JP7452527B2 - 蓄冷材組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、蓄冷材組成物に関する。
蓄冷材組成物は、保冷効果を得るために、食品保存または医療のような分野で用いられている。例えば、停電が起きた場合に冷蔵庫の内部の温度を低温に維持するため、蓄冷材組成物が冷蔵庫内に設置される。
特許文献1は、冷却後の使用時において、管理温度に到達する前に、この管理温度よりも低い目的外の温度範囲で維持される時間が短時間である蓄冷材組成物を開示している。この蓄冷材組成物は、水、第4級アンモニウム塩、及び水酸基含有有機化合物を含有し、第4級アンモニウム塩は、包接水和物を形成するものであり、水酸基含有有機化合物は、炭素数が1から12であり、且つ1分子中において、水酸基数が炭素数の0.3から1.0倍であり、第4級アンモニウム塩の濃度が飽和濃度未満で、且つ15質量%以上であり、水酸基含有有機化合物の含有量が2.5~16質量%である。
特許文献1は、段落番号0036において、保冷用組成物が含有する第4級アンモニウム塩および水酸基含有有機化合物のさらに好ましい組み合わせの例が、以下の物質(a)および(b)の組み合わせであることを開示している。
(a)臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム及びフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムのいずれか一方又は両方、および
(b) メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、グルコース、フルクトース、マンノース、アラビノース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、アスコルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つ。
特許文献2(特に段落番号0023)および特許文献3(特に段落番号0040)は、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの融点を低下させるためにアルコールが用いられることを開示している。
特許文献4は、テトラアルキルアンモニウム塩を含有する水溶液にカリウムミョウバンが添加された蓄熱材を開示している。特許文献5は、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム水和物、臭化トリ-n-ブチル-n-ペンチルアンモニウム水和物、およびフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムを含有する蓄熱材を開示している。
特開2017-179299号公報 特開2007-163045号公報 特開2010-018879号公報 特許6226488号公報 特許4839903号公報
Mohamed Rady et. al. "A Comparative Study of Phase Changing Characteristics of Granular Phase Change Materials Using DSC and T-History Methods", Tech Science Press FDMP, vol.6, no.2, pp.137-152, 2010
本発明の目的は、冷蔵庫または保冷庫に好適な蓄熱材組成物を提供することにある。
本発明の第1の局面による蓄冷材組成物は、
臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、
水、および
1-プロパノール
を含有し、
前記臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの前記水に対する重量比が、37.5/62.5以上40/60以下であり、
前記水に対する前記1-プロパノールのモル比が、0.043以上0.065以下であり、
蓄冷材組成物は、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有し、かつ
蓄冷材組成物は、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で熱流ピークを有する。
本発明の第2の局面による蓄冷材組成物は、
臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、
水、および
1-プロパノール
を含有し、
前記臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの前記水に対する重量比が、32.5/67.5以上42.5/57.5以下であり、
前記水に対する前記1-プロパノールのモル比が、0.02以上0.042以下であり、
蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有し、かつ
蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で熱流ピークを有する。
本発明の第3の局面による蓄冷材組成物は、
臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、
水、および
1-ブタノール
を含有し、
前記臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの前記水に対する重量比が30/70以上42.5/57.5以下であり、
前記水に対する前記1-ブタノールのモル比が、0.02以上0.035以下であり、
蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有し、かつ
蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で熱流ピークを有する。
本発明の目的は、冷蔵庫または保冷庫に好適な蓄熱材組成物を提供することにある。
図1は、実施例A1および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図2は、実施例A2および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図3は、実施例A3および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図4は、実施例A4および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図5は、実施例A5および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図6は、実施例A6および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図7は、実施例A7および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図8は、比較例A3および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図9は、比較例A7および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図10は、比較例A9および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図11は、比較例A10および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図12は、比較例A18および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図13は、比較例A21および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図14は、比較例A22および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図15は、比較例A26および比較例A1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図16は、実施例B1および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図17は、実施例B2および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図18は、実施例B3および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図19は、実施例B4および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図20は、実施例B5および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図21は、実施例B6および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図22は、実施例B7および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図23は、実施例B8および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図24は、実施例B9および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図25は、実施例B10および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図26は、実施例B11および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図27は、実施例B12および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図28は、実施例B13および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図29は、実施例B14および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図30は、実施例B15および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B2および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B7および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B11および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B15および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B20および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B23および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B25および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B27および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B30および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B31および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 比較例B34および比較例B1の示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。 図42は、冷却時における蓄冷材の特性を示すグラフである。 図43は、加温時における蓄冷材の特性を示すグラフである。
(用語の定義)
本明細書において用いられる用語「有効融解熱量」は、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内での融解熱量を意味する。
本明細書において用いられる用語「無効融解熱量」は、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲外での融解熱量を意味する。
融解熱量は、蓄冷材組成物の技術分野においてよく知られているように、示差走査熱量計(これは「DSC」とも呼ばれ得る)を用いて測定され得る。後述される実施例においても実証されているように、示差走査熱量計を用いて、蓄冷材組成物の示差走査熱量が測定される。示差走査熱量の結果は、グラフに示される。図1~図15および図16~図41を参照せよ。当該グラフにおいて、横軸および縦軸は、それぞれ、温度および規格化熱流を表す。摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内での融解熱量は、当該グラフにおいて摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲での示差走査熱量の積分値に等しい。同様に、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内での融解熱量は、当該グラフにおいて摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲での示差走査熱量の積分値に等しい。
本明細書において用いられる用語「冷蔵庫」とは、内部が冷却される電気冷蔵庫および持ち運び可能なクーラーボックスを意味する。本明細書において用いられる用語「保冷庫」とは、内部が冷却される建造物を意味する。
以下、本発明の実施形態が説明される。
図42は、冷却時における蓄冷材組成物の特性を示すグラフである。図42において、横軸および縦軸は、それぞれ、時間および温度を指し示す。
蓄冷材組成物は、冷却される。図42に含まれる区間Aを参照せよ。一般的な液体の場合とは異なり、蓄冷材組成物の技術分野においてよく知られているように、蓄冷材組成物の冷却により蓄冷材組成物の温度がその融点に到達しても、蓄冷材組成物は固化せず、過冷却状態となる。図42に含まれる区間Bを参照せよ。過冷却状態において、蓄冷材組成物は液体である。
次いで、蓄冷材組成物は、自発的に結晶化し始める。結晶化に伴い、蓄冷材組成物は潜熱にほぼ等しい結晶化熱を放出する。その結果、蓄冷材組成物の温度は上昇し始める。図42に含まれる区間Cを参照せよ。本明細書において、蓄冷材組成物が自発的に結晶化し始める温度は、「結晶化温度」と言う。
ΔTは、蓄冷材組成物の融点および結晶化温度の差を表す。ΔTは、「過冷却度」とも呼ばれ得る。過冷却状態における蓄冷材組成物の結晶化により、蓄冷材組成物はクラスハイドレート結晶となる(例えば、特許文献1を参照せよ)。ここで、クラスレートハイドレート結晶とは、水分子が水素結合によってかご状の結晶を作り、その中に水以外の物質が包み込まれてできる結晶のことを言う。特記されない限り、本明細書においては、用語「クラスレートハイドレート結晶」は、クラスレートハイドレート結晶だけでなく、セミクラスハイドレート結晶も含む。セミクラスレートハイドレート結晶とは、ゲスト分子が水分子の水素結合ネットワークに参加してできる結晶のことをいう。水分子とゲスト分子が過不足なくハイドレート結晶を形成する濃度を調和濃度という。一般的にハイドレート結晶は調和濃度付近で利用される場合が多い。
結晶化の完了と共に蓄冷材組成物の結晶化熱の放出が完了した後は、蓄冷材組成物の温度は、周囲温度と等しくなる様に徐々に下がる。図42に含まれる区間Dを参照せよ。
結晶化温度は、蓄冷材組成物の融点より低い。蓄冷材組成物の融点は、蓄冷材組成物の技術分野においてよく知られているように、示差走査熱量計(これは「DSC」とも呼ばれ得る)を用いて測定され得る。
図43は、加温時における蓄冷材組成物の特性を示すグラフである。図43において、横軸および縦軸は、それぞれ、時間および温度を指し示す。区間Eの間、蓄冷材組成物の温度は、結晶化温度以下の温度に維持されている。例えば、冷蔵庫のドアが閉められている間、冷蔵庫内に配置された蓄冷材組成物の温度が結晶化温度以下に維持されるように、冷蔵庫の内部の温度は結晶化温度以下に設定されている。
次に、蓄冷材組成物は、徐々に加温される。図43に含まれる区間Fを参照せよ。例えば、区間Eの終わり(すなわち、区間Fの始まり)で冷蔵庫のドアが開けられると(またはドアが開けられて食材が収められると)、冷蔵庫の内部の温度は、徐々に高くなる。
蓄冷材組成物の温度が、当該蓄冷材組成物の融点に達すると、蓄冷材組成物の温度は、蓄冷材組成物の融点付近に維持される。図43に含まれる区間Gを参照せよ。万一、蓄冷材組成物がない場合には、冷蔵庫の内部の温度は、図43に含まれる区間Zに示されるように連続的に上昇する。一方、蓄冷材組成物がある場合には、区間Gの一定期間の間、冷蔵庫の内部の温度は、蓄冷材組成物の融点付近に維持される。このようにして、蓄冷材組成物は蓄冷効果を発揮する。区間Gの終わりで、蓄冷材組成物の結晶は融解して消失する。その結果、蓄冷材組成物は液化する。
その後、液化した蓄冷材組成物の温度は、周囲温度と等しくなるように上昇する。図43に含まれる区間Hを参照せよ。
蓄冷材組成物は冷却され、再利用され得る。例えば、冷蔵庫のドアが閉められた後には、図42に含まれる区間Aに示されるように、再度、蓄冷材組成物は冷却され、再利用される。
(第1実施形態)
第1実施形態においては、冷蔵庫のために好適に用いられる蓄冷材組成物のためには、以下の2つの条件(AI)および(AII)が充足されなければならない。
条件(AI) 蓄冷材組成物が、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の大きな融解熱量を有すること。
条件(AII) 蓄冷材組成物が、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で熱流ピークを有すること。
条件(AI)および条件(AII)の理由は、冷蔵庫の内部の温度は、おおよそ摂氏0度以上摂氏12度以下(一例として、摂氏2度以上摂氏8度以下)の温度に維持されるべきであるからである。言い換えれば、冷却器の内部の温度が摂氏0度未満に維持されるのであれば、そのような冷却器は、「冷蔵庫」ではなく、「冷凍庫」である。一方、食品保存の観点から、冷却器の内部の温度が摂氏12度を超える温度で維持されるのであれば、そのような冷却器に冷蔵庫としての実使用上の意味はほとんどないであろう。
冷蔵庫だけでなく、第1実施形態による蓄冷材は、保冷庫にも用いられる。
第1実施形態による蓄冷材組成物は、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、水、および1-プロパノールを含有する。
万一、1-ブタノールが蓄冷材組成物に含有されない場合には、比較例A1において実証されるように、有効融解熱量が0に等しい。したがって、1-プロパノールを含有しない蓄冷材組成物は、冷蔵庫または保冷庫に適していない。
万一、1-プロパノール以外のアルコールが用いられる場合には、比較例A2~比較例A13において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。この場合、第1実施形態による蓄冷材組成物よりも、区間G(図43参照)が短くなるため、蓄冷材組成物の保冷効率は第1実施形態による蓄冷材組成物よりも低い。
第1実施形態による蓄冷材組成物では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比は、37.5/62.5(すなわち、およそ0.48)以上40/60(すなわち、およそ0.74)以下である。
万一、重量比が37.5/62.5(すなわち、およそ0.48)未満である場合には、比較例A22~比較例A24において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合には、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
万一、重量比が40/60(すなわち、およそ0.74)を超える場合には、比較例A25~比較例A26において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合にも、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
第1実施形態による蓄冷材組成物では、水に対する1-プロパノールのモル比が、0.043以上0.065以下である。
万一、モル比が0.043未満である場合には、比較例A14~比較例A20において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合には、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
万一、モル比が0.065を超える場合には、比較例A21において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合にも、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
第1実施形態による蓄冷材組成物は、実施例A1~実施例A8において実証されているように、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有する。第1実施形態による蓄冷材組成物が用いられた場合には、区間G(図43参照)が長い。したがって、第1実施形態による蓄冷材組成物は高い保冷効率を有する。
蓄冷材組成物は、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で熱流ピークを有する。万一、比較例A1による蓄冷材組成物のような、蓄冷材組成物が摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内に熱流ピーク有さない蓄冷材組成物を用いる場合、無効融解熱量が有効融解熱量よりも多い。したがって、この場合、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内での保冷効率が低いので、蓄冷材組成物は冷蔵庫または保冷庫に適していない。言い換えると、熱流ピークが摂氏8度よりも高くなるにつれて、あるいは、摂氏2度よりも低くなるにつれて、有効融解熱量は小さくなる。したがって、蓄冷材組成物が摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内に熱流ピーク有さない場合、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内での保冷効率は低い。
(第2実施形態)
第2実施形態において、冷蔵庫のために好適に用いられる蓄冷材組成物のためには、以下の2つの条件(BI)および(BII)が充足されなければならない。
条件(BI) 蓄冷材組成物が、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の大きな融解熱量を有すること。
条件(BII) 蓄冷材組成物が、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で熱流ピークを有すること。
条件(BI)および条件(BII)の理由は、冷蔵庫の内部の温度は、おおよそ摂氏0度以上摂氏12度以下(一例として、摂氏5度以上摂氏12度以下)の温度に維持されるべきであるからである。言い換えれば、冷却器の内部の温度が摂氏0度未満に維持されるのであれば、そのような冷却器は、「冷蔵庫」ではなく、「冷凍庫」である。一方、食品保存の観点から、冷却器の内部の温度が摂氏12度を超える温度で維持されるのであれば、そのような冷却器に冷蔵庫としての実使用上の意味はほとんどないであろう。
冷蔵庫だけでなく、第2実施形態による蓄冷材は、保冷庫にも用いられる。
第2実施形態による蓄冷材組成物は、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、水、および1-プロパノールを含有する。
万一、1-ブタノールが蓄冷材組成物に含有されない場合には、比較例B1において実証されるように、有効融解熱量が0に等しい。したがって、1-プロパノールを含有しない蓄冷材組成物は、冷蔵庫または保冷庫に適していない。
万一、1-プロパノール以外のアルコールが用いられる場合には、比較例B2~比較例B13において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。この場合、第2実施形態による蓄冷材組成物よりも、区間G(図43参照)が短くなるため、蓄冷材組成物の保冷効率は第2実施形態による蓄冷材組成物よりも低い。
第2実施形態による蓄冷材組成物では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比は、32.5/67.5(すなわち、およそ0.48)以上42.5/57.5(すなわち、およそ0.74)以下である。
万一、重量比が32.5/67.5(すなわち、およそ0.48)未満である場合には、比較例B23において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合には、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
万一、重量比が42.5/57.5(すなわち、およそ0.74)を超える場合には、比較例B24において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合にも、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
第2実施形態による蓄冷材組成物では、水に対する1-プロパノールのモル比が、0.02以上0.042以下である。
万一、モル比が0.02未満である場合には、比較例B14および比較例B15において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合には、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
万一、モル比が0.042を超える場合には、比較例B16~比較例B22において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合にも、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
第2実施形態による蓄冷材組成物は、実施例B1~実施例B8において実証されているように、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有する。第2実施形態による蓄冷材組成物が用いられた場合には、区間G(図43参照)が長い。したがって、第2実施形態による蓄冷材組成物は高い保冷効率を有する。
蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で熱流ピークを有する。万一、比較例B1による蓄冷材組成物のような、蓄冷材組成物が摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内に熱流ピーク有さない蓄冷材組成物を用いる場合、無効融解熱量が有効融解熱量よりも多い。したがって、この場合、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内での保冷効率が低いので、蓄冷材組成物は冷蔵庫または保冷庫に適していない。言い換えると、熱流ピークが摂氏12度よりも高くなるにつれて、あるいは、摂氏5度よりも低くなるにつれて、有効融解熱量は小さくなる。したがって、蓄冷材組成物が摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内に熱流ピーク有さない場合、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内での保冷効率は低い。
(第3実施形態)
第2実施形態と同様に、第3実施形態において、冷蔵庫のために好適に用いられる蓄冷材組成物のためには、以下の2つの条件(BI)および(BII)が充足されなければならない。
条件(BI) 蓄冷材組成物が、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の大きな融解熱量を有すること。
条件(BII) 蓄冷材組成物が、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で熱流ピークを有すること。
条件(BI)および条件(BII)の理由は、冷蔵庫の内部の温度は、おおよそ摂氏0度以上摂氏12度以下(一例として、摂氏5度以上摂氏12度以下)の温度に維持されるべきであるからである。言い換えれば、冷却器の内部の温度が摂氏0度未満に維持されるのであれば、そのような冷却器は、「冷蔵庫」ではなく、「冷凍庫」である。一方、食品保存の観点から、冷却器の内部の温度が摂氏12度を超える温度で維持されるのであれば、そのような冷却器に冷蔵庫としての実使用上の意味はほとんどないであろう。
冷蔵庫だけでなく、第3実施形態による蓄冷材は、保冷庫にも用いられる。
第3実施形態による蓄冷材組成物は、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、水、および1-ブタノールを含有する。
1-ブタノールが蓄冷材組成物に含有されない場合および1-ブタノール以外のアルコールが用いられる場合の問題点は、第2実施形態において説明されている。
第3実施形態による蓄冷材組成物では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比は、30/70(すなわち、およそ0.43)以上42.5/57.5(すなわち、およそ0.74)以下である。
万一、重量比が30/70(すなわち、およそ0.48)未満である場合には、比較例B31および比較例B32において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合には、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
万一、重量比が42.5/57.5(すなわち、およそ0.74)を超える場合には、比較例B33および比較例B34において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合にも、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
第3実施形態による蓄冷材組成物では、水に対する1-ブタノールのモル比が、0.02以上0.035以下である。
万一、モル比が0.02未満である場合には、比較例B26および比較例B27において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合には、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
万一、モル比が0.035を超える場合には、比較例B28および比較例B29において実証されているように、有効融解熱量が135ジュール/グラム未満である。したがって、この場合にも、蓄冷材組成物の保冷効率は低い。
第2実施形態による蓄冷材組成物と同様、第3実施形態による蓄冷材組成物は、実施例B9~実施例B15において実証されているように、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有する。第3実施形態による蓄冷材組成物が用いられた場合には、区間G(図43参照)が長い。したがって、第3実施形態による蓄冷材組成物は高い保冷効率を有する。
第2実施形態による蓄冷材組成物と同様、第3実施形態による蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で熱流ピークを有する。
(実施例)
以下の実施例を参照しながら、本発明がより詳細に説明される。
(実施例A1)
(蓄熱材組成物の製造方法)
まず、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム(40グラム)および水(60グラム)が、110ミリリットルの容量を有するスクリュー管の内部で混合され、混合液を得た。スクリュー管は、ねじのついた蓋を有するガラス管であった。
次に、混合液(9.06グラム)が110ミリリットルの容量を有するスクリュー管から取り出され、次いで、当該混合液(9.06グラム)は、60ミリリットルの容量を有するスクリュー管に供給された、さらに、1-プロパノール(0.94グラム、富士フィルム和光純薬株式会社製)が、60ミリリットルの容量を有するスクリュー管に添加された。1-プロパノールは添加剤として用いられた。このようにして、実施例A1による蓄熱材組成物が得られた。
(測定実験)
実施例A1による蓄熱材組成物(2ミリグラム)を、容器(パーキンエルマー社より入手、商品名:02192005)に供給した。当該容器は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社より入手、商品名:DSC-8500)に組み込まれた。容器の内部に含有される蓄冷材組成物は、常温から摂氏マイナス30度まで摂氏1度/分の速度で冷却され、次に、蓄冷材組成物は、摂氏マイナス30度で5分間静置され、蓄冷材を結晶化した。
結晶化された蓄冷材組成物は、摂氏マイナス30度から摂氏30度まで摂氏1度/分の速度で加温された。このようにして、結晶化された蓄冷材は融解された。
結晶化された蓄冷材組成物が上記のように摂氏マイナス30度から摂氏30度まで摂氏1度/分の速度で加温されている間に、示差走査熱量計は、熱流(単位:ワット)を出力した。
規格化熱流を以下の数式に従って算出した。
(規格化熱流、単位:W/g)=(熱流)/(蓄冷材の重量、すなわち、2ミリグラム)
図1は、このようにして行われた示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。
図1における摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲での示差走査熱量の積分値を、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内での有効融解熱量として算出した。非特許文献1の図2も参照せよ。
その結果、実施例A1による蓄冷材組成物は、135.2ジュール/グラムの有効融解熱量を有していた。
(実施例A2)
実施例A2では、水に対する添加剤のモル比が0.045とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。図2は、実施例A2と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(実施例A3)
実施例A3では、水に対する添加剤のモル比が0.047とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。図3は、実施例A3と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(実施例A4)
実施例A4では、水に対する添加剤のモル比が0.052とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。図4は、実施例A4と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(実施例A5)
実施例A5では、水に対する添加剤のモル比が0.06とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。図5は、実施例A5と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(実施例A6)
実施例A6では、水に対する添加剤のモル比が0.065とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。図6は、実施例A6と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(実施例A7)
実施例A7では、臭化テトラnブチルアンモニウムと水との重量比が37.5/62.5とされたことを除き、実施例A2と同一の実験が行われた。図7は、実施例A7と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(比較例A1)
比較例A1では、添加剤が添加されなかったことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。
(比較例A2)
比較例A2では、添加剤として、メタノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A3)
比較例A3では、添加剤として、エタノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。図8は、比較例A3と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(比較例A4)
比較例A4では、添加剤として、2-プロパノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A5)
比較例A5では、添加剤として、1-ブタノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A6)
比較例A6では、添加剤として、2-ブタノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A7)
比較例A7では、添加剤として、tert-ブチルアルコール(東京化成工業製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。図9は、比較例A7と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(比較例A8)
比較例A8では、添加剤として、1-ペンタノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A9)
比較例A9では、添加剤として、1-ヘキサノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。図10は、比較例A9と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(比較例A10)
比較例A10では、添加剤として、エチレングリコール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。図11は、比較例A10と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(比較例A11)
比較例A11では、添加剤として、グリセリン(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A12)
比較例A12では、添加剤として、meso-エリスリトール(東京化成工業製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A13)
比較例A13では、添加剤として、キシリトール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A14)
比較例A14では、水に対する添加剤のモル比が0.011とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。
(比較例A15)
比較例A15では、水に対する添加剤のモル比が0.015とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。
(比較例A16)
比較例A16では、水に対する添加剤のモル比が0.02とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。
(比較例A17)
比較例A17では、水に対する添加剤のモル比が0.022とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。
(比較例A18)
比較例A18では、水に対する添加剤のモル比が0.035とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。図12は、比較例A18と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(比較例A19)
比較例A19では、水に対する添加剤のモル比が0.04とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。
(比較例A20)
比較例A20では、水に対する添加剤のモル比が0.042とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。
(比較例A21)
比較例A21では、水に対する添加剤のモル比を0.067とされたことを除き、実施例A1と同一の実験が行われた。図13は、比較例A21と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(比較例A22)
比較例A22では、臭化テトラnブチルアンモニウムと水との重量比が30/70とされたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。図14は、比較例A22と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
(比較例A23)
比較例A23では、臭化テトラnブチルアンモニウムと水との重量比が32.5/67.5とされたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A24)
比較例A24では、臭化テトラnブチルアンモニウムと水との重量比が35/65とされたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A25)
比較例A25では、臭化テトラnブチルアンモニウムと水との重量比が42.5/57.5とされたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。
(比較例A26)
比較例A26では、臭化テトラnブチルアンモニウムと水との重量比が45/55とされたことを除き、実施例A4と同一の実験が行われた。図15は、比較例A26と比較例A1とのDSC測定結果の比較を示すグラフである。
以下の表1~表2は、実施例A1~実施例A7および比較例A1~比較例A26の結果を示す。
Figure 0007452527000001
Figure 0007452527000002
実施例A1~実施例A7を比較例A1と比較すると明らかなように、万一、1-プロパノールが蓄冷材組成物に含有されない場合には、比較例A1において実証されるように、有効融解熱量が0に等しい。
実施例A1~実施例A7を比較例A2~比較例A13と比較すると明らかなように、万一、1-プロパノール以外のアルコールが用いられる場合には、有効融解熱量は123.0ジュール/グラム以下という低い値になる。
実施例A1~実施例A7を比較例A22~比較例A24と比較すると明らかなように、万一、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が35/65(すなわち、およそ0.54)以下である場合には、有効融解熱量は115.9ジュール/グラム以下という低い値になる。
実施例A1~実施例A7を比較例A25~比較例A26と比較すると明らかなように、万一、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が42.5/57.5(すなわち、およそ0.74)である場合には、有効融解熱量は128.2ジュール/グラム以下という低い値になる。
実施例A1~実施例A7を比較例A14~比較例A20と比較すると明らかなように、万一、水に対する添加剤のモル比が0.042以下である場合には、有効融解熱量は126.2ジュール/グラム以下という低い値になる。
実施例A1~実施例A7を比較例A21と比較すると明らかなように、万一、水に対する添加剤のモル比が0.067である場合には、有効融解熱量は111.7ジュール/グラムという低い値になる。
実施例A1~実施例A7において実証されているように、添加剤が1-プロパノールである場合、以下の2つの条件(AI)および(AII)が充足されると、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有する蓄冷材組成物を得ることができる。
条件(AI)臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が、37.5/62.5以上40/60以下であること。
条件(AII) 水に対する1-プロパノールのモル比が、0.043以上0.065以下であること。
図1~図15から明らかなように、実施例A1~実施例A7による各蓄冷材組成物は、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で熱流ピークを有する。一方、比較例A1による蓄冷材組成物は、およそ摂氏14.5度で熱流ピークを有する。
(実施例B1)
(蓄熱材組成物の製造方法)
まず、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム(40グラム)および水(60グラム)が、110ミリリットルの容量を有するスクリュー管の内部で混合され、混合液を得た。スクリュー管は、ねじのついた蓋を有するガラス管であった。
次に、混合液(9.58グラム)が110ミリリットルの容量を有するスクリュー管から取り出され、次いで、当該混合液(9.58グラム)は、60ミリリットルの容量を有するスクリュー管に供給された、さらに、1-プロパノール(0.42グラム、富士フィルム和光純薬株式会社製)が、60ミリリットルの容量を有するスクリュー管に添加された。1-プロパノールは添加剤として用いられた。このようにして、実施例B1による蓄熱材組成物が得られた。
(測定実験)
実施例B1による蓄熱材組成物(2ミリグラム)を、容器(パーキンエルマー社より入手、商品名:02192005)に供給した。当該容器は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社より入手、商品名:DSC-8500)に組み込まれた。容器の内部に含有される蓄冷材組成物は、常温から摂氏マイナス30度まで摂氏1度/分の速度で冷却され、次に、蓄冷材組成物は、摂氏マイナス30度で5分間静置され、蓄冷材を結晶化した。
結晶化された蓄冷材組成物は、摂氏マイナス30度から摂氏30度まで摂氏1度/分の速度で加温された。このようにして、結晶化された蓄冷材は融解された。
結晶化された蓄冷材組成物が上記のように摂氏マイナス30度から摂氏30度まで摂氏1度/分の速度で加温されている間に、示差走査熱量計は、熱流(単位:ワット)を出力した。
規格化熱流を以下の数式に従って算出した。
(規格化熱流、単位:W/g)=(熱流)/(蓄冷材の重量、すなわち、2ミリグラム)
図16は、このようにして行われた示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。
図16における摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲での示差走査熱量の積分値を、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内での有効融解熱量として算出した。非特許文献1の図2も参照せよ。
その結果、実施例B1による蓄冷材組成物は、145.0ジュール/グラムの有効融解熱量を有していた。
(実施例B2)
実施例B2では、水に対する添加剤のモル比が0.022とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。図17は、実施例B2および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B3)
実施例B3では、水に対する添加剤のモル比が0.035とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。図18は、実施例B3および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B4)
実施例B4では、水に対する添加剤のモル比が0.04とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。図19は、実施例B4および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B5)
実施例B5では、水に対する添加剤のモル比が0.042とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。図20は、実施例B5および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B6)
実施例B6では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が32.5/67.5とされたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。図21は、実施例B6および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B7)
実施例B7では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が35/65とされたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。図22は、実施例B7および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B8)
実施例B8では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が42.5/57.5とされたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。図23は、実施例B8および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B9)
実施例B9では、添加剤として、1-ブタノール(富士フィルム和光純薬製)が添加剤として用いられたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。図24は、実施例B9および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B10)
実施例B10では、水に対する添加剤のモル比が0.022とされたことを除き、実施例B9と同一の実験が行われた。図25は、実施例B10および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B11)
実施例B11では、水に対する添加剤のモル比が0.033とされたことを除き、実施例B9と同一の実験が行われた。図26は、実施例B11および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B12)
実施例B12では、水に対する添加剤のモル比が0.035とされたことを除き、実施例B9と同一の実験が行われた。図27は、実施例B12および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B13)
実施例B13では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が30/70とされたことを除き、実施例B10と同一の実験が行われた。図28は、実施例B13および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B14)
実施例B14では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が35/65とされたことを除き、実施例B10と同一の実験が行われた。図29は、実施例B14および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(実施例B15)
実施例B15では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が42.5/57.5とされたことを除き、実施例B10と同一の実験が行われた。図30は、実施例B15および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B1)
比較例B1では、添加剤が添加されなかったことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。
(比較例B2)
比較例B2では、添加剤として、メタノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。図31は、比較例B2および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B3)
比較例B3では、添加剤として、エタノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B4)
比較例B4では、添加剤として、2-プロパノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B5)
比較例B5では、添加剤として、2-ブタノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B6)
比較例B6では、添加剤として、tert-ブチルアルコール(東京化成工業製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B7)
比較例B7では、添加剤として、1-ペンタノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。図32は、比較例B7および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B8)
比較例B8では、添加剤として、1-ヘキサノール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B9)
比較例B9では、添加剤として、エチレングリコール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B10)
比較例B10では、添加剤として、1,4-ブタンジオール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B11)
比較例B11では、添加剤として、グリセリン(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。図33は、比較例B11および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B12)
比較例B12では、添加剤として、meso-エリスリトール(東京化成工業製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B13)
比較例B13では、添加剤として、キシリトール(富士フィルム和光純薬製)が用いられたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B14)
比較例B14では、水に対する添加剤のモル比が0.011とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。
(比較例B15)
比較例B15では、水に対する添加剤のモル比が0.015とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。図34は、比較例B15および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B16)
比較例B16では、水に対する添加剤のモル比が0.043とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。
(比較例B17)
比較例B17では、水に対する添加剤のモル比が0.045とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。
(比較例B18)
比較例B18では、水に対する添加剤のモル比が0.047とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。
(比較例B19)
比較例B19では、水に対する添加剤のモル比が0.052とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。
(比較例B20)
比較例B20では、水に対する添加剤のモル比が0.06とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。図35は、比較例B20および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B21)
比較例B21では、水に対する添加剤のモル比を0.065とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。
(比較例B22)
比較例B22では、水に対する添加剤のモル比を0.067とされたことを除き、実施例B1と同一の実験が行われた。
(比較例B23)
比較例B23では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が30/70とされたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。図36は、比較例B23および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B24)
比較例B24では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が45/55とされたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。
(比較例B25)
比較例B25では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が50/50とされたことを除き、実施例B2と同一の実験が行われた。図37は、比較例B25および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B26)
比較例B26では、水に対する添加剤のモル比が0.011とされたことを除き、実施例B9と同一の実験が行われた。
(比較例B27)
比較例B27では、水に対する添加剤のモル比が0.015とされたことを除き、実施例B9と同一の実験が行われた。図38は、比較例B27および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B28)
比較例B28では、水に対する添加剤のモル比が0.04とされたことを除き、実施例B9と同一の実験が行われた。
(比較例B29)
比較例B29では、水に対する添加剤のモル比が0.043とされたことを除き、実施例B9と同一の実験が行われた。
(比較例B30)
比較例B30では、水に対する添加剤のモル比が0.052とされたことを除き、実施例B9と同一の実験が行われた。図39は、比較例B30および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B31)
比較例B31では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が22.5/77.5とされたことを除き、実施例B10と同一の実験が行われた。図40は、比較例B31および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
(比較例B32)
比較例B32では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が25/75とされたことを除き、実施例B10と同一の実験が行われた。
(比較例B33)
比較例B33では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が45/55とされたことを除き、実施例B10と同一の実験が行われた。
(比較例B34)
比較例B34では、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムと水との重量比が50/50とされたことを除き、実施例B10と同一の実験が行われた。図41は、比較例B34および比較例B1のDSC測定結果を示すグラフである。
以下の表3~表4は、実施例B1~実施例B15および比較例B1~比較例B34の結果を示す。
Figure 0007452527000003
Figure 0007452527000004
実施例B1~実施例B15を比較例B1と比較すると明らかなように、万一、1-プロパノールおよび1-ブタノールからなる群から選択される少なくとも1つが蓄冷材組成物に含有されない場合には、比較例B1において実証されるように、有効融解熱量が0に等しい。
実施例B1~実施例B15を比較例B2~比較例B13と比較すると明らかなように、万一、1-プロパノールおよび1-ブタノールからなる群から選択される少なくとも1つ以外のアルコールが用いられる場合には、有効融解熱量は134.7ジュール/グラム以下という低い値になる。
添加剤が1-プロパノールである場合、実施例B1~実施例B8を比較例B23と比較すると明らかなように、万一、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が30/70(すなわち、およそ0.43)である場合には、有効融解熱量は130.1ジュール/グラムという低い値になる。
添加剤が1-プロパノールである場合、実施例B1~実施例B8を比較例B24と比較すると明らかなように、万一、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が45/55(すなわち、およそ0.82)である場合には、有効融解熱量は124.4ジュール/グラムという低い値になる。
添加剤が1-プロパノールである場合、実施例B1~実施例B8を比較例B14および比較例B15と比較すると明らかなように、万一、水に対する添加剤のモル比が0.015以下である場合には、有効融解熱量は126.9ジュール/グラム以下という低い値になる。
添加剤が1-プロパノールである場合、実施例B1~実施例B8を比較例B16~比較例B22と比較すると明らかなように、万一、水に対する添加剤のモル比が0.043以上である場合には、有効融解熱量は133.7ジュール/グラム以下という低い値になる。
実施例B1~実施例B8において実証されているように、添加剤が1-プロパノールである場合、以下の2つの条件(Bi)および(ii)が充足されると、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有する蓄冷材組成物を得ることができる。
条件(Bi)臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が、32.5/67.5以上42.5/57.5以下であること。
条件(Bii) 水に対する1-プロパノールのモル比が、0.02以上0.042以下であること。
添加剤が1-ブタノールである場合、実施例B9~実施例B15を比較例B31および比較例B32と比較すると明らかなように、万一、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が25/75(すなわち、およそ0.33)以下である場合には、有効融解熱量は116.0ジュール/グラム以下という低い値になる。
添加剤が1-ブタノールである場合、実施例B9~実施例B15を比較例B33および比較例B34と比較すると明らかなように、万一、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が45/55(すなわち、およそ0.82)以上である場合には、有効融解熱量は117.5ジュール/グラム以下という低い値になる。
添加剤が1-ブタノールである場合、実施例B9~実施例B15を比較例B26および比較例B27と比較すると明らかなように、万一、水に対する添加剤のモル比が0.015以下である場合には、有効融解熱量は109.3ジュール/グラム以下という低い値になる。
添加剤が1-ブタノールである場合、実施例B9~実施例B15を比較例B28~比較例B30比較すると明らかなように、万一、水に対する添加剤のモル比が0.040以上である場合には、有効融解熱量は132.8ジュール/グラム以下という低い値になる。
実施例B9~実施例B15において実証されているように、添加剤が1-ブタノールである場合、以下の2つの条件(Biii)および(iv)が充足されると、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有する蓄冷材組成物を得ることができる。
条件(Biii)臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの水に対する重量比が、30/70以上42.5/57.5以下であること。
条件(Biv) 水に対する1-ブタノールのモル比が、0.02以上0.035以下であること。
図16~図41から明らかなように、実施例B1~実施例B15による各蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で熱流ピークを有する。一方、比較例B1による蓄冷材組成物は、およそ摂氏14.5度で熱流ピークを有する。
本発明の第1の局面による蓄冷材組成物は、内部温度が摂氏2度以上摂氏8度以下の温度に維持される冷蔵庫または保冷庫に含まれ得る。
本発明の第2の局面による蓄冷材組成物は、内部温度が摂氏5度以上摂氏12度以下の温度に維持される冷蔵庫または保冷庫に含まれ得る。本発明の第3の局面による蓄冷材組成物もまた、内部温度が摂氏5度以上摂氏12度以下の温度に維持される冷蔵庫または保冷庫に含まれ得る。

Claims (9)

  1. 蓄冷材組成物であって、
    臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、
    水、および
    1-プロパノール
    を含有し、
    前記臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの前記水に対する重量比が、37.5/62.5以上40/60以下であり、
    前記水に対する前記1-プロパノールのモル比が、0.043以上0.065以下であり、
    蓄冷材組成物は、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有し、かつ
    蓄冷材組成物は、摂氏2度以上摂氏8度以下の範囲内で熱流ピークを有する、
    蓄冷材組成物。
  2. 請求項1に記載の蓄冷材組成物を具備する冷蔵庫。
  3. 請求項1に記載の蓄冷材組成物を具備する保冷庫。
  4. 蓄冷材組成物であって、
    臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、
    水、および
    1-プロパノール
    を含有し、
    前記臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの前記水に対する重量比が、32.5/67.5以上42.5/57.5以下であり、
    前記水に対する前記1-プロパノールのモル比が、0.02以上0.042以下であり、
    蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有し、かつ
    蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で熱流ピークを有する、
    蓄冷材組成物。
  5. 請求項4に記載の蓄冷材組成物を具備する冷蔵庫。
  6. 請求項4に記載の蓄冷材組成物を具備する保冷庫。
  7. 蓄冷材組成物であって、
    臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、
    水、および
    1-ブタノール
    を含有し、
    前記臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの前記水に対する重量比が30/70以上42.5/57.5以下であり、
    前記水に対する前記1-ブタノールのモル比が、0.02以上0.035以下であり、
    蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で135ジュール/グラム以上の融解熱量を有し、かつ
    蓄冷材組成物は、摂氏5度以上摂氏12度以下の範囲内で熱流ピークを有する、
    蓄冷材組成物。
  8. 請求項7に記載の蓄冷材組成物を具備する冷蔵庫。
  9. 請求項7に記載の蓄冷材組成物を具備する保冷庫。

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