JP2009078733A - 走行支援装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
従来技術によれば、車両を経路誘導するための走行支援と、障害物を回避するための走行制御が両立できない、という課題がある。
【解決手段】
当該走行支援装置は、自車周辺の車線を検出する検出部と、前記自車が進行しようとする経路を前記検出部が検出した車線に基づいて判別した後に、前記経路上の障害物に基づいて前記自車が走行すべき経路を補正する補正部と、前記補正部が補正した経路と前記自車の位置関係に基づいて、当該自車を制御する。
【選択図】図6

Description

本発明は、路面上の適切な位置を走行することを支援する装置に関する。
従来技術として、自車が走行車線を逸脱する可能性がある場合に、車輪への制動力を制御することで自車両にヨーモーメントを与えて自車両が走行車線から逸脱するのを防止するとともに、このヨーモーメントの付与により運転者に自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを報知する技術がある(特許文献1参照)。更に、走行車線の路肩の障害物に応じて車線逸脱回避制御の制御量、例えば、逸脱回避制御用閾値を変更することで、駐車車両等の前方障害物を考慮して、車線逸脱回避制御を最適に行うことができるとしている。
特開2005−324782号公報
特許文献1には、自車が進むべき経路への誘導支援と障害物回避という2つの支援を、同時期に行う際の記載はない。例えば、特許文献1の技術では、経路変更先の車線上に障害物がある場合、経路変更が完了してから障害物の回避動作を行うため、障害物回避の始動タイミングが不十分になる恐れがある。又、ある時点の走行位置において、逸脱回避制御用閾値と障害物回避用の閾値の何れか一つによって走行支援制御が行われるため、逸脱回避制御用閾値の外側に障害物が存在する場合、車線逸脱後に障害物を回避するための走行支援制御が行われない恐れがある。更に、障害物回避用の閾値によって走行支援制御が行われる場合は、通常の逸脱回避制御用閾値が作用しないため、障害物回避のための急激な走行制御が実行される恐れがあり、運転者にとっての違和感の原因に成り得る。即ち、特許文献1によれば、車両を経路誘導するための走行支援と、障害物を回避するための走行制御が両立できない、という課題がある。
そこで、本発明の目的は、車両を経路誘導するための走行支援制御と、障害物を回避するための走行支援制御とを両立し、運転者にとって、より安全に、違和感を少ない走行支援装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の望ましい態様の一つは次の通りである。
当該走行支援装置は、自車周辺の車線を検出する検出部と、前記自車が進行しようとする経路を前記検出部が検出した車線に基づいて判別した後に、前記経路上の障害物に基づいて前記自車が走行すべき経路を補正する補正部と、前記補正部が補正した経路と前記自車の位置関係に基づいて、当該自車を制御する。
本発明によれば、車両を経路誘導するための走行支援制御と、障害物を回避するための走行支援制御とを両立し、運転者にとって、より安全に、違和感を少ない走行支援装置を提供することができる。
(実施例1)
以下、図面に基づいて、実施形態について説明する。
図1は、走行支援装置を搭載した車両の構成図である。
車両は、運転者の操作量検出部として、ステアリングの操舵角センサ2,方向指示器レバー3,アクセルペダル操作量センサ4,ブレーキペダル操作量センサ5を備え、運転者の操作量に応じた信号をコントローラ1へ伝送する。方向指示器レバー3の操作からは、運転者の経路変更の意思を検出できる。
コントローラ1は、ナビゲーション装置6と接続されており、設定された経路,地図情報,地図上の自車両位置,自車両の向き,周囲の車線情報(車線の数,制限速度,自動車専用道と一般道の区別,分岐路の有無等)を、ナビゲーション装置6から取得する。経路は基本的に運転者が設定するが、過去の走行経路や交通情報に基づいてナビゲーション装置6が自動的に設定又は変更してもよい。
又、車両は、車両の運動状態を検出する運動状態検出部として、車輪速センサ7fL,7fR,7rL,7rR、車両挙動センサ8を備え、車両の運動状態に応じた信号をコントローラ1へ伝送する。車両挙動センサ8は、前後加速度,横加速度,ヨーレートを検出する。
更に、車両は、自車周辺の外界環境を検出する環境検出部として、前方カメラ10f,前方レーダ11f,後方カメラ10r,後方レーダ11r,左前側方カメラ12L,右前側方カメラ12R,左後側方カメラ13L,右後側方カメラ13Rを備え、自車周辺のレーンマーカや障害物などの情報をコントローラ1へ伝送する。
前方カメラ10fは、自車周辺の画像を取得する画像取得部,取得画像中のレーンマーカ又は路面境界に基づいて車線を認識する車線認識部、並びに、認識対象物(他車両や歩行者等の障害物)と自車との位置関係,レーンマーカの種類、及び、路面境界の種類を出力する出力部を備える。ここで、レーンマーカは、線,キャッツアイ,ポッツドット等の種類,線の色,線の種類(実線・破線・点線・ハッチング)等であり、交通規則に基づいた走行区域を示すための印である。路面境界は、路肩の端部,側溝,縁石,土手,ガードレール,壁等であり、車両走行を想定している区域と想定していない区域との境界である。
前方レーダ11fは、他車や歩行者などの障害物を認識し、自車との位置関係を出力する。前方レーダ11fは、前方カメラ10fよりも遠方の障害物を精度良く認識できる。一方、前方カメラ10fは、前方レーダ11fよりも検出角度が広く、障害物の種類を判別できる。
後方カメラ10r,左前側方カメラ12L,右前側方カメラ12R,左後側方カメラ13L,右後側方カメラ13Rは、前方カメラ10fと、前方レーダ11fは、後方レーダ11rと、それぞれ、同様の機能,長所,短所を備える。
又、車両は、エンジン21,電子制御ブレーキ22,電子制御デファレンシャル機構23,電子制御ステアリング24を備え、コントローラ1が運転者の操作量と外界環境に基づいてこれらのアクチュエータへ駆動要求を行う。車両に加速が必要な場合はエンジン21へ加速要求を行い、車両に減速が必要な場合は電子制御ブレーキ22へ減速要求を行う。又、車両に旋回が必要な場合は、電子制御ブレーキ22,電子制御デファレンシャル機構23,電子制御ステアリング24の少なくとも一つへ旋回要求を出力する。
電子制御ブレーキ22は、例えば、各輪独立にブレーキ力を制御可能な油圧式ブレーキ装置であり、旋回要求を受けると左右何れか一方にブレーキを掛け車両にヨーモーメントを加える。
電子制御デファレンシャル機構23は、例えば、電気モータやクラッチの駆動によって左右の車軸間にトルク差を発生できる機構であり、旋回要求を受けると左右車軸間のトルク差によって車両にヨーモーメントを生成する。
電子制御ステアリング24は、例えば、ステアバイワイヤであり、旋回要求を受けるとステアリングの操舵角とは独立にタイヤの実舵角を補正して車両にヨーモーメントを加える。
又、車両は、運転者への情報提供を行うための情報提供部26を備え、走行支援の種類に応じて、画像表示,音,警告灯などによって支援の情報を提供する。情報提供部26は、例えば、スピーカを内蔵したモニタ装置であり、1ヶ所だけでなく、複数箇所へ設置してもよい。
図2は、走行支援制御のフロー図、図3は、直線路における支援制御の一例を示す図である。
操作量検出部は、各操作量センサから運転者の操作量を取得する(s1)。即ち、操舵角,方向指示器の状態,アクセルペダル操作量,ブレーキペダル操作量、設定経路に応じた信号を読取る。又、各車両運動センサから、車速,ヨーレート,横加速度,前後加速度の情報を取得する。
制御上の着目点(前方注視点P)を車速Vxに比例する前方位置として、その距離を前方注視距離Xpとする。自車が前方注視点Pへ到達する時間をtp秒として、tp秒後に自車が横方向への移動距離Ypを予測する。横移動を考慮すると、前方注視点Pは、車両前方にXp離れ、横方向にYpオフセットした位置となる。
操舵角がゼロであれば、車両前方にVx×tp前進し、横方向への移動距離Ypはゼロとなる。車両の横加速度がayであれば、横方向への移動距離Ypはay×Δt2/2と予測できる。ここで横加速度は、車両運動センサのヨーレート情報rを用いて、ay=Vx×rとして求めることもできる。又は、操舵角がδであれば、ay=Vx×f(δ)として求めることもできる。ここでf(δ)は舵角δとヨーレートrを求める関数であり、車両運動モデルを用いて導出できる。これらの手法を用いずに、より精度の高い解析式に基づいて求めてもよい。
次に、コントローラ1は、前方カメラ10fの画像に基づいて、自車の重心位置から前方へ延ばした直線(この直線を「x軸」とする)に対する左右のレーンマーカLL,LRの位置を導出する(s2)。レーンマーカは、走行可能な平坦路に記される場合が多いため、車輪がレーンマーカから外側へ越えたとしても走行を持続できる。自車前方へ距離X1〜X5離れた左レーンマーカLL1〜LL5の位置を、x軸からの距離として算出し、記憶する。車両左側の横方向をy軸の正とし、x軸からの距離は左側を正の値、右側を負の値とする。同様に、右レーンマーカLR1〜LR5の位置を、x軸からの距離として算出し、記憶する。更に、隣接車線の右側のレーンマーカLR2を検出できる場合には、右レーンマーカLR21〜LR25として記憶する。又、レーンマーカを越えることの危険度合い、許容度合いを判断するために、レーンマーカの線種(実線/破線など)、色(白/黄/赤など)などを判別して記憶する。
次に、コントローラ1は、前方カメラ10fの画像に基づいて、x軸に対する左右の路面境界BL,BRの位置を導出する(s3)。車輪が路面境界から外側へ越える場合、走行を持続することは比較的困難になる。自車から前方へ距離X1〜X5離れた左右路面境界BL1〜BL5,BR1〜BR5の位置を、x軸からの距離として算出し、記憶する。同時に、路面境界を越えることの危険度合い、許容度合いを判断するために、路面境界の外側42L,42Rを識別し、その種類(路肩の端部,側溝,縁石,土手,ガードレール等)の情報を記憶する。
ステップs2〜s3では、前方カメラ10fの画像に基づいて車線認識を行っているため、ナビゲーション装置等の道路情報、経路情報に頼ることなく、適切に車線位置を検出でき、より安全で、違和感の少ない走行支援装置を提供できる。又、他のカメラ10r,12L,12R,13L,13Rの画像に基づいて車線認識を行ってもよい。特に、後方カメラ10rは比較的下向きに設置され、検出角度も広いことが多いので、後方カメラ10rを用いて車線(レーンマーカ又は路面境界)を認識すれば、より正確に車線の種類を判別できる。
次に、コントローラ1は、車両を車線中央付近、もしくは運転者にとって違和感の少ない経路へ誘導するための目標軌道又は目標走行領域を導出する(s4)。目標軌道又は目標走行領域は、走行支援制御の左右の閾値である誘導ライン(第1のライン)NL,NRとして求められる。第1のラインNL,NRの内側は、運転者の操作を尊重する領域であり、制御の不感帯となる。ここで車線とは、レーンマーカ又は路面境界によって区分けされた走行領域である。路面上に左右のレーンマーカLL,LRが記されている路面に関しては、レーンマーカLL,LRの内側の領域であり、左右のレーンマーカLL,LRが記されていない路面では、左右の路面境界BL,BRの内側の領域である。但し、断片的にレーンマーカLL,LRが記されていないが、その前後レーンマーカLL,LRから補間によってレーンマーカを推定できる場合には、推定されるレーンマーカLL,LRの内側の領域を車線とする。又、左右の片側のみにレーンマーカがある場合には、そのレーンマーカと反対側の路面境界の内側の領域とする。自車から前方へ距離X1〜X5離れた左側の誘導ラインNL1〜NL5の位置は、左レーンマーカLL1〜LL5の位置に所定の値ΔLLを減算(又は加算)して求められる。右側の誘導ラインNR1〜NR5の位置は、右レーンマーカLR1〜LR5の位置に所定の値ΔLRを加算(又は減算)して求められる。
次に、コントローラ1は、車両を路面境界から遠ざけ、接触を回避するための左右の接触回避ライン(第2のライン)AL,ARを求める(s5)。自車から前方へ距離X1〜X5離れた左側の接触回避ラインAL1〜AL5の位置は、左路面境界BL1〜BL5の位置から回避幅ΔALを減算して求める。右側の接触回避ラインAR1〜AR5の位置は、右路面境界BR1〜BR5の位置に回避幅ΔARを加算して求める。回避幅ΔAL,ΔARは、車両の回避能力を考慮して決定するために、車両の前後速度Vx,横速度Vy,接触回避ラインへの接近速度Vya,前後加速度ax,横加速度ay,車両幅vw,車両全長vl,トレッド幅d,ホイールベースL,車両のヨーモーメント生成能力Mmax,車両の減速度生成能力axmax,車両の横加速度生成能力aymax,路面摩擦係数μ,路面勾配θ,カーブ半径R,車線を検出可能な距離と角度,障害物を検出可能な距離と角度の少なくとも一つ以上を考慮して生成される。
アクチュエータが発生可能なヨーモーメントの最大値がMmaxのとき、最大横加速度をヨーモーメントのG倍(aymax=G×Mmax)として計算する。接触回避ラインの位置へ接近する横速度がVyaの状態から、最大横加速度aymaxで横移動するとき、接近速度がVyaからゼロになるまでの距離ΔYmaxは、ΔYmax=Vya2/(2×aymax)として求めることができる。路面境界への接触を確実に回避するときにはΔAL>ΔYmaxと設定する。一方、ある程度の接触を許容し、その接触による被害軽減を目的であれば、ΔAL≦ΔYmaxと設定する。
但し、ヨーモーメントの最大値Mmaxは、誘導ラインNL,NRに基づく車両運動の制御量に応じて低減補正する。なぜなら、接触回避の運動制御が開始される時点で、誘導制御によるヨーモーメントが生成されているため、接触回避のために上乗せできるヨーモーメントが限られるからである。そこで、車両のヨーモーメント生成能力Mmaxから、接触回避開始時の目標ヨーモーメントを減算してMmaxを低減補正する。これにより、第1のラインによる走行支援による車両の回避能力低下を考慮できるため、より安全な走行支援装置を提供できる。
次に、ナビゲーション装置6からの経路情報、運転者による方向指示器レバー3の操作情報などから路線変更を予測する(s6)。自車が進行中の車線以外へ経路変更が予測される場合、変更経路上のレーンマーカと路面境界の位置を求め、誘導ラインNL,NRを補正するか否かを判断する。単線路が続く場合などのように経路変更が予測されない場合には、s8へ移る。
s6において、路線変更が予測できる場合、経路情報によって誘導ラインNL,NRの補正処理を行う(s7)。本補正処理に関しては図6を用いて後述する。
次に、経路上の障害物を検出し(s8)、障害物が検出される場合には、接触回避のために左右の接触回避ラインAL,ARを補正するか否かを判断する(s9)。経路上の障害物が検出されない場合にはステップs10へ移る。障害物の情報によって接触回避ラインAL,ARの補正処理を行う。尚、本補正処理に関しては図5を用いて後述する。
次に、誘導ラインNL1〜5,NR1〜5の左右各5点を補間処理して、前方注視距離Xpにおける誘導ラインNLp,NRpの位置を求める。又、接触回避ラインAL1〜5,AR1〜5の左右各5点を補間処理して、前方注視距離Xpにおける接触回避ラインALp,ARpの位置を求める。更に、誘導ラインNLp,NRpと接触回避ラインALp,ARpに基づいて、走行支援を実施するかの判断を行う(s10)。前方注視点Pが、誘導ラインNLp,NRpと接触回避ラインALp,ARpの内側にあれば、走行支援を行わずに一連の処理を終了する。一方、前方注視点Pが、誘導ライン位置NLp,NRp又は接触回避ラインALp,ARpの外側にあれば、走行支援制御の実行を判断してs11へ進む。図3の例では、前方注視点PがNLpの外側(左側)にあるため、走行支援制御を実行する。
前方注視点Pが、誘導ライン位置NLp,NRpの外側にあれば、車両を内側へ誘導するための目標ヨーモーメントを演算する(s11)。誘導ラインに応じた走行支援では、運転者の違和感低減を重視するため、車両の減速を伴う電子制御ブレーキ22によってヨーモーメントは生成せずに、電子制御デファレンシャル機構23、電子制御ステアリング24によってヨーモーメントを生成するように、制御を実行するアクチュエータの選択情報も出力する。
一方、前方注視点Pが、接触回避ラインALp,ARpの外側にあれば、車両を内側へ誘導するための目標ヨーモーメントと目標減速度を演算する。接触回避ラインによる走行支援では、路面境界からの逸脱防止と障害物との接触回避を重視するため、電子制御デファレンシャル機構23,電子制御ステアリング24によってヨーモーメントを生成に加えて、電子制御ブレーキ22によるヨーモーメントと減速度の生成も行う。又、左右の接触回避ラインが交差する場合、旋回運動によっては接触が避けられないと判断し、車両を停止するように目標減速度を演算する。
図4は、図3のXpの地点に対応しており、前方注視点Pに対するレーンマーカLL,LR,LR2、路面境界BL,BR、誘導ラインNLp,NRp、接触回避ラインALp,ARpとの位置関係、及び、目標ヨーモーメントの絶対値の関係を示した図である。このように、誘導ラインNLp,NRpから接触回避ラインALp,ARpまでのヨーモーメントの増加勾配Gll,Glr(制御ゲインに相当)を緩やかにすることで、円滑にヨー運動が発生し、運転者にとって違和感の少ない走行支援を実現できる。又、接触回避ラインを超えてからのヨーモーメントの増加勾配Gal,Gar(制御ゲインに相当)を大きくし、車両運動の限界能力(Mmax)を発生する領域を増やすことで、左右の接触回避ラインAL,ARの幅を広げることができる。これによって、接触回避の支援介入の頻度を下げることができ、運転者にとっての煩わしさを低減できる。又、実際に接触回避制御が行われるときの車両運動変化が大きくなるため、運転者に対して注意喚起を促すことができる。
このように、誘導ラインNL,NRと自車との位置関係に応じた制御ゲインGll,Glrと、接触回避ラインAL,ARと自車との位置関係に応じた制御ゲインGal,Garを異なる値を用いることで、目的に応じた車両運動が行われるため、運転者が走行支援の目的を理解しやすくなり、違和感の低減に効果を期待できる。又、目的に応じた適切な制御量を設定できるため、設計するときの制御チューニングが容易にあるという効果も期待できる。
又、誘導ラインから接触回避ラインの間のヨーモーメントの増加勾配をレーンマーカの種類に応じて変更する。例えば、隣接車線との境界を示すレーンマーカLRが破線のときはヨーモーメントの増加勾配を低めに設定し、隣接車線との境界を示すレーンマーカLRが実線のときはヨーモーメントの増加勾配を高めに設定する。この増加勾配の強弱は運転者が車線維持を試みるときの意識度合いと合致するため、より違和感の少ない走行支援装置を提供できる。又、路面境界側のレーンマーカLLは実線の道路が多いが、実線に対するヨーモーメントの増加勾配を高めに設定すれば、路面境界から離れようとする運転者の意識度合いと合致するため、より違和感の少ない走行支援装置を提供できる。又、両側のレーンマーカLRが破線のときは、片側3車線以上の路線を走行している可能性が高く、日本の場合、右側の隣接車線が追越し車線の可能性が高い。このとき、右側のヨーモーメントの増加勾配を高めに設定すれば、後方からの追越し車両との接触を避けようとする運転者の意識度合いと合致するため、より安全で違和感の少ない走行支援装置を提供できる。
次に、コントローラ1は、走行支援制御を実行するための処理を行う(s12)。目標ヨーモーメントと目標減速度を実現するように、電子制御デファレンシャル機構23,電子制御ステアリング24,電子制御ブレーキ22の少なくとも一つを用いて、車両運動を制御する。又は、情報提供手段26の警告音,警告灯,モニタ表示などによって、運転者に対して運転操作の修正を促す。以上により、一連の処理を終了する。
図5は、直線路に障害物がある場合の動作例を示す図である。
s9では、s8で障害物が検出された場合に接触回避ラインAL,ARを内側へ補正する。図5では、路肩上に停止車両32が検出された場合、左側の接触回避ラインALを右側に補正する。この補正ラインは、車両の回避能力を考慮して決定され、車両の前後速度Vx,横速度Vy,接触回避ラインへの接近速度Vya,前後加速度ax,横加速度ay,車両幅vw,車両全長vl,トレッド幅d,ホイールベースL,車両のヨーモーメント生成能力Mmax,車両の減速度生成能力axmax,車両の横加速度生成能力aymax,路面摩擦係数μ,路面勾配θ,カーブ半径R,車線を検出可能な距離と角度,障害物を検出可能な距離と角度の少なくとも一つ以上を考慮して生成される。
アクチュエータが発生できるヨーモーメントの最大値がMmaxのとき、最大横加速度aymaxをヨーモーメントのG倍(aymax=G×Mmax)として計算する。障害物へ接近する前方へ速度がVxの状態から、最大横加速度±aymaxで横移動して回避するとき、横移動が終了して横速度がゼロに戻るまでの走行距離ΔXは、ΔX=Vx×√(ΔY/aymax)として求めることができる。このとき、路面摩擦係数μ,路面勾配θ,カーブ半径Rに応じて最大横加速度±aymaxを補正してもよい。
障害物への接触を確実に回避するときにはΔX以上手前から、接触回避ラインALを右側に補正する。このときの補正ラインの形状は、最大横加速度±aymaxでの横運動を前提とすれば放物線を組合せた曲線となる。但し、回避可能な補正ラインであれば、曲線の種類は問わない。一方で接触を許容し、その被害を軽減する目的であれば、障害物との距離がΔX以下の地点から、接触回避ラインALを右側に補正する。
図5に示すように、対向車線内に対向車33が走行している場合には、右側の接触回避ラインARを左側に補正する。補正方法は、前述の左側の停止車両の場合と同様であるが、相対速度が高くなるので、補正する地点が、より手前から開始される。更に、対向車の蛇行走行などの危険性が予測される場合には、より左側に補正してもよい。
このように、誘導ラインNL,NRと接触回避ラインAL,ARという2つの軌道ラインによって走行支援を行えば、誘導ラインNL,NRの位置を固定したまま、接触回避ラインAL,ARを補正できる。これにより、障害物と接触の恐れがないときは誘導支援を違和感なく実行し、自車が接触回避ラインを外れるときには、確実に障害物を回避するための走行支援制御を行うことができる。
接触回避ラインAL,ARの補正が行われた場合、回避支援が運転者にとって違和感が少なく、円滑に進行するように、誘導ラインNL,NRが接触回避ラインAL,ARの内側となるように再補正を行う。図5の障害物34にような車両を検出し、回避ラインALが、誘導ラインNLの内側に補正される場合には、誘導ラインNLが接触回避ラインALの内側となるように誘導ラインNLを再補正する。これにより、接触回避が予測されるような場合においても、通常の誘導制御から支援を開始できるため、より円滑かつ運転者にとって違和感の少ない走行支援を実現できる。
図6は、分岐路において経路変更がある場合の動作例を示す図である。
s7,s6で経路変更が予測判断された場合に、経路情報に基づいて誘導ラインNL,NR、接触回避ラインAL,ARの補正処理を行う。図6(a)のように、走行中の車線に沿った経路ではなく、分岐した経路の走行が判断された場合には、s3〜s5の手順と同様にして、前方カメラ10fの画像を基に、予測経路上の左右レーンマーカLL1〜LL5,LR1〜LR5、左右の路面境界BL1〜BL5,BR1〜BR5、左右の誘導ラインNL1〜NL5,NR1〜NR5、左右の接触回避ラインAL1〜AL5,AR1〜AR5の各位置を求める。但し、図6(a)では誘導ラインNL1〜NL5,NR1〜NR5のみを図示する。この際、今後更に経路変更される場合に迅速に対応できるように、ステップs2で求めた補足前のレーンマーカ等の位置も別途記憶しておく。
経路変更の走行支援は、走行車線内を誘導制御のときよりも、左右の誘導ライン幅を狭くする。具体的には、左右の誘導ラインNL1〜NL5,NR1〜NR5の幅を、一時的に車両幅vw以下とする。これによって、積極的に車両運動を制御する走行区間が長くなり、より円滑に経路変更を支援できる。例えば、左右の誘導ラインの幅が広い場合に、自車両が蛇行走行してしまう恐れがあるが、左右の誘導ラインの幅を狭くすることによって抑制できる。s7以降は、s8へ移り、障害物がある場合の対応を行う。
s8にて、予測経路上の障害物を検出し、接触回避ラインAL,ARの補正の必要性を判断する。図6に示す停止車両ように、接触の危険性のある障害物35が検出される場合、s9へ進み、障害物35との接触を回避するように接触回避ラインAL,ARを補正する。
s9では、図6(b)に示すように、接触回避ラインARを内側に補正する。この補正は前述と同様の手法を用いる。障害物35のような車両を検出し、回避ラインARが、誘導ラインNRの内側に補正される場合には、誘導ラインNRが接触回避ラインARの内側となるように誘導ラインNL,NRを再補正する。これにより、接触回避が予測されるような場合においても、通常の誘導支援から制御を開始できるため、より円滑かつ運転者にとって違和感の少ない走行支援を実現できる。
又、この補正は、経路変更と接触回避の両方を考慮した走行支援を、現走行中の車線から開始できる。このため、経路変更の車両動作を行う前(図6(b)の自車両31の地点)から、障害物の回避動作を開始することができ、余裕をもって、円滑に障害物との接触を回避できる。その結果、車両軌跡31a〜31cのような円滑な経路誘導を実現できる。これに対して、経路変更が行われた後に障害物を検出して、回避支援を行った場合の車両軌跡31a〜31cを図7に示す。接触回避ラインARは自車が31bに到達してから補正されるため、急激な旋回と、蛇行を伴う恐れがある。
図8は、隣接車線への経路変更がある場合の動作例を示す図である。
s7では、s6で経路変更が予測判断された場合に、経路情報に基づいて誘導ラインNL,NR、接触回避ラインAL,ARの補正処理を行う。隣接車線への経路変更は、方向指示器レバー3の操作情報によって検出できる。図8(a)のように、走行中の車線に沿った経路ではなく、隣接車線への経路変更が判断された場合には、s3〜s5の手順と同様にして、前方カメラ10fの画像に基づいて、予測経路上の左右の誘導ラインNL,NR、左右の接触回避ラインAL,ARの各位置を求める。但し、図8(a)では、この時点での誘導ラインNL,NR,ARを(NL),(NR),(AR)で記している。
s8では、予測経路上の障害物を検出し、接触回避ラインAL,ARの補正の必要性を判断する。この時、前方の障害物だけでなく、後方カメラ10r,後方レーダ11r,左前側方カメラ12L,右前側方カメラ12R,左後側方カメラ13L,右後側方カメラ13Rによって、自車周辺の障害物を検出する。図8に示すような接触の危険性のある障害物36が検出される場合、s9へ進み、障害物36との接触を回避するように接触回避ラインAL,ARを補正する。回避ラインARが、誘導ラインNRの内側に補正される場合には、誘導ラインNRが接触回避ラインARのさらに内側となるように誘導ラインNRを再補正する。これにより、接触回避が予測されるような場合においても、通常の誘導支援から制御を開始できるため、より円滑かつ運転者にとって違和感の少ない走行支援を実現できる。
又、この補正は、経路変更と接触回避の両方を考慮した走行支援を、現走行中の車線から開始できる。このため、経路変更の車両動作を行う前から(図9の自車31の地点から)、障害物を考慮した経路誘導を開始することができ、余裕をもって円滑に障害物との接触を回避できる。その結果、車両軌跡31a〜31cのような円滑な隣接車線への経路誘導を実現できる。これに対して、経路変更が行われた後に障害物を検出して、回避支援を行った場合の車両軌跡31a〜31cを図8(b)に示す。接触回避ラインARは自車が31aに到達してから補正されるため、急激な旋回と、蛇行走行を伴う恐れがある。
図9は、隣接車線へ経路変更がある場合の別の走行支援動作を示す図である。
本例の走行支援では、図8を用いて説明したような積極的な経路誘導を行わず、経路変更は運転者のステアリング操作によって行い、周囲に接触の危険性がある場合のみ、経路変更を抑制する支援を行う。
s7では、s6で経路変更が予測判断された場合に、経路情報に基づいて誘導ラインNL,NR、接触回避ラインAL,ARの補正処理を行う。隣接車線への経路変更は、方向指示器レバー3の操作情報によって検出できる。図9のように、隣接車線への経路変更が判断された場合には、前方カメラ10fの画像に基づいて、右側の誘導ラインNRの位置を補正し、進路変更を妨げないようにする。但し、図9では、この時点での誘導ラインNR,ARを、(NR),(AR)で記している。
s8にて、予測経路上の障害物を検出し、接触回避ラインARの補正の必要性を判断する。この時、前方の障害物だけでなく、後方カメラ10r,後方レーダ11r,右前側方カメラ12R,右後側方カメラ13Rによって、自車両周囲の障害物を検出する。図9に示すような後側方からの接近車37が検出される場合、s9へ進み、後側方接近車37との接触を回避するように接触回避ラインARを補正する。回避ラインARが、誘導ラインNRの内側に補正される場合には、誘導ラインNRが接触回避ラインARのさらに内側となるように誘導ラインNRを再補正する。これにより、接触回避が予測されるような場合においても、誘導支援の制御状態から経路変更を抑制できるため、より円滑かつ運転者にとって違和感の少ない走行支援を実現できる。
又、方向指示器レバー3を操作した直後に、警告音・警告灯・画像表示によって運転者へ危険性を知らせる。運転者にとっての煩わしさを低減するため、方向指示器レバー3の操作直後(図9の車両31,31aの時点)は、音による情報提供は単発的な警報とする。又、方向指示器レバー3の操作直後は、自車両が誘導ラインNRと接触回避ラインARの外側へ超えていないので、車両運動の制御は行わない。その後、運転者の操作によって自車両が誘導ラインNR又は接触回避ラインARの外側へ超えた場合には(図9の車両31bの時点)、元々の走行車線へ戻すような車両運動制御を実行するとともに、運転者がより気付きやすい、音、画像表示、警告灯によって運転者へ危険性を知らせる。特に、接触回避ラインARを超えた場合には(図9の車両31cの時点)、後側方接近車37と接触の危険性が高いため、音,画像表示,警告灯の認知性を高める。
上記の実施形態では、誘導ライン(第1のライン)又は接触回避ライン(第2のライン)と自車の位置関係に基づいた走行支援装置を説明したが、走行支援の基準となるラインは、誘導ラインと接触回避ラインの2つに限定されない。例えば、接触回避ラインに関して、障害物との接触をある程度の許容するラインと全く許容せずに余裕をもって回避するためのラインとが混在してもよい。これによって、障害物の種類に応じて想定される被害を予測し、2種類の接触回避ラインを使い分けることによって、より安全で違和感の少ない走行支援装置を提供できる。又、誘導ラインを2種類の誘導ラインに分けて、異なる制御ゲインを用いて制御してもよい。これによって経路誘導の目的に応じて制御の強さを調整できるため、より違和感の少ない走行支援装置を提供できる。又は、状況に応じて、異なる誘導ラインと接触回避ラインと異なる目的のラインを生成して、3種類以上の走行支援を混在させてもよい。これにより、より拡張性の高い、違和感の少ない走行支援装置を提供できる。
又、上記の実施形態では、経路変更の例として分岐車線と隣接車線への車線変更を用いて説明したが、経路変更は、合流,交差点,料金所のゲート選択,右折用車線への車線変更、左折用車線への車線変更などの種々の走行シーンに対して適用してもよい。これら想定する走行シーンを拡大すれば、より安全で、違和感の少ない走行支援装置を提供できる。
走行支援装置を搭載した車両の構成図。 走行支援制御のフロー図。 直線路における支援制御の一例を示す図。 図3のXpの地点に対応する図。 直線路に障害物がある場合の動作例を示す図。 分岐路において経路変更がある場合の動作例を示す図。 経路変更が行われた後に障害物を検出して回避支援を行う場合の図。 隣接車線への経路変更がある場合の動作例を示す図。 隣接車線へ経路変更がある場合の別の走行支援動作を示す図。
符号の説明
1 コントローラ
2 操舵角センサ
3 方向指示器レバー
6 ナビゲーション装置
8 車両挙動センサ
10,12,13 カメラ
11 レーダ

Claims (14)

  1. 自車周辺の車線を検出する検出部と、
    前記自車が進行しようとする経路を前記検出部が検出した車線に基づいて判別した後に、前記経路上の障害物に基づいて前記自車が走行すべき経路を補正する補正部と、
    前記補正部が補正した経路と前記自車の位置関係に基づいて、当該自車を制御する制御部を備える、走行支援装置。
  2. 前記制御部は、現走行中の車線以外の車線へ経路変更すると判別され、変更先の車線上に障害物が検出された場合、現在の車線を走行時点から経路変更先の障害物に基づいて、前記自車を制御する、請求項1記載の走行支援装置。
  3. 前記検出部は、前記自車周辺の画像を取得する画像取得部と、取得画像中のレーンマーカ又は路面境界に基づいて車線を認識する車線認識部を含む、請求項1又は2記載の走行支援装置。
  4. 自車が進行しようとする経路上へ誘導するための第1のラインと、障害物との接触を回避するための第2のラインを生成する生成部と、
    前記第1及び第2のラインのうち、少なくとも1つのラインと前記自車の位置関係に基づいて、当該自車を制御する制御部を備える、走行支援装置。
  5. 自車周辺の車線を検出し、前記自車が進行しようとする経路を前記検出部が検出した車線から判別した後に、当該経路上へ誘導するための第1のラインを生成し、当該第1のラインに基づいて障害物との接触を回避するための第2のラインを生成する生成部と、
    前記第1及び第2のラインと前記自車の位置関係に基づいて、当該自車を制御する制御部を備える、走行支援装置。
  6. 前記生成部は、前記第1のラインを前記自車周辺から検出したレーンマーカ又は路面境界に基づいて生成し、前記第2のラインを前記自車周辺から検出した路面境界又は障害物の位置に基づいて生成する、請求項4又は5記載の走行支援装置。
  7. 前記第1のラインと前記自車の位置関係に基づく運動と、前記第2のラインと前記自車の位置関係に基づく運動とを、それぞれ異なる制御ゲイン又はアクチュエータを用いて制御する、請求項4乃至6何れかに記載の走行支援装置。
  8. レーンマーカの形状,色,本数,複数のレーンマーカ間の距離,法規的な意味、のうち少なくとも一つを判別し、当該判別結果に応じて、誘導する経路、前記自車の運動の制御量、及び、運転者への情報提供の少なくとも一つを調節する、請求項6記載の走行支援装置。
  9. 障害物とは、他車,歩行者,動物,落下物,路肩,溝,土手,ガードレールのうち、少なくとも一つを示し、当該障害物の種類に応じて障害物を回避する経路、前記自車の運動の制御量、及び、運転者への情報提供の方法の少なくとも一つを変更する、請求項1乃至6何れかに記載の走行支援装置。
  10. 前記生成部は、前記第2のラインを、車両速度,加速度,車両幅,車両全長,トレッド幅,ホイールベース,車両のヨーモーメント生成能力,車両の制動力生成能力,路面摩擦係数,路面勾配,カーブ半径,車線を検出可能な距離と角度,障害物を検出可能な距離と角度の少なくとも何れか一つに基づいて生成する、請求項4乃至9何れかに記載の走行支援装置。
  11. 前記生成部は、前記第1のラインと前記自車の位置関係に基づく運動の制御量、又は運転者への提供情報に基づいて、前記第2のラインを生成する、請求項4乃至10何れかに記載の走行支援装置。
  12. 前記第2のラインは左右の2本のラインで構成され、左側の第2のラインが第1のラインの右側に生成される場合、当該第1のラインを当該第2のラインの更に右側に補正する、もしくは、右側の前記第2のラインが前記第1のラインの左側に生成される場合、当該第1のラインを当該第2のラインの更に左側に補正する、請求項4乃至11何れかに記載の走行支援装置。
  13. 前記制御部は、前記第2のラインは左右の2本のラインで構成され、左右2本のラインが交わる場合、車両を減速する、請求項4乃至11何れかに記載の走行支援装置。
  14. 自車周辺の車線を検出する検出部と、
    前記自車が進行しようとする経路を前記検出部が検出した車線に基づいて判別した後に、前記経路上の障害物に基づいて前記自車が走行すべき経路を補正する補正部と、
    前記補正部が補正した経路と前記自車の位置関係に基づいて、運転者に対して、前記経路に関する情報を提供する情報提供部を備える、走行支援装置。
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