以下、図面を参照して、実施形態に係る移動式クレーンについて説明する。
[移動式クレーン]
図1は、実施形態に係る移動式クレーン10を示す側面図であり、作業現場において吊り荷を吊り上げる吊り作業が行われるときの姿勢を示しており、起伏部材が起立状態にあるときの図である。図2は、図1の移動式クレーン10の機能的構成を示すブロック図である。
なお、図面に示される「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、「左」などの方向は、前記移動式クレーンの前記下部走行体11を基準とした方向である。図面における前後方向は、前記下部走行体11の前進後退方向である。具体的に、本実施形態では、前記クローラフレーム1の長手方向中央から後述のホイール4a(図3参照)に向かう方向を前方とし、前記クローラフレーム1の長手方向中央から後述のホイール4c(図3参照)に向かう方向を後方とする。前記左右方向は、上記の前後方向を基準に規定される。ただし、これらの前方及び後方を規定する方法は一例であり、上記の規定方法に限定されない。例えば、前記クローラフレーム1の長手方向中央から前記ホイール4aに向かう方向を後方とし、前記クローラフレーム1の長手方向中央から前記ホイール4cに向かう方向を前方としてもよい。
図1に示すように、クレーン10は、自走可能な下部走行体11と、この下部走行体11上に旋回中心軸C(図3、図4及び図10参照)の回りに旋回可能に搭載された上部旋回体12と、起伏部材と、マスト20と、上部旋回体12の後部に積載されたカウンタウエイト13と、少なくとも1つの物理量検出部90(図2参照)と、コントローラ100(図2参照)と、報知装置110(図2参照)と、を備えている。本実施形態では、前記起伏部材は、ブーム14と、ジブ17と、上部ストラット22と、下部ストラット21と、を含む。
前記ブーム14は、上部旋回体12に回動可能でかつ着脱可能に取り付けられている。図1に示されるブーム14は、いわゆるラチス型のブーム本体15と、基端部14Aと、先端部14Bとを有する。
前記ブーム本体15は、基端側部材15Aと、一又は複数(図例では2個)の中間部材15B,15Cと、先端側部材15Dとで構成される。前記基端側部材15Aは、上部旋回体12の前部に起伏方向に回動可能となるように連結される。前記中間部材15B,15Cは、その順に前記基端側部材15Aの先端に着脱可能に連結される。前記先端側部材15Dは前記中間部材15Cの先端に着脱可能に連結される。なお、中間部材15B,15Cは省略することが可能である。
前記ジブ17は、ブーム14の先端部に回動可能でかつ着脱可能に取り付けられている。ジブ17は、図例ではラチス型の構造を有する。ジブ17の基端部17Aは、ブーム14の先端部14Bに回動可能に連結されている。ジブ17の回動中心軸は、上部旋回体12に対するブーム本体15の回動中心軸と平行である。図1に示すように、ジブ17の先端部17Bは、当該先端部17Bが地面に接するときにジブ17を支えるとともに地面上で回転可能なローラ17Rを備えている。
前記上部ストラット22及び下部ストラット21は、ジブ17を回動させるために設けられている。上部ストラット22は、ブーム14の先端部14Bに回動可能に取り付けられている。下部ストラット21は、上部ストラット22の後方又は下方の位置でブーム14の先端部14Bに回動可能に取り付けられている。上部ストラット22及び下部ストラット21は、ブーム14の先端部14Bから着脱可能に構成されている。
前記上部旋回体12上には左右一対のバックストップ23が設けられる。これらのバックストップ23は、ブーム14が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で当該ブーム14の基端側部材15Aの左右両側部に当接し、この当接によって、前記ブーム14が強風等で後方に煽られるのを規制する。
前記下部ストラット21は、ブーム14の先端部14Bからブーム起立側(図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。この姿勢を保持する手段として、当該下部ストラット21とブーム14との間に左右一対のバックストップ25及び左右一対のストラットガイライン26が介在する。バックストップ25は、先端側部材15Dと下部ストラット21の中間部位との間に介在し、下部ストラット21を下から支える。ガイライン26は下部ストラット21の先端部21Bと基端側部材15Aとを結ぶように張設され、その張力によって下部ストラット21の位置を規制する。
前記上部ストラット22は、ジブ17と連動して回動するようにこのジブ17と連結される。具体的に、上部ストラット22の先端部22Bとジブ17の先端部17Bとを結ぶように左右一対のジブガイライン28が張設される。従って、この上部ストラット22の回動駆動によってジブ17も回動駆動される。
前記マスト20は、基端部20A及び回動端部20Bを有する。マスト20の基端部20Aが上部旋回体12に回動可能に連結される。マスト20の回動軸は、ブーム14の回動軸と平行でかつ当該ブーム14の回動軸のすぐ後方に位置している。すなわち、このマスト20はブーム14の起伏方向と同方向に回動可能である。一方、このマスト20の回動端部20Bは左右一対のブーム用ガイライン24を介してブーム14の先端部14Bに連結される。この連結は、マスト20の回動とブーム14の回動とを連携させる。
前記クレーン10には、各種ウインチが搭載される。具体的には、ブーム14を起伏させるためのブーム起伏ウインチ30と、ジブ17を起伏方向に回動させるためのジブ起伏ウインチ32と、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻ウインチ34及び補巻ウインチ36とが搭載される。
前記ブーム起伏ウインチ30は、ブーム起伏ロープ38の巻取り及び繰出しを行う。そして、この巻取り及び繰出しによりマスト20が回動するようにブーム起伏ロープ38が配索される。具体的に、マスト20の回動端部20B及び上部旋回体12の後端部にはそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック40,42が設けられ、ブーム起伏ウインチ30から引き出されたブーム起伏ロープ38がシーブブロック40,42間に掛け渡される。従って、ブーム起伏ウインチ30がブーム起伏ロープ38の巻取りや繰出しを行うことにより、両シーブブロック40,42間の距離が変化し、これによってマスト20さらにはこれと連動するブーム14が起伏方向に回動する。
前記ジブ起伏ウインチ32は、ジブ起伏ロープ44の巻取り及び繰出しを行う。そして、この巻取りや繰出しによって上部ストラット22が回動するようにジブ起伏ロープ44が配索される。具体的には、下部ストラット21の長手方向中間部にはガイドシーブ46が設けられるとともに、この下部ストラット21の先端部21B及び上部ストラット22の先端部22Bにそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたスプレッダ47,48(シーブブロック)が設けられる。ジブ起伏ウインチ32から引き出されたジブ起伏ロープ44はガイドシーブ46に掛けられ、かつ、スプレッダ47,48間に掛け渡される。従って、ジブ起伏ウインチ32によるジブ起伏ロープ44の巻取りや繰出しは、両スプレッダ47,48間の距離を変え、上部ストラット22さらにはこれと連動するジブ17を起伏方向に回動させる。
前記主巻ウインチ34は、主巻ロープ50による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この主巻について、下部ストラット21の基端部21Aの近傍部位、上部ストラット22の基端部22Aの近傍部位及びジブ17の先端部17Bには、それぞれ主巻ガイドシーブ52,53,54が回転可能に設けられている。さらに、主巻用ガイドシーブ54に隣接する位置(ジブ17の先端部17B)には、ジブポイントシーブ56が設けられている。主巻ウインチ34から引き出された主巻ロープ50は、主巻ガイドシーブ52,53,54に順に掛けられ、かつ、ジブポイントシーブ56と、吊荷用の主フック57に設けられたフックシーブ58と、の間に掛け渡される。従って、主巻ウインチ34が主巻ロープ50の巻取りや繰出しを行うと、両シーブ56,58間の距離が変わって主フック57の巻上げ及び巻下げが行われる。
同様にして、前記補巻ウインチ36は、補巻ロープ60による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻については、主巻ガイドシーブ52,53,54とそれぞれ同軸に補巻用ガイドシーブ62,63,64が回転可能に設けられている。補巻用ガイドシーブ64に隣接する位置(ジブ17の先端部17B)には、ローラ17R(補助シーブ)が回転可能に設けられている。当該補助シーブには、補巻ロープ60をかけ回される。すなわち、補巻ウインチ36から引き出された補巻ロープ60は、補巻ガイドシーブ62,63,64に順に掛けられ、かつ、当該補助シーブから垂下される。従って、補巻ウインチ36が補巻ロープ60の巻取りや繰出しを行うと、補巻ロープ60の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、又は巻下げられる。
前記物理量検出部90は、クレーン10の特定作業においてブーム14を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するためのものである。前記物理量検出部90は、前記下部走行体11における後述の反力受け部が地面から受ける反力の変化に対応して変化する物理量を検出するように構成される。前記物理量としては、後述するクローラフレーム1に生じるひずみ、後述する油圧シリンダのヘッド側室及びロッド側室の少なくとも一方の圧力などが例示されるが、これらに限られない。前記物理量検出部90により検出される前記物理量に関する信号は、前記コントローラ100に入力される。
前記特定作業は、前記クレーン10が倒れようとする方向に大きなモーメントが生じる作業である。前記特定作業は、例えば、前記組立作業及び前記分解作業を含む。また、前記特定作業は、例えば、前記過負荷試験を行うための作業などを含む。以下では、前記特定作業が前記組立作業及び前記分解作業である場合について説明する。
図2に示す報知装置110は、物理量検出部90により検出される物理量に基づいたクレーン10の安定性に関する安定性情報をオペレータに対して報知するための装置である。前記安定性情報は、例えば、前記クレーン10における前後のバランスに関する情報を含む。
報知装置110は、例えば、音を発するための発音部、光を発するための発光部及び文字、図形などを表示するための表示部の少なくとも1つを有している。報知装置110は、オペレータが認識しやすい場所、具体的には例えば上部旋回体12のキャブ12Aなどに配置される。
前記発音部は、聴覚を通じてオペレータが認識できる音を発する機能を有する。例えば、前記発音部は、図略の警報ブザー、スピーカーなどを有する。前記発光部は、視覚を通じてオペレータが認識できる光を発する機能を有する。例えば、前記発光部は、図略の表示灯、回転灯、信号灯などを有する。前記表示部は、視覚を通じてオペレータが認識できる文字、図形などを表示する機能を有する。例えば、前記表示部は、図略のディスプレイを有する。
前記コントローラ100は、中央処理装置(CPU)、種々の制御プログラムを記憶するROM、CPUの作業領域として使用されるRAMなどから構成される。図2に示すように、コントローラ100は、演算部101と、安定性判定部102と、報知制御部103と、動作制御部104と、を機能として備える。
前記演算部101は、パラメータ演算部と、比率演算部と、を含む。演算部101の前記パラメータ演算部は、物理量検出部90により検出される物理量に基づいてクレーン10が前記起伏部材の重量(前記起伏部材に作用する重力)に起因して前記クレーン10を倒そうとするモーメントを演算する。前記演算部101の前記比率演算部は、後述する第1のモーメントMfに対応する第1のパラメータと後述する第2のモーメントMbに対応する第2のパラメータの比率を演算する。本実施形態では、第1のパラメータは、前記第1のモーメントMfであり、前記第2のパラメータは、前記第2のモーメントMbである。ただし、第1のパラメータは、第1のモーメントMfの変化に対応して変化するパラメータであればよいので、必ずしも第1のモーメントMfでなくてもよい。同様に、第2のパラメータは、第2のモーメントMbの変化に対応して変化するパラメータであればよいので、必ずしも第2のモーメントMbでなくてもよい。
前記安定性判定部102は、前記物理量検出部により検出される前記物理量に基づいて前記安定性を判定する。
前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に関する前記安定性情報を前記報知装置110においてオペレータに対して報知するための報知指令を出力する。前記報知装置110は、前記報知制御部103から出力された前記報知指令に基づいて前記安定性情報をオペレータに報知する。
前記動作制御部104は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する。前記ブーム起伏ウインチ30及び前記ジブ起伏ウインチ32のそれぞれは、前記動作制御部104から出力された前記動作指令に基づいて動作が制御される。具体的に、これらのウインチ30,32のそれぞれは、例えば、前記動作指令に基づいて、前記ロープの巻取り又は繰出しの動作を停止し又は減速する。
すなわち、クレーン10の油圧回路が備えるブームウインチ制御弁及びジブウインチ制御弁のそれぞれが、前記動作制御部104から出力された前記動作指令に応じて動作する。これにより、前記ブーム起伏ウインチ30及び前記ジブ起伏ウインチ32に油圧ポンプから供給される作動油の流量及び方向が制御される。その結果、これらのウインチ30,32のそれぞれは、前記動作指令に基づいて、前記ロープの巻取り又は繰出しの動作を停止し又は減速する。
なお、上述の構成は、下記の第1~第7の実施形態に共通する。以下では、第1~第7の実施形態に係る移動式クレーン10について順に説明する。
[第1の実施形態]
図3は、第1の実施形態に係るクレーン10の下部走行体11を示す平面図であり、図4は、当該下部走行体11を示す側面図である。図5は、図1のクレーン10の下部走行体11を構成するクローラフレーム1を示す側面図である。図6は、図3において右側のクローラ走行装置3におけるクローラフレーム1の前端部を矢印VIの方向に見たときの側面図である。
図3及び図4に示すように、下部走行体11は、クローラ式である。前記下部走行体11は、一対のクローラ走行装置3,3と、上部旋回体12が取り付けられる旋回ベアリング2aと、前記一対のクローラ走行装置3,3を連結するとともに旋回ベアリング2aを支持する中央フレーム2と、を備える。前記一対のクローラ走行装置3,3は、第1のクローラ走行装置3と第2のクローラ走行装置3とにより構成される。
前記中央フレーム2は、当該旋回ベアリング2aの下方において当該旋回ベアリング2aを支持するカーボディ2dと、カーボディ2dの前方において左右方向に延びる前部アクスル2bと、カーボディ2dの後方において左右方向に延びる後部アクスル2cと、を有する。前部アクスル2bの一端(右端)と後部アクスル2cの一端(右端)には第1クローラ走行装置3が取付けられており、前部アクスル2bの他端(左端)と後部アクスル2cの他端(左端)には第2クローラ走行装置3が取付けられている。
前記第1クローラ走行装置3と前記第2クローラ走行装置3は、複数の構成部材の配置が左右逆向きである以外は同様の構造を有する。これらのクローラ走行装置3は、前後方向にそれぞれ延びるとともに左右方向に間隔をおいて配置されている。各クローラ走行装置3は、クローラフレーム1と、一対のホイール4a,4c(第1のホイール4a及び第2のホイール4c)と、駆動機構4bと、クローラ7と、複数の上部ローラ5と、複数の下部ローラ6とを有する。前記第1クローラ走行装置3の前記クローラフレーム1、前記第2クローラ走行装置3の前記クローラフレーム1、及び前記中央フレーム2は、フレームユニットを構成する。
前記駆動機構4bは、不図示の油圧式モータ(走行モータ)と、走行減速機とを含む。クローラ7は、多数のシューが連結されて構成されている。クローラ7は、前記一対のホイール4a,4cの間に架け渡されることにより一対のホイール4a,4cに無端状(輪状)に支持されて周回移動可能に構成された部材である。本実施形態では、第1のホイール4aは、ドライブタンブラ4aによって構成され、第2のホイール4cは、アイドラ4cによって構成されている。
図5に示すように、クローラフレーム1は、前後方向に延びる形状を有する。クローラフレーム1は、フレーム本体1Aと、タンブラブラケット1B(ブラケット)とを含む。前記タンブラブラケット1Bは、前記クローラフレーム1の端部(前端部)を構成する。前記フレーム本体1Aは、前後方向に延びる形状を有し、後側の端部である基端部1A1と、前側の端部である先端部1A2とを有する。タンブラブラケット1Bは、フレーム本体1Aの先端部1A2に接続された基端部1B1(後側の端部)と、前側の端部である先端部1B2とを有し、当該基端部1B1から当該先端部1B2まで前後方向に延びている。タンブラブラケット1Bの基端部1B1は、フレーム本体1Aの先端部1A2に例えば溶接などの接合手段を用いて接合されている。タンブラブラケット1Bは、ドライブタンブラ4a及び駆動機構4bを支持している。
図3、図5及び図6に示すように、前記タンブラブラケット1Bは、ブラケット本体P1と、外周部P2とを有する。前記ブラケット本体P1は、ドライブタンブラ4aの回転軸CBに略直交する板状の部分であって駆動機構4bに対して左右方向に対向する部分である。前記外周部P2は、前記回転軸CBに略平行な板状の部分であってブラケット本体P1の外周に沿って延びる部分である。外周部P2は、駆動機構4bの周囲の一部又は全部を覆っている。
前記ドライブタンブラ4aは、クローラフレーム1の前端部を構成するタンブラブラケット1Bに回転可能に支持されている。ドライブタンブラ4aは、前記走行モータから前記走行減速機に伝わった回転力によって回転してクローラ7を駆動するホイールである。前記ドライブタンブラ4aは、反力受け部を構成する。
前記反力受け部は、下部走行体11の一部を構成する部分であり、前記一対のクローラ走行装置3,3が地面に接した状態で前記旋回中心軸Cに対してブーム方向にずれた位置において地面から反力を受ける部分である。前記ブーム方向は、前記ブーム14が前記上部旋回体12から延びる方向の水平成分の方向である。第1の実施形態では、前記ブーム方向は、図4及び図5に示す第1の方向D1(前方)である。前記クローラフレーム1の前端部を構成する前記タンブラブラケット1Bは、前記旋回中心軸Cに対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
前記アイドラ4cは、クローラフレーム1の基端部(フレーム本体1Aの基端部1A1)において回転可能に支持されている。アイドラ4cは、ドライブタンブラ4aに対して前後方向の反対側においてクローラ7を案内するホイールである。
前記複数の上部ローラ5は、クローラフレーム1の上部においてそれぞれ回転可能に支持されている。複数の上部ローラ5は、ドライブタンブラ4aとアイドラ4cとの間において前後方向に間隔をおいて配置されてクローラ7を案内する。
前記複数の下部ローラ6は、クローラフレーム1の下部においてそれぞれ回転可能に支持されている。複数の下部ローラ6は、ドライブタンブラ4aとアイドラ4cとの間において前後方向に間隔をおいて配置されてクローラ7を案内する。以下では、複数の下部ローラ6のうちドライブタンブラ4a(第1ホイール4a)に最も近いものを第1の下部ローラ6Aと称する。
[物理量検出部]
前記物理量検出部90は、前記起立動作及び前記倒伏動作などの動作が行われる前記組立作業及び前記分解作業において、前記ドライブタンブラ4a(前記反力受け部)が前記クローラ7を介して地面から受ける前記反力に起因して一対の前記クローラフレーム1,1のそれぞれに生じるひずみを前記物理量として検出することができるように構成される。すなわち、前記物理量検出部90は、クレーン10が前記起伏部材の重量によって倒れようとする方向のモーメントの変化に対応して変化するひずみを検出可能なひずみ検出部である。前記起立動作は、地面に対するブーム14の傾斜角度を大きくする動作であり、前記倒伏動作は、前記傾斜角度を小さくする動作である。
第1の実施形態では、クレーン10は、複数の物理量検出部90を備える。前記複数の物理量検出部90は、第1のクローラ走行装置3のクローラフレーム1(第1のクローラフレーム1)に生じるひずみを検出可能な第1の物理量検出部90と、第2のクローラ走行装置3のクローラフレーム1(第2のクローラフレーム1)に生じるひずみを検出可能な第2の物理量検出部90と、を備える。第1の物理量検出部90と第2の物理量検出部90は同じ構造を有し、対応するクローラフレーム1に設けられる位置も同じであるため、以下では、主に一方の物理量検出部90についてのみ説明する。
図3及び図4に示すように、前記クローラフレーム1のうち、前記ひずみが前記物理量検出部90によって検出される部分の前後方向の位置(検出位置)は、前記第1の下部ローラ6Aの回転軸に対応する位置に対して前記ブーム方向D1にずれた位置である。前記検出位置は、好ましくは、前記第1の下部ローラ6Aの回転軸CAに対応する位置と、前記ドライブタンブラ4aの前記回転軸CBに対応する位置との間の範囲Rに含まれる。図5及び図6に示す具体例では、前記物理量検出部90は、前記ドライブタンブラ4aを支持する前記クローラフレーム1の前記タンブラブラケット1Bに生じるひずみを検出することができるように構成される。
前記物理量検出部90は、クローラフレーム1のひずみを検出するための少なくとも1つのデバイスによって構成される。当該デバイスとしては、例えば金属ひずみゲージ、半導体ひずみゲージなどのひずみゲージを用いることができる。ひずみゲージは、クローラフレーム1の表面に貼り付けるなどの方法により取り付けられる。ただし、物理量検出部90を構成するデバイスは、ひずみゲージに限られず、クローラフレーム1のひずみを検出できる他のデバイスを用いることもできる。前記他のデバイスとしては、例えばピン型ロードセルなどのロードセルを例示できる。
前記金属ひずみゲージは、例えば薄い絶縁体上にジグザグ形状にレイアウトされた金属の抵抗体(金属箔)が取り付けられた構造を有し、当該抵抗体の変形に伴う電気抵抗の変化を検出する。測定された電気抵抗の変化はクローラフレーム1のひずみ量に換算される。半導体ひずみゲージは、例えば半導体の電気抵抗率が応力により変化するピエゾ抵抗効果を利用したひずみゲージである。
図5及び図6に示すように、第1の実施形態では、前記物理量検出部90は、各クローラフレーム1のタンブラブラケット1Bの基端部1B1に設けられている。各物理量検出部90は、複数のひずみゲージ(図例では、第1ひずみゲージ90A,第2ひずみゲージ90B)によって構成されている。
図6に示すように、第1ひずみゲージ90Aは、クローラフレーム1の前端部における上部に設けられ、第2ひずみゲージ90Bは、クローラフレーム1の前端部における下部に設けられている。具体的には、第1ひずみゲージ90Aは、タンブラブラケット1Bの基端部1B1における上部に設けられ、第2ひずみゲージ90Bは、タンブラブラケット1Bの基端部1B1における下部に設けられている。
図6において二点鎖線で囲まれた領域Tは、互いに連結されるフレーム本体1Aの先端部1A2及びタンブラブラケット1Bの基端部1B1を構成する領域である。当該領域Tは、フレーム本体1Aとタンブラブラケット1Bとの連結部分及びそれに隣接した隣接部分である。当該領域Tは、上下方向に板状に延びるウェブ部S1と、当該ウェブ部S1の上端が接続されて前後方向に板状に延びる上フランジ部S2と、前記ウェブ部S1の下端が接続されて前後方向に板状に延びる下フランジ部S3と、を含む構造(I型の断面構造)を有する。
前記ウェブ部S1は、フレーム本体1Aの先端部1A2の一部及びタンブラブラケット1Bの基端部1B1の一部の少なくとも一方によって構成されている。上フランジ部S2は、フレーム本体1Aの先端部1A2の一部及びタンブラブラケット1Bの基端部1B1の一部によって構成されている。下フランジ部S3は、フレーム本体1Aの先端部1A2の一部及びタンブラブラケット1Bの基端部1B1の一部によって構成されている。
第1の実施形態では、第1ひずみゲージ90Aは、上フランジ部S2を構成するタンブラブラケット1Bの基端部1B1(上述したタンブラブラケット1Bの外周部P2の上部)に設けられている。第2ひずみゲージ90Bは、下フランジ部S3を構成するタンブラブラケット1Bの基端部1B1(上述したタンブラブラケット1Bの外周部P2の下部)に設けられている。
前記物理量検出部90は、クレーン10の前記起立動作及び前記倒伏動作が行われる前記組立作業及び前記分解作業においてクローラフレーム1に生じるひずみを検出する。前記物理量検出部90によって検出されたひずみに関する信号は、図2に示すコントローラ100に入力される。そして、演算部101は、当該物理量に基づいて、例えば、クレーン10が前記ブーム方向D1に倒れようとする方向のモーメントを演算する。前記安定性判定部102は、前記物理量検出部90により検出される前記物理量、具体的には、前記演算部101により演算される前記モーメントに基づいて前記安定性を判定する。前記報知制御部103は、前記安定性に関する安定性情報(クレーン10における前後のバランスに関する情報)が音、光、文字、図形などによりオペレータに報知されるように報知装置110を制御する。前記動作制御部104は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する。
[組立作業及び分解作業]
次に、クレーン10の組立作業及び分解作業について説明する。なお、以下に説明する組立作業及び分解作業の基本的な流れは、第1~第7の実施形態に共通する。
図8~図13は、図1の移動式クレーンの組立作業時又は分解作業時の姿勢を概略的に示す側面図である。図8は、起伏部材が倒伏状態にあるときの図であり、図9及び図10は、ブーム14に対するジブ17の相対角度が大きい状態で起伏部材が起立動作又は倒伏動作をするときの図である。図11は、モーメントのつり合い位置が転倒支点に近づいた状態を示す図である。図12及び図13は、ブーム14に対するジブ17の相対角度が小さい状態で起伏部材が起立動作又は倒伏動作をするときの図である。なお、図8~図13においては、クレーン10が受けるモーメントの説明をする上で必要な構成要素のみを図示し、一部の構成要素の図示を省略している。
図10及び図13に示すように、クレーン10では、旋回中心軸Cを基準としたときに、ブーム14及びジブ17を含む起伏部材が前記ブーム方向D1(前記第1の方向D1)に延びており、前記ブーム方向D1とは反対の第2の方向D2にカウンタウエイト13が配置されている。以下では、クレーン10に作用するモーメントについては、主として、上部旋回体12の旋回中心軸Cを基準として説明する。
前記クレーン10が前記ブーム方向D1に倒れようとするモーメント(以下、モーメントMtという。)は、第1のモーメントMfと第2のモーメントMbとにより決まると考えることができる。前記第1のモーメントMfは、主として前記起伏部材に作用する重力に起因して発生するモーメントである。言い換えると、前記第1のモーメントMfは、前記起伏部材の重量と姿勢に起因して発生するモーメントである。前記第2のモーメントMbは、主として前記カウンタウエイトに作用する重力に起因して発生するモーメントである。前記第2のモーメントMbは、前記カウンタウエイト13の重量と上部旋回体12の一部の重量に起因して発生するモーメントである。前記第2のモーメントMbは、前記第1のモーメントMfに抗するモーメントであって前記クレーン10が倒れるのを阻止しようとするモーメントである。すなわち、前記モーメントMtは、第1のモーメントMfから第2のモーメントMbを引くことにより得られる(Mt=Mf-Mb)。
図10及び図13に示すように、カウンタウエイト13の積載量及び旋回中心軸Cからの距離を変更しない場合には第2のモーメントMbに係る重心位置Gbがほぼ変わらないため、第2のモーメントMbはほぼ一定である。すなわち、主としてカウンタウエイト13の重量が多くの割合を占める重量(旋回中心軸Cより前記方向D2の部分の重量)をWbとするとき、第2のモーメントMbは、重量Wbと旋回中心軸Cから重心位置Gbまでの距離Lbとの積により表される(Mb=Wb×Lb)。従って、前記第2のモーメントMbは、予め算出されて前記コントローラ100の記憶部に記憶されていてもよい。また、前記第2のモーメントMbは、前記組立作業及び前記分解作業において、前記重量Wb及び前記距離Lbに基づいて前記演算部101の前記パラメータ演算部によって演算されてもよい。
一方、ブーム14及びジブ17を含む起伏部材の姿勢によって旋回中心軸Cから起伏部材の重心位置Gfまでの距離L(例えば図10に示す距離L1、図13に示す距離L2など)が変わるため、第1のモーメントMfは起伏部材の姿勢に応じて変動する。当該重心位置Gfは、主に、地面に対するブーム14の傾斜角度と、ブーム14に対するジブ17の相対角度と、により決まる。すなわち、起伏部材の重量をWatとするとき、第1のモーメントMfは、重量Watと旋回中心軸Cから重心位置Gfまでの距離L(例えば距離L1、距離L2など)との積により表される(Mf=Wat×L)。前記第1のモーメントMfは、前記組立作業及び前記分解作業において、前記重量Wat及び前記距離Lに基づいて前記演算部101の前記パラメータ演算部によって演算される。
例えば図13に示すように、地面に対するブーム14の傾斜角度が比較的大きくなるまで上部旋回体12に対してブーム14がある程度起立した状態で、かつ、ブーム14に対するジブ17の相対角度が比較的小さい状態(相対角度θ2)においては、旋回中心軸C上の中心周りの第1のモーメントMfと第2のモーメントMbがほぼ等しくなる場合がある。この略均等状態では、前記モーメントMtはほぼゼロになる。そして、クレーン10の重量は、クローラ7の前後方向の全体にわたって概ね均等に受け持たれることになる。
上記の略均等状態と比較して、例えば図10に示すように、地面に対するブーム14の傾斜角度が比較的小さくなるまで上部旋回体12に対してブーム14がある程度倒伏した状態で、かつ、ブーム14に対するジブ17の相対角度が比較的大きい状態(相対角度θ1)においては、起伏部材の重心位置Gfが前記ブーム方向D1に移動するので、旋回中心軸C上の中心周りの第1のモーメントMfが大きくなる。このようにモーメントが前記ブーム方向D1に偏った偏り状態では、モーメントMtは、前記略均等状態よりも大きい正の値となる(Mt=Mf-Mb>0)。
ここで、モーメントを計算するためのモーメントの前記中心を旋回中心軸C上の位置から前後方向に移動させ、その移動後の中心位置を基準として前後のモーメントを計算したときに、前後のモーメントが同じ大きさとなる位置を「モーメントのつり合い位置」と定義する。また、図10、図11及び図13に示すように、クローラフレーム1のうち、前後方向の位置がドライブタンブラ4aの回転軸CBに対応する部位Sを転倒支点Sと称する。
上述の略均等状態(例えば図13に示す状態)では、モーメントのつり合い位置P1は旋回中心軸Cの位置にほぼ一致する。一方、前記偏り状態(例えば図10に示す状態)では、モーメントのつり合い位置P2は旋回中心軸Cから前記ブーム方向D1に移動する。図10に示すようにモーメントMtが正の値となり、モーメントのつり合い位置が旋回中心軸Cから前記ブーム方向D1にずれた位置P2に移動したとしても、直ちにクレーン10が転倒するわけではない。すなわち、前記偏り状態は、モーメントMtによりクレーン10が前記ブーム方向D1に倒れようとするのを下部走行体11のクローラフレーム1が抵抗している状態である。
図10に示すような偏り状態では、モーメントのつり合い位置P2においてモーメントMtがゼロ(Mt=0)になっている。この偏り状態においてクローラフレーム1に作用する曲げモーメントは、主に、つり合い位置P2から転倒支点Sまでの部分に作用する。このように偏り状態では、クローラフレーム1の全体ではなくクローラフレーム1の前端部(つり合い位置P2から転倒支点Sまでの部分)がモーメントMtに抗しており、クローラフレーム1の前端部の曲げ剛性によってクレーン10の転倒が妨げられて姿勢が維持されている。
例えば図11に示すように、起伏部材の重心位置Gfが図13に示す位置よりもさらに第1方向D1に移動してクレーン10が転倒する直前の状態では、モーメントのつり合い位置P3が転倒支点Sとほぼ一致する。この転倒直前状態では、一対のクローラフレーム1の前端部のそれぞれがモーメントMtのほぼ全てを受けることになる。なお、図11中の円形の矢印Mrは、クローラフレーム1の前端部が前記モーメントMtに抗している状態を示している。
したがって、前記物理量検出部90が、図10に示す略均等状態、図13に示す偏り状態、図11に示す転倒直前状態などの種々の状態に応じたクローラフレーム1の前端部のひずみを検出し、前記演算部101の前記パラメータ演算部が、検出されたひずみに基づいてクローラフレーム1の前端部が受けるモーメントを演算することができれば、前記安定性判定部102は、前記モーメントに基づいてクレーン10が取り得る種々の状態を判定できる。
第1の実施形態では、物理量検出部90をクローラフレーム1の前端部、すなわち上述した範囲R内の部位に設けることにより、前記偏り状態においてクローラフレーム1の前端部に生じるひずみを効果的に検出できる。これにより、クレーン10の前後方向のバランスがどのような状態にあるかについての指標を得ることができる。
第1の実施形態では、上述したように、物理量検出部90によって検出されるクローラフレーム1の前端部に生じるひずみに関する情報が得られるので、オペレータが煩雑な作業を行わなくても、クレーン10の組立作業及び分解作業において起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要なクレーン10の状態に関する情報を検出することができる。そして、検出された当該情報は、クレーン10が安全に起立動作及び倒伏動作するために利用される。具体的には次の通りである。
クレーン10を組み立てる組立作業においては、図8に示すように、ブーム14及びジブ17は、地面GRに略平行な姿勢で倒伏された状態(倒伏状態)で上部旋回体12に対して取り付けられる。そして、前記吊り作業を行う際には、地面GRに対するブーム14の傾斜角度が次第に大きくなる起立動作によってブーム14の姿勢が前記倒伏状態から前記起立状態(図1に示す状態)に変えられる。
上記のように倒伏状態から起立状態に起伏部材を変位させる場合、まず、ジブ17の先端部17Bに設けられたローラ17Rが地面GRに接した状態でブーム14の傾斜角度を次第に大きくする。この動作においてはブーム14に対するジブ17の相対角度が次第に小さくなる。
例えば図9に示すように前記相対角度が角度θ1となった時点で、図10に示すように相対角度を角度θ1に維持した状態でブーム14の傾斜角度をさらに大きくすると、ジブ17の先端部17Bのローラ17Rは地面GRから離れるので、クレーン10には、モーメントMfが作用する。
このとき、コントローラ100の報知制御部103が報知装置110を制御することにより、物理量検出部90により出力される検出信号に基づいたクレーン10における前後のバランスに関する情報が報知装置110を介してオペレータに報知される。これにより、オペレータは、クレーン10における前後のバランスに関する前記安定性情報を、報知装置110を通じて得ることができる。例えば図10に示すクレーン10の状態が不安定状態であることをオペレータが認識すると、オペレータは、ブーム14の傾斜角度を再び小さくして例えば図9に示すようにジブ17の先端部17Bのローラ17Rを接地させる。そして、オペレータは、ジブ17の先端部17Bに設けられたローラ17Rが地面GRに接した状態でブーム14の傾斜角度を次第に大きくする。この動作においてはブーム14に対するジブ17の相対角度が次第に小さくなる(例えば図12に示す状態)。
例えば図12に示すように前記相対角度が角度θ2となった時点で、図13に示すように相対角度を角度θ2に維持した状態でブーム14の傾斜角度をさらに大きくすると、ジブ17の先端部17Bのローラ17Rは地面GRから離れるので、クレーン10には、モーメントMfが作用する。このときのモーメントつり合い位置P1は、旋回中心軸Cに近い位置にあるので、クレーン10の起伏部材を安全に起立動作させることができる。
なお、クレーン10を分解する分解作業は、上述した組立作業の動作の逆の動作をさせることによって安全に行われる。
[転倒モーメントの演算方法]
以下、クローラフレーム1の前端部に作用するモーメントの演算方法について具体的に説明する。
上述した図6に示すように、第1の実施形態では、フレーム本体1Aの先端部1A2及びタンブラブラケット1Bの基端部1B1、すなわち、フレーム本体1Aとタンブラブラケット1Bとの連結部分及び当該連結部分に対して前後方向に隣接する隣接部分は、ウェブ部S1、上フランジ部S2及び下フランジ部S3によって構成されるI型(H型)の断面形状を含む構造を有する。
起伏部材が前記起立動作及び前記倒伏動作をするときに一対のクローラフレーム1が上下方向の曲げ荷重を受けて一対のクローラフレーム1のそれぞれに曲げ変形が生じると、各クローラフレーム1の前端部における中立面(中立軸)よりも上部は圧縮されて縮み、中立面よりも下部は引っ張られて伸びる。
そして、各クローラフレーム1の上部及び下部のひずみは、中立面からの距離に比例して大きくなる。I型(H型)の断面構造において上下のフランジ部S2,S3は中立面からの距離が比較的大きい位置にあるので、上フランジ部S2及び下フランジ部S3では比較的大きなひずみ(曲げ応力)が発生する。したがって、第1の実施形態のように、物理量検出部90が上フランジ部S2及び下フランジ部S3に設けられることにより、比較的大きなひずみを検出することができる。
ここで、上フランジ部S2に発生するひずみをε1とし、下フランジ部S3に発生するひずみをε2とする。また、各クローラフレーム1の前端部における中立面から第1ひずみゲージ90Aまでの距離をr1とし、前記中立面から第2ひずみゲージ90Bまでの距離をr2とする。また、ひずみを計測する断面の断面2次モーメントをIとし、縦弾性係数をEとする。また、各クローラフレーム1の前端部において曲げモーメントのみにより生じる応力のうち、上側の応力をσmtとし、下側の応力をσmcとする。
なお、クローラフレーム1の前端部における曲げ変形の中立面(中立軸)は、当該前端部において上下方向の中央に位置するとは限らない。このため、上記の上側応力σmtと下側応力σmcは異なる場合がある。かかる場合、上側応力σmtと下側応力σmcの比(σmt:σmc)は、中立面からの距離の比(r1:r2)と同じである(σmt:σmc=r1:r2)。
また、クローラフレーム1にはクローラ7が弛まないような状態で巻き付けられている。このため、クローラフレーム1は、前後方向に圧縮力σn(軸力)を受けている。以上の前提を考慮したモーメントの演算方法は次の通りである。
図7は、クローラフレーム1の前端部(第1の実施形態では、タンブラブラケット1B)におけるひずみの計測対象の断面に生じる応力分布を模式的に示した図である。図7に示すように、当該応力分布は、曲げモーメントによる応力(σmt,σmc)と、上述した圧縮力σnとの和により得られる。
したがって、モーメントMを求めるために必要な曲げ応力σmtを求める式は次式(1)となる。
E×ε1-E×ε2=(σmt+σn)-(-σmc+σn)=σmt+σmc=σmt(1+r2/r1) ・・・(1)
上記式(1)より、次式(2)が得られる。
σmt=E(ε1-ε2)/(1+r2/r1) ・・・(2)
よって、クローラフレーム1の前端部に負荷されているモーメントMは、次式(3)の通りとなる。
M=E×σmt×I/r1 ・・・(3)
クレーン10は、一対のクローラフレーム1を備えているため、転倒モーメントMtは、左右それぞれのクローラフレーム1の前端部のひずみから得られるモーメントをMR,MLとすると、次式(4)の通りとなる。
Mt=MR+ML ・・・(4)
以上のようにして演算される転倒モーメントMtは、上述したコントローラ100の演算部101(具体的には前記演算部101の前記パラメータ演算部)が物理量検出部90から入力される前記物理量に関する信号(検出信号)に基づいて演算する。これにより、クレーン10の転倒原因となる転倒モーメントMtが得られる。物理量検出部90による検出の頻度及び演算部101による演算の頻度は、特に限定されない。物理量検出部90による検出及び演算部101による演算は、例えば予め設定された時間毎に行われてもよく、連続的に(常時)行われてもよい。
なお、上述した圧縮力σn(軸力)を考慮しなくてもよい場合には、モーメントMは、次式(5)の通りとなる。
M=E×I(|ε1/r1|+|ε2/r2|)/2 ・・・(5)
[動作]
次に、前記クレーン10のコントローラ100の演算処理について説明する。図18は、前記コントローラ100の演算処理の一例を示すフローチャートである。図18に示すように、コントローラ100は、運転モードの設定が自立モードに設定されているか否かを判定する(ステップS1)。前記自立モードは、前記組立作業などの前記特定作業における前記起伏部材の起立動作において、前記コントローラ100がクレーン10の安定性を判定し、前記安定性が低い場合には前記安定性の低下を回避するための回避動作をコントローラ100が自動的に実行するモードである。前記自立モードの選択は、前記上部旋回体12のキャブ12Aにおいてオペレータが行うことができる。
前記自立モードが選択されている場合(ステップS1においてYES)、前記コントローラ100は、前記ブーム起伏ウインチ30を作動させるための操作レバーの操作がオペレータにより行われたか否かを判定する(ステップS2)。前記コントローラ100の動作制御部104は、前記操作レバーの操作が行われたと判定した場合(ステップS2においてYES)、前記ブーム起伏ウインチ30が前記ブーム起伏ロープ38の巻き取りを行うように前記ブーム起伏ウインチ30の動作を制御する(ステップS3)。
次に、前記コントローラ100は、前記物理量検出部90により検出される前記物理量(第1の実施形態ではひずみ)を取得する(ステップS4)。
次に、前記コントローラ100の前記演算部101(具体的には前記パラメータ演算部)は、前記転倒モーメントMtを例えば上述した演算方法に基づいて演算する(ステップS5)。
次に、前記コントローラ100の前記安定性判定部102は、前記クレーン10の安定性を判定する(ステップS6)。具体的に、前記安定性判定部102は、前記転倒モーメントMtが予め設定された閾値mより大きいか否かを判定する(ステップS6)。前記閾値mは、前記クレーン10の安定性を判定するための閾値であり、前記クレーン10が転倒する前記転倒モーメントMtの限界値を基準にして前記クレーン10の機種ごとに予め設定された値である。
前記安定性判定部102により前記転倒モーメントMtが前記閾値mより大きいと判定された場合(ステップS6においてYES)、前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に関する安定性情報を前記報知装置110において前記オペレータに対して報知するための報知指令を出力する(ステップS7)。
前記報知装置110は、上述したように、例えば、音を発するための発音部、光を発するための発光部及び文字、図形などを表示するための表示部の少なくとも1つを有する。前記安定性情報は、前記報知指令に基づいて、前記発音部、前記発光部及び前記表示部の少なくとも一つにより前記オペレータに報知される。
図19は、前記報知装置110の前記表示部において報知される前記安定性情報の具体例を示す図である。図19(A)では、前記第1のモーメントMfと前記第2のモーメントMbのそれぞれの向きが矢印により示されている。前記第1のモーメントMfと前記第2のモーメントMbの大きさは、例えば、矢印の太さ、矢印の長さ、数値などにより表現される。これらの矢印は、例えば図10及び図13に示すようにクレーン10の画像とともに表示されてもよい。図19(B)では、前記第1のモーメントMfと前記第2のモーメントMbのそれぞれの大きさが棒グラフ、円グラフなどのグラフにより示されている。図19(C)では、前記第1のモーメントMfと前記第2のモーメントMbのそれぞれの大きさが数値により示されている。
前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により前記転倒モーメントMtが前記閾値mより大きいと判定された場合、図19(A)~(C)の矢印や数値が点滅しながら表示されるように前記報知装置110を制御してもよく、前記点滅の周期が前記安定性に応じて変化するように前記報知装置110を制御してもよい。また、前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により前記転倒モーメントMtが前記閾値mより大きいと判定された場合、図19(A)~(C)の表示とともに、音声により前記安定性情報が報知されるように前記報知装置110を制御してもよい。前記音声による安定性情報は、例えば、「転倒限界に近づいています。」、「転倒の危険があります。」などの内容を含んでいてもよい。
次に、前記動作制御部104は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する(ステップS8)。具体的に、前記ブーム起伏ウインチ30は、例えば、前記動作指令に基づいて前記ロープ38の巻き取りの動作を停止する。また、前記ジブ起伏ウインチ32が動作している場合には、前記ジブ起伏ウインチ32は、例えば、前記動作指令に基づいて前記ロープ44の巻取り(又は繰出し)の動作を停止する。
図20及び図21は、前記コントローラ100の演算処理の他の例を示すフローチャートである。図20のステップS11~S15の処理は、図18のステップS1~S5の処理と同様であるので、これらの説明を省略する。以下では、図18に示す演算処理と異なる点について説明する。
図20及び図21に示すように、前記コントローラ100の前記安定性判定部102は、前記クレーン10の安定性を判定する(ステップS16,S17,S20)。具体的に、前記演算部101の前記比率演算部は、前記第1のモーメントMfと前記第2のモーメントMbの比率(Mf/Mb)を演算し、前記安定性判定部102は、前記比率(Mf/Mb)を予め設定された閾値α、β、γのそれぞれと比較する。前記閾値α、β、γは、前記クレーン10の安定性を判定するための閾値であり、例えば、0<α<β<γ<1.0の関係を満たすように予め設定されている。
前記比率(Mf/Mb)が前記閾値α以下である場合(ステップS16においてNO)、前記安定性が低くないため、前記動作制御部104は、前記ブーム起伏ウインチ30が前記ブーム起伏ロープ38の巻き取りを継続するように前記ブーム起伏ウインチ30の動作を制御する(ステップS13)。
一方、前記比率(Mf/Mb)が前記閾値αより大きい場合(ステップS16においてYES)、前記安定性判定部102は、前記比率(Mf/Mb)が前記閾値αより大きく前記閾値βより小さいか判定する(ステップS17)。前記比率(Mf/Mb)が前記閾値αより大きく前記閾値βより小さい場合(ステップS17においてYES)、前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に関する安定性情報を前記報知装置110において前記オペレータに対して報知するための報知指令を出力する(ステップS18)。この場合、前記安定性情報は、前記オペレータに対してクレーン10の安定性が低いことを示す注意喚起を行うための情報を含む。
次に、前記動作制御部104は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する(ステップS19)。この場合、前記動作指令は、例えば、前記ブーム起伏ウインチの回転速度をA%に減速させるための指令を含む。そして、前記動作制御部104は、前記ブーム起伏ウインチ30が減速された回転速度で前記ブーム起伏ロープ38の巻き取りを継続するように前記ブーム起伏ウインチ30の動作を制御する(ステップS13)。
前記比率(Mf/Mb)が前記閾値β以上である場合(ステップS17においてNO)、前記安定性判定部102は、前記比率(Mf/Mb)が前記閾値βより大きく前記閾値γより小さいか判定する(ステップS20)。前記比率(Mf/Mb)が前記閾値βより大きく前記閾値γより小さい場合(ステップS20においてYES)、前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に関する安定性情報を前記報知装置110において前記オペレータに対して報知するための報知指令を出力する(ステップS21)。この場合、前記安定性情報は、前記オペレータに対してクレーン10の安定性が低いことを示す注意喚起を行うための情報であって、ステップS18における注意喚起よりもさらに注意を促すための情報を含む。
次に、前記動作制御部104は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する(ステップS22)。この場合、前記動作指令は、例えば、前記ブーム起伏ウインチ30の回転速度をB%に減速させるための指令を含む。そして、前記動作制御部104は、前記ブーム起伏ウインチ30が減速された回転速度で前記ブーム起伏ロープ38の巻き取りを継続するように前記ブーム起伏ウインチ30の動作を制御する(ステップS13)。前記値A,Bは、前記ブーム起伏ウインチ30の回転速度の減速度合いを示す値であり、100>A>B>0の関係を満たすように予め設定されている。
前記比率(Mf/Mb)が前記閾値γ以上である場合(ステップS20においてNO)、前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に関する安定性情報を前記報知装置110において前記オペレータに対して報知するための報知指令を出力する(ステップS23)。この場合、前記安定性情報は、前記オペレータに対してクレーン10の安定性が低いことを示す注意喚起を行うための情報であって、ステップS21における注意喚起よりもさらに注意を促すための情報(警告情報)を含む。
次に、前記動作制御部104は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する(ステップS24)。具体的に、前記ブーム起伏ウインチ30は、例えば、前記動作指令に基づいて前記ロープ38の巻き取りの動作を停止する。また、前記ジブ起伏ウインチ32が動作している場合には、前記ジブ起伏ウインチ32は、例えば、前記動作指令に基づいて前記ロープ44の巻取り(又は繰出し)の動作を停止する。
[第1の実施形態の変形例]
図14~図16は、図3においてクローラフレーム1の前端部を矢印VIの方向に見たときの側面図であって、図14は、前記実施形態の変形例1を示す図であり、図15は、前記実施形態の変形例2を示す図であり、図16は、前記実施形態の変形例3を示す図である。
図14~図16に示す変形例1~3は、クローラフレーム1のうち前記ひずみが前記物理量検出部90によって検出される部分の前後方向の位置(検出位置)がドライブタンブラ4aの回転軸CBに対応する位置と第1の下部ローラ6Aの回転軸CAに対応する位置との間の範囲Rに含まれる点で、図6に示す前記実施形態と同様である。また、変形例1~3は、第1ひずみゲージ90Aがクローラフレーム1の上部に設けられ、第2ひずみゲージ90Bがクローラフレーム1の下部に設けられている点で、図6に示す前記実施形態と同様である。
一方、変形例1~3は、前記クローラフレーム1のうち物理量検出部90が設けられる部分の位置が、上記範囲R内において、図6に示す実施形態と異なっている。具体的には次の通りである。
図14に示す変形例1では、第1ひずみゲージ90A及び第2ひずみゲージ90Bは、上下方向に板状に延びるウェブ部S1に設けられている。図15に示す変形例2では、第1ひずみゲージ90Aは、ウェブ部S1と上フランジ部S2とにまたがるように設けられ、第2ひずみゲージ90Bは、ウェブ部S1と下フランジ部S3またがるように設けられている。
図16に示す変形例3では、第1ひずみゲージ90A及び第2ひずみゲージ90Bは、フレーム本体1Aの先端部1A2に設けられている。具体的に、変形例3では、第1ひずみゲージ90Aは、上フランジ部S2を構成するフレーム本体1Aの先端部1A2に設けられている。第2ひずみゲージ90Bは、下フランジ部S3を構成するフレーム本体1Aの先端部1A2に設けられている。
図17は、前記実施形態の変形例4を模式的に示す斜視図である。図17に示す変形例4では、クローラフレーム1は、ひずみゲージ(物理量検出部)を取り付けるための測定支台200(変形部材)をさらに有する。測定支台200は、前後方向においてブーム14の先端部14Bがブーム14の基端部14Aよりも前記ブーム方向D1にはずれた位置に配置された状態で、クローラフレーム1に生じるひずみを感度よく検出可能な位置に配置されている。具体的に、測定支台200は、クローラフレーム1のうち、前後方向の前記検出位置がドライブタンブラ4aの回転軸CBに対応する位置と第1下部ローラ6Aの回転軸CAに対応する位置との間の範囲R(図4参照)に含まれる部位に設けられている。
例えば、測定支台200は、クローラフレーム1のうち、図6、図14、図15及び図16においてひずみゲージ90A及びひずみゲージ90Bが設けられている部位に配置することができるが、測定支台200を配置する部位は、上記のような部位に限定されない。図17に示す具体例では、測定支台200は、図15に示す変形例2においてひずみゲージ90A及びひずみゲージ90Bが設けられている部位と同様の部位に配置されている。具体的には次の通りである。
図17に示すように、測定支台200は、ウェブ部S1と上フランジ部S2とにまたがるように設けられている。言い換えると、測定支台200は、ウェブ部S1と上フランジ部S2とによって形成される角部に配置されている。
測定支台200は、第1面200Aと、第2面200Bと、保持面200Cと、を有する。第1面200Aは、ウェブ部S1に対向して配置されて当該ウェブ部S1に接続された面である。第2面200Bは、上フランジ部S2に対向して配置されて当該上フランジ部S2に接続された面である。保持面200Cは、第1面200Aの端縁と第2面200Bの端縁とを接続するとともに、ひずみゲージ90Aを保持する面である。図17に示す具体例では、保持面200Cは、前方に向かうにつれて上方に位置するように傾斜するとともにひずみゲージ90Aを保持する傾斜面を有する。図17に示す具体例では、当該傾斜面は、円弧状の湾曲面(凹曲面)からなるが、平面からなるものであってもよく、凸曲面からなるものであってもよい。また、図17に示す具体例では、測定支台200は略L字形状を有するが、測定支台200の形状は略L字形状に限られない。
また、測定支台200は、上記のようにウェブ部S1と上フランジ部S2とによって形成される角部に配置されるだけでなく、ウェブ部S1と下フランジ部S3とによって形成される角部にも配置されている。そして、起伏部材が前記起立動作及び前記倒伏動作をすることにより、クローラフレーム1に曲げモーメントが付加されてタンブラブラケット1B及びフレーム本体1Aが曲げ変形を受ける。これにより、上側の測定支台200の保持面200Cは、引っ張られて伸びる方向にひずみを生じる。また、下側の測定支台の保持面は、圧縮されて縮む方向にひずみを生じる。よって、保持面200Cに沿ってひずみゲージを設置することで曲げモーメントを算出するためのひずみを求めることができる。保持面200Cが円弧状の湾曲面である場合、円弧の曲率半径を変えることで、ひずみの大きさを調整することができる。
以下、第2~第7の実施形態について説明する。第2~第7の実施形態に係る移動式クレーン10は、下部走行体11が少なくとも一つの受け部材80(支持部材80)を備える点で、上記の第1の実施形態とは相違する。第2~第7の実施形態では、下部走行体11の構成のうち上記相違点以外の構成は、前記第1の実施形態における下部走行体11の構成とほぼ同様である。従って、以下の第2~第7の実施形態の説明では、前記第1の実施形態の構成と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
[第2の実施形態]
図22は、第2の実施形態に係る移動式クレーン10の下部走行体11を示す平面図である。図23は、図22におけるクレーン10のクローラフレーム1に支持部材80を取り付ける前の状態を示す側面図である。図24は、図22における前記クローラフレーム1に前記支持部材80を取り付けた状態を示す側面図である。
図22に示す第2の実施形態では、前記下部走行体11は、複数の支持部材80(具体的には一対の支持部材80)を有する。前記一対の支持部材80のそれぞれは、前記フレームユニットを構成するクローラフレーム1に接続される接続部と、地面に接する接触部と、を含む。前記支持部材80の前記接続部は、後述するビーム81の基端部8Aにより構成され、前記支持部材80の前記接触部は、後述する脚部82の下端部であるフロート85により構成される。
第2の実施形態におけるブーム方向は、前記組立作業及び前記分解作業において、前記ブーム14が前記上部旋回体12から延びる方向の水平成分の方向である。第2の実施形態では、前記ブーム方向D1は、図22に示す第1の方向D1(右方)である。図22に示すように、前記フロート85(接触部)は、前記旋回中心軸Cに対してブーム方向D1にずれた位置において地面から反力を受ける部分(反力受け部)である。前記フロート85(接触部)は、前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
以下、第2の実施形態について具体的に説明する。図22及び図23に示すように、クローラフレーム1は、フレーム本体1Aと、タンブラブラケット1Bとを含む。フレーム本体1Aは、前後方向に延びる形状を有する。フレーム本体1Aは、当該フレーム本体1Aの長手方向に延びる上板部111と、当該上板部111に対して下方に間隔をおいて配置されるとともに前記長手方向に延びる下板部112と、前記長手方向にそれぞれ延びる一対の側板部113,114と、を有する。一方の側板部113は、上板部111と下板部112の右端部同士を接続しており、他方の側板部114は、上板部111と下板部112の左端部同士を接続している。
図23に示すように、フレーム本体1Aは、上板部111、下板部112及び一対の側板部113,114によって形成される閉断面を有する。当該閉断面は、左右方向にそれぞれ延びる上板部111及び下板部112と、上下方向にそれぞれ延びる一対の側板部113,114によって構成される。当該閉断面の内側には、例えば前記長手方向に直交する姿勢で配置された平板115(補強板)が設けられていてもよい。本実施形態では、平板115がフレーム本体1Aのうち支持部材80が取り付けられる部位又はその近傍に設けられている。フレーム本体1Aの当該部位は、クレーン10の転倒モーメントに起因して支持部材80に発生する曲げモーメントが伝わる部位である。したがって、フレーム本体1Aの当該部位又はその近傍に平板115が設けられることにより、フレーム本体1Aの当該部位が平板115によって補強される。これにより、クローラフレーム1の剛性が高められる。
[支持部材(受け部材)]
図22に示すように、本実施形態では、前記一対の支持部材80は、一対のクローラ走行装置3のうちの第1のクローラ走行装置3におけるクローラフレーム1(第1のクローラフレーム1)に支持されている。一対の支持部材80は、前後方向に間隔をおいて配置されている。一対の支持部材80は、第1の支持部材80と、この第1の支持部材80よりも後方に位置する第2の支持部材80とにより構成されている。これらの支持部材80は、第1のクローラフレーム1に対する取り付け位置が異なっている他は、同様の構造を有している。
図22に示すように、第1のクローラフレーム1のうち前後方向の位置が前部アクスル2bの前縁2eに対応する部位と、第1のクローラフレーム1のうち前後方向の位置が後部アクスル2cの後縁2fに対応する部位との間の範囲内に、第1の支持部材80の基端部8Aの少なくとも一部が位置し、第2の支持部材80の基端部8Aの少なくとも一部が位置するように、一対の支持部材80が第1のクローラフレーム1に取り付けられているのが好ましい。
また、第1のクローラフレーム1のうち前後方向の位置が前部アクスル2bに対応する範囲内に、第1の支持部材80の基端部8Aの少なくとも一部が位置し、第1のクローラフレーム1のうち前後方向の位置が後部アクスル2cに対応する範囲内に、第2の支持部材80の基端部8Aの少なくとも一部が位置するように、一対の支持部材80が第1のクローラフレーム1に取り付けられているのがより好ましい。
また、第1の支持部材80の基端部8Aが第1のクローラフレーム1に取り付けられる位置から上部旋回体12の旋回中心軸Cまでの第1距離と、第2の支持部材80の基端部8Aが第1のクローラフレーム1に取り付けられる位置から上部旋回体12の旋回中心軸Cまでの第2距離とは、同程度であるのが好ましく、同じであるのがより好ましい。前記第1距離と前記第2距離との差が大きくなりすぎると、第1の支持部材80のビーム81に生じる撓み及びねじれと、第2の支持部材80のビーム81に生じる撓み及びねじれとの差が大きくなりやすい。
各支持部材80は、ビーム81と、脚部82とを含む。ビーム81は、第1のクローラフレーム1から左右方向の外側に延びている。ビーム81は、基端部8Aと、先端部8Bとを有する。ビーム81の基端部8Aは第1のクローラフレーム1に取り付けられている。ビーム81の先端部8Bは、第1のクローラフレーム1に対して、左右方向の一方の方向である前記ブーム方向D1(図3では右方)にはずれた位置にある。
本実施形態では、各ビーム81は、図22に示す平面視において直線状に延びている。各ビーム81は、平面視において左右方向に平行な方向に延びているが、これに限られず、左右方向に傾斜する方向に延びていてもよい。すなわち、本実施形態において、ビーム81がクローラフレーム1から左右方向の外側に延びるという構成には、ビーム81を平面視したときに、ビーム81の延びる方向が左右方向に平行である場合だけでなく、左右方向に対して傾斜している場合も含まれる。例えば、一対のビーム81のうち、前方に位置するビーム81が斜め前方に延び、後方に位置するビーム81が斜め後方に延びていてもよい。
脚部82は、ビーム81の先端部8Bに支持されるとともに当該先端部8Bから下方に延びて下端部85が地面に接するように構成されている。本実施形態では、脚部82は油圧シリンダによって構成されている。具体的には、脚部82は、ビーム81の先端部8Bに支持されるとともに前記先端部8Bから下方に延びるシリンダ本体83と、シリンダ本体83に対して上下方向にスライド移動可能なロッド84と、ロッド84の下端部84A(図4参照)に取り付けられたフロート85(図5参照)とを含む。フロート85は、脚部82の下端部85(前記接触部)を構成している。
各支持部材80における脚部82は、第1のクローラ走行装置3に対して前記ブーム方向D1にずれた位置にある。脚部82が第1のクローラ走行装置3に対して第1方向D1にずれた位置にあるとは、脚部82の中心軸CCが第1のクローラ走行装置3に対して前記ブーム方向D1にはずれた位置にあることをいう。本実施形態では、脚部82の中心軸CCは、上下方向に延びる油圧シリンダの中心軸CC(ロッド84の中心軸CC)である。
図25(A)は、図24に示す支持部材80のビーム81をXXV-XXV線において切断したときの断面の一例を示す図であり、図25(B)は、図24に示す支持部材80のビーム81をXXV-XXV線において切断したときの断面の他の例を示す図である。
各支持部材80のビーム81は、図25(A)に示すように当該ビーム81の長手方向に直交する断面がI断面となる断面構造を有していてもよく、図25(B)に示すように当該ビーム81の長手方向に直交する断面が閉断面となる断面構造を有していてもよい。
図25(A)に示す断面構造の場合、ビーム81は、ビーム81の長手方向に延びる上板部811と、当該上板部811に対して下方に間隔をおいて配置されるとともに前記長手方向に延びる下板部812と、前記長手方向に延びる側板部813と、を有する。当該側板部813は、上板部811と下板部812とを接続している。図25(A)に示すI断面は、左右方向にそれぞれ延びる上板部811及び下板部812と、上下方向に延びる側板部813とによって構成される。
また、図25(B)に示す断面構造の場合、ビーム81は、ビーム81の長手方向に延びる上板部811と、当該上板部811に対して下方に間隔をおいて配置されるとともに前記長手方向に延びる下板部812と、前記長手方向にそれぞれ延びる一対の側板部813,814と、を有する。一方の側板部813は、上板部811と下板部812の後端部同士を接続しており、他方の側板部814は、上板部811と下板部812の前端部同士を接続している。図25(B)に示す閉断面は、左右方向にそれぞれ延びる上板部811及び下板部812と、上下方向にそれぞれ延びる一対の側板部813,814とによって構成される。
図25(A),(B)に示す具体例では、上板部811は、ビーム81の先端部8Bに向かうにつれて下方に位置するように傾斜する姿勢で配置されているが、これに限られず、水平方向に平行な姿勢で配置されていてもよい。
本実施形態では、各支持部材80はクローラフレーム1に対して着脱可能に構成されている。具体的には次の通りである。
図23に示すように、ビーム81の基端部8Aには、クローラフレーム1にビーム81を取り付けるための被取付部が設けられている。当該被取付部は、クローラフレーム1のフレーム本体1Aに設けられた取付部に係合可能に構成されている。本実施形態では、当該被取付部は、一対の上部貫通孔8Cと、一対の下部貫通孔8Dと、一対のピンとを含む。上部貫通孔8Cと下部貫通孔8Dとは上下方向に間隔をあけて設けられている。一対の上部貫通孔8Cには前記一対のピンの一方が予め挿入されて固定されている。
一方、クローラフレーム1のフレーム本体1Aに設けられた前記取付部は、一対のフック部1C と、当該フック部1Cの下方に設けられた一対の下部貫通孔1Dとを含む。図23及び図24に示すように、前記被取付部における上部貫通孔8Cに配置されたピンが前記取付部におけるフック部1Cに係合されるとともに、前記被取付部における下部貫通孔8Dの位置が前記取付部における下部貫通孔1Dの位置に合った状態でこれらの貫通孔8D,1Dに前記一対のピンの他方が挿入される。また、図23に示す脚部82のロッド84の下端部84Aは、図24に示す脚部82の下端部85を構成するフロート85の上面に設けられた凹部内に配置される。これにより、支持部材8がクローラフレーム1に取り付けられる。
各支持部材80は、上述の作業の逆の作業が行われることにより、クローラフレーム1から取り外すことができる。
本実施形態では、クローラフレーム1から取り外された各支持部材80(サイドジャッキ)は、下部走行体11の前部アクスル2b及び後部アクスル2cに設けられたトランスリフタを構成する部材(フロントジャッキ及びリアジャッキ)として用いることもできる。具体的には次の通りである。
当該トランスリフタは、複数の支持部材によって構成され、クローラ走行装置3をフレーム2の前部アクスル2b及び後部アクスル2cに取り付ける作業及び取り外す作業が行われるときに、フレーム2を地面から持ち上げるためのものである。前部アクスル2bには、クローラフレーム1に設けられている前記取付部と同様の構成を有する2つの取付部が設けられており、後部アクスル2cにも、クローラフレーム1に設けられている前記取付部と同様の構成を有する2つの取付部が設けられている。本実施形態では、トランスリフタを構成する複数(通常、4つ)の支持部材の少なくとも一部の支持部材は、図22に示すクローラフレーム1に設けられた一対の支持部材80と兼用される。ただし、複数の支持部材80(サイドジャッキ)は、トランスリフタを構成する支持部材(フロントジャッキ及びリアジャッキ)として兼用されるものでなくてもよい。
[物理量検出部]
物理量検出部90は、クレーン10の組立作業及び分解作業においてブーム14を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するためのものである。具体的には、物理量検出部90は、支持部材80のビーム81に生じるひずみを検出するためのものである。物理量検出部90は、支持部材80のビーム81に生じるひずみであってクレーン10を左右方向の一方の方向に倒す向きのモーメントに対応するひずみを検出可能に構成されている。
本実施形態では、クレーン10は、図22に示すように複数の物理量検出部90を備える。具体的には、各支持部材80に物理量検出部90が設けられている。したがって、各支持部材80のビーム81に生じるひずみを検出することができる。なお、本実施形態では、2つの物理量検出部90は、同じ構造を有し、対応するクローラフレーム1に設けられる位置も図22に示すように同じであるので、以下では主に一つの物理量検出部90について詳細に説明する。
本実施形態では、物理量検出部90は、図23及び図24に示すように、ビーム81のうち、ビーム81の先端部8Bよりも基端部8Aに近い部位に設けられている。ただし、物理量検出部90は、ビーム81のうち、ビーム81の基端部8Aよりも先端部8Bに近い部位に設けられていてもよく、ビーム81の長手方向の中央に設けられていてもよい。
物理量検出部90は、ビーム81のうち、ひずみが生じやすい部位に設けられるのが好ましい。これにより、モーメントに起因して生じるビーム81のひずみを感度よく検出することができる。ひずみが生じやすい部位としては、例えば、ビーム81とクローラフレーム1の接続部又は当該接続部に隣接する隣接部、ビーム81と脚部82の接続部又は当該接続部に隣接する隣接部を挙げることができる。
物理量検出部90は、ビーム81のひずみを検出するための少なくとも1つのデバイスによって構成される。当該デバイスとしては、前記第1の実施形態の説明で例示したデバイスと同様のものを用いることができる。
図24に示すように、本実施形態では、物理量検出部90は、複数のひずみゲージ(図例では、第1ひずみゲージ90A,第2ひずみゲージ90B)によって構成されている。第1ひずみゲージ90Aは、ビーム81の上部に設けられ、第2ひずみゲージ90Bは、ビーム81の下部に設けられている。これらのひずみゲージ90A,90Bにより、ビーム81の上部に生じるひずみとビーム81の下部に生じるひずみを検出することができる。
図25(A)及び図25(B)に示すひずみゲージの配置例では、第1ひずみゲージ90Aは上板部811に設けられ、第2ひずみゲージ90Bは下板部812に設けられている。これにより、ビーム81の中立面から各ひずみゲージまでの距離が大きくなり、ビーム81に生じるひずみを感度よく検出できる。なお、第1ひずみゲージ90Aが側板部813の上部に設けられ、第2ひずみゲージ90Bが側板部813の下部に設けられていてもよい。
また、図25(A)に示すように、I断面を有するビーム81の断面構造において、第1ひずみゲージ90Aは、例えば上板部811と側板部813との境界部分に隣接する部位に設けられ、第2ひずみゲージ90Bは、例えば下板部812と側板部813との境界部分に隣接する部位に設けられているが、これらの配置に限られない。各ひずみゲージは、前記境界部分から離れた位置に設けられていてもよい。
また、図25(B)に示すように、閉断面を有するビーム81の断面構造において、第1ひずみゲージ90Aは、ビーム81の上板部811における幅方向の中央に設けられ、第2ひずみゲージ90Bは、ビーム81の下板部812における幅方向の中央に設けられているが、これらの配置に限られない。各ひずみゲージは、幅方向の中央から当該幅方向の一方にずれた位置に設けられていてもよい。
物理量検出部90は、クレーン10の前記起立動作及び前記倒伏動作において支持部材80のビーム81に生じるひずみを検出し、物理量検出部90によって出力された検出信号は、図2に示すコントローラ100に入力される。コントローラ100が行う演算処理は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
[組立作業及び分解作業]
次に、第2の実施形態に係るクレーン10の組立作業及び分解作業について説明する。図26~図31は、第2の実施形態におけるクレーン10の組立作業時又は分解作業時の姿勢を概略的に示す側面図である。図26~図31に示すように、第2の実施形態では、前記ブーム方向が左右方向の一方の方向(具体的な図例では右方)である点、前記反力受け部が前記支持部材80の前記ビーム82の下端部を構成する前記フロート85である点、前記物理量検出部90が前記支持部材80に設けられている点が、前記第1の実施形態と相違する。一方、第2の実施形態における組立作業及び分解作業の基本的な流れは、図8~図13を参照して説明した内容と同様であるので、詳細な説明は省略する。
[第2の実施形態の変形例]
第2の実施形態に係るクレーン10では、物理量検出部90(ひずみ検出部)は、支持部材80のビーム81に生じるひずみを検出可能に構成されていればよいので、前記物理量検出部90を設ける位置は上述した実施の形態に限られない。
例えば、物理量検出部90を設ける位置は、図32、図33(A)及び図33(B)に示すように、ビーム81の上板部811の外面(上面)及び下板部812の外面(下面)であってもよい。
また、物理量検出部90は、必ずしもビーム81に設けられていなくてもよく、例えば、脚部82のうちビーム81の先端部8Bに隣接する部位に設けられていてもよい。
また、物理量検出部90は、必ずしも支持部材80に設けられていなくてもよく、例えば、図34及び図35に示すように、クローラフレーム1のフレーム本体1Aのうち、ビーム81の基端部8Aに隣接する部位に設けられていてもよい。図34及び図35に示す変形例では、第1ひずみゲージ90Aは、フレーム本体1Aの上板部111に設けられており、第2ひずみゲージ90Bは、フレーム本体1Aの下板部112に設けられている。これらのひずみゲージ90A,90Bが設けられている部位は、上述したフック部1C及び下部貫通孔1Dを含む前記取付部に隣接する部位である。
また、第2の実施形態に係るクレーン10では、当該クレーン10が左右方向の一方に倒れようとする方向のモーメントが発生したときに、クレーン10の姿勢を安定させるために2つ以上の支持部材が設けられていることが好ましく、前記支持部材80の個数は、上述した実施の形態に限られない。
クレーン10の下部走行体11は、例えば、図36に示すように、3つの支持部材80を備えていてもよく、図37に示すように、4つの支持部材80を備えていてもよく、さらに、5つ以上の支持部材80を備えていてもよい。何れの変形例においても、複数の支持部材80は、クローラフレーム1のフレーム本体1Aにおいて、前後方向に互いに間隔をおいて配置される。
図38は、前記第2の実施形態の変形例5を模式的に示す斜視図である。図20に示す変形例5では、ビーム81は、ひずみゲージ(物理量検出部90)を取り付けるための測定支台200(変形部材)をさらに有する。測定支台200は、左右方向においてブーム14の先端部14Bがブーム14の基端部14Aよりも右方又は左方にはずれた位置に配置された状態で、ビーム81に生じるひずみを検出可能な位置に配置されている。測定支台200は、このような位置に配置されていればよいので、測定支台200を配置する部位は特に限定されない。
また、変形例5では、ビーム81は、図38に示すように、ビーム81の長手方向に直交する方向に延びるとともに前記長手方向(右方又は左方)に向いた表面を有する補強板815を有する。そして、図38に示す変形例5では、測定支台200は、ビーム81の補強板815と上板部811とにまたがるように設けられている。言い換えると、測定支台200は、補強板815と上板部811とによって形成される角部に配置されている。
測定支台200は、第1面200Aと、第2面200Bと、保持面200Cと、を有する。第1面200Aは、補強板815に対向して配置されて当該補強板815に接続された面である。第2面200Bは、上板部811に対向して配置されて当該上板部811に接続された面である。保持面200Cは、第1面200Aの端縁と第2面200Bの端縁とを接続するとともに、ひずみゲージ90Aを保持する面である。図38に示す具体例では、保持面200Cは、右方に向かうにつれて上方に位置するように傾斜するとともにひずみゲージ90Aを保持する傾斜面を有する。図38に示す具体例では、当該傾斜面は、円弧状の湾曲面(凹曲面)からなるが、平面からなるものであってもよく、凸曲面からなるものであってもよい。また、図38に示す具体例では、測定支台200は略L字形状を有するが、測定支台200の形状は略L字形状に限られない。
また、測定支台200は、上記のように補強板815と上板部811とによって形成される角部に配置されるだけでなく、補強板815と下板部812とによって形成される角部にも配置されている。そして、起伏部材が前記起立動作及び前記倒伏動作をすることにより、ビーム81に曲げモーメントが付加されて当該ビーム81が曲げ変形を受ける。これにより、上側の測定支台200の保持面200Cは、引っ張られて伸びる方向にひずみを生じる。また、下側の測定支台の保持面は、圧縮されて縮む方向にひずみを生じる。よって、保持面200Cに沿ってひずみゲージを設置することで曲げモーメントを算出するためのひずみを求めることができる。保持面200Cが円弧状の湾曲面である場合、円弧の曲率半径を変えることで、ひずみの大きさを調整することができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係るクレーン10は、図22~図31を参照して説明した第2の実施形態と同様の構成を有する。第3の実施形態は、前記物理量検出部が第2の実施形態のような前記ひずみ検出部90ではなく反力検出部93により構成される点が、第2の実施形態と相違する。従って、第3の実施形態では、図22~図25に示される前記ひずみ検出部90は、省略されていてもよい。
以下、第3の実施形態について主に前記第2の実施形態と相違する点を説明する。
図22に示す第3の実施形態に係るクレーン10の前記下部走行体11は、第2の実施形態と同様に、一対の支持部材80(一対の受け部材80)を有する。一対の支持部材80(一対の受け部材80)は、第2の実施形態と同様に、第1の支持部材80と、この第1の支持部材80よりも後方に位置する第2の支持部材80とにより構成されている。前記一対の支持部材80のそれぞれは、前記フレームユニットを構成するクローラフレーム1に接続される接続部と、地面に接する接触部と、を含む。前記支持部材80の前記接続部は、ビーム81の基端部8Aにより構成され、前記支持部材80の前記接触部は、脚部82の下端部であるフロート85により構成される。
第3の実施形態では、前記ブーム方向D1は、第2の実施形態と同様に、図22に示す第1の方向D1(右方)である。図22に示すように、前記フロート85(接触部)は、前記旋回中心軸Cに対してブーム方向D1にずれた位置において地面から反力を受ける部分(反力受け部)である。前記フロート85(接触部)は、前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
[物理量検出部]
第3の実施形態では、物理量検出部93は、クレーン10の組立作業及び分解作業においてブーム14を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するための反力検出部93(図6参照)である。具体的には、前記物理量検出部93は、前記支持部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化する物理量を検出する。物理量検出部93は、クレーン10を左右方向の一方の方向に倒す向きのモーメントに対応する圧力を前記物理量として検出可能に構成されている。第3の実施形態では、前記支持部材80は、第2の実施形態と同様に、前記組立作業及び前記分解作業において、前記脚部82の下端部であるフロート85(接触部)が前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向D1に離れた位置に配置される。
図39は、前記クレーン10における油圧回路の一例を示す図である。図39に示すように、本実施形態では、前記物理量検出部93は、第1の支持部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化する物理量を検出する第1の圧力センサ91と、第2の支持部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化する物理量を検出する第2の圧力センサ92と、を含む。具体的には、前記第1の圧力センサ91は、第1の支持部材80の前記油圧シリンダ86におけるヘッド側の圧力を前記物理量として検出し、前記第2の圧力センサ92は、第2の支持部材80の前記油圧シリンダにおけるヘッド側の圧力を前記物理量として検出する。前記第1の圧力センサ91及び前記第2の圧力センサ92のそれぞれは、対応する油圧シリンダ86におけるヘッド側室の圧力を検出するように構成されていてもよく、前記ヘッド側室に接続された後述の油圧配管L1内の圧力を検出するように構成されていてもよい。以下、図39に示す油圧回路について説明する。
図39に示すように、前記クレーン10は、油圧ポンプ170と、一対の制御弁171,172と、指示装置174と、前記一対の油圧シリンダ86,86と、物理量検出部93と、を備える。
前記油圧ポンプ170は、作動油を吐出する。当該油圧ポンプ170は図略の駆動源(例えばエンジン)によって駆動される。
前記一対の制御弁171,172のそれぞれは、前記油圧ポンプ170と対応する前記油圧シリンダ86との間に介在する。前記油圧ポンプ170と前記制御弁171,172との間を接続する配管には、タンクへつながるとともにリリーフ弁が設けられた配管が接続されている。前記一対の制御弁171,172のそれぞれは、前記油圧ポンプ170によって吐出された前記作動油を対応する前記油圧シリンダ86に供給する油路を形成する供給位置(図39では、上側位置又は下側位置)と、前記油圧ポンプ170から吐出された前記作動油の前記油圧シリンダ86への供給を遮断する遮断位置(図39では、中央位置)との間で切り換わることができる。
前記指示装置174は、前記供給位置と前記遮断位置との間の前記制御弁171,172の作動を指示する。当該指示装置174は、例えばオペレータが操作可能に構成されていてもよく、コントローラ100からの指令に基づいて操作されるように構成されていてもよい。前記指示装置174は、前記制御弁を前記供給位置に設定するための操作を受けると、対応する前記制御弁のソレノイドに電源178からの指示電流が供給され、これにより、前記制御弁が前記供給位置に切り換わる。
具体的に、前記制御弁が図39に示す上側位置に切り換わると、前記油圧ポンプ170から吐出された作動油は、油圧配管L1を通じて、対応する油圧シリンダ86のヘッド側室に供給され、当該油圧シリンダ86のロッド側室の作動油が油圧配管L2に排出される。これにより、前記支持部材80の脚部82が伸長する。一方、前記制御弁が図39に示す下側位置に切り換わると、前記油圧ポンプ170から吐出された作動油は、油圧配管L2を通じて、対応する油圧シリンダ86のロッド側室に供給され、当該油圧シリンダ86のヘッド側室の作動油が油圧配管L1に排出される。これにより、前記支持部材80の脚部82が収縮する。
一方の油圧シリンダ86のヘッド側室に接続された油圧配管L1には、チェック弁176が設けられ、同様に、他方の油圧シリンダ86のヘッド側室に接続された油圧配管L1には、チェック弁77が設けられている。これらのチェック弁176,177のそれぞれは、前記クレーン10が地面に与える荷重の反力を前記支持部材80が受けている状態において、前記ヘッド側室の作動油が当該ヘッド側室から流出する方向の流れを阻止する。これにより、前記油圧シリンダ86が収縮することが阻止される。一方、前記チェック弁176,177のそれぞれは、前記制御弁が図39に示す下側位置に切り換わると、前記ロッド側室に接続される前記油圧配管L2の作動油の圧力をパイロット圧力(パイロット源)として前記ヘッド側室の作動油が当該ヘッド側室から流出する方向の流れを許容する。なお、前記一対の制御弁171,172のそれぞれは、前記中央位置(中立位置)において、前記油圧ポンプ170から吐出された前記作動油が前記油圧シリンダ86の前記ヘッド側室に供給されるのを阻止する。その一方で、前記制御弁は、前記中央位置(中立位置)において、対応する前記チェック弁が前記油圧配管L2の作動油の圧力により当該チェック弁が開状態となることを阻止するために、前記ロッド側室に接続された前記油圧配管L2の作動油がタンクに流れるように構成されている。
物理量検出部93によって検出された前記圧力に対応する信号は、図2に示すコントローラ100に入力される。
[反力の演算方法]
前記支持部材80のフロート85(前記反力受け部)が地面から受ける前記反力は、例えば次の式(5)に基づいて演算される。
反力RF=ヘッド側の圧力×Ah-ロッド側の圧力×(Ah-Ar) ・・・(5)
ここで、Ahは、油圧シリンダ86の前記ヘッド側室の断面積(ボア断面積)であり、Arは、油圧シリンダ86のシリンダロッドの断面積である。従って、式中の(Ah-Ar)は、前記ロッド側室の実質的な断面積を示す。
なお、油圧シリンダ86のロッド側室は、油圧配管L2を介してタンクに接続されているので、前記ロッド側の圧力をほぼゼロとみなすこともできる。この場合、前記反力RFは、次の式(6)に基づいて演算されてもよい。
反力RF=ヘッド側の圧力×Ah ・・・(6)
図22に示すように、前記下部走行体11は、一対の支持部材80を備えるので、前記クレーン10を支持する支持反力の合計である支持反力RFtは、次の式(7)に基づいて演算される。
RFt=RF1+RF2 ・・・(7)
ここで、RF1は、第1の支持部材80のフロート85が地面から受ける反力であり、RF2は、第2の支持部材80のフロート85が地面から受ける反力である。
[動作]
第3の実施形態では、コントローラ100は、クレーン10における前記一対の支持部材80が前記クレーン10の重量(前記転倒モーメントMt)を支持すると仮定した場合に、前記一対の支持部材80のフロート85(接触部)が地面から受ける反力RFtの最大値RFmax(最大許容反力)を予め記憶している。
図2に示す前記演算部101は、前記式(5)及び(7)、又は前記式(6)及び(7)を用いて、前記物理量検出部93により検出される前記圧力に基づいて、前記支持反力RFtを演算する。
前記安定性判定部102は、前記支持反力RFtと前記最大許容反力RFmaxとを比較する。前記安定性判定部102は、前記支持反力RFtが前記最大許容反力RFmaxよりも小さい場合(前記支持反力RFt<前記最大許容反力RFmax)、前記支持反力RFtが安全領域に含まれ、前記クレーン10が安定状態であると判定する。一方、前記安定性判定部102は、前記支持反力RFtが前記最大許容反力RFmaxよりも大きい場合(前記支持反力RFt>前記最大許容反力RFmax)、前記支持反力RFtが危険領域に含まれ、前記クレーン10が不安定状態であると判定する。
前記安定性判定部102により前記クレーン10が不安定状態であると判定された場合、前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に関する安定性情報を前記報知装置110において前記オペレータに対して報知するための報知指令を出力する。
また、前記動作制御部104は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する。具体的に、前記ブーム起伏ウインチ30は、例えば、前記動作指令に基づいて前記ロープ38の巻き取りの動作を停止又は減速する。また、前記ジブ起伏ウインチ32が動作している場合には、前記ジブ起伏ウインチ32は、例えば、前記動作指令に基づいて前記ロープ44の巻取り(又は繰出し)の動作を停止又は減速する。
[第4の実施形態]
図40は、第4の実施形態における移動式クレーン10の下部走行体11を示す平面図であり、中央フレーム2の取付部にトランスリフタが取り付けられた状態を示す図である。図41は、図40のクレーン10の下部走行体11を示す側面図であり、中央フレーム2の取付部にトランスリフタが取り付けられた状態を示す図である。図42は、図40のクレーン10の中央フレーム2における取付部と当該取付部に取り付けられたトランスリフタとを示す一部破断の側面図である。
図43は、図40のクレーン10の下部走行体11を示す平面図であり、中央フレーム2の取付部201aに支持部材80(受け部材80)が取り付けられた状態を示す図である。図44は、図40のクレーン10の下部走行体11を示す側面図であり、中央フレーム2の取付部に支持部材80が取り付けられた状態を示す図である。図45は、図40のクレーン10の中央フレーム2における取付部201aと当該取付部201aに取り付けられた支持部材80とを示す一部破断の側面図である。図46は、図45のXXXXVI-XXXXVI線における断面図である。
図40~図46に示す第4の実施形態では、前記下部走行体11は、複数のトランスリフタ70と、複数の支持部材80(複数の受け部材80)とを有する。図43に示す具体例では、複数の支持部材80は、一対の支持部材80により構成される。
図40及び図43に示すように、前記複数の支持部材80のそれぞれは、対応トランスリフタ70と交換可能に構成されている。すなわち、第4の実施形態に係るクレーン10は、前記中央フレーム2に前記複数のトランスリフタ70が取り付けられた仕様であるトランスリフタ仕様と、前記中央フレーム2に前記複数の支持部材80(複数の受け部材80)が取り付けられた仕様である支持部材仕様との間で互いに仕様変更可能に構成されている。
前記一対の支持部材80のそれぞれは、前記フレームユニットを構成する中央フレーム2に接続される接続部と、地面に接する接触部と、を含む。前記支持部材80の前記接続部は、ビーム81の基端部8Aにより構成され、前記支持部材80の前記接触部は、脚部82の下端部85であるフロート85により構成される。
第4の実施形態におけるブーム方向は、前記組立作業及び前記分解作業において、前記ブーム14が前記上部旋回体12から延びる方向の水平成分の方向である。第4の実施形態では、前記ブーム方向D1は、図43に示す第1の方向D1(前方)である。図43及び図44に示すように、前記フロート85(接触部)は、前記旋回中心軸Cに対してブーム方向D1にずれた位置において地面から反力を受ける部分(反力受け部)である。前記フロート85(接触部)は、前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
以下、第4の実施形態について具体的に説明する。まず、図40~図42に示す前記トランスリフタ仕様について説明する。
図40~図42に示すように、第4の実施形態では、クレーン10は、4つのトランスリフタ70を備える。これらのトランスリフタ70は、一対のクローラ走行装置3,3を、中央フレーム2に取り付けるとき及び中央フレーム2から取り外すときに、中央フレーム2を地面から持ち上げるためのものである。4つのトランスリフタ70のうち2つのトランスリフタ70は、前部アクスル2bに取り付けられ、残りの2つのトランスリフタ70は、後部アクスル2cに取り付けられている。
各トランスリフタ70は、ビーム71と、脚部72とを有する。ビーム71は、フレーム2の前部アクスル2b又は後部アクスル2cに支持される基端部を有する。ビーム71の基端部は、フレーム2の前部アクスル2b又は後部アクスル2cに設けられた取付部201a,202aに取り付けられている。
本実施形態では、取付部201a,202aは、前部アクスル2b及び後部アクスル2cに設けられた貫通孔201a,202aによって構成されている。具体的に、フレーム2の各アクスルは、左右方向に延びる上板部201と、当該上板部201に対して下方に間隔をおいて配置され、左右方向に延びる下板部202と、を有する。貫通孔201aは、各アクスルの上板部201に設けられ、貫通孔202aは、下板部202に設けられている。貫通孔201aと貫通孔202aは、左右方向に間隔をおいて設けられている。
また、ビーム71の基端部にも貫通孔711a,712aが設けられている。これらの貫通孔同士の位置を合わせた状態でこれらの貫通孔にピン203が挿通される。これにより、ビーム71がフレーム2に取り付けられる。
前部アクスル2bに取り付けられるトランスリフタ70のビーム71は、前後方向のうちの第1の方向D1である前記ブーム方向D1又はこれに傾斜する方向に延びるように配置される。後部アクスル2cに取り付けられるトランスリフタ70のビーム71は、前記ブーム方向D1とは反対の第2の方向D2又はこれに傾斜する方向に延びるように配置される。トランスリフタ70は一対のクローラ走行装置3,3の取り付け又は取り外し時にフレーム2を地面から持ち上げる用途に使用されるものであるため、各ビーム71の先端部は、図3に示すように前後方向においてクローラ走行装置3の先端部よりもフレーム2側(内側)に位置している。
脚部72は、取付部材76によってビーム71の先端部に支持されるとともに先端部から下方に延びるシリンダ本体73と、シリンダ本体73に対して上下方向にスライド移動可能なロッド74とを含む油圧シリンダによって構成されている。
[支持部材(受け部材)]
次に、支持部材仕様について説明する。
本実施形態では、クレーン10の下部走行体11は、第1の支持部材80と、第2の支持部材80とを備える。各支持部材80は、ビーム81と、脚部82とを含む。ビーム81は、一対のクローラ走行装置3,3の間において中央フレーム2に支持される基端部8A(接続部)を有するとともにフレーム2から前記ブーム方向D1に延びている。第1の支持部材80のビーム81と第2の支持部材80のビーム81とは、左右方向に間隔をおいて配置されている。
前記脚部82は、取付部材186によって前記ビーム81の先端部8Bに支持されるとともに前記先端部8Bから下方に延びている。当該脚部82の下端部85であるフロート85は一対のクローラ走行装置3,3よりも前記ブーム方向D1において地面GRに接するように構成されている。脚部82は、ドライブタンブラ4aの回転軸CBに対して前記ブーム方向D1にずれた位置にあるように構成されている。本実施形態では、脚部82は油圧シリンダによって構成されている。具体的には、脚部82は、ビーム81の先端部に支持されるとともに前記先端部から下方に延びるシリンダ本体83と、シリンダ本体83に対して上下方向にスライド移動可能なロッド84とを含む。
図46に示すように、各支持部材80のビーム81は、長手方向に直交する断面が閉断面となる構造を有する。具体的には、図45及び図46に示すように、ビーム81は、ビーム81の長手方向に延びる上板部811と、当該上板部811に対して下方に間隔をおいて前記長手方向に延びる下板部812と、前記長手方向にそれぞれ延びる一対の側板部813,814と、を有する。一方の側板部813は、上板部811と下板部812の右端部同士を接続しており、他方の側板部814は、上板部811と下板部812の右端部同士を接続している。
ビーム81の基端部には、中央フレーム2にビーム81を取り付けるための被取付部としての貫通孔811a,812aが設けられている。具体的に、当該貫通孔811aは、上板部811の基端部に設けられ、貫通孔812aは、下板部812の基端部に設けられている。これらの貫通孔811a,812aと、上述した前部アクスル2bの上板部201と下板部202に設けられている貫通孔201a,202aとの位置を合わせた状態でこれらの貫通孔にピン203が挿通される。これにより、ビーム71がフレーム2に取り付けられる。
上記のように本実施形態では、支持部材80は中央フレーム2に対して着脱可能であり、また、支持部材80のビーム81は、取付部201a,202aからトランスリフタ70を取り外した状態で取付部201a,202aに取り付けられるように構成されている。すなわち、フレーム2の取付部は、トランスリフタ70のビーム71を取り付ける用途と、支持部材80のビーム81を取り付ける用途とに兼用されている。
[物理量検出部]
物理量検出部90は、クレーン10の組立作業及び分解作業においてブーム14を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するためのものである。具体的には、物理量検出部90は、前記起立動作及び前記倒伏動作において支持部材80のビーム81に生じるひずみを検出するためのものである。物理量検出部90は、支持部材80のビーム81に生じるひずみであってクレーン10を前記ブーム方向D1に倒す向きのモーメントの変化に対応して変化するひずみを検出可能に構成されている。
本実施形態では、クレーン10の下部走行体11は、第1の支持部材80に生じるひずみを検出可能な第1の物理量検出部90と、第2の支持部材80に生じるひずみを検出可能な第2の物理量検出部90と、を備える。第1の物理量検出部90と第2の物理量検出部90は同じ構造を有し、対応する支持部材80に設けられる位置も同じであるため、以下では、主に一方の物理量検出部90について説明する。
本実施形態では、図43~図45に示すように、物理量検出部90は、対応する支持部材80のビーム81に設けられている。物理量検出部90は、支持部材80のビーム81のひずみを検出するための少なくとも1つのデバイスによって構成される。当該デバイスとしては、前記第1の実施形態の説明で例示したデバイスと同様のものを用いることができる。
具体的には、本実施形態では、図43及び図45に示すように、物理量検出部90は、対応する支持部材80のビーム81の基端部に設けられている。具体的には、物理量検出部90は、ビーム81の基端部のうち、前後方向の位置が中央フレーム2のアクスル2bの前端部に隣接する部位に設けられている。なお、ビーム81の基端部は、ビーム81のうち、ビーム81の長手方向の中央よりも中央フレーム2の取付部201a側の部位であり、ビーム81の先端部は、ビーム81のうち、ビーム81の長手方向の中央よりも脚部82側の部位である。
図46に示すように、物理量検出部90は、複数のひずみゲージ(図例では、4つのひずみゲージ90A,90B,90C,90D)によって構成されている。ひずみゲージ90A,90B(第1デバイス)は、ビーム81の基端部における上部に設けられ、第2ひずみゲージ90C,90D(第2デバイス)は、ビーム81の基端部における下部に設けられている。
より具体的には、ひずみゲージ90Aは、ビーム81の上板部811と一方の側板部813との境界部分に設けられ、ひずみゲージ90Bは、ビーム81の上板部811と他方の側板部814との境界部分に設けられ、ひずみゲージ90Cは、ビーム81の下板部812と一方の側板部813との境界部分に設けられ、ひずみゲージ90Dは、ビーム81の下板部812と他方の側板部814との境界部分に設けられている。本実施形態では、各ひずみゲージは、ビーム81の外面に取り付けられているが、ビーム81の内面に取り付けられていてもよい。
物理量検出部90は、クレーン10の前記起立動作及び前記倒伏動作において支持部材80のビーム81に生じるひずみを検出し、物理量検出部90によって検出された前記物理量としてのひずみに対応する信号は、図2に示すコントローラ100に入力される。コントローラ100が行う演算処理は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
[組立作業及び分解作業]
次に、第4の実施形態に係るクレーン10の組立作業及び分解作業について説明する。図43及び図44に示すように、第4の実施形態は、前記ブーム方向D1が前後方向の一方の方向(具体的な図例では前方)である点で、第1の実施形態と同様である。また、第4の実施形態は、前記反力受け部が前記支持部材80の前記ビーム82の下端部を構成する前記フロート85である点、前記物理量検出部90が前記支持部材80に設けられている点で、第2の実施形態と同様である。従って、第4の実施形態における組立作業及び分解作業の基本的な流れは、図8~図13及び図26~図31を参照して説明した内容と同様であるので、詳細な説明は省略する。
[第4の実施形態の変形例]
図47は、前記第4の実施形態の変形例を模式的に示す斜視図である。図47に示す変形例では、ビーム81は、ひずみゲージ(ひずみ検出部)を取り付けるための測定支台200(変形部材)をさらに有する。測定支台200は、前後方向においてブーム14の先端部14Bがブーム14の基端部14Aよりも前記ブーム方向D1にずれた位置に配置された状態で、ビーム81に生じるひずみを検出可能な位置に配置されている。測定支台200は、このような位置に配置されていればよいので、測定支台200を配置する部位は特に限定されない。前記測定支台200の詳細な構造は、図38に示す第2の実施形態の変形例5と同様であるので、詳細な説明は省略する。
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係るクレーン10は、図43~図47を参照して説明した第4の実施形態と同様の構成を有する。第5の実施形態は、前記物理量検出部が第4の実施形態のような前記ひずみ検出部90ではなく反力検出部93(図6参照)により構成される点が、第4の実施形態と相違する。従って、第5の実施形態では、図43~図47に示される前記ひずみ検出部90は、省略されていてもよい。
以下、第5の実施形態について主に前記第4の実施形態と相違する点を説明する。
図43に示す第5の実施形態に係るクレーン10の前記下部走行体11は、第4の実施形態と同様に、一対の支持部材80(一対の受け部材80)を有する。一対の受け部材80は、第4の実施形態と同様に、第1の支持部材80と、この第1の支持部材80に対して左右方向に間隔をおいて配置される第2の支持部材80とにより構成されている。前記一対の支持部材80のそれぞれは、前記フレームユニットを構成する中央フレーム2に接続される接続部と、地面に接する接触部と、を含む。前記支持部材80の前記接続部は、ビーム81の基端部8Aにより構成され、前記支持部材80の前記接触部は、脚部82の下端部であるフロート85により構成される。
第5の実施形態では、前記ブーム方向D1は、第4の実施形態と同様に、図43に示す第1の方向D1(前方)である。図22に示すように、前記フロート85(接触部)は、前記旋回中心軸Cに対してブーム方向D1にずれた位置において地面から反力を受ける部分(反力受け部)である。前記フロート85(接触部)は、前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
[物理量検出部]
第5の実施形態では、物理量検出部90は、クレーン10の組立作業及び分解作業においてブーム14を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するための反力検出部93(図6参照)である。具体的には、前記物理量検出部90は、前記支持部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化する物理量を検出する。物理量検出部93は、クレーン10を前後方向の一方の方向に倒す向きのモーメントに対応する圧力を前記物理量として検出可能に構成されている。第5の実施形態では、前記支持部材80は、第4の実施形態と同様に、前記組立作業及び前記分解作業において、前記脚部82の下端部であるフロート85(接触部)が前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向D1に離れた位置に配置される。
第5の実施形態に係るクレーン10が備える油圧回路は、第3の実施形態において図39を参照して説明したものと同様である。従って、第5の実施形態では、前記物理量検出部93は、第1の支持部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化する物理量を検出する第1の圧力センサ91と、第2の支持部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化する物理量を検出する第2の圧力センサ92と、を含む。第5の実施形態では、第3の実施形態と同様に、前記第1の圧力センサ91及び前記第2の圧力センサ92のそれぞれが検出する前記物理量は、対応する油圧シリンダ86におけるヘッド側の圧力である。
物理量検出部93によって検出された前記圧力に対応する信号は、図2に示すコントローラ100に入力される。
第5の実施形態において、前記反力の演算方法は、第3実施形態において説明した方法と同様である。
また、第5の実施形態では、コントローラ100は、第3の実施形態と同様に、前記一対の支持部材80のフロート85(接触部)が地面から受ける反力RFtの最大値RFmax(最大許容反力)を予め記憶している。図2に示す前記演算部101は、前記式(5)及び(7)、又は前記式(6)及び(7)を用いて、前記物理量検出部93により検出される前記圧力に基づいて、前記支持反力RFtを演算する。
前記安定性判定部102は、前記支持反力RFtと前記最大許容反力RFmaxとを比較し、第3の実施形態と同様に、前記クレーン10が安定状態であるか不安定状態であるかについて判定する。
前記安定性判定部102により前記クレーン10が不安定状態であると判定された場合、前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に関する安定性情報を前記報知装置110において前記オペレータに対して報知するための報知指令を出力する。
また、前記動作制御部104は、第3の実施形態と同様に、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する。
[第6の実施形態]
図48は、第6の実施形態に係る移動式クレーン10の下部走行体11を示す平面図である。図49は、図48のクレーン10の下部走行体11を示す側面図である。図50は、図48の下部走行体11のクローラ走行装置3に設けられた支持部材80のビーム81をXXXXX-XXXXX線において切断したときの断面図である。
図48~図50に示す第6の実施形態では、前記下部走行体11は、複数の支持部材80(複数の受け部材80)を有する。図48に示す具体例では、複数の支持部材80は、第1の右側支持部材80(第1の右側受け部材80)と、第1の左側支持部材80(第1の左側受け部材80)と、第2の右側支持部材80(第2の右側受け部材80)と、第2の左側支持部材80(第2の左側受け部材80)と、により構成される。前記第1の右側支持部材80及び前記第1の左側支持部材80は、前記第1のクローラ走行装置3の前記クローラフレーム1である第1のクローラフレーム1に接続される。前記第2の右側支持部材80及び前記第2の左側支持部材80は、前記第2のクローラ走行装置3の前記クローラフレーム1である第2のクローラフレーム1に接続される。
前記複数の支持部材80のそれぞれは、前記フレームユニットを構成する前記クローラフレーム1に接続される接続部と、地面に接する接触部と、を含む。前記支持部材80の前記接続部は、ビーム81の基端部8Aにより構成され、前記支持部材80の前記接触部は、脚部82の下端部85であるフロート85により構成される。
第6の実施形態におけるブーム方向は、前記組立作業及び前記分解作業において、前記ブーム14が前記上部旋回体12から延びる方向の水平成分の方向である。第6の実施形態では、前記ブーム方向D1は、図48に示す第1の方向D1(前方)である。図48に示すように、前記フロート85(接触部)は、前記旋回中心軸Cに対してブーム方向D1にずれた位置において地面から反力を受ける部分(反力受け部)である。前記フロート85(接触部)は、前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
図48に示すように、前記第1の右側支持部材80は、当該第1の右側支持部材80の前記フロート85(接触部)が、前記第1のクローラフレーム1に対して右側にずれた位置であって当該第1の右側支持部材80の前記ビーム81の基端部8A(前記接続部)に対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
前記第1の左側支持部材80は、当該第1の左側支持部材80の前記フロート85(前記接触部)が、前記第1のクローラフレーム1に対して左側にずれた位置であって当該第1の左側支持部材80の前記ビーム81の基端部8A(前記接続部)に対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
前記第2の右側支持部材80は、当該第2の右側支持部材80の前記フロート85(前記接触部)が、前記第2のクローラフレーム1に対して右側にずれた位置であって当該第2の右側支持部材80の前記ビーム81の基端部8A(前記接続部)に対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
前記第2の左側支持部材80は、当該第2の左側支持部材80の前記フロート85(前記接触部)が、前記第2のクローラフレーム1に対して左側にずれた位置であって当該第2の左側支持部材80の前記ビーム81の基端部8A(前記接続部)に対して前記ブーム方向D1にずれた位置に配置される。
以下、第6の実施形態について具体的に説明する。図48及び図49に示すように、クローラフレーム1は、フレーム本体1Aと、タンブラブラケット1Bとを含む。フレーム本体1Aは、前後方向に延びる形状を有する。フレーム本体1Aは、当該フレーム本体1Aの長手方向に延びる上板部111と、当該上板部111に対して下方に間隔をおいて配置されるとともに前記長手方向に延びる下板部112と、上板部111及び下板部112を接続する側板部113と、を有する。
[支持部材(受け部材)]
図48及び図49に示すように、各支持部材80は、ビーム81と、脚部82とを含む。ビーム81は、クローラフレーム1に支持される基端部8Aと、前後方向の位置が前記基端部8Aよりも前記ブーム方向D1にある先端部8Bとを有する。本実施形態では、各ビーム81は、図48に示す平面視において直線状に延びている。
各ビーム81の基端部8Aはクローラフレーム1に取り付けられており、各ビーム81は前記ブーム方向D1に対して傾斜する方向に延びている。具体的には、各ビーム81の基端部8Aは、クローラフレーム1のフレーム本体1Aのうち、前部アクスル2bに対して前記ブーム方向D1にずれた部位に取り付けられている。
より具体的には、右側支持部材80におけるビーム81の基端部8Aは、クローラフレーム1のフレーム本体1Aの右側部に取り付けられており、当該ビーム81は、前記右側部から前記ブーム方向D1に対して右に傾斜した方向(右斜め前方)に延びている。左側支持部材80におけるビーム81の基端部8Aは、クローラフレーム1のフレーム本体1Aの左側部に取り付けられており、当該ビーム81は、前記左側部から前記ブーム方向D1に対して左に傾斜した方向(左斜め前方)に延びている。
脚部82は、ビーム81の先端部8Bに支持されるとともに当該先端部8Bから下方に延びて下端部85が地面に接するように構成されている。本実施形態では、脚部82は油圧シリンダによって構成されている。具体的には、脚部82は、ビーム81の先端部8Bに支持されるとともに前記先端部8Bから下方に延びるシリンダ本体83と、シリンダ本体83に対して上下方向にスライド移動可能なロッド84とを含む。
各支持部材80における脚部82は、ドライブタンブラ4aの回転軸CBに対して第1方向D1にずれた位置にある。ここで、「脚部82がドライブタンブラ4a(第1ホイール)の回転軸CBに対して前記ブーム方向D1にずれた位置にある」とは、脚部82の中心軸CCがドライブタンブラ4a(第1ホイール)の回転軸CBに対して前記ブーム方向D1にずれた位置にあることをいう。本実施形態では、脚部82の中心軸CCは、上下方向に延びる油圧シリンダの中心軸CC(ロッド84の中心軸CC)である。
右側支持部材80における脚部82(具体的には、脚部82の中心軸CC)は、クローラフレーム1よりも右に位置し、左側支持部材80における脚部82(具体的には、脚部82の中心軸CC)は、クローラフレーム1よりも左に位置している。
図50は、図48に示す下部走行体11のクローラ走行装置3に設けられた支持部材80のビーム81をXXXXX-XXXXX線において切断したときの断面図である。図50に示すように、各支持部材のビーム81は、当該ビーム81の長手方向に直交する断面が閉断面となる構造を有する。図48~図50に示すように、ビーム81は、ビーム81の長手方向に延びる上板部811と、当該上板部811に対して下方に間隔をおいて配置されるとともに前記長手方向に延びる下板部812と、前記長手方向にそれぞれ延びる一対の側板部813,814と、を有する。一方の側板部813は、上板部811と下板部812の右端部同士を接続しており、他方の側板部814は、上板部811と下板部812の右端部同士を接続している。より具体的には、ビーム81は、第2上板部815をさらに有する。第2上板部815は、上板部811と脚部82との間に位置し、上板部811と脚部82とを接続している。第2上板部815はビーム81の先端部8Bに向かうにつれて下方に傾斜するように配置されている。
ビーム81の基端部8Aには、クローラフレーム1にビーム81を取り付けるための被取付部が設けられている。本実施形態では、当該被取付部は、上板部811の基端部に設けられた貫通孔811aと、下板部812の基端部に設けられた貫通孔812aとによって構成される。一方、クローラフレーム1のフレーム本体1Aには、取付部が設けられている。当該取付部は、フレーム本体1Aの上板部111に設けられた貫通孔111aと、下板部112に設けられた貫通孔112aとによって構成される。前記被取付部を構成する貫通孔811a、812aと、前記取付部を構成する貫通孔111a,112aとの位置を合わせた状態でこれらの貫通孔に上下方向に延びるピン203が挿通されている。これにより、ビーム81がクローラフレーム1に対してピン203回りに回動可能に取り付けられている。
本実施形態では、各支持部材80はクローラフレーム1に対して着脱可能に構成されている。すなわち、上述したピン203を前記貫通孔から取り外すことにより、各支持部材80をクローラフレーム1から取り外すことができる。
図51は、図48のクレーン10の下部走行体11の前部を示す側面図である。図52は、図48のクレーン10の下部走行体11の前部を示す平面図である。図51及び図52は、支持部材80を使用していないときの状態を示している。
本実施形態では、図48及び図49に示すようにクレーン10の組立作業及び分解作業において当該支持部材80が使用されるときには、各支持部材80は、クローラフレーム1のフレーム本体1Aから斜め前方に延びるように配置される。その一方で、支持部材80が使用されないときには、各支持部材80は、図51及び図52に示すようにクローラフレーム1のフレーム本体1Aに設けられた収容空間に収容することができる。
具体的には、本実施形態では、前記収容空間は、上板部811、下板部112及び側板部113によって区画された凹部によって形成されている。脚部82は、ビーム81の先端部8Bに連結部材87によって連結されている。連結部材87にはピン87aが設けられている。脚部82は、当該ピン87a回りに回動可能に連結部材87に取り付けられている。各支持部材80を収容する際には、脚部82の下端部85をロッド84から取り外し、脚部82をピン87a回りに回動させた状態でビーム81をピン86A回りに回動させる。これにより、ビーム81及び脚部82が前記収容空間に収容される。
[物理量検出部]
物理量検出部90は、クレーン10の組立作業及び分解作業においてブーム14を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するためのものである。具体的には、物理量検出部90は、支持部材80のビーム81に生じるひずみを検出するためのものである。物理量検出部90は、支持部材80のビーム81に生じるひずみであってクレーン10を前記ブーム方向D1に倒す向きのモーメントに対応するひずみを検出可能に構成されている。
本実施形態では、クレーン10は、複数の物理量検出部90を備える。具体的には、クレーン10は、4つの支持部材80に設けられた4つの物理量検出部90を備える。したがって、各支持部材80のビーム81に生じるひずみを検出することができる。なお、本実施形態では、4つの物理量検出部90は、同じ構造を有し、対応するクローラフレーム1に設けられる位置も図3に示すように同じであるので、以下では主に一つの物理量検出部90について詳細に説明する。
本実施形態では、物理量検出部90は、支持部材80におけるビーム81のうち、クローラフレーム1に支持されるビーム81の基端部8Aと、当該ビーム81の長手方向の中央との間の部位に生じるひずみを検出可能に構成されている。ただし、物理量検出部90は、支持部材80におけるビーム81のうち、脚部82を支持する先端部8Bと、ビーム81の長手方向の中央との間の部位に生じるひずみを検出可能に構成されていてもよく、ビーム81の長手方向の中央に生じるひずみを検出可能に構成されていてもよい。
物理量検出部90は、ビーム81のうち、ひずみが生じやすい部位に設けられるのが好ましい。これにより、モーメントに起因して生じるビーム81のひずみを感度よく検出することができる。ひずみが生じやすい部位としては、例えば、ビーム81とクローラフレーム1の接続部又は当該接続部に隣接する隣接部、ビーム81と脚部82の接続部又は当該接続部に隣接する隣接部を挙げることができる。
物理量検出部90は、ビーム81のひずみを検出するための1つ又は複数のデバイスによって構成される。当該デバイスとしては、前記第1の実施形態の説明で例示したデバイスと同様のものを用いることができる。
図50に示すように、本実施形態では、物理量検出部90は、複数のひずみゲージ(図例では、第1ひずみゲージ90A,第2ひずみゲージ90B)によって構成されている。第1ひずみゲージ90Aは、ビーム81の上部を構成する上板部811に設けられ、第2ひずみゲージ90Bは、ビーム81の下部を構成する下板部812に設けられている。これらのひずみゲージ90A,90Bにより、ビーム81の上部に生じるひずみとビーム81の下部に生じるひずみを検出することができる。
本実施形態では、第1ひずみゲージ90Aは、ビーム81の上板部811における幅方向の中央に設けられているが、これに限られず、幅方向の中央から当該幅方向の一方にずれた位置に設けられていてもよい。同様に、第2ひずみゲージ90Bは、ビーム81の下板部812における幅方向の中央に設けられているが、これに限られず、幅方向の中央から当該幅方向の一方にずれた位置に設けられていてもよい。本実施形態では、各ひずみゲージは、ビーム81の外面に取り付けられているが、ビーム81の内面に取り付けられていてもよい。
物理量検出部90は、クレーン10の前記起立動作及び前記倒伏動作において支持部材80のビーム81に生じるひずみを検出し、物理量検出部90によって検出された前記ひずみに対応する信号は、図2に示すコントローラ100に入力される。コントローラ100が行う演算処理は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
[組立作業及び分解作業]
次に、第6の実施形態に係るクレーン10の組立作業及び分解作業について説明する。図48及び図49に示すように、第6の実施形態は、前記ブーム方向D1が前後方向の一方の方向(具体的な図例では前方)である点で、第1の実施形態と同様である。また、第6の実施形態は、前記反力受け部が前記支持部材80の前記ビーム82の下端部を構成する前記フロート85である点、前記物理量検出部90が前記支持部材80に設けられている点で、第2及び第4の実施形態と同様である。従って、第6の実施形態における組立作業及び分解作業の基本的な流れは、図8~図13及び図26~図31を参照して説明した内容と同様であるので、詳細な説明は省略する。
[第6の実施形態の変形例]
図53は、前記第6の実施形態の変形例1に係るクレーン10の下部走行体11を示す平面図である。当該変形例1は、支持部材80のビーム81が互いに取り付け及び取り外しが可能な複数の部材によって構成されている点が図48及び図49に示す態様と相違している。なお、当該相違点以外の構成については、変形例1に係るクレーン10は図48及び図49に示す態様と同様である。
図54は、第6の実施形態の変形例1に係るクレーン10におけるクローラフレーム1と、当該クローラフレーム1に取り付けられた支持部材80とを示す斜視図であって、当該支持部材80のビーム81の一部が取付部から取り外された状態を示す図である。図55は、図54に示すクローラフレーム1と支持部材80とを示す斜視図であって、当該支持部材80のビーム81の一部が前記取付部に取り付けられた状態を示す図である。図56は、図54に示すクローラフレーム1と支持部材80とを示す側面図であって、当該支持部材80のビーム81の一部が前記取付部から取り外された状態を示す図である。図57は、図54に示すクローラフレーム1と支持部材80とを示す側面図であって、当該支持部材80のビーム81の一部が前記取付部に取り付けられた状態を示す図である。
図54に示すように、変形例1に係るクレーン10では、支持部材80のビーム81は、ビーム81の基端部8Aを含む第1部材81Aと、ビーム81の先端部8Bを含む第2部材81Bとによって構成されている。第1部材81Aと第2部材81Bとは互いに取り付け及び取り外しが可能である。また、当該変形例1では、第1部材81Aから取り外された第2部材81Bは、下部走行体11の前部アクスル2b及び後部アクスル2cに設けられたトランスリフタ70を構成する部材として用いることができる。
図54に示すように、第1部材81Aは、クローラフレーム1のフレーム本体1Aに取り付けられている。第1部材81Aは、上板部811Aと、当該上板部811Aに対して下方に間隔をおいて配置される下板部812Aと、一対の側板部813A,814Aと、を有する。一方の側板部813Aは、上板部811Aと下板部812Aの右端部同士を接続しており、他方の側板部814Aは、上板部811Aと下板部812Aの右端部同士を接続している。
図54及び図56に示すように、第1部材81Aの基端部8Aには、クローラフレーム1に第1部材81Aを取り付けるための被接続部が設けられている。当該被接続部は、上板部811Aの基端部に設けられた貫通孔と、下板部812Aの基端部に設けられた貫通孔とによって構成される。一方、クローラフレーム1のフレーム本体1Aには、接続部が設けられている。当該接続部は、フレーム本体1Aの上板部111に設けられた貫通孔と、下板部112に設けられた貫通孔とによって構成される。前記被接続部を構成する前記貫通孔と、前記接続部を構成する前記貫通孔との位置を合わせた状態でこれらの貫通孔に上下方向に延びるピン86Aが挿通されている。これにより、第1部材81Aがクローラフレーム1に対してピン86A回りに回動可能に取り付けられている。
第1部材81Aにはひずみ検出部90が設けられている。具体的に、第1部材81Aは、前記実施形態と同様に、例えば図50に示すような閉断面構造を有する。そして、当該閉断面を構成する第1部材81Aの上板部811Aには、第1ひずみゲージ90Aが設けられ、当該閉断面を構成する第1部材81Aの下板部812Aには、第2ひずみゲージ90Bが設けられている。なお、ひずみ検出部90は、第2部材81Bに設けられていてもよい。
第1部材81Aの一対の側板部813A,814Aは、前記被接続部とは反対側に取付部を有する。当該取付部は、第2部材81Bを第1部材81Aに取り付けるための部分である。当該取付部は、一対のフック部88A と、当該フック部88Aの下方に設けられた一対の下部貫通孔89Aとによって構成されている。
第2部材81Bは、上板部811Bと、当該上板部811Bに対して下方に間隔をおいて配置される下板部812Bと、一対の側板部813B,814Bと、を有する。一方の側板部813Bは、上板部811Bと下板部812Bの右端部同士を接続しており、他方の側板部814Bは、上板部811Bと下板部812Bの右端部同士を接続している。第2部材81Bは、前記実施形態と同様に、例えば図50に示すような閉断面構造を有する。
第1部材81Aの上板部811Aと第2部材81Bの上板部811Bは、ビーム81の上板部811を構成し、第1部材81Aの下板部812Aと第2部材81Bの下板部812Bは、ビーム81の下板部812を構成している。第1部材81Aの一方の側板部813Aと第2部材81Bの一方の側板部813Bは、ビーム81の一方の側板部813を構成し、第1部材81Aの他方の側板部814Aと第2部材81Bの他方の側板部814Bは、ビーム81の他方の側板部814を構成している。
第2部材81Bの先端部は、脚部82を支持している。脚部82は、第2部材81Bの先端部に連結部材87Aによって連結されている。
第2部材81Bの一対の側板部813B,814Bは、第2部材81Bの先端部とは反対側に被取付部を有する。当該被取付部は、第1部材81Aの前記取付部に係合可能に構成されている。当該被取付部は、一対の上部貫通孔88Bと、当該上部貫通孔88Bの下方に設けられた一対の下部貫通孔89Bと、これらの貫通孔に挿通される一対のピンとによって構成されている。上部貫通孔88Bには予めピンが挿入されて固定されている。
図54及び図55に示すように、第2部材81Bにおける上部貫通孔88Bに配置されたピンを第1部材81Aにおけるフック部88Aに係合されるとともに、第2部材81Bにおける下部貫通孔89Bの位置を第1部材81Aにおける下部貫通孔89Aの位置に合わせた状態でこれらの貫通孔にピンを挿入することにより、第1部材81Aに対して第2部材81Bを取り付けることができる。なお、第1部材81Aから第2部材81Bを取り外す際には、上述した作業の逆の作業が行われる。
第1部材81Aから第2部材81Bが取り外された場合、第1部材81Aは、図15において破線で示すように、ピン86A回りに回動されてクローラフレーム1のフレーム本体1Aに設けられた前記収容空間に収容される。
第1部材81Aから取り外された第2部材81Bは、下部走行体11の前部アクスル2b及び後部アクスル2cに設けられたトランスリフタ70を構成する部材として用いることができる。具体的に、前部アクスル2bには、支持部材80の第1部材81Aと同様の構造を有する一対の基端部材70Aが前部アクスル2bに対して回動可能に設けられており、後部アクスル2cには、支持部材80の第1部材81Aと同様の構造を有する一対の基端部材70Aが後部アクスル2cに対して回動可能に設けられている。第1部材81Aから取り外された第2部材81Bは、トランスリフタ70の基端部材70Aに取り付けられることにより、トランスリフタ70の一部を構成することができる。
図55及び図57に示す具体例では、第1部材81Aに第2部材81Bが取り付けられた状態において、第1部材81Aの上板部811Aと第2部材81Bの上板部811Bとは、水平方向に並び、かつ、互いに接している。したがって、クレーン10が第1方向D1に倒れようとする方向のモーメントが発生し、当該モーメントに起因して支持部材80の脚部が地面から上向きの反力を受けたときに、第1部材81A及び第2部材81Bにおいて効果的にひずみを生じさせることができる。
図58は、前記第6の実施形態の変形例2を模式的に示す斜視図である。図58に示す変形例2では、ビーム81は、ひずみゲージ(ひずみ検出部)を取り付けるための測定支台200(変形部材)をさらに有する。測定支台200は、前後方向においてブーム14の先端部14Bがブーム14の基端部14Aよりも第1方向D1にはずれた位置に配置された状態で、ビーム81に生じるひずみを検出可能な位置に配置されている。測定支台200は、このような位置に配置されていればよいので、測定支台200を配置する部位は特に限定されない。前記測定支台200の詳細な構造は、図38に示す第2の実施形態の変形例5と同様であるので、詳細な説明は省略する。
[第7の実施形態]
第7の実施形態に係るクレーン10は、図48~図57を参照して説明した第6の実施形態と同様の構成を有する。第7の実施形態は、前記物理量検出部が第6の実施形態のような前記ひずみ検出部90ではなく反力検出部93(図6参照)により構成される点が、第6の実施形態と相違する。従って、第7の実施形態では、図48~図57に示される前記ひずみ検出部90は、省略されていてもよい。
以下、第7の実施形態について主に前記第6の実施形態と相違する点を説明する。
図48に示す第7の実施形態に係るクレーン10の前記下部走行体11は、第6の実施形態と同様に、4つの支持部材80(4つの受け部材80)を有する。4つの支持部材80は、第6の実施形態と同様に、第1の右側支持部材80(第1の右側受け部材80)と、第1の左側支持部材80(第1の左側受け部材80)と、第2の右側支持部材80(第2の右側受け部材80)と、第2の左側支持部材80(第2の左側受け部材80)と、により構成される。
前記4つの支持部材80のそれぞれは、前記フレームユニットを構成するクローラフレーム1に接続される接続部と、地面に接する接触部と、を含む。前記支持部材80の前記接続部は、ビーム81の基端部8Aにより構成され、前記支持部材80の前記接触部は、脚部82の下端部であるフロート85により構成される。
第7の実施形態では、前記ブーム方向D1は、第6の実施形態と同様に、図48に示す第1の方向D1(前方)である。第7の実施形態における前記フロート85(接触部)の配置は、第6の実施形態と同様である。
[物理量検出部]
第7の実施形態では、物理量検出部93は、クレーン10の組立作業及び分解作業においてブーム14を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するための反力検出部93(図6参照)である。具体的には、前記物理量検出部90は、前記支持部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化する物理量を検出する。物理量検出部93は、クレーン10を前後方向の一方の方向に倒す向きのモーメントに対応する圧力を前記物理量として検出可能に構成されている。第7の実施形態では、前記支持部材80は、第6の実施形態と同様に、前記組立作業及び前記分解作業において、前記脚部82の下端部であるフロート85(接触部)が前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向D1に離れた位置に配置される。
第7の実施形態に係るクレーン10が備える油圧回路は、第3の実施形態において図39を参照して説明したものと同様である。ただし、第7の実施形態に係るクレーン10の下部走行体11は、4つの支持部材80を備え、当該4つの支持部材80のそれぞれが前記油圧シリンダ86を備える。従って、第7の実施形態では、前記物理量検出部93は、図6に示す第1の圧力センサ91及び第2の圧力センサ92の他、さらに、図略の第3の圧力センサ及び第4の圧力センサを含む。
物理量検出部93によって検出された前記圧力に対応する信号は、図2に示すコントローラ100に入力される。
第7の実施形態において、前記反力の演算方法は、第3実施形態において説明した方法と同様である。
また、第7の実施形態では、コントローラ100は、第3の実施形態と同様に、前記一対の支持部材80のフロート85(接触部)が地面から受ける反力RFtの最大値RFmax(最大許容反力)を予め記憶している。図2に示す前記演算部101は、前記式(5)及び(7)、又は前記式(6)及び(7)を用いて、前記物理量検出部93により検出される前記圧力に基づいて、前記支持反力RFtを演算する。
前記安定性判定部102は、前記支持反力RFtと前記最大許容反力RFmaxとを比較し、第3の実施形態と同様に、前記クレーン10が安定状態であるか不安定状態であるかについて判定する。
前記安定性判定部102により前記クレーン10が不安定状態であると判定された場合、前記報知制御部103は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に関する安定性情報を前記報知装置110において前記オペレータに対して報知するための報知指令を出力する。
また、前記動作制御部104は、第3の実施形態と同様に、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する。
[その他の変形例]
以上、実施形態に係る移動式クレーン10について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
(A)例えば、前記第1、第2、第4、第6の実施形態では、物理量検出部90は、複数のひずみゲージによって構成されているが、1つのひずみゲージによって構成されていてもよい。
(B)前記実施形態では、起伏部材がジブ17を含んでいるが、前記移動式クレーンはジブを有していないクレーンにも適用できる。
(C)前記第1、第4~第7の実施形態では、前記ブーム方向は、前方であるが、これに限られず、後方であってもよい。また、前記第2、第3の実施形態では、前記ブーム方向は、右方であるが、これに限られず、左方であってもよい。
(D)前記第1の実施形態では、物理量検出部90は、クローラフレーム1の両端部のうち、タンブラブラケット1Bが設けられた端部に配置されているが、当該端部とは反対側の端部(アイドラ4cが取り付けられている端部)に配置されていてもよい。また、物理量検出部90は、クローラフレーム1の両端部に設けられていてもよい。このように物理量検出部90がクローラフレーム1の両端部に設けられている場合には、起伏部材の起伏方向が前後のどちらであっても、転倒モーメントに関連してクローラフレーム1に生じるひずみを検出することができる。
(E)前記第4~第7の実施形態では、一対のクローラフレーム1の両方に物理量検出部90が設けられているが、物理量検出部90は、一方のクローラフレーム1にのみ設けられていてもよい。
(F)前記第1~第7の実施形態に係るクレーン10は、当該クレーン10の組立作業及び分解作業において起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するものであるが、当該クレーン10は、前記組立作業及び前記分解作業以外の他の作業においても、当該クレーン10を安全に動作させるために必要な情報を検出する目的で用いることができる。当該他の作業としては、例えば、前記移動式クレーンについて過負荷試験を行うための作業を挙げることができる。前記過負荷試験は、前記モーメントリミッタを停止させた状態、又は前記モーメントリミッタを停止させていないが前記モーメントリミッタのリミッタを解除した状態で、定格荷重を超える負荷が前記移動式クレーンに与えられるように所定の吊り荷を吊り上げる吊り作業を行う試験である。この過負荷試験を行うための作業では、前記動作制御部104は、前記安定性判定部102により判定された前記安定性に基づいてクレーン10の前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する。具体的に、前記過負荷試験において、特に前記吊り荷を吊り上げて当該吊り荷を地面から上に離す動作が行われるときに、前記主巻ウインチ34又は前記補巻ウインチ36は、前記動作指令に基づいて、前記吊り荷を上昇させるための動作を停止又は減速するように構成されていてもよい。
また、前記他の作業としては、例えば、図1に示す主巻ロープ50の下端部に図略のバケットなどの先端アタッチメントを装着し、当該先端アタッチメントを地面よりも上方の位置から地面に向けて勢いよく落下させることにより地面を掘削する掘削作業を挙げることができる。また、前記他の作業としては、前記クレーン10を用いて吊り荷を移動させる通常の吊り作業を挙げることができる。これにより、当該吊り作業の安全性が向上する。
(G)物理量検出部を設ける位置について
前記クレーンでは、物理量検出部は、支持部材のビームに生じるひずみを検出可能に構成されていればよいので、物理量検出部を設ける位置は上述した実施の形態に限られない。
(H)支持部材の個数について
前記クレーンでは、当該クレーンが左右方向の一方に倒れようとする方向のモーメントが発生したときに、クレーンの姿勢を安定させるために2つ以上の支持部材が設けられていることが好ましいが、支持部材の個数は、上述した実施の形態に限られない。
(I)物理量検出部の個数について
前記クレーンでは、物理量検出部は、複数の支持部材のうちの少なくとも一つの支持部材におけるビームに生じるひずみを検出可能に構成されていればよいので、物理量検出部を設ける個数は上述した実施の形態に限られない。すなわち、物理量検出部90は、複数の支持部材80のそれぞれに設けられていなくてもよく、複数の支持部材80のうちの一部の支持部材80のみに設けられていてもよい。
(J)物理量検出部を構成するデバイスの個数について
上述した実施の形態では、各物理量検出部90は、第1ひずみゲージ90A(第1デバイス)と第2ひずみゲージ90B(第2デバイス)により構成されていたが、これに限られない。各物理量検出部90は、単一のデバイス(例えば単一のひずみゲージ)により構成されていてもよく、3つ以上のデバイス(例えば3つ以上のひずみゲージ)により構成されていてもよい。
(K)支持部材を設ける位置について
前記クレーンでは、複数の支持部材は、一対のクローラフレームのうちの一方のクローラフレームに設けられていればよいので、支持部材を設ける位置は上述の実施の形態に限られない。図22、図36及び図37において、複数の支持部材80は、一対のクローラ走行装置3のうちの第2のクローラ走行装置3(図中では左のクローラ走行装置3)におけるクローラフレーム1(第2のクローラフレーム1)に支持されていてもよい。
(L)演算部について
前記クレーンは、前記演算部101を必ずしも含んでいなくてもよい。かかる場合、例えば、前記クレーンは、物理量検出部により出力される種々の検出信号にそれぞれ対応するクレーンのバランス情報(クレーンの左右のバランスに関する情報)を予め記憶する記憶部を備えていてもよい。そして、報知制御部103は、物理量検出部により出力される検出信号に基づいて、当該検出信号に対応するクレーンの左右のバランスに関する情報がオペレータに報知されるように報知装置110を制御する。
また、前記移動式クレーンの前記演算部は、前記物理量検出部により検出される前記物理量に基づいて、当該物理量の変化に対応して変化する反力と前記移動式クレーンの重量との比率を演算してもよい。これにより、前記移動式クレーンの安定性の指標となる前記比率が得られる。演算された当該比率は、例えば前記報知装置を通じてオペレータに報知される。
(M)支持部材の脚部の構造について
前記クレーンでは、支持部材の脚部は、転倒モーメントに起因する反力を受けてビームにひずみを生じさせることができるものであればよいので、上述した実施の形態のようにシリンダ本体83とロッド84とを含む油圧シリンダによって構成されていなくてもよく、他の部材が用いられてもよい。
(N)第1の実施形態では、前記物理量検出部は、前記物理量としてひずみを検出するひずみ検出部に代えて、前記物理量として圧力を検出する圧力センサにより構成されていてもよい。
(O)反力受け部の位置について
前記第4~第7の実施形態では、前記反力受け部を構成する前記接触部(前記フロート85)の位置は、第1ホイール4aの回転軸CBに対して前記ブーム方向D1にずれた位置にあることが好ましい。前記接触部の位置が第1ホイール4aの回転軸CBに対して前記ブーム方向D1とは反対方向(第2の方向D2)にずれた位置にある態様では、前記クレーン10の重量の多くを前記第1ホイール4aが受けるため、前記接触部が地面から受ける前記反力が小さくなり、前記物理量検出部90による前記物理量の検出感度が低くなる。また、前記反力受け部を構成する前記接触部の位置は、オペレータが視認できる位置であることが好ましい。仮に、前記接触部が上部旋回体12、カーボディ、クローラ走行装置3などに隠れてオペレータが視認できない場合には、前記オペレータが前記接触部を地面に接触させるための位置調節をすることが困難になるためである。
(P)前記第3、第5及び第7の実施形態では、前記物理量検出部は、前記圧力センサに代えて、例えばロードセルにより構成されていてもよい。当該ロードセルは、前記反力受け部が地面から受ける反力の変化に対応して変化する物理量を検出することができる。
[実施形態のまとめ]
前記移動式クレーンでは、前記下部走行体は、前記一対のクローラ走行装置が地面に接した状態で前記旋回中心軸に対してブーム方向にずれた位置において地面から反力を受ける反力受け部を有し、前記ブーム方向は、前記ブームが前記上部旋回体から延びる方向の水平成分の方向であり、前記物理量検出部は、前記反力受け部が地面から受ける前記反力の変化に対応して変化する物理量を検出するように構成され、前記安定性判定部は、前記物理量検出部により検出される前記物理量に基づいて前記移動式クレーンの安定性を判定するように構成され、前記報知制御部は、前記安定性判定部により判定された前記安定性に関する安定性情報を前記報知装置においてオペレータに報知するための報知指令を出力するように構成される。従って、オペレータが煩雑な入力作業を行わなくても、前記起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報をオペレータに報知することができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記ブーム方向は、前記下部走行体の前記前後方向の一方であり、前記一対のクローラ走行装置のそれぞれは、前記前後方向に延びるクローラフレームと、前記クローラフレームの前端部及び後端部のうちの一方の端部であって前記旋回中心軸に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置される端部に回転軸を中心に回転可能に支持される第1のホイールと、を有し、前記第1のホイールは、前記反力受け部を構成していてもよい。
この態様では、前記物理量検出部は、前記反力受け部を構成する前記第1のホイールが受ける前記反力の変化に対応して変化する前記物理量を検出することができる。すなわち、この態様では、前記反力受け部を構成する部材を新たに追加する必要がない。また、前記第1のホイールは、前記旋回中心軸に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置される前記クローラフレームの前記一方の端部に支持されるものであるので、前記地面から非常に大きな反力を受けることができるので、前記物理量の検出精度がより高められる。
前記移動式クレーンにおいて、前記一対のクローラ走行装置のそれぞれは、前記クローラフレームの前記前端部及び前記後端部のうちの他方の端部に回転軸を中心に回転可能に支持される第2のホイールと、前記第1のホイール及び前記第2のホイールに無端状に支持されて周回移動可能なクローラと、を有し、前記物理量検出部は、前記一対のクローラ走行装置の少なくとも一方のクローラ走行装置の前記クローラフレームにおいて生じるひずみであって、前記第1のホイールが前記クローラを介して地面から受ける前記反力に起因して生じるひずみを前記物理量として検出することができるように構成されていてもよい。
この態様では、前記物理量検出部によって検出される前記ひずみは、前記特定作業において起伏部材の前記起立動作又は前記倒伏動作の結果として実際にクローラフレームに生じるものであり、前記ひずみは、前記モーメントの増減に相関して増減する。すなわち、前記ひずみは、前記特定作業において、前記反力が大きくなるのに伴って大きくなり、前記反力が小さくなるのに伴って小さくなる。したがって、前記ひずみは、前記移動式クレーンの前記安定状態及び前記不安定状態などのクレーンの状態を判定するための指標になる。
前記移動式クレーンにおいて、前記一対のクローラ走行装置のそれぞれは、前記クローラフレームの下部においてそれぞれ回転可能に支持される複数の下部ローラであって前記第1のホイール及び前記第2のホイールの間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記クローラを案内する複数の下部ローラをさらに有し、前記クローラフレームのうち前記ひずみが前記物理量検出部によって検出される部分の前記前後方向の位置は、前記複数の下部ローラのうち前記第1のホイールに最も近い下部ローラの回転軸に対応する位置に対して前記ブーム方向にずれた位置であってもよい。
この態様では、前記ひずみは精度よく検出される。具体的に、前記特定作業において、前記ブーム方向に倒伏された前記起伏部材に重力が作用することに起因して前記クローラフレームに生じる前記ひずみは、前記反力受け部を構成する前記第1のホイールに近い位置において特に大きくなる。従って、この態様は、前記クローラフレームのうち前記ひずみが検出される部分の前記前後方向の位置が、前記第1のホイールに最も近い下部ローラ(第1下部ローラ)の回転軸に対応する位置に対して前記ブーム方向にずれた位置であることにより、前記クローラフレームに生じるひずみを精度よく検出することができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記一対のクローラ走行装置のそれぞれは、前記クローラフレームの下部においてそれぞれ回転可能に支持される複数の下部ローラであって前記第1のホイール及び前記第2のホイールの間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記クローラを案内する複数の下部ローラをさらに有し、前記クローラフレームのうち前記ひずみが前記物理量検出部によって検出される部分の前記前後方向の位置は、前記複数の下部ローラのうち前記第1のホイールに最も近い下部ローラ(前記第1下部ローラ)の回転軸に対応する位置と、前記第1のホイールの前記回転軸に対応する位置との間の範囲に含まれていることが好ましい。
この態様では、前記ひずみはより精度よく検出される。上述したように、前記ひずみは、前記反力受け部を構成する前記第1のホイールに近い位置において特に大きくなる。より具体的には、前記ひずみは、前記第1下部ローラの回転軸に対応する位置と、前記第1のホイールの前記回転軸に対応する位置との間の範囲において顕著に生じる。従って、この態様は、前記クローラフレームのうち前記ひずみが検出される部分の前記前後方向の位置が前記範囲に含まれることにより、前記クローラフレームに生じるひずみをより精度よく検出することができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記物理量検出部は、前記第1のホイールを支持する前記クローラフレームの前記一方の端部に生じるひずみを前記物理量として検出することができるように構成されていてもよい。
この態様では、前記ひずみは精度よく検出される。上述したように、前記ひずみは、前記反力受け部を構成する前記第1のホイールに近い位置において特に大きくなる。従って、この態様は、前記第1のホイールを支持する前記一方の端部に生じるひずみを検出することができるように構成されることにより、前記ひずみを精度よく検出することができる。
より具体的には、前記移動式クレーンにおいて、前記クローラフレームは、前記前後方向に延びるフレーム本体と、前記フレーム本体の端部に接続され、前記クローラフレームの前記一方の端部を構成するブラケットと、を有し、前記物理量検出部は、前記ブラケットに生じるひずみを検出することができるように構成されていてもよい。
この態様では、前記ブラケットに生じるひずみを精度よく検出することができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記一対のクローラ走行装置のそれぞれは、前後方向に延びるクローラフレームを有し、前記下部走行体は、前記一対のクローラ走行装置のうち一方のクローラ走行装置の前記クローラフレームと他方のクローラ走行装置の前記クローラフレームとの間に介在してこれらのクローラフレームを連結する中央フレームと、少なくとも一つの受け部材と、を有し、前記一方のクローラ走行装置の前記クローラフレーム、前記他方のクローラ走行装置の前記クローラフレーム及び前記中央フレームは、フレームユニットを構成し、前記少なくとも一つの受け部材は、前記フレームユニットに接続される接続部と、地面に接する接触部と、を含み、 前記接続部は、前記旋回中心軸に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置され、前記接触部は、前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置され、前記反力受け部を構成することが好ましい。
この態様では、前記接続部は、前記旋回中心軸に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置され、前記接触部は、前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置される。これにより、前記反力受け部を構成する前記接触部は、前記地面から大きな反力を受けることができるので、前記物理量の検出精度が高められる。
前記移動式クレーンにおいて、前記少なくとも一つの受け部材は、上下方向に伸縮可能な油圧シリンダを含むことが好ましい。
この態様では、前記油圧シリンダを上下方向に伸縮させることにより、前記接触部が地面に接するように前記接触部と地面との相対位置を調節することができる。
前記移動式クレーンは、作動油を吐出する油圧ポンプと、当該油圧ポンプと前記油圧シリンダとの間に介在する制御弁であって、前記油圧ポンプによって吐出された前記作動油を前記油圧シリンダに供給する油路を形成する供給位置と前記油圧ポンプから吐出された前記作動油の前記油圧シリンダへの供給を遮断する遮断位置との間で切り換わることが可能な制御弁と、前記供給位置と前記遮断位置との間の前記制御弁の作動を指示する指示装置と、をさらに備えることがより好ましい。
この態様では、前記指示装置の指示に応じて前記制御弁を作動させることにより、前記油圧シリンダを前記供給位置に設定し、当該油圧シリンダを伸縮させることができる。これにより、前記特定作業の前に、前記受け部材の前記接触部が地面に接触するように、前記受け部材の上下方向の長さを適当な大きさに調節することができる。そして、前記特定作業が行われるときには、前記指示装置の指示に応じて前記制御弁を作動させることにより、前記油圧シリンダを前記遮断位置に設定する。これにより、前記油圧シリンダが伸縮することが阻止されるので、前記特定作業において、前記反力受け部を構成する前記接触部は、当該接触部が地面に接した状態で前記モーメントの増減に相関する前記反力を受けることができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記物理量検出部は、前記油圧シリンダにおけるヘッド側の圧力及びロッド側の圧力の少なくとも一方の圧力を前記物理量として検出する圧力センサを含んでいてもよい。
この態様では、前記圧力センサによって検出される前記圧力は、前記モーメントの増減に相関して増減する。すなわち、前記圧力は、前記特定作業において、前記反力が大きくなるのに伴って大きくなり、前記反力が小さくなるのに伴って小さくなる。したがって、前記圧力は、前記移動式クレーンの前記安定状態及び前記不安定状態などのクレーンの状態を判定するための指標になる。
前記移動式クレーンにおいて、前記少なくとも一つの受け部材は、前記接続部を有するビームであって当該接続部から前記ブーム方向又は当該ブーム方向に対して傾斜した方向に延びるビームと、前記接触部を有する脚部であって前記ビームの先端部に接続された脚部と、を含んでいてもよい。
この態様では、前記接続部から前記接触部までの距離は、前記ビームの長さに応じて設定することができる。また、この態様では、前記脚部が前記ビームの先端部に接続されているので、前記脚部の前記接触部は、前記地面から大きな反力を受けることができるので、前記物理量の検出精度がより高められる。
前記移動式クレーンにおいて、前記物理量検出部は、前記ビームに生じるひずみを前記物理量として検出することができるように構成されていてもよい。
この態様では、前記物理量検出部によって検出される前記ひずみは、前記モーメントの増減に相関して増減する。すなわち、前記ビームに生じる前記ひずみは、前記特定作業において、前記反力が大きくなるのに伴って大きくなり、前記反力が小さくなるのに伴って小さくなる。したがって、前記ひずみは、前記移動式クレーンの前記安定状態及び前記不安定状態などのクレーンの状態を判定するための指標になる。具体的に、前記特定作業において、前記ブーム方向に倒伏された前記起伏部材に重力が作用することに起因して、前記移動式クレーンが倒れようとする方向のモーメントが発生し、当該モーメントに起因して前記受け部材の前記脚部は地面から上向きの反力を受ける。これにより、前記脚部を支持するビームには曲げモーメント(曲げ応力)が生じ、その結果、当該ビームにはひずみが生じる。したがって、当該ひずみは、前記反力の変化に対応して変化する物理量であり、前記移動式クレーンが倒れようとする方向のモーメントに相関するものである。
前記移動式クレーンにおいて、前記物理量検出部は、前記ビームの上部に生じるひずみを検出する第1のデバイスと、前記ビームの下部に生じるひずみを検出する第2のデバイスと、を含むことが好ましい。
この態様では、前記ビームに生じるひずみをより感度よく検出することができる。具体的には次の通りである。前記特定作業において、前記ブーム方向に倒伏された前記起伏部材に重力が作用することに起因して、前記移動式クレーンが倒れようとする方向のモーメントが発生し、当該モーメントに起因して前記ビームは上下方向の曲げ荷重を受ける。かかる場合、前記ビームの中立面からの距離が大きいビームの上部と下部にはより大きなひずみが生じる。したがって、この態様では、前記ビームの上部と下部に生じるひずみを検出可能な第1のデバイスと第2のデバイスによってビームに生じるひずみを感度よく検出することができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記ブーム方向は、前記下部走行体の前記左右方向の一方の方向であり、前記少なくとも一つの受け部材は、前記一方のクローラ走行装置の前記クローラフレームに接続される第1の受け部材と、前記第1の受け部材に対して前記前後方向にずれた位置において前記一方のクローラ走行装置の前記クローラフレームに接続される第2の受け部材と、を含み、前記第1の受け部材及び前記第2の受け部材のそれぞれは、前記接触部が前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるように構成されていてもよい。
この態様では、前記特定作業において前記ブーム方向が前記左右方向の前記一方の方向(すなわち、左方又は右方)である場合に、前記反力受け部を構成する前記接触部は、前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるので、前記地面から大きな反力を受けることができる。これにより、前記物理量の検出精度が高められる。また、この態様では、前記第1の受け部材及び前記第2の受け部材が前記前後方向に互いにずれた位置において前記クローラフレームに接続されている。これにより、単一の受け部材のみが前記クローラフレームに接続されている場合に比べて、前記移動式クレーンを前記左右方向の前記一方の方向に倒そうとする方向のモーメントが発生したときに、前記移動式クレーンの姿勢をより安定させることができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記ブーム方向は、前記下部走行体の前記前後方向の一方の方向であり、前記少なくとも一つの受け部材は、前記中央フレームに接続される第1の受け部材と、前記第1の受け部材に対して前記左右方向にずれた位置において前記中央フレームに接続される第2の受け部材と、を含み、前記第1の受け部材及び前記第2の受け部材のそれぞれは、前記接触部が前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配
置されるように構成されていてもよい。
この態様では、前記特定作業において前記ブーム方向が前記前後方向の前記一方の方向(すなわち、前方又は後方)である場合に、前記反力受け部を構成する前記接触部は、前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるので、前記地面から大きな反力を受けることができる。これにより、前記物理量の検出精度が高められる。また、この態様では、前記第1の受け部材及び前記第2の受け部材が前記左右方向に互いにずれた位置において前記中央フレームに接続されている。これにより、単一の受け部材のみが前記中央フレームに接続されている場合に比べて、前記移動式クレーンを前記前後方向の前記一方の方向に倒そうとする方向のモーメントが発生したときに、前記移動式クレーンの姿勢をより安定させることができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記一対のクローラ走行装置のそれぞれは、前記クローラフレームの前端部及び後端部のうちの一方の端部であって前記旋回中心軸に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置される端部に回転軸を中心に回転可能に支持されるホイールを有し、前記第1の受け部材及び前記第2の受け部材のそれぞれは、前記接触部の中央が前記一対のクローラ走行装置のそれぞれの前記ホイールの前記回転軸に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるように構成されることが好ましい。
この態様では、各受け部材の前記接触部の中央が前記ホイールの前記回転軸に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるので、前記移動式クレーンの重量のうちの多くが前記受け部材を介して地面に作用し、その結果、各受け部材の前記接触部はより大きな反力を地面から受けることができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記ブーム方向は、前記下部走行体の前記前後方向の一方の方向であり、前記少なくとも一つの受け部材は、前記一方のクローラ走行装置の前記クローラフレームである第1のクローラフレームに接続される第1の右側受け部材及び第1の左側受け部材と、前記他方のクローラ走行装置の前記クローラフレームである第2のクローラフレームに接続される第2の右側受け部材及び第2の左側受け部材と、を含み、前記第1の右側受け部材は、当該第1の右側受け部材の前記接触部が、前記第1のクローラフレームに対して右側にずれた位置であって当該第1の右側受け部材の前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるように構成され、前記第1の左側受け部材は、当該第1の左側受け部材の前記接触部が、前記第1のクローラフレームに対して左側にずれた位置であって当該第1の左側受け部材の前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるように構成され、前記第2の右側受け部材は、当該第2の右側受け部材の前記接触部が、前記第2のクローラフレームに対して右側にずれた位置であって当該第2の右側受け部材の前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるように構成され、前記第2の左側受け部材は、当該第2の左側受け部材の前記接触部が、前記第2のクローラフレームに対して左側にずれた位置であって当該第2の左側受け部材の前記接続部に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるように構成されていてもよい。
この態様では、前記特定作業において前記ブーム方向が前記前後方向の前記一方の方向(すなわち、前方又は後方)である場合に、前記第1の右側反力受け部材、前記第1の左側反力受け部材、前記第2の右側反力受け部材及び前記第2の左側反力受け部材のそれぞれの前記接触部は、対応する前記接続部に対して前記ブーム方向に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるので、前記地面から大きな反力を受けることができる。これにより、前記物理量の検出精度が高められる。また、この態様では、各クローラフレームには右側反力受け部材及び左側反力受け部材が接続されており、前記右側反力受け部材の前記接触部は前記クローラフレームよりも右側に位置し、前記左側反力受け部材の前記接触部は前記クローラフレームよりも左側に位置している。したがって、前記モーメント(移動式クレーンを前方に倒そうとする方向のモーメント)が発生したときに、右側反力受け部材及び左側反力受け部材は前記クローラフレームの左右両側において当該クローラフレームをバランスよく支持することができる。仮に、前記クローラフレームに右側反力受け部材及び左側反力受け部材の一方の反力受け部材のみが接続されている場合には、前記モーメントが発生したときに当該反力受け部材は前記クローラフレームを左右方向においてバランスよく支持できず、当該クローラフレームにねじりモーメントが発生しやすくなる。本態様では、上記のようなねじりモーメントが発生するのを抑制できるので、前記物理量検出部による検出結果に対する前記ねじりモーメントの影響を低減できる。このことは、前記物理量の検出精度の低下を抑制できる。
前記移動式クレーンにおいて、前記一対のクローラ走行装置のそれぞれは、前記クローラフレームの前端部及び後端部のうちの一方の端部であって前記旋回中心軸に対して前記前後方向の前記一方の方向にずれた位置に配置される端部に回転軸を中心に回転可能に支持されるホイールを有し、前記第1の右側受け部材、前記第1の左側受け部材、前記第2の右側受け部材、及び前記第2の左側受け部材のそれぞれは、前記接触部の中央が前記一対のクローラ走行装置のそれぞれの前記ホイールの前記回転軸に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるように構成されることが好ましい。
この態様では、各受け部材の前記接触部の中央が、前記ホイールの前記回転軸に対して前記ブーム方向にずれた位置に配置されるので、前記移動式クレーンの重量のうちの多くが前記受け部材を介して地面に作用し、その結果、各受け部材の前記接触部はより大きな反力を地面から受けることができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記受け部材の少なくとも一部は、当該少なくとも一部が取り付けられている取付部に対して着脱可能に構成されていてもよい。
この態様では、前記移動式クレーンの前記特定作業において必要なときにのみ前記受け部材の前記少なくとも一部を前記取付部に取り付け、作業現場において行われる通常の吊り作業のように前記受け部材が不要なときには前記受け部材の前記少なくとも一部を前記取付部から取り外すことができる。これにより、前記通常の吊り作業において、前記受け部材が邪魔になりにくく、しかも、取り外す部材の重量分だけ前記移動式クレーンの重量を軽くすることができる。
前記移動式クレーンにおいて、前記少なくとも一つの受け部材は、その長手方向に伸縮可能な構造を有していてもよい。
この態様では、前記特定作業が行われるときには、前記受け部材を伸ばして転倒支点までの距離を大きくする。これにより、前記受け部材は、前記特定作業において前記移動式クレーンをより安定して支持することができ、また、前記受け部材の前記接触部は、地面からより大きな前記反力を受けることができる。一方、前記通常の吊り作業が行われるときには、前記受け部材を縮めることにより、前記受け部材が前記通常の吊り作業の邪魔になるのを抑制できる。また、前記受け部材を縮めた状態において、前記受け部材は、前記下部走行体を地面から浮上させるトランスリフタとして用いられることも可能である。
前記移動式クレーンは、前記物理量検出部により検出される前記物理量に基づいて前記移動式クレーンが前記起伏部材の重量によって倒れようとする方向のモーメントを演算するパラメータ演算部をさらに備えていてもよい。
この態様では、前記物理量検出部により検出される前記物理量に基づいて前記モーメントがパラメータ演算部によって演算され、これにより、前記移動式クレーンの転倒原因となるモーメントが得られる。演算された当該モーメントは、例えば報知装置を通じてオペレータに報知される。
前記移動式クレーンは、前記物理量検出部により検出される前記物理量に基づいた前記移動式クレーンの安定性に関する安定性情報をオペレータに対して報知するための報知装置をさらに備えていてもよい。
この態様では、オペレータは、前記移動式クレーンにおける前記安定性に関する情報を、報知装置を通じて得ることができるので、当該情報を指標として前記移動式クレーンを操縦することが可能となり、これにより、前記移動式クレーンをより安全に起立動作及び倒伏動作させることができる。
前記移動式クレーンは、前記物理量検出部により検出される前記物理量に基づいて前記安定性を判定する安定性判定部と、前記安定性判定部により判定された前記安定性に関する前記安定性情報を前記報知装置において前記オペレータに対して報知するための報知指令を出力する報知制御部と、をさらに備えることが好ましい。
この態様では、前記特定作業において、前記起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報である前記安定性情報を前記オペレータに提供することができる。前記安定性情報が前記オペレータに提供されると、前記オペレータは、前記移動式クレーンの前記安定性の低下を回避するための動作(回避動作)が行われるように前記移動式クレーンの操作レバーを自ら操作してもよい。また、前記オペレータが自ら前記操作レバーを操作するのではなく、後述するように前記回避動作が前記移動式クレーンのコントローラにより自動的に実行されてもよい。
すなわち、前記移動式クレーンは、前記安定性判定部により判定された前記安定性に基づいて前記移動式クレーンの前記安定性の低下を回避するための動作に対応する動作指令を出力する動作制御部をさらに備えていてもよい。
この態様では、前記動作指令に基づいて前記回避動作が自動的に実行されるので、前記オペレータの負担が軽減される。
前記移動式クレーンは、前記起伏部材に作用する重力に起因して前記移動式クレーンを倒そうとする第1のモーメントに対応する第1のパラメータを前記物理量に基づいて演算するパラメータ演算部をさらに備え、前記上部旋回体は、前記旋回中心軸に対して前記ブーム方向とは反対の方向にずれた位置に配置されたカウンタウエイトを有し、前記安定性判定部は、前記パラメータ演算部により演算された前記第1のパラメータと、前記カウンタウエイトに作用する重力に起因して前記第1のモーメントに抗するモーメントであって前記移動式クレーンが倒れるのを阻止しようとする第2のモーメントに対応する第2のパラメータと、を比較することにより前記安定性を判定するように構成されていてもよい。
この態様では、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの比較により、前記移動式クレーンを倒そうとする第1のモーメントと、前記移動式クレーンが倒れるのを阻止しようとする第2のモーメントとを比較することができる。これにより、前記移動式クレーンの前記安定性が適切に判定される。前記第1のパラメータは、前記第1のモーメントそのものであってもよく、当該第1のモーメントの変化に対応して変化するパラメータであってもよい。同様に、前記第2のパラメータは、前記第2のモーメントそのものであってもよく、当該第2のモーメントの変化に対応して変化するパラメータであってもよい。
前記移動式クレーンは、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータの比率を演算する比率演算部をさらに備え、前記安定性判定部は、前記比率に基づいて前記安定性を判定するように構成されていてもよい。
この態様では、前記安定性判定部は、前記比率演算部により演算される前記比率に基づいて前記安定性を判定することができる。