JP7453512B2 - ボンド磁石とコンパウンドの製造方法 - Google Patents

ボンド磁石とコンパウンドの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ボンド磁石用組成物であるコンパウンドの製造方法等に関する。
高性能化や省エネルギー化等を図るため、希土類磁石を用いた電磁機器(電動機等)が多く用いられる。希土類磁石には、希土類磁石粒子を焼結させた焼結磁石と、希土類磁石粒子をバインダ樹脂で結着させたボンド磁石がある。
ボンド磁石には、磁石粒子とバインダ樹脂(主に熱可塑性樹脂)の混在物をキャビティへ射出して成形した射出ボンド磁石と、磁石粒子とバインダ樹脂(主に熱硬化性樹脂)の混在物をキャビティ内で圧縮固化(硬化を含む)して成形した圧縮ボンド磁石とがある。
ボンド磁石は、焼結磁石よりも形状自由度が大きく、成形性に優れる。このためボンド磁石の用途は拡大しつつある。これに伴い、様々な環境下でも高磁気特性が安定的に発現され得る耐食性(耐久性)が強く求められるようになってきた。ボンド磁石の磁気特性の劣化は主に磁石粒子の酸化に依る。そこで、ボンド磁石の耐食性の向上を図るため、磁石粒子の表面に防錆処理を施す提案が多くされている。これに関連する記載が、例えば、下記の特許文献1にある。
特許第5499738号公報
防錆処理がなされた磁石粒子でも、割れにより新生面が生じると、酸化されて磁気特性が低下し得る。また、磁石粒子の割れによる微細化により、酸化される表面積も増加する。従って、磁石粒子の防錆処理だけでは、ボンド磁石の耐食性の確保は困難である。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、高耐食性のボンド磁石が得られるコンパウンドの製造方法等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、コンパウンドの製造工程を見なおすことにより、磁石粒子の割れを抑止することに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《コンパウンドの製造方法》
(1)本発明は、磁石粒子と該磁石粒子を結着させ得るバインダ樹脂とからなるコンパウンドの製造方法であって、該磁石粒子の原料である磁石粉末と該バインダ樹脂の原料である樹脂粉末とを、該樹脂粉末が溶融または軟化する加熱温度で混合してコンパウンドとする調製工程を備え、該磁石粉末は、水素処理された希土類磁石粉末からなり平均粒径が40~200μmである粗粉末を含み、該磁石粉末と該樹脂粉末を混練せずに得られるコンパウンドの製造方法である。
(2)本発明の製造方法では、磁石粒子とバインダ樹脂の均一分散性を高めるためにこれまで当然のようになされてきた混練を行わずにコンパウンドを製造している。このため、コンパウンドの製造過程中に大きなせん断力等が磁石粒子に作用することがなく、磁石粒子の割れが抑制される。こうして本発明の製造方法によれば、ボンド磁石の耐食性を低下させる主要因であった磁石粒子の割れを抑制したコンパウンドが得られる。
なお、本発明に係るコンパウンドでも、バインダ樹脂が軟化または溶融してボンド磁石が成形される点は従前通りである。従って、混練の有無とは関係なく、本発明に係るコンパウンドを用いても、従来のコンパウンドを用いた場合に対し、成形可能なレベルで磁石粒子がバインダ樹脂中に略均一的に分散したボンド磁石が得られる。
《ボンド磁石の製造方法》
本発明は、ボンド磁石の製造方法としても把握される。例えば、本発明は、上述した製造方法により得られたコンパウンドを用いて、射出成形または圧縮成形する成形工程を備えたボンド磁石の製造方法でもよい。成形工程は、配向磁場を印加してなされてもよい。
《その他》
(1)本明細書でいう「混練」は、スクリューの少なくとも一部に「練り部」を介装したニーダ(混練機、押出機等を含む)を用いて、原料(磁石粉末と樹脂粉末)を処理することを意味する。本発明のコンパウンドの製造方法では、そのような混練が一切なされない。すなわち、スクリューの全部を「送り部」で構成したニーダを用いて原料(磁石粉末と樹脂粉末)が処理される。このように、スクリューに「練り部」を備えないニーダで原料を処理することを、本明細書では「混合」という。換言すると、スクリューに「練り部」を備えたニーダで原料を処理することを「混練」という。なお、ニーダのスクリューは、一軸でも多軸でもよい。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x~y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。また、特に断らない限り、本明細書でいう「x~yμm」はxμm~yμmを意味する。他の単位系についても同様である。
ニーダのスクリューを構成する送り部と練り部を例示する外観写真である。 送り部だけで構成したスクリューの模式図である。 送り部と練り部で構成したスクリューの模式図である。 混合により得られたコンパウンド(試料11)に係るSEM像である。 混練により得られたコンパウンド(試料C11)に係るSEM像である。
本明細書中に記載した事項から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を、上述した本発明の構成に付加し得る。製造方法に関する構成要素も物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《調製工程》
調製工程は、磁石粉末と樹脂粉末(両者を併せて単に「原料」という。)を混練せずに加熱混合する。これにより、磁石粒子にバインダ樹脂が付着した顆粒状またはペレット状のコンパウンド(ボンド磁石用組成物)が得られる。なお、コンパウンド中の磁石粒子は、磁石粉末(原料)中の磁石粒子と粒度(平均粒径等)が同じでも、小さくてもよい。但し、本発明に係るコンパウンド中の磁石粒子は、原料中の磁石粒子とほぼ同様な粒度となり得る。
原料の加熱温度は、樹脂粉末の軟化温度以上さらには融点以上であるとよい。バインダ樹脂に熱硬化性樹脂が含まれる場合、その硬化温度未満で加熱されるとよい。
原料を混練せずに混合できる限り、ニーダの種類やスクリューの形態は問わない。一般的な混練機や押出機の他、ミキサー等を用いてもよい。
スクリューの回転数は、例えば、10~100rpmさらには20~50rpmである。混練時間は、例えば、5~30分間さらには3~15分間とするとよい。従来の混練よりも低速で短時間な混合により、磁石粒子の割れがより抑制される。
《磁石粉末》
磁石粉末は、水素処理された希土類磁石粉末であって、平均粒径が40~200μmである粗粉末を少なくとも含む。このような粗い磁石粒子(単に「粗粒子」ともいう。)は、高磁気特性である一方で割れ易い。上述した調製工程によれば、そのような粗粒子の割れを抑止できる。
粗粉末の平均粒径は、例えば、40~200μmさらには80~160μmである。本明細書でいう平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー製 HELOS)で測定して定まる。
磁石粉末は、粗粉末のみならず、微粉末を含むとよい。微粉末の平均粒径は、例えば、1~10μmさらには2~6μmである。このような細かい磁石粒子(単に「微粒子」ともいう。)は、磁石粉末の充填量(率)の増加に依る磁気特性の向上のみならず、粗粒子の酸化を抑制し得る。この理由は、次のように考えられる。
微粒子は、ボンド磁石中において、粗粒子の周囲に分散して存在する。このため、ボンド磁石へ侵入した水分や酸素等は、微粒子とバインダ樹脂の僅かな隙間を迂回して、漸く粗粒子に到達するようになる。その結果、粗粒子の酸化は、微粒子の存在により抑制または遅延され、ひいてはボンド磁石の耐食性が向上し得る(迷路効果)。
粗粉末と微粉末には、種々の磁石粉末を用いることができる。本発明の製造方法によれば、粗粉末として水素処理された希土類磁石粉末が含まれるときでも、その磁石粒子の割れ等が抑制される。水素処理は、主に、吸水素による不均化反応(Hydrogenation-Disproportionation/単に「HD反応」ともいう。)と、脱水素による再結合反応(Desorption-Recombination/単に「DR反応」ともいう。)を伴う。HD反応とDR反応を併せて単に「HDDR反応」という。また、HDDR反応を生じる水素処理を、単に「HDDR(処理)」という。
なお、本明細書でいうHDDRには、特に断らない限り、改良型であるd―HDDR(dynamic-Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)も含まれる。d―HDDRについては、例えば、国際公開公報(WO2004/064085)等で詳述されている。
粗粉末の一例として、NdとFeとBを基成分とするNdFeB系異方性磁石粉末がある。微粉末の一例として、SmとFeとNを基成分とするSmFeN系異方性磁石粉末またはSmとCoを基成分とするSmCo系異方性磁石粉末がある。
微粉末(一部)として、粒度調整がされたNdFeB系異方性磁石粉末を用いてもよい。また磁石粉末の一部として、希土類異方性磁石粉末以外の磁石粉末(希土類等方性磁石粉末、フェライト磁石粉末等)が含まれてもよい。なお、本明細書でいう基成分は、必須成分または主成分と換言できる。基成分となる元素の合計量は、通常、対象物(磁石粒子)全体に対して80原子%以上さらには90原子%以上である。希土類磁石粉末は、その保磁力や耐熱性等を高める元素(Dy、Tb等の重希土類元素、Cu、Al、Co、Nb等)を含んでもよい。
粗粉末と微粉末の合計(または磁石粉末全体)に対する粗粉末の質量割合は、例えば、75~95%さらには80~90%である。換言すると、その合計に対する微粉末の質量割合は、例えば、5~25%さらには10~20%である。
磁石粉末全体の質量割合は、原料全体(磁石粉末と樹脂粉末の合計)に対して、例えば、80~95%さらには82~90%である。換言すると、原料全体に対する樹脂粉末の質量割合は、例えば、5~20%さらには10~18%である。
粗粉末と微粉末の配合割合や原料全体に対する樹脂粉末(または磁石粉末)の配合割合を所定範囲内にすると、磁石粒子の割れを抑制しつつ、高密度なボンド磁石が得られる。つまり、高磁気特性を安定して発現するボンド磁石が得られ得る。
各磁石粉末は、防錆処理されているとよい。防錆処理には、例えば、リン酸化合物層を形成するリン酸処理、有機金属化合物層を形成する金属アルコキシオリゴマー処理、カップリング剤層を形成するカップリング処理、酸化被膜を形成する徐酸化処理等がある。なお、防錆処理は、単種でなされてもよいし、複数種を組み合わせてなされてもよい
《バインダ樹脂》
バインダ樹脂は、熱可塑性樹脂でも、熱硬化性樹脂でも、それら両方の樹脂を含んでもよい。通常、射出ボンド磁石には熱可塑性樹脂が用いられ、圧縮ボンド磁石には熱硬化性樹脂が用いられる。
熱可塑性樹脂には、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ナイロン樹脂(PA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、エチレンエチルアクリレート樹脂(EEA)等がある。
熱硬化性樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂 、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等がある。熱硬化性樹脂をバインダ樹脂とするボンド磁石は、適宜、成形後に熱硬化処理(キュア処理)がなされるとよい。
各磁石粒子は、使用する樹脂に適した界面活性剤で被覆処理されているとよい。これにより、軟化または溶融した樹脂中における磁石粒子の姿勢変動性、磁石粒子と樹脂との結合性等が向上し得る。この傾向は、配向磁場中で成形する際に顕著である。なお、界面活性剤による被覆処理は、上述した防錆処理を兼ねてもよいし、防錆処理とは別になされてもよい。
《ボンド磁石》
ボンド磁石は、例えば、相対密度が90%以上、95%以上さらには98%以上であるとよい。相対密度(ρ/ρ)は、理論密度(ρ)に対する実密度(ρ)の比(百分率)である。理論密度(ρ)は、ボンド磁石を構成する磁石粉末とバインダ樹脂の各真密度とそれらの配合量から求まる。実密度(ρ)は、成形(さらにはキュア処理)したボンド磁石を測定して得られた質量と体積から求まる。体積は、測定による他、アルキメデス法や形状寸法から求められる。
ボンド磁石は、キュア処理前またはキュア処理後に、着磁(着磁磁場:2~6T)がなされてもよい。ボンド磁石は、例えば、0.58T以上、0.6T以上さらには0.65T以上という高い残留磁束密度(Br)を発揮し得る。
ボンド磁石は、射出成形、圧縮成形またはトランスファー成形により得られる。射出ボンド磁石は、磁石粒子とバインダ樹脂からなるコンパウンドを加熱した溶融混合物を、キャビティへ射出後、冷却固化させて得られる。
圧縮ボンド磁石は、磁石粒子とバインダ樹脂からなるコンパウンドまたはコンパウンドの予成形体をキャビティへ充填(投入、装填等)して圧縮固化させて得られる。キャビティ(金型、筐体等)は、原料(コンパウンドまたは予成形体)の充填前に加熱されているとよい。
なお、いずれの成形方法でも、配向磁場中でなされると、高磁気特性なボンド磁石が得られる。特に、磁石粉末に異方性磁石粉末が含まれる場合、磁場中成形されるとよい。配向磁場は、通常、原料の射出方向または圧縮方向に交差する配向方向へ印可される。その大きさは、例えば、0.5~3Tさらには1~2Tである。配向磁場源は、電磁石でも、希土類永久磁石でもよい。
ボンド磁石は種々の磁気部材に用いられる。射出成形や圧縮成形により、様々な形態の筐体やそのキャビティ内にボンド磁石が一体成形された磁気部材が効率的に得られる。このような磁気部材の代表例として、電動機の界磁子がある。界磁子は、回転子(ロータ)でも固定子(ステータ)でもよい。電動機には、モータのみならず、ジェネレータが含まれる。電動機は、直流電動機でも交流電動機でもよい。界磁子がロータの場合、例えば、ロータコアに形成されているスロット(キャビティ)にボンド磁石が一体成形される。
本発明に係るコンパウンドを用いて得られるボンド磁石は、耐食性に優れるため、腐食環境下で使用される電動機(例えばウォータポンプ用モータ)の界磁源となり得る。
混合または混練して、コンパウンドを調製した。各コンパウンドを用いてボンド磁石を成形した。各コンパウンドを観察すると共に、各ボンド磁石の耐食試験前後における特性変化を評価した。このような具体例に基づいて、本発明を以下に詳しく説明する。
《コンパウンドの調製》
(1)原料
磁石粉末として、水素処理(d-HDDR)して製造された粗粉末である市販のNdFeB系異方性磁石粉末(愛知製鋼株式会社製マグファイン/Br:1.28T、iHc:1370kA/m、平均粒径:125μm)と、微粉末である市販のSmFeN系異方性磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製C粉/Br:1.10T、iHc:1170kA/m、平均粒径:3μm)を用意した。
なお、入手した原料段階において、粗粉末は被覆処理がされていない磁石粒子からなり、微粉末は被覆処理がされた磁石粒子からなる。
樹脂粉末(バインダ樹脂源)として、市販の熱可塑性樹脂であるPPS(DIC株式会社製H-1G)の粉末を用意した。この樹脂の融点は約280℃であった。
(2)粗粉末の被覆処理
一部の粗粉末には被覆処理を施した。被覆処理は、下記のような3工程で行った。いずれの被覆工程も、処理粉末と処理液をヘンシェルミキサーで撹拌混合(大気中、80℃×1時間)した後、ドライオーブンで熱処理(大気中、120℃×2.5時間)して行った。
先ず、入手した原料である粗粉末(1kg)に、第1段階の被覆処理を行った(第1被覆工程)。処理液には、オルトリン酸:5gとIPA(イソプロピルアルコール):230gからなる混合溶液を用いた。こうして磁石粒子(粗粒子)の表面に、リン酸化合物からなる第1層を形成した。
次に、第1被覆工程後の処理粉末に、第2段階の被覆処理を行った(第2被覆工程)。処理液として、下記に示す2種類の混合溶液(処理液Aと処理液B)を用意した。
処理液A:金属アルコキシオリゴマー:7g、
オルトリン酸:3g、純水:2.6gおよびIPA:230g
処理液B:金属アルコキシオリゴマー:7g、
Ti触媒:0.3gおよびIPA:230g
処理液Aを用いた場合は、上述した第1層上に、有機金属化合物とリン酸化合物を含む第2層(複合層)が形成される。処理液Bを用いた場合は、上述した第1層上に、有機金属化合物からなる第2層が形成される。なお、金属アルコキシオリゴマーには信越化学工業株式会社製X-40-9250を用いた。
さらに、第2被覆工程後の処理粉末に、第3段階の被覆処理を行った(第3被覆工程)。処理液には、カップリング剤:5g、純水:3gおよびIPA:230gからなる混合溶液を用いた。こうして上述した第2層上に、カップリング剤からなる第3層を形成した。なお、カップリング剤には信越化学工業株式会社製KBE-903を用いた。
本明細書では、第2被覆工程で処理液Aを用いた場合を「被覆処理A」、第2被覆工程で処理液Bを用いた場合を「被覆処理B」という。
(3)コンパウンドの調製
磁石粉末と樹脂粉末を表1に示した割合に秤量して、室温で予め混合した後、ニーダ(東芝機械株式会社製二軸混練機:TEM―26SX)のホッパーへ投入した。表1に示した割合は、磁石粉末と樹脂粉末からなる原料粉末全体に対する質量割合である。上述した被覆処理を施した粉末の質量割合は、その処理後の粉末の質量に基づく。磁石粉末として、粗粉末(被覆処理粉末または被覆未処理粉末)と微粉末からなる複合粉末を用いた場合、それらの質量割合(体積割合でもほぼ同様)は、85:15とした。
ニーダを作動させて原料(磁石粉末と樹脂粉末)を混合または混練した。混合は、ニーダの各回転軸に、図1Aに示す送り部31だけからなるスクリュー1を装着して行った。混練は、ニーダの各回転軸に、図1Bに示す練り部32を送り部31の間に介在させたスクリュー2を装着して行った。本実施例では、混合して調製したコンパウンドを「混合コンパウンド」といい、混練して調製したコンパウンドを「混練コンパウンド」という。
混合コンパウンドの調製条件は次の通りとした。
筐体の加熱温度 :300℃
処理速度 :10kg/hr
スクリュー回転速度:30rpm
こうして樹脂粉末(PPS)を溶融させながら原料を混合する溶融混合を行った。ニーダから吐出された混合物を順次分断して、一粒あたり約φ4mm×5mmであるペレットからなる混合コンパウンドを得た。
混練コンパウンドの調製条件は次の通りとした。
筐体の加熱温度 :300℃
処理速度 :5kg/hr
スクリュー回転速度:300rpm
こうしてPPSを溶融させながら原料を混練する溶融混練を行った。ニーダから吐出された混練物を順次分断して、一粒あたり約φ4mm×5mmであるペレットからなる混練コンパウンドを得た。
(4)ボンド磁石の製造
各コンパウンドを射出成形機(株式会社日本製鋼所製J85AD-30H)のホッパーへ投入し、加熱された流動物を金型のキャビティへ射出した。こうして立方体(一辺:11mm)のボンド磁石を得た。射出成形は、金型のキャビティに配向磁場(1.7T)を印加しつつ、金型温度:140℃、ノズル温度:300℃として行った。なお、混練コンパウンドも混合コンパウンドも、成形に支障の無い流動性を示し、磁石粉末の均一分散性は確保されていた。
《コンパウンドの観察》
混合コンパウンドと混練コンパウンドの各ペレットに含まれる磁石粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。混合コンパウンド(試料11)に係るSEM像を図2Aに、混練コンパウンド(試料C11)に係るSEM像を図2Bにそれぞれ示した。なお、観察試料は、各コンパウンドをエポキシ樹脂に埋め込み、切断および研磨(イオンミリング)して作成した。
《ボンド磁石の特性》
(1)磁気特性
ボンド磁石の磁気特性(耐食試験前)を直流BHトレーサー(東英工業株式会社製TRF-5BH-25AUTO)を用いて常温で測定した。得られたB-H曲線から残留磁束密度(Br)および保磁力(iHc)を求めた。その結果を表1に併せて示した。
(2)密度
ボンド磁石の密度(耐食試験前)を、その測定した質量と体積から算出した。その結果を表1に併せて示した。体積測定は、電子比重計(アルファミラージュ製SD-200L)を用いて室温で行った。
《ボンド磁石の耐食試験》
各コンパウンドから得られたボンド磁石を、純水(50ml)に浸漬した状態で加熱・保持(80℃×1000hr)する耐食試験に供した。純水から取り出し、大気中で室温まで冷却した各ボンド磁石について、それぞれの体積と磁気特性(Br)を測定した。体積と磁気特性は上述した方法で測定した。
各ボンド磁石について算出した耐食試験前・後の体積変化(体積膨脹率)と、磁気特性変化(Br低下率)を表1に併せて示した。体積膨脹率(ΔV/V)は、耐食試験前の体積(V)に対する耐食試験前・後における体積変化量(ΔV)の割合である。Br低下率(ΔBr/Br)は、耐食試験前の残留磁束密度(Br)に対する耐食試験前・後における残留磁束密度の変化量(ΔBr)の割合である。
《評価》
(1)コンパウンド
図2Aから明らかなように、混合コンパウンドのNdFeB系異方性磁石粒子は、割れや丸め等が殆ど生じていなかった。その磁石粒子が粉砕されてできた細かな粒子(最大長10μm以下)も殆ど観られなかった。
一方、図2Bから明らかなように、混練コンパウンドのNdFeB系異方性磁石粒子は、小さく丸くなっており、細かな粉砕粒子が多く観られた。
(2)耐久性
表1に示したボンド磁石の特性から次のことがわかる。被覆処理されていない粗粉末を用いた試料11と試料C11の比較から、混練コンパウンドよりも混合コンパウンドを用いることにより、ボンド磁石の体積膨張率およびBr低下率が1/2~1/3程度にまで低減することがわかった。
被覆処理Aがされた粗粉末を用いた試料21と試料C21の比較からも、混練コンパウンドよりも混合コンパウンドを用いることにより、ボンド磁石の体積膨張率およびBr低下率が大幅に低減することがわかった。
試料11と試料12の比較、及び、試料21と試料22の比較から、粗粉末と微粉末が混在した複合粉末を用いると、被覆処理の有無に拘わらずボンド磁石の体積膨張率とBr低下率がさらに低減することがわかった。ちなみに、試料C11と試料C12の比較から、複合粉末を混練したコンパウンドからなるボンド磁石では、体積膨張率とBr低下率があまり変化しないこともわかった。
試料11と試料21の比較から、被覆処理された粗粉末を用いると、ボンド磁石の体積膨張率およびBr低下率が大幅に低減することがわかった。
試料21と試料31の比較から、第2層(第2被覆工程)が変化しても、ボンド磁石の体積膨張率とBr低下率は、ほぼ同様であった。
以上から、混練せずに混合のみで調製されたコンパウンドを用いると、高耐食性のボンド磁石が得られることが確認された。また、微粉末が混在している磁石粉末を用いると、ボンド磁石の耐食性がより向上し得ることもわかった。さらに、被覆処理された磁石粉末を用いると、ボンド磁石の耐食性がさらに向上し得ることも確認された。
Figure 0007453512000001

Claims (9)

  1. 磁石粒子と該磁石粒子を包むバインダ樹脂とからなり顆粒状またはペレット状であるコンパウンドの製造方法であって、
    該磁石粒子の原料である磁石粉末と該バインダ樹脂の原料である樹脂粉末との予混合物をさらに、該樹脂粉末が溶融または軟化する加熱温度で混合してコンパウンドとする調製工程を備え、
    該磁石粉末は、水素処理された希土類磁石粉末からなり平均粒径が40~200μmである粗粉末を含み、
    該磁石粉末と該樹脂粉末を混練せずに得られるコンパウンドの製造方法。
  2. 前記粗粉末は、NdとFeとBを基成分とするNdFeB系異方性磁石粉末を含む請求項1に記載のコンパウンドの製造方法。
  3. 前記磁石粉末は、平均粒径が1~10μmである微粉末をさらに含む請求項1または2に記載のコンパウンドの製造方法。
  4. 前記微粉末は、SmとFeとNを基成分とするSmFeN系異方性磁石粉末および/またはSmとCoを基成分とするSmCo系異方性磁石粉末を含む請求項3に記載のコンパウンドの製造方法。
  5. 前記粗粉末は、前記磁石粉末全体に対して75~95質量%含まれる請求項3または4に記載のコンパウンドの製造方法。
  6. 前記粗粉末は、防錆処理がされている請求項1~5のいずれかに記載のコンパウンドの製造方法。
  7. 前記磁石粉末と前記樹脂粉末の合計に対して、該樹脂粉末は5~20質量%含まれる請求項1~6のいずれかに記載のコンパウンドの製造方法。
  8. 請求項1~7により得られたコンパウンドを用いて、射出成形または圧縮成形する成形工程を備えるボンド磁石の製造方法。
  9. 前記成形工程は、配向磁場を印加してなされる請求項8に記載のボンド磁石の製造方法。
JP2020008805A 2020-01-23 2020-01-23 ボンド磁石とコンパウンドの製造方法 Active JP7453512B2 (ja)

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