。そして、
このトルク伝達時において両デイスクプレート
３，４とクラツチハブ１のフランジ１ａ，１ｂと
は上記の弾性体１５を変形させつつ、相対的な角
変位が生じる。この角変位の範囲はクラツチハブ
１のフランジ１ａ，１ｂに固定されている一方の
ピン１２端部が前記ストツパー孔１３の内周に当
接するまでの間であつて、その当接後におけるク
ラツチハブ１のフランジ１ａ，１ｂと両デイスク
プレート３，４とはストツパートルク状態となつ
て共に回転する。

このクラツチハブ１側と両デイスクプレート
３，４側との相対的な角変位の所期においては、
弾性体１５に形成した前記の中空部１６によつて
クラツチデイスクとしての低捩れ剛性の範囲が広
くなる。また、本実施例のクラツチデイスクは従
来のシユアータイプのものと比較して上記の相対
的な角変位量が大きくなる。このクラツチデイス
クにおける捩れ特性を第３図の実線Ｂで表してい
る。

なお、上記弾性体１５の中空部１６に代えて、
あるいはこの中空部１６に加えて異なる材質の弾
性体を部分的に組み込むことにより、クラツチデ
イスクの捩れ特性を徴妙に調整することが可能と
なる。また、前記の各ピン６，１１，１２とそれ
ぞれのブツシユ７，１４との間にオイル封入形式
のベアリングを介在させ、これら相互間の動きが
円滑に行われるようにしてもよい。

（考案の効果） 本考案は、クラツハブと両デイスクプレートと
の間に円周方向に連続する円板状の弾性体を設け
たことにより、クラツハブと両デイスクプレート
との相対的な捩れ角の変位量を大きくとることが
できるとともに、この弾性体には前記クラツチハ
ブに固定されたピンの近傍で、かつ前記両デイス
クプレートを結合しているピンに対し半径方向に
ずれた位置において中空部が形成されているた
め、この中空部はクラツハブと両デイスクプレー
トとの僅かな角変位ではつぶされず、大きい角変
位の領域において前記弾性体を低剛性に保つべく
機能する。したがつてクラツチハブと両デイスク
プレートとの角変位初期において要求される低捩
れ剛性の範囲が広くなるといつた利点を有する。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示し、第１図はクラツ
チデイスクの一部破断平面図、第２図は第１図の
−線断面図、第３図はクラツチデイスクの捩
れ特性を従来タイプのものとの比較によつて表し
た特性図である。 １……クラツチハブ、３……デイスクプレー
ト、４……サブデイスクプレート、６，１１，１
２……ピン、１５……円板状の弾性体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クラツチハブとデイスクプレート及びサブデイ
   スクプレーとを一定の回転角範囲で相対回転可能
   に組みつけてなるクラツチデイスクであつて、前
   記クラツチハブに固定されたピンと、前記両デイ
   スクプレートを相互に結合したピンとが半径方向
   にずらせて配置されているとともに、これらのピ
   ンは円周方向に連続する円板状の弾性体によつて
   連結され、しかもこの弾性体には前記クラツチハ
   ブに固定されたピンの近傍で、かつ前記両デイス
   クプレートを結合しているピンに対し半径方向に
   ずれた位置において中空部が形成されていること
   を特徴とするクラツチデイスク。