以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るクレーン1について説明する。図1は、本実施形態に係るクレーン1の第1の形態(クレーン1A)の概略的な側面図である。当該第1の形態は、STD−LF形態(スタンダード・ラッフィング形態)とも称される。また、図2は、本実施形態に係るクレーン1の第2の形態(クレーン1B)の概略的な側面図である。当該第2の形態は、SHL−LF形態(スーパーヘビーリフト・ラッフィング形態)とも称される。図1に示されるSTD−LF形態のクレーン1Aの一部の部材を共有したまま、その他の部材を追加または変更することで、クレーン1を図2に示されるSHL−LF形態のクレーン1Bとすることができる。
本実施形態に係るクレーン1は、自走可能な下部走行体2と、その下部走行体2上に縦軸回りに旋回可能に搭載されたクレーン本体としての上部旋回体4と、上部旋回体4の前端部に設けられクレーン1を操作する作業者が搭乗することを許容するキャブ5(運転室)と、吊作業を行うために上部旋回体4の前部に取り付けられたアタッチメント10(起伏体)と、そのアタッチメント10の後方で上部旋回体4に取り付けられたマスト12と、クレーン1のバランスを保持し安定性を向上するために上部旋回体4の後側部分に搭載されたカウンタウエイト13と、を備える。なお、前後左右は、下部走行体2に対して旋回する上部旋回体4を基準に定義される。後述するアタッチメント10のブーム16が倒伏する方向が前方、その反対の方向が後方である。左方および右方は当該定義による前方を基準に決められる。
前記アタッチメント10は、ブーム16と、ジブ18と、リアストラット21と、フロントストラット22と、左右一対のブームバックストップ23と、左右一対のジブバックストップ24と、左右一対のストラットバックストップ25と、左右一対のストラット用ガイリンク26と、左右一対のジブ用ガイリンク28と、主フック57と、図略の補フックとを有する。
ブーム16は、上部旋回体4の前部に水平な軸(第1回転軸)回りに起立方向および倒伏方向に回動可能に取り付けられている。このブーム16は、いわゆるラチス型である。ブーム16は、その長手方向において複数のパーツに分解可能となっている。すなわち、ブーム16は、下部ブーム16Aと、一または複数(図例では2個)の中間ブーム16B,16Cと、上部ブーム16Dとを有し、これらの下部ブーム16A、中間ブーム16B,16C及び上部ブーム16Dに分解可能となっている。
下部ブーム16Aは、ブーム16の基端部を含むパーツであり、上部旋回体4の左右方向に延びる軸(第1回転軸)回りに回動可能となるように上部旋回体4の前部に連結される。具体的には、ブーム16の基端部に相当する下部ブーム16Aの基端部が前記左右方向に延びるブームフットピン17により上部旋回体4の前部に連結され、このブームフットピン17を中心として下部ブーム16Aは回動可能となっている。この下部ブーム16Aと上部旋回体4との間に左右一対のブームバックストップ23が介在する。具体的には、左右一対のブームバックストップ23は、上部旋回体4上に設けられ、ブーム16が図1に示される起立姿勢を取ったときに下部ブーム16Aの左右両側部に当接する。この当接によって、ブーム16が強風等で後方に煽られることが規制される。
中間ブーム16B,16Cは、その順で下部ブーム16Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。
上部ブーム16Dは、中間ブーム16Cの先端側に着脱可能に継ぎ足される。この上部ブーム16Dは、中間ブーム16Cに接続されるラチス構造の上部ブーム本体19Aと、その上部ブーム本体19Aの先端に接続されるブームヘッド19Bとを有する。ブームヘッド19Bは、ブーム16の先端部に相当する。
ジブ18は、ラチス型であり、前記左右方向に延びる軸(第1回転軸と平行な第2回転軸)回りに起立方向および倒伏方向に回動可能となるようにブーム16の先端部(ブームヘッド19B)に取り付けられている。具体的に、ジブ18は、当該ジブ18の長手方向の一端部であってブームヘッド19Bに前記左右方向に延びる軸回りに回動可能に取り付けられる基端部と、その基端部と反対側の端部である先端部とを有する。ジブ18も、その長手方向において複数のパーツに分解可能となっている。すなわち、ジブ18は、下部ジブ18Aと、一または複数(図例では1個)の中間ジブ18Bと、上部ジブ18Cとを有し、これらの下部ジブ18A、中間ジブ18B及び上部ジブ18Cに分解可能となっている。
下部ジブ18Aは、ジブ18の基端部を含むパーツであり、ジブ18を長手方向において分解して当該下部ジブ18Aよりもジブ18の先端部側の部位である中間ジブ18B及び上部ジブ18Cに対して当該下部ジブ18Aを分離させることが可能となっている。当該下部ジブ18Aは、前記左右方向に延びる軸回りに回動可能となるようにブームヘッド19Bに連結される。具体的には、ジブ18の基端部に相当する下部ジブ18Aの基端部が前記左右方向に延びるジブフットピン29によりブームヘッド19Bに連結され、このジブフットピン29を中心として下部ジブ18Aはブーム16に対して回動可能となっている。
より詳しくは、ブームヘッド19Bは、図1のようにブーム16が起立したときに当該ブームヘッド19Bのうちで最も前方に位置する部位にジブ取付部19Cを有する。このジブ取付部19Cにはピン穴が設けられており、下部ジブ18Aの基端部にもピン穴が設けられている。そして、ジブ取付部19Cのピン穴と下部ジブ18Aの基端部のピン穴とが一致した状態でそれらのピン穴にジブフットピン29が前記左右方向に延びるように挿入され、それによって下部ジブ18Aの基端部がジブフットピン29を介してジブ取付部19Cに連結される。
また、下部ジブ18Aは、ブームヘッド19Bのジブ取付部19Cに対して着脱可能である。すなわち、ジブフットピン29を前記ピン穴から抜き出すことにより、下部ジブ18Aをジブ取付部19Cから分離可能となっている。
また、下部ジブ18Aとブームヘッド19Bとの間には、左右一対のジブバックストップ24が介在する。この左右一対のジブバックストップ24は、ブームヘッド19Bに取り付けられ、ジブ18が図1に示されるように起立した姿勢を取ったときに下部ジブ18Aの左右両側部に当接する。この当接によって、ジブ18が強風等で後方に煽られることが規制される。
中間ジブ18Bは、下部ジブ18Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。また、上部ジブ18Cは、中間ジブ18Bの先端側に着脱可能に継ぎ足される。この上部ジブ18Cの先端部がジブ18の先端部に相当する。
リアストラット21は、ブームヘッド19Bに前記左右方向に延びる軸回りに回動可能に取り付けられる。リアストラット21は、その長手方向の一端部であってブームヘッド19Bに取り付けられるリアストラット基端部21Aと、当該リアストラット基端部21Aと反対側の端部であるリアストラット先端部21Bとを有する。
リアストラット21は、ブームヘッド19Bからブーム16が起立する向き(図1では左向き)に張り出す姿勢で保持される。この姿勢を保持する手段として、リアストラット21とブーム16との間に左右一対のストラットバックストップ25及び左右一対のストラット用ガイリンク26が介在する。ストラットバックストップ25は、上部ブーム16Dとリアストラット21の中間部位との間に介在し、リアストラット21を下から支える。ストラット用ガイリンク26はリアストラット先端部21Bと下部ブーム16Aとを繋ぐように張設され、その張力によってリアストラット21の位置を規制する。
フロントストラット22は、下部ジブ18Aに前記左右方向に延びる軸回りに回動可能に取り付けられる。フロントストラット22は、その長手方向の一端部であってジブ18の基端部に取り付けられるフロントストラット基端部22Aと、当該フロントストラット基端部22Aと反対側の端部であるフロントストラット先端部22Bとを有する。
フロントストラット先端部22Bとジブ18の先端部との間には、これらを繋ぐように左右一対のジブ用ガイリンク28が張設される。このジブ用ガイリンク28が張ることにより、フロントストラット22とジブ18との間の角度がそれ以上拡大しないように規制される。この状態で、フロントストラット先端部22Bがリアストラット先端部21B側へ引っ張られることにより、フロントストラット22とジブ18との間の角度が保たれたまま、換言すればフロントストラット22とジブ18との相対的な位置関係が保たれたまま、フロントストラット22とジブ18がジブフットピン29を中心として後方へ回動するようになっている。
なお、前述のリアストラット21は、フロントストラット22に対して後寄りに配置される。すなわち、リアストラット21は、ブームヘッド19Bに対するジブ18の取り付け位置の後側で且つ下部ジブ18Aに対するフロントストラット22の取り付け位置の後側の位置でブームヘッド19Bに前記左右方向に延びる軸回りに回動可能に取り付けられている。
前記マスト12は、その長手方向の一端部であって上部旋回体4に取り付けられるマスト基端部12Aと、このマスト基端部12Aと反対側の端部であるマスト先端部12Bとを有する。マスト基端部12Aは、上部旋回体4に前記左右方向に延びる軸回りに回動可能に連結される。マスト先端部12Bは、左右一対のブーム用ガイライン66を介してブームヘッド19Bに連結される。この連結は、マスト12の回動とブーム16の回動とを連携させる。
前記主フック57および前記図略の補フックは、それぞれ、ジブ18の先端部から吊り下げられて吊荷を吊るものである。
本実施形態のクレーン1(1A)は、ブーム16を起伏させるためのブーム起伏用ウインチ30と、ジブ18をその基端部を支点として回動させて起伏させるためのジブ起伏用ウインチ32と、吊荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ34及び補巻用ウインチ36とをさらに備える。ブーム起伏用ウインチ30、補巻用ウインチ36及び主巻用ウインチ34は、上部旋回体4上にこの順番で後ろから前に並んで設置されている。また、ジブ起伏用ウインチ32は、下部ブーム16Aに設けられている。
ブーム起伏用ウインチ30は、ブーム起伏用ロープ38の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取り及び繰り出しによってマスト12が回動するようにブーム起伏用ロープ38が配索される。具体的には、マスト先端部12Bには前記左右方向に並ぶように配置された複数のシーブからなるシーブブロック40が設けられ、上部旋回体4の後端部には同様に前記左右方向に並ぶように配置された複数のシーブからなるシーブブロック42が設けられている。ブーム起伏用ウインチ30から引き出されたブーム起伏用ロープ38がシーブブロック40,42間に掛け渡される。そして、ブーム起伏用ウインチ30がブーム起伏用ロープ38の巻き取りや繰り出しを行うことにより、両シーブブロック40,42間の距離が変化し、これによって、マスト12及び当該マスト12と連動するブーム16が回動して起立および倒伏する。なお、ブーム起伏用ロープ38について換言すれば、当該ブーム起伏用ロープ38は、マスト12およびブーム用ガイライン66を介して間接的にブーム16の先端部に接続されている。なお、ブーム起伏用ウインチ30、ブーム起伏用ロープ38は、本発明のブーム駆動部を構成する。ブーム駆動部は、ブーム16をブームフットピン17回りに起立方向および倒伏方向に回動させる。
ジブ起伏用ウインチ32は、ジブ起伏用ロープ44の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取り及び繰り出しによってフロントストラット22が回動するようにジブ起伏用ロープ44が配索される。
具体的には、下部ブーム16Aにジブ起伏用第1ガイドシーブ45が設けられるとともに、上部ブーム16Dにジブ起伏用第2ガイドシーブ46が設けられている。また、リアストラット先端部21Bには前記左右方向に並ぶように配置された複数のシーブからなるシーブブロック47が設けられ、フロントストラット先端部22Bにも同様に前記左右方向に並ぶように配置された複数のシーブからなるシーブブロック48が設けられている。そして、ジブ起伏用ウインチ32から引き出されたジブ起伏用ロープ44がジブ起伏用第1ガイドシーブ45とジブ起伏用第2ガイドシーブ46に順に掛けられ、かつ、フロントストラット先端部22Bのシーブブロック48とリアストラット先端部21Bのシーブブロック47とに巻き掛けられている。従って、ジブ起伏用ウインチ32によるジブ起伏用ロープ44の巻き取りや繰り出しは、両シーブブロック47,48間の距離を変え、それによってフロントストラット22さらにはこれと連動するジブ18を回動させて起立および倒伏させる。
具体的には、ジブ起伏用ウインチ32は、ジブ起伏用ロープ44を巻き取ることによりフロントストラット先端部22Bがリアストラット先端部21Bへ近づく向きにフロントストラット22を回動させてジブ18を起立する向きに回動させる一方、ジブ起伏用ロープ44を繰り出すことによりフロントストラット先端部22Bがリアストラット先端部21Bから離れる向きにフロントストラット22を回動させてジブ18を倒伏する向きに回動させる。なお、ジブ起伏用ロープ44について換言すれば、当該ジブ起伏用ロープ44は、フロントストラット22およびジブ用ガイリンク28を介して間接的にジブ18の先端部に接続されている。また、ジブ起伏用ウインチ32、ジブ起伏用ロープ44、リアストラット21、フロントストラット22およびジブ用ガイリンク28は、本発明のジブ駆動部を構成する。ジブ駆動部は、ジブ18をジブフットピン29回りに起立方向および倒伏方向に回動させる。
主巻用ウインチ34は、主巻ロープ50による吊荷の巻上げ及び巻下げを行う。具体的に、リアストラット21の基端近傍の部位には第1主巻用ガイドシーブ52が前記左右方向に延びる軸回りに回転可能に設けられ、フロントストラット22の基端近傍の部位には第2主巻用ガイドシーブ53が前記左右方向に延びる軸回りに回転可能に設けられている。また、ジブ18の先端部には、第3主巻用ガイドシーブ54が前記左右方向に延びる軸回りに回転可能に設けられるとともに、この第3主巻用ガイドシーブ54に隣接する位置に前記左右方向に並ぶように配置された複数の主巻用ポイントシーブ56からなる主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50は、第1、第2及び第3主巻用ガイドシーブ52,53,54に順に掛けられ、かつ、主巻用シーブブロックの主巻用ポイントシーブ56と吊具としての主フック57に設けられたシーブブロックのシーブ58とに掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34が主巻ロープ50の巻き取りや繰り出しを行うことにより、主巻用ポイントシーブ56と主フック57のシーブ58との間の距離が変わり、それによって、ジブ18の先端から垂下された主巻ロープ50に連結された主フック57の巻上げ及び巻下げが行われる。なお、主フック57は、本発明の吊り装置を構成する。主フック57は、ジブ18の先端部から垂下され、吊り荷に接続される。
補巻用ウインチ36は、補巻ロープ60による吊荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻に関し、クレーン1は、補巻用ウインチ36に加えて、第1補巻用ガイドシーブ62と、第2補巻用ガイドシーブ63と、第3補巻用ガイドシーブ64と、補助シーブ65とを備えている。これらの補巻きに関する部材の機能は、上記の主巻に関する部材の機能と同様である。
更に、クレーン1は、左右一対の車輪65Sを備える(図8、図9)。車輪65Sは、ジブ18の先端部において、補助シーブ65と同軸上に配置される。車輪65Sの外径は、補助シーブ65の外径よりも大きく設定されている。車輪65Sは、クレーン1のブーム16およびジブ18が地上に倒伏された状態において、地上を転動する。この結果、クレーン1の組立、分解作業時におけるブーム16およびジブ18の移動を容易に行うことができる。
次に、図2の示されるSHL−LF形態のクレーン1B(クレーン1)について説明する。なお、クレーン1Bは、クレーン1Aと比較して、クレーン1Bが、ラチスマスト90と、ブーム起伏用ウインチ91と、ガイリンク92と、ブーム起伏用ロープ93と、ガイリンク94と、ウエイトガイリンク95と、パレットウエイト96と、を備える点で主に相違する。このため、以後、当該相違点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。
ラチスマスト90は、ブーム16の後方であってマスト12とブーム16との間で、上部旋回体4に回動可能に支持される。なお、クレーン1Bの使用時には、ラチスマスト90は、旋回体12において所定の対地角をなす位置に固定されることでブーム16の回動における支柱となる。ブーム起伏用ウインチ91は、ラチスマスト90の基端側に配置され、ブーム起伏用ロープ93の巻き取り、繰り出しを行う。ガイリンク92およびブーム起伏用ロープ93は、ブーム16の先端とラチスマスト90の先端とを接続するように配置される。詳しくは、ガイリンク92は、ブーム16の先端からラチスマスト90の先端に向かって延びている。ブーム起伏用ロープ93は、ブーム起伏用ウインチ91から引き出された後、ガイリンク92の先端に備えられたシーブブロック97と、ラチスマスト90の先端に備えられたシーブブロック98との間で複数回巻き回されている。ガイリンク94は、マスト12の先端とラチスマスト90の先端とを連結する。また、ウエイトガイリンク95は、ラチスマスト90の先端とパレットウエイト96とを連結する。パレットウエイト96は、上部旋回体4の後方に間隔をおいて配置され、ラチスマスト90を備えたクレーン1Bのバランスを維持する。なお、クレーン1Bでは、マスト起伏用ロープ9Aが、マスト12の先端と上部旋回体4との間で巻き回されている。また、マスト12の基端側には、マスト起伏用ウインチ9Bが備えられている。マスト起伏用ウインチ9Bによってマスト起伏用ロープ9Aが巻き取られ、繰り出されることで、マスト12およびラチスマスト90が一体的に回動される。
また、クレーン1Bでは、ラチスマスト90の基端部に備えられたブーム起伏用ウインチ91がブーム起伏用ロープ93の巻き取り、繰り出しを行うことによって、シーブブロック97とシーブブロック98との距離が変化し、ブーム16がラチスマスト90に対して相対的に回動する。この結果、ブーム16の回動(起伏)が実現される。また、クレーン1Bでは、主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36がブーム16の下部ブーム16Aに固定されているが、これらのウインチの配置は、図1、図2の態様に限定されるものではない。クレーン1Bでは、ラチスマスト90、ブーム起伏用ウインチ91、ガイリンク92、ブーム起伏用ロープ93が、本発明のブーム駆動部を構成する。
本実施形態では、上記のクレーン1(クレーン1A、1B)のように、長尺なブーム16の先端部に、同じく長尺なジブ18が接続されている。そして、このようなクレーン1の自立動作や倒伏動作が行われる際に、クレーン1の転倒が防止される。
図3は、本実施形態に係るクレーン1(1A、1B)の制御を行う構成の電気的なブロック図である。クレーン1は、当該クレーン1の動作を統括的に制御する制御部70と、ブーム角度計81(ブーム角度検出部)と、ジブ角度計82(ジブ角度検出部)と、フロントストラット角度計83と、ジブ張力計84と、操作部85(入力部)と、表示部86と、報知ブザー87と、を更に備える。
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御部70には、ブーム角度計81、ジブ角度計82、フロントストラット角度計83、ジブ張力計84、操作部85、ブーム起伏用ウインチ30(ブーム起伏用ウインチ91)、ジブ起伏用ウインチ32、主巻用ウインチ34などが電気的に接続されている。なお、これらのウインチに接続された不図示の油圧モータを駆動するための油圧回路(たとえばコントロールバルブ)に対して、制御部70が電気的に接続される態様でもよい。
ブーム角度計81は、ブーム16の基端部に備え付けられており、ブーム16の対地角θb(図9参照)を検出するとともに、当該対地角θbに応じた信号を出力し制御部70に入力する。同様に、ジブ角度計82は、ジブ18の先端部に備え付けられており、ジブ18の対地角θj(図5参照)を検出するとともに、当該対地角θjに応じた信号を出力し制御部70に入力する。更に、フロントストラット角度計83は、フロントストラット22の基端部に備え付けられており、フロントストラット22の対地角(不図示)を検出するとともに、当該対地角に応じた信号を出力し制御部70に入力する。
ジブ張力計84は、ジブ18の先端部に備え付けられており、ジブ用ガイリンク28の先端部を部分的に挟持している。ジブ張力計84は、フロントストラット22の先端部とジブ18の先端部との間で延びるジブ用ガイリンク28の張力Tmを検出する。
操作部85は、キャブ5の内部に配置され、作業者による各種の操作を受け付ける。本実施形態では、操作部85は、複数の操作レバーとタッチパネル式やボタン式の入力部とを備える。複数の操作レバーは、下部走行体2の走行動作、上部旋回体4の旋回動作、ブーム起伏用ウインチ30、ジブ起伏用ウインチ32、主巻用ウインチ34、補巻用ウインチ36を駆動するための操作をそれぞれ受ける。また、入力部は、クレーン1の各操作情報やパラメータ数値などを受け付ける。一例として、入力部は、ブーム16の長さおよびジブ18の長さに関する長さ情報を受け付けるとともに、カウンタウエイト13やパレットウエイト96の重量に関する重量情報を受け付ける。
表示部86は、操作部85と同様に、キャブ5の内部に配置される。表示部86は、クレーン1の各種の作業情報を表示する。また、報知ブザー87は、キャブ5の内部およびキャブ5の外部に配置され、キャブ5に搭乗する作業者やクレーン1の周囲の作業者に対して、所定の警告情報を報知する。
制御部70は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、モード切換部701、駆動制御部702、動作規制部703、演算部704、判定部705(角度条件判定部)、記憶部706および情報出力部707を備えるように機能する。
モード切換部701は、動作規制部703が有する複数のモードを切換える。図4は、図3の動作規制部703が有する各モードを示す模式図である。動作規制部703は、通常作業モードと、自立倒伏モード(倒伏許容モード)と、組立分解モードと、を有する。
通常作業モードは、ブーム16が上部旋回体4に対して起立しかつジブ18がブーム16に対して起立したクレーン1の作業姿勢において、クレーン1が通常の作業を実行することを許容するモードである。
また、自立倒伏モードは、クレーン1の自立動作および倒伏動作を許容するモードである。具体的に、自立倒伏モードは、ブーム16およびジブ18が前記作業姿勢よりも前方に倒伏しジブ18の先端部が地上に着地した倒伏姿勢に至るまで前記クレーン1が前記作業姿勢から姿勢変更することを許容するモードである。更に、自立倒伏モードは、クレーン1が前記倒伏姿勢から前記作業姿勢に姿勢変更(自立)することを許容するモードでもある。
また、組立分解モードは、自立倒伏モードで実行可能な動作をすべて許容するとともに、自立倒伏モードでは許容されていないその他の動作を許容するモードである。一例として、組立分解モードでは、ブーム16からジブ18が脱離されることが許容され、ブーム16が上部旋回体4から脱離されることが許容される。また、組立分解モードでは、ジブ18がブーム16に装着されることが許容され、ブーム16が上部旋回体4に装着されることが許容される。
モード切換部701による動作規制部703のモードの切換は、作業者によって操作部85から入力される指令に応じて行われる。また、後記のように、所定の条件が満たされると、動作規制部703のモードがモード切換部701によって切換えられる。
駆動制御部702は、操作部85に入力される操作に応じて、ブーム起伏用ウインチ30(ブーム起伏用ウインチ91)、ジブ起伏用ウインチ32、主巻用ウインチ34などを含む、クレーン1の各駆動部材の駆動を制御する。具体的に、駆動制御部702は、クレーン1が備える各ウインチを回転させるための電動モータや油圧モータに接続された油圧回路に対して、駆動指令信号(駆動信号)を出力する。
動作規制部703は、予め設定されたモードに応じてブーム16およびジブ18の回動を規制する。特に、動作規制部703は、クレーン1が倒伏動作、自立動作を行う際に、所定の条件が満たされた場合、安全装置としてこれらの動作を規制する機能を有する。具体的に、動作規制部703は、クレーン1の作業姿勢においてジブ18の先端部が吊り荷の荷重に応じて設定された作業許容範囲に含まれるようにブーム16およびジブ18の回動を規制する(モーメントリミッタ機能)。また、動作規制部703は、自立倒伏モードの実行中であってクレーン1の倒伏動作が行われているときに、吊り荷の荷重に関わらずジブ18の先端部が前記作業許容範囲の外側に進入することを許容するとともに、クレーン1が前記作業姿勢から前記倒伏姿勢に姿勢変更することを許容する。また、動作規制部703は、前記倒伏動作中に、ブーム16の回転軸と平行な方向(左右方向)から見てブーム16の中心線の延長線とジブ18の中心線とによって画定される角度であるジブオフセット角度θm(図9参照)が予め設定された鋭角からなるオフセット限界角度θsよりも大きい場合に成立するジブブーム角度条件が成立すると、ブーム16の起立動作および倒伏動作ならびにジブ18の起立動作および倒伏動作を許容する。一方、前記倒伏動作中に、ジブブーム角度条件が成立していない場合、動作規制部703は、ブーム16の起伏動作およびジブ18の起立動作を規制するための起伏規制信号を出力する。この場合、ジブ18の倒伏動作が許容される。
また、動作規制部703は、自立倒伏モードの実行中であってクレーン1の自立動作が行われているときに、上記のジブブーム角度条件が成立しておらずかつ後述の接触判定条件が満たされていないと前記判定部705が判定すると、ブーム16の起立動作および倒伏動作ならびにジブ18の起立動作を規制するための起伏規制信号を出力する。なお、動作規制部703が実行する上記の規制動作については、後記で詳述する。
演算部704(角度決定部)は、制御部70が実行する各種のフローにおいて演算処理を実行する。演算部704は、ブーム角度計81によって検出されるブーム16の対地角θbとジブ角度計82によって検出されるジブ18の対地角θjとから上記のジブオフセット角度θmを演算、決定する。
記憶部706は、上記のオフセット限界角度θsを予め記憶するとともに前記オフセット限界角度θsを出力可能とされている。本実施形態では、記憶部706は、ジブ18の長さ、ブーム16の長さおよびカウンタウエイト13(パレットウエイト96)の重量の組み合わせに応じて、複数の前記オフセット限界角度θsを記憶しており、操作部85に入力された前記長さ情報および前記重量情報に応じて前記複数のオフセット限界角度θsの中から所定のオフセット限界角度θsを出力する。また、記憶部706は、図1に示されるSTD−LF仕様および図2に示されるSHL−LF仕様におけるオフセット限界角度θsをそれぞれテーブル形式で記憶している。なお、記憶部706は、カウンタウエイト13(パレットウエイト96)の重量情報に関わらず、ブーム16およびジブ18の長さ情報に応じたオフセット限界角度θsを記憶、出力するものでもよい。
判定部705は、制御部70が実行する各種のフローにおいて判定処理を実行する。特に、判定部705は、演算部704によって決定された前記ジブオフセット角度θmが記憶部706から出力された前記オフセット限界角度θsよりも大きい場合に、前記ジブブーム角度条件が成立していると判定する一方、前記ジブオフセット角度θmが前記オフセット限界角度θsよりも小さい場合に、前記ジブブーム角度条件が成立していないと判定する。更に、判定部705は、前記ジブの状態が予め定められた接触判定条件を満たしているか否かを判定するジブ接触状態判定部としての機能も有する。前記接触判定条件は、地面に対して前記ジブ18の先端部が正常に接触している状態にあることを判定するために予め定められた条件である。この実施の形態に係る接触判定条件は、後に詳述するように、前記ジブ張力計84により検出される前記ジブ用ガイリンク28の張力Tmが一定以下であることである。換言すれば、前記張力Tmが一定以上の場合、前記ジブ18の先端部にこれをジブ18等の自重に抗して地面から浮上させるような力が当該ジブ18に与えられているとして当該ジブ18の先端部が正常な接触状態にないと判定される。
情報出力部707は、動作規制部703から起伏規制信号を受け取り、表示部86や報知ブザー87に対して報知情報や当該情報に応じた信号を出力する。
図5は、本実施形態に係るクレーン1(1A、1B)が組立分解モードから自立倒伏モードに移行するための処理を示すフローチャートである。図6および図7は、本実施形態に係るクレーン1の自立倒伏モードにおける処理を示すフローチャートである。図8乃至図14は、本実施形態に係るクレーン1の自立倒伏動作を示す工程図である。
<自立倒伏モードへの移行について>
図5を参照して、クレーン1が作業姿勢(図1)とされた状態で、モード切換部701が、動作規制部703のモードについて組立作業モードから自立倒伏モードへのモード切換判定処理を実行する。当該モード切換判定処理は、クレーン1の使用中に所定の間隔で実行される。モード切換判定処理が開始されると、クレーン1がLF姿勢(ラッフィング姿勢、図1の作業姿勢に相当)でありかつクレーン1の実行モードが組立分解モードであるか否かを判定部705が判定する(ステップS1)。ここで、クレーン1がLF姿勢であり組立分解モードに設定されていると(ステップS1でYES)、判定部705は、ジブ張力計84によって検出されるジブ用ガイリンク28の張力Tmが、記憶部706に格納されている張力閾値Ts以上か否かを判定する(ステップS2)。ここで、Ts≦Tmが成立している場合(ステップS2でYES)、ジブ用ガイリンク28の張力Tsが充分大きく、ジブ18がブーム16によって支持されている、換言すれば、ジブ18の先端部がジブ18等の自重に抗して地面から浮上していると判定されるため、組立分解モードから自立倒伏モードへの移行が可能となる。したがって、モード切換部701は、組立分解モードを解除し(ステップS3)、自立倒伏モードへ移行する(ステップS4)。なお、ステップS1においてクレーン1がLF姿勢ではない、または、組立分解モードではない場合には(ステップS1でNO)、判定部705によってステップS1の判定が繰り返される。また、ステップS2において、Ts>Tmの場合(ステップS2でNO)にも、ステップS1、S2が繰り返される。なお、モード切換部701による自立倒伏モードへの移行は、図5の処理に限定されるものではない。たとえば、キャブ5に搭乗している作業者が操作部85を通じて、自立倒伏モードに移行する指令を入力し、モード切換部701が当該指令を受けて動作規制部703のモードを切換えてもよい。
<自立倒伏モードにおける処理について>
図6を参照して、モード切換部701が動作規制部703の自立倒伏モードを開始した場合であっても、所定の条件が満たされている場合に限り、クレーン1の倒伏動作、自立動作が許容される。換言すれば、所定の条件が満たされていない場合には、クレーン1の倒伏動作、自立動作が規制される。本実施形態では、このようなクレーン1の動作の許容、規制を制御部70の動作規制部703が実行する。図6において、自立倒伏モードが開始されると、判定部705は、クレーン1がLF姿勢であるか否かを判定する(ステップS11)。ここで、クレーン1がLF姿勢とされていると(ステップS11でYES)、判定部705は、更にクレーン1がSTD−LF仕様か否かを判定する(ステップS12)。なお、クレーン1がSTD−LF仕様(図1)およびSHL−LF仕様(図2)の何れの仕様に設定されているかに関する情報は、作業者によって操作部85から入力され記憶部706に記憶されている。ステップS11において、クレーン1がLF姿勢ではない場合(ステップS11でNO)、ステップS11の判定が繰り返される。
ステップS12において、クレーン1が図1に示されるSTD−LF仕様である場合(ステップS12でYES)、動作規制部703は、記憶部706に記憶されているSTD−LF仕様のテーブルからオフセット限界角度θs(閾値角度)を取得する(ステップS13)。一方、クレーン1が図1に示されるSTD−LF仕様でない場合(ステップS12でNO)、動作規制部703は、記憶部706に記憶されているSHL−LF仕様のテーブルからオフセット限界角度θsを取得する(ステップS14)。この結果、現在のクレーン1の仕様に対して適切に設定されたオフセット限界角度θsが決定される(ステップS15)。STD−LF仕様とSHL−LF仕様との間ではクレーン1のバランスが異なるため、互いに異なるオフセット限界角度θsが設定されている。
その後、演算部704が、現在のジブオフセット角度θmを、ブーム16の対地角θbおよびジブ18の対地角θjから算出する。そして、判定部705が、演算されたジブオフセット角度θmとオフセット限界角度θsとの大小関係を比較する(ステップS16)。ここで、θm≧θsの場合(ステップS16でYES)、ジブ18がブーム16に対して下方に充分屈曲した姿勢とされている(ジブブーム角度条件が成立)。このため、動作規制部703は、自立倒伏モードにおけるクレーン1の自立動作および倒伏動作を許容する(ステップS17、自立倒伏動作有効)。一方、ステップS16において、θm<θsの場合、θm≧θsの場合よりもジブ18がブーム16の中心線の延長線に近い位置に配置されていることとなる(ジブブーム角度条件が非成立)。この状態で、クレーン1の自立、倒伏動作が実行されると、クレーン1が前方に転倒する恐れが懸念される。このため、動作規制部703は、ブーム16およびジブ18の動作を制限(規制)する(ステップS18)。
<自立倒伏動作の実行について>
図6のステップS17において、動作規制部703がクレーン1の自立動作および倒伏動作を許容すると、作業者が操作部85を操作しながら、クレーン1の自立動作または倒伏動作が実行される。なお、このようにクレーン1の自立動作または倒伏動作が開始された後であっても、クレーン1のブーム16およびジブ18の位置関係(ジブオフセット角度θm)が再び不安定な状態に至ると、クレーン1の転倒を防止するために当該クレーン1の動作を規制する必要がある。このため、動作規制部703は、クレーン1の自立動作中または倒伏動作中にも図7に示される処理を継続的に実行する。
図6のステップS17においてクレーン1における自立倒伏動作が有効であると判定されると、判定部705が現在の動作規制部703のモードを判定する(図7のステップS21)。ここで、動作規制部703が自立倒伏モードに設定されていると(ステップS21でYES)、判定部705は再び最新のジブオフセット角度θmとオフセット限界角度θsとの大小関係を比較する(ステップS22)。θm<θsの場合(ステップS22でYES)、ジブオフセット角度θmが小さすぎるため、クレーン1の転倒が懸念される。そこで、判定部705は、ジブ用ガイリンク28の張力Tmと予め設定され記憶部706に記憶されている第1閾値張力Ts1との大小関係を比較する(ステップS23)。当該ステップS23および後記のステップS26は、張力Tmにおける所定の測定誤差を考慮しつつ、ジブ18の先端部(車輪65S)が地面Gに着地しているか否かを判定している。なお、第1閾値張力Ts1は、ジブ18の先端部(車輪65S)の地切りを判定するために設定された閾値である。
ステップS23において、Ts1≦Tmの場合(ステップS23でYES)、張力Tmが第1閾値張力Ts1よりも大きいこと、つまり前記接触判定条件を満たしていないこと、によって、ジブ用ガイリンク28に充分な張力が発生している、すなわち、ジブ18の先端部に配置された車輪65Sを地面から浮上させるのに十分な浮上力が作用している、と判定される。この場合、ジブオフセット角度θmが小さくかつジブ18の先端部が地面から浮いているため、クレーン1が転送する可能性がある。そこで、動作規制部703は、ブーム16およびジブ18の動作の少なくとも一部を制限する(ステップS24)。また、動作規制部703は、当該危険性をキャブ5内の作業者やクレーン1の周囲の他の作業者に報知するために、情報出力部707を制御してクレーン1が転倒する可能性に関する情報を表示部86に表示させる(状態警告表示)。また、動作規制部703は、報知ブザー87に対して警告ブザー音を報知させる(ステップS25)。
一方、ステップS23においてTs1>Tmの場合、張力Tmが第1張力閾値Ts1よりも小さいため、判定部705は張力Tmと予め設定された第1閾値張力Ts1よりも小さい第2閾値張力Ts2とを比較する(ステップS26)。ここで、Tm≦Ts2の場合(ステップS26でYES)、ジブ用ガイリンク28の張力Tmが充分小さいため、ジブ用ガイリンク28が弛んでおり、ジブ18の先端部に配置された車輪65Sが地面に対して正常に接触した状態にあるとみなすことができる。このため、動作規制部703は、ブーム16の起立動作および倒伏動作ならびにジブ18の起立動作および倒伏動作のすべてを許容する(ステップS27)。更に、動作規制部703は、クレーン1の安全性をキャブ5内の作業者やクレーン1の周囲の他の作業者に報知するために、情報出力部707を制御してクレーン1が通常の状態であることを示唆する情報を表示部86に表示させる(状態通常表示)。また、動作規制部703は、それまで報知ブザー87が警告ブザー音を報知している場合は、当該ブザー音を停止させる(ステップS28)。一方、ステップS26において、Tm>Ts2の場合(ステップS26でNO)、ジブ用ガイリンク28の張力Tmの測定誤差を踏まえると、ジブ18の先端部に配置された車輪65Sが必ずしも地面に対して正常に接触した状態にあるとはいえない。換言すれば、少なくとも、前記ジブ18の自重に抗して前記車輪65Sを地面から浮上させる向きの力が作用していることは明らかである。このため、動作規制部703は、前回実行された図7の処理(ステップS24、S27、S29の何れか)を維持する。その後、動作規制部703は、図7の処理を終了するとともに、所定の間隔(たとえば数秒)で、図7の処理を繰り返す。
なお、図6のステップS18、図7のステップS24において、動作規制部703は、ブーム16およびジブ18の動作を制限する。具体的に、動作規制部703は、前記倒伏許容モードの実行中に前記ジブブーム角度条件が成立していない場合、駆動制御部702に対してブーム起伏用ロープ38(ブーム起伏用ロープ93)の巻き取りおよび繰り出し(ブーム16の起立動作および倒伏動作)ならびにジブ起伏用ロープ44の巻き取り(ジブ18の起立動作)を規制する信号を前記倒伏規制信号として出力する。この際、ジブ起伏用ロープ44の繰り出し(ジブ18の倒伏動作)は許容される。
<クレーンの自立動作について>
次に、図7の処理において実行されるクレーン1の自立動作について、図1、図8乃至図14を参照して説明する。なお、図8乃至図14では、ブーム16、ジブ18、リアストラット21およびフロントストラット22を図示しており、クレーン1のその他の部材(上部旋回体4など)の図示を省略している。クレーン1の組立段階において、ブーム16が上部旋回体4(図1)に装着されるとともに、ブーム16の先端部にジブ18が装着される。また、ブーム16の先端部およびジブ18の基端部にはそれぞれリアストラット21およびフロントストラット22が装着される。更に、ブーム16の基端部とリアストラット21の先端部とはストラット用ガイリンク26で接続され、フロントストラット22の先端部とジブ18の先端部とはジブ用ガイリンク28で接続される。また、リアストラット21の先端部に配置されたシーブブロック47とフロントストラット22の先端部に配置されたシーブブロック48との間にはジブ起伏用ロープ44が複数回巻きまわされている。したがって、ジブ起伏用ウインチ32によるジブ起伏用ロープ44の巻き取り、繰り出しによってジブ18の起立、倒伏動作が可能である。また、図8乃至図14には図示していないが、ブーム16の先端部にはブーム用ガイライン66が予め接続されており、ブーム起伏用ウインチ30によるブーム起伏用ロープ38の巻き取り、繰り出しによってマスト12とともにブーム16の起立、倒伏動作が可能である。
図8に示される状態では、ジブ用ガイリンク28が弛んでおり、ジブ張力計84(図3)が検出するジブ用ガイリンク28の張力Tmは前述の第2閾値張力Ts2未満となっている。また、ジブオフセット角度θmはゼロに等しい。このため、図6に示す自立倒伏モードにおける処理は、ステップS11、S12、S13、S15、S16およびS17を経て、自立倒伏動作が許容される。一例として、ステップS15において決定されるオフセット限界角度θsは45度である。
図8に示される状態において、作業者による指示によって自立倒伏モードが開始されると、当該作業者がブーム起伏用ウインチ30によってブーム起伏用ロープ38を巻き取ることでブーム16の起立動作を開始する。この結果、図9に示すように、ブーム16の対地角θbが大きくなる。なお、図9に示す状態では、ブーム16の起立に伴って、ジブ18がジブフットピン29を中心に回動し、ブーム16に追従するように後方に移動する。この際、ジブ18の先端部に配置された補助シーブ65Sが地面を転動する。ジブ18の移動に伴って、ジブ18の対地角θjも大きくなる。なお、図9を参照して、演算部704(図3)は、ジブオフセット角度θm=θb+θjの関係式によってθmを演算することができる。図9では、ジブオフセット角度θmは約30度である。このため、図7の処理では、ステップS22からS23に進むが、ジブ用ガイリンク28の張力Tmが未だ第2閾値張力Ts2未満であるため、ステップS27、S28に進む。このため、引き続き、ブーム16の起立動作が許容される。
図9に示される状態からブーム16が起立され続けると、やがて図10に示すように、ジブ用ガイリンク28が張り、張力Tmが大きくなる。図10では、ジブオフセット角度θmが44度であるため、図7の処理では、ステップS22からS23に進む。作業者がこのままブーム16の起立動作を続けると、張力Tmが第1閾値張力Ts1よりも大きくなる。このため、図7のステップS23からS24、S25に進み、動作規制部703がブーム16の起立動作、倒伏動作、ジブ18の起立動作を制限する。仮にブーム16の起伏動作が継続され、ジブ18は地面から浮き上がると、クレーン1が前方に転倒する恐れがあるため、動作規制部703による制限処理によってこのような現象が未然に防止される。この際、ブーム16の倒伏動作(ジブ起伏用ロープ44の繰り出し)も制限される理由は、ジブ18の先端部が地面から浮き上がった状態でブーム16が倒伏されると、上部旋回体4および下部走行体2を地面から浮き上がらせる向きのモーメントが増大し、クレーン1が同様に転倒する恐れがあるためである。また、ジブ18の先端部の更なる浮き上がりを防止するために、ジブ18の起立(ジブ起伏用ロープ44の巻き取り)が制限される。
図7のステップS24、25によって上記のような制限がかかった場合、作業者は、許容されているジブ18の倒伏動作を行う。すなわち、ジブ起伏用ウインチ32によってジブ起伏用ロープ44が繰り出されると、シーブブロック47とシーブブロック48との距離が大きくなり、ジブ18が倒伏する。この結果、再びジブ18の先端部(車輪65S)が着地し、張力Tmが第2閾値張力Ts2を下回る(図7のステップS27、S28)。つまり、地面に対して当該先端部が正常に接触しているとみなすための接触判定条件が再び満たされる。したがって、ブーム16の起立動作が再開可能となる。あるいは、ジブ18の倒伏によって、ジブオフセット角度θmがオフセット限界角度θsよりも大きくなることで、ブーム16およびジブ18の動作が再び許容される。
その後、ジブ18の車輪65Sが地面に当接した状態が維持されながら、ブーム16が起立し続けると、クレーン1が図11に示されるような姿勢とされる。なお、図11では、ジブオフセット角度θmは約120度である。この場合、θm>θs(45度)であるため、図7のステップS22でNOと判定され、ブーム16の起立が継続して許容される。そして、ブーム16の起立動作によって図12に示すように、ジブ18の先端部が地面から浮上していても、ジブオフセット角度θmが充分に大きいため、クレーン1が転倒することがない。その後、図13、図14に示すように、ブーム16が起立され続け、やがてクレーン1が図1に示すような作業姿勢に設定される。なお、図13では、ジブオフセット角度θmが60度である一方、図14では、ジブオフセット角度θmは40度である。この場合、図7に示す処理に基づけば、ステップS24、S25においてブーム16およびジブ18の動作が制限されるが、既にブーム16の対地角θbが所定の角度(ブーム限界角度、たとえば65度)を超えており、クレーン1が作業許容範囲に含まれているため、前述のモーメントリミッタ機能が作動している。このため、動作規制部703は図7に示す処理を強制的に解除している。換言すれば、図8から図14に示される工程によって、クレーン1の起立動作が行われる際、動作規制部703が実行する制限処理は、ブーム16の対地角θbが予め設定されたブーム限界角度(65度)以下の場合に限って行われればよい。
なお、図11から図13に示される状態の途中で、ジブオフセット角度θmがオフセット限界角度θsを下回った場合には、動作規制部703がブーム16およびジブ18の動作を図7のステップS24、S25に基づいて制限する。この場合、ジブ18の倒伏動作によってジブオフセット角度θmがオフセット限界角度θsよりも大きくなると、動作規制部703がブーム16の起立動作を再開可能とする。
<クレーンの倒伏動作について>
次に、図7の処理において実行されるクレーン1の倒伏動作について、同様に、図1、図8乃至図14を参照して説明する。クレーン1を図1の作業姿勢から図8の倒伏姿勢に姿勢変更する必要がある場合、作業者は操作部85を操作して、制御部70のモード切換部701に対して、自立倒伏モードへの移行を指示する。この際、クレーン1の実行モードが組立分解モードに設定されていれば、図5に示すフローによって、組立分解モードから自立倒伏モードに移行される(図1の姿勢では、張力Tm>Tsのため)。なお、作業の安全性を踏まえて、自立倒伏モードに移行する際には、事前に1度組立分解モードが設定されることが望ましいが、クレーン1の実行モードが後記のとおり通常作業モードから直接自立倒伏モードに移行される態様でもよい。自立倒伏モードでは、ジブ18の先端部が作業許容範囲(作業許容半径)を超える範囲までブーム16およびジブ18が倒伏することが許容される。
図1に示される状態からブーム16の対地角θbが所定のブーム限界角度(65度)を下回るまでは、ブーム16の倒伏動作(ブーム起伏用ロープ38の繰り出し)およびジブ18の倒伏動作(ジブ起伏用ロープ44の繰り出し)が許容される。やがて、図14、図13および図12に示される状態を経て、図11に示されるように、ジブ18の先端部の車輪65Sが着地する。この間、対地角θbが前記所定の角度(65度)を下回ると、動作規制部703による制限処理が実行可能とされる(図7)。当該クレーン1の倒伏動作中は、ジブ用ガイリンク28の張力Tmは第1閾値張力Ts1よりも大きい。このため、ジブオフセット角度θmがオフセット限界角度θsよりも小さくなると、図7のステップS22、S23を経て、ステップS24、S25が実行される。この際、クレーン1の前方への転倒を防止するために、動作規制部703はブーム16の起伏動作(ブーム起伏用ロープ38の巻き取り、繰り出し)およびジブ18の起立動作(ジブ起伏用ロープ44の巻き取り)を制限する。なお、前述のように、上部旋回体4に対して浮き上がるようなモーメントが付与されることを防止するために、クレーン1の自立動作時と同様に、ブーム16の起立動作が制限される。
図11に示される状態から、ブーム起伏用ロープ38の繰り出しおよびジブ起伏用ロープ44の繰り出しによって、図10、図9の状態を経て、ブーム16およびジブ18が地上で張出姿勢とされる(図8)。なお、この間も作業者の意図しない操作などによって、ジブ用ガイリンク28の張力Tmが第1閾値張力Ts1を超えている状態で、ジブオフセット角度θmがオフセット限界角度θsを下回った場合には、動作規制部703による制限処理が実行される。なお、車輪65Sが地面に着地した後は、図7のステップS27、S28によってブーム16およびジブ18の動作が全て許容される。
なお、クレーン1の自立倒伏動作では、予め設定された作業許容範囲(半径)外にジブ18の先端部が進入した場合に限って、動作規制部703による制限処理が実行されればよい。換言すれば、ジブ18の先端部が作業許容範囲内に位置する場合には、クレーン1の安定性が保持されているため、ブーム16およびジブ18の動作を制限する必要なない。
以上のように、本実施形態では、ジブ18およびブーム16の回動を規制する動作規制部703が、通常作業モードと自立倒伏モード(倒伏許容モード)とを有する。通常作業モードにおいて動作規制部703は、ジブ18の先端部が吊り荷の荷重に応じて設定された作業許容範囲に含まれるようにブーム16およびジブ18の回動を規制する(モーメントリミッタ機能)。このため、吊り荷の吊り上げ作業を安全に実行することができる。一方、自立倒伏モードにおいて動作規制部703は、吊り荷の荷重に関わらずジブ18の先端部が作業許容範囲の外側に進入することを許容し、クレーン1が作業姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更することを許容する。そして、動作規制部703は、この自立倒伏モードの実行中に判定部705によってジブブーム角度条件が成立していないと判定されると、ジブ18の倒伏動作を許容する一方操作部85が受ける操作に関わらず起伏規制信号を出力しブーム16の起伏動作およびジブ18の起立動作を規制する。また、動作規制部703は、判定部705によってジブブーム角度条件が成立していると判定されると、ブーム16の起伏動作およびジブ18の起伏動作をそれぞれ許容する。ジブブーム角度条件は、ジブオフセット角度θmが予め設定された鋭角からなるオフセット限界角度θsよりも大きい場合に成立する。このため、ブーム16とジブ18との開き角度(ジブオフセット角度を内角とした場合の外角)が大きくなりすぎることが防止され、クレーン1の転倒を未然に防止しながら、モーメントリミッタ機能が解除された状態のクレーン1を作業姿勢から倒伏姿勢に安全に姿勢変更することができる。この結果、倒伏作業において、作業者がクレーン1の転倒に注意する負担を低減することができる。
また、本実施形態では、自立倒伏モードにおいてジブブーム角度条件が成立していない場合、動作規制部703が駆動制御部702に対してブーム起伏用ロープ38(ブーム起伏用ロープ93)の巻き取り、繰り出しおよびジブ起伏用ロープ44の巻き取りを規制する信号を出力する。このため、クレーン1が転倒しやすい姿勢になった際に、ブーム起伏用ウインチ30(91)およびジブ起伏用ウインチ32の駆動を速やかに制限することができる。
更に、本実施形態では、自立倒伏モードにおいてジブブーム角度条件が成立していない場合、動作規制部703が表示部86に対して警告情報を表示するための信号を出力する。このため、クレーン1が転倒しやすい姿勢になったことを作業者に速やかに報知することができる。この結果、クレーン1の転倒を未然に防止することができる。
また、本実施形態では、通常、クレーンに備えられることが多いブーム角度計81およびジブ角度計82の検出結果からジブオフセット角度θmを決定することができる。この結果、これらの角度計を利用してジブブーム角度条件の成立を判定することができる。
更に、本実施形態では、記憶部706は、ジブ18の長さおよびブーム16の長さの組み合わせに応じて、複数のオフセット限界角度θsを記憶している。このため、長さが異なるジブ18やブーム16が上部旋回体4に装着され、クレーン1が転倒しやすい姿勢が変化しても、長さ情報に応じて適切なオフセット限界角度θsを取得することができる。更に、記憶部706は、ジブ18の長さ、ブーム16の長さに加えて、カウンタウエイト13(パレットウエイト96)の重量の組み合わせに応じて、複数のオフセット限界角度θsを記憶している。このため、重量の異なるカウンタウエイト13、パレットウエイト96が上部旋回体4または上部旋回体4の後方に装着されクレーン1が転倒しやすい姿勢が変化しても、重量情報に応じて適切なオフセット限界角度θsを取得することができる。
なお、図7に示すように、自立倒伏モードの実行中にジブ起伏用ロープ44の張力Tmの大きさを判定することで、クレーン1が作業姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更する際およびクレーン1が倒伏姿勢から作業姿勢に姿勢変更する際の何れの場合においても、クレーン1の転倒を防止することができる。すなわち、クレーン1が作業姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更する場合、ジブ起伏用ロープ44の張力Tmは第1閾値張力Ts1よりも大きいことが多いため、張力Tmの大小判定は必ずしも必要ではない。しかしながら、図7のような判定処理を含むことで、一つのフロ―処理によって、クレーン1の自立動作および倒伏動作の何れにおいても、クレーン1の転倒を防止する判定を確実に行うことができる。
また、本実施形態に係るクレーン1の姿勢変更方法は、予め設定された通常作業モードおよび自立倒伏モード(倒伏許容モード、自立許容モード)に応じてブーム16およびジブ18の回動を規制することを備える。前記通常作業モードでは、前記ブーム16が上部旋回体4に対して起立しかつ前記ジブ18が前記ブーム16に対して起立した前記クレーン1の作業姿勢においてジブ18の先端部が吊り荷の荷重に応じて設定された作業許容範囲に含まれるようにブーム16およびジブ18の回動を規制し前記クレーン1が通常の作業を実行することを許容する。また、自立倒伏モード(倒伏許容モード)では、吊り荷の荷重に関わらずジブ18の先端部が前記作業許容範囲の外側に進入することを許容するとともに、前記クレーン1が、前記ブーム16および前記ジブ18が前記作業姿勢よりも前方に倒伏し前記ジブ18の先端部(車輪65S)が地上に着地した倒伏姿勢に前記作業姿勢から姿勢変更することを許容する。更に、当該クレーン1の姿勢変更方法は、ジブフットピン29(第2回転軸)と平行な方向から見て前記ブーム16の中心線の延長線と前記ジブの中心線18とによって画定される角度であるジブオフセット角度θmが予め設定されたオフセット限界角度θs(閾値角度)よりも大きいときに成立するジブブーム角度条件が、前記自立倒伏モードの倒伏動作中において成立していない場合には、ジブ18の倒伏動作のみ許容するとともに操作部85が受ける操作に関わらず前記ブーム16の起伏動作および前記ジブ18の起立動作を規制する。一方、前記倒伏許容モードにおいて前記ジブブーム角度条件が成立している場合には、前記ブーム16の起伏動作および前記ジブ18の起伏動作を許容しながら、前記クレーン1を前記作業姿勢から前記倒伏姿勢に姿勢変更する。このような方法によれば、通常作業モードにおいて、吊り荷の吊り上げ作業を安全に実行することができる。一方、倒伏許容モードでは、クレーン1が作業姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更される際に、ブーム16とジブ18とがなす角度が大きいままブーム16またはジブ18が動かされることがない。このため、クレーン1が前方に転倒することを未然に防止しながら、モーメントリミッタ機能が解除された状態のクレーン1を作業姿勢から倒伏姿勢に安全に姿勢変更することができる。
また、クレーン1の自立倒伏モードは、クレーン1が倒伏姿勢から前記作業姿勢に姿勢変更することを許容する。クレーン1の姿勢変更方法は、自立倒伏モード(自立許容モード)の実行中に、ジブオフセット角度θmがオフセット限界角度θsよりも小さく、かつ、地面に対して前記ジブ18の先端部が正常に接触していることを判定するための接触判定条件が満たされていない場合に、前記ブーム16の起立動作および倒伏動作ならびに前記ジブ18の起立動作を規制する一方、前記自立倒伏モードの実行中に少なくとも前記ジブオフセット角度θmが前記オフセット限界角度θsよりも大きいまたは前記接触判定条件が満たされている場合には、前記ブーム16の起立動作および倒伏動作ならびに前記ジブ18の起立動作および倒伏動作をそれぞれ許容しながら、前記クレーン1を前記倒伏姿勢から前記作業姿勢に姿勢変更することを備える。このような姿勢変更方法によれば、クレーン1の自立動作時に、ブーム16とジブ18とがなす角度が大きいままブーム16またはジブ18が動かされ、クレーン1が前方に転倒することを未然に防止しながら、モーメントリミッタ機能が解除された状態のクレーン1を倒伏姿勢から作業姿勢に安全に姿勢変更することができる。
以上、本発明の一実施形態に係るクレーン1およびクレーン1の姿勢変更方法について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明に係るクレーンとして、以下のような変形実施形態が可能である。
(1)上記の実施形態では、所定の条件が成立すると、動作規制部703が駆動制御部702に対してブーム16およびジブ18の動作を制限する信号を出力する態様に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。動作規制部703は、駆動制御部702に対する上記の信号を出力することなく、所定の警告情報を表示部86に表示するための信号や報知ブザー87を鳴らすための信号を倒伏規制信号として出力してもよい。この場合、キャブ5内の作業者が当該警告を受けてブーム16およびジブ18の操作を制限することで、クレーン1の転倒を防止することができる。
(2)また、上記の実施形態では、図1の作業姿勢からブーム16およびジブ18が倒伏されるクレーン1の倒伏動作において、動作規制部703のモードが組立分解モードから自立倒伏モードに移行する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図1の作業姿勢において、動作規制部703のモードが通常作業モードから自立倒伏モードに移行される態様でもよい。この場合、クレーン1の転倒が懸念される場合には、自立倒伏モードへの移行が制限されることが望ましい。すなわち、動作規制部703は、前記ジブブーム角度条件が通常作業モードにおいて成立していない場合には、通常作業モードから自立倒伏モード(倒伏許容モード)への切換を規制するためのモード規制信号をモード切換部701に対して出力するものでもよい。このような構成によれば、クレーン1の転倒が懸念される姿勢のまま、通常作業モードから自立倒伏モードに移行することを防止することができる。
(3)また、上記の実施形態では、クレーン1が図1のSTD−LF形態と図2のSHL−LF形態とをとることができる態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図2において、クレーン1Bがウエイトガイリンク95およびパレットウエイト96を備えていないHL−LF形態(ヘビーリフト形態)とされるものでもよい。また、クレーン1は、図1、図2のように複数の形態に変更可能なものに限定されず、一つの形態からなるものでもよい。
(4)また、上記の実施形態では、クレーン1の仕様(ブーム16およびジブ18の長さ、カウンタウエイト13、パレットウエイト96の重量)に応じてオフセット限界角度θsが固定値として設定される態様にて説明したが、オフセット限界角度θsはブーム16の対地角θbやジブ18の対地角θjに対する変数として記憶部706に格納される態様でもよい。この場合、ブーム16およびジブ18の姿勢(対地角)に応じて最適なオフセット限界角度θsが適用され、クレーン1の転倒を防止することができる。換言すれば、クレーン1が比較的転倒しにくい姿勢にある場合、ブーム16およびジブ18の動作が過剰に制限されることが防止される。
(5)また、上記の実施形態では、ジブ18の先端部(車輪65S)が地面に当接しているか否かの判定を、ジブ用ガイリンク28の張力Tmの大きさに基づいて行う態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。車輪65Sの回転トルク(ローラ荷重)やリミットスイッチ、車輪65S付近に配置されるカメラによって取得される映像情報などに基づいて、上記の当接状態が判定される態様でもよい。
(6)また、上記の実施形態では、ジブオフセット角度θmとオフセット限界角度θsとが比較されることで、ジブブーム角度条件の成立が判定される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ブーム16とジブ18との開き角度(ジブオフセット角度θmを内角とした場合の外角)が予め設定された鈍角からなる開き閾値角度と比較されるものでもよい。この場合、前記開き角度が前記開き閾値角度よりも大きくなると、判定部705によってジブブーム角度条件が成立していないと判定される。
(7)本発明は倒伏動作の制限に関するものであって、自立動作の制限は必須ではないが、当該自立動作の制限が行われる場合、その制限のための前述の「接触判定条件」は、任意に設定されることが可能である。上記の実施形態では、ジブ用ガイリンク28の張力Tmの大きさが一定以下であること、つまり、ジブ18等の自重に抗してその先端部を地面から浮上させるような力が実質上作用していないこと、が接触判定条件として設定されているが、当該接触判定条件は、ジブ18の先端部が実際に地面に接触していることを判定するための条件であってもよい。例えば、車輪65Sの回転トルク(ローラ荷重)やリミットスイッチ、車輪65S付近に配置されるカメラによって取得される映像情報などに基づいて、ジブ18の先端部が地面に接触しているか否かの判定が行われてもよい。
また、前記接触判定条件が前記ジブ用ガイリンク28の張力Tmに基づいて設定される態様において、その判定のための張力閾値も自由に設定されることが可能である。例えば、当該閾値は、前記実施の形態のようにジブ先端部が地面から完全に浮上した状態に対応するような値ではなく、それよりも小さな値、つまり、ジブ先端部は実際には地面に接触しているかもしれないがこれを地面から浮上させるおそれのある一定以上の大きさの浮上力が作用している状態に対応する値、に設定されてもよい。換言すれば、前述の「地面に対して前記ジブの先端部が正常に接触しているか否かを判定するために予め定められた接触判定条件」とは、当該ジブの先端部が実際に地面に接触していることを判定するための条件であってもよいし、当該ジブの先端部が実際に地面に接触しているだけでなくその接触圧が十分な大きさであること、つまり、前記先端部を地面から浮上させるおそれのある浮上力が作用していないこと、も「正常な接触」の条件とするものであってもよい。