JP7516081B2 - デュアル硬化型接着剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、光照射および加熱によって、カチオン重合により硬化し得るデュアル硬化型接着剤組成物、その硬化物ならびにこれを用いたカメラモジュールに関する。
車、スマートフォン等に搭載されるカメラモジュールは、レンズと、それを保持する筒型のレンズホルダと、レンズが集光した光を電気信号へと変換する、基板上に固定された撮像素子とを有する。このカメラモジュールの組み立てにおいては、レンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを強固に接着する必要がある。この接着のため、接着剤が使用されている(特許文献1)。
レンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを接着するに際しては、レンズと撮像素子との間の距離が正確に保たれるようにする必要がある。具体的には、レンズと撮像素子の受光面との距離を、レンズの焦点距離と一致させる必要がある。この目的のため、UV・熱硬化型接着剤を用いることが提案されている(特許文献2)。
UV・熱硬化型接着剤組成物として、密着力が高く、機械的強度、耐水性等に優れることから、エポキシ樹脂を含む組成物が知られている。一方、エポキシ樹脂を含む組成物は150℃以上の高温での硬化が必要となる場合が多く、熱に弱い部材を接着する用途に適していなかった。従って、低温で迅速に硬化でき、かつ耐熱性が高い硬化物を形成できる接着剤組成物の開発が求められていた。
光と熱の両方で硬化する接着剤として、例えば、特許文献3には、エポキシ樹脂成分、光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤、および充填剤を含有するカチオン硬化型エポキシ樹脂組成物が提案されている。特許文献3の実施例等では、光カチオン開始剤および熱カチオン開始剤としてアンチモン含有化合物が用いられている。
特開2007-184801号公報 特開2009-141406号公報 WO2005/059002号公報
特許文献3のように、熱カチオン重合開始剤としてアンチモン含有化合物を用いると、硬化速度が速く、かつ低温で硬化できることが知られている。しかしながら、アンチモンは毒性が高く取扱いが困難であるという問題があったため、これを用いずに低温硬化でき、かつ硬化物の高耐熱性を達成できる接着剤組成物の開発が求められていた。
そこで、本発明は、毒性が低く、低温硬化が可能で、かつ硬化物の耐熱性が高い接着剤組成物を提供することを目的とする。
本発明および本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
1. 成分(a1):オキセタン化合物と、
成分(a2):脂環式エポキシ化合物と、
成分(a3):芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物と、
成分(b):光カチオン重合開始剤と、
成分(c):テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物を含む熱カチオン重合開始剤と
を含むデュアル硬化型接着剤組成物であって、
前記成分(a1)、前記成分(a2)および前記成分(a3)の合計100質量部に対し、
前記成分(a1)の含有量が、20~95質量部であり、
前記成分(a2)の含有量が、3~55質量部であり、
前記成分(a3)の含有量が、3~45質量部である、デュアル硬化型接着剤組成物。
2. 前記成分(c)が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸のアンモニウム塩である、上記1に記載のデュアル硬化型接着剤組成物。
3. さらに、成分(d)無機フィラーを含む、上記1または2に記載のデュアル硬化型接着剤組成物。
4. カメラモジュール組み立てのために用いられる、上記1~3のいずれか一項に記載のデュアル硬化型接着剤組成物。
5. 上記1~4のいずれか一項に記載のデュアル硬化型接着剤組成物が硬化された硬化物。
6. 上記5に記載の硬化物を含む、カメラモジュール。
本実施形態によると、アンチモン化合物を用いることなく120℃以下の低温で硬化でき、かつ、硬化物の耐熱性に優れるデュアル硬化型接着剤組成物を提供できる。
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物(以下、単に「組成物」または「接着剤組成物」とも記載する)の一態様は、
成分(a1):オキセタン化合物と、
成分(a2):脂環式エポキシ化合物と、
成分(a3):芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物と、
成分(b):光カチオン重合開始剤と、
成分(c):テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物を含む熱カチオン重合開始剤と
を含み、
前記成分(a1)、前記成分(a2)および前記成分(a3)の合計100質量部に対し、
前記成分(a1)の含有量が、20~95質量部であり、
前記成分(a2)の含有量が、3~55質量部であり、
前記成分(a3)の含有量が、3~45質量部である。
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物は、低温(例えば、120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは、80℃以下)で、高い反応率で熱硬化することができ、かつ、硬化物は高いガラス転移温度(Tg)を有する。また、本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物は、熱カチオン重合開始剤として毒性の高いアンチモン含有化合物を用いる必要がなく、安全性に優れる。
以下、各成分について説明する。
<成分(a1):オキセタン化合物>
オキセタン化合物(単に成分(a1)とも記載)は、分子内にオキセタン環を有する化合物であれば特に限定されず、3-オキセタニル基を有することが好ましく、必要に応じてその他の官能基を有してもよい。オキセタン化合物は分子内に少なくとも1つのオキセタン環を有していればよいが、好ましくは2以上のオキセタン環を有するのが好ましい。オキセタン基を2個以上有する多官能モノマーのオキセタン当量は、特に限定されないが、400以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、また好ましくは100以上である。
オキセタン化合物として、特に限定はされないが、例えば、下記式(a1-1)で表される、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル 〔(3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン)〕、下記式(a1-2)で表されるキシリレンビスオキセタン、4,4’-ビス[3-エチル-(3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、(3-エチルオキセタン-3-イル)メタクリル酸メチル、(ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]イソフタレート)等が挙げられる。
オキセタン化合物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の一態様において、成分(a1)として、下記式(a1-1)で表される、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタンを含むのが好ましい。成分(a1)の総量中、式(a1-1)で表される化合物の含有量が、80質量%以上であるのが好ましく、100質量%であってもよい。
Figure 0007516081000001
Figure 0007516081000002
式(a1-1)で表される化合物の市販品として、OXT-221(商品名、東亞合成株式会社製)が挙げられる。そのほか、オキセタン化合物の市販品として、東亞合成株式会社製のOXT-212、OXT-101、OXT-121、宇部興産株式会社製のEHO、OXMA、OXBP、HBOX、OXIPA等が挙げられる。
組成物は、成分(a1)を含むことにより、光カチオン重合の速度が向上し、かつ、熱カチオン重合における反応率が向上する。なお、本明細書において、熱カチオン重合における反応率は、後述の実施例に記載の方法により算出することができる。
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物中、成分(a1)の含有量は、成分(a1)、(a2)および(a3)の合計100質量部に対し、下限は、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、よりさらに好ましくは35質量部以上であり、上限は、好ましくは95質量部以下であり、より好ましくは90質量部以下であり、さらに好ましくは80質量部以下であり、よりさらに好ましくは60質量部以下である。
成分(a1)の含有量が少なすぎると光カチオン硬化性が低下してしまう場合がある。成分(a1)の含有量が多すぎると、接着剤の密着力が低下してしまったり、自己反応熱が大きくなり過ぎ、UV等の光照射時の安全性に懸念が生じてしまったりする場合がある。
<成分(a2):脂環式エポキシ化合物>
脂環式エポキシ化合物(成分(a2)とも記載)は、分子内に脂環式エポキシ基を有する化合物であれば特に限定されない。脂環式エポキシ基としては、環状脂肪族骨格を構成する隣接する2つの炭素原子に酸素原子が結合して形成されているもの、及び隣接していない2つの炭素原子に酸素原子が結合して形成されているものをいずれも用いることができる。反応性及び保存安定性の観点から、脂環式エポキシ基としては、隣接する2つの炭素原子に酸素原子が結合して形成されているものを用いることが好ましい。環状脂肪族骨格の炭素数は、特に制限されない。環状脂肪族骨格は、例えば、5員環~8員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがより好ましく、6員環であることが更に好ましい。
脂環式エポキシ化合物における脂環式エポキシ基の数は特に制限されない。脂環式エポキシ基の数は、例えば、組成物の硬化後の耐熱性及び可撓性の観点から、2個~6個が好ましく、組成物の粘度を低める観点から、2個~4個がより好ましい。
脂環式エポキシ化合物における脂環式エポキシ基の数が2個以上である場合、脂環式エポキシ基同士は、単結合で結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。脂環式エポキシ基同士を結合する連結基の種類は特に制限されない。連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基(-CO-)、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びこれらを組み合わせた基が挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18(好ましくは炭素数1~6)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び2価の脂環式炭化水素基(特に2価のシクロアルキレン基)が挙げられる。直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びトリメチレン基が挙げられる。また、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロへキシレン基、1,3-シクロへキシレン基、1,4-シクロへキシレン基、シクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)が挙げられる。
本実施形態の一態様として、脂環式エポキシ化合物は、分子内にシクロヘキセンオキサイド構造およびシクロペンテンオキサイド構造のような環ひずみのあるエポキシ基を有するものを挙げることができる。特にこのようなエポキシ基を1分子内に2個以上有するものが好ましい。
脂環式エポキシ化合物の例として、下記式(1)~(5)で示される化合物、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、エポキシ変性オルガノシロキサン等を挙げることができる。
Figure 0007516081000003
脂環式エポキシ化合物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の一態様において、成分(a2)として、上記式(1)で表される3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを含むのが好ましく、成分(a2)の総量中、式(1)で表される化合物の含有量が、80質量%以上であるのが好ましく、100質量%であってもよい。
式(1)で表される化合物の市販品として、セロキサイド2021P(商品名、株式会社ダイセル製)が挙げられる。そのほか、脂環式エポキシ化合物の市販品として、株式会社ダイセル製のセロキサイド2081、セロキサイド2000、セロキサイド8010、信越化学工業株式会社製のKR470等が挙げられる。
組成物は、成分(a2)を含むことにより、硬化物のTgを向上させることができる。
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物中、成分(a2)の含有量は、成分(a1)、(a2)および(a3)の合計100質量部に対し、下限は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、よりさらに好ましくは20質量部以上であり、上限は、好ましくは55質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは45質量部以下である。
成分(a2)の含有量が少なすぎると、硬化物のTgが低くなり、耐熱性が低下してしまう場合がある。成分(a2)の含有量が多すぎると、低温硬化性が低下してしまう場合がある。
<成分(a3):芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物>
芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物(成分(a3)とも記載)は、分子内に芳香族炭化水素構造とグリシジルエーテル基を有する化合物であれば特に限定されず、分子内に、2個以上の芳香族炭化水素構造と2個以上のグリシジルエーテル基とを有するのが好ましい。
成分(a3)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物およびビスフェノールS型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ化合物およびクレゾールノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物;ビフェニル型エポキシ化合物等が挙げられる。
成分(a3)は、ビスフェノール型エポキシ化合物を含むのが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物およびビスフェノールF型エポキシ化合物から選ばれる少なくとも一種を含むのが好ましく、少なくともビスフェノールA型エポキシ化合物を含むのが好ましい。一般に、ビスフェノールA型エポキシ化合物およびビスフェノールF型エポキシ化合物は、それぞれ、ビスフェノールAおよびビスフェノールFと、エピクロロヒドリンとの反応によって誘導される。本実施形態の一態様として、成分(a3)の総量中のビスフェノールA型エポキシ化合物および/またはビスフェノールF型エポキシ化合物の含有量が、80質量%以上であるのが好ましく、100質量%であってもよい。
芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
成分(a3)は、常温(約23℃)で液体や半固体であるのが好ましいが、固体の化合物を溶解させて使用してもよい。成分(a3)のエポキシ当量は、特に限定されないが、例えば、50~480が好ましく、60~450がより好ましい。
芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物の市販品として、DIC株式会社製の840,840S,850,850S,EXA-850CRP,850LC,860,1050,1055等のビスフェノールA型エポキシ化合物;DIC株式会社製の830,830S,835,EXA830CRP.EXA830LVP,EXA835LV等のビスフェノールF型エポキシ化合物;三菱化学株式会社製の825,827,828,1001,1002等のビスフェノールA型エポキシ化合物;三菱化学株式会社製の806,806H,807等のビスフェノールF型エポキシ化合物;日本化薬株式会社製のRE-310S等のビスフェノールA型エポキシ化合物;日本化薬株式会社製のRE-303S-L等のビスフェノールF型エポキシ化合物;日本化薬株式会社製のNC-3000L、NC-2000L等が挙げられる。
成分(a3)は、デュアル硬化型接着剤組成物に、密着力を付与することができる。
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物中、成分(a3)の含有量は、成分(a1)、(a2)および(a3)の合計100質量部に対し、下限は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、よりさらに好ましくは15質量部以上であり、上限は、好ましくは45質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下であり、さらに好ましくは35質量部以下であり、よりさらに好ましくは30質量部以下である。
成分(a3)の含有量が少なすぎると密着力が低下してしまう場合がある。成分(a3)の含有量が多すぎると、低温硬化性が低下してしまう場合がある。
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物は、成分(a1)、(a2)および(a3)を上記所定の範囲内で含有することにより、密着力に優れ、低温で高い反応率で硬化でき、かつ耐熱性の高い硬化物を形成できる。
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物中、成分(a1):成分(a2):成分(a3)の質量比は、例えば、20~95:3~55:3~45であるのが好ましく、25~70:5~50:5~35であるのがより好ましく、30~60:7~45:5~27であるのがさらに好ましい。
成分(a1)、(a2)および(a3)の合計含有量は、組成物の全質量100質量%中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
<成分(b):光カチオン重合開始剤>
光カチオン重合開始剤は、光照射(好ましくは紫外光照射)によってカチオン活性種を発生するAで表される塩である。ここで、カチオンAは、例えば、芳香族ヨードニウムイオン、芳香族スルホニウムイオンが好ましい。芳香族ヨードニウムイオンは、式:
Ar-I-Ar
で表されるように、Iに結合している基ArおよびArが独立して2つとも芳香族基が好ましく、特に置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
また、芳香族スルホニウムイオンは、式:
Figure 0007516081000004
で表されるように、Sを中心に結合しているAr、ArおよびArがそれぞれ独立してアリール基、特に置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。該置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールチオカルボニル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基等が挙げられる。
本実施形態の一態様において、アニオンBが、B(C のようなB(アリール) イオンである開始剤を含んでもよい。B(アリール) としては、B(C の他に、例えばB(COCF 、B(CCF 等を挙げることができる。アニオンBが、B(アリール) イオンである開始剤は、硬化速度が速い傾向がある。
接着性をより向上させるためには、アニオンBがB(アリール) イオン以外のアニオンを有する開始剤を含んでいてもよい。アニオンBとしては、PF 、〔(Rf)PF6-b(Rfは水素の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bはその個数を表し、1~5の整数である。Rfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)、AsF 、BF 等を挙げることができる。
光カチオン重合開始剤として、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]フェニル-2-チオキサントニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、および下記式で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0007516081000005
光カチオン重合開始剤として用いることができる市販品として、サンアプロ社製の、CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、CPI-310B、CPI-310FG、CPI-410SおよびIK-1;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の、イルガキュア250、イルガキュア270;Elkem社製のBLUESIL PI 2074等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤は一種を単独でも用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
光カチオン重合開始剤の含有量は、特に限定はされないが、成分(a1)、(a2)および(a3)の合計含有量100質量部に対し、下限は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、上限は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
光カチオン重合開始剤として、毒性の低減の観点からアンチモン含有化合物の含有量は小さい方が好ましい。光カチオン重合開始剤の総質量100質量%中、アンチモン含有化合物の含有量は3質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましく、0質量%であるのがさらに好ましい。
<成分(c):熱カチオン重合開始剤>
熱カチオン重合開始剤は、熱によってカチオン活性種を発生し、光照射によっては実用的な量のカチオン活性種を発生し得ない化合物であり、これもAで表される塩である。本実施形態において、カチオン活性種を発生する温度は低温であり、下限は好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、上限は、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下であり、よりさらに好ましくは80℃以下である。
本実施形態において、熱カチオン重合開始剤は、アニオンBが、下記式(c-1):
Figure 0007516081000006
で表されるアニオン種である化合物、すなわち、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物を含むのが好ましい。
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物のカチオン種Aは、下記式(c-2):
Figure 0007516081000007
で表されるアンモニウムカチオンであるのが好ましい。
上記式(c-2)中、Y、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、水素原子、直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状の炭素数1~20のアルキル基、又はアリール基を示す。Y、Y、Y、及びYの少なくとも1つはアリール基であることが好ましい。
式(c-2)中、アルキル基の炭素数は1~20であり、1~15であることが好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。また、アリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
アルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フェニル基、炭素数1~15のアルコキシ基、及びヒドロキシ基が挙げられる。なお、アルキル基が置換基を有する場合、アルキル基の炭素数には置換基の炭素数が含まれないものとする。アリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素数1~15のアルキル基、炭素数1~15のヒドロキシアルキル基、炭素数1~15のアルコキシ基(好ましくは炭素数1~8のアルコキシ基、より好ましくはメトキシ基およびエトキシ基)、及びフェニルチオ基が挙げられる。
本実施形態の一態様において、熱カチオン重合開始剤AのAが第4級アンモニウムカチオンであるのが好ましく、上記式(c-2)において、Y、Y、Y、及びYが、それぞれ独立して、直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状の炭素数1~20のアルキル基、又はアリール基であるのが好ましく、Y、Y、Y、及びYのうち、2つが、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアリール基であり、残り2つが、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基(好ましくは炭素数1~8のアルキル基、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基)であるのがより好ましい。
熱カチオン重合開始剤として、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(3,4-ジメチルベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これらのうち、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。市販品としては、例えば、CXC1821(商品名、King industries社製)が挙げられる。
熱カチオン重合開始剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱カチオン重合開始剤としてのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物の別態様として、カチオンA+はSに結合している3つの基のうち少なくとも1つがアルキル基であるスルホニウムイオンであってもよい。この場合2つの基が一緒になってアルキレン基となってSと共に環を形成していてもよい。残りの基は、置換基を有していてもよいアリール、アリールで置換されていてもよいアルキル基およびアルケニル基等であることが好ましい。
具体的には、下記式(c-3):
Figure 0007516081000008
で表したときに、Sに結合しているR、RおよびRのうち、少なくとも1つはアルキル基である。
好ましいカチオンAは、式(c-3)において、Rは置換されていてもよいフェニル基又はナフチル基を、Rは炭素数1~8のアルキル基を、Rは置換されていてもよいフェニル基又はナフチル基、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は2-インダニル基を表す。
具体的にはRは、置換されていてもよいフェニル基又はナフチル基であって、置換基としてメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル等の炭素数1~18程度のアルキル基、メトキシ、エトキシ、プロピル、ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等の炭素数1~18程度のアルコキシ基、アセトキシ、プロピオニルオキシ、デシルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンゾイルオキシ等のカルボニル基、フェニルチオ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基等を有していてもよい。
は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル等の炭素数1~8のアルキル基を表す。
が置換されていてもよいフェニル基又はナフチル基であるときは、その置換基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル等の炭素数1~18程度のアルキル基、メトキシ、エトキシ、プロピル、ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等の炭素数1~18程度のアルコキシ基、アセトキシ、プロピオニルオキシ、デシルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンゾイルオキシ等のカルボニル基、フェニルチオ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基等を挙げることができる。
が置換されていてもよいアルキル基であるときは、アルキル鎖の炭素数は1~18が好ましく、さらに好ましくは1~12、最も好ましくは1~6である。置換基として、メトキシ、エトキシ、プロピル、ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等のアルコキシ基、アセトキシ、プロピオニルオキシ、デシルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンゾイルオキシ等カルボニル基、フェニルチオ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、フェニル基等で置換されていてもよい。
がシクロアルキル基であるときは、炭素数3~12のものが好ましく、シクロヘキシル基、シクロヘキサノニル基、シクロペンチル基、1-アセナフテニル基、ビシクロノニル基、ノルボルニル基、クマリニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、カンファー基等を挙げることができる。
が置換されていてもよいアルケニル基のときは、アルケニル鎖の炭素数は1~18が好ましく、さらに好ましくは1~12、最も好ましくは1~6である。置換基として、メトキシ、エトキシ、プロピル、ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等のアルコキシ基、アセトキシ、プロピオニルオキシ、デシルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンゾイルオキシ等カルボニル基、フェニルチオ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、フェニル基等で置換されていてもよい。特に、2-アルケン-1-イル型のアルケニルが好ましい。
式(c-3)で表されるカチオンを有する熱カチオン重合開始剤の市販品として、例えば、三新化学工業株式会社製のサンエイドSIシリーズ(SI-B2A,SI-B7,SI-B3A,SI-B3,SI-B5,SI-B4)が挙げられる。
その他に好ましいカチオンAは、下式(c-4):
Figure 0007516081000009
で示される化合物であり、nは1~3であり、2が最も好ましい。Rは、置換されていてもよいフェニル基又はナフチル基、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は2-インダニル基を表す。具体的には式(c-3)のRで挙げた基を挙げることができる。
熱カチオン重合開始剤は、本発明の効果を達成できる範囲でテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物以外のその他の熱カチオン重合開始剤を含んでもよい。その他の熱カチオン重合開始剤のアニオンBは、PF 、AsF 、BF 、B(アリール) イオン等(ただし、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンを除く)を挙げることができ、カチオン種Aは、上記式(c-2)、(c-3)および式(c-4)で表されるカチオン種が挙げられる。
従来120℃以下の低温硬化を実現するために、熱カチオン重合開始剤としてアンチモン含有化合物が用いられてきたが、アンチモン含有化合物は毒性が高く取扱いが困難という問題があった。しかしながら、本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物は、熱カチオン重合開始剤としてアンチモン含有化合物を実質的に含まずに低温硬化が可能であるため、毒性が低く、安全性に優れる。
本実施形態の熱カチオン重合開始剤の総質量100質量%中、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物の量が80質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、100質量%であるのがさらに好ましい。テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物が、4級アンモニウム塩であるのが特に好ましい。また、本実施形態において、毒性の低減の観点からアンチモン含有化合物の含有量は小さいほど好ましく、熱カチオン重合開始剤の総質量100質量%中、アンチモン含有化合物の含有量は3質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましく、0質量%であるのがさらに好ましい。
熱カチオン重合開始剤の含有量は、特に限定はされないが、成分(a1)、(a2)および(a3)の合計含有量100質量部に対し、下限は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、上限は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
<成分(d):無機フィラー>
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物の一態様は、上述の成分(a1)~成分(c)に加えて、無機フィラー(成分(d)とも記載)を含んでもよい。これにより、デュアル硬化型接着剤組成物の線膨張係数を制御することができる。無機フィラー(d)としては、コロイダルシリカ、疎水性シリカ、微細シリカ及びナノシリカ等のシリカフィラー、並びにアクリルビーズ、ガラスビーズ、ウレタンビーズ、ベントナイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラック等が挙げられる。なお、本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物は、塩基性のフィラーを含むと重合開始剤から発生したカチオンと反応してしまうため用いない方がよい場合がある。
成分(d)の平均粒径(粒状でない場合は、その平均最大径)は、特に限定されず、0.01μm以上であれば、デュアル硬化型接着剤組成物がハンドリングに優れるものとなるという点で好ましい。また、無機フィラー(d)の平均粒径(粒状でない場合は、その平均最大径)は、50μm以下であれば、デュアル硬化型接着剤組成物中に均一に分散されるという点で好ましい。なお、本発明において、無機フィラーの平均粒径は、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計により測定するものとする。
成分(d)の市販品としては、高純度合成球状シリカ(製品名「SO-E5」、アドマテックス製、平均粒径:2μm;製品名「SO-E2」、アドマテックス製、平均粒径:0.6μm)、シリカ(製品名「FB7SDX」、龍森製、平均粒径:10μm)、及びシリカ(製品名「TS-10-034P」、マイクロン製、平均粒径:20μm)等が挙げられる。
成分(d)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
成分(d)の含有量は、特に限定はされないが、成分(a1)、(a2)および(a3)の合計含有量100質量部に対し、下限は、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上であり、さらに好ましくは70質量部以上であり、上限は、好ましくは200質量部以下であり、より好ましくは180質量部以下であり、さらに好ましくは150質量部以下である。
<成分(e):その他の成分>
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物の一態様は、さらに他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、ヒュームドシリカ等のチクソ付与剤、シラン、チタネート等の各種カップリン剤が挙げられる。
組成物が、ヒュームドシリカ等のチクソ付与剤を含むことにより、組成物の塗布時に糸曳きや拡がりを抑えることができる。ヒュームドシリカの市販品として、Cabot Corporation製のCab-O-Sil TS-720、TS-530、日本アエロジル株式会社製のアエロジルR974等が挙げられる。
シランカップリング剤は、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、メルカプト基等を有していてもよい。シランカップリング剤としては、特に制限はないが、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。市販品としては例えば、信越化学工業株式会社製のKBM-303,402,403、KBE-402,403等が挙げられる。
組成物がヒュームドシリカを含む場合、その含有量は、特に限定されないが、成分(a1)、(a2)および(a3)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは1~7質量部である。組成物がシランカップリング剤を含む場合、その含有量は、特に限定されないが、成分(a1)、(a2)および(a3)の合計含有量100質量部に対して、0.1~8質量部、より好ましくは0.2~5質量部である。
本実施形態の組成物は、さらに必要により着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、チオキサントン等の光増感剤等を含んでもよい。
また、組成物は、エポキシ化合物の希釈剤を含んでもよい。希釈剤は、公知の化合物であってよく、例えば、ビニルエーテル類、ポリオール類等が挙げられる。ビニルエーテル類としては、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(cyclohexanedimethanol divinyl ether)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(triethleneglycol divinyl ether)、ヒドロキシブチルビニルエーテル (hydorxybutyl vinyl ether)等のモノまたは多官能ビニールエーテル類を挙げることができる。またポリオール類は、希釈剤としての機能に加えて本発明の樹脂系において接着性を向上させる働きもある。例えばアルキルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、フェノリックポリオール等が挙げられる。中でも、アルキルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールが好ましく、特にポリエーテルポリオールが好ましい。
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物は、低温で高い反応率で熱硬化することができ、かつ、硬化物は高いガラス転移温度を有する。例えば、組成物は、80℃での反応率(算出方法は実施例を参照)が好ましくは83%以上であり、かつ、光硬化および熱硬化後の硬化物のTgが好ましくは85℃以上である。硬化物のTgの上限は特に限定されないが、例えば150℃以下である。
組成物の粘度は特に制限されず、常温(約25℃)でペースト状であるのが好ましい。組成物の粘度は、例えば、吐出性の観点から、25℃において10Pa・s~100Pa・sであることが好ましく、20Pa・s~80Pa・sであることがより好ましい。なお、組成物の25℃における粘度は、E型粘度計(コーン角1.565°、回転数5回転/分)を用いて測定される。
<デュアル硬化型接着剤組成物の調製方法>
デュアル硬化型接着剤組成物は、上記各種成分を分散し混合できるのであれば、いずれの手法で調製してもよい。一般的な手法として、成分を秤量し、らいかい機、ミキシングロール(3本ロールミル等)、プラネタリミキサ等を用いて混合及び混練し、必要に応じて脱泡することによって、デュアル硬化型接着剤組成物を得ることができる。
<硬化方法>
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物を硬化する方法は、光照射により組成物を硬化させる光硬化工程と、加熱によりさらに後硬化させる熱硬化工程とを含むことが好ましい。光照射により硬化し、さらに熱処理を加えることにより、密着性、耐水性等の耐久性が向上する。
光硬化工程において、照射する光は、300nmから500nmの波長範囲の光を含むのが好ましく、波長400nm以下(好ましくは380~20nm)の紫外光を含むのがより好ましい。光源としては、特に限定はされないが、紫外線LED、青色LED、白色LED、レーザー、メタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧または中圧水銀ランプ等が挙げられる。光の照射量は、特に限定はされないが、波長365nmにおける強度が、0.1~1000mW/cm程度が好ましく、1~800mW/cm程度がより好ましい。光の照射時間は、特に限定されないが、例えば2秒~5分間である。
熱硬化工程において、加熱温度は、好ましくは60℃~120℃、より好ましくは80℃~100℃であるのが好ましい。加熱時間は、特に限定されないが、例えば10分~4時間であるのが好ましい。
<用途>
本実施形態の一態様において、デュアル硬化型接着剤組成物は、様々な分野で用いることができる。光学機器分野では、カメラモジュール、LiDARモジュール(light detection and ranging,光(レーザーや赤外線を含む)による検知と測距)、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部、撮影レンズ、プロジェクションテレビの投射レンズ等の接着剤として用いることができる。カメラモジュールの接着箇所としては、CMOS、CCDなどのイメージセンサー(撮像素子)と基板との間、カットフィルターと基板との間、基板と筐体との間、筐体とカットフィルターとの間、筐体とレンズユニットとの間等が挙げられる。その他の分野では、自動車・輸送機分野では、自動車用のスイッチ部分、電装部品等の接着等;フラットパネルディスプレイでは、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、発光ダイオード表示装置、フィールドエミッションディスプレイの封止や接着、インク材料;記録分野では、ビデオディスク、CD、DVD、MD、ピックアップレンズ、ハードディスク周辺(スピンドルモータ用部材、磁気ヘッドアクチュエータ用部材など)、ブルーレイディスク等の接着等;電子材料分野では、電子部品の構造用接着やコーティング等、光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺、光コネクタ周辺の光ファイバー材料、光受動部品、光回路部品、光電子集積回路周辺等の封止や接着等に用いることができる。
本実施形態のデュアル硬化型接着剤組成物を用いることができる被着体としては、例えば、ガラス、各種金属、多孔質部材、樹脂類のフィルム及びプレート等が挙げられる。前記各種金属としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス等が挙げられる。前記多孔質部材としては、例えばセラミックが挙げられる。前記樹脂類のフィルム及びプレートの原料となる樹脂類としては、例えば、ポリカーボネート、PPS,PBT,PA,LCP,FR4,FR5等が挙げられる。
本発明のデュアル硬化型接着剤組成物は、好ましい一態様として、カメラモジュールの組み立てのために用いられる。より具体的には、本発明のデュアル硬化型接着剤組成物は、好ましくは、カメラモジュール組み立てにおいて、レンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを接着するために用いられる。上記において、カメラモジュールは、特に限定されず、例えば、スマートフォン、車載用カメラ等に使用される小型カメラモジュールである。
以下、本発明を、更に詳細に、かつ、具体的に説明することを目的として実施例を用いて説明するが、これら実施例は、本発明を何ら制限するものではない。
実施例および比較例において、デュアル硬化型接着剤組成物に配合した成分を以下に示す。
成分(a1):オキセタン化合物
(a1-1)OXT-221(商品名、東亞合成株式会社製)
成分(a2):脂環式エポキシ化合物
(a2-1)セロキサイド2021P(商品名、株式会社ダイセル製)
成分(a3):芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物
(a3-1)EPICLON EXA-850CRP(商品名、DIC株式会社製)
成分(b):光カチオン重合開始剤
(b-1)CPI-200K(商品名、サンアプロ株式会社製)
成分(c):熱カチオン重合開始剤
(c-1)CXC1821(商品名、King industries社製、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)
(c’-2)CXC1612(商品名、King industries製、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート)
(c’-3)TA100(商品名、サンアプロ株式会社製、構造式は下記式(c’-3)で表される。)
Figure 0007516081000010
成分(d):無機フィラー
(d-1)球状シリカ:SO-E5(商品名、株式会社アドマテックス製)
成分(e)その他
(e-1)チクソ付与剤:Cabo-Sil TS720(商品名、キャボット社(Cabot)製)
(e-2)シランカップリング剤:KBM403(商品名、信越化学工業社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
<組成物の調製>
(a1-1)~(e-2)の各成分を表1に示す割合で配合し、3本ロールミルを用いて混練分散して、各実施例および比較例のデュアル硬化型接着剤組成物を調製した。
得られた各デュアル硬化型接着剤組成物について下記の評価を行った。結果を表1に示す。
<光硬化性>
各組成物50mgをガラス板状に載せ、365nm-UV-LED(500mW/cm)を5秒、UJ35、パナソニック株式会社製UV照射機で照射した後、竹串で突いて下記の基準で評価した。表1に、UV硬化性として結果を示す。
〇:竹串に組成物の付着が見られなかった。
×:竹串に組成物の付着が見られた。
<熱硬化反応率>
各組成物10mgを、80℃のオーブン中で1時間保持し、熱硬化させた。DSC6220にて、硬化前の組成物と硬化後の組成物それぞれについて熱量測定を行った(測定温度範囲30~150℃、昇温速度5℃/分)。得られたDSC曲線から、硬化前の組成物の積算発熱量、および硬化後の硬化物の残存積算発熱量を算出した。これら積算発熱量に基づいて、下記式より反応率を算出した。
反応率(%)=100×(硬化前の組成物の積算発熱量―硬化物の残存積算発熱量)/硬化前の組成物の積算発熱量
<ガラス転移温度(Tg)>
厚さ2mmになるよう接着剤組成物を剥離フィルム上に塗布し、365nm-UV-LED(500mW/cm)を5秒照射した後、熱風循環式オーブンを用いて、80℃、1時間の条件で硬化させた。得られた硬化物の熱分析をTMA(TMA/SS6100,熱機械分析装置)を用いて、圧縮モード(荷重49mN)で、昇温速度5℃/分でTgを測定した。


Figure 0007516081000011
比較例1は、熱カチオン重合開始剤として、従来から用いられているアンチモン含有化合物(毒性を有する)を用いた組成物の結果を示す。一方、実施例1~6および比較例2~9は、熱カチオン重合開始剤として、毒性の低いテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸の4級アンモニウム塩を用いた組成物の結果を示す。成分(a1)、(a2)および(a3)の配合量を表1に記載のように変更したところ、実施例1~6は、UV硬化性、低温硬化での反応率、硬化物のTgのいずれもが高い結果となり、比較例1と同等以上の物性または比較例1より大きく劣ることのない物性が得られた。比較例4~6は、オキセタン化合物(成分(a1))が少ないため十分なUV硬化性が得られなかった。また、比較例1~3および比較例7~9の配合比の場合は、低温硬化の反応率およびTgの少なくとも一方が大きく劣る結果となった。比較例10は、熱カチオン重合開始剤として式(c’-3)で表される化合物を用いたが、実施例に比べて低温硬化での反応率が低かった。
上記結果より、アンチモンを含まない熱カチオン重合開始剤として、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物を用い、かつ成分(a1)、(a2)および(a3)を所定の配合量の範囲内で含むと、低温硬化性に優れ、かつ、硬化物のTgが高いデュアル硬化型接着剤組成物が得られることが示された。
以上から明らかなように、デュアル硬化型接着剤組成物に関して本発明の要旨を外れない限りにおいて、種々の変更が可能である。従って、ここに説明した形態は、例であって、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲がこれに限定されるものでない。
本発明は、カメラモジュールの組み立て等に適したデュアル硬化型接着剤組成物を提供できる。

Claims (7)

  1. 成分(a1):オキセタン化合物と、
    成分(a2):脂環式エポキシ化合物と、
    成分(a3):芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物と、
    成分(b):光カチオン重合開始剤と、
    成分(c):テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物を含む熱カチオン重合開始剤と、
    成分(d):シリカを含む無機フィラーと
    含むデュアル硬化型接着剤組成物であって、
    前記成分(a1)、前記成分(a2)および前記成分(a3)の合計100質量部に対し、
    前記成分(a1)の含有量が、20~94質量部であり、
    前記成分(a2)の含有量が、3~55質量部であり、
    前記成分(a3)の含有量が、3~45質量部であり、
    前記成分(b)の含有量が、0.5質量部以上10質量部以下であり、
    前記成分(c)の含有量が、0.1質量部以上10質量部以下であり、
    前記成分(d)の含有量が、30質量部以上200質量部以下である、デュアル硬化型接着剤組成物。
  2. 前記成分(c)が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸のアンモニウム塩である、請求項1に記載のデュアル硬化型接着剤組成物。
  3. 前記成分(a1)、前記成分(a2)および前記成分(a3)の合計100質量部に対し、前記成分(b)の含有量が2質量部以上である、請求項1または2に記載のデュアル硬化型接着剤組成物。
  4. カメラモジュール組み立てのために用いられる、請求項1~3のいずれか一項に記載のデュアル硬化型接着剤組成物。
  5. カメラモジュール組み立てにおいて、レンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを接着するのに用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のデュアル硬化型接着剤組成物。
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載のデュアル硬化型接着剤組成物が硬化された硬化物。
  7. 請求項に記載の硬化物を含む、カメラモジュール。
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