JPH029148Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 開示技術は自動車のエンジンルームにエンジン
を取り付ける防振ゴム装置の動作特性を良くする
構造技術の分野に属する。

〈要旨の概要〉 而して、この考案は自動車のエンジンルームの
シヤシにエンジンを取り付ける複合エンジンマウ
ンテイングタイプの防振ゴム装置において、その
下部のロアプレートを中央の取付ボルトを介して
シヤシに取り付け、一方、エンジンは上部のアツ
パプレートの取付ボルトに取り付け、該ロアプレ
ートとアツパプレート間に設けた密閉環状弾性材
の内部の密封ダンパ液がアツパプレート下部の隔
壁のオリフイスを介して上ダンパ液室と下ダンパ
液室間に流通して低周波振動を吸収し、又、上記
密閉環状弾性材が高周波振動を吸収するようにさ
れ、而して、更に上記ダンパ液中にマスダンパを
設けて高周波振動に対して減衰係数を小さくする
ように作用するべくした防振ゴム装置に関する考
案であり、特に、上記下ダンパ室に上記隔壁の周
縁部に一体的に取り付けされて凹状に下向きに形
成され、下部に流通孔を形成された通液板を設け
て該流通孔に臨まされて上記マスダンパが収容さ
れ、該通液板の壁面とマスダンパの周側面とでリ
ング状の間隙を形成し、而して、上記通液板と上
記隔壁との間に設けた前記マスダンパが該通液板
の圧縮バネと該隔壁の引つ張りバネの少なくとも
一方により支持されて弾性的な変位が自在にさ
れ、リング状の間隙を介して高周波領域において
は移動位相を逆にされて変位し、減衰係数を小さ
く、又、動バネ定数を小さくするようにされ、ダ
ンパ液が隔壁に設けたオリフイスを流通する際の
低周波領域に於ては位相を同じくするようにして
減衰係数を大きくするようにされた防振ゴム装置
に係る考案である。

〈従来技術〉 周知の如く自動車のエンジンはエンジンルーム
に取り付けられて載架される場合に剛的に取り付
けると、エンジン自体の振動、或は、走行中の振
動がエンジンは勿論、車体に対する振動騒音等の
影響を及ぼすことが知られている。

而して、その振動騒音の中には次の如きものが
ある。

即ち、極めて低周波のものにエンジン始動時の
クランキング振動が有り、又、通常走行中のアイ
ドル振動がある。

これらの振動は一般に低周波であるが、又、通
常走行の路面走行によつて生ずる振動に所謂エン
ジンシエークが、更に、高速道路での走行中に車
室内に生ずる不愉快なこもり音や更に相当なスピ
ードで走行する場合の透過音等の高周波騒音の問
題がある。

当然これらの振動や騒音に対してこれらをなく
するような対策は種々講じられているが、前者の
クランキング振動、アイドル振動、エンジンシエ
ーク等の低周波振動、中周波振動による振動と、
後者のこもり音透過音等の高周波振動による騒音
は互いに特性が相反するために全てを同時に解消
することはなかなか困難であつて、一般には車の
特性に対して前者を減衰させたり、後者を減衰さ
せたりするようにされている。

その内、ゴム等の密閉環状弾性材を用いると共
にロングライフクーラント等のダンパ液を密封し
てオリフイスを介しダンパ効果をもたせるように
した所謂複合エンジンマウンテイングタイプの防
振ゴム装置が案出採用されるようになつてきた。

この内、ゴム等の密閉環状弾性材については、
材料選定の自由度があり、サイズも選択できる
が、ダンパ液についてはこれが非圧縮性液である
ために、その減衰係数については本来的には選択
する幅が無い不具合がある。

而して、ダンパ液については高周波領域におい
て減衰係数を小さくし、低周波領域においては減
衰係数を大きくすることが動作特性上好ましいこ
とが分つている。

そのために、例えば、特開昭57−26014号公報
に記載されているようなマスダンパをダンパ液中
に設けたものが開発採用されるようになつてき
た。

さりながら、該種マスダンパを内装した防振ゴ
ム装置においては該マスダンパを支持するに弾性
膜体をその外側の密閉環状弾性材に支持させてい
るために該密閉環状弾性材の動作特性に影響を与
えることになり、その調整が極めて煩瑣である欠
点があり、又、製作上該マスダンパの密閉環状弾
性材取付が著るしく難しいという点があつた。

そして、その工数が多いために結果的にコスト
高になるという不利点もあつた。

〈考案の目的〉 この考案の目的は上述従来技術に基づくマスダ
ンパを有する複合エンジンマウンテイングタイプ
の防振ゴム装置の問題点を解決すべき技術的課題
とし、マスダンパの収容によつても密閉環状弾性
材の特性を何等阻害することなく高周波領域での
振動を防止し、又、調整も不要であつてマスダン
パの作動を介してダンパ液に対して正逆両位相を
持たせるようにし、ダンパ液の低周波領域でのオ
リフイス流過に最適な状態を現出して動作特性が
向上することは勿論、その製作が極めてしやす
く、更にコンパクト性が保てるようにして自動車
産業におけるエンジン載架技術利用分野に益する
優れた防振ゴム装置を提供せんとするものであ
る。

〈課題を解決するための手段〉 上述目的に沿い先述実用新案登録請求の範囲を
要旨とするこの考案の構成は、前述問題点を解決
するために、シヤシ取付用口アプレートとエンジ
ン取付用アツパプレートとの間に介設固定された
密閉環状弾性材の内部にダイヤフラム下部でダン
パ液室が形成されており該ダンパ液室を上ダンパ
液室と下ダンパ液室とを郭成する隔壁がオリフイ
スを有しておりさらに該ダンパ液室内にマスダン
パが形成されている防振ゴム装置であつて、該マ
スダンパが所定質量ブロツクに形成され、上記下
ダンパ室に上記隔壁の周縁に凹状に下向きに固定
され、下部に流通孔を有する通液板を設けて該流
通孔に臨まされて上記マスダンパが収容され、該
通液板の壁面とマスダンパの周側面とでリング状
の間隙を形成し、而して、通液板と該隔壁との少
くとも一方にバネを介して弾性的に支持されてい
る防振ゴム装置であるようにしたものである。

〈作用〉 而して、自動車の走行中におけるエンジンのシ
ヤシに対する相対振動の高周波領域における振動
は密閉環状弾性材により吸収され、又、アイドル
振動やエンジンシエイク等の低周波、中周波領域
の振動は密閉環状弾性材内に密封されたダンパ液
の隔壁に設けられたオリフイスを介して上ダンパ
液室、及び、下ダンパ液室流過により吸収される
基本的特性を生かしながら、而して、高周波領域
におけるダンパ液の減衰係数はマスダンパの位相
が隔壁のオリフイスを流過するダンパ液の位相と
逆になることによりダンパ液の流れが小さくされ
るようにして透過音やこもり音が車室に侵入しな
いようにされ、又、この場合逆位相にされる変位
動作に加えてダンパ液がマスダンパの共振点以上
の周波数ではマスダンパのまわりで液の動きが小
さくなり、通液板で決まる液中共振で動バネ定数
が小さくなるようにし、一方低周波領域では通液
板の壁面とマスダンパの外周部分で形成されるリ
ング状の間隙を通過することでダンパ液の流れと
上記マスダンパの共振状態の動きの位相が同じよ
うになるため減衰係数は大きくされ、低周波振動
が吸収されやすく成るように動作特性が可変にさ
れるようにした技術的手段を講じたものである。

〈実施例−構成〉 次に、この考案の実施例を図面に基づいて説明
すれば以下の通りである。

第１図に示す実施例において１はこの考案の要
旨を成す複合エンジンマウンテイングタイプの防
振ゴム装置であつて、そのロアプレート２はその
中央に図示しないシヤシに対する取付ボルトを溶
接一体化しており、その上面にはリング状の補強
プレート３が該ロアプレート２の周縁部のかしめ
部４によりかしめ固定されている。

５はゴム製の円筒状の密閉環状弾性材であり、
その下端は該補強プレート３に加硫処理されて一
体固定され、又、その略中央部外側にはリングマ
ス６が一体に嵌設されて剪断抵抗を与えると共に
その動バネ定数を向上させるようにされている。

一方、該密閉環状弾性材５の上端は図示する様
に、断面Ｕ字型の通液板７の下面に加硫処理され
て一体固定されている。

而して、該通液板７はその下部面に設定直径の
流通孔８を穿設されている。

又、該通液板７の上には中央にオリフイス９を
有する隔壁１０が載置されており、更に、該隔壁
１０の上部にはゴム製のダイヤフラム１１が設け
られ、その周縁にはリングプレート１２が一体付
設されている。

そして、該隔壁１０はダンパ液室１３を上記ダ
イヤフラム１１との間に上ダンパ液室１４、そし
て下側の通液板７との間で下ダンパ液室１５とに
形成している。

又、上記ダイヤフラム１１、及び、その周囲の
リングプレート１２の上には中央に取付ボルト１
６を溶接一体上方突出させているアツパプレート
１７が設けられており、その周縁部のかしめ部
４′は上記リングプレート１２、及び、隔壁１０、
通液板７の周縁部を一体かしめ固定している。

而して、上記通液板７と隔壁１０の間に形成さ
れる下ダンパ液室１５中には所定サイズの所定重
量のデイスク状のマスダンパ１８が収容され、該
通液板７の流通孔８の周縁に設けられた圧縮性の
バネ１９によつて支承されている。

而して、通液板７の内部に於いてマスダンパ１
８は流通孔８に臨まされて通液板７の壁面とマス
ダンパ１８の外周部分でリング状の間隙を形成
し、外部からの振動によつて弾性的な変位が自在
にされる。

尚、該バネ１９は後述の如く高周波領域、及
び、低周波領域での該マスダンパ１８の動作を設
定するように予め調整して決められている。

尚、２０はダンパ液であり、例えば、ロングラ
イフクーラントを用いている。

〈実施例−作用〉 上述構成において、自動車のエンジンルームに
て上記複合エンジンマウンテイングタイプの防振
ゴム装置１がそのロアプレート２をシヤシに取り
付けられ、エンジンはそのアツパプレート１７に
取り付けられて稼動に供されるが、クランキング
振動、アイドル振動やエンジンシエイク等の低周
波、中周波領域においては図示するようにダンパ
液２０は密閉環状弾性材５の内部のダンパ液室１
３に於て通液板７の流通孔８、及び、隔壁１０の
オリフイス９を流過して上ダンパ液室１４下ダン
パ液室１５を流通するが、この際、マスダンパ１
８の側部を通液板７の壁面とマスダンパ１８の外
周部分で形成されるリング状の間隙を上下に流通
する。

そして、基本的には該上マスダンパ液室１４、
及び、下ダンパ液室１５のダンパ液２０の流過に
より該低周波振動、及び、中周波振動は吸収され
る。

一方、高周波振動においては密閉環状弾性材５
がその周囲に嵌設されたリングマス６による同特
性の良さによつて振動吸収する。

而して、通常複合エンジンマウンテイングタイ
プの防振ゴム装置１は高周波領域において減衰係
数が大きく、こもり音や透過音が車室内に振動す
る不具合があるが、この考案においてはオリフイ
ス９を流過するダンパ液２０の流過方向に対して
マスダンパ１８が所定重量を有しているために該
マスダンパ１８の振動は該ダンパ液２０の振動と
位相がずれ、したがつて、ダンパ液２０の移動は
少なくなつて減衰係数が小さくなることと動バネ
定数が小さくなることによりこもり音や透過音は
車室内に侵入することはなく、そのため、静粛性
が保たれることになる。

一方、低周波領域においては前記マスダンパ１
８はダンパ液２０の移動方向と位相は同一にさ
れ、更にダンパ液２０がマスダンパ１８の外周部
分のリング状の間隙を流過する際の流過抵抗から
従動してバネ１９の弾性力を伴つた弾性的な変位
が自在にされるマスダンパ１８により減衰係数は
大きくされ、該低周波、及び、中周波の吸収は何
等阻害されない。

尚、前記バネ１９は上述の如くマスダンパ１８
の高周波領域でのダンパ液に対する逆位相、及
び、低周波領域における変動位相が周波数領域に
よつて可変であるように予め調整してある。

又、第２図に示す実施例は上述第１図の実施例
がマスダンパ１８をして通液板７に対して介装し
たバネ１９を圧縮バネにしたのに対し該マスダン
パ１８を隔壁１０から引つ張りバネとしてバネ１
９′を介して吊下した態様であり、実質的には同
一作用効果を奏し、高周波領域においてはダンパ
液２０の移動方向とマスダンパ１８の移動方向が
逆位相になつてダンパ液の移動量が小さくされ、
したがつて、減衰係数、及び、動バネ定数が小さ
くなり高周波振動のこもり音や、透過音が吸収さ
れ、又、低周波領域では該ダンパ液２０とマスダ
ンパ１８の移動方向の位相が同一になり、前述ダ
ンパ液２０が流れて低周波、中周波振動が吸収さ
れる。

〈他の実施例〉 尚、この考案の実施態様は上述各実施例に限る
ものでないことは勿論であり、例えば、マスダン
パ１８について支持するバネは上下に引つ張りバ
ネ、及び、圧縮バネにしたり、又、密閉環状弾性
材７の側部から四方に引つ張りバネで吊したりす
るなど種々の態様が採用可能である。

〈考案の効果〉 以上、この考案によれば、基本的に複合エンジ
ンマウンテイングタイプの防振ゴム装置におい
て、密閉環状弾性材により高周波振動は吸収さ
れ、その内部に密封されたダンパ液の隔壁に設け
たオリフイスを介しての流通により低周波振動は
吸収される基本的効果に加えて、オリフイスに対
向して設けられているマスダンパが通液板により
形成される流通孔を出入りするダンパ液のオリフ
イスに対する流過を高周波領域では制限し、低周
波領域ではある程度抑制されるように変位される
ので、最適状態で該マスダンパはオリフイス流過
のダンパ液に対してその変動位相が高周波領域に
おいては逆位相になり、したがつて、ダンパ液の
流過量がすくなくなり、減衰係数を小さくされ動
バネ定数は小さくされて高周波のこもり音や透過
音が車室内に入らない優れた効果があると共に低
周波領域では該ダンパ液の流過方向とマスダンパ
の変動方向の位相が一致されるためダンパ液の移
動量は増加され、低周波振動はより吸収される効
果が奏される。

そして、この考案においてはマスダンパを支持
するバネを隔壁とその下の通液板の少なくともい
づれか一方に設けて支持するようにしたことによ
り該マスダンパは全くダンパ液内部において支持
されることになり、したがつて、従動作特性を変
化させることができる優れた効果がある。

そのため、密閉環状弾性材、及び、ダンパ液の
振動動作特性を予め設計したとうりに機能される
ことができる効果がある。

又、該バネがダンパ液内部に設けられることに
より構造がコンパクトになり、又、密閉環状弾性
材に取り付けなくてすむため構造が簡単であり、
製作が容易で低コストでできるメリツトがあるば
かりでなく、故障が少なく耐久性がよいという優
れた効果も奏される。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案の実施例を示すものであり、第
１図は１実施例の縦断面図、第２図は他の実施例
の縦断面図である。 ２……ロアプレート、１７……アツパプレー
ト、５……密閉環状弾性材、１１……ダイヤフラ
ム、１３……ダンパ液室、１４……上ダンパ液
室、１５……下ダンパ液室、１０……隔壁、１８
……マスダンパ、１，１′……防振ゴム装置、８
……流通孔、７……通液板、１９……バネ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シヤシ取付用口アプレートとエンジン取付用ア
   ツパプレートとの間に介設固定された密閉環状弾
   性材の内部にダイヤフラム下部でダンパ液室が形
   成されており該ダンパ液室を上ダンパ液室と下ダ
   ンパ液室とを郭成する隔壁がオリフイスを有して
   おりさらに該ダンパ液室内にマスダンパを具備し
   ている防振ゴム装置において、該マスダンパが所
   定質量ブロツクに形成され、上記隔壁の周縁に固
   定されて下部に流通孔を有する通液板との間にリ
   ング状間隙を形成すると共に上記流通孔に臨まさ
   れ、而して上記通液板と該隔壁との少くとも一方
   にバネを介して弾性的な変位が自在に支持されて
   いることを特徴とする防振ゴム装置。