JP7500351B2 - レーザ溶接方法 - Google Patents

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本発明は、アルミニウムダイカスト材をレーザ溶接する方法に関する。
アルミニウムダイカスト材をレーザ溶接することは、従来は非常に難しいとされてきた。それは、鋳造時に高圧で閉じ込められた不純物やガスの体積が溶接時のレーザ光の照射による加熱で急激に膨張し、周辺の金属成分を伴って吹き上げることで、欠陥が発生するためである。そのため、ダイカスト材を接合する方法としては、ボルトやカシメといった締結方法等の機械的な接合方法が採用されている。
下記特許文献1には、アルミニウム展伸材同士をレーザ光によって溶接することが記載されている。しかしながら、アルミニウムダイカスト材を欠陥の発生を抑えながらレーザ溶接することについては実現できていない。
特開2019-123008号公報
本発明は、アルミニウムダイカスト材料に対して欠格不良を抑制して良好な溶接品質を確保することができるレーザ溶接方法を提供することを課題とする。
本発明に係るレーザ溶接方法は、アルミニウム材の第一及び第二部材同士をレーザ溶接する方法であって、第一及び第二部材のうち少なくとも一方はアルミニウムダイカスト材であり、第一及び第二部材同士を重ね合わせて重ね隅肉部を形成し、レーザ光を第一部材側から重ね隅肉部に照射すると共に、レーザ光が重ね隅肉部の接合線を繰り返し横断するようにレーザ光を振動させながら、レーザ光を接合線に沿った第一方向に向けて移動させる。
この方法によれば、片方が解放された重ね隅肉部にレーザ光を照射するので、溶融金属中において仮にガスが爆発的に膨張したとしても、そのガスが外気に容易に逃げやすいことになる。また、重ね隅肉溶接は、重ね合わせ溶接に比して、溶融金属の全体積が少なく、含まれるガスの総量も少ないことからガスの全発生量を抑制できる。そのため、吹き上げ現象を防止することができる。また、レーザ光を振動させることによって溶融金属が攪拌される。この攪拌作用によって、アルミニウムダイカストに含まれる不純物やガスが溶融金属中を容易に移動して大気にスムーズに放出される。
特に、レーザ光が接合線を繰り返し横断するように、レーザ光をある程度の振幅を持って直線的に揺動又はある程度の半径を持って円あるいは楕円運動させることが好ましい。この方法によれば、溶接品質が向上する。
更に、レーザ光の円運動の中心の位置は、重ね隅肉部における第一部材の端部のうち、第二部材とは反対側の縁部であることが好ましい。この方法によれば、溶接品質が向上する。
また、レーザ光を、第一部材と第二部材の重なり方向に対して、第一部材側から見て第二部材側に傾斜した方向から照射することが好ましい。この方法によれば、溶接品質が向上する。
また、レーザ光を接合線に沿って複数回移動させることが好ましい。この方法によれば、溶接品質が向上する。
特に、接合線に沿った二回目の移動時におけるレーザ光の出力は、接合線に沿った一回目の移動時におけるレーザ光の出力よりも小さいことが好ましい。この方法によれば、溶接品質が向上する。
以上のように、本発明に係るレーザ溶接方法によれば、アルミニウムダイカスト材を溶接する際において欠陥を防止することができる。
本発明の一実施形態におけるレーザ溶接方法を示し、(a)は断面図、(b)は斜視図。 同レーザ溶接方法を示す模式図であって、(a)は斜視図、(b)は、平面図。 同レーザ溶接方法によって接合された接合体の要部を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図。 同接合体の要部断面図。 本発明の他の実施形態におけるレーザ溶接方法を示す模式図であって、(a)は斜視図、(b)は、平面図。 本発明の他の実施形態におけるレーザ溶接方法を模式的に示す平面図。
以下、本発明の一実施形態にかかるレーザ溶接方法(以下、単に溶接方法という。)について図1及び図2を参酌しつつ説明する。溶接方法は、アルミニウム材の第一部材1と第二部材2を、レーザにより溶接するための方法である。第一部材1と第二部材2のうち、少なくとも一方は、アルミニウムダイカスト材である。第一部材1と第二部材2の双方がアルミニウムダイカスト材であってもよいし、第一部材1と第二部材2のうちの一方がアルミニウムダイカスト材で他方がアルミニウム展伸材であってもよい。アルミニウムダイカスト材は、例えばADC12である。アルミニウム展伸材は、例えば5000番系や6000番系、7000番系である。第一部材1及び第二部材2の形状は何れも任意である。
図1に溶接前の状態の第一部材1と第二部材2を示している。図2は、レーザ光の照射位置の軌道を示す模式図である。第二部材2の上に第一部材1が重ねられる。第一部材1と第二部材2が重ね合わせられることにより、重ね隅肉部3が形成され、また、重ね合わせ面11が形成される。重ね隅肉部3には、第一部材1の端部1aが位置している。そして、第一部材1の端部1aと第二部材2とにより、接合線4が形成される。接合線4は、第一部材1の端部1aに沿って形成される。第一部材1の端部1aは、重ね合わせ面11側に位置する第一縁部1bと、重ね合わせ面11とは反対側に位置する第二縁部1cとを有している。接合線4は、第一縁部1bによって形成される。
図1及び図2に、第一部材1の端部1aの延伸方向を符号Xで示し、第一部材1側から見た平面視において延伸方向Xと直交する直交方向を符号Yで示している。また、第一部材1と第二部材2の重なり方向を符号Zで示している。接合線4は、延伸方向Xに沿っている。重なり方向Zは、第一部材1と第二部材2の重ね合わせ面11に対する法線方向である。重なり方向Zは、例えば第一部材1が板状である場合には、第一部材1の板厚方向であり、第二部材2が板状である場合には、第二部材2の板厚方向である。
レーザ光は、重ね隅肉部3に照射される。図1(a)に矢印Lで示しているように、レーザ光は、第一部材1の端部1aのうち第二縁部1cに向けて照射されることが好ましいが、第一部材1の板厚等の条件によっては必ずしも第二縁部1cではなく照射部位置が多少ずれることも構わない。後述のように、振動や回転の中心の位置を第一部材1の端部1aの第二縁部1cに設定することが好ましい場合が多いものの第一部材1の板厚等の条件によっては必ずしも第二縁部1cではなく中心位置が多少ずれても構わない。
図1(a)のように、レーザ光は、重なり方向Zに対して、直交方向Yの第二部材2側に所定角度傾斜した方向から照射されることが好ましい。図1(a)のように第一部材1及び第二部材2を直交方向Yに沿って切断したときの断面視において、重なり方向Zに対するレーザ光の傾斜角度θは、45度未満であって、例えば30度である。
図2に示すように、レーザ光を延伸方向Xの第一方向X1と第二方向X2のうち第一方向X1に向けて移動させる。第一方向X1がレーザ光の進行方向である。第二方向X2は、第一方向X2とは反対の方向である。レーザ光を第一方向X1に移動させながら、第一部材1の端部1aと第二部材2を連続的に溶接していく。レーザ光を第一方向X1に移動させる際に、後述のようにレーザ光を円運動させることが好ましい。図示しないガルバノミラーを駆動することにより、レーザ光を円運動させることが好ましい。
レーザ光を第一方向X1に向けて移動させる際に、同時に、レーザ光を円運振幅や回転動させることが好ましい。レーザ光を振幅や回転させることにより、レーザ光は、重ね隅肉部3の接合線4を繰り返し横断する。レーザ光を振幅や回転させながら、レーザ光を第一方向X1に向けて移動させる。レーザ光の振動の態様は種々であってよい。
例えば、図2のように、レーザ光を独自の円運動に加えてX1方向への直線運動の効果により螺旋を描きながら円運動させながら第一方向X1に移動させる。この場合、レーザ光は、螺旋を描きながら第一方向X1に移動していく。円運動の円の中心は、第一部材1の端部1aの第二縁部1cに位置させることが好ましいが、第一部材1の板厚等の条件によっては多少ずらすことは構わない。レーザ光の円運動の回転方向は何れであってもよい。レーザ光は、一回の円運動において接合線4を二回横断する。レーザ光は、一回目の横断時に、円運動の第一方向X1側において、第一部材1から第二部材2に向けて接合線4を横断する。続いて、レーザ光は、二回目の横断時に、円運動の第二方向X2側において、第二部材2から第一部材1に向けて接合線4を横断する。
円運動の回転方向が図2の場合とは逆であってもよい。図5に、円運動の回転方向が図2とは逆の場合を示している。図5において、レーザ光は、一回目の横断時に、円運動における第一方向X1側において、第二部材2から第一部材1に向けて接合線4を横断する。続いて、レーザ光は、二回目の横断時に、円運動の第二方向X2側において、第一部材1から第二部材2に向けて接合線4を横断する。
また、図6のように、レーザ光の動きは必ずしも円運動だけでなく、直交方向Yに往復運動するものでもよい。即ち、レーザ光を直交方向Yに直線に揺動させることによって、レーザ光の揺動にX1方向への動きが加わって接合線4を繰り返し横断するようにしてもよい。この場合、レーザ光は、接合線4を直交方向Yに対して傾斜した方向に横断する。
尚、レーザ光を接合線4に沿って複数回移動させることが好ましく、溶接品質を向上させることができる。複数回の移動は、種々であってよい。例えば、レーザ光を第一方向X1に移動させた後、第二方向X2に移動させてもよい。また、レーザ光を第一方向X1に移動させた後、再び第一方向X1に移動させてもよい。即ち、レーザ光の移動は、延伸方向Xの第一方向X1のみであってもよいし、第一方向X1と第二方向X2であってもよく、繰り返しの往復動であってもよい。また、接合線4に沿った一回目の移動時におけるレーザ光の出力に対して、接合線4に沿った二回目の移動時におけるレーザ光の出力を小さく設定することが好ましい。このようにレーザ光の出力を設定することにより溶接品質を向上させることができる。
以上のような溶接方法によって第一部材1と第二部材2が溶接される。このような溶接方法によれば、重ね隅肉部3にレーザ光が照射されるので、溶融金属中において仮にガスが爆発的に膨張したとしても、そのガスを外気に容易に逃がすことができる。また、重ね隅肉溶接は、重ね合わせ溶接に比して、溶融金属の体積が少なく、ガスの発生量を抑制できる。そして、ガスが発生しても、重ね隅肉部3からガスを外気に容易に放出させることができる。そのため、吹き上げ現象を防止することができる。また、接合線4を繰り返し跨ぐようにレーザ光を振動させることによって溶融金属が攪拌される。この攪拌作用によって、アルミニウムダイカスト材に含まれる不純物やガスが溶融金属内を容易に移動しやすくなり大気にスムーズに放出される。特に、レーザ光を直交方向Yに直線状に揺動させたり、あるいは、円運動させたりすることによって、溶融金属が効率良く撹拌されてガス等が外気に放出され、溶接品質が向上する。また、図1のようにレーザ光を第二部材2側に傾斜した方向から照射すると、撹拌効果が高まり、溶接品質が向上する。更に、レーザ光の円運動の中心の位置が第一部材1の第二縁部1cであると、溶接品質が向上するため好ましい。
レーザ溶接により第一部材1と第二部材2が溶接されて接合体が形成される。図3(a)に接合体の要部の斜視図を示し、図3(b)に接合体の要部の平面図を示している。また、接合体の要部の断面図を図4に示している。接合体は、第一部材1と第二部材2が溶接された溶接部を有している。溶接部には、溶接ビード12が形成される。図3及び図4は、溶接部の近傍を示している。溶接部は、第一部材1と第二部材2が重ねられて溶接された重ね隅肉溶接部10である。重ね隅肉溶接部10には、第一部材1の端部1aが位置していている。重ね隅肉溶接部10は、第二部材2を貫通していない。重ね隅肉溶接部10は、第一部材1の端部1aに沿って形成され、接合線4に沿って形成されている。即ち、重ね隅肉溶接部10は、延伸方向Xに沿って形成されている。溶接ビード12の全体にアルミニウムダイカスト材の合金成分が分散していることが好ましく、溶接ビード12において合金成分が均一化していることが好ましい。
1 第一部材
1a 端部
1b 第一縁部
1c 第二縁部
2 第二部材
3 重ね隅肉部
4 接合線
10 重ね隅肉溶接部
11 重ね合わせ面
12 溶接ビード

Claims (4)

  1. アルミニウム材の第一及び第二部材同士をレーザ溶接する方法であって、
    第一及び第二部材のうち少なくとも一方はアルミニウムダイカスト材であり、
    第一及び第二部材同士を重ね合わせて重ね隅肉部を形成し、
    レーザ光を第一部材側から重ね隅肉部に照射すると共に、
    レーザ光が重ね隅肉部の接合線を繰り返し横断するようにレーザ光を振動させながら、レーザ光を接合線に沿った第一方向に向けて移動させ
    レーザ光の振動の中心の位置を、重ね隅肉部における第一部材の端部のうち、第二部材とは反対側の縁部とすると共に、レーザ光の照射方向を、第一部材と第二部材の重なり方向に対して、第一部材側から見て第二部材側に傾斜した方向とする、レーザ溶接方法。
  2. レーザ光が接合線を繰り返し横断するように、レーザ光を揺動、円運動、又は楕円運動させる、請求項1記載のレーザ溶接方法。
  3. 第一部材はアルミニウム展伸材であり、第二部材はアルミニウムダイカスト材である、請求項1又は2記載のレーザ溶接方法。
  4. レーザ光を接合線に沿って複数回移動させると共に、接合線に沿った一回目の移動時におけるレーザ光の出力に対して、接合線に沿った二回目の移動時におけるレーザ光の出力を小さく設定する、請求項1乃至3の何れかに記載のレーザ溶接方法。
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