JP7481296B2 - 車両走行制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は車両走行制御装置に関し、詳しくは、車両が目標経路に沿って走行するように自動で操舵を行う車両走行制御装置に関する。
例えば、特許文献1に開示されているように、車両を目標経路(例えば、車線の中心線)に沿って走行させるための様々な方法が提案されている。その1つの方法として、車両の走行位置が目標経路から逸脱した場合、車両の現在位置から目標経路に向かう走行軌道を生成し、車両を走行軌道に追従させることによって車両を目標経路に戻すことが知られている。
米国特許公開第2009/0319113号公報
車両の走行位置が目標経路から逸脱する原因の1つに、運転者による操舵への介入がある。車両の走行位置の逸脱は危険を招くおそれがあるため、車両の走行位置の逸脱が運転者の操舵介入によるものであるならば、運転者に対して注意を促したい。しかし、注意の促し方によっては、運転者は煩わしさを感じてしまう。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、運転者による操舵への介入によって自動操舵中の車両が目標経路から逸脱しそうな場合に、煩わしさを感じさせずに運転者に注意を促すことができる車両走行制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る車両走行制御装置は、車両が目標経路に沿って走行するように自動で操舵を行う車両走行制御装置であって、運転者による操舵への介入を許容するが、運転者による操舵への介入により車両の走行位置が閾値線からはみ出した場合、運転者の操舵に対して作用する操舵反力を増大させるように構成される。ただし、閾値線は、目標経路よりも車線幅方向の外側に設定される。このような構成によれば、車両の走行位置が閾値線からはみ出した場合に操舵反力が増大するので、増大した操舵反力によって目標経路からの車両の逸脱を効果的に運転者に知らせることができる。また、閾値線を超えない程度の逸脱であれば、運転者が操舵反力に対して煩わしさを感じるおそれは小さい。
本発明に係る車両走行制御装置は、車両の走行位置の閾値線に対するはみ出し量に応じて操舵反力を増大させるように構成されてもよい。これによれば、目標経路からの逸脱が大きくなるほど運転者に対して強く注意を促すことができる。
本発明に係る車両走行制御装置は、上記機能を実現する手段として、車両の走行位置を目標経路に収束させるための走行軌道を生成する走行軌道生成部と、車両を走行軌道に追従させるための追従制御を行う追従制御部とを備えてもよい。走行軌道生成部は、運転者による操舵への介入があるが、車両の走行位置が閾値線からはみ出していない場合、車両の走行位置を基点にして走行軌道を生成する。また、走行軌道生成部は、運転者による操舵への介入があり、車両の走行位置が閾値線からはみ出している場合、閾値線上に設定した閾値位置を基点にして走行軌道を生成する。
車両の走行位置を走行軌道の基準とする場合には、車両の走行軌道からのずれがなくなるため、追従制御により運転者の操舵に対して作用する操舵反力は抑えられる。閾値線を走行軌道の基準とする場合には、車両の走行位置が閾値線からはみ出すほど、追従制御によって運転者の操舵に対して作用する操舵反力は増大する。よって、上記の構成によれば、車両の走行位置が閾値線を超えるまでは、運転者の操舵を許容し、車両の走行位置が閾値線からはみ出したら、はみ出し量に応じて増大する操舵反力によって運転者に注意を促すことができる。
走行軌道生成部は、運転者の操舵方向に方向指示器が操作されている場合、車両の走行位置と閾値線との位置関係に関係なく、車両の走行位置を基点にして走行軌道を生成してもよい。方向指示器が操作されているのであれば、車両の走行位置の目標経路からの逸脱は、運転者が意図して行っているものと推定できる。このような場合には、運転者の操舵に対して作用する操舵反力を抑えるように車両の走行位置を基点にして走行軌道を生成することにより、運転者は操舵反力によって邪魔されることなく意図した方向に車両を操舵することができる。
走行軌道生成部は、車両の前方の道路形状が走行車線からの車線変更を必要とする道路形状である場合、車両の走行位置と閾値線との位置関係に関係なく、車両の走行位置を基点にして走行軌道を生成してもよい。車線変更を必要とする道路形状のもとで車両の走行位置が目標経路から逸脱している場合、それは運転者が意図して行っているものと推定できる。このような場合には、運転者の操舵に対して作用する操舵反力を抑えるように車両の走行位置を基点にして走行軌道を生成することにより、運転者は操舵反力によって邪魔されることなく意図した方向に車両を操舵することができる。
閾値線は、車両の走行環境に応じて位置の設定を変更されてもよい。これによれば、運転者に注意を促す注意レベルを車両の走行環境に応じて変えることができる。
以上述べたように、本発明に係る車両走行制御装置によれば、運転者による操舵への介入によって自動操舵中の車両が目標経路から逸脱しそうな場合に、煩わしさを感じさせずに運転者に注意を促すことができる。
本発明の実施の形態の車両走行制御装置が搭載される自動運転車両の制御系の構成を示すブロック図である。 走行軌道の生成方法とその効果について説明する図である。 走行軌道の生成方法とその効果について説明する図である。 走行軌道の具体的な生成手順のルーチンを示すフローチャートである。 閾値線の設定例を説明する図である。 閾値線の設定例を説明する図である。 走行軌道基点の設定のためのはみ出し判定の例外を説明する図である。 走行軌道基点の設定のためのはみ出し判定の例外を説明する図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
1.自動運転車両の制御系の構成
本発明の実施の形態の車両走行制御装置は、自動運転車両に搭載される自動運転のための車両走行制御装置であって、例えばSAE(Society of Automotive Engineers)のレベル定義においてレベル2以上の自動運転レベルを実現することができる制御装置である。本実施の形態の車両走行制御装置が搭載される自動運転車両は、例えば図1にブロック図で示される構成の制御系を有する。
自動運転車両(以下、単に車両と称する)1の制御系では、車両走行制御装置10に各種センサ4,5,6と各種アクチュエータ7,8,9とが接続されている。車両走行制御装置10は、各種センサ4,5,6から信号を取り込み、それらの信号を処理して得られる操作信号によって各種アクチュエータ7,8,9を操作するように構成される。
各種センサ4,5,6には、車両1の周辺環境や周辺物体に関する情報を取得する外部センサ4と、車両1の運動状態に関する情報を取得する車両センサ5と、運転者による操舵操作を検出する操舵センサ6とが含まれる。具体的には、外部センサ4には、少なくとも車両1の前方を撮像するカメラが含まれる。外部センサ4として、ミリ波レーダやLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)が設けられていてもよい。車両センサ5には、例えば、車輪の回転速度から車両1の走行速度を計測する車速センサや、車両1に作用する加速度を計測する加速度サンセや、車両1の旋回角速度を計測するヨーレートセンサが含まれる。操舵センサ6には、例えば、ステアリングシャフトの操舵角を計測する操舵角センサや、ステアリングシャフトに作用するトルクを計測する操舵トルクセンサが含まれる。これらのセンサ4,5,6は、直接、或いは、車両1内に構築されたCAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークを介して、車両走行制御装置10に接続されている。
各種アクチュエータ7,8,9には、車両1を操舵するための操舵アクチュエータ7と、車両1を減速させるための制動アクチュエータ8と、車両1を加速させるための駆動アクチュエータ9とが含まれる。操舵アクチュエータ7には、例えば、モータ或いは油圧を用いたパワーステアリングシステムや、ステアバイワイヤ操舵システムが含まれる。制動アクチュエータ8には、例えば、油圧ブレーキや、電力回生ブレーキが含まれる。駆動アクチュエータ9には、例えば、エンジン、EVシステム、ハイブリッドシステム、燃料電池システム等が含まれる。
車両走行制御装置10は、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのROM、及び少なくとも1つのRAMを有するECU(Electronic Control Unit)である。ROMには、自動操舵のための各種のプログラムやマップを含む各種のデータが記憶されている。ROMに記憶されているプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることで、車両走行制御装置10には様々な機能が実現される。なお、車両走行制御装置10は、複数のECUから構成されていてもよい。
2.車両走行制御装置の機能
図1には、車両走行制御装置10が有する機能のうち、特に、自動操舵に関係する機能がブロックで表現されている。車両走行制御装置10が有するその他の機能についての図示は省略されている。以下、車両走行制御装置10が有する機能について説明する。
車両走行制御装置10は、車両が目標経路に沿って走行するように自動で操舵を行う機能を有する。この機能は、車両走行制御装置10が備える走行車線認識部11、周辺環境認識部12、操舵介入検出部13、走行軌道生成部14、追従制御部15、及びアクチュエータ操作部16により実現される。ただし、これらは、車両走行制御装置10内にハードウェアとして存在するものではなく、ROMに記憶されたプログラムがCPUで実行されたときにソフトウェア的に実現される。
走行車線認識部11は、外部センサ4に含まれるカメラで撮像した画像を処理し、車道外側線、車道境界線、車道中央線等の区画線を認識する。そして、自車両座標系における区画線の位置から、車両1が走行する走行車線を認識する。自車両座標系は、車両1上にとられた基点を中心とする座標系である。走行車線認識部11は、認識した区画線に基づいて車両1の目標経路を設定する。例えば、走行車線の中心線を車両1の目標経路として設定してもよい。なお、車両1がGPS受信装置と地図情報を記憶したデータベースとを備える場合には、走行車線認識部11は、GPSの位置情報と地図情報とを用いて走行車線を認識し、その認識結果に基づいて目標経路を設定してもよい。
周辺環境認識部12は、車両1の周辺に存在する物体を認識する。周辺物体の認識には、外部センサ4から取得した情報が用いられる。周辺環境認識部12は、カメラの情報を用いることと、ミリ波レーダの情報を用いることと、LIDARの情報を用いることと、センサフュージョンによって複数のセンサの情報を組み合わせて用いること、のうち少なくとも1つの方法による周辺物体の認識が可能である。認識される周辺物体には、歩行者、二輪車或いは自動車などの移動体や、停車車両、ガードレール、建物、樹木等の静止物(障害物)が含まれる。
操舵介入検出部13は、自動運転中の運転者による操舵への介入を検出する。運転者による操舵介入の検出には、操舵センサ6から取得した情報が用いられる。操舵介入検出部13は、例えば、操舵トルクセンサによって所定値以上の操舵トルクが所定時間継続して計測された場合に、運転者が操舵に介入していると判定する。また、操舵角センサによって所定角度以上の操舵操作が計測された場合に、運転者が操舵に介入していると判定してもよい。
走行軌道生成部14は、車両1の走行位置を目標経路に収束させるための走行軌道を生成する。具体的には、現在位置からの経過時間を変数とした走行軌道関数を演算する。走行軌道関数は、例えば、下記の5次関数で表される。ここで、tは時刻、y(t)は時刻tにおける車両1の目標経路に対する目標横位置、c0,c1,c2,c3,c4,c5は係数である。なお、横位置とは、車線幅方向における目標経路に対する車両1の相対位置を意味する。
y(t)=c0+c1*t+c2*t+c3*t+c4*t+c5*t
走行軌道関数y(t)は、基点から終点まで車両1を滑らかに移動させるような関数に設定される。走行軌道の基点は、基本的には車両1の現在走行位置である。ただし、追って詳細に説明するが、所定の条件が満たされた場合には、現在走行位置とは異なる位置に走行軌道の基点が設定される。走行軌道の終点は、車両1の前方の目標経路上に設定される。目標経路に沿った基点から終点までの距離は、固定値でもよいし、例えば車両1の車速に応じて変更されてもよい。
走行軌道関数y(t)の係数c0,c1,c2,c3,c4,c5は、現在の車両1の状態と、終点における車両1の目標状態とによって決定される。具体的には、例えば、基点の目標経路に対する横位置、車両1の横方向の現在速度、車両1の横方向の現在加速度、終点における車両1の横方向の目標速度、終点における車両1の横方向の目標加速度をパラメータとして、車両1を現在位置から滑らかに移動させていき、そして、車両1の走行位置を目標経路に滑らかに収束させるための係数c0,c1,c2,c3,c4,c5が計算される。
また、走行軌道を生成するにあたって、走行軌道生成部14は、目標経路よりも車線幅方向の外側に閾値線を設定する。閾値線は、運転者の操舵介入によって車両1の走行位置が目標経路から逸脱した場合に、運転者への注意を促し始める走行位置である。走行軌道生成部14は、周辺環境認識部12の認識結果に基づいて閾値線を設定する。閾値線の設定方法については、追って詳細に説明する。
追従制御部15は、車両1を走行軌道に追従させるための追従制御を行う。追従制御には、フィードフォワード制御が含まれる。フィードフォワード制御では、具体的には、現在よりも所定時間だけ先の時刻における走行軌道上の制御点(走行軌道が車線中心線の場合には中心点)が参照点として設定される。そして、その参照点に対応するパラメータから、操舵アクチュエータ7の操作量のフィードフォワード値が算出される。フィードフォワード値の算出において参照されるパラメータは、例えば、走行軌道の曲率である。
また、追従制御部15が行う追従制御には、フィードバック制御が含まれる。フィードバック制御は、例えば、PI制御、PD制御、又はPID制御である。フィードバック制御では、車両センサ5によって計測された車速、ヨーレート、舵角等の情報を用いて車両1の進路が予測される。そして、予測した進路から所定時間だけ先の時刻における車両1の予測位置と予測ヨー角とが計算される。
フィードバック制御では、次に、走行軌道上の参照点と車両1の予測位置とのずれの大きさや傾向を示すパラメータから、操作量のフィードバック補正量が算出される。フィードバック補正量の算出において参照されるパラメータは、例えば、横偏差やヨー角偏差である。横偏差は、参照点と車両1の予測位置との間の車線幅方向におけるずれ量であり、ヨー角偏差は、参照点における走行軌道の接線角度と予測位置における車両1の予測ヨー角との間の偏差である。追従制御部15は、フィードフォワード値とフィードバック補正量との和を、操舵アクチュエータ7の操作量として算出する。
アクチュエータ操作部16は、追従制御部15で計算された操作量を用いて操舵アクチュエータ7を操作する。上記のように、操作量には、フィードフォワード値とフィードバック補正量とが含まれる。フィードバック補正量が、運転者の操舵介入による車両1の走行位置の走行軌道からの逸脱によって生じたものである場合、フィードバック補正量によって生じる操舵アクチュエータ7の操舵力は、運転者の操舵に対しては操舵反力として作用する。
3.走行軌道の生成方法とその効果
走行軌道生成部14による走行軌道の生成方法とその効果について、図2及び図3を用いて説明する。図2及び図3には、基準座標系上での車両1、走行車線30を規定する区画線31,32、目標経路34、及び閾値線36の位置関係が示されている。基準座標系は、走行車線の幅方向を横軸にとり走行車線の延伸方向を縦軸にとった座標系である。車両1上に設定された基準点22が常に基準座標系の横軸上に位置するように、基準座標系は車両1の動きに合わせて更新される。なお、基準点22は車両1の走行位置を表す点である。本実施の形態では、車両1の後端部の中央が基準点22に設定されている。以下、基準点22を車両1の走行位置22と称する。
図2及び図3には、運転者による操舵への介入によって、車両1の走行位置22が目標経路34からはずれた様子が描かれている。ただし、図2に示す例では、車両1の走行位置22は閾値線36からはみ出していないのに対し、図3に示す例では、車両1の走行位置22は閾値線36からはみ出している。走行軌道生成部14は、車両1の走行位置22と閾値線36との位置関係に応じて走行軌道の生成方法を変更する。
車両1の走行位置22が閾値線36からはみ出していない場合、図2に示すように、走行軌道生成部14は、車両1の走行位置22を基点にして走行軌道20を生成する。すなわち、走行軌道関数の計算において、車両1の走行位置22の目標経路34に対する横位置が係数c0,c1,c2,c3,c4,c5の計算に用いられる。これにより、現在の車両1の走行位置22を基点として目標経路34上の終点24に滑らかに繋がる走行軌道20が生成される。
走行軌道生成部14は、車両走行制御装置10の演算周期に従って走行軌道関数を計算し、走行軌道20の位置を更新する。車両1の予測進路から決まる所定時間後の予測位置が走行軌道20上の参照点からずれる場合、また、車両1の所定時間後の予測ヨー角と参照点における走行軌道の接線角度との間にずれが生じる場合、追従制御部15による操作量の計算においてフィードバック補正量が算出される。ただし、車両1の走行位置22が閾値線36からはみ出していない場合、現在の車両1の走行位置22が走行軌道20の基点とされるので、現在の車両1の走行位置22と走行軌道20との間にはずれは生じない。このため、このケースにおいて算出されるフィードバック補正量は大きくはなく、運転者の操舵に対して作用する操舵反力は低く抑えられる。
車両1の走行位置22が閾値線36からはみ出している場合、図3に示すように、走行軌道生成部14は、閾値線36上に設定した閾値位置26を基点にして走行軌道20を生成する。閾値位置26は、基準座標系の横軸(図示略)と閾値線36とが交差する点である。走行軌道関数の計算においては、閾値位置26の目標経路34に対する横位置が係数c0,c1,c2,c3,c4,c5の計算に用いられる。これにより、閾値位置26を基点として目標経路34上の終点24に滑らかに繋がる走行軌道20が生成される。
閾値位置26を基点として走行軌道20が生成されることにより、車両1の走行位置22の走行軌道20に対するずれが生じる。このずれが生じることにより、追従制御部15により計算されるフィードバック補正量が大きくなり、運転者の操舵に対して作用する操舵反力は増大する。運転者に作用する操舵反力は、車両1の走行位置22の閾値線36からのはみ出し量dが増大するほど大きくなる。例えば、図中に点線で示す車両1′の走行位置22′では、はみ出し量d′が実線の位置におけるはみ出し量dよりも大きくなるため、より大きな操舵反力が運転者に作用する。
以上述べたように、車両1の走行位置22と閾値線36との位置関係に応じて走行軌道20の生成方法を変更することによって、運転者による操舵への介入によって車両1が目標経路34から逸脱しそうな場合に、煩わしさを感じさせずに運転者に注意を促すことができる。つまり、車両1の走行位置22が閾値線36を超えるまでは、操舵反力を抑えることによって、運転者の操舵を許容することができる。そして、車両1の走行位置22が閾値線36からはみ出したら、はみ出し量に応じて増大する操舵反力によって、目標経路34からの車両1の逸脱を効果的に運転者に知らせることができる。
4.走行軌道の具体的な生成手順
図4は、走行軌道生成部14による走行軌道20の具体的な生成手順のルーチンを示すフローチャートである。走行軌道生成部14は、車両走行制御装置10の演算周期に従ってこのフローチャートに示すルーチンを実行する。
まず、ステップS11では、操舵介入検出部13において運転者による操舵への介入が検出されたかどうか判定される。運転者による操舵への介入がある場合、ルーチンはステップS12に進む。
ステップS12では、閾値線36の設定が行われる。閾値線36の設定方法については後述する。ステップS13では、車両1の走行位置22が閾値線36からはみ出しているかどうか判定される。車両1の走行位置22が閾値線36からはみ出している場合、ルーチンはステップS14に進む。ステップS14では、閾値線36上の閾値位置26が走行軌道20の基点として設定される(図3参照)。
ステップS13の判定において車両1の走行位置22が閾値線36からはみ出していない場合、ルーチンはステップS15に進む。ステップS15では、現在の車両1の走行位置22が走行軌道20の基点として設定される(図2参照)。
ステップS14或いはS15の処理の後、ルーチンはステップS17に進む。ステップS17では、走行軌道20の終点24が目標経路34上に設定される。ステップS17の処理の後、ルーチンはステップS18に進む。ステップS18では、ステップS14或いはS15で設定した基点からステップS17で設定した終点までを滑らかに繋ぐように走行軌道20が生成される。
ステップS11の判定において運転者による操舵への介入がない場合、ルーチンはステップS16に進む。運転者による操舵への介入がなければ、車両1は目標経路34に沿って走行し、車両1の走行位置22は目標経路34上に位置する。ゆえに、ステップS16では、目標経路34の中心点列が取得される。ステップS16の処理の後、ルーチンはステップS18に進む。ステップS18では、ステップS16で取得した目標経路34の中心点列を繋いで走行軌道20が生成される。
5.閾値線の設定
閾値線36は、車両の走行環境に応じて任意に設定することができる。例えば、車両1の目標経路34からの逸脱を抑えたい走行環境では、目標経路34から車線幅方向の外側に一定の距離をあけて閾値線36を設定してもよい。車両1が目標経路34から閾値線36まで移動するのに要する時間は車速に依存するので、車両1の車速に応じて目標経路34に対する閾値線36の距離を変更してもよい。
また、車両1の区画線31への接近を防ぎたい走行環境では、区画線31から車線幅方向の内側に一定の距離をあけて閾値線36を設定してもよい。区画線31と閾値線36との間の距離は、区画線31の種類に応じて変更してもよい。例えば、区画線31が車線境界線である場合、黄色の車線境界線に対する閾値線36の距離は、白色の車線境界線に対する閾値線36の距離よりも長くしてもよい。車両1の車速に応じて区画線31に対する閾値線36の距離を変更してもよい。
また、区画線31が車線外側線である場合、図5に示すように、区画線31の外側に道路構造物40が設けられている場合がある。道路構造物40には、例えば、ガードレール、壁、縁石等が含まれる。このような場合には、道路構造物40の位置を基準にして閾値線36を設定してもよい。例えば、道路構造物40から一定の距離にある線を閾値線36として設定してもよい。車両1の車速に応じて道路構造物40に対する閾値線36の距離を変更してもよい。周辺環境認識部12において人や動物などが認識された場合には、それらとの接触を防止するため、それらを基準にして閾値線36を設定してもよい。
さらに、車両1の周囲における他車両2の有無に応じて閾値線36の位置を変更してもよい。図6に示す例では、車線境界線33を挟んで走行車線30に隣接する隣接車線38を他車両2が走行している。このようなケースにおいて車両1が車線境界線33からはみ出すことは、隣接車線38を他車両2が走行していない場合に比較して危険性が高い。そこで、隣接車線38内に検出範囲50を設定しておき、検出範囲50内に他車両2が存在するかどうかによって閾値線36の位置を変更してもよい。例えば、検出範囲50内に他車両2が存在する場合の閾値線36′は、他車両2が存在しない場合の閾値線36よりも車線境界線33から離して設定してもよい。
車両走行制御装置10は、車両1の走行位置22が区画線31,33をはみ出した場合に警報を発する機能を備えてもよい。その場合、警報が発せられるよりも前に運転者に対して操舵反力が作用する位置に閾値線36を設定してもよい。
6.走行軌道基点の設定のためのはみ出し判定の例外
上述の実施の形態では、車両1の走行位置22が閾値線36からはみ出したかどうかによって走行軌道20の基点の設定が変更されている。しかし、車両1の走行位置22の目標経路34からの逸脱が運転者の意図によるものである場合、走行軌道20の基点の設定の変更により発生する操舵反力は、運転者の意図的な操舵を妨げるものとなる。そこで、車両1の走行位置22の目標経路34からの逸脱が運転者により意図的に行われ得る状況では、車両1の走行位置22と閾値線36との位置関係に関係なく、車両1の走行位置22を基点にして走行軌道20を生成してもよい。
車両1の走行位置22の目標経路34からの意図的な逸脱の例として、車線変更を挙げることができる。図7に示すように、車両1が走行車線30から隣接車線38の方へ操舵されており、且つ、操舵方向の方向指示器3が点灯している場合、運転者が車線変更をしようとして、車両1の走行位置22の目標経路34からの逸脱が意図的に行われている可能性が高い。ゆえに、運転者の操舵方向に方向指示器3が操作されている場合には、運転者の操舵に対して作用する操舵反力を抑えるように車両1の走行位置22を基点にして走行軌道を生成してもよい。これにより、運転者は操舵反力によって邪魔されることなく、意図した方向に車両を操舵することができる。
また、図8に示すように、車両1の前方の道路形状が合流路や車線減少路になっている場合には、走行車線30から隣接車線38への車線変更は必要である。ゆえに、このような道路形状のもとで車両1の走行位置22が目標経路34から逸脱している場合、方向指示器9が操作されていなくとも、それは運転者が意図して行っているものと推定できるので、運転者の操舵に対して作用する操舵反力を抑えるように車両1の走行位置を基点にして走行軌道を生成してもよい。これにより、運転者は操舵反力によって邪魔されることなく意図した方向に車両を操舵することができる。
1 自動運転車両
2 他車両
3 方向指示器
10 車両走行制御装置としてのECU
20 走行軌道
22 車両の走行位置
26 閾値位置
30 走行車線
31,32,33 区画線
36 閾値線
38 隣接車線

Claims (4)

  1. 車両が目標経路に沿って走行するように自動で操舵を行う車両走行制御装置であって、
    運転者による操舵への介入により、前記車両の走行位置が前記目標経路よりも車線幅方向の外側に設定された閾値線からはみ出した場合、前記運転者の操舵に対して作用する操舵反力を増大させるように構成され、
    前記閾値線の位置は、前記車両の走行環境と、隣接車線を走行する他車両が検出範囲内に検出されたか否かの判断とに応じて変更されるものであり、
    前記閾値線の位置は、前記隣接車線を走行する前記他車両が前記検出範囲内に検出されたと判定された場合には、前記隣接車線を走行する前記他車両が前記検出範囲内に検出されたと判定されない場合よりも前記閾値線が車線の境界から離れるように変更される
    ことを特徴とする車両走行制御装置。
  2. 前記閾値線は、前記車両の車速に応じて前記目標経路に対する距離を変更される
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
  3. 前記閾値線は、黄色の車線境界線に対する距離が白色の車線境界線に対する距離よりも長くなるように設定される
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
  4. 前記閾値線は、道路構造物から一定の距離に設定される
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
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