JPH0127168B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は布帛表面に新規な意匠効果を有する編
織物に関し、さらに詳しくはマルチフイラメント
糸条の長手方向にわたつて該糸条で形成されたネ
ツプを間歇的に有するネツプヤーンと、他糸条と
を合糸して得られる複合糸を少なくとも一部に使
用してなる表面意匠効果を有する杢調編織物に関
する。 従来、マルチフイラメント糸条よりなるネツプ
ヤーンとしては、意匠撚糸機、イタリー撚糸機等
の撚糸機により、芯糸の囲りに捲付糸を芯糸以上
の速度で供給したり、間歇的に供給してネツプを
形成させたネツプヤーン、あるいは擦過体を用い
てマルチフイラメント糸条に毛羽を起生したり、
未延伸マルチフイラメント糸条の延伸仮撚時に毛
羽を起生した後、流体噴射装置等で毛羽を塊状に
からませ、糸中に抱合せしめたネツプヤーンが知
られている。しかしながら、これらのネツプヤー
ンはいずれもネツプが単に塊状を呈するのみなの
で、編織物の布帛表面にネツプが浮き出ることが
なく、表面意匠効果が乏しいという欠点があり、
さらにこれらのネツプヤーンと染色性の異なる他
糸条とを合糸してなる複合糸より得られる杢調編
織物は、染色性の色差による杢調効果のみが目立
ち、ネツプ効果が充分に発揮されないという欠点
があつた。 本発明者らは先にネツプヤーンの従来技術の欠
点を解消し、且つ従来にない一本のマルチフイラ
メント糸条のみで形成されたループやスナール状
のネツプを有するネツプヤーン及びその製造方法
を特願昭56−4503号（特開昭57−117641号公報）
として出願したが、本発明は上記で得られるネツ
プヤーンの特徴を活かした新規な表面意匠効果を
有する杢調編織物を提供することを目的とするも
のである。 しかして上記の目的を達成するために、本発明
は次のごとき構成を有する。 すなわち、本発明は一本のマルチフイラメント
糸条の長手方向にわたつて基端が結節状部となつ
たループ状のネツプ及びスナール状のネツプのう
ち少なくとも一種を間歇的に有するネツプヤーン
と、このネツプヤーンとは染色性の異なる異染性
糸条とを合糸して得られる複合糸を少なくとも一
部に使用して製編織した布帛であつて、該布帛表
面にネツプが浮き出てなることを特徴とする表面
意匠効果を有する杢調編織物を要旨とするもので
ある。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明で使用されるネツプヤーンとは一本のマ
ルチフイラメント糸条の長手方向にわたつて該糸
条を構成する全単糸又は複数の単糸群が切断され
ることなく略束状となつてループ状に突出したネ
ツプと、全単糸又は複数の単糸群が切断されるこ
となくループ状に突出し且つこの突出した該糸条
の基端側が捩れて、スナール状となつたネツプと
をランダムな出現頻度で間歇的に有しており、各
ネツプの基端は糸条の略全単糸が束状又は相互に
絡まり合つて形成された結び目状や、結び目状捩
れ部等の強固な結び目状となつた結節状部で糸条
に固定されてなる糸条をいう。 すなわち、ここでいうネツプヤーンは従来のネ
ツプヤーンのようにネツプを単に塊状にからませ
糸中に抱合せしめたものでなく、ループやスナー
ル状のネツプが糸条の表面から突出した形態を有
する新規な意匠効果を有する糸条である。しかし
て上記のような特徴を有するネツプヤーンと該ネ
ツプヤーンとは染色性の異なる異染性糸条とを合
糸して得られる複合糸はネツプ部が異染性糸条に
被覆されることなく複合糸条の表面に浮き出たも
のである。 本発明の杢調編織物は該複合糸を少なくとも一
部に使用して製編織したものであるが、編織に先
立つて該複合糸及び編織に併用する他糸条を先染
するか、又は編織後後染めして第１図のように杢
調布帛の表面にネツプ２が浮き出た新規な表面意
匠効果を有する杢調編織物とする。製編織するに
あたり、複合糸と他糸条を併用する場合には、他
糸条としてネツプヤーンと合糸した異染性糸条と
同種の糸条を用いると、布帛中に占める異染性糸
条の割合が多くなつて布帛中の大部分を占める異
染性糸条の色調とは異なる色調のネツプが布帛か
ら浮き出ることになり、異染性糸条とネツプヤー
ンによる杢調効果と布帛から浮き出たネツプの異
色効果がいつそう相剰的に発揮される。 また、ネツプヤーンと合糸する異染性糸条とし
てネツプヤーンより太繊度の糸条を用いると、複
合糸中に占めるネツプヤーンの割合が小さくなり
杢調効果は減少するものの布帛から浮き出たネツ
プの異染効果が向上する。さらに、ネツプヤーン
を異染性糸条でカバリングして複合糸にすると、
ネツプヤーンのネツプ以外の部分が異染性糸条で
被覆されてネツプのみが異染性糸条から浮き出る
ことになり、布帛から浮き出たネツプの異色効果
がいつそう向上する。 本発明においてネツプヤーン形成用の糸条とな
るマルチフイラメント糸条としてはポリエステ
ル、ナイロン等の熱可塑性合成繊維、レーヨン、
アセテート等の再生繊維、あるいは半合成繊維等
いずれを用いることも可能であり、またそれらの
原糸、加工糸のいずれでもよい。さらに、ネツプ
ヤーンと合糸する異染性糸条としては少なくとも
糸条の一部にネツプヤーンと染色性の異なる繊維
を含むものであれば熱可塑性合成繊維、再成繊
維、半合成繊維、天然繊維等の単独成分糸あるい
は混紡糸、混繊糸のいずれでもよい。またたネツ
プヤーンと異種の繊維はもちろんのこと、ネツプ
ヤーンと同種の繊維で仮撚などの後加工によつて
染色性に差を付与した糸条等を使用することがで
きる。 本発明は上記のようにマルチフイラメント糸条
の長手方向にわたつて基端が結節状部となつたル
ープやスナール状のネツプを間歇的に有するネツ
プヤーンと、このネツプヤーンとは染色性の異な
る異染性糸条とを合糸して得られる複合糸を少な
くとも一部に使用して製編織した布帛であるの
で、該布帛を先染め又は後染めして得られる編織
物はネツプヤーンと異染性糸条の染色性の色差に
よつて杢調を呈し、しかもループやスナール状の
ネツプが編織物の表面に浮き出るので単なる塊状
のネツプと比較して表面意匠効果が格段に優れて
おり、ネツプヤーンと異染性糸条による杢調効果
と杢調編織物から浮き出たネツプの単色効果が相
剰的に発揮された新規な表面意匠効果を有する杢
調編織物を提供できるものである。 また、本発明のネツプヤーンにおいて長手方向
にわたつて間歇的に形成された各ネツプをマルチ
フイラメント糸条に固定する結節状部は編織等の
加工時に受ける張力では解けない程度の強度を有
するものである。ネツプの大きさもネツプヤーン
製造時の流体ノズルへの供給速度と取出速度との
比を変えたり、流体の噴出方向とマルチフイラメ
ント糸条の取出方向とのなす角度を変えることに
よつて調整できるが、ネツプヤーン製造時の張力
や流体圧力等の変動によつてネツプヤーン中に強
度の小さな結節部や大きめのネツプが混在する場
合がある。しかしながら、本発明にあつてはネツ
プヤーンと該ネツプヤーンとは染色性の異なる異
染性糸条とを合撚、流体交絡処理、カバリング等
の方法で合糸して複合糸にするので、ネツプヤー
ン自体が他糸条で補強されると同時に各結節状部
も他糸条の交撚、交絡部分によつて補強され、ま
た複合糸の糸径がネツプヤーンより大きくなる点
とネツプの結節状部が複合糸中に埋没する傾向に
なる点から糸径に対するネツプの突出長の比が小
さくなる。したがつて、たとえネツプヤーン中に
強度の小さな結節状部や大きめのネツプが混在し
ていても複合糸にして編織するので、編織等の加
工時に受ける張力で結節状部が解けることがな
く、結節状部の解けによる曳け、はね等の欠点の
発生が防止され、また複合糸から突出したネツプ
の突出長が適度になるため、加工時の解舒性が良
好となるのはもちろんのこと、編織によつて得ら
れる布帛から表面に突出するネツプのためにスナ
ツギング性が低下することがなく、さらに布帛表
面に浮き出たネツプの一端が切れて外観を損うこ
とも起こりにくくなる。 以下、本発明を図面にて説明する。 第１図は本発明の織物の一例を示す部分拡大断
面図であつて、この織物はマルチフイラメント糸
条１の長手方向にわたつてマルチフイラメント糸
条自体にて形成された基端が結節状部となつたル
ープ２を有するネツプヤーンとこのネツプヤーン
とは染色性の異なる異染性糸条３とを合撚して得
られた複合糸を用いて織成されたものであつて、
織物表面からループ状のネツプ２ａ及びスナール
状のネツプ２ｂが突出している。 次に本発明に使用されるネツプヤーン及び複合
糸の製造法を図示例にて説明する。第２図におい
て一本のマルチフイラメント糸条１をフイードロ
ーラ５を経て第１デリベリローラ６による取出速
度より大なる供給速度で流体ノズル７内に供給
し、糸入口８から流体ノズル７内の流体処理部９
に導入された該糸条１に高圧流体供給源に連結さ
れた流体導入口１０から流体処理部９に噴射され
る流体の旋回流によつて該糸条１の構成単糸を略
集束した状態で高速回転を与える。高速回転によ
つてトルクを付与された該糸条１を流体の旋回流
に沿つて旋回させながら流体処理部９中を先端の
吹出口１１側に移行させ、吹出口１１から噴出す
る流体とともに流体ノズル７外に引出す。流体ノ
ズル７外に引出された該糸条１を第１デリベリロ
ーラ６によつてフイードローラ５による供給速度
より小なる取出速度で流体の噴出方向と異なる方
向（角度ａ）に取出して第４図のように糸条１の
長手方向にわたつて基端が結節状部４を有するル
ープ状のネツプ２ａやスナール状のネツプ２ｂ等
のネツプ２をランダムな出現頻度で間歇的に形成
したネツプヤーンを得る。このネツプヤーンは第
１デリベリローラ６に別に供給された異染性糸条
３と第１デリベリローラ６で引揃えられる。ここ
で引揃えられたネツプヤーンと異染性糸条は流体
処理ノズル１２に供給され、交絡されて複合糸１
５となり、第２デリベリローラ１４を経て捲取ド
ラム１３に捲取られる。第２図に示した例のよう
にネツプヤーンと異染性糸条とを合糸するに際し
て、流体交絡処理を採用するとネツプヤーンの製
造工程と複合糸の製造工程とを一種の工程とする
ことができ、簡単に本発明の複合糸を得ることが
できる。 本発明のネツプヤーンは上記のように流体処理
などによつて得られるが、ネツプヤーンと異染性
糸条との合糸には上記のような流体交絡処理の他
合撚、カバリング等が採用される。合糸方法は編
織物の外観、風合、杢状態等要求される用途によ
つて選択すればよい。 以下、本発明を実施例にて具体的に説明する。 実施例 １ 第３図に示した流体ノズル７を第２図のように
フイードローラ５と第１デリベリローラ６間にマ
ルチフイラメント糸条の走行方向と略直角に設
け、流体交絡処理ノズル１２を設置しない以外は
第２図と同様な装置を用いてカチオン可染性ポリ
エステル糸75D／36Fを表１の条件で処理し、ル
ープ状のネツプやスナール状のネツプを間歇的に
有するネツプヤーンを製造した。次いで上記で得
られたネツプヤーンと通常のポリエステル仮撚加
工糸150D／48FとをＳ撚800T／Ｍで合撚して複
合糸となし、該複合糸を緯糸とし、通常のポリエ
ステル仮撚加工糸150D／48Fを経糸として、平織
組織で製織した。製織後、織布をカチオン染料と
分散染料で染色し、杢調織物を得た。得られた織
物は布帛表面の大部分を占める通常のポリエステ
ル部の間にカチオン可染ポリエステル部が散在し
て両者の色差によつて杢調を呈し、しかも布帛の
大部分を占めるポリエステル部とは色調の異なる
ネツプが布帛から浮き出ており、杢調効果と布帛
から浮き出たネツプの単色効果が相剰的に発揮さ
れた新規な表面意匠効果を有するものであつた。
さらに、複合糸の解舒性は良好で製織時の解舒も
スムーズであつた。 実施例 ２ 第２図のような装置を用いてポリエステル糸
75D／48Fを表１の条件で処理し、ネツプヤーン
製造と複合糸製造の両工程を一連で行なつた。上
記で得られた複合糸と、ポリエステル仮撚加工糸
150D／48Fを用いてモツクミラノリブ組織の編地
を編成した。編成した編地を分散染料と直接染料
で染色し、杢調編物を得た。得られた編物は布帛
表面の大部分を占めるポリエステル部と散在する
レーヨン部との色差によつて杢調を呈し、しかも
杢調編地からネツプが浮き出た新規な意匠効果を
有するものであり、さらに編地の抗スナツギング
性も良好で、編地表面のネツプは糸切れしにくい
ものであつた。また、複合糸の解舒性も良好で編
成時の解舒もスムーズであり、ネツプ結節状部の
解けによると思われる編欠点もなかつた。 【表】

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の織物の一例を示す部分拡大断
面図、第２図は本発明に使用されるネツプヤーン
と複合糸の製造例を示す工程図、第３図は同上に
使用する流体ノズルの一実施例の断面図、第４図
はネツプヤーンの一実施例を示す概略側面図であ
る。図中１はマルチフイラメント糸条、２はネツ
プ、３は異染性糸条、４は結節状部、７は流体ノ
ズル、１１は吹出口、１５は複合糸である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 一本のマルチフイラメント糸条の長手方向に
   わたつて基端が結節状部となつたループ状のネツ
   プ及びスナール状のネツプのうち少なくとも一種
   を間歇的に有するネツプヤーンと、このネツプヤ
   ーンとは染色性の異なる異染性糸条とを合糸して
   得られる複合糸を少なくとも一部に使用して製編
   織した布帛であつて、該布帛表面にネツプが浮き
   出てなることを特徴とする表面意匠効果を有する
   杢調編織物。