JP7479596B2 - 絶縁性樹脂層付き銅箔、並びに、これを用いた積層体及び積層体の製造方法 - Google Patents

絶縁性樹脂層付き銅箔、並びに、これを用いた積層体及び積層体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁性樹脂層付き銅箔、並びに、これを用いた積層体及び積層体の製造方法に関する。
電子機器、通信機器及びパーソナルコンピューター等に広く用いられる半導体パッケージの高機能化及び小型化は、近年、益々加速している。このような技術の発展に伴い、半導体パッケージにおけるプリント配線板及び半導体素子搭載用基板の薄型化が要求されている。
薄型のプリント配線板及び半導体素子搭載用基板の製造方法として、例えば、ステンレス鋼等の剛性が高く厚い支持基板(キャリア基板)上に、後の工程において剥離可能な銅の層を形成して積層体を得、更にその上に、パターンめっきにより回路パターンを形成し、エポキシ樹脂被覆ファイバーグラスのような絶縁性樹脂層を積層して加熱及び加圧処理し、最後に支持基板を剥離、除去して薄型のプリント配線板を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このように、剛性が高く厚い支持基板上に回路パターンと絶縁材料とを積層させ、最後に支持基板を剥離、除去することで、既存の製造装置でも、薄型のプリント配線板及び半導体素子搭載用基板を製造できる。
また、多層プリント配線板及び半導体素子搭載用基板は、電子部品の実装密度を向上させるため、導体配線の微細化が進んでいる。導体配線の形成の際は、通常、絶縁層に対して、無電解めっき及び電解めっきを用いて導体層が形成される。このような技術に関連して、例えば、プリント配線板の絶縁層の形成に用いることができる樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特表昭59-500341号公報 特開2015-67626号公報
近年、プリント配線板及び半導体素子搭載用基板に用いられる部材として絶縁性樹脂層付き銅箔が用いられている。絶縁性樹脂層に関連して、例えば、特許文献2に、薄層化された際にも、低い表面粗度と高いメッキピール強度を達成でき、かつ高温時の低CTE化を達成することができる樹脂組成物を提供することを目的として、エポキシ樹脂等に加えて、球状シリカ、及びガラス繊維を含む樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載されるようにガラス繊維を含む接着フィルムを用いて、多層プリント配線板の絶縁層を作製した場合、いまだ、絶縁表面の顕著な凹凸が確認されることがある。また、特許文献2に記載されるような絶縁層を加熱した際には、反りや伸縮が発生することがある。
さらに、特にこれらの技術においては、絶縁性樹脂層を形成する際の樹脂組成物の溶液(ワニス)の塗布方向又は搬送方向に対する平行方向と、上記塗布方向又は搬送方向に対する垂直方向とにおいて、絶縁層の粘弾性等の機械特性、反り量、及び、伸縮率に差がみられることがある。ここで、上記「平行方向」は、塗布面に対して平行且つ塗布方向又は搬送方向と同方向を意味し、以下、「X方向」と称することもある。また、上記「垂直方向」とは、塗布面に対して平行且つX方向と垂直に交わる方向を意味し、「Y方向」と称することもある。このように絶縁層の平面方向(以下、単に「XY方向」ともいう。)において、X方向とY方向との間における絶縁層の反り又は伸縮率の差が大きいと、そのような絶縁層を備えるプリント配線板及び半導体素子搭載用基板を作製した際に、生産性(歩留率)の低下の原因ともなる。
本発明は、絶縁性樹脂層がガラス繊維を含んでも、平面方向における機械特性、反り及び伸縮のばらつきが抑制された絶縁性樹脂層付き銅箔、並びに、これを用いた積層体及び積層体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、絶縁性樹脂層に含まれる短繊維の配向度を一定値未満とすることで、平面方向における絶縁性樹脂層の機械特性、反り及び伸縮のばらつきを抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
<1> 銅箔と、前記銅箔上に配置される絶縁性樹脂層と、を備える絶縁性樹脂層付き銅箔であって、前記絶縁性樹脂層は、熱硬化性樹脂と、球状フィラーと、平均繊維長が10μm以上300μm以下であるガラス短繊維と、を含み、前記絶縁性樹脂層の平面方向における前記ガラス短繊維の配向度(fp)が、0.60未満である、絶縁性樹脂層付き銅箔。
<2> 前記絶縁性樹脂層の厚さが、3μm以上50μm以下である、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<3> 前記銅箔の厚さが、1μm以上18μm以下である、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<4> 前記ガラス短繊維の平均繊維径が、3.0μm以上15μm以下である、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<5> 前記配向度(fp)が0.40以下である、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<6> 前記絶縁性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が2μm以下である、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<7> 前記ガラス短繊維の含有量が、前記絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、5質量部以上450質量部以下である、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<8> 前記ガラス短繊維が、ミルド化繊維である、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<9> 前記球状フィラーの含有量が、前記絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下である、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<10> 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、フェノール樹脂、熱硬化変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ベンゾオキサジン化合物、有機基変性シリコーン化合物及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<11> プリント配線板又は半導体素子搭載用基板のビルドアップ材料用のコアレス基板の作製に用いられる、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<12> 前記コアレス基板が、3層コアレス基板である、上記絶縁性樹脂層付き銅箔。
<13> 導体層と、上記絶縁性樹脂層付き銅箔を用いて形成された絶縁層と、が交互に積層されたビルドアップ層を有する積層体。
<14> 少なくとも1層の前記絶縁層の厚さが、4μm以上15μm未満である、上記積層体。
<15> 前記ビルドアップ層が複数の前記導体層と前記絶縁層とを有し、前記導体層が、各前記絶縁層の間と、前記ビルドアップ層の最外層の表面とに配置される、上記積層体。
<16> 前記絶縁層を3層又は4層有する、上記積層体。
<17> コアレス基板である、上記積層体。
<18> 導体層表面に、上記絶縁性樹脂層付き銅箔を用いて絶縁層を形成することにより、前記導体層と前記絶縁層とが交互に積層されたビルドアップ層を形成する工程を有する、積層体の製造方法。
<19> 少なくとも1層の前記絶縁層の厚さが、4μm以上15μm未満である、上記積層体の製造方法。
<20> 前記ビルドアップ層が複数の前記導体層と前記絶縁層とを有し、前記導体層が、各前記絶縁層の間と、前記ビルドアップ層の最外層の表面とに配置される、上記積層体の製造方法。
<21> 前記積層体が前記絶縁層を3層又は4層有する、上記積層体の製造方法。
<22> 前記積層体がコアレス基板である、上記積層体の製造方法。
本発明によれば、絶縁性樹脂層がガラス繊維を含んでも、平面方向における機械特性、反り及び伸縮のばらつきが抑制された絶縁性樹脂層付き銅箔、並びに、これを用いた積層体及び積層体の製造方法を提供することができる。
(a)は絶縁性樹脂付き銅箔における絶縁性樹脂層をその平面方向に対向する方向から観察した模式平面図であり、(b)はガラス短繊維の配向角度θを説明するための模式図である。 本実施形態における多層コアレス基板の一例を示す模式図である。 実施例における多層コアレス基板の作製工程の流れを示す概略図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」と称す)について詳細に説明するが、本発明は以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。本明細書において、積層体は、各層が互いに接着したものであるが、その各層は、必要に応じて、互いに剥離可能なものであってもよい。
本実施形態において、「樹脂固形分」又は「絶縁性樹脂層中の樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、絶縁性樹脂層又は樹脂組成物に含まれる樹脂及び硬化後に樹脂を構成する成分をいう。また、「樹脂固形分100質量部」とは、絶縁性樹脂層又は樹脂組成物における、樹脂及び硬化後に樹脂を構成する成分の合計が100質量部であることをいう。
[絶縁性樹脂層付き銅箔]
本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔(以下、単に「樹脂層付き銅箔」と称することもある。)は、銅箔と、その銅箔上に配置される絶縁性樹脂層とを備える絶縁性樹脂層付き銅箔であって、絶縁性樹脂層は、(A)熱硬化性樹脂と、(B)球状フィラーと、(C)平均繊維長が10μm~300μmであるガラス短繊維とを含み、絶縁性樹脂層の平面方向(以下、絶縁性樹脂層の平面方向を単に「平面方向」と称することもある。)に対するガラス短繊維の配向度(fp)(以下、単に「配向度(fp)」と称することもある。)が0.6未満である。
本明細書において、「絶縁性樹脂層の平面方向におけるガラス短繊維の配向度(fp)」とは、樹脂層付き銅箔における、平面方向におけるガラス短繊維の配向状態を表すパラメーターである。配向度(fp)は、繊維配向分布を0.00~1.00の数値で表すパラメーターである。fp=1.00のとき、絶縁性樹脂層中のガラス短繊維が、平面方向において、全て1方向に配向していることを意味し、fp=0.00のとき、ガラス短繊維が完全にランダムに配置されていることを意味する。
絶縁性樹脂層中のガラス短繊維の配向度(fp)が0.60未満であると、絶縁性樹脂層の平面方向(XY方向)における、粘弾性等の機械特性、(特に樹脂層付き銅箔の加熱後の)反り量、及び、伸縮率の差をより小さくすることができる。具体的には、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いると、絶縁性樹脂層を形成する際における樹脂組成物の塗布方向に対する平行方向と、前記塗布方向に対する垂直方向とにおける、各物性(機械特性、反り及び伸縮の発生量)の差を小さくすることができる。そのため、絶縁性樹脂層表面の凹凸が少なくなる。その結果、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔をプリント配線板及び半導体素子搭載用基板のビルドアップ材料として用いた場合に、各層間における密着力及び生産性(歩留率)に優れる積層体を作製することができる。また、配向度(fp)が0.60未満であると、絶縁性樹脂層の反りの発生量自体をも抑制することができる。
本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔は、例えば、それを積層して積層体を形成することができる。得られる積層体は、電子機器、通信機器及びパーソナルコンピューター等の製造に用いられるプリント配線板又は半導体素子搭載用基板のビルドアップ材料として有用である。
〔銅箔〕
本実施形態の銅箔としては、通常のプリント配線板に用いられる銅箔又は銅フィルムを用いることができる。銅箔の具体例としては、電解銅箔、圧延銅箔及び銅合金フィルムが挙げられる。銅箔又は銅フィルムには、例えば、マット処理、コロナ処理、ニッケル処理及びコバルト処理等の公知の表面処理が施されていてもよい。本実施形態における銅箔としては、市販品を用いることもでき、例えば、JX金属(株)製のGHY5(商品名、12μm厚銅箔)、三井金属鉱業(株)製の3EC-VLP(商品名、12μm厚銅箔)、3EC-III(商品名、12μm厚銅箔)及び3EC-M2S-VLP(商品名、12μm厚銅箔)、古河電気興業(株)製の銅箔GTS-MP(商品名、12μm厚銅箔)、並びにJX金属(株)製のJXUT-I(商品名、1.5μm厚銅箔)のような市販品を用いることができる。
銅箔表面の算術平均粗さ(Ra)は、銅箔と絶縁性樹脂層との密着強度を向上させ、長期間使用における層の剥離を防ぐことができる点から、通常0.05μm以上2μm以下であることが好ましく、0.08μm以上1.7μm以下であることがさらに好ましい。その算術平均粗さ(Ra)は、銅箔と絶縁性樹脂層とのより優れた密着性を得ることができる点から、0.2μm以上1.6μm以下であることが特に好ましい。本実施形態において、算術平均粗さが上記範囲にある銅箔を備える絶縁性樹脂層付き銅箔は、高密度な微細配線が形成されたプリント配線板及び半導体素子搭載用基板の製造に好適に用いることできる。なお、算術平均粗さは、市販の形状測定顕微鏡(レーザー顕微鏡、例えば、キーエンス株式会社製VK-X210(商品名))を用いて測定できる。
銅箔の厚さは、本実施形態の効果を奏する限り、特に限定されないが、銅箔の表面の粗化処理を容易にする観点から、1μm以上18μm以下の範囲が好ましい。その厚さは、薄型のプリント配線板及び半導体素子搭載用基板を好適に得ることができることから、2μm以上15μm以下の範囲であることがより好ましい。
〔絶縁性樹脂層〕
本実施形態において、絶縁性樹脂層は、(A)熱硬化性樹脂、(B)球状フィラー、及び(C)平均繊維長が10μm以上300μm以下であるガラス短繊維を含む。本実施形態における絶縁性樹脂層は、これらの成分を含む樹脂組成物の溶液であるワニスを用いて形成することができる。
(A)熱硬化性樹脂
絶縁性樹脂層は、耐熱性、絶縁性、及びめっき密着性の点から、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層に用いられる樹脂であれば特に限定されない。
熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、フェノール樹脂、熱硬化変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ベンゾオキサジン化合物、有機基変性シリコーン化合物及び重合可能な不飽和基を有する化合物が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
これらの熱硬化性樹脂の中でも、優れたピール強度を有する絶縁性樹脂層が得られる点から、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含むことが好ましく、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂と共に、ビスマレイミド化合物を更に含むことがより好ましい。
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、従来公知の任意のエポキシ樹脂を使用できる。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、接着性及び可撓性をより良好にする点から、250g/eq以上850g/eq以下が好ましく、より好ましくは250g/eq以上450g/eq以下である。エポキシ当量は、常法により測定することができる。
エポキシ樹脂の具体例としては、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン4官能型エポキシ樹脂、キシレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ブタジエン等の2重結合をエポキシ化した化合物、及び水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物が挙げられる。これらの中でも、特にめっき銅付着性と難燃性の点から、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン4官能型エポキシ樹脂、キシレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、及びナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
本実施形態において、エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、耐熱性及び硬化性の点から、絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下の範囲が好ましく、30質量部以上70質量部以下の範囲がより好ましい。
シアン酸エステル化合物は、耐薬品性、接着性等に優れた特性を有し、その優れた耐薬品性により、均一な粗化面を形成することが可能である。そのため、シアン酸エステル化合物は、本実施形態における絶縁性樹脂層の成分として好適に使用することができる。
シアン酸エステル化合物の具体例としては、下記式(1)で表されるα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、下記式(2)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物、下記式(3)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、ビス(3,5-ジメチル4-シアナトフェニル)メタン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4,4'-ジシアナトビフェニル、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、2,2'-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、及びビス(3、5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタンが挙げられる。シアン酸エステル化合物は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
これらの中でも、下記式(1)で表されるα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、下記式(2)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物、及び下記式(3)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物が、難燃性に優れ、硬化性が高く、かつ硬化物の熱膨張係数が低いことから好ましい。
Figure 0007479596000001
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。nは1~50の整数であることが好ましい。
Figure 0007479596000002
式(2)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。nは1~50の整数であることが好ましい。
Figure 0007479596000003
式(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。nは1~50の整数であることが好ましい。
本実施形態において、シアン酸エステル化合物の含有量は、特に限定されないが、耐熱性や銅箔との密着性の点から、絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、15質量部以上85質量部以下の範囲が好ましく、25質量部以上65質量部以下の範囲が更に好ましい。
マレイミド化合物は、絶縁性樹脂層の吸湿耐熱性を向上させることが可能であるため、本実施形態における絶縁性樹脂層の成分として好適に使用することができる。マレイミド化合物としては、1分子中に2個以上のマレイミド基を有するものであれば特に限定されず、従来公知の任意のマレイミド化合物を使用できる。
マレイミド化合物の具体例としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン等のビスマレイミド化合物;及びポリフェニルメタンマレイミドが挙げられる。なお、マレイミド化合物は、マレイミド化合物のプレポリマー、又はマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマーのような形で樹脂組成物に配合することもできる。これらのマレイミド化合物は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
これらの中でも、耐熱性の点から、ビスマレイミド化合物が好ましく、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンがより好ましい。
本実施形態において、マレイミド化合物の含有量は、特に限定されないが、耐熱性と銅箔との密着性の点から、絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、5質量部以上75質量部以下の範囲が好ましく、5質量部以上45質量部以下の範囲が更に好ましい。
フェノール樹脂としては、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有する樹脂であれば特に限定されず、従来公知の任意のフェノール樹脂を使用できる。フェノール樹脂の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、キシロック(Xylok)型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等の1分子内に芳香族性の環に結合する水素原子が水酸基で2個以上置換された化合物が挙げられる。これらのフェノール樹脂は、1種単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
熱硬化変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂とエポキシ樹脂とを配合してトルエン等の溶媒に溶解し、2-エチル-4-メチルイミダゾールのような触媒を加えて架橋させた樹脂である。熱硬化変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
ベンゾオキサジン化合物としては、基本骨格としてオキサジン環を有していれば、特に限定されない。また、本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物には、ナフトオキサジン化合物等の多環オキサジン骨格を有する化合物も含まれる。ベンゾオキサジン化合物は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
有機基変性シリコーン化合物としては、特に限定されず、具体例としては、ジ(メチルアミノ)ポリジメチルシロキサン、ジ(エチルアミノ)ポリジメチルシロキサン、ジ(プロピルアミノ)ポリジメチルシロキサン、ジ(エポキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、及びジ(エポキシブチル)ポリジメチルシロキサンが挙げられる。有機基変性シリコーン化合物は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;及びベンゾシクロブテン樹脂が挙げられる。重合可能な不飽和基を有する化合物は、1種単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。なお、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを包含する概念である。
(B)球状フィラー
本実施形態における絶縁性樹脂層は、低熱膨張率、成形性、充填性及び剛性の点から、球状フィラーを含む。球状フィラーとしては、プリント配線板の絶縁層に用いられる球状のフィラーであれば特に限定されない。
球状フィラーは、特に限定されないが、その平均粒子径(D50)が0.01μm以上5μm以下の範囲であることが好ましい。なお、D50とは、メジアン径を意味し、測定した粉体の粒度分布を2つに分けたときの大きい側と小さい側とが等量となる径であり、本明細書においては体積基準である。球状フィラーのD50値は、一般的には湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
球状フィラーとしては、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、及び中空シリカ等のシリカ類;二硫化モリブデン、酸化モリブデン、及びモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物;アルミナ;窒化アルミニウム;ガラス;酸化チタン;及び酸化ジルコニウムが挙げられる。球状フィラーは、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
球状フィラーとしては、低熱膨張性の点から、球状溶融シリカが好ましい。市販されている球状溶融シリカとしては、例えば、(株)アドマテックス製のSC2050-MB、SC2500-SQ、SC4500-SQ、SO-C2、SO-C1、電気化学工業(株)製のSFP-130MCが挙げられる(いずれも製品名)。
球状シリカのような球状フィラーの平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、0.01μm以上5μm以下の範囲が好ましく、0.05μm以上3μm以下の範囲がより好ましく、0.1μm以上2μm以下の範囲が更に好ましく、0.3μm以上1.5μm以下の範囲が更により好ましい。球状フィラーの平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、球状フィラーの粒度を測定し、その粒度分布を体積基準で作成し、そのメジアン径を平均粒子径とすることができる。測定サンプルは、球状フィラーを超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、例えば、株式会社堀場製作所製LA-500(製品名)を使用することができる。
本実施形態において、球状フィラーの含有量は、特に限定されないが、成形性の点から、絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下の範囲が好ましく、100質量部以上400質量部以下の範囲がより好ましい。
また、本実施形態の球状フィラーは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。シランカップリング剤としては、後述のシランカップリング剤を用いることができる。
(C)平均繊維長が10μm以上300μm以下であるガラス短繊維
本実施形態における絶縁性樹脂層は、銅箔に対する優れた密着性、樹脂組成物への靭性の付与、及び低い熱膨張率を有する樹脂組成物を得るために、平均繊維長が10μm以上300μm以下であるガラス短繊維を含む。本実施形態のガラス短繊維は、SiO、Al、CaO、MgO、B、NaO及びKOを主成分として、平均繊維長が10μm以上300μm以下であれば、特に限定されず、常法により作製されても市販品を用いてもよい。
ガラス短繊維の平均繊維長は、熱膨張率を低くするという点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。また、ガラス短繊維の分散性を向上させる点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
ガラス短繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、熱膨張率をより低くできる点から、好ましくは3.0μm以上15μm以下であり、3.0μm以上13μm以下であるとより好ましく、3.5μm以上11μm以下であると更に好ましい。
ガラス短繊維の平均繊維長及び平均繊維径は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡等を用いて測定することができる。
ガラス短繊維の具体例としては、ミルド化繊維(一般に、「ミルドファイバー」と称す。)、ガラスウール及びマイクロロッドが挙げられる。ガラス短繊維としては、絶縁性樹脂層に配合した場合に、銅箔と優れた密着性を得ることができ、安価であることから、ミルド化繊維が好ましい。これらのガラス短繊維は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
本実施形態において、ガラス短繊維の含有量は、特に限定されないが、熱膨張率や靭性の付与、及び成形性の点から、絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、5質量部以上450質量部以下の範囲が好ましく、10質量部以上400質量部以下の範囲がより好ましく、15質量部以上300質量部以下の範囲が更に好ましく、20質量部以上200質量部以下の範囲がなおも更に好ましく、20質量部以上100質量部以下の範囲が特に好ましい。
本実施形態において、球状フィラーとガラス短繊維との配合比は、特に限定されないが、成形性の点から、球状フィラー:ガラス短繊維の質量比として、1:20~100:1であると好ましく、1:10~150:1であるとより好ましく、1:2~10:1であると更に好ましい。
上述のように、絶縁性樹脂層中のガラス短繊維の平面方向の配向度(fp)は0.60未満である。さらに各物性のXY方向における差を小さくする観点及び反りの発生量自体を低下させる観点から、配向度(fp)が、0.40以下であることが好ましく、0.35以下であることがより好ましく、0.30以下であることが更に好ましい。また、配向度(fp)の下限は特に限定されないが、例えば配向度は0.10以上であってもよく、0.15以上であってもよく、0.20以上であってもよい。
絶縁性樹脂層付き銅箔における平面方向の配向度の測定は、具体的には下記のとおりである。まず、長さ3cm×幅3cmに切り出した絶縁性樹脂層付き銅箔をスライドガラス上に載せ、上から更にスライドガラスを載せる。そのようにして得られたスライドガラスで挟んだ絶縁性樹脂層付き銅箔の試験片を、マイクロスコープを用いて通常の反射光を観察することで配向度(fp)を測定する。なお、測定の際、絶縁性樹脂層付き銅箔に、必要に応じて、樹脂包埋等の処理を施してもよい。
本実施形態では、スライドガラスで挟んだ絶縁性樹脂付き銅箔の絶縁性樹脂層側の面を光学顕微鏡にて観察する。光学顕微鏡には、オリンパス(株)製の倒立顕微鏡や、キーエンス(株)製のマイクロスコープを用いることができる。モノフィラメントが視認できるように光学顕微鏡の倍率を調整して、反射光にて、又は反射光と透過光を併用して、絶縁性樹脂層におけるガラス短繊維を観察する。本実施形態においては、例えば、上記倍率を100倍、300倍、600倍、及び800倍から選択することができ、例えば、好適には100倍とすることができる。これにより、一方の面のうちの任意に選択される連続した1.5mmの測定領域を観察し、この測定領域中に存在する視認し得る全てのガラス短繊維(繊維数はm本とする。)の配向角度θを測定する。次いで、上記測定領域中に存在する、観察像において視認し得る全てのガラス短繊維について、後述する方法で設定した基準線に対する角度θ(i=1~m)を測定する。配向角度θとして、基準線に対して時計回りの方向の角度を測定するので、0°以上180°未満の角度となる。図1を用いて、ガラス短繊維と基準線との関係について説明する。図1において(a)は絶縁性樹脂層をその平面方向に対向する方向から観察した模式平面図であり、(b)はガラス短繊維の配向角度θを説明するための模式図である。図1(a)に示されるように、絶縁性樹脂層1中に複数のガラス短繊維2が分散している。図1(a)において、矢印Xは、平面図において、絶縁性樹脂層を形成する際の塗布方向又は搬送方向を示し、矢印Yは、矢印Xに対する垂直方向を示す。また、直線Pは基準線を示す。図1(b)に示すように、基準線Pと、各ガラス短繊維2A~2C(i=1~3)とがなす角度が各々配向角度θ~θとなる。各配向角度は、図中矢印で示されるように、時計回りの方向の角度である。
角度θの測定後、設定された基準線に対する短繊維の角度θから、下記式(2)を用いて平面方向の配向度(fp)を算出する。
fp=2×Σ(cosθ/m)-1 (2)
平面方向の配向度を測定する際の基準線は、下記の方法により決定することができる。まず、基準線を決定するに際し、第1の仮基準線pを選択し、測定領域内に存在する視認し得る全てのガラス短繊維m本の角度を測定する。この際、第1の仮基準線pと各繊維との角度は、α(p)(i=1~m)で表される。第1の仮基準線pを用いた際の配向度(fp(p))を、下記式を用いて算出する。式中、角度α(p)は、配向角度θと同様に、第1の仮基準線pに対して時計回りの方向の角度であり、0°以上180°未満の角度である。
fp(p)=2×Σ(cosα(p)/m)-1〔i=1、2、3、・・・、m〕
つぎに、第1の仮基準線pから時計回りに±1°ずつ、±90°となるまで回転させた複数の仮基準線(p+z、p-z(z=1~90))をとる。仮基準線p+zは第1の仮基準線pから時計回りに1°ずつ、90°となるまで回転させたものであり、例えば、仮基準線pから時計回りに1°回転させたものは仮基準線p+1、時計回りに2°回転させたものは仮基準線p+2、であり、時計回りに90°回転させたものは仮基準線p+90である。また、仮基準線p-zは第1の仮基準線pから反時計回りに1°ずつ、90°となるまで回転させたものであり、例えば、仮基準線pから反時計回りに1°回転させたものは仮基準線p-1、反時計回りに2°回転させたものは仮基準線p-2、であり、反時計回りに90°回転させたものは仮基準線p-90である。次に、仮基準線p+z及び仮基準線p-zと、短繊維m本と、の角度をそれぞれ算出する。この場合の角度は、α(p+z)と、α(p-z)(i=1~m)で表す。
回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1~90))と短繊維の配向度(fp(p±z))とは、下記式を用いて算出する。
fp(p±z)=2×Σ(cosα(p±z)/m)-1
(i=1、2、3、・・・、m)
このようにして、得られたfp(p)値及びfp(p±z)値のうち最大値が得られた場合に設定した仮基準線を、基準線Pとする。
以上のように決定した基準線Pから算出される配向度を、平面方向の配向度(fp)とする。
なお、例えば、絶縁性樹脂層の厚さが1μm以上18μm以下の場合には、ガラス短繊維の長さが影響し、絶縁性樹脂層の厚み方向に対するガラス短繊維の配向のばらつきが小さい。このため、本実施形態において、例えば、絶縁性樹脂層の厚さが1μm以上18μm以下の場合、絶縁性樹脂層の厚み方向に対するガラス短繊維の配向度が絶縁性樹脂層の物性に与える影響は少ない。
(その他の成分)
本実施形態における絶縁性樹脂層は、(A)熱硬化性樹脂、(B)球状フィラー及び(C)ガラス短繊維の他に、その他の1腫又は2種以上の成分を含有してもよい。その他の成分として、本実施形態における絶縁性樹脂層は、例えば、本実施形態にかかる絶縁性樹脂層の吸湿耐熱性向上の目的で、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されるシランカップリング剤であれば、特に限定されない。その具体例としては、アミノシラン系シランカップリング剤(例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、エポキシシラン系シランカップリング剤(例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、ビニルシラン系シランカップリング剤(例えば、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、カチオン性シラン系シランカップリング剤(例えば、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩)、及びフェニルシラン系シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
本実施形態において、シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、吸湿耐熱性向上の点から、球状フィラー100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下の範囲が好ましく、0.1質量部以上3質量部以下の範囲がより好ましい。なお、2種以上のシランカップリング剤を併用する場合には、これらの合計量が上述の範囲を満たすことが好ましい。
本実施形態における絶縁性樹脂層は、絶縁性樹脂層の製造性向上等を目的として、湿潤分散剤を含有してもよい。湿潤分散剤としては、一般に塗料等に使用される湿潤分散剤であれば、特に限定されない。その市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk(登録商標)-110、同-111、同-180、同-161、BYK(登録商標)-W996、同-W9010、同-W903が挙げられる。湿潤分散剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
本実施形態において、湿潤分散剤の含有量は、特に限定されないが、絶縁性樹脂層の製造性向上の点から、球状フィラー100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下の範囲がより好ましい。なお、2種以上の湿潤分散剤を併用する場合には、これらの合計量が上述の範囲を満たすことが好ましい。
本実施形態における絶縁性樹脂層は、硬化速度の調整等の目的から、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂又はシアン酸エステル化合物等に使用される硬化促進剤等の一般に使用されるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属を含む有機金属塩類(例えば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン)、イミダゾール類及びその誘導体(例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール)、第3級アミン(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン)が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
本実施形態において、硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、高いガラス転移温度を得る点から、絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲が好ましく、0.01質量部以上3質量部以下の範囲がより好ましい。なお、2種以上の硬化促進剤を併用する場合には、これらの合計量が上述の範囲を満たすことが好ましい。
本実施形態における絶縁性樹脂層は、その他の種々の高分子化合物及び/又は難燃性化合物等を含有してもよい。高分子化合物及び難燃性化合物としては、一般に使用されるものであれば、特に限定されない。
高分子化合物としては、(A)熱硬化性樹脂以外であって、各種の熱可塑性樹脂並びにそのオリゴマー、及びエラストマー類が挙げられる。その具体例としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリウレタン、ポリプロピレン、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルポリマー及びシリコーン樹脂が挙げられる。これらの中では、相溶性の点から、高分子化合物として、アクリロニトリルブタジエンゴム又はスチレンブタジエンゴムが好ましい。なお、「(メタ)アクリル」は、メタクリル及びアクリルを包含する概念である。
難燃性化合物の具体例としては、(B)球状フィラー及び(C)ガラス短繊維以外であって、リン含有化合物(例えば、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂)、窒素含有化合物(例えば、メラミン、ベンゾグアナミン)、オキサジン環含有化合物、シリコーン系化合物が挙げられる。これらの高分子化合物及び難燃性化合物は、それぞれ1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
本実施形態における絶縁性樹脂層は、種々の目的により、その他、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤の具体例としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤及び光沢剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
(樹脂組成物)
本実施形態における絶縁性樹脂層は、樹脂組成物を用いて形成することができる。樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂、(B)球状フィラー、及び(C)平均繊維長が10μm以上300μm以下であるガラス短繊維、並びに、必要に応じてその他の成分を混合することにより調製される。また、樹脂組成物は、必要に応じて、これらの成分を有機溶剤に溶解させた溶液の形態としてもよい。このような樹脂組成物の溶液は、後述する本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。
有機溶剤としては、各成分を各々好適に溶解又は分散させることができ、且つ、本実施形態における絶縁性樹脂層の効果を奏する限り、特に限定されない。有機溶剤の具体例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール及びプロパノール)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン)、アミド類(例えば、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド)、及び芳香族炭化水素類(例えば、トルエン及びキシレン)が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
樹脂組成物の溶液中の有機溶剤の含有量は、所望の粘度を得る観点等から適宜決めればよく、特に限定されない。その含有量は、例えば、樹脂組成物溶液100質量部に対して、20質量部以上500質量部以下であってもよく、30質量部以上300質量部以下であってもよい。
(絶縁性樹脂層)
本実施形態における絶縁性樹脂層は、上述のように樹脂組成物から得られる。絶縁性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、平滑性及びガラス短繊維の配向の点から、3μm以上50μm以下の範囲が好ましい。また、絶縁性樹脂層の厚さは、良好な成形性が更に得られる点から、6μm以上45μm以下であることがより好ましく、良好な銅箔と絶縁性樹脂層との密着性が更に得られる点から、8μm以上40μm以下であることが更に好ましい。
絶縁性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)は、2μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.5μm以下であることが更に好ましい。その算術平均粗さ(Ra)が上述の範囲内にあることにより、銅箔と絶縁性樹脂層との密着強度、又は、絶縁性樹脂層同士の密着強度が向上し、長期間の使用における層の剥離をより有効に防ぐことができる。絶縁性樹脂層の表面は、目的に応じて各面が、各々、銅箔と接する面、及び、銅箔以外(例えば、他の絶縁性樹脂層)と接する面となり得るが、いずれの面であっても、算術平均粗さ(Ra)が上述の範囲であることが好ましい。絶縁性樹脂層表面の算術平均粗さは、市販の形状測定顕微鏡(レーザー顕微鏡、例えば、キーエンス株式会社製のVK-X210(製品名))を用いて測定できる。
絶縁性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)は、有機溶剤の含有量を調整したり、塗布方式を適宜選択したりするなどにより、上述の範囲内に制御することができる。
(絶縁性樹脂層付き銅箔の製造方法)
本実施形態における絶縁性樹脂層付き銅箔の製造方法は、銅箔上に、上記の樹脂組成物からなる絶縁性樹脂層を積層する工程を有する方法であれば、特に限定されない。積層する工程としては、例えば、樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させた溶液(ワニス)を、銅箔の表面に塗布し、加熱及び/又は減圧下で乾燥し、溶媒を除去して樹脂組成物を固化させて、絶縁性樹脂層を形成する工程が挙げられる。乾燥条件は、特に限定されないが、絶縁性樹脂層に対する有機溶剤の含有比率が、絶縁性樹脂層100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下となるように乾燥させる。乾燥を達成する条件は、ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば、ワニス100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下の有機溶剤を含むワニスの場合、50℃以上160℃以下の加熱条件下で3~10分間程度乾燥させればよい。
銅箔上に樹脂組成物を塗布する方法についても特に限定されるものではないが、例えば、バーコーター塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、リバースグラビア塗布、マイクログラビア塗布、マイクロリバースグラビアコーター塗布、ダイコーター塗布、ディップ塗布、スピンコート塗布、スプレー塗布のような公知の塗布法を用いることができる。なお、ガラス短繊維の配向度を低く制御するためには、例えば、グラビア塗布などのように1回の塗工においてガラス短繊維が一方向に配向しにくい方法が好適である。また、バーコーター塗布のように1回の塗工においてガラス短繊維が一方向に配向しやすい塗布方法においては、塗布方向を変更して2回以上塗工すること(例えば、2回目の塗工に際し、塗布方向を垂直方向に切り替えるなど)が好ましい。その場合、変更する塗布方向は、平面方向において互いに直交する方向であると好ましい。また、同じ塗布方法において、平面方向の配向度を低くするには、例えば、ガラス繊維の平均繊維長を短くすればよい。
<本実施形態の積層体及びその製造方法>
本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いた積層体(以下、単に「積層体」と称することがある。)は、例えば、プリント配線板又は半導体素子搭載用基板のビルドアップ材料用のコアレス基板の作製に用いることができる。本実施形態の積層体は、例えば、導体層と、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いて形成された絶縁層とが交互に積層されたビルドアップ層を有する積層体である。なお、積層体における絶縁層は、絶縁性樹脂層そのものであってもよく、絶縁性樹脂層が硬化したものであってもよい。積層体は、導体層及び絶縁層をそれぞれ1つ又は2つ以上有する。ここで、絶縁層は、例えば、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を積層して絶縁層を形成する場合であって、2層構造の場合には、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を絶縁性樹脂層同士が接するように積層する。また、3つ以上の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いる場合には、必要に応じて絶縁性樹脂層付き銅箔から銅箔を除去し、各絶縁性樹脂層を積層して、絶縁層を形成することができる。また、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔における銅箔が上記導体層の役割を担ってもよいし、それとは別の導体(銅箔等)を新たに積層して導体層を形成してもよい。本実施形態の積層体の製造方法は、導体層表面に、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いて絶縁層を形成することにより、導体層と絶縁層とが交互に積層されたビルドアップ層を形成する工程を有するものであれば。特に限定されない。
本実施形態の積層体がビルドアップ層を有する場合、例えば、当該ビルドアップ層は、複数の導体層と絶縁層とを有し、導体層が、各絶縁層の間と、ビルドアップ層の最外層の表面とに配置される。この際、絶縁層の数は特に限定はないが、例えば、3層又は4層とすることできる。また、本実施形態の積層体を用いて、コアレス基板を作製することができる。コアレス基板としては、例えば、2層以上のコアレス基板が挙げられ、3層コアレス基板であってもよい。コアレス基板の構成については後述する。
本実施形態の積層体において、薄膜化の要望を実現する観点から、少なくとも1層の絶縁層の厚さが、4μm以上15μm未満であると好ましい。当該絶縁層の厚さは、種々の積層体用途によって異なるが、例えば、6μm以上14μm以下であるとより好ましく、8μm以上12μm以下であると更に好ましい。
[プリント配線板]
本実施形態の積層体はプリント配線板として用いることができる。ここで、プリント配線板は、コア基材と呼ばれる絶縁性樹脂層が完全硬化した金属箔張積層板に対し、ビルドアップ材料として本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔から得られる積層体を用いることにより得ることができる。本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔及びそれから得られる積層体を用いると、例えば、厚い支持基板(キャリア基板)を用いずに薄型のプリント配線板を製造することが可能である。また、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いて得られるプリント配線板は、各層間における密着力や生産性(歩留率)に一層優れる。
金属箔張積層板の表面には、通常用いられる金属箔張積層板の金属箔及び/又は金属箔を剥離した後にめっきする等して得られる導体層により導体回路が形成される。また、金属箔張積層板の基材は、特に限定されないが、例えば主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板及び熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板である。
本実施形態において、「ビルドアップ」とは、金属箔張積層板の表面の金属箔及び/又は導体層に対して、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔における絶縁性樹脂層を積層させることである。
通常、ビルドアップ材料として接着フィルム等を用いて、金属箔張積層板に絶縁性樹脂層(樹脂組成物層)を積層させた場合、得られるプリント配線板はその片面又は両面に硬化後の絶縁性樹脂層、すなわち絶縁層を有する。この絶縁層に対して導体層を形成するが、絶縁層の表面粗度は低い。そのため、通常、デスミア処理を含む粗化処理により絶縁層に凹凸を形成させ、その後、無電解めっき及び/又は電解めっきを用いて導体層を形成する。しかしながら、粗化処理を施した絶縁層の表面には、絶縁層中のガラス短繊維等の無機物が露出しており(例えば突き出しており)、表面が荒れている。また、無機物が絶縁層から脱落することで、絶縁層に大きな陥没穴が形成されるといった問題も有する。そのため、このような絶縁層の表面に高密度な微細配線を形成することは難しい。また、ビアホール及び/又はスルーホール等の導通穴を形成する際にガラス短繊維等の無機物が絶縁層に残りやすく、信頼性に影響を与える問題も有する。
しかしながら、ビルドアップ材料として本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を金属箔張積層板に積層させると、得られるプリント配線板の片面又は両面に銅箔を有することになる。このため、めっき処理を施さなくても、銅箔に対して、直接、回路パターンを形成でき、高密度な微細配線を形成することができる。また、プリント配線板又は半導体素子搭載用基板の製造に際し、銅箔をエッチングした後にめっき処理を施しても、銅箔面が絶縁性樹脂層に転写されていることから、絶縁層とめっきとの間の密着性が向上する。
プリント配線板の製造では、必要に応じて、各導体層を電気的に接続するため、ビアホール及び/又はスルーホール等の穴加工が行われる。この穴加工が行われた場合、その後、デスミア処理を含む粗化処理を行う。本実施形態では、プリント配線板の表面が、絶縁層との密着性に優れる銅箔で保護されているため、粗化処理を行っても、プリント配線板の表面が荒れるのを抑制できる。
穴加工は、通常、メカニカルドリル、炭酸ガスレーザー、UVレーザー及びYAGレーザー等を用いて行われる。本実施形態では、プリント配線板の表面が銅箔で保護されているため、これらのドリル又はレーザーのエネルギーを強くすることができる。そのため、本実施形態によれば、穴加工において、穴の表面から露出したガラス繊維等の無機物を好適に除去できる。
なお、通常、粗化処理は、膨潤工程、表面粗化及びスミア溶解工程、並びに中和工程からなる。
膨潤工程では、膨潤剤を用いて絶縁層の表面を膨潤させる。膨潤剤としては、絶縁層の表面の濡れ性が向上し、次の表面粗化及びスミア溶解工程において酸化分解が促進される程度にまで絶縁層の表面を膨潤させることができるものであれば、特に限定されない。その例としては、アルカリ溶液及び界面活性剤溶液が挙げられる。
表面粗化及びスミア溶解工程では、酸化剤を用いて絶縁層の表面を粗化させると共にスミアを溶解する。酸化剤としては、例えば、アルカリ性の過マンガン酸塩溶液が挙げられ、好適な具体例としては、過マンガン酸カリウム水溶液、及び過マンガン酸ナトリウム水溶液が挙げられる。かかる酸化剤処理はウェットデスミアと呼ばれるが、当該ウェットデスミアに加えて、プラズマ処理やUV処理によるドライデスミア、バフ等による機械研磨、サンドブラスト等の他の公知の粗化処理を、適宜組み合わせてもよい。
中和工程では、前工程で使用した酸化剤を還元剤で中和する。還元剤としては、例えば、アミン系還元剤が挙げられる。その、好適な具体例としては、例えば、ヒドロキシルアミン硫酸塩水溶液、エチレンジアミン四酢酸水溶液、ニトリロ三酢酸水溶液等の酸性水溶液が挙げられる。
本実施形態において、ビアホール及び/又はスルーホールを設けた後、又はビアホール及び/又はスルーホール内をデスミア処理した後に、各導体層を電気的に接続するために金属めっき処理することが好ましい。本実施形態では、金属めっき処理を施しても、銅箔面が絶縁層に転写されていることから絶縁層と金属めっきとの間の密着性が向上する。
金属めっき処理の方法としては、特に限定されず、通常の多層プリント配線板の製造における金属めっき処理の方法を適宜用いることができる。金属めっき処理の方法及びめっきに使用される薬液の種類は、特に限定されず、通常の多層プリント配線板の製造における金属めっき処理の方法及び薬液を適宜用いることができる。金属めっき処理に使用される薬液は、市販品であってもよい。金属めっき処理方法としては、特に限定されず、例えば、脱脂液による処理、ソフトエッチング液による処理、酸洗浄、プレディップ液による処理、キャタリスト液による処理、アクセレーター液による処理、化学銅液による処理、酸洗浄及び硫酸銅液に浸漬し電流を流す処理が挙げられる。
また、半硬化状態の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いてビルドアップさせた場合には、通常、半硬化状態の絶縁性樹脂層に対して熱処理等を施して完全硬化させることでプリント配線板を得ることができる。本実施形態では、得られたプリント配線板に対して、別の絶縁性樹脂層付き銅箔を更に積層させてもよい。
ビルドアップ法による積層(ラミネート)方法としては、特に限定されないが、真空加圧式ラミネーターを好適に用いることができる。この場合、金属箔張積層板に対してゴム等の弾性体を介して本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を積層することもできる。ラミネート条件としては、通常のプリント配線板の積層において使用される条件であれば特に限定されないが、例えば、70℃以上140℃以下の温度、1kgf/cm以上11kgf/cm以下の範囲の接触圧力、並びに20hPa以下の雰囲気減圧下が挙げられる。ラミネートの後に、金属板による熱プレスにより、積層された絶縁性樹脂層の平滑化を行ってもよい。ラミネート及び平滑化は、市販されている真空加圧式ラミネーターによって連続的に行うことができる。ラミネートの後に、又は平滑化の後に、絶縁性樹脂層を加熱して熱硬化させることで、完全に硬化させることができる。熱硬化条件は、樹脂組成物に含まれる成分の種類等によって異なるが、通常、硬化温度が170℃以上190℃以下、硬化時間が15分間~60分間である。
本実施形態におけるプリント配線板の片面又は両面の銅箔又は導体層に対して、回路パターンを形成する方法としては、セミアディティブ法、フルアディティブ法、及びサブトラクティブ法が挙げられる。中でも、微細配線パターンを形成する点からは、セミアディティブ法が好ましい。
セミアディティブ法で回路パターンを形成する方法の例としては、めっきレジストを用いて選択的に電解めっきを施し(パターンめっき)、その後めっきレジストを剥離し、全体を適量エッチングして配線パターンを形成する手法が挙げられる。セミアディティブ法による回路パターン形成では、無電解めっきと電解めっきとを組み合わせて行うが、その際、無電解めっきの後と、電解めっきの後に、それぞれ乾燥を行うことが好ましい。無電解めっき後の乾燥は、特に限定されないが、例えば、80℃以上180℃以下で10分間~120分間行うことが好ましい。電解めっき後の乾燥は、特に限定されないが、例えば、130℃以上220℃以下で10分間~120分間行うことが好ましい。めっきとしては、銅めっきが好ましい。
サブトラクティブ法で回路パターンを形成する方法の例としては、エッチングレジストを用いて選択的に導体層を除去することにより、回路パターンを形成する手法が挙げられる。具体的には、例えば、次のようにして回路パターンを形成する。銅箔の全面に、温度110±10℃、圧力0.50±0.02MPaでドライフィルムレジスト(例えば、日立化成製RD-1225(商品名))を積層貼着(ラミネート)する。次いで、回路パターンに沿って露光し、マスキングを行う。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液にてドライフィルムレジストを現像処理し、最終的にアミン系のレジスト剥離液にてドライフィルムレジストを剥離する。これにより、銅箔に回路パターンを形成することができる。
本実施形態では、プリント配線板に、更に絶縁層及び/又は導体層を積層させ、多層プリント配線板を得ることもできる。多層プリント配線板の内層には、回路基板を有していてもよい。本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔における絶縁性樹脂層は、多層プリント配線板の絶縁層及び導体層の一つを構成することになる。
積層の方法は、特に限定されず、通常のプリント配線板の積層成形に一般に使用される方法を用いることができる。積層方法としては、例えば、多段プレス、多段真空プレス、ラミネーター、真空ラミネーター、及びオートクレーブ成形機が挙げられる。積層時の温度は、特に限定されないが、例えば、100℃以上300℃以下である。積層時の圧力は、特に限定されないが、例えば、0.1kgf/cm以上100kgf/cm以下(約9.8kPa以上約9.8MPa以下)である。積層時の加熱時間は、特に限定されないが、例えば、30秒~5時間である。また、必要に応じて、例えば、150~300℃の温度範囲で後硬化を行い、硬化度を調整してもよい。
[半導体素子搭載用基板]
上述のように、本実施形態の積層体は半導体素子搭載用基板として用いることができる。半導体素子搭載用基板は、例えば、金属箔張積層板に本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔を積層させ、得られた積層体の表面又は片面における銅箔をマスキング及びパターニングして回路パターンを形成することで作製される。マスキング及びパターニングは、プリント配線板の製造において行われる公知のマスキング及びパターニングを用いることができ、特に限定されないが、前述のサブトラクティブ法によって、回路パターンを形成することが好ましい。回路パターンは、積層体の片面にだけ形成されてもよく、両面に形成されてもよい。
[多層コアレス基板(多層プリント配線板)]
本実施形態の積層体は、コアレス基板とすることができる。コアレス基板の一例として、多層コアレス基板が挙げられる。多層コアレス基板は、例えば、第1の絶縁層と、第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と、複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層とを有し、第1の絶縁層及び第2の絶縁層が、それぞれ、本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔における絶縁性樹脂層の硬化物を有する。多層コアレス基板の具体例について図2を用いて説明する。図2は、本実施形態における多層コアレス基板の一例を示す模式図である。図2に示す多層コアレス基板10は、第1の絶縁層11と、第1の絶縁層11の片面方向(図示下面方向)に積層された2つの第2の絶縁層12を含み、第1の絶縁層11及び2つの第2の絶縁層12は、それぞれ1つの本実施形態の絶縁性樹脂層付き銅箔における絶縁性樹脂層を用いて形成されている。また、図2に示す多層コアレス基板10は、複数の絶縁層(絶縁層11及び12)の各々の間に配置された第1の導体層13、及び、それらの複数の絶縁層(絶縁層11及び12)の最外層に配置された第2の導体層13からなる複数の導体層を有する。
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
[実施例1]
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(製品名:KAYAHARD GPH-103、水酸基当量:231g/eq.、日本化薬(株)製)36質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(製品名:NC-3000-FH、日本化薬(株)製、エポキシ当量:320g/eq.)39質量部、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂(製品名:HP-9900、エポキシ当量:274g/eq.、DIC(株)製)7質量部、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(製品名:BMI-70、ケイ・アイ化成(株)製)18質量部、球状フィラーとしてのスラリーシリカ1(製品名:SC2050-MB、平均粒径0.7μm、アドマテックス(株)製)200質量部、高分子化合物としてのシリコーン複合パウダー(製品名:KMP-600、日信化学(株)製)20質量部、ガラス短繊維としてのEガラスミルドファイバー(製品名:EFDE50-31、セントラルグラスファイバー(株)製)40質量部、スチレンブタジエンゴム(製品名:JSR TR2003、JSR(株)製)5質量部、湿潤分散剤1(製品名:DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株)製)1質量部、湿潤分散剤2(製品名:DISPERBYK-111、ビックケミー・ジャパン(株)製)2質量部、シランカップリング剤(製品名:KBM-403、信越化学(株)製)1質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.5質量部を配合して混合し、その後メチルエチルケトンで希釈して樹脂組成物の溶液であるワニスを得た。
このワニスを、メチルエチルケトンでワニス100質量部に対する有機溶剤の含有量が130質量部になるよう更に希釈した後、グラビアコーターによって600mm幅、12μm厚の銅箔(製品名:3EC-VLP、三井金属鉱業(株)製)のマット面側に塗布して塗布膜を得た。次いで、塗布膜を130℃で5分間加熱乾燥することによって、絶縁性樹脂層の厚さが20μmの絶縁性樹脂層付き銅箔を得た。下記のようにして測定したガラス短繊維の平均繊維長は55μm、平均繊維径は6.13μmであった。また、下記のようにして測定した絶縁性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)は0.3μmであった。
〔平均繊維長の測定〕
ガラス短繊維の平均繊維長を下記のようにして測定した。オリンパス社製の倒立顕微鏡を用い、100倍に拡大して反射光にてガラス短繊維を観察し、任意に100本のガラス短繊維を選択してそれぞれの繊維長を測定し、その算術平均値を平均繊維長として求めた。
〔平均繊維径の測定〕
ガラス短繊維の平均繊維径を下記のようにして測定した。電子顕微鏡(キーエンス株式会社製、製品名「VE-7800」)を用い、倍率1000倍で任意に50本のガラス短繊維を選択してそれぞれの繊維径を測定し、その算術平均値を平均繊維径として求めた。
〔算術平均粗さ(Ra)の測定〕
形状測定顕微鏡(レーザー顕微鏡、キーエンス株式会社製、製品名「VK-X210」)を用い、絶縁性樹脂層表面を対物レンズ倍率150倍(15型モニタ上倍率:3000倍)で撮影した。続いて、撮影した画像の中で任意に選択した長さ90μmの直線領域における高さ分布を画像処理により求め、算術平均粗さ(Ra)を算出した。
[実施例2]
実施例1と同様にして得たワニスを、メチルエチルケトンでワニス100質量部に対する有機溶剤の含有量が130質量部になるよう更に希釈した後、バーコーターによって350mm×250mm×12μm厚の銅箔(製品名:3EC-VLP、三井金属鉱業(株)製)のマット面側に塗布して1次塗布膜を得た(1回目の塗布)。次いで、1次塗布膜を風乾し、1回目の塗布方向に対して平面方向で90°の方向からもう一度、1次塗布膜上に上記ワニスをバーコーターによって塗布して2次塗布膜を得た(2回目の塗布)。得られた2次塗布膜を130℃で5分間加熱乾燥することによって、絶縁性樹脂層の厚さが20μmの絶縁性樹脂層付き銅箔を得た。上記のようにして測定したガラス短繊維の平均繊維長は55μm、平均繊維径は6.13μmであった。また、上記のようにして測定した絶縁性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)は0.5μmであった。
[比較例1]
実施例1と同様にして得たワニスを、メチルエチルケトンでワニス100質量部に対する有機溶剤の含有量が130質量部になるよう更に希釈した後、バーコーターによって350mm×250mm×12μm厚の銅箔(製品名:3EC-VLP、三井金属鉱業(株)製)のマット面側に塗布して塗布膜を得た。次いで、塗布膜を130℃で5分間加熱乾燥することによって、絶縁性樹脂層の厚さが20μmの絶縁性樹脂層付き銅箔を得た。上記のようにして測定したガラス短繊維の平均繊維長は55μm、平均繊維径は6.13μmであった。また、上記のようにして測定した絶縁性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)は0.4μmであった。
<物性測定評価>
各実施例及び比較例で得られた絶縁性樹脂層付き銅箔を用い、以下各々の項目に示す手順によって物性測定評価用のサンプルを作製し、機械特性(40℃における貯蔵弾性率)、反り量、及び伸縮率を測定評価した。
〔機械特性:弾性率〕
各実施例及び比較例で得られた絶縁性樹脂層付き銅箔2枚を絶縁性樹脂層が内側になるように重ねて配置し、圧力30kgf/cm、温度220℃で120分間の積層成形(熱硬化)を行い、絶縁層と銅箔とを有する銅箔張積層板を得た。得られた銅箔張積層板の絶縁層の厚さは、40μmであった。得られた銅箔張積層板をダイシングソーでサイズ5.0mm×20mmに切断後、表面の銅箔をエッチングにより除去し、測定用サンプルを得た。得られた測定用サンプルを用い、JIS C 6481:1996に準拠して動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント社製)でDMA法により、機械特性(40℃における貯蔵弾性率E’)を測定した。当該測定は、塗布方向に対する平行方向(表1の中のX)と、塗布方向に対する垂直方向(表1の中のY)とについて行い、それぞれ3回測定(n=3)した場合の平均値を測定値とした。結果を表1に示す。
〔反り量:バイメタル法〕
各実施例及び比較例で得られた絶縁性樹脂層付き銅箔2枚を絶縁性樹脂層が内側になるように重ねて配置し、圧力30kgf/cm、温度220℃で120分間の積層成形(熱硬化)を行い、銅箔張積層板を得た。銅箔張積層板における絶縁層の厚さは、40μmであった。次に、得られた銅箔張積層板の両面から銅箔をエッチングにより除去した。次いで、銅箔を除去した積層体の片面に、各実施例及び比較例で得られた絶縁性樹脂層付き銅箔1枚を、樹脂層同士が接するように更に配置し(以下、「2枚目に積層した絶縁性樹脂層付き銅箔」)、その上下両面に、銅箔(製品名:3EC-VLP、厚さ12μm)を配置し、圧力30kgf/cm、温度220℃で120分間の積層成形(熱硬化)を行い、再び銅箔張積層板を得た。さらに、得られた銅箔張積層板から銅箔(2枚目に積層した絶縁性樹脂層付き銅箔とは逆側の面の銅箔)をエッチングにより除去し、積層体を得た。そして、得られた積層体から、ワニスの塗布方向に対して平行方向が長辺となるサンプル(表1の中のX)、及び、その塗布方向に対して垂直方向が長辺となるサンプル(表1の中のY)を、それぞれ20mm×200mmの短冊状板で切り出した。各々のサンプルについて、2枚目に積層した絶縁性樹脂層付き銅箔の面を上にして、長尺方向両端の反り量の最大値を金尺にて測定し、その平均値をバイメタル法による「反り量」とした。結果を表1に示す。
〔伸縮率〕
各実施例及び比較例で得られた絶縁性樹脂層付き銅箔2枚を絶縁性樹脂層が内側になるように重ねて配置し、圧力30kgf/cm、温度220℃で120分間の積層成形(熱硬化を兼ねる)を行い、銅箔張積層板を得た。次に、得られた銅箔張積層板から150mm×150mmの正方形状板を切り出し、穴あけ加工機で、100mm間隔でφ1mmの穴を4カ所形成した。得られた穴について、座標測定器で塗布方向に対する平行方向の2穴間(表1の中のX)、及び、塗布方向に対する垂直方向の2穴間(表1の中のY)について、各2穴間距離を測定した。測定後、これら銅箔張積層板の両面から銅箔をエッチングにより除去した。その後、座標測定器で再度、各穴間距離を測定し、エッチング前後の穴間距離の比を「伸縮率」とした。結果を表1に示す。
<配向度(fp値)の測定>
各実施例及び比較例で得られた絶縁性樹脂層付き銅箔を、3cm×3cmとなるように切り出し試験片とした。次いで、試験片をスライドガラスで挟み、当該試験片の絶縁性樹脂層側の面を光学顕微鏡にて観察した。光学顕微鏡には、オリンパス社製の倒立顕微鏡を用い、100倍に拡大して反射光にてガラス短繊維を、1.5mmの測定領域で観察した。次いで、上記測定領域中に存在する、観察像において視認し得る全てのガラス短繊維(繊維数はm本とした。)について、後述する方法で設定した基準線に対する角度θ(i=1~m)を測定した。配向角度θとして、基準線に対して時計回りの方向の角度を測定し、0°以上180°未満の角度とした。角度θの測定後、設定された基準線に対する短繊維の角度θから、下記式(2)を用いて平面方向の配向度(fp)を算出した。結果を表1に示す。
fp=2×Σ(cosθ/m)-1 (2)
〔基準線の設定方法〕
基準線は下記の方法で決定した。まず、基準線を決定するに際し、第1の仮基準線pを選択し、測定領域内に存在する視認し得る全てのガラス短繊維m本の角度を測定した。第1の仮基準線pと各繊維との角度は、α(p)(i=1~m)で表した(この式中、角度α(p)は、配向角度θと同様に、第1の仮基準線pに対して時計回りの方向の角度であり、0°以上180°未満の角度とした)。第1の仮基準線pを用いた際の配向度(fp(p))を、下記式を用いて算出した。
fp(p)=2×Σ(cosα(p)/m)-1〔i=1、2、3、・・・、m〕
次に、第1の仮基準線pから時計回りに±1°ずつ、±90°となるまで回転させた複数の仮基準線(p+z、p-z(z=1~90))をとり、仮基準線p+z及び仮基準線p-zと、短繊維m本と、の角度をそれぞれ算出した。この場合の角度は、α(p+z)と、α(p-z)(i=1~m)で表した。回転させた仮基準線(p+z、p-z(z=1~90))と短繊維の配向度(fp(p±z))とは、下記式を用いて算出した。
fp(p±z)=2×Σ(cosα(p±z)/m)-1
(i=1、2、3、・・・、m)
このようにして、得られたfp(p)値及びfp(p±z)値のうち最大値が得られた場合に設定した仮基準線を、基準線Pとした。
Figure 0007479596000004
表1に示す結果からわかるように、配向度(fp)が0.60未満である実施例のサンプルは、配向度(fp)が0.60以上の比較例に対し、XY方向における各評価結果の差が小さいことが分かった。また、実施例のサンプルでは、平面方向における反り量(実施例2においてはX方向における反り量)が、比較例1に比して抑制されていることが分かった。
〔多層コアレス基板〕
図3に示される工程に従って、各実施例及び比較例で作製した絶縁性樹脂層付き銅箔を用いて多層コアレス基板を作製し、反り量を測定した。図3は、実施例における多層コアレス基板の作製工程の流れを示す概略図である。まず、図3(A)に示すように、支持体aとなるプリプレグ(製品名:GHPL-830NS SF70、三菱瓦斯化学株式会社製、厚さ:20μm)の両面に、キャリア付極薄銅箔b1(製品名:MT18Ex、三井金属鉱業(株)製、厚さ:5μm)のキャリア銅箔面をプリプレグ側に向けて配置した。さらに、各キャリア付き極薄銅箔b1上に、各サンプルに応じて、実施例1、実施例2又は比較例1で得られた絶縁性樹脂層付き銅箔(絶縁性樹脂層を「c1」、銅箔を「d」で示す。)を絶縁性樹脂層c1がキャリア付き極薄銅箔b1と接するように配置した。続いて、圧力30kgf/cm、温度220℃で120分間の積層成形を行い、図3(B)に示される銅箔張積層板を得た。
次いで、得られた銅箔張積層板上の銅箔dを、図3(C)示すように所定の配線パターンにエッチングして導体層d’を形成した。続いて、図3(D)に示すように導体層(d’)が形成された積層板の両面に、各サンプルに応じて、実施例1、実施例2又は比較例1において銅箔(3EC-VLP)を銅箔(製品名:MT18Ex、三井金属鉱業(株)、5μm)に変更した絶縁性樹脂層付き銅箔(樹脂層を「c2」、銅箔を「b2」で示す)を、銅箔b2が外側を向くように配置し、圧力30kgf/cm、温度230℃で120分間の積層成形を行って、図3(E)に示す銅箔張積層板を得た。
得られた銅箔張積層板に対し、図3(F)に示すように、支持体a(硬化した支持体用プリプレグ)に配置したキャリア付極薄銅箔b1のキャリア銅箔と極薄銅箔を剥離して、支持体aから2枚の積層板を剥離した。得られた各積層板の角部四カ所と、各辺の中心四カ所の反り量をそれぞれ測定し、平均値をコアレス基板の反り量とした。その結果、実施例1の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いた場合の反り量が0.4mm、実施例2の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いた場合の反り量が1.2mm、比較例1の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いた場合の反り量が2.1mmであった。それらの結果から、実施例の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いたコアレス基板は、比較例の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いたコアレス基板よりも反り量の発生が少ないことが分かった。
1…絶縁性樹脂層、2,2A,2B,2C…ガラス短繊維、10…多層コアレス基板,11…第1の絶縁層、12…第2の絶縁層、13…導体層、a…支持体、b1…キャリア付き極薄銅箔、c1,c2…樹脂層、d,b2…銅箔、d’…パターン。

Claims (22)

  1. 銅箔と、前記銅箔上に配置される絶縁性樹脂層と、を備える絶縁性樹脂層付き銅箔であって、
    前記絶縁性樹脂層は、熱硬化性樹脂と、球状フィラーと、平均繊維長が10μm以上300μm以下であるガラス短繊維と、を含み、
    前記絶縁性樹脂層の平面方向における前記ガラス短繊維の配向度(fp)が、0.60未満である、
    絶縁性樹脂層付き銅箔。
  2. 前記絶縁性樹脂層の厚さが、3μm以上50μm以下である、請求項1に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  3. 前記銅箔の厚さが、1μm以上18μm以下である、請求項1又は2に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  4. 前記ガラス短繊維の平均繊維径が、3.0μm以上15μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  5. 前記配向度(fp)が0.40以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  6. 前記絶縁性樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が2μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  7. 前記ガラス短繊維の含有量が、前記絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、5質量部以上450質量部以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  8. 前記ガラス短繊維が、ミルド化繊維である、請求項1~7のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  9. 前記球状フィラーの含有量が、前記絶縁性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  10. 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、フェノール樹脂、熱硬化変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ベンゾオキサジン化合物、有機基変性シリコーン化合物及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  11. プリント配線板又は半導体素子搭載用基板のビルドアップ材料用のコアレス基板の作製に用いられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  12. 前記コアレス基板が、3層コアレス基板である、請求項11に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔。
  13. 導体層と、請求項1~12のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いて形成された絶縁層と、が交互に積層されたビルドアップ層を有する積層体。
  14. 少なくとも1層の前記絶縁層の厚さが、4μm以上15μm未満である、請求項13に記載の積層体。
  15. 前記ビルドアップ層が複数の前記導体層と前記絶縁層とを有し、前記導体層が、各前記絶縁層の間と、前記ビルドアップ層の最外層の表面とに配置される、請求項13又は14に記載の積層体。
  16. 前記絶縁層を3層又は4層有する、請求項13~15のいずれか一項に記載の積層体。
  17. コアレス基板である、請求項13~16のいずれか一項に記載の積層体。
  18. 導体層表面に、請求項1~12のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂層付き銅箔を用いて絶縁層を形成することにより、前記導体層と前記絶縁層とが交互に積層されたビルドアップ層を形成する工程を有する、積層体の製造方法。
  19. 少なくとも1層の前記絶縁層の厚さが、4μm以上15μm未満である、請求項18に記載の積層体の製造方法。
  20. 前記ビルドアップ層が複数の前記導体層と前記絶縁層とを有し、前記導体層が、各前記絶縁層の間と、前記ビルドアップ層の最外層の表面とに配置される、請求項18又は19に記載の積層体の製造方法。
  21. 前記積層体が前記絶縁層を3層又は4層有する、請求項18~20のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
  22. 前記積層体がコアレス基板である、請求項18~21のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
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