JPH0143351Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は自動車、特にフロントエンジン、フロ
ントドライブ車（以下単にF.F車という）の前部
車体構造に関するものである。

一般に、Ｆ・Ｆ車においては、車体外方のアウ
タパネルとエンジンルーム側のインナパネルとか
らなり車体前後方向に延びる閉断面形状のフロン
トサイドフレームがエンジンルーム側壁を構成す
るホイールエプロン下方に固定されて強度が高め
られている。また、ハンドルとの位置関係からダ
ツシユパネル付近にタイロツドが位置することに
なるため、ダツシユパネル付近のフロントサイド
フレームにタイロツド挿通孔が設けられている。

従来、フロントサイドフレームを構成するアウ
タパネルとインナパネルとのタイロツド挿通孔の
周縁部における接合は、アウタパネルとインナパ
ネルとを全周縁に亘つて折曲形成してなるフラン
ジ部を相互に重ね合せてスポツト溶接するか、あ
るいはアウタパネルとインナパネルとにフランジ
部を形成することなく、周縁部を重ね合せてアー
ク溶接することにより行われている。

ところが、前者においては、スポツト溶接によ
るため作業性は良いが、フランジ部に相当する大
きさだけタイロツド挿通孔の開口面積が小さくな
る一方、後者においては、フランジ部を設ける必
要がないため開口面積を大きく確保できるが、ア
ーク溶接によるため作業性が悪く、信頼性に劣る
ものである。

そこで、タイロツド挿通孔の開口面積を大きく
確保することができ、しかもスポツト溶接を利用
することができる構造として、例えば実開昭55−
129173号公報に示される構造が知られているが、
この場合には連結部材を設ける必要があり、構造
が複雑になるという憾みがある。

本考案はかかる点に鑑み、閉断面形状のフロン
トサイドフレームを構成するアウタパネルとイン
ナパネルとを接合した後に、フロントサイドフレ
ームをダツシユパネルに接合することに着目して
なされたもので、タイロツド挿通孔の開口面積を
大きく確保でき、しかもスポツト溶接により全て
の接合を行うことができる自動車の前部車体構造
を提供することを目的とする。

本考案は、上記目的を達成するために、車体外
方のアウタパネルとエンジンルーム側のインナパ
ネルとからなり車体前後方向に延びる閉断面形状
のフロントサイドフレームがエンジンルーム側壁
を構成するホイールエプロン下方に固定され、フ
ロントサイドフレームの後端部近傍にタイロツド
挿通孔が設けられた前部車体構造を前提とし、前
記フロントサイドフレームの後方に開放された後
端部がダツシユパネルに接続されて閉塞され、前
記タイロツド挿通孔周縁部におけるフロントサイ
ドフレームのアウタパネルとインナパネルとの接
合部分は、ダツシユパネル側に位置する後側部分
が該ダツシユパネルに対向する接合面上で重ね合
せ溶接される一方、その他の部分はアウタパネル
とインナパネルとを折曲形成されてなるフランジ
部がタイロツドの軸心と直交する鉛直方向におい
て重ね合せ溶接されている。

以下、本考案の実施例を図面に沿つて説明す
る。

１はエンジンルーム側壁を構成するホイールエ
プロンで、その下方に、車体外方のアウタパネル
２とエンジンルーム側のインナパネル３とからな
り車体前後方向に延びる閉断面形状のフロントサ
イドフレーム４が固定されている。

フロントサイドフレーム４は、サスペンシヨン
タワー５前部付近からダツシユパネル６にかけて
拡大部４ａが形成され、後方に開放した後端部が
ダツシユパネル６に接続されて閉塞されている。
しかして、拡大部４ａは、その下側部分が車体フ
ロア７とフロントサイドフレーム８との接合によ
り構成された閉断面構造に連設されるとともに、
後端部近傍の中央部分にタイロツド挿通孔９が設
けられている。

前記タイロツド挿通孔９周縁部におけるフロン
トサイドフレーム４のアウタパネル２とインナパ
ネル３との接合部分は、ダツシユパネル６側に位
置する後側部分を除いては、折曲形成されたアウ
タパネル２およびインナパネル３のフランジ部２
ａ，３ａが、後述するタイロツド１０の軸心と直
交する鉛直方向において、重ね合せ溶接される一
方、ダツシユパネル６側に位置する後側部分にお
いては、フランジ部２ａとの間に、ノツチを入れ
て形成されたアウタパネル２の延長部２ｂと、イ
ンナパネル３の内面とが、ダツシユパネル６に対
向する接合面上で、重ね合せ溶接されている。な
お、前記後側部分におけるインナパネル３には、
前記フランジ部３ａに比して十分に小さいフラン
ジ部３ｂが連続して形成されている。したがつ
て、インナパネル３側には全周縁に亘つてフラン
ジ部３ａ，３ｂが形成され、アウタパネル２にお
いてフランジ部２ａと延長部２ｂとの間に設けた
ノツチ部への応力集中が回避される。

１０はタイロツド挿通孔９を貫通するタイロツ
ド、１１はハーフシヤフト、１２はダツシユクロ
スである。

上記の構成によれば、アウタパネル２とインナ
パネル３とを接合してフロントサイドフレーム４
を形成した後、該フロントサイドフレーム４にダ
ツシユパネル６を接合することから、タイロツド
挿通孔９周縁部の接合は、ダツシユパネル６側に
位置する後側部分を除いては、アウタパネル２お
よびインナパネル３の両フランジ部２ａ，３ａを
互いに重ね合せて、該両フランジ部２ａ，３ａを
スポツト溶接により接合固定することができる一
方、ダツシユパネル６側に位置する後側部分で
は、フロントサイドフレーム４の後端部は後方に
開放されているため、アウタパネル２の延長部２
ｂをインナパネル３の内面に重ね合せて、前記延
長部２ｂをインナパネル３にスポツト溶接により
接合固定することができる。

しかして、タイロツド挿通孔９の全周縁部の接
合が終了した後、フロントサイドフレーム４にダ
ツシユパネル６およびダツシユクロス１２がスポ
ツト溶接により接合固定される。

このように、接合作業は全てスポツト溶接によ
り行うことができる。

上記実施例においては、第３図に特に詳細を示
すように、アウタパネル２とインナパネル３とを
接合してなる閉断面形状のフロントサイドフレー
ム４をホイールエプロン１の下側に設けるように
しているが、アウタパネルをホイールエプロンと
一体的に形成し、該ホイールエプロンの下側にイ
ンナパネル３を接合することにより、閉断面形状
のフロントサイドフレームを形成するようにして
もよい。

本考案は上記のように構成したから、車体構成
上重要なフロントサイドフレームの後端部の結合
剛性を向上させつつ、タイロツド挿通孔周縁部の
接合をスポツト溶接のみで行うことができ、作業
性、信頼性が向上するとともに、ダツシユパネル
側に位置する後側部分は該ダツシユパネルに対向
する接合面で重ね合せ溶接するようにしたから、
溶接に要するフランジ部の一部を省略でき、タイ
ロツド挿通孔の開口面積を大きくすることがで
き、ひいてはパワートレーン自体のレイアウトの
自由度が向上する。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図は
自動車の前部車体構造を示す全体斜視図、第２図
は一部を断面で示す要部斜視図、第３図は第１図
の−線に沿う断面図、第４図は第１図の−
線に沿う断面図である。 １……ホイールエプロン、２……アウタパネ
ル、２ａ……フランジ部、２ｂ……延長部、３…
…インナパネル、３ａ，ｂ……フランジ部、４…
…フロントサイドフレーム、６……ダツシユパネ
ル、９……タイロツド挿通孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 車体外方のアウタパネルとエンジンルーム側の
   インナパネルとからなり車体前後方向に延びる閉
   断面形状のフロントサイドフレームがエンジンル
   ーム側壁を構成するホイールエプロン下方に固定
   され、フロントサイドフレームの後端部近傍にタ
   イロツド挿通孔が設けられた前部車体構造におい
   て、前記フロントサイドフレームの後方に開放さ
   れた後端部がダツシユパネルに接続されて閉塞さ
   れ、前記タイロツド挿通孔周縁部におけるフロン
   トサイドフレームのアウタパネルとインナパネル
   との接合部分は、ダツシユパネル側に位置する後
   側部分が該ダツシユパネルに対向する接合面上で
   重ね合せ溶接される一方、その他の部分はアウタ
   パネルとインナパネルとを折曲形成されてなるフ
   ランジ部がタイロツドの軸心と直交する鉛直方向
   において重ね合せ溶接されていることを特徴とす
   る自動車の前部車体構造。