JPH0241082Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の利用分野〕 本考案は緩衝機構を備えたドアミラーが緩衝作
動をする際、ミラーハウジングがミラーベースに
接触して摩擦により損傷することを防止するよう
に改良した損傷防止構造に関するものである。

〔考案の背景〕

自動車用ドアミラーは車体側方に突出せしめて
装着されるため、走行時に障害物と衝突する機会
が有る。このため、万一の衝突に際してその衝撃
を緩和吸収するよう、緩衝式ドアミラーが用いら
れる。

第１図は緩衝式のドアミラーの１例を模式的に
描いた平面図で、図において上方が自動車の前方
に相当する。

車体１にミラーベース２が固着される。３はミ
ラー４を支承したミラーハウジングである。上記
ミラーベース２とミラーハウジング３との間にヒ
ンジ部材５が設けられる。

上記のヒンジ部材５の１端は後側軸７によりミ
ラーベース２に軸着され、図示の状態から後方に
回動（左回り）し得るように支承されている。

上記ヒンジ部材５の他端に、ミラーハウジング
３が前側軸６により軸着され、図示の状態から前
方に回動（右回り）し得るように支承されてい
る。

上記のミラーベース２とミラーハウジング３と
の間にテンシヨンスプリング８が介装され、その
張力によつてミラーハウジング３がミラーベース
２に向けて押しつけられ、図示の如くドアミラー
として機能し得る姿勢（以下、正常姿勢と言う）
を保つている。

以上のように構成された緩衝式ドアミラーは、
矢印Ａの如く前方から外力を受けると第２図に示
すようにヒンジ部材５が後方に回動し、これと共
にミラーハウジング３が後方に傾倒する。また、
矢印Ｂの如く後方から外力を受けると第３図に示
すようにミラーハウジング３が前方に傾倒する。
上記前、後方向の傾倒作動はいずれもテンシヨン
スプリング８の付勢力に抗しつつ行われるので、
衝撃力が該スプリング８に吸収されて緩和され
る。

ところで、このドアミラーが車体側方に突出し
ているため、ドアミラーを装着した自動車を船積
みして船倉内に並べる場合、自動車間の間隔を広
くしなければならないので不経済である。このよ
うな場合、第２図に示したようにミラーハウジン
グ３を後方に傾倒させた姿勢に保持しておくと自
動車同士の間隔を詰めることができて経済的であ
る。

また、上述の如くミラーハウジング３を後方に
傾倒させた姿勢に保持する手段を設けておくと、
例えばこのドアミラーを装着した自動車が車庫入
れなどの場合のように障害物との間隔が狭い所を
通過する際、邪魔にならないようにミラーハウジ
ングを傾倒させておくこともできて便利である。

しかし、前記のテンシヨンスプリング８は緩衝
機能を果たすため、かなり強い取付荷重（例えば
30Kg程度）を与えてあるため、第２図に示したよ
うな傾倒姿勢を保持させるには、例えば仮想線９
で示したような頑丈な保持治具で支えなければな
らない。しかし上記の如く特別の保持治具を用意
しておいて車庫入れ操作の都度、取付け、取外し
することは運転者にとつて非常に煩わしい。

その上、従来の緩衝式のドアミラーには、次に
述べるようにミラーハウジングに擦り傷を生じる
という不具合がある。即ち、第１図の正常姿勢か
ら第３図の如く前方（図の上方）に傾倒すると
き、ミラーハウジング３の前面（図の上方）の、
ミラーベース寄りの縁３ａがミラーベース２に接
触して摩擦し、擦り傷を生じる。この部分は正常
姿勢のときに外観に現われるので、擦り傷を生じ
ると見栄えが悪くなる。

〔考案の目的〕

本考案は上述の事情に鑑みて為されたもので、
その目的とするところは、ミラーハウジングを容
易に傾倒姿勢に保持することができ、しかも、ミ
ラーハウジングの傾倒によつて該ミラーハウジン
グに擦り傷を生じる虞の無い、緩衝機構付きドア
ミラーの損傷防止構造を提供しようとするもので
ある。

〔考案の概要〕

上記の目的を達成するため、本考案の緩衝機構
付きドアミラーの損傷防止構造は、 ミラーベースに固着した係合部材に対して係
合、離脱するフツク部と、案内溝孔とを有するフ
ツク部材を構成して、このフツク部材をヒンジ部
材に対して回動可能に軸着し、 前記テンシヨンスプリングの１端を上記案内溝
孔に対して摺動自在に係合するとともに、該テン
シヨンスプリングの他端をミラーハウジングに係
着し、 前記フツク部材に設けられている案内溝孔を次
記のように構成する。

前記のヒンジ部材およびこれに軸着されたミラ
ーハウジングが正常姿勢であつて、前記のフツク
部材がミラーベースに固着した係合部材に係合し
ている状態において、前記テンシヨンスプリング
の張力の作用線に垂直な線を想定し、前記案内溝
孔を上記仮想の垂直線に対して傾斜させる。この
傾斜の方向は、前記のミラーハウジングがヒンジ
部材と共に後方へ回動する際の回動方向と一致さ
せる。

そして、前記の状態において、フツク部材に設
けられている案内溝孔の前端が該フツク部材の軸
着点よりも前方に位置するとともに、該案内溝孔
の後端が上記軸着点よりも後方に位置するよう
に、該案内溝孔の長さを設定する。

さらに、前記ヒンジ部材がミラーベースに軸着
されている点と、ミラーベースに固着されている
係合部材とを結ぶ直線を想定し、前記の状態（正
常姿勢、かつフツク部材係合）におけるフツク部
材の軸着点を上記の仮想の直線の近傍に位置せし
める。

ここに、ヒンジ部材の軸着点と係合部材とを結
ぶ直線の近傍とは、これらを結ぶ直線の延長上の
近傍は含まず、該直線が軸着点と係合部材とによ
つて挟まれている部分の近傍の意である。

〔考案の実施例〕

第４図は本考案の緩衝機構を備えたドアミラー
損傷防止構造の１実施例の水平断面図を示し、ミ
ラーハウジング３が正常姿勢の状態を描いてあ
る。

本考案のドアミラーにおいては、テンシヨンス
プリング８をミラーベース２に対して直接的に取
り付けず、フツク部材１０を介して取り付ける。

上記のフツク部材１０はヒンジ部材５に対して
軸１１により回動自在に軸着し、この軸１１を中
心として左回り方向に回動するとフツク部１０ａ
がミラーベース２に固定した係合部材である係合
軸１２に係合し、右回り方向に回動すると離脱す
るようにする。１５は係合軸１２のブラケツトで
ある。

上記のフツク部材１０に案内溝孔１０ｂを設
け、テンシヨンスプリング８の１端を上記案内溝
孔１０ｂに摺動自在に係着する。

本例においては上記の案内溝孔１０ｂにスライ
ダ１３を嵌合し、このスライダ１３にハンガプレ
ート１４を介してテンシヨンスプリング８の１端
を係着してある。

本第４図に示したようにミラーハウジング３が
正常姿勢にあるとき、テンシヨンスプリング８は
フツク部材１３に対して矢印Ｆ方向の張力を与え
る。

上記矢印Ｆで表わされる張力の作用線に対して
垂直な線Ｈを想定し、この仮想の垂直線Ｈよりも
若干傾斜させて前記の案内溝孔１０ｂを設ける。
その傾斜方向は、ヒンジ部材５がミラーハウジン
グ３と共に後方に回動する場合（第２図参照）の
回動方向（本例においては左回り）と一致させ
る。これにより、スライダ１３が矢印Ｆ方向に引
かれると該スライダ１３は案内溝孔１０ｂに沿つ
て車体前方（図の上方）に滑動する。このように
して、ミラーハウジング３が正常姿勢のとき、テ
ンシヨンスプリング８の張力のフツク部材１０に
対する着力点（スライダ１３の位置）は、案内溝
孔１０ｂの前方端に位置する。この状態において
テンシヨンスプリング８の張力矢印Ｆの作用線が
軸１１の前方（図の上方）を通るよう、案内溝孔
１０ｂの前端の位置を上記の軸１１よりも前方に
設定しておく。これにより、フツク部材１０はテ
ンシヨンスプリング８の張力により軸１１の回り
に左回り方向の回動力を受け、フツク部材１０ａ
が係合軸１２に係合する。従つてテンシヨンスプ
リング８はスライダ１３、案内溝孔１０ｂ、フツ
ク部材１０、係合軸１２を介してミラーベース２
に係着され、ミラーハウジング３をミラーベース
２に向けて押しつけて正常姿勢を保たせる。

上記のように構成されたドアミラーのミラーハ
ウジング３に力を加えて矢印Ｄの如く後方に傾倒
させると、これに伴つてテンシヨンスプリング８
も回動しその張力の方向が鎖線矢印F′の如く後方
寄り（図の下方寄り）となる。張力の方向が変化
して案内溝孔１０ｂに対して垂直方向になり、更
にその状態を越えるとスライダ１３は仮想線で示
した１３′のように案内溝孔１０ｂの後端（図の
下端）に滑動せしめられ、この滑動に伴つてテン
シヨンスプリング８の張力の着力点がスライダ１
３′の位置に移動する。この状態におけるテンシ
ヨンスプリングの張力矢印F″の作用線が軸１１
の後方（図の下方）を通るよう、案内溝孔１０ｂ
の後端の位置を上記の軸１１よりも後方に設定し
ておく。

張力矢印F″の作用線が軸１１の後方を通るよ
うになると、フツク部材１０は軸１１の回りに右
回り方向に回動せしめられ、フツク部１０ａが係
合軸１２から離脱する。

上記のフツク部１０ａの離脱により、テンシヨ
ンスプリング８はミラーベース２に対する係着を
解除され、ミラーハウジング３はヒンジ部材５を
介して後側軸７により回動自在に軸支されている
だけの状態となり、僅かな力でその回動姿勢を容
易に保持できるようになる。

更に本考案の装置は、第４図に示すようにミラ
ーハウジング３が正常姿勢であり、かつフツク部
材１０が係合軸１２に係合している状態におい
て、前記ヒンジ部材５をミラーベース２に軸着し
ている後側軸７と、フツク部材１０に係合してい
る係合軸１２とを結ぶ直線（詳しくは、平面図の
上で結ぶ直線）Ｑを想定し、フツク部材１０をヒ
ンジ部材５に軸着している軸１１を上記仮想の直
線Ｑの近傍に位置せしめる。

第５図は本実施例のミラーハウジング３が若干
（約45゜）前方に傾倒した状態を、第６図は更に
（約90゜まで）傾倒した状態を示している。ミラー
ハウジング３が第５図の如く前方に傾倒すると、
テンシヨンスプリング８の張力矢印F₁の方向が
前方（図の上方）寄りとなり、その作用線が軸１
１の後方（図の下方）を通るようになるので、フ
ツク部材１０は上記の軸１１に関して図の右回り
方向の力を受ける。

上記の軸１１は、前記の係合軸１２と後側軸７
とを結ぶ仮想の直線Ｑの近傍に位置しており、か
つ後側軸７は係合軸１２の後方（図の下方）に位
置しているので、前記テンシヨンスプリング８の
張力矢印F₁の作用線は係合軸１２の後方（図の
下方）を通る。

而して、上記の係合軸１２はミラーベース２に
対しブラケツト１５を介して固定された固定軸で
あり、フツク部材１０のフツク部が該係合軸１２
に係合しているので、前記の矢印F₁方向の張力
を受けたフツク部材１０は該係合軸１２に関して
円弧矢印Ｒのごとく右回り方向の力を受ける。

第６図に描いた状態では、上記円弧矢印Ｒ方向
の回動力により、軸１１が若干図の左方に（ミラ
ーベース２から離れる方向に）移動して、前記仮
想の直線Ｑよりも左方に位置している。

第６図に示した直線矢印ｒは前記円弧矢印Ｒで
示した回動力の接線方向の分力を示している。フ
ツク部材１０が上記直線矢印ｒ方向の力を受けた
場合、前記の軸１１の移動について次に述べる。

軸１１のヒンジ部材５に対する取付位置は変化
しない。そして、該ヒンジ部材５は後側軸７によ
りミラーベース２に対して回動可能に軸着されて
いる。従つて上記の軸１１が図の左方へ移動する
際は、図示の円弧矢印Ｌのごとく後側軸７を中心
として円弧を描き、これに伴つてヒンジ部材５は
後側軸７を中心として円弧矢印Ｌのごとく左回り
に回動する。

このようにして、フツク部材１０の右回り回動
に伴つてヒンジ部材５が左回りに回動するという
機能は、前記の軸１１が仮想の直線Ｑの近傍に位
置していることにより果たされる。

上述の作動から容易に理解されるごとく前記の
軸１１は、ミラーハウジング３が正常姿勢のとき
（例えば第４図）前記仮想の直線Ｑの近傍に位置
していればよく、必ずしも直線Ｑ上に位置してい
なくてもよい。

上述のようにしてヒンジ部材５が第６図に示し
たように左回りに回動すると、該ヒンジ部材５の
前端部に位置する前側軸６はミラーベース２から
離間し、この前側軸６によつて支承されているミ
ラーハウジング３もミラーベース２から離間せし
められ、寸法ｇのギヤツプを生じる。このため、
ミラーハウジング３の前面の、ミラーベースに対
向している縁３ａがミラーベース２との摩擦によ
つて擦り傷を生じる虞が無い。

〔考案の効果〕

以上詳述したように、本考案の損傷防止構造を
備えた緩衝機構付きドアミラーは、ミラーハウジ
ングを傾倒させるとテンシヨンスプリングの張力
が自動的に解除されるので、該ミラーハウジング
を容易に傾倒姿勢に保持することができ、しか
も、ミラーハウジングの傾倒によつて擦り傷を生
じる虞が無いという優れた実用的効果を生じる。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第３図は従来例の緩衝式ドアミラー
を模式的に描いた平面図で、第１図は正常姿勢の
状態を、第２図は後方傾倒状態を、第３図は前方
傾倒状態を、それぞれ示している。第４図は本考
案の１実施例の正常姿勢における水平断面図、第
５図及び第６図は上記実施例の作動を説明するた
めの水平断面図である。 １……車体、２……ミラーベース、３……ミラ
ーハウジング、４……ミラー、５……ヒンジ部
材、６……前側軸、７……後側軸、８……テンシ
ヨンスプリング、１０……フツク部材、１０ａ…
…フツク部、１０ｂ……案内溝孔、１２……係合
軸、１３……スライダ。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 車体に固定されるミラーベース２に対してヒン
   ジ部材５の１端が正常姿勢から後方へ回動し得る
   ように後側軸７で軸着されるとともに、上記ヒン
   ジ部材５の他端に対してミラーハウジング３が正
   常姿勢から前方へ回動し得るように軸着され、か
   つ、上記ミラーベース２とミラーハウジング３と
   の間にテンシヨンスプリング８が介装された緩衝
   機構付きドアミラーにおいて、 前記のミラーベース２とテンシヨンスプリング
   ８との間に、案内溝孔１０ｂを有するフツク部材
   １０が介装されており、 前記テンシヨンスプリング８の１端は上記案内
   溝孔１０ｂに対して摺動自在に係着され、該テン
   シヨンスプリング８の他端はミラーハウジング３
   に係着されており、 前記フツク部材１０は前記ヒンジ部材５に対し
   て軸１１により回動自在に軸着されるとともに、
   このフツク部材１０の回動に伴つて該フツク部材
   に対して係合、離脱する係合部材１２がミラーベ
   ース２に固着されており、 かつ、前記フツク部材１０の案内溝孔１０ｂの
   形状、該案内溝孔の位置、および上記フツク部材
   の軸着点がそれぞれ次のように構成されているこ
   とを特徴とする緩衝機構付きドアミラーの損傷防
   止構造。 ａ 前記フツク部材１０が係合部材１２に係合
   し、ミラーハウジング３およびヒンジ部材５が
   正常姿勢となつている状態において、該フツク
   部材１０の案内溝孔１０ｂはテンシヨンスプリ
   ング８の作用線に直角な仮想の線Ｈに対して、
   前記ヒンジ部材５が後方に回動する場合の回動
   方向と同方向に傾斜している。 ｂ 前記の状態において、前記フツク部材１０に
   設けられている案内溝孔１０ｂの前端は該フツ
   ク部材を軸着している軸１１よりも前方に位置
   し、該案内溝孔１０ｂの後端は上記の軸１１よ
   りも後方に位置している。 ｃ 前記の状態において、フツク部材１０をヒン
   ジ部材５に軸着している軸１１は、前記後側軸
   ７と係合部材１２とを結ぶ仮想の直線Ｑの近傍
   に位置している。