JP2867245B2 - 嵩高織物 - Google Patents

嵩高織物

Info

Publication number
JP2867245B2
JP2867245B2 JP8292599A JP29259996A JP2867245B2 JP 2867245 B2 JP2867245 B2 JP 2867245B2 JP 8292599 A JP8292599 A JP 8292599A JP 29259996 A JP29259996 A JP 29259996A JP 2867245 B2 JP2867245 B2 JP 2867245B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
yarn
multifilament
loop
composite
fiber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP8292599A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09170129A (ja
Inventor
修 杉田
三浦俊昭
鍋島敬太郎
彰 小川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TORE KK
Toray Textiles Inc
Original Assignee
TORE KK
Toray Textiles Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TORE KK, Toray Textiles Inc filed Critical TORE KK
Priority to JP8292599A priority Critical patent/JP2867245B2/ja
Publication of JPH09170129A publication Critical patent/JPH09170129A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2867245B2 publication Critical patent/JP2867245B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マルチフィラメン
ト嵩高糸を用いた高密度でソフトな嵩高織物に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】マルチフィラメント糸を走行させながら
流体乱流域に導き、糸の表面に開ループと閉ループとが
混在して突出した嵩高糸を形成させることが知られてい
る。この手段によって得られた嵩高糸は紡績糸様の風合
と嵩高性をもち、しかも紡績糸にはみられない均一な太
さをもっている。
【0003】従釆からスキーウエアや登山ウエアなどの
防寒衣料の分野には木綿の高級番手使いの高密度織物が
使用されてきた。しかし、木綿の高級番手の糸を経糸と
緯糸に用い高密度に製織することから、他の織物の製織
に比べ、経糸切れが多く製織能率が低下することに起因
して極めて高価となり、一般への普及が妨げられるとい
う欠点があった。
【0004】そこで木綿高級番手に匹敵する糸の太さを
もち、太さも任意に変えることができ、しかも強度も大
きい合成繊維マルチフィラメント糸を用いて紡績糸風の
風合と嵩高性をもつ高密度織物の開発が行なわれたが、
初期においては満足なものが得られなかった。
【0005】合成繊維マルチフィラメント糸は紡績糸に
比べ、極めて均斉な太さをもった糸条であるが、嵩高性
に欠けるという欠点がある。したがって合成繊維マルチ
フィラメント糸の均斉な太さを損うことなく、嵩高化す
る技術が種々提案されている。これらの手段として仮撚
捲縮加工、賦型捲縮加工、擦過捲縮加工、流体嵩高加工
などが挙げられる。中でも流体嵩高加工によって得られ
た嵩高糸は前記した他の手段によって得られた糸条とは
異なり、非伸縮性でかつ非施回性であるという特徴をも
っていることから、この糸条を織物に用いた場合、他の
捲縮糸に比べ、形態安定性に優れている。
【0006】したがって、この糸を用いて製織した織物
は紡績糸のような糸むらのない均一な外観をもち、しか
も嵩高性にすぐれたものが得られる。しかし流体嵩高加
工によって得られた糸条はその表面に微細な開ループと
閉ループとが混在して突出している形態をもっているこ
とから、嵩高性には優れているものの高次加工通過性は
余りよくない。特に織物とする場合、経糸に使用する
と、前記したように糸表面に微細な突起をもっているた
めに綜絖や藤の通過性が悪く糸切れの原因となるばかり
でなく、隣接する経糸同志がファスナー効果により絡み
合って開口不良を起こす原因となって製織能率を著しく
低下させる結果、高密度織物の経糸には利用できないと
いう致命的な欠陥を有している。
【0007】更に或る分野においては、木綿の細番手を
使用した本来の高密度嵩高織物の特徴であるソフトでし
なやかな嵩高性、あるいはナチュラルな表面光沢および
外観を備えた高級品が要望されるようになった。このよ
うな要求を満足させる試みとして流体乱流処理によって
得られる嵩高糸を製造するに際し、嵩高糸を構成する糸
条にポリアミド繊維成分とポリエステル繊維成分とから
なる分割分繊型複合繊維を用いて製織後、細繊維に分割
することによってソフトでしなやかな嵩高性を織物に付
与することが特開昭61-6348号公報で試みられている。
しかし特開昭61-6348号に開示されている技術は、ポリ
アミド繊維成分とポリエステル繊維成分とを複合せしめ
た分割、分繊型複合繊維マルチフィラメント糸を流体乱
流処理して得られた嵩高糸を製編織して布帛とし、その
布帛を薬剤により分割・分繊させて0.4デニール以下
のポリエステル成分からなる環やタルミを形成させるよ
うにしたものであり、高密度化するための技術について
は何ら開示していない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した従来技術の欠陥を改善し、木綿の高級番手を使用し
て得た高密度織物のソフトでしなやかな嵩高性、独特の
表面光沢および外観を凌駕する新規な嵩高織物を提供す
るものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
せんとするものであって、次の構成からなるものであ
る。すなわち、本発明の嵩高織物は、織物を構成してい
る全部もしくは一部の糸条の表面に開ループと閉ループ
とが混在して突出しており、該開ループや閉ループはそ
の単繊維繊度が0.4d以下の細繊維からなり、これら
の細繊維の複数本が集合状態を保持しつつ、前記ループ
を形成していることを特徴とするものであり、そして、
上記糸条は、比較的芯側に高収縮繊維からなるマルチフ
ィラメント糸が位置し、比較的鞘側に低い収縮率を有す
る分割可能型複合繊維マルチフィラメント糸が位置して
なる複合糸に、熱収縮処理と細繊維に分割せしめる処理
が施された糸条であることが好ましく、さらに、上記比
較的芯側に位置しているマルチフィラメント糸の単繊維
繊度は1〜15デニールであることが好ましい。
【0010】本発明のかかる嵩高織物は、高収縮繊維か
らなる合成繊維マルチフィフメント糸と、低い収縮率を
有する分割可能型複合繊維マルチフィラメント糸とをオ
ーバーフィード率を異にして流体乱流域に供給し、前者
のマルチフィラメント糸が比較的芯側に位置し、後者の
フィラメント糸が比較的鞘側に位置して糸表面に開ルー
プや閉ループが混在して突出している態様のマルチフィ
ラメント複合糸となし、そのマルチフィラメント複合糸
を経糸および緯糸もしくはそのいずれか一方に用いて織
成し、しかるのち得られた織物をそのマルチフィラメン
ト複合糸の長手方向に収縮せしめたのち、その分割可能
型複合繊維を細繊維に分割せしめることによって有利に
得ることができる。
【0011】また、本発明で用いられるマルチフィラメ
ント複合糸においては、上記分割可能型複合繊維マルチ
フィラメント糸を構成している個々の単繊維がループを
形成しつつ、その分割可能型複合繊維マルチフィラメン
ト糸を構成する他の個々の単繊維と交絡混繊し、かつ比
較的芯側に位置するそのマルチフィラメント糸を構成し
ている個々の単繊維とも交絡混繊している交絡混繊マル
チフィラメント糸が好ましく、さらに上記の流体乱流域
を通過せしめて得られる交絡混繊糸を一定のアンダーフ
ィード率で緊張処理したのち製織することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】更に本発明を詳しく説明する。
【0013】本発明の嵩高織物の製造において好ましく
用いられる交絡混繊マルチフィラメント複合糸は、芯鞘
型複合糸であって、芯糸には高収縮マルチフィラメント
糸が用いられ、鞘糸には比較的低収縮率で分割可能型複
合繊維マルチフィラメント糸が用いられ、両者のマルチ
フィラメント糸がオーバーフィード率を異にして流体乱
流域を通過せしめられることによって得られるものであ
る。
【0014】この交絡混繊マルチフィラメント複合糸の
特徴は、芯糸と鞘糸の機能が分離されていることにあ
る。すなわち、芯糸は、高収縮率を示す繊維からなって
おり、複合糸を織物としたのち、熱処理によってその芯
糸を収縮させることにより、織物を高密度化すると共に
複合糸の嵩高性を増大させることから、織物の嵩高度を
増大させるという優れた機能を示す。一方鞘糸は、低収
縮でしかも分割可能型複合繊維からなっているため、複
合糸を織物としたのち熱処理することにより、芯糸の収
縮率よりも鞘糸の収縮率の方が低いために、芯糸との収
縮率の差分が表面に突出して嵩高性をさらに増大させる
こととなる。さらに鞘糸は、分割可能型複合繊維である
から、収縮処理された織物を、続いてその鞘糸を細繊維
に分割する分割処理を行なうことにより、織物の表面お
よび内部に存在している開ループ、閉ループを形成して
いる単繊維が細繊維に分離され、織物の触感を極めてソ
フトにすることができるという特徴をもっている。通
常、流体乱流域をオーバーフィード下に通過して得られ
る嵩高糸は、この糸の表面に開ループと閉ループとが混
在して突出した機能を示し、これらの開ループ、閉ルー
プは単繊維相互の交絡混繊によってほぼ固定されてい
る。したがって糸目体は嵩高であるし、この糸が平行に
近接して引揃えられた場合には、お互いの表面に突出し
ているループのためにファスナー効果を示し、互いにく
っついて離れにくくなり、甚だしい場合には糸がもつれ
たと同様の現象を示すことから、非伸縮性で嵩高いとい
う特殊な性能をもちながら、これまで織物の経糸やトリ
コットには殆ど用いられなかった。
【0015】しかし、本発明で好ましく用いられる交絡
混繊マルチフィラメント複合糸の場合は、上記したよう
な欠陥は、次のような嵩高潜在化処理を行なうことによ
り、流体乱流域の通過によって発生した開ループ、閉ル
ープのうち粗大なものを消去し、前記したようなファス
ナー効果やからみ、もつれなどによる隣接糸間のトラブ
ルを解消させることができる。
【0016】嵩高潜在化処理とは次のような処理をい
う。すなわち、上記したように粗大なものは開ループを
形成し、複合糸を構成している単繊維の一部がたるんで
いるようにみえる。したがって、糸条をこのたるみ相当
分だけ引張れば粗大ループは糸条の中に吸収されて消滅
する。これは、例えば製造装置上において連続的にアン
ダーフィード下で緊張処理することによって達成され
る。この緊張処理のことを本発明においては嵩高潜在化
処理という。このように嵩高潜在化処理をうけても交絡
混繊マルチフィラメント複合繊維を構成している単繊維
相互の交絡混繊はそのままの状態を保ち、複合糸の集束
性を保持しているので高次加工通過性を低下させること
はない。
【0017】図1は、本発明で好ましく使用される交絡
混繊マルチフィラメント複合糸の製造工程の一例を示す
概略図である。図1に示されるように、パッケージ1か
ら解舒された高収縮繊維マルチフィラメント糸からなる
芯糸2は、第1の供給ローラ3を介して流体乱流域(実
際には圧空)を形成する加工装置4に低オーバーフィー
ド率で供給される。一方パッケージ5から解舒された低
収縮で分割可能型複合繊維マルチフィラメント糸からな
る鞘糸6は、第2の供給ローラ7を介して前記芯糸2よ
りも大きなオーバーフィード率で加工装置4に供給され
る。これらの芯糸2および鞘糸6は、適当なガイド8,
9を介して同時に加工装置4に供給される。また、ガイ
ド9を介さずに鞘糸6をガイド8から直接加工装置4に
供給することもできる。
【0018】加工装置4の流体乱流域を通過した芯糸2
と鞘糸6は、その表面に開ループと閉ループとが混在し
て突口した状態で交絡一体化された複合糸10に形成さ
れ、引取ローラ11を通過し、続いて設けられた緊張ロ
ーラ12により、複合糸10を引取口ーラ11と緊張ロ
ーラ12の間で適当な緊張率(アルダーフィード)で引
張りによって、嵩高潜在化処理が施され、しかるのち複
合糸10は巻取装置13によりパッケージ14に巻上げ
られる。パッケージ14に巻上げられた複合糸10の表
面は、大きなループが糸条の表面より消滅し嵩高糸とは
思えない表面の平滑な複合糸となっている。
【0019】図2は、本発明で好ましく用いられる交絡
混繊マルチフィラメント複合糸の外観を示す概略図で、
(A)は嵩高潜在化処理前のものであり、(B)は嵩高
潜在化処理後のものである。
【0020】図2(A)に示したように、交絡混繊マル
チフィラメント複合糸10においては、芯糸2を形成し
ている高収縮マルチフィラメント糸が比較的複合糸10
の芯側に主として位置しており、比較的鞘側には低収縮
で分割可能型複合繊維マルチフィラメント糸からなる鞘
糸6が位置している。鞘糸6を構成している個々の単繊
維15は大小様々な大きさのループを形成しつつ、図2
(A)に示されるように、その鞘糸6を構成する他の個
々の単繊維と交絡および/または混繊し、かつ芯糸2を
構成している個々の単繊維16とも交絡および/または
混繊し、個々の単繊維が夫々交絡、混繊により集束され
た複合糸10を形成している。
【0021】複合糸の表面に形成されているループはΩ
字状またはl(アルファベット小文字エル)字状の閉ル
ープと、高さの割に開口部の長さが長い弓状をなした開
ループ(たるみとも言われている)が混在し、これらの
ループは複合糸の表面にランダムに突出している。これ
らのループは大小様々な大きさをもっているが、小さい
ものはΩ字状またはL字状の閉ループを形成し、大きな
物は弓状の開ループを形成している率が大きい。これら
のループの数と大きさは、芯糸と鞘糸の素材構成や加工
条件により定まるものである。これらのループのうち、
中・小のものは比較的安定で閉ループを形成している。
しかし大きなループは開ループが多く、しごかれて移動
したり、隣接する糸条のループなどと絡み合ってもつれ
たりするという現象が現われ、高次加工通過性を低下さ
せる原因ともなる。したがってこの現象を除去するため
に前記した嵩高潜在化処理を行なうものである。
【0022】図2(B)をみればわかるように、嵩高潜
在化処理された複合糸10は小さなループは残っている
ものの、全体として表面の平滑な普通糸のような態様を
呈していることがわかる。
【0023】図2(B)に示した性状の複合糸を用いる
と高次通過性は極めてよく整径工程をも容易に通過する
し、綜絖や筬の通過性もよく、また経糸の開口不良もな
くなる。
【0024】本発明で用いられる芯糸の高収縮マルチフ
ィラメント糸については、次のような性質のものを用い
るのがよい。
【0025】先ず、この糸条の収縮率は、熱収縮または
液処理による膨潤などの収縮処理により少なくとも10
%であることが望ましい。収縮率が小さいと織物に満足
な嵩高性と高密度を付与できないことになるからであ
る。この収縮処理は熱処理で行なわれることがよく、さ
らに沸騰水で行なうことができればより好ましい。また
この芯糸は、織物にしたのち糸条を十分に収縮させるこ
とが必要であるから少なくとも複合糸全体に対する繊維
の比率は少なくとも30%であることが望ましい。この
比率が小さいと満足な収縮率が得られないことになる。
また芯糸を構成する単繊維は余り細いと収縮力が低下す
るし、太くなれば収縮力は大きくなるものの織物の柔軟
性が損なわれることになる。勿論鞘糸の構成にもよるが
1〜15dの範囲が適当である。
【0026】また芯糸に用いる素材は特に限定されな
い。しかし、収縮を熱により行なわせようとすれば熱可
塑性の合成繊維マルチフィラメントを用いることが好ま
しい。さらに鞘糸の素材とも関連するが、単一成分全体
よりも共重合体を含む合成繊維を用いることが望まし
い。
【0027】本発明で用いられる低収縮で分割可能型複
合繊維マルチフィラメント糸の鞘糸は、次のような性質
をもっているものである。
【0028】まず、分割可能型複合繊維マルチフィラメ
ント糸であり、製織後に、この複合繊維の単繊維を分割
して細繊維化できる構成としたものであって、分割は機
械的剥離型、収縮率の不同または薬液による膨張剤用剥
離型、海島型の海部溶解除去型など、適当な手段を介し
て1本の単繊維が複数本の細繊維に分割できる複合繊維
であることが望ましい。この糸条は複合糸全体において
少なくとも30%以上の繊維をもつことが望ましい。こ
の含有率が小さいと、鞘繊維としての量が不足して満足
な嵩高性が得られないことになるからである。さらに、
この糸条を構成する個々の単繊維の太さは0.5〜2.
5dである。細すぎる場合には、各加工工程中で単繊維
切れが多発して製品品位を低下させると共に、操業率の
低下をもたらすので好ましくない。また太すぎると、細
かい閉ループが出来にくくなり、嵩高で均斉な複合糸が
得難くなるからである。また単繊維中に包含されている
細繊維の太さは0.4d以下とする。これより太くなる
と極めてソフトな触感は得られ難くなる。
【0029】さらに鞘糸の収縮率は芯糸の収縮率よりも
少なく、かつ芯糸との収縮率の差が少なくとも5%ある
ことが好ましい。この芯糸と鞘糸の収縮率との差が大き
い程、嵩高性は大きくなる。すなわち、芯糸と鞘糸の収
縮率の差に相当する鞘糸の長さ分が芯糸よりも外側に突
出したものとなるからである。この収縮率の差が少ない
と、嵩高潜在処理したものは熱処理により織物を収縮さ
せても織物の密度はそれ相当に増加するが、嵩高はあま
り増加しないことになるからである。
【0030】上述したようにして得られ、上記のような
性状をもつ交絡混繊マルチフィラメント複合糸を、織物
の経糸および緯糸、あるいは経糸と緯糸のいずれかに用
いて通常の手段により製織する。製織に際しては、織物
の収縮する度合い、嵩高の増加度合を考慮して設計が行
なわれ、その設計に基づいて製織される。製織において
は何ら特別の手段を用いることなく、通常の手段により
行なわれる。得られた織物は、通常の手段により精練、
染色、処理加工が行なわれるが、これらの過程におい
て、交絡混繊マルチフィラメント複合糸の長手方向に少
なくとも収縮処理が行なわれ、織物の密度を高密度化さ
せると共に嵩高化される。これらの収縮処理において熱
処理により収縮手段を用いると工程が簡略化できるので
好ましい。本発明において、熱処理による収縮が完了す
ると引続いて分割可能型複合繊維マルチフィラメント糸
の細繊維化処理が行なわれる。この細繊維化処理も公知
の手段が適用されるが、海成分または接着成分を溶解除
去する液処理が簡単で確実に実施できることから、この
手段を用いることが好ましい。
【0031】このようにして得られた本発明の嵩高織物
は、織物を構成している全部もしくは一部の糸条の表面
に開ループと閉ループとが混在して突出していて、これ
らの開ループや閉ループは主にその単繊維繊度が0.4
d以下の細繊維からなっており、そして特徴的なこと
は、これらの細繊維の複数本が実質的に集合状態を保持
しつつ、かかるループを形成していることである。本発
明の実施において、細繊維化のための分割処理条件等に
もよるが、中には、ループ全体に亘っては細繊維化され
ていない状態のループや、細繊維化されてはいるが個々
の細繊維がバラケていているものも含まれている。
【0032】本発明において、前記した潜在ループヤー
ンの製造方法は、次のような条件でなされることが好ま
しい。すなわち、芯糸と鞘糸を個々の供給ローラから異
なったオーバフイード率で圧空乱流域を形成している加
工装置(圧空供給量80〜120NL/min)に供給
し、加工装置より排出され、交絡、混繊処理を施された
潜在ルーブヤーンを同一の引取ローラによって引取る。
【0033】ここでいうオーバフイード率とは、供給ロ
ーラの表面速度をV1 とし、引取ローラの表面粗度をV
2 としたとき、フイード率をF(%)とすると、F
(%)=[(V1 −V2 )/V2 )]×100の値が
(+)となった場合にオーバフイード率という。
【0034】そして、芯糸のオーバフイード率αを2〜
15%、鞘糸のオーバフイード率βを5〜30%となる
ように条件を定めるとよい。
【0035】さらに好ましい条件としては、引取ローラ
11から引き出された糸を緊張ローラ12により、前記
芯糸のオーバフイード率αに対し、0.4α〜0.8α
のアンダーフイード率で連続的に緊張せしめつつ巻き取
ることである。
【0036】また、潜在ループヤーンを製造する過程に
おいては芯糸のオーバフイード率αを2〜15%、鞘糸
のオーバフイード率βを5〜30%とし、両者の差β−
αを3〜15%とするのが良い。この条件は小さなルー
プとタルミを圧空乱流域で多く作るのに適した領域であ
る。
【0037】上記の方法によって得られる潜在ループヤ
ーンは、糸の表面に微細なループとタルミを有する異収
縮交絡混繊合成繊維マルチフイラメント複合糸であり、
無緊張下での熱処理により、前記微細なループの数、お
よび大きさを増大させることができるものである。
【0038】上記の微細なループは、下記に定義するル
ープAが300個/m以上、ループBが50個/m以
上、ループCが10個以下程度有しているものである。
また、98℃の熱水中で10分間自由収縮させて熱処理
したときには、乾燥後のループBの数が熱処理前の1.
5倍以上、ループCが50個/m以上となる。ここでい
うループA、ループBおよびループCとは、走行中の糸
のループ数や毛羽数を計測する光電型毛羽測定機(TO
RAY FRAY COUNTER)を用い、糸速度5
0m/min、走行張力0.1g/dの条件で測定し、
糸表面より0.15mm以上突出したループ個数/mを
ループA、0.35mm以上突出したループ個数/mを
ループB、および0.6mm以上突出したループ個数/
mをループCとしたものである。
【0039】上記の方法によって得られる潜在ループヤ
ーンは、比較的芯側に位置するマルチフィラメント糸は
高収縮糸からなり、比較的鞘側に糸するマルチフィラメ
ント糸は普通または低収縮糸からなっている。そして潜
在ループヤーンの中に存在するループ、タルミの数およ
び大きさも少なく、嵩高度も比較的小さい。特に糸表面
から0.6mm以上突出したループ、タルミが10個/
m以下と極めて少なく、ほとんどないに等しい程度のも
のである点に特徴を有する。
【0040】すなわち、糸が圧空乱流域を通過し、交絡
混繊複合糸として加工された直後の状態においては嵩高
糸としの外観はほとんど見られない。
【0041】しかし、この潜在ループヤーンを98℃の
熱水中で10分間無緊張下で熱処理を行なうと、芯糸は
高収縮糸で鞘糸は低収縮糸または普通収縮糸であるか
ら、潜在ループヤーン自体が収縮する。潜在ループヤー
ン自体が収縮すると、この糸を構成する芯糸個々のフイ
ラメントと鞘糸のフイラメントとは互いに交絡混繊によ
って縺れあっており、しかも鞘糸は普通収縮糸もしくは
低収縮糸であるから、個々のフイラメントの収縮は少な
く、芯糸の収縮にともなってループ、タルミとなって糸
表面に突出した嵩高な潜在ループヤーンとなる。
【0042】熱処理によりループとタルミを顕在化させ
た顕在ループヤーンは、糸表面から0.35mm以上突出
したループBは処理前のそれに比べて1.5倍以上、糸
表面から突出したループCは50個/m以上に増加し、
嵩高性を著しく増加させる。このようにして得られる潜
在ループヤーンは、糸の製造時において、ループとタル
ミは潜在しており、糸表面に突出しているループCは極
めて少ない。したがって、糸自身の嵩高は低く、糸表面
は比較的滑らかであるから、糸の走行抵抗は小さい。
【0043】特に織物の経糸として使用する場合、綜絖
と筬の通過性も良く、また、ループ相互の絡みもなく、
開口不良を起すこともない。したがって、織物の経糸に
使用することができる。そして製織後の染色加工時に、
高温、無緊張下で熱処理(乾燥、湿熱、蒸熱)を単独
で、または染色と併用して行なうことにより、潜在ルー
プヤーンのループとタルミを顕在させることにより、高
密度で嵩高な織物を得ることができるのである。
【0044】
【実施例1】 実施例1 芯を構成するマルチフィラメント糸として、沸騰水収縮
率20%を有するポリエステル糸マルチフィラメント糸
30デニール12フィラメントを、鞘糸を構成するマル
チフィラメントとして、沸騰水収縮率8%のポリエステ
ル糸の分割可能型複合マルチフィラメント50デニール
36フィラメント(海島型3分割、海成分20%、島成
分80%)を用い、芯糸のオーバーフィード率+10
%、鞘糸のオーバーフィード率+18%で圧空供給量9
0NL/minの乱流ノズルに供給して嵩高糸とし、さ
らに引取ローラと緊張ローラの間でアンダーフィード率
−5.6%の条件で緊張、潜在嵩高化処理を実施して、
次に示すような交絡混繊マルチフィラメント複合糸とし
た。
【0045】 繊度 85デニール 沸騰水収縮率 18.5% ループA 551個/m ループB 192個/m ループC 7.8個/m 上記の複合糸を小綛に巻取り、沸騰水(98℃)中に1
0O分間自由状態で収縮させたのち、その小綛を糸繰し
てボビンに巻返したのち、前と同様にしてループA,
B,Cを測定したところ、 ループA 520個/m ループB 307個/m ループC 148個/m であった。
【0046】前記した潜在嵩高化処理した複合糸を無ヨ
リで経糸に、緯糸に沸騰水収縮率20%を有するポリエ
ステル系マルチフィラメント糸20デニール、8フイラ
メントと沸騰水収縮率8%を有するポリエステル系マル
チフイラメント糸20デニール48フィラメント糸を、
インターレースノズルで混繊した異収縮混繊糸を、下撚
りS−800T/M、上撚りZ−600T/Mで諸撚し
た糸を用い、経密度110本/24.5mm、緯密度8
4本/24.5mmの平織にウオータジェットルームで
製織した。得られた生機をリラックス(98℃)、中間
セット(180℃)、カセイソーダ3%溶液で5%減量
(織物重量比)による脱海・分割処理した後、染色、仕
上げ加工(160℃)を施して得た織物は次のようなも
のであった。
【0047】経密度129本/25.4mm、緯密度1
00本/25.4mmの高密度織物で、その織物の表面
には単糸繊度0.4d以下の極細繊維のループが存在
し、そのループは複数本の細繊維が集合状態を保つ特異
な構造を呈し、極めてソフトな触感でスパン感のある高
密度織物であった。
【0048】実施例2 芯糸にポリエステルマルチフィラメント糸50デニール
24フイラメントを用い、鞘糸に50デニールおよび6
0デニールで単繊維繊度の異なるポリエステルマルチフ
イラメント糸を用いて交絡混繊処理し、交絡混繊マルチ
フイラメント複合糸とした。このようにして得られた複
合糸のループ数(潜在化処理前)、交絡混繊加工性、高
次加工通過性(潜在化処理の有無)および織物風合(触
感のソフトさ)について調べた。得られた結果を表1に
示す。なお、本実施例における交絡混織マルチフイラメ
ント複合糸は、芯糸のオーバフイード率5%、鞘糸のオ
ーバフイード率15%、圧空供給量90NL/minの
乱流ノズルを用いて製造したものである。
【0049】
【表1】 表1の結果から次の点が明らかになった。まず、交絡混
繊加工性については単繊維繊度が2.8dを越えると単
繊維の剛性が高くなり、屈曲、湾曲しにくくなって細か
いループができにくくなることから、高次加工で障害と
なる大きなループが多くなる。
【0050】一方、単繊維繊度が0.4d以下になる
と、単繊維切れで毛羽になりやすく、糸切れも多発す
る。したがって、単繊維繊度は大きくても、小さくても
よくなく、適性が存在し、本実施例においては0.4〜
2.8dが加工可能領域で、好ましくは0.5〜2.5
dの範囲であるといえる。
【0051】一方、高次加工通過性は前記したループ数
と関連し、単繊維繊度が大きくなると、粗大なループが
多くなり、解舒低杭が大きく、ファスナー効果が増大す
るなどの現象が強くなるし、細くなると毛羽の発生、糸
切れが現われ、好ましくない。このことから、0.4〜
2.0dの範囲がよく、より好ましくは0.5〜1.3
dの範囲である。
【0052】更に、高次通過性Bに示したように、潜在
化処理を行なうことにより、高次通過性は向上し、単繊
維繊度が2.1dとなっても適用できる。
【0053】最後に織物風合(触感のソフトさ)は単繊
維繊度が小さくなるにつれて良くなるが、ある限界を越
えると複合糸自体の加工ができなくなる。
【0054】本発明では、複合糸の鞘糸に分割可能型の
複合繊維を用いており、複合糸の加工が適切に実施でき
るようにその複合繊維の単繊維繊度を選択する。さら
に、複合糸の高次通過性を向上させるために、潜在化処
理を実施し、しかる後にこの複合糸を用いて製織、複合
糸を収縮させて高密度化し、さらに複合繊維の単繊維を
複数の細繊維に分割することにより、織物の風合を向上
させ得るのであるが、この点については本実施例で十分
理解できるのである。
【0055】
【発明の効果】本発明は上記の如き構成とすることによ
り、従来の技術においては奏し得なかった次のようなす
ぐれた作用、効果を示すのである。
【0056】イ)芯糸に高収縮率繊維からなるマルチフ
ィラメント糸を、鞘糸に低収縮率で分割可能型複合繊維
マルチフィラメント糸を用いることにより、極めて高密
度で極めてソフトな触感の織物が得られる。
【0057】ロ)本発明に係る嵩高織物は、上述のよう
な収縮性のある交絡混繊マルチフイラメント複合糸を用
いているために、収縮により織物の密度を極めて高くか
つ嵩高な織物とすることができ、このことは耐水圧性が
高くかつ透湿性を有するという防寒衣料としてすぐれた
特性を示すものである。
【0058】さらに分割可能型複合繊維を分割して細繊
維化することにより織物の風合を極めてソフトとするこ
とができる。
【0059】ハ)これら織物の特性は交絡混繊マルチフ
ィラメントの構成を変えることにより任意に調整するこ
とができる。
【0060】ニ)本発明によれば、交絡混繊マルチフイ
ラメント複合糸を嵩高潜在化処理を行なうことにより、
その糸条の表面から大きなループを消去して嵩高糸とは
思えないような円滑な表面をもつ複合糸とし得るため
に、普通糸と同様に糸扱いが可能であることから、従来
の嵩高糸を用いる場合よりも製織能率を著しく向上させ
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に使用する潜在嵩高複合糸の製
造方法の一例を示す機略図である。
【図2】 図2は本発明に係る交絡混織マルチフィラメ
ント複合糸の外観を示す概略図で、(A)は嵩高潜在化
処理前のものであり、(B)は嵩高潜在化処理後のもの
ある。
【符号の説明】
1:バッケーン 2:芯糸 3:供給ローラ 4:加工装置 5:パッケージ 6:鞘糸 7:供給ローラ 8,9:ガイド 10:複合糸 11:引取ローラ 12:緊張ローラ 13:巻取装置 14:パッケージ 15,16:単繊維
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鍋島敬太郎 大阪市北区中之島3丁目3番3号東レ株 式会社大阪本社内 (72)発明者 小川 彰 大阪市北区中之島3丁目3番3号東レ株 式会社大阪本社内 (56)参考文献 特開 昭61−124638(JP,A) 特開 昭53−86875(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D02G 1/00 - 3/48 D03D 15/00 - 15/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 織物を構成している全部もしくは一部の
    糸条の表面に開ループと閉ループとが混在して突出して
    おり、該開ループや閉ループはその単繊維繊度が0.4
    d以下の細繊維からなり、これらの細繊維の複数本が集
    合状態を保持しつつ、前記ループを形成していることを
    特徴とする嵩高織物。
  2. 【請求項2】前記糸条は、比較的芯側に高収縮繊維から
    なるマルチフィラメント糸が位置し、比較的鞘側に低い
    収縮率を有する分割可能型複合繊維マルチフィラメント
    糸が位置してなる複合糸に、熱収縮処理と細繊維に分割
    せしめる分割処理が施された糸条であることを特徴とす
    る請求項1記載の嵩高織物。
  3. 【請求項3】前記比較的芯側に位置しているマルチフィ
    ラメント糸の単繊維繊度が1〜15デニールであること
    を特徴とする請求項2記載の嵩高織物。
JP8292599A 1996-11-05 1996-11-05 嵩高織物 Expired - Fee Related JP2867245B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8292599A JP2867245B2 (ja) 1996-11-05 1996-11-05 嵩高織物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8292599A JP2867245B2 (ja) 1996-11-05 1996-11-05 嵩高織物

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP63184841A Division JP2816846B2 (ja) 1988-07-25 1988-07-25 交絡混繊マルチフィラメント複合糸およびその糸を用いた嵩高織物の製造法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09170129A JPH09170129A (ja) 1997-06-30
JP2867245B2 true JP2867245B2 (ja) 1999-03-08

Family

ID=17783880

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8292599A Expired - Fee Related JP2867245B2 (ja) 1996-11-05 1996-11-05 嵩高織物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2867245B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100624146B1 (ko) * 2002-04-09 2006-09-18 주식회사 코오롱 스웨드 효과가 우수한 이수축 혼섬사 및 그의 제조방법
KR20040015827A (ko) * 2002-08-06 2004-02-21 주식회사 코오롱 스웨드 효과가 우수한 기모 테리 환편지 및 그의 제조방법

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5386875A (en) * 1977-01-12 1978-07-31 Teijin Ltd Production of rased cloth
JPS61124638A (ja) * 1984-11-20 1986-06-12 株式会社クラレ 特殊混繊糸とその製造法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09170129A (ja) 1997-06-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4292763B2 (ja) 複合布帛およびその製造方法
US5312677A (en) Latent looped yarn, a fabric made of the same, and a method for manufacturing the latent looped yarn
JPH0734341A (ja) 混繊複合糸およびその製造方法ならびに編織物
JP4497648B2 (ja) 複合弾性糸及びその製造方法
JP2867245B2 (ja) 嵩高織物
JP2816846B2 (ja) 交絡混繊マルチフィラメント複合糸およびその糸を用いた嵩高織物の製造法
JP2935043B2 (ja) 被覆弾性糸およびその製造方法
JP3080964B2 (ja) 弾性交絡加工糸およびその製造方法
JPH0711531A (ja) スパン複合嵩高糸
JP2895490B2 (ja) 絹紡糸調嵩高加工糸の製造方法
JP2925608B2 (ja) 仮撚複合糸、およびその製造方法
JP2829060B2 (ja) 複合紡績糸及びその製造方法
JP2805066B2 (ja) 梳毛調織物
JP2654969B2 (ja) 嵩高織物とその製造法
JP2986245B2 (ja) 混繊糸及びその製造方法
JP2759205B2 (ja) 高密度織物
JPS60104543A (ja) 紡績糸様フイラメント糸
JP2878758B2 (ja) 嵩高交絡糸の製造方法
JP2003041443A (ja) ナイロン複合混繊糸
JPH0313341B2 (ja)
JP2885833B2 (ja) 嵩高加工糸の製造方法
JPS61124637A (ja) 特殊混繊糸
JPS6119736B2 (ja)
JP2021161550A (ja) ポリエステル複合仮撚糸
JP2839294B2 (ja) 複合糸の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees