(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る固体撮像装置及びその駆動方法について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
図1は、第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る固体撮像装置100は、光電変換を行う光電変換素子とトランジスタとからなる画素セル(単位セル)101が行列状に多数配置されてなる画素アレイ部102と、画素アレイ部102を駆動する垂直走査回路103と、定電流源回路104と、カラム読出し回路105と、水平走査回路106と、信号処理回路107と、出力回路108と、TG(タイミング発生回路)109と、画素セル101の信号を各列回路に伝達する垂直信号線PIXOUTとを備える。垂直信号線PIXOUTには定電流源回路104と、カラム読出し回路105とが接続されている。カラム読出し回路105には1列の画素信号を受け且つ差分手段を有するノイズキャンセラ(CDS)回路と、CDS回路からの画素信号を受けるアナログデジタル変換回路(ADC)を含む。そして、水平走査回路106により選択された列のアナログデジタル変換されたデータが信号処理回路107へ順次出力され、データが信号処理される。その後、出力回路108を介して固体撮像装置の外へ順次出力される。また、固体撮像装置100は、各部を動作させるためのパルスを発生するタイミング発生回路(TG)109を備えている。
また、カラム読出し回路105に含まれるCDS回路は、例えば画素アレイ部102に行列状に配列されている画素セル101の列ごとに接続されている。また、CDS回路は、垂直走査回路103で選択された行の画素セル101から垂直信号線PIXOUTを通って出力される信号に対して、CDS(相関二重サンプリング)処理により、画素セル101で発生するリセットノイズや、トランジスタのしきい値のばらつきに起因する画素固有の固定パターンノイズを除去する信号処理を行うと共に、信号処理後の画素信号を一時的に保持する。
アナログデジタル変換回路(ADC)は、AGC(Auto Gain Control)機能と、アナログデジタル変換機能とを備えており、ADCによって、CDS回路で保持されたアナログ信号である画素信号がデジタル信号に変換される。
図2は、第1の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の構成例を示す図である。
図2に示すように、本回路例に係る画素セル101は、光電変換により生成した信号電荷を蓄積する第1フォトダイオード120と、第1フォトダイオード120から溢れる信号電荷を保持する第1保持部としての第2フォトダイオード126と、第2保持部127と、第1保持部に保持された信号電荷を第2保持部127へ転送する第1転送トランジスタ130とを備える。より詳しくは、画素セル101は、光電変換素子として例えば第1フォトダイオード120、転送トランジスタ121、スイッチトランジスタ122、リセットトランジスタ123、及び増幅トランジスタ124、選択トランジスタ125を有している。また、画素セル101は、第1保持部として例えば第2フォトダイオード126、第2保持部として例えば蓄積容量素子127、オーバーフロートランジスタ128、電荷排出トランジスタ129、第1転送トランジスタ130、第2転送トランジスタ131を有する。
各トランジスタ121~125及び128~131としては、例えばNチャネルのMOSトランジスタを用いてもよい。なお、NチャネルのMOSトランジスタ(Nchトランジスタ)は、ゲート電位が“High”レベルでオンとなり、“Low”レベルでオフ状態になるとする。また、PチャネルのMOSトランジスタ(Pchトランジスタ)は、ゲート電位が“Low”レベルでオンとなり、“High”レベルでオフ状態となるとする。
転送トランジスタ121は、第1フォトダイオード120のカソード電極とフローティングディフュージョン(FD1)部132との間に接続されている。転送トランジスタ121のゲート電極には転送制御線TGLが接続されている。転送トランジスタ121のゲート電極に転送制御線TGLから転送パルスφTGLにて“High”レベルが与えられると、転送トランジスタ121がオンとなり、第1フォトダイオード120で光電変換されて第1フォトダイオード120に蓄積された信号電荷(具体的には電子)がFD1部132へ転送される。
オーバーフロートランジスタ128は、第1フォトダイオード120のカソード電極と、第2フォトダイオード126のカソード電極との間に接続されている。オーバーフロートランジスタ128のゲート電極にはオーバーフロートランジスタ制御線OFGが接続されている。オーバーフロートランジスタ128のゲート電極にオーバーフロートランジスタ制御線OFGからはDCバイアスが与えられ、オーバーフロートランジスタ128のチャネル部のポテンシャルを制御することにより、第1フォトダイオード120から光電変換により生成された信号電荷が、第1フォトダイオード120の蓄積容量を超えて発生すると、オーバーフロートランジスタ128を介して第2フォトダイオード126へ転送される。なお、温度やチップ間ばらつきによりオーバーフロートランジスタ128のポテンシャルが異なった場合に、オーバーフロートランジスタ制御線OFGのDCバイアス値を変更することでばらつきを補正する補正回路を搭載していてもよい。また、ここでは第1フォトダイオード120から第2フォトダイオード126への電荷転送をオーバーフロートランジスタ128で制御しているが、オーバーフロートランジスタ128が無く、半導体基板内の不純物プロファイルで制御することも可能である。
電荷排出トランジスタ129は、第2フォトダイオード126のカソード電極と、画素電源配線VDDCとの間に接続されている。電荷排出トランジスタ129のゲート電極には制御線OFDが接続されている。電荷排出トランジスタ129のゲート電極に制御線OFDから電荷排出パルスφOFDにて“High”レベルが与えられると、電荷排出トランジスタ129がオンとなり、第2フォトダイオード126に蓄積された信号電荷(具体的には電子)が画素電源配線VDDCへ排出される。
第1転送トランジスタ130は、第2フォトダイオード126のカソード電極と蓄積容量素子127との間に接続されている。第1転送トランジスタ130のゲート電極には転送制御線TGS1が接続されている。第1転送トランジスタ130のゲート電極に転送制御線TGS1から転送パルスφTGS1にて“High”レベルが与えられると、第1転送トランジスタ130がオンとなり、第2フォトダイオード126に蓄積された信号電荷(具体的には電子)が蓄積容量素子127へ転送される。この転送において、第2フォトダイオード126の信号電荷は、第2フォトダイオード126と蓄積容量素子127に電荷分配されるのではなく、蓄積容量素子127に完全転送される。
蓄積容量素子127のもう一方の電極には、容量制御線PVDDが接続されている。容量制御線PVDDには、DCバイアス値を供給してもよい。例えば、DCバイアス値としてAVDDの1/2とすると、蓄積容量素子127のリセット時の電圧はAVDDであるため、蓄積容量素子127間にかかる電圧はAVDDの値の1/2となる。また、高照度の光が照射された場合、大量の信号電荷が転送されて電位が低下するため、蓄積容量素子127の電位は0V付近まで上昇する。この時の蓄積容量素子127間にかかる電圧はAVDDの1/2となる。つまり、リセット時から信号蓄積時において、蓄積容量素子127間にかかる電圧の絶対値は最大でAVDD/2となる。一方、容量制御線PVDDに供給するDCバイアスをAVDDとしたときは、リセット時から信号蓄積時において、蓄積容量素子127間にかかる電圧の絶対値は最大でAVDDとなる。これより、信頼性確保の観点から蓄積容量素子127間にかかる電圧の絶対値を低減させるために、容量制御線PVDDに供給するDCバイアスとしてAVDDの1/2を供給することは有効である。
第2転送トランジスタ131は、蓄積容量素子127と、スイッチトランジスタ122とリセットトランジスタ123との間にあるFD2部133と接続されている。第2転送トランジスタ131のゲート電極には転送制御線TGC1が接続されている。第2転送トランジスタ131のゲート電極に転送制御線TGC1から転送パルスφTGC1にて“High”レベルが与えられると、第2転送トランジスタ131がオンとなり、蓄積容量素子127に蓄積された信号電荷(具体的には電子)がFD2部133へ転送される。
スイッチトランジスタ122については、ゲートにスイッチ制御線SW1が接続され、ドレイン電極にFD2部133が接続され、ソース電極にFD1部132が接続されている。
また、リセットトランジスタ123については、ゲートにリセット制御線RSが接続され、ドレイン電極に画素電源配線VDDCが接続され、ソース電極にFD2部133が接続されている。第1フォトダイオード120からFD1部132へ信号電荷を転送する前に、リセットトランジスタ123のゲート電極にリセット制御線RSを伝達してリセットパルスφRSにて“High”レベルが与えられると、リセットトランジスタ123がオンとなり、また、スイッチトランジスタ122のゲート電極にスイッチ制御線SW1を伝達してスイッチパルスφSWにて“High”レベルが与えられると、スイッチトランジスタ122もオンとなり、FD1部132とFD2部133の電位が電源電圧AVDDにリセットされる。
増幅トランジスタ124については、ゲート電極がFD1部132と接続され、ドレイン電極が画素電源配線VDDCと接続され、ソース電極が選択トランジスタ125のドレイン電極と接続されている。
選択トランジスタ125は、ゲート電極は選択制御線SELが接続され、ドレイン電極は増幅トランジスタ124のソース電極と接続され、ソース電極は垂直信号線PIXOUTと接続される。読出し行が選択されると、選択制御線SELを伝達して選択パルスφSELにて“High”レベルが与えられ、選択トランジスタ125がオンとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTを接続する。
増幅トランジスタ124はオンとなった選択トランジスタ125を介して、スイッチトランジスタ122とリセットトランジスタ123によってリセットされた後のFD1部132の電位をリセットレベルとして垂直信号線PIXOUTへ出力し、さらに、転送トランジスタ121によって信号電荷が転送された後のFD1部132の電位を信号レベルとして垂直信号線PIXOUTへ出力する。
ここで、素電荷量をq、フローティングディフュージョン部の容量値をCとすると、信号電荷から電圧に変換する変換効率ηはη=q/Cで表される。変換効率ηは容量値Cで決まるため、スイッチトランジスタ122がオン時は増幅トランジスタ124のゲート部にFD1部132とFD2部133が接続した状態となっているため、スイッチトランジスタ122がオフ時の増幅トランジスタ124のゲート部にFD1部132のみ接続された状態と比べて、変換効率ηが低くなるという特徴がある。
ここで、変換効率ηは高いほど信号電荷量を電圧に効率よく変換することができ、出力信号の電圧値を大きくすることができる。これにより垂直信号線PIXOUTに接続するカラム読出し回路105で発生するノイズ成分Nに対する画素信号Sの比率S/Nを向上することができ、高画質の画像を得ることができる。
また、蓄積容量素子127の読出しについて、蓄積容量素子127は第2転送トランジスタ131がオンとなってFD1部132へ転送される際、完全転送されず、電荷分配で信号電荷がFD2部133およびFD1部132へ移動する。第2転送トランジスタ131がオンした後のFD1部132の電位を蓄積容量素子127の信号レベルとして垂直信号線PIXOUTへ出力し、その後リセットトランジスタ123によってFD1部132がAVDDにリセットされる。リセットトランジスタ123がオフする際にkTCノイズが発生する。リセットされたFD1部132の電位をリセットレベルとして垂直信号線PIXOUTへ出力し、信号レベルとリセットレベルの差分から蓄積容量素子127に蓄積された信号電荷の出力信号を読み出すため、kTCノイズを含む出力信号となる。ここで、第1フォトダイオード120の出力信号を低照度領域の画像生成に使用し、蓄積容量素子127の出力信号は高照度領域の画像生成に使用することで、広ダイナミックレンジを実現する。そのため、蓄積容量素子127の出力信号は、ある程度信号電荷が蓄積されているため、ここで発生するkTCノイズの画質への影響は軽微である。
図2に示した画素セル101によれば、第1フォトダイオード120の出力信号を低照度時に対応する画像生成に使用し、第2保持部127の出力信号を高照度に対応する画像生成に使用することで、広ダイナミックレンジを実現できる。また、第1保持部の存在によってフォトダイオード120は,長時間露光(例えば常時露光または間欠露光)に適している。よって、フリッカーを容易に抑制可能である。さらに、第1保持部はコンデンサではなく第2フォトダイオード126として構成されるので、フォトダイオード126から第2保持部127への信号電荷の転送において信号電荷が分割または分配されることなく、完全転送することができる。第1保持部つまり第2フォトダイオード126は、第1フォトダイオード120と同様の構成でよいので、製造が容易である。
なお、ここでは選択トランジスタ125が記載されているが、選択トランジスタ125が無い構成であってもよい。画素セル101の行選択方法としては、選択行における画素セル101のFD1部132の電位を高くし、非選択行のFD1部132の電位を低くすることで、選択行の増幅トランジスタ124を有効にし、垂直信号線PIXOUTへ出力することが可能である。
図3A~図3Dは、第1の実施形態に係る固体撮像装置において、画素セル構成の第1~第4の例の模式断面図である。図3Aでは、表面照射型の画素セル101の模式断面図を示し、画素セル101は、半導体基板170内に、p型の不純物を含むウェル領域140と、p型とは異なるn型の不純物を含む第1フォトダイオード120と、第1保持部であるn型の不純物を含む第2フォトダイオード126と、ゲート絶縁膜141と、オーバーフロートランジスタゲート128-1と、遮光配線142、絶縁膜143と、銅配線144と、ライナー膜145と、銅配線146と、ライナー膜147と、高屈折絶縁膜148と、カラーフィルタ149と、平坦化膜となる透過フィルタ150とマイクロレンズ151とを備える。第1フォトダイオード120および第2フォトダイオード126は、埋込ダイオードとして形成されている。
このように、半導体基板170内に、受光面となる撮像領域において、画素ごとに電荷を蓄積する第1フォトダイオード120が構成されており、さらに、第1フォトダイオード120に隣接して半導体基板170上にゲートの一例として、オーバーフロートランジスタゲート128-1が形成されている。
上記の半導体基板170には、第1フォトダイオード120に光電変換により生成及び蓄積される信号電荷が第1フォトダイオード120の蓄積容量を超えて信号電荷が生成されると、オーバーフロートランジスタ128を介して、隣接する第2フォトダイオード126に転送される。この第2フォトダイオード126の上部には遮光配線が形成されており、上部からの光照射に対して、受光しないように構成される。これにより、光電変換は主に第1フォトダイオード120にて行われるため、第1フォトダイオード120に蓄積される信号電荷と、第2フォトダイオード126に蓄積される信号電荷の画素セル101に照射した光に対する信号電荷の光電変換効率はほぼ一致しており、2つの信号電荷を後段の信号処理回路107にて加算処理することが可能となる。
また、第1保持部として第2フォトダイオード126を用いることで、第1転送トランジスタ130により、第2フォトダイオード126の信号電荷を蓄積容量素子127に完全に転送することが可能となる。加えて、第1保持部として第2フォトダイオード126を用いることで、電荷排出トランジタ129により、第2フォトダイオード126の信号電荷を完全に排出することが可能となる。このため、電荷排出トランジスタ129の電荷排出パルスφOFDを“High”から“Low”にしてから、第1転送トランジスタ130の転送パルスφTGS1を“Low”から“High”にする期間を制御することにより、第2フォトダイオード126の信号電荷の蓄積期間を制御でき、光電変換効率を任意に制御することが可能となる。信号処理回路107と第1フォトダイオード120の露光期間と第2フォトダイオード126の蓄積期間を用いることで、第1フォトダイオード120に蓄積した信号電荷と第2フォトダイオード126を介して蓄積容量素子127に蓄積した信号電荷を演算処理し、加算処理することが可能となる。
図3Bでは、表面照射型の画素セル101の模式断面図を示し、図3Aに対する差分として、オーバーフロートランジスタゲート128-1が無く、第1フォトダイオード120の側面に接し、第2フォトダイオード126の下部にp型の不純物を含む拡散領域152を転送路として備える。第1フォトダイオード120が生成する信号電荷が蓄積容量を超えて生成されると、第1フォトダイオード120と第2フォトダイオード126とが拡散領域152を介して電気的に接続され、第1フォトダイオード120で生じた信号電荷が拡散領域152に入り、第2フォトダイオード126に蓄積される。つまり、拡散領域152は、第1フォトダイオード120から溢れる信号電荷を第2フォトダイオード126に導く転送路として機能する。なお、拡散領域152のp型の不純物濃度は、第1フォトダイオード120と第2フォトダイオード126の間における分離部のp型の不純物濃度よりも薄くすることで、上記のような動作を可能とする。
図3Cでは、裏面照射型の画素セル101の模式断面図を示し、画素セル101は、半導体基板160内に、p型の不純物を含むウェル領域161と、p型とは異なるn型の不純物を含む第1フォトダイオード120と、第1保持部であるn型の不純物を含む第2フォトダイオード126と、遮光壁162と、ゲート絶縁膜163と、オーバーフロートランジスタゲート128-1と、絶縁膜143と、遮光膜164と、カラーフィルタ165と、平坦化膜となる透過フィルタ166とマイクロレンズ167とを備える。なお、ここでは半導体基板160に対してマイクロレンズ167がある側を裏面側、オーバーフロートランジスタゲート128-1がある側を表面側として定義する。
このように、図3Aとの差分としては、半導体基板160裏面側に、マイクロレンズ167が形成され、半導体基板160裏面側から光が照射されて、第1フォトダイオード120が受光し、光電変換が行われる点が異なる。第1保持部となる第2フォトダイオード126は、裏面側に遮光膜164が形成され、第1フォトダイオード120と第2フォトダイオード126との間には遮光壁162が形成され、裏面側からの光を遮るような構造となっている。なお、遮光壁162は例えばDTI(Deep Trench Isolation)で形成され、中の材質はSiOやAirとすることで、半導体基板160の材料の一例であるSiに比べ、屈折率を上げ、光照射に対して全反射させ、混色を抑制してもよい。また、金属材料を埋込、反射させる方法でもよい。遮光膜164は、たとえばタングステンWなどの材料を使用して形成してもよい。
図3Dでは、裏面照射型の画素セル101の模式断面図を示し、図3Cに対する差分として、オーバーフロートランジスタゲート128-1が無く、第1フォトダイオード120の側面に接し、第2フォトダイオード126の下部(表面側)にp型の不純物を含む拡散領域168を転送路として備える。第1フォトダイオード120が生成する信号電荷が蓄積容量を超えて生成されると、第1フォトダイオード120と第2フォトダイオード126とが拡散領域168を介して電気的に接続され、第1フォトダイオード120で生じた信号電荷が拡散領域168に入り、第2フォトダイオード126に蓄積される。つまり、拡散領域168は、第1フォトダイオード120から溢れる信号電荷を第2フォトダイオード126に導く転送路として機能する。なお、拡散領域168のn型の不純物濃度は、第1フォトダイオード120と第2フォトダイオード126の間における分離部のp型の不純物濃度よりも薄くすることで、上記のような動作を可能とする。
上記の図3Bおよび図3Dでは、第2フォトダイオード126の非入射面側に、第1フォトダイオード120から溢れる信号電荷を、第2フォトダイオード126に導く転送路としての不純物拡散領域152または168を備える。ここで、非入射面は、入射面と反対側の面をいう。つまり、固体撮像装置において、光が入射する面を入射面と呼び、入射面と反対側の面を非入射面と呼ぶ。図3A~図3Dでは、マイクロレンズ151が形成されない側が非入射面である。
なお、図3Bにおいて、第2フォトダイオード126(第1保持部)は、信号電荷を保持する第1導電型の第1半導体領域と、第1半導体領域の上に配置された第2導電型の第2半導体領域とを含む構成でもよい。また、第1フォトダイオード120は、信号電荷を保持する第1導電型の第3半導体領域を含む構成でよい。第3半導体領域の上に第1半導体領域が配置され、前記第3半導体領域と前記第1半導体領域の間には、第2導電型の第4半導体領域を上記の拡散領域152として含む構成としてもよい。
図4は、第1の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の半導体基板内のポテンシャル電位を示す図である。同図の横方向半導体基板内の相対的な位置を示す。同図の縦方向は下向きに電位が高いことを示す。
ここでは、画素セル101において、FD2部133と、転送トランジスタゲート131-1下部の半導体基板170内と、容量素子ノード(C1)127-1と、転送トランジスタゲート130-1下部の半導体基板170内と、第2フォトダイオード126と、オーバーフロートランジスタゲート128-1下部の半導体基板170内と、第1フォトダイオード120と、転送トランジスタゲート121-1下部の半導体基板170内と、FD1部132と、スイッチトランジスタゲート122-1下部と、FD2部133と、リセットトランジスタゲート123-1下部と、電源配線部VDDCと、電荷排出トランジスタゲート129-1下部におけるポテンシャル電位を示す。ここで、図面における各素子の位置を明示するため、各素子の符号は制御線名およびノード名を記載している。
まず、図4の(a)はリセット動作時であって、リセットトランジスタゲート123-1にリセット制御線RSからリセットパルスφRSにて“High”レベルが与えられ、スイッチトランジスタゲート122-1にスイッチ制御線SW1からスイッチパルスφSW1にて“High”レベルが与えられ、転送トランジスタゲート121-1に転送制御線TGLからリセットパルスφTGLにて“High”レベルが与えられ、転送トランジスタゲート131-1に転送制御線TGC1からリセットパルスφTGC1にて“High”レベルが与えられ、FD1部132とFD2部133と容量素子ノード(C1)127-1は電源電圧AVDDにリセットされ、第1フォトダイオード120と第2フォトダイオード126から信号電荷は完全転送されてリセットされる。
図4の(b1)は蓄積制御期間の内、露光開始時のポテンシャル電位を示す。リセットトランジスタゲート123-1にリセット制御線RSからリセットパルスφRSにて“Low”レベルが与えられ、スイッチトランジスタゲート122-1にスイッチ制御線SW1からスイッチパルスφSW1にて“Low”レベルが与えられ、転送トランジスタゲート121-1に転送制御線TGLから転送パルスφTGLにて“Low”レベルが与えられ、転送トランジスタゲート131-1に転送制御線TGS1から転送パルスφTGS1にて“Low”レベルが与えられ、第1フォトダイオード120と、第2フォトダイオード126および蓄積容量素子127に信号電荷が蓄積できる状態となる。
図4の(b2)は蓄積制御期間の内、信号電荷の蓄積時のポテンシャル電位を示す。第1フォトダイオード120が照射された光に応じて光電変換し信号電荷が蓄積している。第1フォトダイオード120に隣接するオーバーフロートランジスタゲート128-1下部の半導体基板170内のポテンシャル障壁は、同じく第1フォトダイオード120に隣接する転送トランジスタゲート121-1下部の半導体基板170内のポテンシャル障壁よりも低くなるように、オーバーフロートランジスタ制御線OFGから供給されるDCバイアスにより制御される。これにより、第1フォトダイオード120に蓄積した信号電荷が、第1フォトダイオード120の蓄積容量を超えて生成されると、オーバーフロートランジスタゲート128-1下部の半導体基板170内を介して、第2フォトダイオード126に信号電荷が転送され、第2フォトダイオード126に信号電荷が蓄積される。
図4の(b3)は、蓄積制御期間の内、第2フォトダイオード126に蓄積した信号電荷を蓄積容量ノード(C1)127-1に転送する転送時のポテンシャル電位を示す。転送トランジスタゲート130-1に転送制御線TGS1から転送パルスφTGS1にて“High”レベルが与えられ、第2フォトダイオード126に蓄積した信号電荷は、第2フォトダイオード126から蓄積容量ノード(C1)127-1に完全転送される。
図4の(b4)は、蓄積制御期間の内、第2フォトダイオード126に蓄積した信号電荷を排出する排出時のポテンシャル電位を示す。転送トランジスタゲート130-1に転送制御線TGS1から転送パルスφTGS1にて“Low”レベルが与えられ、第2フォトダイオード126から蓄積容量ノード(C1)127への信号電荷の転送は止まる。電荷排出トランジスタゲート129-1に電荷排出制御線OFDから電荷排出パルスφOFDにて“High”レベルが与えられ、第2フォトダイオード126から電源配線VDDCへ信号電荷が排出される。この期間は、第1フォトダイオード120から第2フォトダイオード126へ溢れた信号電荷は、電源電圧にてリセットされるため、第2フォトダイオード126に蓄積されない。つまり第2フォトダイオード126は露光されていない状態となる。
第2フォトダイオード126の蓄積時間はb1)蓄積開始~容量への転送b3)までの期間をTexpと定義すると、この蓄積制御期間がN回繰り返された際、Texp*Nで表される。
図4の(c)は、蓄積容量素子127の信号電荷のフローティングディフュージョン132へ転送する際のポテンシャル電位を示す。転送トランジスタゲート131-1に転送制御線TGC1から転送パルスφTGC1にて“High”レベルが与えられ、蓄積容量素子127に蓄積した信号電荷は、蓄積容量素子127からFD2部133へ電荷が転送し、スイッチトランジスタゲート122-1にスイッチ制御線SW1からスイッチパルスφSW1にて“High”レベルが与えられ、FD2部133とFD1部132が接続され、蓄積容量ノード(C1)127に蓄積した信号電荷が、FD1部132およびFD2部133に転送される。
次に図5は、図2に示す画素の動作を説明するためのタイミングチャートの一例を示す。
まず、時刻t1では、φRSとφSW1が“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。また、φTGLが“High”レベルとなり、第1フォトダイオード120の信号電荷は排出される。また、φOFDが“High”レベルであるため、第2フォトダイオード126もまた信号電荷は排出される。φTGC1は“High”レベルになり、蓄積容量素子127に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t2にて、φRSとφSW1は“Low”レベルとなる。このとき、通常時はリセットトランジスタ123およびスイッチトランジスタ122のスイッチングによるノイズにより、FD1部132の電位は段差が発生する。また、φTGLとφTGC1は“Low”レベルとなり、信号電荷が蓄積できる状態となる。
時刻t3にて、φOFDは“Low”レベルとなり、第2フォトダイオード126の信号電荷が蓄積できる状態となる。これは、図4の(b1)に図示した蓄積開始時のポテンシャル電位に対応する駆動タイミングである。
時刻t4にて、φTGS1は“High”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子127へ信号電荷が転送される。これは、図4の(b3)に図示した信号転送時のポテンシャル電位に対応する駆動タイミングである。
時刻t5にて、φTGS1は“Low”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子127への信号電荷の転送が終了する。また、φOFDは“High”レベルとなり、第2フォトダイオード126の信号電荷が電源に排出される。これは、図4の(b4)に図示した蓄積無し時のポテンシャル電位に対応する駆動タイミングであり、時刻t3から時刻t5の期間Texpは蓄積容量素子127の蓄積期間に相当する。
時刻t6にて、φOFDは“Low”レベルとなり、再度第2フォトダイオード126の信号電荷が蓄積できる状態となる。
時刻t3からt6が蓄積周期Ttとして、時刻t14までφOFDとφTGS1のパルスが繰り返し行われる。
時刻t15にて、φRSとφSW1が“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。また、φSELが“High”レベルとなり、選択トランジスタ125がオンとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTが電気的に接続される。増幅トランジスタ124は、一定の電流が流れソースフォロワを形成する。この図では記載していないが、同じ垂直信号線PIXOUTに接続する他の画素の選択トランジスタ125のゲート電極にはφSELとして“Low”レベルが供給され、選択トランジスタ125はオフしている。
時刻t16にて、φRSとφSW1は“Low”レベルとなる。このとき、通常時はリセットトランジスタ123およびスイッチトランジスタ122のスイッチングによるノイズにより、FD1部の電位は段差が発生する。
時刻t17にて、φTGC1は“High”レベルとなる。この時、蓄積容量素子127に保持された信号電荷がFD2部133およびFD1部132へ電荷分配され、FD1部132の電位が低下し、電位が安定した時刻t17aにて信号レベル(SH3)をサンプリングする。
時刻t18にて、φRSが“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132および蓄積容量素子127に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t19にて、φRSは“Low”レベルとなる。このとき、FD1部132の電位が安定した時刻t19aにて信号レベル(CL3,CL4)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻17aにおける信号レベル(SH3)と時刻19aにおける信号レベル(CL3)の差分から蓄積容量素子127の出力信号Sig3を抽出する。
時刻t20にて、φTGC1が“Low”レベルになり、第2転送トランジスタ131がオフとなり、φRSが“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t21にて、φRSは“Low”レベルとなる。この時、FD1部132の電位が安定した時刻t21aにて信号レベル(CL2)をサンプリングする。
時刻t22にて、φSW1は“Low”レベルとなる。この時、FD1部132の電位が安定した時刻t22aにて信号レベル(CL1)をサンプリングする。
時刻t23にて、φTGLは“High”レベルとなる。この時、第1フォトダイオード120からFD1部132へ信号電荷が転送され、FD1部132の電位は低下する。
時刻t24にて、φTGLは“Low”レベルとなり、第1フォトダイオード120からFD1部132への信号電荷の転送が終了する。
時刻t24aにて、FD1部132の電位が安定し、信号レベル(SH1)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻22aにおける信号レベル(CL1)と時刻24aにおける信号レベル(SH1)の差分から第1フォトダイオード120の出力信号Sig1を抽出する。
時刻t25にて、φSW1が“High”レベルとなる。この時、FD1部132に加えてスイッチトランジスタ122とFD2部133の寄生容量分だけ容量が増加するため、時刻t24の時と比べて、変換効率ηが低下し、FD1部132の電位は上昇する。FD1部132の電位が安定した時刻t25aにて信号レベル(SH2)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻t21aにおける信号レベル(CL2)と時刻t25aにおける信号レベル(SH2)の差分から第1フォトダイオード120の出力信号Sig2を抽出する。
時刻t26にて、φTGC1は“High”レベルとなる。この時、FD1部132とスイッチトランジスタ122とFD2部133の容量に加えて、第2転送トランジスタ131の容量と蓄積容量素子127の容量が増加するため、時刻t25の時と比べて、変換効率ηが低下し、FD1部132の電位は上昇する。FD1部132の電位が安定した時刻t26aにて信号レベル(SH4)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻19aにおける信号レベル(CL4)と時刻26aにおける信号レベル(SH4)の差分から第1フォトダイオード120の出力信号Sig4を抽出する。
時刻t27にて、φSW1とφTGC1は“Low”レベルとなる。また、φSELは“Low”レベルとなり、選択トランジスタ125がオフとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTの接続が電気的に切断される。
また、第1フォトダイオード120の露光期間TpdはφTGLが“Low”レベルとなる時刻t2から時刻t24の期間となる。一方、蓄積容量素子127の第2フォトダイオード126から信号電荷が転送される蓄積期間Tc1は、時刻t2から時刻t3の期間をTa、時刻t14から時刻t24までの期間をTb、蓄積周期Ttと定義すると、(式1)で表される。
Tc1=(Tpd-Ta-Tb)*Texp/Tt …(式1)
これより、第1フォトダイオード120の露光期間Tpdと蓄積容量素子127の蓄積期間Tc1をあらわす式1を用いることで、露光期間Tpdと蓄積期間Tc1の比率を算出することができる。
以上のタイミングチャートに従うと、合計で4つの異なる状態における出力信号を得ることができる。第1フォトダイオード120の信号電荷においてスイッチトランジスタ122がオフ状態としてより高い変換効率で信号電荷を電圧に変換した出力信号Sig1と、第1フォトダイオード120の信号電荷においてスイッチトランジスタ122がオンとして信号電荷を電圧変換した出力信号Sig2と、第1フォトダイオード120の信号電荷においてスイッチトランジスタ122がオン、第2転送トランジスタ131がオンとして信号電荷を電圧変換した出力信号Sig4が取得できる。また、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子127に蓄積する信号電荷を電圧変換した出力信号Sig3を取得できる。
図6は、第1の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の信号処理を行うフローチャートを示す。まず、図5のタイミングチャートで示したように各画素の出力信号(Sig1~Sig4)を取得する(S11)。次に、露光補正値GEXを算出する(S12)。露光補正値は第1フォトダイオード120の露光期間Tpdに対する、第1フォトダイオード120から第2フォトダイオード126へ溢れた信号電荷が転送されて蓄積する蓄積期間Tc1の比率(GEX=Tc1/Tpd)に相当する。図5のタイミングチャートでも示したように蓄積期間Tc1を主にφOFDとφTGS1のパルスタイミングにより制御される。次に、データ演算を行う(S13)。データ演算は第1フォトダイオード120の信号電荷の出力信号Sig4と、蓄積容量素子127に蓄積された信号電荷の出力信号Sig3とを、Sig3’=Sig3+Sig4*GEXの関係式に従って画素毎に演算を行う。これにより、第1フォトダイオード120の信号電荷であるSig1、Sig2と、第1フォトダイオード120の出力信号と蓄積容量素子127の出力信号を演算処理したSig3’を出力する(S14)。Sig1、Sig2およびSig3’は、被写体照度が低照度から高照度に対応する画素信号に対応する。Sig1、Sig2およびSig3’を合成することにより広ダイナミックレンジを実現できる。
図7は、第1の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の被写体照度と画素の出力信号の関係を示すグラフである。横軸には被写体照度を示し、縦軸には出力を示す。同図には、第1フォトダイオード120の信号電荷においてスイッチトランジスタ122がオフ状態としてより高い変換効率で信号電荷を電圧に変換した出力信号Sig1と、スイッチトランジスタ122がオンとして信号電荷を電圧変換した出力信号Sig2と、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子127に蓄積する信号電荷を電圧変換し、演算処理された出力信号Sig3’を示す。グラフの傾きは変換効率およびAD変換時のゲイン設定、蓄積期間および露光期間に依存する。低照度の被写体をカバーする出力信号Sig1では、変換効率の高く、AD変換時のゲイン設定も他より高く設定するため、グラフの傾きが急になっている。また、出力はAD変換後の出力を示しているため、最大値はAD変換時のbit数に依存する。
被写体照度L1になると、Sig1のAD変換後の出力値は最大値に到達し、これより被写体照度に依存せず一定の出力となる。
被写体照度L2になると、Sig2のAD変換後の出力値は最大値に到達し、これより被写体照度に依存せず一定の出力となる。Sig1よりはFD1部132の変換効率が低く、AD変換時のゲイン設定も低いため、より高照度側の被写体照度L2で出力は最大値となる。
被写体照度L3になると、Sig3’のAD変換後の出力値は最大値に到達し、これより被写体照度に依存せず一定の出力となる。
Sig3’は、Sig2と比べて、撮像可能な被写体照度の範囲は0~L3とより広く、被写体照度が比較的高い場合でも被写体照度に応じた信号電荷量を得ることができる。これは、蓄積容量素子127にて第1フォトダイオード120から溢れた信号電荷をある蓄積時間比で蓄積することが可能であるためである。また、蓄積期間を短くすることでグラフの傾きを緩やか(相対的に感度を下げる)にすることで、画素サイズを大きくして蓄積容量素子127の容量値を上げることなく、より高照度下の撮像が可能である。
ここで、LED光源によるフリッカーを抑制するため、固体撮像装置は常時露光動作あるいは、LED光源の点滅周期TLEDに対し、周期TLED/2以下の周期で間欠露光動作する必要がある。出力信号Sig1とSig2については、第1フォトダイオード120の信号電荷であり、常時露光動作で取得された信号電荷であるため、フリッカーは抑制される。また、Sig3’は蓄積容量素子127を用いて信号電荷の蓄積電荷量を拡大するとともに、図5における時刻t3からt6を周期的に繰り返して信号電荷を間欠的に蓄積し、間欠露光動作を行うことで、高照度の被写体の撮像を可能としつつ、LED光源のフリッカーを抑制した画像を得ることができる。
図8は、第1の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の被写体照度と画素のSN(信号とノイズの比)の関係を示すグラフである。横軸は被写体照度、縦軸はSNを示す。低照度から高照度までをSig1、Sig2、Sig3’の出力信号をつなぎ被写体照度に対する画像のSNを示したものである。各出力信号をつなぐことで、高いSNを維持しつつ広いダイナミックレンジを確保することができる。
また、このとき、ダイナミックレンジ(DR)は、第1フォトダイオード120の飽和Sat_pdと蓄積容量素子127の飽和Sat_capの飽和比(Sat_cap/Sat_pd)と、第1フォトダイオード120の露光期間Tpdに対する、第1フォトダイオード120から第2フォトダイオード126へ溢れた信号電荷が転送されて蓄積する蓄積期間Tc1の蓄積期間比率(Tc1/Tpd)を用いると、簡易計算で、以下のようになる。
WDRのDR=1フレームのDR+飽和比(Sat_cap/Sat_pd)/蓄積期間比率(Tc1/Tpd)
=72dB(AD12bit)+48dB(256/1倍)
=120dB
なお、ここで、1フレームのDRに関しては、画素のDR(=飽和/ノイズ比)が、ADbit精度を超えているとして、ADbit精度で制約を受けるとする。
また、蓄積容量素子127を使用すると、前述したように出力信号にkTCノイズが含まれてノイズが悪化する。仮にSig3’のみで広いダイナミックレンジの画像を得ようとすると、低照度領域では、kTCノイズによる影響が顕著となり、画質(S/N)が悪く、特にS/Nを重視する低照度の画質としては許容できない。しかしながら、第1の実施形態によれば、低照度の画質は、第1フォトダイオード120からの出力信号であるSig1とSig2であるため、低照度画質のS/Nが悪化するという課題は有しない。
以上説明してきたように、本実施の形態における固体撮像装置100は、画素セル101が行列状に配置される固体撮像装置100であって、画素セル101は、光電変換により生成した信号電荷を蓄積する第1フォトダイオード120と、第1フォトダイオードから溢れる信号電荷を保持する第1保持部としての第2フォトダイオード126と、第2保持部127と、第1保持部(つまり第2フォトダイオード126)に保持された信号電荷を第2保持部127へ転送する第1転送トランジスタ130と、を備える。
これによれば、第1フォトダイオード120の出力信号を低照度時に対応する画像生成に使用し、第2保持部127の出力信号を高照度に対応する画像生成に使用することで、広ダイナミックレンジを実現できる。また、第1保持部の存在によってフォトダイオード120は,長時間露光(例えば常時露光または間欠露光)に適している。よって、フリッカーを容易に抑制可能である。さらに、第1保持部はコンデンサではなく第2フォトダイオード126として構成されるので、フォトダイオード126から第2保持部127への信号電荷の転送において信号電荷が分割または分配されることなく、完全転送することができる。第1保持部(第2フォトダイオード126)は、第1フォトダイオード120と同様の構成なので、製造が容易である。
ここで、固体撮像装置100は、さらに、信号電荷を保持するフローティングディフュージョン部132と、第2保持部127からフローティングディフュージョン部132へ信号電荷を転送する第2転送トランジスタ131と、を備えてもよい。
ここで、固体撮像装置100は、第2転送トランジスタ131とフローティングディフュージョン部132との間にスイッチトランジスタ122を有してもよい。
ここで、第2フォトダイオード126は、埋込型フォトダイオードであってもよい。
ここで、固体撮像装置100は、光が入射する入射面と、入射面と反対側の非入射面とを有し、第2フォトダイオード126の非入射面側に、第1フォトダイオード120から溢れる信号電荷を、第2フォトダイオード126に導く転送路としての不純物拡散領域152または168を備えてもよい。
ここで、固体撮像装置100は、第1フォトダイオード120から溢れる信号電荷を、第2フォトダイオード126に導くオーバーフロートランジスタ128を備えてもよい。
ここで、固体撮像装置100は、第2フォトダイオード126を遮光する遮光膜(例えば遮光配線142または遮光壁162)を有していてもよい。
ここで、第1保持部から信号電荷を排出する電荷排出用トランジスタ129と、電荷排出用トランジスタ129を制御する垂直走査回路103と、を有していてもよい。
ここで、電荷排出用トランジスタ129と第1転送トランジスタ130を垂直走査回路103で制御することで、第2保持部127に保持される信号電荷に対応する第1蓄積期間を制御してもよい。
ここで、垂直走査回路103は、第1転送トランジスタ130を制御して、1フレーム期間に第1保持部(つまり第2フォトダイオード126)に保持された信号電荷を、第2保持部127へ複数回に分けて転送してもよい。
ここで、固体撮像装置100は、第1フォトダイオード120の信号電荷と第2保持部127に保持される信号電荷とを加算する第1加算部を有していてもよい。
また、本実施の形態における撮像方法は、画素セル101が行列状に配置される固体撮像装置100における撮像方法であって、前記画素セル101は、光電変換により生成した信号電荷を蓄積する第1フォトダイオード120と、第1フォトダイオード120から溢れる信号電荷を保持する第1保持部としての第2フォトダイオード126と、第2保持部127と、第1保持部に保持された信号電荷を第2保持部127へ転送する第1転送トランジスタ130と、を備え,撮像方法において、第1フォトダイオード120を露光し、第1フォトダイオード120から溢れた信号電荷を第1保持部に転送し、第1保持部(つまり第2フォトダイオード126)に保持された信号電荷を第2保持部127へ転送する。
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の構成例を示す図である。なお、図9では第1の実施形態と異なる点について記述する。
図9では、本回路例に係る画素セル101は、第1の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の構成例に加えて、第3保持部として例えば蓄積容量素子134、転送トランジスタ135、転送トランジスタ136を有する。
各トランジスタ135と136としては、例えばNチャネルのMOSトランジスタを用いてもよい。
転送トランジスタ135は、第2フォトダイオード126のカソード電極と蓄積容量素子134との間に接続されている。転送トランジスタ135のゲート電極には転送制御線TGS2が接続されている。転送トランジスタ135のゲート電極に転送制御線TGS2から転送パルスφTGS2にて“High”レベルが与えられると、転送トランジスタ135がオンとなり、第2フォトダイオード126に蓄積された信号電荷(具体的には電子)が蓄積容量素子134へ転送される。蓄積容量素子134のもう一方の電極には、容量制御線PVDDが接続されている。
転送トランジスタ136は、蓄積容量素子134と、スイッチトランジスタ122とリセットトランジスタ123との間にあるFD2部133と接続されている。転送トランジスタ136のゲート電極には転送制御線TGC2が接続されている。転送トランジスタ136のゲート電極に転送制御線TGC2から転送パルスφTGC2にて“High”レベルが与えられると、転送トランジスタ136がオンとなり、蓄積容量素子134に蓄積された信号電荷(具体的には電子)がFD2部133へ転送される。
次に図10は、図9に示す画素の動作を説明するためのタイミングチャートの一例を示す。
まず、時刻t1では、φRSとφSW1が“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。また、φTGLが“High”レベルとなり、第1フォトダイオード120の信号電荷は排出される。また、φOFDが“High”レベルであるため、第2フォトダイオード126もまた信号電荷は排出される。φTGC1とφTGC2は“High”レベルになり、蓄積容量素子127と蓄積容量素子134に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t2にて、φRSとφSW1は“Low”レベルとなる。このとき、通常時はリセットトランジスタ123およびスイッチトランジスタ122のスイッチングによるノイズにより、FD1部132の電位は段差が発生する。また、φTGLとφTGC1とφTGC2は“Low”レベルとなり、信号電荷が蓄積できる状態となる。
時刻t3にて、φOFDは“Low”レベルとなり、第2フォトダイオード126の信号電荷が蓄積できる状態となる。
時刻t4にて、φTGS1は“High”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子127へ信号電荷が転送される。
時刻t5にて、φTGS1は“Low”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子127への信号電荷の転送が終了する。時刻t3から時刻t5の期間Texp1は蓄積容量素子127の蓄積期間に相当する。
時刻t6にて、φTGS2は“High”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子134へ信号電荷が転送される。
時刻t7にて、φTGS2は“Low”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子134への信号電荷の転送が終了する。時刻t5から時刻t7の期間Texp2は蓄積容量素子134の蓄積期間に相当する。また、φOFDは“High”レベルとなり、第2フォトダイオード126の信号電荷が電源に排出される。
時刻t3からt8が蓄積周期Ttとして、時刻t20までφOFDとφTGS1とφTGS2のパルスが繰り返し行われる。
時刻21にて、φRSとφSW1が“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。また、φSELが“High”レベルとなり、選択トランジスタ125がオンとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTが電気的に接続される。増幅トランジスタ124は、一定の電流が流れソースフォロワを形成する。この図では記載していないが、同じ垂直信号線PIXOUTに接続する他の画素の選択トランジスタ125のゲート電極にはφSELとして“Low”レベルが供給され、選択トランジスタ125はオフしている。
時刻t22にて、φRSとφSW1は“Low”レベルとなる。このとき、通常時はリセットトランジスタ123およびスイッチトランジスタ122のスイッチングによるノイズにより、FD1部132の電位は段差が発生する。
時刻t23にて、φTGC1は“High”レベルとなる。この時、蓄積容量素子127に保持された信号電荷がFD2部133およびFD1部132へ電荷分配され、FD1部132の電位が低下し、電位が安定した時刻t23aにて信号レベル(SH2)をサンプリングする。
時刻t24にて、φRSが“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132および蓄積容量素子127に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t25にて、φRSは“Low”レベルとなる。このとき、FD1部132の電位が安定した時刻t25aにて信号レベル(CL2,CL4)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻23aにおける信号レベル(SH2)と時刻25aにおける信号レベル(CL2)の差分から蓄積容量素子127の出力信号Sig2を抽出する。
時刻t26にて、φTGC1が“Low”レベルになり、第2転送トランジスタ131がオフとなり、φRSが“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t27にて、φRSは“Low”レベルとなる。この時、FD1部132の電位が安定した時刻t27aにて信号レベル(CL1)をサンプリングする。
時刻t28にて、φTGLは“High”レベルとなる。この時、第1フォトダイオード120からFD1部132へ信号電荷が転送され、FD1部132の電位は低下する。
時刻t29にて、φTGLは“Low”レベルとなり、第1フォトダイオード120からFD1部132への信号電荷の転送が終了する。時刻t29aにて、FD1部132の電位が安定し、信号レベル(SH1)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻27aにおける信号レベル(CL1)と時刻29aにおける信号レベル(SH1)の差分から第1フォトダイオード120の出力信号Sig1を抽出する。
時刻t30にて、φTGC1は“High”レベルとなる。この時、FD1部132とスイッチトランジスタ122とFD2部133の容量に加えて、第2転送トランジスタ131の容量と蓄積容量素子127の容量が増加するため、時刻t29aの時と比べて、変換効率ηが低下し、FD1部132の電位は上昇する。FD1部132の電位が安定した時刻t30aにて信号レベル(SH4)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻25aにおける信号レベル(CL4)と時刻30aにおける信号レベル(SH4)の差分から第1フォトダイオード120の出力信号Sig4を抽出する。
時刻t31にて、φTGC1が“Low”レベルになり、第2転送トランジスタ131がオフとなり、φRSが“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t32にて、φRSは“Low”レベルとなる。
時刻t33にて、φTGC2が“High”レベルになる。この時、蓄積容量素子134に保持された信号電荷がFD2部133およびFD1部132へ電荷分配され、FD1部132の電位が低下し、FD1部132の電位が安定した時刻t33aにて信号レベル(SH3)をサンプリングする。
時刻t34にて、φRSが“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132および蓄積容量素子134に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t35にて、φRSは“Low”レベルとなる。このとき、FD1部132の電位が安定した時刻t35aにて信号レベル(CL3)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻33aにおける信号レベル(SH3)と時刻35aにおける信号レベル(CL3)の差分から蓄積容量素子134の出力信号Sig3を抽出する。
時刻t36にて、φSW1とφTGC2は“Low”レベルとなる。また、φSELは“Low”レベルとなり、選択トランジスタ125がオフとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTの接続が電気的に切断される。
また、第1フォトダイオード120の露光期間TpdはφTGLが“Low”レベルとなる時刻t2から時刻t29の期間となる。一方、蓄積容量素子127の第2フォトダイオード126から信号電荷が転送される蓄積期間Tc1’は、時刻t2から時刻t3の期間をTa、時刻t19から時刻t24までの期間をTbと定義すると、(式2)で表される。
Tc1’=(Tpd-Ta-Tb)*Texp1/Tt …(式2)
また、蓄積容量素子134の第2フォトダイオード126から信号電荷が転送される蓄積期間Tc2’は、(式3)で表される。
Tc2’=(Tpd-Ta-Tb)*Texp2/Tt …(式3)
これより、第1フォトダイオード120の露光期間Tpdと蓄積容量素子127の蓄積期間Tc1’と蓄積容量素子134の蓄積期間Tc2’を表す式2、式3を用いることで、露光期間Tpdと蓄積期間Tc1’とTc2’の比率を算出することができる。
以上のタイミングチャートに従うと、合計で4つの異なる状態における出力信号を得ることができる。第1フォトダイオード120の信号電荷を電圧に変換した出力信号Sig1と、スイッチトランジスタ122がオン、第2転送トランジスタ131がオンとして第1フォトダイオード120の信号電荷を電圧変換した出力信号Sig4が取得できる。また、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子127に蓄積する信号電荷を電圧変換した出力信号Sig2と、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子134に蓄積する信号電荷を電圧変換した出力信号Sig3を取得できる。
図11は、第2の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の信号処理を行うフローチャートを示す。まず、図10のタイミングチャートで示した各画素の出力信号(Sig1~Sig4)を取得する(S21)。次に、パラメータ値を設定する(S22)。まず、露光補正値GEX1とGEX2は第1フォトダイオード120の露光時間に対する、第1フォトダイオード120から第2フォトダイオード126へ溢れた信号電荷が転送されて蓄積する露光時間の比率(GEX1=Tc1’/Tpd、GEX2=Tc2’/Tpd)で表される。これは、図10のタイミングチャートでも示したようにφOFDとφTGS1とφTGS2のパルスタイミングにより制御される。また、ゲイン補正値は、蓄積容量素子127の信号電荷量を電圧に変換する変換効率η1と、蓄積容量素子134の信号電荷量を電圧に変換する変換効率η2の比率で表され、GMS=η1/η2となる。
次に、データ演算を行う(S23)。データ演算は、第1フォトダイオード120の信号電荷の出力信号Sig4と、蓄積容量素子127に蓄積された信号電荷の出力信号Sig2を、(式4)の関係式に従って画素毎に演算することで、被写体照度が低照度から高照度に対応する画素信号を得る。
Sig2’=Sig2+Sig4*GEX1 …(式4)
また、蓄積容量素子134に蓄積された信号電荷の出力信号Sig3については、(式5)の関係式に従って画素毎に演算を行う。
Sig3’=Sig3+Sig4*GEX2/GMS …(式5)
これにより、第1フォトダイオード120の信号電荷であるSig1と、第1フォトダイオード120の信号と蓄積容量素子127の信号を演算処理したSig2’、また第1フォトダイオード120の信号と蓄積容量素子134の信号を演算処理したSig3’を出力する(S24)。Sig1、Sig2’およびSig3’は、被写体照度が低照度から高照度に対応する画素信号に対応する。Sig1、Sig2’およびSig3’を合成することにより広ダイナミックレンジを実現できる。
図12は、第2の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の被写体照度と画素の出力信号の関係を示すグラフである。横軸には被写体照度を示し、縦軸には出力を示す。同図は、第1フォトダイオード120の信号電荷であるSig1と、第1フォトダイオード120の出力信号と蓄積容量素子127の出力信号を演算処理したSig2’、また第1フォトダイオード120の出力信号と蓄積容量素子134の出力信号を演算処理したSig3’とを示す。
被写体照度L1’になると、Sig1のようにAD変換後の出力値は最大値に到達し、これより被写体照度に依存せず一定の出力となる。
被写体照度L2’になると、Sig2’のAD変換後の出力値は最大値に到達し、これより被写体照度に依存せず一定の出力となる。被写体照度L2’は図7における被写体照度L2よりも高照度側へシフトしている。これは、蓄積容量素子127にて第1フォトダイオード120から溢れた信号電荷をある露光時間比で蓄積することが可能であるためである。また、被写体照度L2’の位置は、蓄積期間Tc1’を短くすることでグラフの傾きを緩やかにする(相対的に感度を下げる)ことで、より高い被写体照度の撮像も可能である。
被写体照度L3’になると、Sig3’のようにAD変換後の出力値は最大値に到達し、これより被写体照度に依存せず一定の出力となる。
ここでのグラフの前提としては、蓄積容量素子134の容量値は蓄積容量素子127よりも大きく、蓄積期間Tc2’は蓄積期間Tc1’よりも短いとしている。これにより、Sig3’は、Sig2’と比べて、撮像可能な被写体照度の範囲は0~L3とより広く、被写体照度が比較的高い場合でも被写体照度に応じた信号電荷量を得ることができる。また、被写体照度L3’の位置は、蓄積期間Tc2’を短くすることでグラフの傾きを緩やか(相対的に感度を下げる)にし、より高い被写体照度の撮像も可能である。
ここで、LED光源のフリッカー現象を抑制するため、常時露光動作あるいは、LED光源の点滅周期TLEDに対し、周期TLED/2以下の周期で間欠露光動作(蓄積動作)することが必要である。Sig2’およびSig3’は広いダイナミックレンジを確保し、周期TLED/2以下の周期で間欠蓄積動作することで、LED光源のフリッカーを抑制した画像を得ることができる。
また、出力信号Sig2’およびSig3’の蓄積制御として、間欠蓄積動作を行うことで様々な撮影シーンに応じて最適な蓄積時間を設定することができる。
なお、出力信号Sig2’およびSig3’にはkTCノイズが重畳する。kTCノイズを電子数換算すると、(式6)で表される。
式6から電子数換算したkTCノイズNoisektcは、容量値Cの√に比例するため、容量値Cが大きいほどノイズは大きくなる。図11でも示したように出力信号Sig2’がカバーする被写体照度は、Sig3’よりも被写体照度よりも低照度であり、光電変換される信号電荷はより少なくなるため、kTCノイズの画質への影響が懸念される。このため、蓄積容量素子127の容量値は蓄積容量素子134よりも小さくすることでkTCノイズの影響を緩和させてもよい。
以上説明してきたように、本実施の形態における固体撮像装置100は、第1保持部(つまり第2フォトダイオード126)から信号電荷を排出する電荷排出用トランジスタ129と、電荷排出用トランジスタ129を制御する垂直走査回路103と、第1保持部(第2フォトダイオード126)から転送される信号電荷を保持する第3保持部134と、第1保持部(第2フォトダイオード126)から第3保持部134に信号電荷を転送するトランジスタ135と、を有する。
これによれば、ダイナミックレンジの拡大とフリッカー現象の抑制とを両立し、しかも、相対的に感度を下げることでより高い被写体照度の撮像を可能にする。
ここで、電荷排出用トランジスタ129あるいは第4転送トランジスタ135と第1転送トランジスタ130を垂直走査回路103で制御することで、第2保持部127に保持される信号電荷に対応する第2蓄積期間を制御してもよい。
ここで、電荷排出用トランジスタ129あるいは第1転送トランジスタ130と第4転送トランジスタ135を垂直走査回路103で制御することで、第3保持部134に保持される信号電荷に対応する第3蓄積期間を制御してもよい。
ここで、第2蓄積期間は、第3蓄積期間よりも長くてもよい。
ここで、垂直走査回路103は、第1転送トランジスタ130を制御して、1フレーム期間に第1保持部(つまり第2フォトダイオード126)に保持された信号電荷を、第2保持部127へ複数回に分けて転送し、垂直走査回路103は、第4転送トランジスタ135を制御して、1フレーム期間に第1保持部に保持された信号を、第3保持部134へ複数回に分けて転送してもよい。
ここで、第2保持部127の容量値は、第3保持部134の容量値よりも小さくてもよい。
ここで、固体撮像装置100は、第1フォトダイオード120が光を受光し光電変換する露光期間と、第2保持部127に保持される信号電荷に対応する第2蓄積期間との差分を補正する第1補正部と、第1フォトダイオード120の信号電荷と第2保持部127に保持される信号電荷を加算する第1加算部と、第1フォトダイオード120が光電変換する露光期間と、第3保持部134に保持される信号電荷に対応する第3蓄積期間との差分を補正する第2補正部と、第2保持部127に保持される信号電荷を電圧に変換する変換効率と第3保持部134に保持される信号電荷を電圧に変換する変換効率との差分を補正するゲイン補正部と、第1フォトダイオード120の信号電荷と第3保持部134に保持される信号電荷を加算する第2加算部と、を有していてもよい。
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の構成例を示す図である。なお、図13では第2の実施形態と異なる点を中心に記述する。
図13は、本回路例に係る画素セル101は、第2の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の構成例に加えて、スイッチトランジスタ137を有する。
スイッチトランジスタ137としては、例えばNチャネルのMOSトランジスタを用いてもよい。
スイッチトランジスタ137については、ゲートにスイッチ制御線SW2が接続され、ソース電極にN行目の画素セル101のFD2部133と、ここには図示していないがN+1行目のスイッチトランジスタ137のドレイン電極が接続され、ドレイン電極にN-1行目の画素セル101のFD2部133とスイッチトランジスタ137のソース電極が接続されている。
次に図14は、図13に示す画素の動作を説明するためのタイミングチャートの一例を示す。なお、時刻t1~t20までは図10で示した第2の実施形態におけるタイミングチャートと同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、ここではN-1行目の画素セル101の一部の駆動タイミングを示すが、タイミングチャートに示されていないN-1行目の画素セル101の制御パルス(φSEL、φSW2、φTGL、φOFD、φTGS1、φTGS2、φTGC1、φTGC2)は、時刻t41後の状態を維持しているとする。
時刻21にて、φRS<N>とφSW1<N>とφRS<N-1>とφSW<N-1>が“High”レベルになり、N行目とN-1行目のFD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。また、φSELが“High”レベルとなり、選択トランジスタ125がオンとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTが電気的に接続される。増幅トランジスタ124は、一定の電流が流れソースフォロワを形成する。この図では記載していないが、同じ垂直信号線PIXOUTに接続する他の画素の選択トランジスタ125のゲート電極にはφSELとして“Low”レベルが供給され、選択トランジスタ125はオフしている。
時刻t22にて、φRS<N>とφRS<N-1>は“Low”レベルとなる。このとき、通常時はリセットトランジスタ123のスイッチングによるノイズにより、FD1部132の電位は段差が発生する。このとき、FD1部132の電位が安定した時刻t22aにて信号レベル(CL1)をサンプリングする。
時刻t23にて、φTGLは“High”レベルとなる。この時、第1フォトダイオード120からFD1部132へ信号電荷が転送され、FD1部132の電位は低下する。
時刻t24にて、φTGLは“Low”レベルとなり、第1フォトダイオード120からFD1部への信号電荷の転送が終了する。時刻t24aにて、FD1部132の電位が安定し、信号レベル(SH1)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻22aにおける信号レベル(CL1)と時刻24aにおける信号レベル(SH1)の差分から第1フォトダイオード120の出力信号Sig1を抽出する。
時刻t25にて、φSW2は“High”レベルとなり、N行目とN-1行目のFD2部133およびFD1部132が電気的に接続し、信号電荷は電荷分配される。
時刻t26にて、φSW2は“Low”レベルとなり、N行目とN-1行目のFD2部133は電気的に切断される。
時刻t27にて、φRS<N>は“High”レベルとなり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加され、N行目のFD2部133に保持された信号電荷がリセットされる。
時刻t28にて、φRS<N>は“Low”レベルとなり、リセットトランジスタ123がオフする。N行目のFD2部133とスイッチトランジスタ122とFD1部132の容量をCfd2_N、N-1行目のFD2部133とスイッチトランジスタ122とFD1部132の容量をCfd2_N-1とすると、時刻t25から時刻t27の動作により、時刻t25の時点で保持された信号電荷Qfd2は電荷分配の法則から、(式7)で表される。
Qfd2’=Qfd2*Cfd2_N-1/(Cfd2_N+Cfd2_N-1)…(式7)
時刻t29にて、φSW2は“High”レベルとなり、N行目とN-1行目のFD2部が電気的に接続し、信号電荷は電荷分配される。
時刻t30にて、φSW2は“Low”レベルとなり、N行目とN-1行目のFD2部133は電気的に切断される。
時刻t31にて、φRS<N-1>は“High”レベルとなり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加され、N-1行目のFD2部133に保持された信号電荷がリセットされる。
時刻t32にて、RS<N-1>は“Low”レベルとなり、リセットトランジスタ123がオフする。時刻t29から時刻t32の動作により、時刻t29の時点で保持された信号電荷Qfd2’は電荷分配の法則から、(式8)で表される。
Qfd2”=Qfd2’*Cfd2_N/(Cfd2_N+Cfd2_N-1)…(式8)
ここで、仮にCfd2_N=Cfd2_N-1として式8を計算すると、時刻t32の信号電荷Qfd2”は、Qfd2”=Qfd2/4で表される。これに対して、実際には容量値Cfd2_NとCfd2_N-1のばらつきがあるため、時刻t25から時刻t32にかけてN行目およびN-1行目のFD2部133の信号電荷を交互にリセットすることで、容量値Cfd2_NとCfd2_N-1のばらつきによる信号電荷のリセットばらつきを抑制して、信号電荷Qfd2”がQfd2”=Qfd2/4に近づくように駆動制御している。例えば、Cfd2_N=1fF、Cfd2_N-1=1.1fFとし、N行目およびN-1行目のFD2部133の信号電荷を交互にリセットを行わないケースは式8の2回繰返しと同等であり、信号電荷Qfd2”は、Qfd2”={1/(1+1.1)}^2*Qfd2=0.227Qfd2となる。一方、N行目およびN-1行目のFD2部133の信号電荷を交互にリセットを行うと、信号電荷Qfd2”は、Qfd2”=1*1.1/(1+1.1)^2* Qfd2=0.249Qfd2となり、理想値の0.25*Qfd2(=1/4*Qfd2)により近くなることが分かる。
時刻t33にて、φTGC1は“High”レベルとなる。この時、蓄積容量素子127に保持された信号電荷がFD2部133およびFD1部132に保持された第1フォトダイオード120の信号電荷Qfd2”と合わさり、FD1部132の電位が低下し、電位が安定した時刻t33aにて信号レベル(SH2)をサンプリングする。この時、第1フォトダイオード120の信号電荷と、蓄積容量素子127の信号電荷をFD1部132に加算するために、時刻t25からt32の駆動タイミングで行われる第1フォトダイオード120の信号電荷の減衰率をGgainとし、蓄積容量素子127の蓄積期間Tc1’と第1フォトダイオード120の露光期間Tpdの比率Tc1’/Tpdと減衰率Ggainとを合わせるように蓄積期間Tc1’を設定する必要がある。なお、時刻t25から時刻t32を繰り返すことで、減衰率Ggainを変えることも可能である。
時刻t34にて、φRS<N>が“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132および蓄積容量素子127に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t35にて、φRS<N>は“Low”レベルとなる。このとき、FD1部132の電位が安定した時刻t35aにて信号レベル(CL2)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻33aにおける信号レベル(SH2)と時刻35aにおける信号レベル(CL2)の差分から蓄積容量素子127の出力信号Sig2を抽出する。
時刻t36にて、φTGC1が“Low”レベルになり、第2転送トランジスタ131がオフとなり、φRS<N>が“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t37にて、φRS<N>は“Low”レベルとなる。
時刻t38にて、φTGC2が“High”レベルになる。この時、蓄積容量素子134に保持された信号電荷がFD2部133およびFD1部132へ電荷分配され、FD1部132の電位が低下し、電位が安定した時刻t38aにて信号レベル(SH3)をサンプリングする。
時刻t39にて、φRS<N>が“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132および蓄積容量素子134に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t40にて、φRS<N>は“Low”レベルとなる。このとき、FD1部132の電位が安定した時刻t40aにて信号レベル(CL3)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻33aにおける信号レベル(SH3)と時刻40aにおける信号レベル(CL3)の差分から蓄積容量素子134の出力信号Sig3を抽出する。
時刻t41にて、φSW1<N>とφSW<N-1>とφTGC2は“Low”レベルとなる。また、φSELは“Low”レベルとなり、選択トランジスタ125がオフとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTの接続が電気的に切断される。
以上のタイミングチャートに従うと、合計で3つの異なる状態における出力信号を得ることができる。第1フォトダイオード120の信号電荷を電圧に変換した出力信号Sig1と、第1フォトダイオード120の信号電荷と第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子127に蓄積する信号電荷をFD1部132で加算し、電圧変換した出力信号Sig2と、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子134に蓄積する信号電荷を電圧変換した出力信号Sig3を取得できる。
図15には、第3の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の信号処理を行うフローチャートを示す。まず、図14のタイミングチャートで示した各画素の出力信号(Sig1~Sig3)を取得する(S31)。次に、パラメータ値を設定する(S32)。パラメータは露光補正値GEX1とGEX2とゲイン補正値GLSがある。ゲイン補正値GLSは、第1フォトダイオード120の信号電荷量をFD1部132で電圧に変換する変換効率η0と、蓄積容量素子134の信号電荷量を電圧に変換する変換効率η2の比率で表され、GLS=η0/η2となる。
次に、データ演算を行う(S33)。データ演算は、第1フォトダイオード120の信号電荷の出力信号Sig1と、蓄積容量素子134に蓄積された信号電荷の出力信号Sig3を、(式9)の関係式に従って画素毎に演算することで、被写体照度が低照度から高照度に対応する画素信号を得る。
Sig3’=Sig3+Sig1*GEX2/GLS …(式9)
これにより、第1フォトダイオード120の信号電荷であるSig1と、第1フォトダイオード120の信号と蓄積容量素子127の信号をFD1部132で加算したSig2、また第1フォトダイオード120の信号と蓄積容量素子134の信号を演算処理したSig3’を出力する(S34)。これにより、被写体照度が低照度から高照度に対応する画素信号を得ることができる。なお、画素の被写体照度と画素の出力信号の関係を示すグラフとしては、図12と同様であり、Sig1とSig2とSig3’の出力信号で広範囲の被写体照度を撮像することが可能となる。
ここで、実施例2に対する差分としては、Sig2の信号を信号処理回路107における演算処理ではなくFD1部132でアナログ的に加算する点である。これにより、出力信号を4つの状態における出力信号から3つの状態における出力信号に減らすことができる。これにより、駆動時間の短縮が可能となり低消費電力化などが可能となる。
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の構成例を示す図である。なお、図16では第2の実施形態と異なる点を中心に記述する。
図16は、本回路例に係る画素セル101は、第2の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の構成例に対して、電荷排出トランジスタ129を有しない。また、増幅トランジスタ138と選択トランジスタ139を有する。
増幅トランジスタ138と選択トランジスタ139としては、例えばNチャネルのMOSトランジスタを用いてもよい。
増幅トランジスタ138については、ゲート電極がFD2部133と接続され、ドレイン電極が画素電源配線VDDCと接続され、ソース電極が選択トランジスタ139のドレイン電極と接続されている。
選択トランジスタ139は、ゲート電極は選択制御線SEL2が接続され、ドレイン電極は増幅トランジスタ138のソース電極と接続され、ソース電極は垂直信号線PIXOUTと接続される。画素の読出し行が選択されると、選択制御線SEL2を伝達して選択パルスφSEL2にて“High”レベルが与えられると、選択トランジスタ139がオンとなり、増幅トランジスタ138のソース電極と垂直信号線PIXOUTを接続する。また、選択トランジスタ125は、ゲート電極は選択制御線SEL1が接続されている。
次に図17は、図16に示す画素の動作を説明するためのタイミングチャートの一例を示す。
まず、時刻t1では、φRSとφSW1が“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。また、φTGLが“High”レベルとなり、第1フォトダイオード120の信号電荷は排出される。また、φTGC1とφTGC2は“High”レベルになり、蓄積容量素子127と蓄積容量素子134に電源電圧AVDDが印加される。
時刻t2にて、φRSとφSW1は“Low”レベルとなる。このとき、通常時はリセットトランジスタ123およびスイッチトランジスタ122のスイッチングによるノイズにより、FD1部の電位は段差が発生する。また、φTGLとφTGC1とφTGC2は“Low”レベルとなり、信号電荷が蓄積できる状態となる。
時刻t3にて、φTGS1は“High”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子127へ信号電荷が転送される。
時刻t4にて、φTGS1は“Low”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子127への信号電荷の転送が終了する。時刻t2から時刻t4の期間Texp1は蓄積周期Ttにおける蓄積容量素子127の露光期間に相当する。
時刻t5にて、φTGS2は“High”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子134へ信号電荷が転送される。
時刻t6にて、φTGS2は“Low”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子134への信号電荷の転送が終了する。時刻t4から時刻t6の期間Texp2は蓄積周期Ttにおける蓄積容量素子134の露光期間に相当する。
時刻t7にて、φTGS1は“High”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子127へ信号電荷が転送される。
時刻t8にて、φTGS1は“Low”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子127への信号電荷の転送が終了する。時刻t6から時刻t8の期間Texp1は蓄積周期Ttにおける蓄積容量素子127の露光期間に相当する。
時刻t9にて、φTGS2は“High”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子134へ信号電荷が転送される。
時刻t10にて、φTGS2は“Low”レベルとなり、第2フォトダイオード126から蓄積容量素子134への信号電荷の転送が終了する。時刻t8から時刻t10の期間Texp2は蓄積周期Ttにおける蓄積容量素子134の露光期間に相当する。
時刻t6からt10が蓄積周期Ttとして、時刻t22までφTGS1とφTGS2のパルスが繰り返し行われる。
時刻23にて、φRSとφSW1が“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加される。また、φSEL2が“High”レベルとなり、選択トランジスタ139がオンとなり、増幅トランジスタ138のソース電極と垂直信号線PIXOUTが電気的に接続される。増幅トランジスタ138は、一定の電流が流れソースフォロワを形成する。この図では記載していないが、同じ垂直信号線PIXOUTに接続する他の画素の選択トランジスタ125および選択トランジスタ139のゲート電極にはφSEL1およびφSEL2として“Low”レベルが供給され、選択トランジスタ125および選択トランジスタ139はオフしている。
時刻t24にて、φRSとφSW1は“Low”レベルとなる。このとき、通常時はリセットトランジスタ123およびスイッチトランジスタ122のスイッチングによるノイズにより、FD1部132およびFD2部133の電位は段差が発生する。
時刻t25にて、φTGC2は“High”レベルとなる。この時、蓄積容量素子134保持された信号電荷がFD2部133へ電荷分配され、FD2部133の電位が低下し、電位が安定した時刻t25aにて信号レベル(SH3)をサンプリングする。
時刻t26にて、φSEL2が“Low”レベルとなり、選択トランジスタ139がオフとなり、φSEL1が“High”レベルとなり、選択トランジスタ125がオンとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTが電気的に接続される。増幅トランジスタ124は、一定の電流が流れソースフォロワを形成する。この時、垂直信号線PIXOUTの電位が安定した時刻t26aにて信号レベル(CL1)をサンプリングする。
時刻t27にて、φTGLは“High”レベルとなる。この時、第1フォトダイオード120からFD1部132へ信号電荷が転送され、FD1部132の電位は低下する。
時刻t28にて、φTGLは“Low”レベルとなり、第1フォトダイオード120からFD1部132への信号電荷の転送が終了する。時刻t28aにて、FD1部132の電位が安定し、信号レベル(SH1)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻26aにおける信号レベル(CL1)と時刻28aにおける信号レベル(SH1)の差分から第1フォトダイオード120の出力信号Sig1を抽出する。
時刻t29にて、φSW1は“High”レベルとなる。この時、第1フォトダイオード120からFD1部132に転送された信号電荷と、FD2部133に保持されている蓄積容量素子134に蓄積した信号電荷が加算される。また、φTGC1は“High”レベルとなり、蓄積容量素子127に蓄積した信号電荷がFD2部133およびFD1部132にて加算される。FD1部132の電位が低下し、電位が安定した時刻t29aにて信号レベル(SH2)をサンプリングする。
時刻t30では、φRSは“High”レベルになり、FD2部133とFD1部132に電源電圧AVDDが印加され、信号電荷が電源電圧に排出される。
時刻t31にて、φRSは“Low”レベルとなる。このとき、FD1部132の電位が安定した時刻t31aにて信号レベル(CL2)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻29aにおける信号レベル(SH2)と時刻31aにおける信号レベル(CL2)の差分から蓄積容量素子127と蓄積容量素子134と第1フォトダイオード120の信号電荷を加算した出力信号Sig2を抽出する。
時刻t32にて、φSW1は“Low”レベルになり、スイッチトランジスタ122がオフとなる。また、φTGC1は“Low”レベルになり、第2転送トランジスタ131がオフとなる。φSEL1が“Low”レベルとなり、選択トランジスタ125がオフとなり、φSEL2が“High”レベルとなり、選択トランジスタ139がオンとなり、増幅トランジスタ138のソース電極と垂直信号線PIXOUTが電気的に接続される。垂直信号線PIXOUTの電位が安定した時刻t32aにて信号レベル(CL3)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻25aにおける信号レベル(SH3)と時刻32aにおける信号レベル(CL3)の差分から蓄積容量素子134の出力信号Sig3を抽出する。
時刻t33にて、φTGC2は“Low”レベルとなる。また、φSEL2は“Low”レベルとなり、選択トランジスタ139がオフとなり、増幅トランジスタ138のソース電極と垂直信号線PIXOUTの接続が電気的に切断される。
また、第1フォトダイオード120の露光期間TpdはφTGLが“Low”レベルとなる時刻t2から時刻t28の期間となる。一方、蓄積容量素子127の第2フォトダイオード126から信号電荷が転送される蓄積期間Tc1”は、時刻t21から時刻t24までの期間をTb、蓄積周期Ttと定義すると、(式10)で表される。
Tc1”=(Tpd-Tb)*Texp1/Tt …(式10)
また、蓄積容量素子134の第2フォトダイオード126から信号電荷が転送される蓄積期間Tc2”は、(式11)で表される。
Tc2”=(Tpd-Tb)*Texp2/Tt …(式11)
また、蓄積容量素子127の蓄積期間Texp1と蓄積容量素子134の蓄積期間Texp2の加算値は蓄積周期Tt(=Texp1+Texp2)と同等である。これより、蓄積容量素子127に蓄積した信号電荷と、蓄積容量素子134に蓄積した信号電荷の加算値に対する蓄積期間は、(式12)表される。
Tc3=Tc1”+Tc2”=Tpd-Tb …(式12)
通常、第1フォトダイオード120の露光期間Tpdに対して、Tbは非常に小さいため、蓄積容量素子127と蓄積容量素子134に蓄積した信号電荷の蓄積期間は、ほぼ第1フォトダイオード120の露光期間と同等であることが分かる。つまり、蓄積容量素子127に蓄積した信号電荷と、蓄積容量素子134に蓄積した信号電荷を加算すると、第1フォトダイオード120の露光期間とほぼ同等の蓄積期間となるため、蓄積容量素子127の信号電荷と蓄積容量素子134の信号電荷と第1フォトダイオード120の信号電荷をFD1部132およびFD2部133にて加算することが可能となる。これにより、Sig2はリニアリティ特性が良好な出力信号を得ることができる。
以上のタイミングチャートに従うと、合計で3つの異なる状態における出力信号を得ることができる。第1フォトダイオード120の信号電荷を電圧に変換した出力信号Sig1と、第1フォトダイオード120の信号電荷と、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子127に蓄積する信号電荷と、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子134に蓄積する信号電荷を加算し、電圧変換した出力信号Sig2と、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子134に蓄積する信号電荷を電圧変換した出力信号Sig3を取得できる。出力信号に対する信号処理フローは、図15と同等である。図15の信号処理フローを通して、Sig1、Sig2、Sig3’の出力信号がデータとして出力される。画素の被写体照度と画素の出力信号の関係を示すグラフとしては、図12と同様であり、Sig1とSig2とSig3’の出力信号で広範囲の被写体照度を撮像することが可能となる。
以上説明してきたように本実施の形態における100は、光を受光し、光電変換して生成された信号電荷を蓄積する光電変換素子と、前記信号電荷を第1フローティングディフュージョン部に転送する第1転送トランジスタと、前記光電変換素子から溢れる前記信号電荷を保持する第1保持部と、第2保持部と、前記第1保持部に保持された前記信号電荷を第2保持部へ転送する第2転送トランジスタと、前記第2保持部から第2フローティングディフュージョン部へ信号電荷を転送する第3転送トランジスタと、前記第1保持部から転送される前記信号電荷を保持する第3保持部と、前記第1保持部から前記第3保持部に前記信号電荷を転送する第4転送トランジスタと、前記第3保持部から前記フローティングディフュージョン部へ信号電荷を転送する第5転送トランジスタと、前記第1フローティングディフュージョン部と前記第2フローティングディフュージョン部を電気的に接続するスイッチトランジスタと、前記第1フローティングディフュージョン部と第2フローティングディフュージョン部をリセットするリセットトランジスタと、前記信号電荷量に応じた増幅信号を出力する前記第1フローティングディフュージョン部に接続する第1増幅トランジスタと、前記第1増幅トランジスタと接続する第1選択トランジスタと、前記信号電荷量に応じた増幅信号を出力する前記第2フローティングディフュージョン部に接続する第2増幅トランジスタと、前記第2増幅トランジスタと接続する第2選択トランジスタと、を有する画素セルが行列状に配置されてなる画素アレイ部を備える。
(第5の実施形態)
図18は、第5の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の構成例を示す図である。なお、図18では第4の実施形態と異なる点を中心に記述する。
図18は、本回路例に係る画素セル101は、第4の実施形態による固体撮像装置を構成する画素の構成例に対して、スイッチトランジスタ137を有し、増幅トランジスタ138と選択トランジスタ139を有しない。スイッチトランジスタ137としては、例えばNチャネルのMOSトランジスタを用いてもよい。
スイッチトランジスタ137については、ゲートにスイッチ制御線SW2が接続され、ソース電極にN行目の画素セル101のFD2部133と、ここには図示していないがN+1行目のスイッチトランジスタ137のドレイン電極が接続され、ドレイン電極にN-1行目の画素セル101のFD2部133とスイッチトランジスタ137のソース電極が接続されている。
次に図19は、図18に示す画素の動作を説明するためのタイミングチャートの一例を示す。なお、図17のタイミングチャートと駆動タイミングが同一である時刻t1~時刻t22までは説明を省略し、差分のみ示す。なお、N-1行目におけるφTGL<N-1>、φTGS1<N-1>、TGS2<N-1>、TGC1<N-1>、TGC2<N-1>については、“Low”レベルとして、N行目の画素セルに対する動作を説明する。また、N行目のFD1部132をFD1<N>、FD2部133をFD2<N>とし、N-1行目のFD1部132をFD1<N-1>、FD2部133をFD2<N-1>とする。
時刻t23にて、φRS<N>とφSW1<N>およびφRS<N-1>とφSW1<N-1>は“High”レベルになり、N行目とN-1行目の画素セルにおけるFD1<N>とFD2<N>とFD1<N-1>とFD2<N-1>に電源電圧AVDDが印加される。また、φSW2<N>は“High”レベルとなり、FD2<N>とFD2<N-1>が接続される。また、φSEL<N-1>が“High”レベルとなり、N-1行目の選択トランジスタ125がオンとなり、N-1行目の増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTが電気的に接続される。
時刻t24にて、φRS<N>とφSW1<N>およびφRS<N-1>は“Low”レベルとなる。このとき、通常時はリセットトランジスタ123およびスイッチトランジスタ122のスイッチングによるノイズにより、FD1<N>とFD1<N-1>の電位は段差が発生する。
時刻t25にて、φTGC2は“High”レベルとなる。この時、蓄積容量素子134保持された信号電荷がFD1<N-1>およびFD2<N>とFD2<N-1>へ電荷分配され、FD1<N-1>の電位が低下し、電位が安定した時刻t25aにて信号レベル(SH3)をサンプリングする。
時刻t26にて、φSEL<N-1>が“Low”レベルとなり、N-1行目の選択トランジスタ125がオフとなり、φSEL<N>が“High”レベルとなり、N行目の選択トランジスタ125がオンとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTが電気的に接続される。増幅トランジスタ124は、一定の電流が流れソースフォロワを形成する。この時、垂直信号線PIXOUTの電位が安定した時刻t26aにて信号レベル(CL1)をサンプリングする。
時刻t27にて、φTGL<N>は“High”レベルとなる。この時、第1フォトダイオード120からFD1<N>へ信号電荷が転送され、FD1<N>の電位は低下する。
時刻t28にて、φTGL<N>は“Low”レベルとなり、第1フォトダイオード120からFD1<N>への信号電荷の転送が終了する。時刻t28aにて、FD1<N>の電位が安定し、信号レベル(SH1)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻26aにおける信号レベル(CL1)と時刻28aにおける信号レベル(SH1)の差分から第1フォトダイオード120の出力信号Sig1を抽出する。
時刻t29にて、φSW1<N>は“High”レベルとなる。この時、第1フォトダイオード120からFD1<N>に転送された信号電荷と、FD2<N>に保持されている蓄積容量素子134に蓄積した信号電荷が加算される。また、φTGC1<N>は“High”レベルとなり、蓄積容量素子127に蓄積した信号電荷がFD2<N>およびFD1<N>にて加算される。FD1<N>の電位が低下し、電位が安定した時刻t29aにて信号レベル(SH2)をサンプリングする。
時刻t30では、φRS<N>とφRS<N-1>は“High”レベルになり、N行目とN-1行目のFD2部133とFD1<N>に電源電圧AVDDが印加され、信号電荷が電源電圧に排出される。
時刻t31にて、φRS<N>とφRS<N-1>は“Low”レベルとなる。このとき、FD1<N>の電位が安定した時刻t31aにて信号レベル(CL2)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻29aにおける信号レベル(SH2)と時刻31aにおける信号レベル(CL2)の差分から蓄積容量素子127と蓄積容量素子134と第1フォトダイオード120の信号電荷を加算した出力信号Sig2を抽出する。
時刻t32にて、φSW1<N>は“Low”レベルになり、N行目のスイッチトランジスタ122がオフとなる。また、φTGC1<N>は“Low”レベルになり、第2転送トランジスタ131がオフとなる。φSEL<N>が“Low”レベルとなり、N行目の選択トランジスタ125がオフとなり、φSEL<N-1>が“High”レベルとなり、N-1行目の選択トランジスタ125がオンとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTが電気的に接続される。垂直信号線PIXOUTの電位が安定した時刻t32aにて信号レベル(CL3)をサンプリングする。そして、カラム読出し回路105にて、時刻25aにおける信号レベル(SH3)と時刻32aにおける信号レベル(CL3)の差分から蓄積容量素子134の出力信号Sig3を抽出する。
時刻t33にて、φTGC2<N>は“Low”レベルとなる。また、φSEL<N-1>は“Low”レベルとなり、N-1行目の選択トランジスタ125がオフとなり、増幅トランジスタ124のソース電極と垂直信号線PIXOUTの接続が電気的に切断される。
第4の実施形態と同様に、蓄積容量素子127と蓄積容量素子134に蓄積した信号電荷の蓄積期間は、ほぼ第1フォトダイオード120の露光期間と同等である。これより、蓄積容量素子127に蓄積した信号電荷と、蓄積容量素子134に蓄積した信号電荷を加算すると、第1フォトダイオード120の露光期間とほぼ同等の蓄積期間となるため、蓄積容量素子127の信号電荷と蓄積容量素子134の信号電荷と第1フォトダイオード120の信号電荷をFD1部132およびFD2部133にて加算することが可能となる。これにより、Sig2はリニアリティ特性が良好な出力信号を得ることができる。
以上のタイミングチャートに従うと、合計で3つの異なる状態における出力信号を得ることができる。第1フォトダイオード120の信号電荷を電圧に変換した出力信号Sig1と、第1フォトダイオード120の信号電荷と、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子127に蓄積する信号電荷と、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子134に蓄積する信号電荷を加算し、電圧変換した出力信号Sig2と、第2フォトダイオード126から転送された蓄積容量素子134に蓄積する信号電荷を電圧変換した出力信号Sig3を取得できる。出力信号に対する信号処理フローは、図15と同等である。図15の信号処理フローを通して、Sig1、Sig2、Sig3’の出力信号がデータとして出力される。画素の被写体照度と画素の出力信号の関係を示すグラフとしては、図12と同様であり、Sig1とSig2とSig3’の出力信号で広範囲の被写体照度を撮像することが可能となる。
第4の実施形態に対する利点としては、画素セル101内に複数の増幅トランジスタおよび選択トランジスタを配置する必要がないことである。これにより、画素セル101内のトランジスタ数を削減できるため、微細化や第1フォトダイオード120の面積拡大などが可能となる。
以上説明してきたように本実施の形態における100は、光を受光し、光電変換して生成された信号電荷を蓄積する光電変換素子と、前記信号電荷を第1フローティングディフュージョン部に転送する第1転送トランジスタと、前記光電変換素子から溢れる前記信号電荷を保持する第1保持部と、第2保持部と、前記第1保持部に保持された前記信号電荷を第2保持部へ転送する第2転送トランジスタと、前記第2保持部から第2フローティングディフュージョン部へ信号電荷を転送する第3転送トランジスタと、前記第1保持部から転送される前記信号電荷を保持する第3保持部と、前記第1保持部から前記第3保持部に前記信号電荷を転送する第4転送トランジスタと、前記第3保持部から前記フローティングディフュージョン部へ信号電荷を転送する第5転送トランジスタと、前記第1フローティングディフュージョン部と前記第2フローティングディフュージョン部を電気的に接続する第1スイッチトランジスタと、前記第1フローティングディフュージョン部と第2フローティングディフュージョン部をリセットするリセットトランジスタと、前記信号電荷量に応じた増幅信号を出力する前記第1フローティングディフュージョン部に接続する第1増幅トランジスタと、前記第1増幅トランジスタと接続する第1選択トランジスタと、前記信号電荷量に応じた増幅信号を出力する前記第2フローティングディフュージョン部と異なる画素セルにおける前記第2フローティングディフュージョン部とを接続する第2スイッチトランジスタと、を有する画素セルが行列状に配置されてなる画素アレイ部を備える。
(第6の実施形態)
図20は、各実施形態における固体撮像装置100を適用した撮像装置(カメラシステム)の構成例を示す図である。同図の撮像装置は、固体撮像装置201,レンズを含む撮像光学系202、信号処理部203,駆動回路204およびシステム制御部205を備える。
図20に示す撮影装置200において、固体撮像装置201として、前述の第1から第5の実施形態(各変形例を含む)の固体撮像装置100が使用される。
また、駆動回路204は、システム制御部205から駆動モードに応じた制御信号を受け、固体撮像装置201に駆動モード信号を供給する。駆動モード信号を供給された固体撮像装置201においては、タイミング発生回路(図1のTG109)が、駆動モード信号に対応した駆動パルスを発生して、固体撮像装置201内の各ブロックに供給する。
また、信号処理部203は、固体撮像装置201から出力された画像信号を受けて、当該画像信号に対して各種の信号処理を行う。
このように、本実施形態における撮像装置は、上記の固体撮像装置100と、固体撮像装置100に被写体からの入射光を導く撮像光学系202と、固体撮像装置100からの出力信号を処理する信号処理部203とを備える。