JP2017179299A - 保冷具 - Google Patents
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Abstract
Description
保冷用組成物は、冷却により凍結した後、目的とする環境下で放置されたときに、融解によって温度が一定時間、特定の範囲内に維持されるが、この融解温度の範囲が保冷対象物の目的とする保冷温度となるように、保冷用組成物を選択する。
これに対して、特許文献1で開示されている蓄熱剤は、水が単独で凍結するような0℃以下の温度にまで冷却するという使用方法が想定されたものではなく、前記蓄熱剤をそのまま上記のような保冷用組成物に適用した場合、上記の問題点を解決できない。
本発明の保冷具は、水、第4級アンモニウム塩、及び水酸基含有有機化合物を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、前記第4級アンモニウム塩は、包接水和物を形成するものであり、前記水酸基含有有機化合物は、炭素数が1〜12であり、且つ1分子中において、水酸基数が炭素数の0.3〜1.0倍であり、前記保冷用組成物における前記第4級アンモニウム塩の濃度が飽和濃度未満で、且つ15質量%以上であり、前記保冷用組成物の前記水酸基含有有機化合物の含有量が2.5〜16質量%のものである。
また、前記保冷用組成物は、主溶媒として水を含有するため、主溶媒としてパラフィンオイルや油脂等を含有する従来の保冷用組成物よりも、熱伝導性及び安全性に優れる。
そして、本発明の保冷具は、前記保冷用組成物を備えていることで、使用前に、例えば−15℃以下等の低温まで冷却してから、目的とする環境下で放置して使用するときに、速やかに目的とする保冷温度に到達する。また、本発明の保冷具は、使用前に迅速に冷却でき、使用時の安全性が高い。
[水]
前記保冷用組成物の水の含有量は、特に限定されないが、53〜80質量%であることが好ましく、55〜78質量%であることがより好ましく、57〜76質量%であることが特に好ましい。
前記第4級アンモニウム塩は、包接水和物を形成するものである。すなわち、前記第4級アンモニウム塩は、ゲスト分子として、多分子の水分子により形成されたホスト分子に取り込まれる。
前記第4級アンモニウム塩は、前記保冷用組成物の冷却時には、包接水和物を形成して凍結(凝固)する。なお、本明細書においては、保冷用組成物中で前記第4級アンモニウム塩が包接水和物を形成している場合にも、保冷用組成物は第4級アンモニウム塩を含有している、と記載する。また、本明細書において「包接水和物」とは、特に断りのない限り、前記第4級アンモニウム塩により形成されるものを意味する。
これらの中でも、前記ハロゲン原子は、フッ素原子又は臭素原子であることが好ましい。すなわち、前記テトラアルキルアンモニウムハロゲナイドは、テトラアルキルアンモニウムフルオライド又はテトラアルキルアンモニウムブロマイドであることが好ましい。
そして、特に好ましい前記テトラアルキルアンモニウムハロゲナイドとしては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド(以下、「TBAB」と略記することがある)、テトラn−ブチルアンモニウムフルオライド(以下、「TBAF」と略記することがある)等が挙げられる。
保冷用組成物が含有する前記第4級アンモニウム塩を2種以上とすることで、保冷用組成物の保冷温度を調節できることがある。
前記保冷用組成物における前記第4級アンモニウム塩の濃度は、15.5質量%以上であることが好ましく、例えば、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上及び19質量%以上等のいずれかであってもよい。一方、前記保冷用組成物における前記第4級アンモニウム塩の濃度の上限値は、第4級アンモニウム塩の種類により異なるが、例えば、30質量%であることが好ましく、29量%であることがより好ましく、28量%であることが特に好ましい。
前記第4級アンモニウム塩の濃度が前記下限値以上であることで、保冷用組成物の保冷温度での保冷効果がより高くなる。また、前記第4級アンモニウム塩の濃度が前記上限値以下であることで、前記保冷用組成物の水酸基含有有機化合物の含有量の調節がより容易となる。
前記包接水和物の融点(凝固点、凍結温度)は、例えば、保冷用組成物における前記第4級アンモニウム塩の種類により調節できる。
前記包接水和物の潜熱の上限値は、特に限定されないが、例えば、170J/g等であってもよい。ただし、これら上限値は一例である。
前記包接水和物の潜熱は、例えば、保冷用組成物の前記第4級アンモニウム塩の濃度や、前記第4級アンモニウム塩の種類により調節できる。
前記水酸基含有有機化合物は、炭素(C)数が1〜12であり、且つ1分子中において、水酸基(−OH)数が炭素数の0.3〜1.0倍であれば、特に限定されない。
なお、本明細書において「水酸基含有有機化合物の炭素数」とは、特に断りのない限り「水酸基含有有機化合物1分子中の炭素数」を意味する。
水酸基含有有機化合物は、前記保冷用組成物における、前記第4級アンモニウム塩の包接水和物を除く、水を主成分とする水性成分の融点(凝固点、凍結温度)を決定する成分である。
前記水酸基数/炭素数の値がこのような範囲であることで、冷却後の使用時において、保冷用組成物の温度が目的とする保冷温度に到達するまでの時間が短縮される。
なお、水酸基含有有機化合物として、例えば、D−体、L−体等の光学異性体が存在する場合には、本発明で用いる水酸基含有有機化合物としては、これらすべての光学異性体を包含するものとする。
保冷用組成物が含有する水酸基含有有機化合物を2種以上とすることで、保冷用組成物における前記水性成分の融点(凝固点、凍結温度)を調節できることがある。
前記水性成分の融点(凝固点、凍結温度)は、例えば、保冷用組成物における水酸基含有有機化合物の種類により調節できる。
前記水性成分の潜熱の下限値は、特に限定されないが、0J/gであることが好ましい。
前記水性成分の潜熱は、例えば、保冷用組成物の水酸基含有有機化合物の濃度や、水酸基含有有機化合物の種類により調節できる。
前記保冷用組成物が含有する第4級アンモニウム塩及び水酸基含有有機化合物の好ましい組み合わせとしては、例えば、テトラアルキルアンモニウムハロゲナイドからなる群から選択される1種又は2種以上と、脂肪族アルコールからなる群から選択される1種又は2種以上と、の組み合わせが挙げられる。
前記保冷用組成物は、水、前記第4級アンモニウム塩及び水酸基含有有機化合物以外に、その他の成分を含有していてもよい。
前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
前記その他の成分で好ましいものとしては、例えば、無機塩;増粘剤;染料;防腐剤、界面活性剤等の公知の各種添加剤;水以外の溶媒等が挙げられる。
すなわち、前記保冷用組成物の、水、前記第4級アンモニウム塩及び水酸基含有有機化合物の総含有量は、80質量%以上であることが好ましく、84質量%以上であることがより好ましく、88質量%以上であることが特に好ましく、例えば、90質量%以上、93質量%以上、96質量%以上、98質量%以上及び100質量%のいずれかであってもよいが、これらは一例である。
前記無機塩は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
前記金属カチオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)等のアルカリ金属のイオン;マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)等のアルカリ土類金属のイオン;鉄イオン(Fe3+、Fe2+)、銅イオン(Cu2+、Cu+)等の遷移金属のイオン;亜鉛イオン(Zn2+)、アルミニウムイオン(Al3+)等の第12族又は第13族の金属のイオン等が挙げられる。
前記非金属カチオンとしては、例えば、アンモニウムイオン(NH4 +)等が挙げられる。
保冷用組成物が含有する前記無機塩を2種以上とすることで、保冷用組成物における前記水性成分の融点(凍結温度)を調節できることがある。
前記増粘剤は、保冷用組成物の粘度を増大させる成分であり、保冷用組成物の凍結時に析出しないものが好ましい。なお、本明細書において「増粘剤が保冷用組成物の凍結時に析出しない」とは、保冷用組成物の凍結時に、増粘剤が水に溶解した状態のまま固化することを意味し、増粘剤の分子が多量に集合することなく、水分子に取り囲まれたまま固化している状態であると推測され、多量の増粘剤の分子が集合して固化している状態ではないと推測される。
前記染料は特に限定されず、例えば、赤色染料、青色染料、黄色染料、黒色染料等のいずれであってもよいが、これらは一例である。
染料として、より具体的には、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、ナフトール染料、硫化染料、トリフェニルメタン染料、ピラゾロン染料、スチルベン染料、ジフェニルメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、キノンイミン染料(アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料)、チアゾール染料、メチン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、シアニン色素、タール色素等が挙げられる。
すなわち、前記保冷用組成物の染料の含有量は、質量比較で2000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
前記防腐剤としては、例えば、食品保存料、酸化防止剤等が挙げられ、より具体的には、ナトリウムピリチオン、パラベン(パラオキシ安息香酸エステル)、プロタミン、有機窒素硫黄系化合物等が挙げられる。
前記保冷用組成物が含有する前記防腐剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記界面活性剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩;デカン酸ナトリウム等のアルキルカルボン酸塩;N−イソプロピルアクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミド;ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等のポリオキシエチレンジアルキルエーテル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンモノアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンモノアルケニルエーテル等が挙げられる。
前記保冷用組成物が含有する前記界面活性剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記溶媒は、水以外のものであれば特に限定されないが、水、前記第4級アンモニウム塩及び水酸基含有有機化合物を溶解可能なものが好ましく、このようなものとしては、例えば、水酸基含有有機化合物以外のアルコール(以下、「その他のアルコール」と略記することがある)等が挙げられる。
すなわち、前記保冷用組成物において、水及び水以外の溶媒の総含有量に対する、水以外の溶媒の含有量の割合は、30質量%以下であることが好ましく、例えば、20質量%以下、10質量%以下及び5質量%以下等のいずれかとすることができるが、これらは一例であり、0質量%であってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、冷却後の使用時において、保冷用組成物の温度が目的とする保冷温度に到達するまでの時間がより短縮される。
前記保冷用組成物は、水、前記第4級アンモニウム塩、水酸基含有有機化合物、及び必要に応じて前記その他の成分を配合することで製造できる。
各成分の配合方法は特に限定されず、保冷用組成物の凍結温度よりも高い温度において、各成分が均一に溶解又は分散するように、任意に調節できる。
例えば、各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
前記扁平部位が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい扁平部位の厚さとなるようにするとよい。
なお、表1中に示す各略号は、それぞれ以下の成分を意味する。
PG:プロピレングリコール
EtOH:エタノール
D−Glc:D−グルコース
Sol:ソルビトール
Suc:スクロース
EG:エチレングリコール
DEG:ジエチレングリコール
Gl:グリセリン
Xyl:キシリトール
L−AscNa:L−アスコルビン酸ナトリウム
PEG:ポリエチレングリコール600
DSNa:ドデシル硫酸ナトリウム
UREA:尿素
<保冷用組成物及び保冷具の製造>
室温(20〜25℃)下において、水(75質量部)に、TBAB(20質量部)、及びプロピレングリコール(5質量部)を添加し、撹拌してこれら成分を溶解させることにより、保冷用組成物を得た。各配合成分及びその保冷用組成物での含有量を表1に示す。
次いで、得られた保冷用組成物を高密度ポリエチレン製の容器に封入して、保冷具を得た。
示差走査熱量計(SII社製「DSC6200」)を用いて、上記で得られた保冷用組成物について、以下の測定を行い、評価した。すなわち、第4級アンモニウム塩の包接水和物を除く、水を主成分とする水性成分と、第4級アンモニウム塩の包接水和物について、融点を測定し、潜熱を算出した。結果を表1に示す。
[実施例2〜18、比較例1〜15]
保冷用組成物の配合成分及びその保冷用組成物での含有量の少なくとも一方を表1又は表2に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。結果を表1〜表3に示す。
なお、表1〜表3中、配合成分の種類の欄の「−」との記載は、その成分が未配合であることを意味する。また、融点の欄の「−」との記載は、融点が検出されなかったことを意味する。
比較例5の保冷用組成物は、水酸基含有有機化合物を含有しているものの、その濃度が低過ぎるために、この水酸基含有有機化合物の使用効果が不十分であって、水性成分の潜熱が高過ぎて、比較例1等の保冷用組成物と同様に、冷却後の使用時において、保冷温度よりも低い温度範囲で維持される時間が長時間に及ぶものであった。
比較例11の保冷用組成物は、水酸基含有有機化合物を含有しているものの、その含有量が多過ぎ、さらに水の含有量が少な過ぎて、包接水和物の使用効果が認められず、目的とする保冷温度での保冷効果を有していないかった。
比較例15の保冷用組成物は、その他の成分の含有量が多過ぎ、さらに水の含有量が少な過ぎて、包接水和物の潜熱が低過ぎて、保冷温度での保冷効果に劣るものであった。
Claims (1)
- 水、第4級アンモニウム塩、及び水酸基含有有機化合物を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、
前記第4級アンモニウム塩は、包接水和物を形成するものであり、
前記水酸基含有有機化合物は、炭素数が1〜12であり、且つ1分子中において、水酸基数が炭素数の0.3〜1.0倍であり、
前記保冷用組成物における前記第4級アンモニウム塩の濃度が飽和濃度未満で、且つ15質量%以上であり、
前記保冷用組成物の前記水酸基含有有機化合物の含有量が2.5〜16質量%である、保冷具。
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