JPH0154450B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、未延伸糸、または半未延伸糸状態に
ある長繊維の糸条から、糸軸方向に太繊度部を有
する太細糸を製造する方法に関するものである。 さらに詳しくは、太細糸を製造する際に、太繊
度部の発現パターンを異にする糸条をそれぞれ単
独で延伸した後引き続いて合糸、混繊を行ない品
位の改良された太細糸を得る延伸方法に関するも
のである。 従来から未延伸糸または半未延伸糸からなる長
繊維糸条を、特定の条件、または装置を用いて延
伸することにより太細糸を製造する方法に関して
は数多くの工夫が提案されている。 従来から公知の延伸方法としては、主としてド
ローレングスや張力を変動させる装置面からの工
夫、延伸条件を特定な条件に設定して延伸斑を発
現する方法とに大別することができる。 前者の方法によると、ドローレングスや張力の
変動周期をランダムにすることはむつかしく、従
つて太繊度部の発現がきわめて単調な周期を有す
るものになるため特殊の場合を続いて後者の方が
有利である。 しかしながら周速度の異なる２つのローラで構
成される延伸領域に何ら工夫をせずに延伸条件の
み特定して太細糸を製造する場合には、少しの条
件の変化が太繊度部の発現に顕著な影響をおよぼ
すため延伸はきわめて不安定であり、捲取られた
個々の糸条間、および糸条の長さ方向での太繊度
部発現パターンの変動が著しく、該糸を用いた布
帛の品質はきわめて低いものとなつている。この
ような問題を解決するために延伸領域に摩擦抵抗
体を設ける方法が提案されており、この場合には
上述の延伸領域に摩擦抵抗体を設けないときに比
較して種々の欠点は解消されるが、本発明者らが
検討した結果、以下の問題点を含んでいることが
わかつた。 延伸領域に摩擦抵抗体を設けて延伸した場合、
延伸時に発現する太繊度部のパターンは、摩擦抵
抗体と、延伸ローラとの間の距離がきわめて大き
な影響をおよぼすこと、また太繊度部の発現に周
期性が発現し、この周期にも摩擦抵抗体と延伸ロ
ーラとの間の距離が関係していることが認められ
た。具体的には、摩擦抵抗体と、延伸ローラとの
距離が短かくなると発現パターンは相対的には短
かい周期で短かい太繊度部が数多く発生し、染色
した場合、濃淡のコントラストが弱く、さらに極
端に距離を短かくすると太繊度部は発現している
ものの染色した場合、濃染部が細かく均一に分散
してしまうために一色を呈する。 また、この糸条を用いて布帛にした場合、太繊
度部が短かく多く発生しているため周期性を持つ
て発現した太繊度部も、あたかもランダムに発現
したように見え、品位には異常は認められない。 ただし、この場合には、染色後濃淡差を発現さ
せる特殊素材糸としての効果は小さくなる。 一方、摩擦抵抗体と延伸ローラとの距離を長く
した場合は、前述の挙動とは逆に、太繊度部の発
生周期は長くなり、発現パターンは長い太繊度部
が少ない個数で発現するようになり、染色におい
ても相対的に濃淡のコントラストが強い杢調を示
す。 また、この糸条を緯糸に用いて布帛にした場合
については太繊度部のパターンが長く、少なく発
現し、濃淡のコントラストが相対的に強いために
周期性が強調され布帛に斜向や亀甲模様となつて
発現し、品質を著しく低下させる。 太繊度部の発現に周期性を持つた糸条を製織す
る場合、周期長をあらかじめ算出しておき、織機
の織幅を変更することによつて布帛に発生する斜
向や亀甲模様を抑制している。 しかし、この場合には、その都度太繊度部発現
の周期長を算出しなくてはならないことや織機の
限定などがあり非能率的であり、異常布帛発生の
危険度が高い。 しかし、この種の太細糸で、太繊度部のパター
ンが長く、かつ濃淡のコントラストが強い糸条は
嗜好性が強く、流行性にも強い。従つて消費者の
要求を満足させるためには、パターンが長く、コ
ントラストが強い太繊度部がランダムに発現して
いる太細糸を提供することが望まれる。本発明者
らはかかる太細糸の製造法を鋭意検討した結果本
発明に到達した。 すなわち、本発明は、延伸領域にＡ，B2本の
未延伸糸または半未延伸糸を供給し、それぞれの
糸条を下記(1)〜(3)式で規制される位置に設けられ
た摩擦抵抗体に糸条を接触せしめて下記(4)，(5)式
で示される延伸倍率で延伸し、しかる後糸条を合
糸することを特徴とする太細糸の製造方法であ
る。 (1) 100≦Ｌ(A)≦300 (2) 300≦Ｌ(B)≦600 (3) 50≦Ｌ(B)−Ｌ(A)≦300 (4) 0.75≦DR(A)／NDR(A)≦1.05 (5) 0.75≦DR(B)／NDR(B)≦1.05 但し、Ｌ(A)＝ｌ(A)×DR(A)，Ｌ(B)＝ｌ(B)×DR
(B)であり、ｌ(A)，ｌ(B)は延伸領域に設けた摩擦抵
抗体と延伸ローラとの間の距離（mm）であり、
DR(A)，DR(B)はそれぞれの延伸領域における延
伸倍率、NDR(A)，NDR(B)は自然延伸比であり、
(A)，(B)はそれぞれ糸条Ａ，Ｂに対応している。 本発明において摩擦抵抗体と延伸ローラの間の
距離は摩擦抵抗体に接触している糸条が、糸条の
進行方向に向つて摩擦抵抗体より離れた点から延
伸ローラの表面に接触するまでの距離（mm）のこ
とである。 本発明で言う供給糸Ａ，Ｂは延伸を行なうに際
して、特定の条件下で延伸した場合、ネツキング
ポイントを生じ得る長繊維糸条であれば任意に選
ぶことができ、たとえばポリエステル、ポリアミ
ドなどの熱可塑性ポリマーからなる未延伸糸、お
よび高速紡糸法により一部配向が進んだ半未延伸
糸が用いられる。 中でも、エチレンテレフタレートを主たる繰り
返し単位とするポリエステルからなる糸条を用い
るのが好ましく、またその際には、未延伸糸状態
で製品中に残存したときの太繊度部の経時安定
性、熱安定性、機械的強度の保持などの面から、
供給糸は自然延伸比が約2.2以下の糸条を用いる
のがさらに好ましい。 また、供給する２本の糸条Ａ，Ｂはそれぞれ異
なる性能のものであつても一向に差しつかえな
い。 式中に用いられているＬ(A)，Ｌ(B)は後述するよ
うに、摩擦抵抗体と延伸ローラとの距離ｌ(A)，ｌ
(B)および糸条の延伸倍率DR(A)，DR(B)に関係す
る値であり太繊度部の長さ、周期など発現パター
ンをコントロールするために必要である。 すなわちＬ(A)値が100よりも小さくなると太繊
度部のパターンは短かく、また多く発現するよう
になり、そのためにＢ糸側で発現したパターンが
長く、強いコントラストを持つた太繊度部までが
弱められて染色を行なつてもほぼ一色を呈して目
的とする効果がなくなり、太細糸の特徴が薄れて
しまうので好ましくない。Ｌ(A)値が300を越える
と２つの糸条Ａ，Ｂに発現した太繊度部が混繊に
よつて連結した場合、きわめて長い太繊度部とな
り、太細糸の持つ杢調の効果が薄れてしまう。 また、Ｌ(B)値が300よりも小さいと、糸条Ｂに
発生した太繊度部のパターンは短かいものとなり
相対的にコントラストが弱いものとなる。 Ｌ(B)が600を越えると、必然的に太繊度部のパ
ターンは長くなり、Ｂ糸側で発現した周期がきわ
めて強い影響を示し、Ａ糸側で短かい周期を発現
させて、太繊度部の発現をランダム化させようと
してもその効果は薄く、本発明にふさわしくない
現象が現われる。 さらに、Ｌ(A)，Ｌ(B)の差が50よりも小さくなる
と、Ａ，Ｂ両糸条の発現パターンがきわめて似て
いるものとなり従来から知られている糸条と同様
に周期性が目立つようになるので好ましくない。
またＬ(A)，Ｌ(B)の差が300よりも大きくなると、
長く、大きくなつたＢ糸側のパターンのみが強調
されすぎるのでやはり好ましくないのであつて、
Ｌ(B)とＬ(A)の差は50以上300以下、さらに好まし
くは100以上250以下とするのが本発明の効果を得
るために必要なのである。 式(4)，(5)はＡ，Ｂそれぞれの糸条の延伸倍率を
規定したものであり、未延伸糸条の自然延伸比に
対して0.75倍以上、1.05倍以下の範囲で延伸する
必要がある。 延伸倍率が自然延伸比の0.75倍よりも小さい
と、太繊度部がきわめて多く、長くなり、また、
0.05倍よりも大きい場合は太繊度部がほとんど混
入されず、いずれの場合にも本発明の目的を達成
することは困難である。 なお、必要に応じてＡ，Ｂで延伸倍率を異なら
せることも可能であり、この場合にはたとえば延
伸引取りローラのスピードは同一とし、供給ロー
ラのスピードをそれぞれ変えることにより、変化
させることが可能である。 さらに本発明に用いる摩擦抵抗体は、特に限定
されることなく、公知のものを使用することが可
能であるが、アルミナ、酸化チタンなどを主成分
とするセラミツクまたはクロムメツキ梨地仕上げ
された鋼などで円筒型に形成されたものが一般的
であり、必要に応じて加熱または冷却することも
できる。 また延伸領域で摩擦抵抗体に糸条を接触させる
とは、実質的に糸条の延伸点を摩擦抵抗体周辺に
位置させることを意味し、所定の角度で接触させ
ることにより延伸点が摩擦抵抗体の周辺にあれば
必ずしも捲回する必要はない。 また、合糸した糸条は必要に応じて積極的にエ
アージエツトなどにより混合交絡してもよい。 上述した各種の条件は、糸条の用途により要求
される発現パターンに応じて適宜選定することが
できるが、Ｌ(B)，Ｌ(A)の比（Ｌ(B)／Ｌ(A)）につい
ては、太繊度部発現周期の合致、およびＡ糸側で
発現した太繊度部とＢ糸側で発現した太繊度部と
を連結させないためにもできるだけ整数倍は避
け、さらに好ましくはＬ(B)／Ｌ(A)の値が割り切れ
ない数値を選定することが好ましい。 供給糸条の自然延伸比の測定法は第１図に示す
ように、インストロン引張り試験機を用い、糸条
の長さ、H₀（cm）の未延伸糸を引張り速度V₁
（cm／分）、引張り試験機と連動した記録計のチヤ
ート速度V₂（cm／分）の条件下で糸条が破断する
まで引伸した際に記録紙に書かれた張力伸長曲線
Ｐを示したものである。すなわち第１図におい
て、伸長量が張力に正比例して上昇する領域の長
さH₁（cm）、張力の極大値Ｑを通る水平線と張力
伸長曲線Ｐの交点Ｒで定義される張力がほぼ一定
の領域の長さH₂（cm）を求め、これらの数値を下
記(6)式へ代入して算出された値を本発明で用いる
自然延伸比とする。 自然延伸比＝１＋（V₁／（H₀×V₂）） ×（H₁＋H₂） (6) 以下本発明を、図面によつてさらに詳細に説明
する。 第３図は、本発明を実施するに際して、延伸領
域に延伸ローラとの距離を異にする円筒型の摩擦
抵抗体を用いた本発明の延伸方法の一例を示す概
略図である。 供給糸Ａ，Ｂはガイド２Ａ，２Ｂを経て、供給
ローラ３Ａ，３Ｂにより延伸ローラ５との距離を
異にして設けた円筒型の摩擦抵抗体４Ａ，４Ｂに
捲回され、延伸ローラ５によつて合糸、混繊して
送り出されパーン７に捲き上げられる。 第２図は、本発明の要点であるＬ値と太繊度部
の発生周期の関係を示したグラフである。摩擦抵
抗体と延伸ローラとの距離をｌとして単独で延伸
し、捲き上げた糸条の太繊度部の発現挙動を計測
器工業(株)イブネステスター糸斑測定器にて測定す
ると太繊度部の発現パターンに周期が見られる。
また必要により、測定データを周波数分析するこ
とにより、周期をさらに明確に知ることができ
る。 積極的に延伸領域におけるドローレングスや張
力の変動を与えないにもかかわらず、このような
周期性が発現することはきわめて興味のあること
であり、本発明者らは、この周期性について検討
を加えた。その結果、第２図に示すように、発現
する周期は延伸倍率（DR）と摩擦抵抗体と延伸
ローラとの距離ｌの積（DR×ｌ）によつて決定
されることを見い出したのであり、この知見をも
とにさらに鋭意検討を続けて本発明を完成させた
のである。 本発明の太細糸の製造方法により、パターンが
長く、コントラストが強い太繊度部がランダムに
発現している太細糸が得られる。 以下本発明の詳細を実施例に基づいて詳細に説
明する。 実施例 １ 固有粘度ηが0.65であるポリエチレンテレフタ
レートを3300ｍ／分の速度で溶融紡糸を行ない、
得られた糸条（太さ57デニール、フイラメント数
18フイラメント、自然延伸比1.45の半未延伸糸）
を供給糸Ａ，Ｂとして第３図に示した延伸装置を
用い、摩擦抵抗体として20mm中のセラミツクピン
を２本設け、Ｌ(A)，Ｌ(B)について各種の変更を行
ない、太細糸を得た。得られた太細糸を緯糸とし
てニツサンジエツト1000（商品名）で製織し、引
き続いて染色を行ない、太細部のパターンの長
さ、コントラストについて目視にて評価を行な
い、その評価結果を第１表に示した。なお、テス
トNo.１，３，５，６，７，９は比較例である。

【表】

【表】 実施例 ２ 実施例１に使用した供給糸と延伸装置を用いて
Ｌ(A)＝193.6，Ｌ(B)＝375.1に設定し、実施例１と
同条件にて延伸を行ない850Kgの太細糸を採取し
た。 得られた糸条をニツサンジエツト−1000にて羽
二重組織の緯糸として製織を行ない、引き続いて
無地染めの染色を行ない出来た布糸について実施
例１と同様に目視で太繊度部のパターンおよびコ
ントラストなどについて評価価した結果、糸条Ｂ
に発現した太繊度部の周期の間に糸条Ａに発現し
た短かい周期の太繊度部が非対称に発現し、また
糸条Ｂに発現した太繊度部と糸条Ａに発現した太
繊度部が連結したりして、きわめてランダムにか
つ強いコントラストで発現している布帛であつ
た。 また、採取した850Kgの太細糸を用いた布帛の
長さ方向について太繊度部の発現性を評価した
が、布帛全部について許容の範囲内で、太繊度部
の発現はきわめてランダムであり品位の良好なも
のであつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明における未延伸糸、または半未
延伸糸の自然延伸比の算出を説明するための張力
と伸長量の関係を示したグラフである。第２図は
摩擦抵抗体と延伸ローラとの距離と延伸倍率の積
Ｌと太繊度部のパターン周期長の関係を示すグラ
フである。第３図は本発明を実施するに使用する
延伸装置の一例を示す概略図である。 Ａ，Ｂ……供給糸、２Ａ，２Ｂ……ガイド、３
Ａ，３Ｂ……供給ローラ、４Ａ，４Ｂ……摩擦抵
抗体、５……延伸ローラ、６……ガイド、７……
パーン。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 延伸領域にＡ，B2本の未延伸糸、または半
   未延伸糸の糸条を供給し、それぞれの糸条を下記
   (1)〜(3)式で規制される位置に設けられた摩擦抵抗
   体に接触せしめて下記(4)，(5)式で示される延伸倍
   率で延伸し、しかる後糸条を合糸することを特徴
   とする太細糸の製造方法。 (1) 100≦Ｌ(A)≦300 (2) 300≦Ｌ(B)≦600 (3) 50≦Ｌ(B)−Ｌ(A)≦300 (4) 0.75≦DR(A)／NDR(A)≦1.05 (5) 0.75≦DR(B)／NDR(B)≦1.05 但し、Ｌ(A)＝ｌ(A)×DR(A)，Ｌ(B)＝ｌ(B)×DR
   (B)であり、ｌ(A)，ｌ(B)は延伸領域に設けた摩擦抵
   抗体と延伸ローラとの間の距離（mm）であり、
   DR(A)，DR(B)はそれぞれの延伸領域における延
   伸倍率、NDR(A)，NDR(B)は自然延伸比であり、
   (A)，(B)は糸条Ａ，Ｂにそれぞれ対応している。 ２ 供給糸条が自然延伸比2.2以下の糸条で、エ
   チレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とす
   るポリエステルからなる糸条である特許請求の範
   囲第１項記載の太細糸の製造方法。