JP7440926B2 - 産業資材シート - Google Patents

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Description

本発明は、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ファサードシート、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いられるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いられる帆布、さらには建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、ファサードなどに用いられるメッシュシートなどの産業資材シートに関する。より詳しくは、これらのターポリン、帆布、及びメッシュシートなどの基材が、ポリアルキレンフラノエート繊維、またはアルキレンフラノエート含有共重合体繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素とする布帛である産業資材シートに関し、さらに再生持続可能なバイオマス由来の繊維からなる布帛を含み、さらにバイオマス由来の可塑剤を含む産業資材シートに関する。
近年、PETボトルごみを原料化し、繊維(カーペット、衣類)・シート・成形品(文具・雑貨・容器)などへのマテリアルリサイクルが推進されているが、回収PETボトルの品質にバラつきが大きく、元のPET樹脂の状態よりも品質・物性等の劣化を伴っていた。しかし昨今では、飲料用PETボトルのように直ちにゴミとなる物品では、劣化の少ない優良な資源ごみとして身近に回収システムが設けられ、回収PETボトルが新たな飲料用PETボトルに再生する「ボトルtoボトル(BtoB)」を牽引している。その背景には、プラスチックの原料となる石油は将来枯渇する危機状況が懸念されていること、プラスチックの焼却時に発生する二酸化炭素が地球温暖化に影響する問題、海洋の劣化プラスチック汚染(マイクロプラスチック粒子)の問題などが挙げられ、そのためプラスチックごみ削減、プラスチックから紙への代用などの様々な取り組みがなされている。そして最近では、プラスチックの合成を再生可能なバイオマス資源由来製品や、より低環境負荷となる製品にシフトする研究がなされ、特に世界的に使用量が多いPET樹脂を対象に、その原料であるエチレングリコールとテレフタル酸とを、それぞれバイオマス資源由来とすることで得たバイオベースPET樹脂が特にPETボトル飲料分野で注目されている。バイオエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したジオールが例示できる。またバイオテレフタル酸は、トウモロコシ糖の発酵によるイソブタノールを脱水してイソブチレンとし、ラジカル反応による二量化、環化により得たパラキシレンをテレフタル酸に転換したものが例示できるが、バイオエチレングリコールほど製造が容易ではないため、バイオマス由来をバイオエチレングリコールのみとした、エチレングリコールの仕込み質量比が約30%のバイオベースPET樹脂も存在する。
最近、PET樹脂の代替としてポリアルキレンフラノエート樹脂が注目されている。ポリアルキレンフラノエート樹脂は具体例に、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート樹脂(以下PEF樹脂)で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したジオールが例示できる。また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したもので、100%バイオベースPET樹脂の合成よりも100%バイオベース化が容易である。そしてPEF樹脂の利用は、ポリエチレンフラノエートを含むガスバリア層を少なくとも備える多層容器であって、ポリエチレンフラノエートが、バイオマス由来のポリエチレングリコールと、バイオマス由来のフランジカルボン酸との重縮合物であるガスバリア性多層容器の発明が特許文献1に開示されている。またテレフタレート系ポリエステル樹脂と、ポリエチレンフラノエートとを含む容器であって、テレフタレート系ポリエステル樹脂とポリエチレンフラノエートとの合計100質量% に対するポリエチレンフラノエートの割合を2~25質量%とする、軽量、かつ強度の高い容器(樹脂成形品)の発明が特許文献2に開示されている。
特許文献1の多層構造のポリエステル樹脂容器、特許文献2のポリエステル樹脂ブレンドによる樹脂容器は1年程度使用される家庭内日用雑貨類であるため、樹脂劣化をほとんど受けず、再利用のポテンシャルを有する資源であるが、多層構造や樹脂ブレンドにより、飲料用PET樹脂ボトルのような「ボトルtoボトル(BtoB)」リサイクルを困難としている。一方、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ファサードシート、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いられるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いられる帆布、さらには建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、ファサードメッシュなどに用いられるメッシュシートなどの基材には、ポリエチレンテレフタレート(以下PET樹脂)から紡糸したポリエステル繊維糸条を織編要素とする布帛が用いられている。特に空隙率6~25%程度の布帛(織布)の両面に熱可塑性樹脂組成物フィルムを積層したものがターポリンで、空隙率0~5%程度の布帛の両面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、それを皮膜化したものが帆布で、また空隙率10~70%程度の粗目織物の全面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、塗工物を皮膜化したものがメッシュシートで、これらは産業資材シートとして広く使用されている。これらの産業資材シートは、屋外で長期間(最長15年程度)使用し、所定の機械的物性を保持し続ける安定品質が求められるため、基材となる布帛(織布)の織糸にリサイクル樹脂からなる、明らかに物性に劣る再生PET樹脂を混用することは品質保証の観点でタブー視されている。そのため産業資材シートの布帛(織布)には、バージンPET樹脂から紡糸されたピュアな織糸が使用されるが、後に使い古され劣化した布帛(織布)がPET樹脂のリサイクルに供されるフローは存在しない。それは強固な複合体である産業資材シートから布帛の分離回収が困難であると同時に、屋外で長期間使用したことで、紫外線、ラジカル、湿熱加水分解などのダメージの蓄積によって物性劣化を伴い、再利用価値が低いためである。そのため屋外使用を終えた産業資材シートは埋立処分されて資源リサイクルのフローから外れる扱いとなっている。
そして特に、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、フレキシブルコンテナなどの膜構造物では、ターポリン原反の端末に、のりしろ部分を設け、こののりしろ同士を積重するターポリン同士のラップ接合によって膜構造物の面積を拡張する溶着縫製部を有している。この溶着縫製部はターポリン端末同士の樹脂層による溶着体であるため、互いのターポリンの基材である布帛の糸条は分断状態となる。そして炎天下にターポリンの樹脂層が軟化することで、布帛と樹脂層との密着力が低下して、ラップ接合部分の糸抜破壊(樹脂層からすっぽ抜け)を起こして膜構造物の穴裂となる事故を生じ、このような破壊は台風や積雪荷重でも生じる事故である。また経年的にラップ接合部分で糸がスリップ移動して、ラップ接合部近傍の寸法が伸びて膜構造物外観に弛みや皺を生じるトラブルを生じることもある。このようなラップ接合部分の糸抜けトラブルを防止するために、布帛に接着性の樹脂加工(例えば、ポリイソシアネート系硬化剤含有の軟質塩化ビニルペースト組成物)を施し、糸条に樹脂含浸させることで、樹脂フィルム層(例えば、軟質塩化ビニル樹脂組成物)との接着力を増強させ、この基材層と樹脂層との接着効果によってラップ接合部分の糸抜破壊を抑止することができる。しかしながらこのような接着仕様では、布帛の糸条が樹脂で固着されマルチフィラメントの隙間が埋まることで風合が硬くなり、応力を逃がす自由変位挙動が封止されることで糸条が衝撃断裂し易くなって、膜構造物の穴裂事故の原因となる。すなわち布帛に接着処理が無いと糸抜破壊を誘発し、接着処理を施すと糸条の断裂破壊を誘発するというジレンマがあったのである。
このようなジレンマの解決手段として、樹脂層と布帛との接着性改良の提案、樹脂層自体の耐熱性改良などが提案されている。例えばフレキシブルコンテナで、耐高温クリープ性(耐荷重性)を得るための接着改良として、樹脂層に対するアンカー(投錨)効果を目的として、フィラメント糸と繊維長の短いステープル糸とを混撚りした撚合糸で形成した基布(布帛)の少なくとも一方の面に被覆する被覆材とで形成したターポリン(特許文献3)が開示されている。この発明提案は、長繊維にステープル糸を混撚りすることで繊維織物表面にステープル糸の起毛を設け、この起毛に被覆材の溶融部分が入り込んでステープル糸と絡み合うことでアンカーを得ようとするものである。この発明提案によれば確かに高温でのクリープ性向上を得ることが可能であるが、しかし十分なアンカー効果(クリープ性向上)を得るにはステープル糸の混撚量を多くする必要があり、ステープル糸の混撚量を多くするほど混撚糸本体の強度と引裂強度とを低下させ、その結果フレキシブルコンテナバッグ本体の強度を悪くするという本末転倒となっている。そこで本出願人は、ターポリン本体の引裂強度や耐クリープ性を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性に優れるターポリン(特許文献4)を提案した。この発明提案は、繊維性基布の経糸群と緯糸群の少なくとも一方に、嵩高状マルチフィラメント糸条と直線状マルチフィラメント糸条とを特定比率で併用した部分嵩高合撚糸を含む繊維性基布を用いるもので、この発明提案によれば確かにターポリン本体の引裂強度や耐クリープ性を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性に優れるターポリンを得ることを可能とした。しかし、嵩高状マルチフィラメント糸条と直線状マルチフィラメント糸条との合撚糸を用いることで繊維性基布が緊縛したものとなり、得られるターポリンの風合いは硬く、フレキシブルコンテナバッグとしてコンパクトな折りたたみ性に劣り、使い勝手の改良が新たな課題となった。このように接合部の耐熱クリープ性と、柔軟性及び引裂強度との関係は、一方が高くなる程もう一方が低くなるという背反関係にあり、両者のバランスを整えることは困難であった。従って特許文献3の短繊維ステープル糸、特許文献4の嵩高状マルチフィラメント糸条などの特殊形状によるアンカー効果に依存せず、また特別な接着処理などを必要としない糸条による布帛を用いた産業資材シート(ターポリン、帆布、及びメッシュシート)において、織物と樹脂層との密着性をより向上させ、しかも柔軟性を維持しうる設計が切望され、さらに従来のPET糸条から織編された布帛を、100%再生可能なバイオマス資源由来製品に転換できれば、仮に焼却処分したとしても、発生した二酸化炭素がカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス樹脂が自然に還る)にカウントされるので、このような再生持続可能な産業資材シートに対する期待が日々大きくなっている。
特開2018-199258号公報 特開2018-104070号公報 特開2009-262382号公報 特開2014-141023号公報
本発明は産業資材シート原反により構築された膜構造物において、シート同士のラップ(Lap)接合部分に糸抜破壊を生じることなく(接合部強度、及び接合部の耐クリープ性に優れ)、ターポリン本体の強度性能、及び耐引裂強度が十二分に発現可能な産業資材シート(ターポリン、帆布、メッシュシート、の原反)の提供を第一課題とし、特に布帛を構成する合成繊維糸条を再生持続可能なバイオマス資源由来とすることで、布帛がバイオマス資源由来製品として、本発明の産業資材シートによる構築物の廃材(すなわち産業資材シート)の焼却処分時に発生する二酸化炭素の多くがカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス繊維が自然に還る)にカウントされ、低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献しうる産業資材シート(ターポリン、帆布、メッシュシート、の原反)の提供を第二課題とする。
本発明はかかる点を考慮し検討を重ねた結果、少なくともポリアルキレンフラノエート〔化1〕繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化2〕繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含む布帛を基材として、この布帛の片面以上に軟質塩化ビニル樹脂層が形成され、この軟質塩化ビニル樹脂層がフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化3〕を含んでなる産業資材シート(ターポリン、帆布、メッシュシート、の原反)が、産業資材シート同士のラップ(Lap)接合部分に糸抜破壊を生じることなく(接合部強度、及び接合部の耐クリープ性に優れ)、産業資材シート本体の強度性能、及び耐引裂強度が十二分に発現され、しかも柔軟風合いを具備可能であること(第一課題の解決)を見出して本発明を完成させるに至った。
ポリアルキレンフラノエート繊維からなる糸条を布帛の構成要素とすることで、産業資材シート同士のラップ(Lap)接合部分に糸抜破壊を生じることなく、接合部強度、及び接合部の耐クリープ性に優れたものとする効果の主要因は、ポリアルキレンフラノエート樹脂(繊維原料)の融点は210~230℃と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET繊維原料)の融点250~270℃よりも20~60℃低く、軟質塩化ビニル樹脂層の200℃以下の融点に接近することで、製造時、及びLap接合時における布帛と軟質塩化ビニル樹脂層との密着性が効果的に向上したものと考察される。また産業資材シート本体の強度性能、及び耐引裂強度が十二分に発現された主要因は、PET樹脂(繊維原料)の強度(E-modulus)2.1~2.2GPaに対し、ポリアルキレンフラノエート樹脂(繊維原料)の強度が3.1~3.3GPaと、約50%高い値による好結果と考察する。また産業資材シート本体の柔軟性が発現された主要因は、PET樹脂から繊維を溶融紡糸し、これを延伸冷却化した際の結晶化速度が約2~3分に対し、ポリアルキレンフラノエート樹脂(繊維原料)の場合は約20~30分と約10倍遅い結晶化による好結果と考察する。またアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維においても同様の融点差、強度差、結晶化速度差による効果が十分に発現されるものと考察される。また、ポリアルキレンフラノエート繊維、またはアルキレンフラノエート含有共重合体繊維を再生持続可能なバイオマス資源由来化合物で合成した場合、布帛はバイオマス資源由来となり、本発明の産業資材シートによる構造物の廃材(すなわち産業資材シート)が焼却処分されたとしても、発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス樹脂が自然に還る)にカウントされ、理論的に低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献可能となる(第二課題の解決)

本発明の産業資材シートは、1)前記ポリアルキレンフラノエート繊維が、ポリエチレンフラノエート繊維、ポリプロピレンフラノエート繊維、ポリブチレンフラノエート繊維、及びポリトリメチレンフラノエート繊維から選ばれた1種以上であり、2)前記アルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維が、ポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリプロピレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリブチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、及びポリトリメチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維から選ばれた1種以上であることが好ましい。特にこれらのポリアルキレンフラノエート繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維を持続可能なバイオマス資源由来で合成したものとした場合、布帛はバイオマス資源由来のものとなり、本発明の産業資材シートによる構造物の廃材(すなわち産業資材シート)が焼却処分されたとしても、発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス樹脂が自然に還る)にカウントされ、理論的に低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献可能な産業資材シートとなる(第二課題の解決)
本発明の産業資材シートは、前記布帛の織編要素が、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、から選ばれた1種であることが好ましい。ここで「経糸条/緯糸条」は二軸織物、「経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」は三軸織物、「経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」は四軸織物を表している。特に三軸織物、及び四軸織物を基材に用いることで、得られる産業資材シートの寸法安定性、破壊強度、耐貫通性、引裂防止性に極めて優れるので、特にターポリン及び帆布に関しては、テント構造物などの用途以外に、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などの特殊用途にも活用することができる。
本発明の産業資材シートは、前記軟質塩化ビニル樹脂層が、フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化3〕を含むことが好ましい。
特に軟質塩化ビニル樹脂層が塩化ビニル樹脂、もしくは塩化ビニル系共重合体樹脂、もしくは塩化ビニル樹脂を主体とする樹脂組成物の何れかである場合、可塑剤成分としてフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を含むことが好ましく、さらにフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物は、バイオマス資源由来で合成された可塑剤であることが好ましい。これによって、上述の再生持続可能なバイオマス資源由来の布帛を基材とする産業資材シートにおいて、さらに軟質塩化ビニル樹脂層中にも部分バイオマス化した可塑剤を含有することによって、本発明の産業資材シートによる構造物の廃材(すなわち産業資材シート)が焼却処分されたとしても、発生する二酸化炭素の大半はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス樹脂が自然に還る)にカウントされることで、低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献可能となる(第二課題の解決)

本発明により、産業資材シート同士のラップ(Lap)接合部分に糸抜破壊を生じることなく(接合部強度、及び接合部の耐クリープ性に優れ)、産業資材シート本体の強度性能、及び耐引裂強度を十二分に発現させることが可能となる(第一課題の解決)。特にポリアルキレンフラノエート繊維からなる糸条を布帛の構成要素とすることで、産業資材シート同士のラップ(Lap)接合部分に糸抜破壊を生じることなく、接合部強度、及び接合部の耐クリープ性に優れたものとする効果の主要因は、ポリアルキレンフラノエート樹脂(繊維原料)の融点は210~230℃と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET繊維原料)の融点250~270℃よりも20~60℃低く、軟質塩化ビニル樹脂層の200℃以下の融点に接近することで、製造時、及びLap接合時における布帛と軟質塩化ビニル樹脂層との密着性が効果的に向上したものと考察する。また産業資材シート本体の強度性能、及び耐引裂強度が十二分に発現された主要因は、PET樹脂(繊維原料)の強度(E-modulus)2.1~2.2GPaに対し、ポリアルキレンフラノエート樹脂(繊維原料)の強度が3.1~3.3GPaと、約50%高い値による好結果と考察する。また産業資材シート本体の柔軟性が発現された主要因は、PET樹脂から繊維を溶融紡糸し、これを延伸冷却化した際の結晶化速度が約2~3分に対し、ポリアルキレンフラノエート樹脂(繊維原料)の場合は約20~30分と約10倍遅い結晶化による好結果と考察する。またアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維においても同様の融点差、強度差、結晶化速度差による効果が十分に発現されるものと考察される。従って本発明の産業資材シートは、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ファサードシート、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いられるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いられる帆布、さらには建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、ファサード用途のメッシュシートに利用できる。特にこれらの基材(布帛)を、ポリアルキレンフラノエート繊維、またはアルキレンフラノエート/テレフタレート共重合体繊維による持続可能なバイオマス資源由来の布帛とし、さらに軟質塩化ビニル樹脂層中にも部分バイオマス化した可塑剤を含有させることにより、本発明の産業資材シートによる構造物の廃材(すなわち産業資材シート)が焼却処分されたとしても、発生する二酸化炭素の大半はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス樹脂が自然に還る)にカウントされ、低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献可能となる(第二課題の解決)
本発明の産業資材シートは、少なくともポリアルキレンフラノエート繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含む布帛を基材として、この布帛の片面以上に軟質塩化ビニル樹脂層(※以下、明細書内において、「熱可塑性樹脂層」を「軟質塩化ビニル樹脂層」と読み替える)が形成されてなり、具体的に、1)前記ポリアルキレンフラノエート繊維が、ポリエチレンフラノエート繊維、ポリプロピレンフラノエート繊維、ポリブチレンフラノエート繊維、及びポリトリメチレンフラノエート繊維から選ばれた1種以上であり、2)前記アルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維が、ポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリプロピレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリブチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、及びポリトリメチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維から選ばれた1種以上であり、特に前記布帛の織編要素が、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、から選ばれた1種、かつ前記布帛の空隙率が0~35%であって、さらに前記熱可塑性樹脂層が、フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を含む構成である。
本発明の産業資材シートの基材に用いる布帛は、少なくともポリアルキレンフラノエート繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含む、1)空隙率6~25%程度のターポリン用の織布(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物、ラッセル織物など)で、長繊維マルチフィラメント糸条で織編される目付量100~500g/mの織布、2)空隙率0~5%程度の帆布用布帛(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物など)で、短繊維紡績(スパン)マルチフィラメント糸条で織編される目付量100~500g/mのスパン布帛、3)及び空隙率10~70%程度のメッシュシート用の粗目織物(平織物、模紗織物、積重ネットなど)で、長繊維マルチフィラメント糸条で織編される目付量30~200g/mの粗目織物、樹脂で糸条全体を被覆した長繊維マルチフィラメント糸条(コーテッドヤーン)で、目付量25~350g/mの織編メッシュ、積重メッシュが例示できる。空隙率は、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸などの軸糸同士の交絡・交差によって生じる隙間の総和であり、布帛の単位面積中に占める糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。具体的に糸条幅の平均値を求め、糸条の打込本数/インチの関係から1インチ平米当たりの空隙率による換算値として算出可能である。
これらの織布、スパン布帛、粗目織物、及びメッシュは、ポリアルキレンフラノエート繊維マルチフィラメント糸条、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維から構成されるが、これ以外の繊維として、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリブチレンテレフタレート:PBT、ポリナフタレンテレフタレート:PNF)繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、から選ばれた1種以上のマルチフィラメント糸条(長繊維、短繊維紡績糸)を混用することができ、これら糸条の混用率はバイオベース化の観点から50質量%以下が好ましい。混用糸条は任意の打ち込み間隔(n本交互、n本引揃え交互、n本跨ぎ:nは整数)で規則的配置、あるいはランダム配置して、外観上、格子模様、幾何学模様となる態様であってもよい。そして上記糸条による布帛の織編要素は、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、から選ばれた1種である。ここで「経糸条/緯糸条」は二軸織物、「経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」は三軸織物、「経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」は四軸織物を表している。特に三軸織物、及び四軸織物を基材に用いることで、得られる産業資材シートの寸法安定性、破壊強度、耐貫通性、引裂防止性に極めて優れるので、テント構造物などの用途以外に、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などの特殊用途にも活用することができる。そしてターポリンは、空隙率6~25%程度の織布の両面に熱可塑性樹脂組成物フィルムを積層した態様で、また帆布は、空隙率0~5%程度の布帛の両面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、それを皮膜化した態様で、またメッシュシートは、空隙率10~70%程度の粗目織物の全面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、塗工物を皮膜化した態様である。
本発明の産業資材シートの基材に用いる布帛は、少なくともポリアルキレンフラノエート〔化1〕繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化2〕繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含むもので、具体的に1)ポリアルキレンフラノエート繊維が、ポリエチレンフラノエート繊維、ポリプロピレンフラノエート繊維、ポリブチレンフラノエート繊維、及びポリトリメチレンフラノエート繊維から選ばれた1種以上が例示できる。〔化1〕の「-(CH2n-」はアルキレン基を示し、nは2以上10以下の整数、具体的にエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ドデシレンなどであるが、特にnは2,3,4の何れかが好ましい。また好ましい重合度mは500~1000である
これらのポリアルキレンフラノエート繊維は、密度1.41~1.45g/cm3、融点210~230℃、強度(E-modulus)3.1~3.3GPa、の少なくとも1項を満たすポリアルキレンフラノエート樹脂から溶融紡糸された繊維が特に好ましい。ポリエチレンフラノエート繊維は具体的に、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPEF樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリプロピレンフラノエート繊維は具体的に、モノプロピレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPPF樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリエチレンフラノエート繊維は具体的に、モノブチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPBF樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリトリメチレンフラノエート繊維は具体的に、トリメチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPtMF樹脂から溶融紡糸された繊維である。特にポリエチレンフラノエート繊維だと100%バイオベース化が容易となり好ましく、100%バイオベースを達成するモノエチレングリコールは例えば、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したバイオマス由来のジオールで、これらは再生持続可能である。また100%バイオベースを達成する2,5-フランジカルボン酸は例えば、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオマス由来化合物で、これらは再生持続可能である。上記ポリアルキレンフラノエート繊維全般において、原料となるフランジカルボン酸のカルボン酸の配位は2,5位以外、2,3位、2,4位、3,4位の態様も可能であるが、バイオマス由来化合物として2,5-フランジカルボン酸が最も合成が容易である。再生持続可能とは、バイオマス製品の燃焼により排出された二酸化炭素が、植物に吸収され、植物の生産する糖をバイオマスモノマーに転化し、これによりバイオマス製品を合成するサイクルを意味する。
また、アルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化2〕繊維は、ポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリプロピレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリブチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、及びポリトリメチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維から選ばれた1種以上が例示できる。〔化2〕の「-(CH2n-」はアルキレン基を示し、nは2以上10以下の整数、具体的にエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ドデシレンなどであるが、特にnは2,3,4の何れかが好ましい。
これらのアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は、密度1.38~1.42g/cm3、融点220~250℃、強度(E-modulus)2.5~3.0GPa、の少なくとも1項を満たすアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体樹脂から溶融紡糸された繊維が特に好ましい。このアルキレン(Ar)/フラノエート(F)/テレフタレート(T)共重合体樹脂の態様は、1)〔-Ar-F-Ar-T-〕を繰り返し単位m(特に好ましくは500~1000)とする交互共重合体、2)交互共重合体において〔F〕と〔T〕の配置が不規則なランダム共重合体(ランダムなので〔化2〕に図示してない)、3)〔-Ar-T-〕m1(特に好ましくは125~250)重合体単位と〔-Ar-F-〕m2(特に好ましくは375~750)重合体単位を含むブロック共重合体が例示でき、下記具体例においても同様1)~3)の態様の何れかである。ポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は具体的に、モノエチレングリコールとテレフタル酸、及び2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPE/F/T樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリプロピレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は具体的に、モノプロピレングリコールとテレフタル酸、及び2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPP/F/T樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリブチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は具体的に、モノブチレングリコールとテレフタル酸、及び2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPB/F/T樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリトリメチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は具体的に、トリメチレングリコールと、テレフタル酸、及び2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPtM/F/T樹脂から溶融紡糸された繊維である。これらの共重合体繊維において、テレフタル酸成分の含有組成は任意とするが、特にバイオベース化の観点において40質量%以下が好ましい。特にポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維では高バイオベース化が比較的容易で、高バイオベースとなり得るモノエチレングリコール、及び2,5-フランジカルボン酸は段落〔0017〕に記載と同一である。また上記アルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維において、テレフタル酸の1~99質量%をイソフタル酸、またはフタル酸に置換してもよい。
本発明の産業資材シートの基材に用いる布帛の織編(経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条)に用いる糸条は、1)空隙率6~25%程度のターポリン用の織布(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物、ラッセル織物など)を構成する長繊維マルチフィラメント糸条で、その繊度が250~2000デニール(278~2222dtex)程度で、278dtexのフィラメント数は100~200本、1111dtexのフィラメント数だと400~800本であり、無撚(断面が楕円または扁平)であっても撚糸であってもよい。2)空隙率0~5%程度の帆布用布帛(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物など)を構成する短繊維紡績(スパン)マルチフィラメント糸条で、その繊度が綿番手の10番手(591dtex)~60番手(97dtex)の範囲、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)などであり、これらの単糸、または双糸(片撚糸)、単糸2本以上による合撚糸(諸撚糸)などが使用できる他、嵩高加工糸条(タスラン加工糸、ウーリー加工糸など)、カバリング糸条(マルチフィラメント糸の外周に同種または異種の短繊維を巻き付けた芯鞘複合糸)なども使用できる。3)空隙率10~70%程度のメッシュシート用の粗目織物(平織物、模紗織物、積重ネットなど)を構成する長繊維マルチフィラメント糸条で、その繊度は、1)と同様で、特に糸条全体を樹脂被覆した長繊維マルチフィラメント糸条(コーテッドヤーン)が好ましい。
本発明の産業資材シートにおいて軟質塩化ビニル樹脂層は、公知の塩化ビニル樹脂により形成される組成物であり、塩化ビニル樹脂としては、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)で、これらは各々、ペレット状、粉末状、ペースト状、塗料(溶剤型、無溶剤型)、エマルジョンなどの態様で使用できる。特に高周波溶着性を有する軟質塩化ビニル樹脂が好ましい。軟質塩化ビニル樹脂層には、安定剤、着色剤、顔料、光輝性顔料、難燃剤、防炎剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などの公知の添加剤を任意量用いることができる。
本発明の産業資材シートにおいて熱可塑性樹脂層は、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)組成物が特に好ましく、1)懸濁重合によるストレート塩化ビニル樹脂(細粒)100質量部に、可塑剤を30~100質量部を主体とし、必要に応じて、安定剤、顔料、難燃剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などを任意選択し、任意量配合したもので、この軟質塩化ビニル樹脂組成物は、カレンダー圧延加工による厚さ0.1~1mmのフィルム、またはシートはターポリンの製造に適する。2)また、乳化重合によるペースト塩化ビニル樹脂(微細粉)100質量部に、可塑剤を50~120質量部を主体とし、必要に応じて、安定剤、顔料、難燃剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤、希釈剤などを任意選択し、任意量配合したものである。この軟質塩化ビニル樹脂組成物のペースト状物は、コーティング加工、またはディッピング加工などで、帆布、メッシュシートの製造に適する。可塑剤は公知のフタル酸エステル系可塑剤、イソフタル酸エステル系可塑剤、テレフタル酸エステル系可塑剤、シクロヘキサンジカルボン酸エステル系可塑剤、シクロヘキセンジカルボン酸エステル系可塑剤、アジピン酸系可塑剤、セバシン酸系可塑剤、塩素化パラフィン系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素3元共重合体樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-一酸化炭素3元共重合体樹脂、及びフランジカルボン酸ジアルキルエステル系可塑剤などが使用できるが、特にフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物がバイオマス資源由来可能であるため好ましい。
フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物は、フランジカルボン酸とアルコールとの反応(エステル化)によって合成された可塑剤で、特に2,5-フランジカルボン酸とC4~C12(C13~C20であってもよい)のアルコールとの反応(エステル化)によって合成された2,5-フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化3〕が好ましい。2,5-フランジカルボン酸は、例えば、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成した再生持続可能なバイオマス由来化合物である。再生持続可能とは、バイオマス製品の燃焼により排出された二酸化炭素が、植物に吸収され、植物の生産する糖をバイオマス化合物に転化し、これによりバイオマス由来化合物(可塑剤)を合成するサイクルを意味する。この可塑剤の原料となるフランジカルボン酸のカルボン酸の配位は2,5位以外、2,3位、2,4位、3,4位の態様も可能であるが、バイオマス由来化合物としては2,5-フランジカルボン酸が最も合成が容易である。フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化3〕の具体例は、2,5-フランジカルボン酸とC4アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジブチル(MW268)、及び2,5-フランジカルボン酸ジイソブチル(MW268)、同様にC5アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジペンチル(MW296)、同様にC6アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジヘキシル(MW324)、同様にC7アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジヘプチル(MW352)、同様にC8アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジ(2-エチルヘキシル)(MW380)、同様にC9アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジノニル(MW408)及び、2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル(MW408)、同様にC10アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジデシル(MW436)及び、2,5-フランジカルボン酸ジイソデシル(MW436)、同様にC11アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジウンデシル(MW464)、同様にC12アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジラウリル(MW492)などで、複数種を併用することができる。これらフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化3〕は、C4~C12アルコールが非バイオマス由来による部位となり、フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化3〕の分子量を増すほど、バイオマス度は低いものとなるため、特に2,5-フランジカルボン酸ジ(2-エチルヘキシル)(MW380:バイオマス度40質量%)、2,5-フランジカルボン酸ジノニル(MW408:バイオマス度38質量%)及び、2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル(MW408:バイオマス度38質量%)から選ばれた1種以上が、バイオマス度と塩化ビニル樹脂用の可塑剤性能においてバランスがよい。熱可塑性樹脂(軟質塩化ビニル樹脂)層中に部分バイオマス化可塑剤を含有することによって、カーボンニュートラルレベルがアップして、より低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献可能となる。
本発明の産業資材シートにおいて、1)空隙6~25%程度の織布(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物、ラッセル織物など)で、長繊維マルチフィラメント糸条で織編される目付量100~500g/mの織布を基材とするターポリンは、この基材の両面に段落〔0020〕記載の熱可塑性樹脂組成物からカレンダー圧延成型、あるいはTダイス押出成型された厚さ0.1~1mmのフィルム、またはシートを熱圧ラミネートして得ることができ、空隙率6~25%の空隙部(軸糸の交絡で生じる空隙)を介在して、織布の表裏に配置されたフィルム、またはシート同士が溶融一体化することで表裏の熱可塑性樹脂層が織布と強固に接着する特徴を有している。ターポリンの厚さは0.4~1.5mm、質量500~2000g/mの範囲だと、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材、フレキシブルコンテナの原反素材に適する。また2)空隙率0~5%程度の帆布用布帛(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物など)で、短繊維紡績(スパン)マルチフィラメント糸条で織編される目付量100~500g/mのスパン布帛を基材とする帆布は、この基材の両面に段落〔0020〕記載の熱可塑性樹脂組成物の液状物をディップ塗工、あるいはコーティング塗工し、塗工物を乾燥させて0.05~0.3mmの皮膜化して得ることができ、塗工物の一部はスパン布帛に含浸した状態が好ましい。帆布の厚さは0.4~1.0mm、質量400~1500g/mの範囲だと、トラック幌、テント倉庫などの原反素材に適する。また3)及び空隙率10~70%程度のメッシュシート用の粗目織物(平織物、模紗織物、ヤーン積重ネットなど)で、長繊維マルチフィラメント糸条で織編される目付量30~200g/mの粗目織物を基材とするメッシュシートは、この基材の全体に段落〔0020〕記載の熱可塑性樹脂組成物の液状物をディップ塗工し、塗工物を乾燥させて0.05~0.3mmの皮膜化して得ることができ、塗工物の一部は粗目織物に含浸した状態が好ましい。また段落〔0020〕記載の熱可塑性樹脂組成物の液状物を糸条全体に塗工被覆した長繊維マルチフィラメント糸条(コーテッドヤーン)を織編して得たメッシュシートである。メッシュシートの厚さは0.4~1.0mm、質量200~1000g/mの範囲だと、建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、ファサードなどの原反素材に適する。
本発明の産業資材シートの表面の片面以上に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコン系共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合体樹脂のブレンド、ウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、及びウレタン/フッ素系グラフト共重合体樹脂、などの塗膜からなる防汚層が形成されていてもよく、また、フッ素系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、及びフッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/塩化ビニル系樹脂接着層などのフッ素系樹脂フィルムを防汚層として積層することができる。これらの防汚層を、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物に適用することで屋外使用時の耐久性を飛躍的に向上させる。さらにこれらの防汚層の表面には、1次粒子径3nm~150nmの無機コロイド物質を原料とする粒子が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むバインダー成分に担持されてなる帯電防止性防汚層が設けられていてもよい。無機コロイド物質は、光触媒性酸化チタンゾル、光触媒性酸化亜鉛ゾル、光触媒性酸化錫ゾル、酸化チタンゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化錫ゾル、シリカゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化セリウムゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛-五酸化アンチモン複合または酸化スズ-五酸化アンチモン複合)ゾルなどの金属酸化物を用いることで、帯電防止性及び防汚性を付与できる。
本発明の産業資材シートの接合・縫製は、高周波ウエルダー融着法、熱板融着法、熱風融着法、超音波融着法などの熱融着、及びミシン縫い縫製が適用可能である。特に高周波融着法において、ウエルドバーによる発熱プレスにより表裏の熱可塑性樹脂層が再溶融し、布帛(基材)を再加熱することで布帛(糸条)との接着効果が増すことで更に膜構造体のラップ接合部におけるクリープ性(糸抜破壊の抑止性)を向上させる。
実施例
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。(※以下、実施例1-3、7-9、13、14を、参考例1-3、7-9、13、14と読み替えるものとする)
樹脂層と布帛との密着性の評価(実施例・比較例)
20cm×20cm×厚さ0.5mmの軟質塩化ビニル樹脂フィルム(熱可塑性樹脂層に相当)を、1)20cm×20cm×厚さ100μmのポリエチレンフラノエートフィルム2枚、2)または同規格サイズのポリエチレン/フラノエート/テレフタレートフィルム2枚で挟み、この仮積層物をラボプレス機(東洋精機製作所株式会社)で、180℃×100kg/cm2圧×3minで熱プレス後、3min水冷して積層体とする。
この積層体から3cm幅×16cm長の短冊を6枚切り出し、これを剥離試験体とする。
剥離試験はJIS L1096 8.14項 引張強さに準拠し、短冊試験片の1)ポリエチレンフラノエートフィルム、2)またはポリエチレン/フラノエート/テレフタレートフィルムの一方の端部を2cm剥がし、剥がし部を掴み部分として、万能引張試験機(東洋精機製作所株式会社:ストログラフT)の上部チャックに装着、対となる剥離露出部を下部チャックに装着し、20℃及び40℃×剥離速度50mm/minでチャック間隔を広げることにより剥離を進行させると同時に剥離強度を求め、これをPEF布帛層と熱可塑性樹脂層との接着力に見立て、ターポリン接合体の耐クリープ試験(糸抜け破壊の予見)のシミュレーションとする。
また1)20cm×20cm×厚さ100μmのポリエチレンフラノエートフィルム、2)または同規格サイズのポリエチレン/フラノエート/テレフタレートフィルムを、同規格サイズのポリエチレンテレフタレ-トフィルムに置換したものを比較例として同様に試験を行い、これをPET布帛層と熱可塑性樹脂層との接着力に見立て、ターポリン接合体の耐クリープ試験(糸抜け破壊の予見)のシミュレーションとする。
バイオ化率(バイオマス資源由来の証明)
ポリマーを構成する全炭素原子中に含む炭素同位体「14C」濃度(ポリマー中の「14C」と「12C」の検出比)を加速器質量分析計(Accelerator Mass Spectrometry)により求め、「14C」の検出比によりバイオ化率が証明される。
大気中の炭素同位体「14C」量は、宇宙線による「14C」生成と、放射崩壊(半減期約5730年)とが平衡状態にありほぼ一定で、大気中の「14C」は光合成によって植物に蓄積され、続く食物連鎖で動物中に分布することで地球上全ての生物の「14C」濃度(「14C」と「12C」の検出比)はほぼ一定である。その一方、石油は1~2億年前の生物由来物質であるため、石油中の「14C」濃度は半減期を大きく過ぎていることで実質ゼロと見做されることで、バイオマス由来製品には一定濃度の「14C」が含まれ、石油由来製品には「14C」が含まれないことになる。従って「14C」濃度(「14C」と「12C」の検出比)測定によりバイオマス由来製品であることの証明となる。
[実施例1]
〈布帛(1)によるターポリン〉
ポリエチレンフェノラート樹脂(密度1.43g/cm3、融点210~230℃、ガラス転移温度Tg88℃、強度:E-modulus3.1~3.3GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量190g/m、空隙率10%の布帛(1)を用いる。
※ポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート(PEF)樹脂から溶融紡糸されるもので、重合モノマーは何れもバイオマス資源由来化合物で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したもの、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオマス資源由来化合物もので、得られるポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は100%バイオマス資源由来繊維となり、この繊維糸条を織編要素とする布帛(1)も100%バイオマス資源由来となる。
<ターポリンの製造>
布帛(1)の両面に下記〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂コンパウンドから165℃~180℃の熱条件でカレンダー成型による厚さ0.16mmのフィルムを、ラミネーターにより170℃の熱ロール条件でフィルムを軟化させた状態で積層すれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の産業資材シート(1)が得られる。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂コンパウンド組成物
懸濁重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジイソノニル(DINP) 60質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型二酸化チタン(白色顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
[実施例2]
〈布帛(2)による帆布〉
ポリエチレンフェノラート樹脂(密度1.43g/cm3、融点210~230℃、ガラス転移温度Tg88℃、強度:E-modulus3.1~3.3GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)短繊維紡績糸(S撚600T/m)による、経糸20番手双糸(590dtex)46本/インチ×緯糸20番手双糸(590dtex)42本/インチ:空隙率0.8%:質量228g/mの平織スパン布を布帛(2)に用いる。
※ポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート(PEF)樹脂から溶融紡糸される長繊維を4~10cm長に切断したステープルによる紡績糸で、重合モノマーは何れもバイオマス資源由来化合物で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したもの、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオマス資源由来化合物もので、得られるポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は100%バイオマス資源由来の紡績糸となり、この紡績糸を織編要素とする布帛(2)も100%バイオマス資源由来となる。
<帆布の製造>
下記〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を充填した液浴中に、布帛(2)を浸漬し、布帛(2)に〔配合2〕のペーストゾル組成物をディップ含浸させ、布帛(2)を引き上げると同時にゴムロールで圧搾後、180℃の熱風炉で3分間、〔配合2〕のペーストゾル組成物のゲル化を完結させれば、布帛(2)に軟質塩化ビニル樹脂が含浸し、かつ布帛(2)の両面に軟質塩化ビニル樹脂層が形成された厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布態様の産業資材シート(2)が得られる。
〔配合2〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
フタル酸ジイソノニル(DINP) 65質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型酸化チタン(白色顔料) 5質量部
シアニングリーン(緑顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
イソシアヌレート変性トリイソシアネート(硬化剤) 5質量部
[実施例3]
〈布帛(3)によるメッシュシート〉
ポリエチレンフェノラート樹脂(密度1.43g/cm3、融点210~230℃、ガラス転移温度Tg88℃、強度:E-modulus3.1~3.3GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)繊維による、糸密度「750d(833dtex)フィラメント数147本、S撚200T/m:/3本引揃」を、経緯糸条として、経糸条8本/インチ、緯糸条9本/インチの打ち込みで模紗織した、質量195g/m、空隙率15%の粗目状の布帛(3)を用いる。
※ポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート(PEF)樹脂から溶融紡糸されるもので、重合モノマーは何れもバイオマス資源由来化合物で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したもの、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオマス資源由来化合物もので、得られるポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は100%バイオマス資源由来繊維となり、この繊維糸条を織編要素とする粗目状の布帛(3)も100%バイオマス資源由来となる。
<メッシュシートの製造>
前述の〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を充填した液浴中に、布帛(3)を浸漬し、布帛(3)に〔配合2〕のペーストゾル組成物をディップ含浸させ、布帛(3)を引き上げると同時にゴムロールで圧搾して180℃の熱風炉で3分間、〔配合2〕のペーストゾル組成物のゲル化を完結させれば、布帛(3)に軟質塩化ビニル樹脂が含浸し、かつ布帛(3)全面に軟質塩化ビニル樹脂層が形成された厚さ0.42mm、質量465g/m、空隙率13%のメッシュシート態様の産業資材シート(3)が得られる。
[実施例4]
実施例1の〔配合1〕を〔配合3〕に変更(フタル酸ジイソノニルを2,5-フランジカルボン酸ジイソノニルに置換)した以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の産業資材シート(4)が得られる。
〔配合3〕軟質塩化ビニル樹脂コンパウンド組成物
懸濁重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 60質量部
※2,5-フランジカルボン酸とイソノニルアルコールとの反応(エステル化)によっ
て合成されたバイオマス度38質量%の可塑剤で、特に2,5-フランジカルボン酸は
フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオ
マス由来化合物である。
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型二酸化チタン(白色顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
[実施例5]
実施例2の〔配合2〕を〔配合4〕に変更(フタル酸ジイソノニルを2,5-フランジカルボン酸ジイソノニルに置換)した以外は、実施例2と同様とすれば、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布態様の産業資材シート(5)を得ることができる。
〔配合4〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 65質量部
※2,5-フランジカルボン酸とイソノニルアルコールとの反応(エステル化)によっ
て合成されたバイオマス度38質量%の可塑剤で、特に2,5-フランジカルボン酸は
フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオ
マス由来化合物である。
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型酸化チタン(白色顔料) 5質量部
シアニングリーン(緑顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
イソシアヌレート変性トリイソシアネート(硬化剤) 5質量部
[実施例6]
実施例3の〔配合2〕を実施例5の〔配合4〕に変更した以外は、実施例3と同様とすれば、厚さ0.42mm、質量465g/m、空隙率13%のメッシュシート態様の産業資材シート(6)が得られる。
[実施例7]
実施例1の布帛(1)を布帛(4)に置き換えた以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量905g/mのターポリン態様の産業資材シート(7)が得られる。
〈布帛(4)〉
ポリエチレン/フェノラート/テレフタレート交互共重合体樹脂(密度1.40g/cm3、融点230~240℃、ガラス転移温度Tg82℃、強度:E-modulus2.6~2.7GPa)を溶融紡糸したポリエチレン/フェノラート/テレフタレート(PE/F/T)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量180g/m、空隙率10%の織布(4)を用いる。
※ポリエチレン/フェノラート/テレフタレート(PE/F/T)繊維は、モノエチレングリコール50モル%と、2,5-フランジカルボン酸25モル%、及びテレフタル酸25モル%との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート(PE/F/T)樹脂から溶融紡糸されるもので、重合モノマーはテレフタル酸を除きバイオマス資源由来化合物で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したもの、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオマス資源由来化合物もので、得られるポリエチレン/フェノラート/テレフタレート(PE/F/T)繊維は約60~65%バイオマス資源由来繊維となり、この繊維糸条を織編要素とする布帛(4)も60~65%バイオマス資源由来となる。
[実施例8]
実施例2の布帛(2)を布帛(5)に置き換えた以外は、実施例2と同様とすれば、厚さ0.47mm、質量550g/mの帆布態様の産業資材シート(8)が得られる。
〈布帛(5)〉
ポリエチレン/フェノラート/テレフタレート交互共重合体樹脂(密度1.40g/cm3、融点230~240℃、ガラス転移温度Tg82℃、強度:E-modulus2.6~2.7GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)短繊維紡績糸(S撚600T/m)による、経糸20番手双糸(590dtex)46本/インチ×緯糸20番手双糸(590dtex)42本/インチ:空隙率0.8%:質量218g/mの平織スパン布を布帛(5)に用いる。
※ポリエチレン/フェノラート/テレフタレート(PE/F/T)繊維は、モノエチレングリコール50モル%と、2,5-フランジカルボン酸25モル%、及びテレフタル酸25モル%との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート(PE/F/T)樹脂から溶融紡糸される長繊維を4~10cm長に切断したステープルによる紡績糸で、重合モノマーはテレフタル酸を除きバイオマス資源由来化合物で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したもの、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオマス資源由来化合物もので、得られるポリエチレン/フェノラート/テレフタレート(PE/F/T)繊維は約60~65%バイオマス資源由来繊維となり、この繊維糸条を織編要素とする布帛(5)も60~65%バイオマス資源由来となる。
[実施例9]
実施例3の布帛(3)を布帛(6)に置き換えた以外は、実施例3と同様とすれば、厚さ0.42mm、質量457g/m、空隙率13%のメッシュシート態様の産業資材シート(9)が得られる。
〈布帛(6)〉
ポリエチレン/フェノラート/テレフタレート交互共重合体樹脂(密度1.40g/cm3、融点230~240℃、ガラス転移温度Tg82℃、強度:E-modulus2.6~2.7GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)繊維による、糸密度「750d(833dtex)フィラメント数147本、S撚200T/m:/3本引揃」を、経緯糸条として、経糸条8本/インチ、緯糸条9本/インチの打ち込みで模紗織した、質量187g/m、空隙率15%の粗目状の布帛(6)を用いる。
※ポリエチレン/フェノラート/テレフタレート(PE/F/T)繊維は、モノエチレングリコール50モル%と、2,5-フランジカルボン酸25モル%、及びテレフタル酸25モル%との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート(PE/F/T)樹脂から溶融紡糸されるもので、重合モノマーはテレフタル酸を除きバイオマス資源由来化合物で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したもの、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオマス資源由来化合物もので、得られるポリエチレン/フェノラート/テレフタレート(PE/F/T)繊維は約60~65%バイオマス資源由来繊維となり、この繊維糸条を織編要素とする布帛(6)も60~65%バイオマス資源由来となる。
[実施例10]
実施例7の〔配合1〕を〔配合3〕に変更(フタル酸ジイソノニルを2,5-フランジカルボン酸ジイソノニルに置換)した以外は、実施例7と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量905g/mのターポリン態様の産業資材シート(10)が得られる。
[実施例11]
実施例8の〔配合2〕を〔配合4〕に変更(フタル酸ジイソノニルを2,5-フランジカルボン酸ジイソノニルに置換)した以外は、実施例8と同様とすれば、厚さ0.47mm、質量550g/mの帆布態様の産業資材シート(11)が得られる。
[実施例12]
実施例9の〔配合2〕を〔配合4〕に変更した以外は、実施例9と同様とすれば、厚さ0.42mm、質量457g/m、空隙率13%のメッシュシート態様の産業資材シート(12)が得られる。
[実施例13]
実施例1の布帛(1)を布帛(7)に置き換えた以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.77mm、質量903g/mのターポリン態様の産業資材シート(13)が得られる。
〈布帛(7)〉
ポリエチレンフェノラート樹脂(密度1.43g/cm3、融点210~230℃、ガラス転移温度Tg88℃、強度:E-modulus3.1~3.3GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本、S撚200T/m)を経糸群及び左上バイアス糸群/右上バイアス糸群に用い、経糸群は1インチ間13本の織組織とし、また左上バイアス糸群/右上バイアス糸群は各々1インチ間13本の織組織とする、質量188g/m、空隙率(目抜け部総和)10%の三軸平織物を布帛(7)に用いる。
[実施例14]
実施例1の布帛(1)を布帛(8)に置き換えた以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.8mm、質量909g/mのターポリン態様の産業資材シート(14)が得られる。
〈布帛(8)〉
ポリエチレンフェノラート樹脂(密度1.43g/cm3、融点210~230℃、ガラス転移温度Tg88℃、強度:E-modulus3.1~3.3GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本、S撚200T/m)を経糸群、緯糸群、及び左上バイアス糸群/右上バイアス糸群に用い、経糸群及び緯糸群は1インチ間10本の織組織とし、また左上バイアス糸群/右上バイアス糸群は各々1インチ間10本の織組織とする、質量は194g/m、空隙率(目抜け部総和)8%の四軸平織物を布帛(8)に用いる。
実施例1~3,7~9,13及び14で得た産業資材シート(1)~(3),(7)~(9),(13)及び(14)は、布帛を構成する合成繊維糸条を再生持続可能なバイオマス資源由来とすることで布帛がバイオマス資源由来製品となり、本発明の産業資材シートを焼却処分した場合、発生する二酸化炭素がカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス繊維が自然に還る)にカウントされ、低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献しうる。これによって本願発明の第二課題が解決となる。また実施例4~5,10~12で得た産業資材シート(4)~(5),(10)~(12)は、さらに布帛のバイオマス資源由来以外に、さらに産業資材シートを構成する熱可塑性樹脂層中にも部分バイオマス化した可塑剤を含有する構成によって、これらの産業資材シートが焼却されたとしても、発生する二酸化炭素の大半はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス樹脂が自然に還る)にカウントされ、低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献しうる再生持続可能な産業資材シートとなる。これによって本願発明の第二課題が解決される。
[比較例1]
実施例1の布帛(1)を布帛(9)に置き換えた以外は、実施例1と同様として、厚さ0.8mm、質量900g/mのターポリン態様の産業資材シート(15)を得る。
〈布帛(9)〉
ポリエチレンテレフタレート樹脂(密度1.36g/cm3、融点250~270℃、ガラス転移温度Tg76℃、強度:E-modulus2.1~2.2GPa)を溶融紡糸したポリエチレンテレフタレート(PET)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量181g/m、空隙率10%の布帛(9)を用いる。
[比較例2]
実施例2の布帛(2)を布帛(10)に置き換えた以外は、実施例2と同様として、厚さ0.47mm、質量548g/mの帆布態様の産業資材シート(16)を得る。
〈布帛(10)〉
ポリエチレンテレフタレート樹脂(密度1.36g/cm3、融点250~270℃、ガラス転移温度Tg76℃、強度:E-modulus2.1~2.2GPa)を溶融紡糸したテレフタレート(PET)短繊維紡績糸(S撚600T/m)による、経糸20番手双糸(590dtex)46本/インチ×緯糸20番手双糸(590dtex)42本/インチ:空隙率0.8%:質量216g/mの平織スパン布を布帛(10)に用いる。
[比較例3]
実施例3の布帛(3)を布帛(11)に置き換えた以外は、実施例3と同様として、厚さ0.42mm、質量465g/m、空隙率13%のメッシュシート態様の産業資材シート(17)を得る。
〈布帛(11)〉
ポリエチレンテレフタレート樹脂(密度1.36g/cm3、融点250~270℃、ガラス転移温度Tg76℃、強度:E-modulus2.1~2.2GPa)を溶融紡糸したポリエチレンテレフタレート(PET)繊維による、糸密度「750d(833dtex)フィラメント数147本、S撚200T/m:/3本引揃」を、経緯糸条として、経糸条8本/インチ、緯糸条9本/インチの打ち込みで模紗織した、質量195g/m、空隙率15%の粗目状の布帛(11)を用いる。
比較例1~3で得た産業資材シート(15)~(17)は、布帛を構成する合成繊維糸条をバイオマス資源由来としないことで、布帛がバイオマス資源由来製品に非ず、比較例の産業資材シートを焼却処分した場合、布帛から発生する二酸化炭素がカーボンニュートラルにカウントされず、低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献し得ないものとなる。
[参考例1~6]
実施例1,4,7,10,13,14の産業資材シート(1),(4),(7),(10),
(13),(14)の両面に下記〔配合5〕のアクリル系樹脂塗料を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m/片面)を表裏に形成し中間体A(1~6)とする。
〔配合5〕アクリル系樹脂塗料
メタアクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体
100質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 250質量部
トルエン(希釈剤) 250質量部
次にこの中間体Aの片表面に下記〔配合6〕のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物の溶液を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m/片面)を表面側に半硬化の状態で付帯する中間体B(1~6)とする。
〔配合6〕アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物
メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸共重合
物のカルボキシル基にポリエチレンイミンをグラフトし、
側鎖が、-COO(CHCHNH)Hの化学式で示されるアミン価(固形分1g
に含むアミンmmol数)0.7~1.3mmol/gの一級アミノ基含有アクリル系樹脂
100質量部
エポキシ樹脂(エポキシ当量260g/eqのビスフェノールA骨格含有3官能
エポキシ樹脂) 20質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 150質量部
トルエン(希釈剤) 150質量部
次に、この中間体B(1~6)のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ半硬化物層面側に、厚さ25μm、53g/mのポリビニリデンフルオライド(PVdF)フィルムのコロナ処理面側を対向し、150℃の熱ロール条件でラミネーターを通過させ、熱圧着してフッ素系樹脂フィルムを積層して防汚層を形成することで、煤塵汚れ防止性、及び雨筋汚れ防止性に優れ、拭き取り洗浄により初期外観を回復可能な産業資材シート(18)~(23)を得る。
〈樹脂層と布帛との密着性の評価(実施例・比較例)〉
〔表4〕のPVC層との各剥離試験の結果、20℃、及び40℃の雰囲気下での、PVC層との剥離強度は「PEF > PE/F/T > PET」の大小関係を得た。テント膜構造物では、ターポリン原反同士のラップ接合によって膜構造物の面積を拡張する溶着縫製部を有している。この溶着縫製部では互いのターポリンの基材である布帛の糸条は分断状態であるため、温度環境や張力荷重によってラップ接合部分の糸抜破壊(被覆樹脂層からすっぽ抜け)を起こして膜構造物の穴裂となる事故を生じることがある。このようなラップ接合部分の糸抜けトラブルを防止するためには、被覆樹脂層と布帛との接着力を増し、より糸抜破壊(被覆樹脂層からすっぽ抜け)を生じ難くする対応が必要となる。従って樹脂層と布帛との密着性を大きくするほど、より糸抜破壊(被覆樹脂層からすっぽ抜け)が生じ難くなる相関が周知で、この糸抜破壊試験は下記概要で評価できる。
〈耐クリープ試験:糸抜破壊防止性〉
2枚のターポリンの端部同士を8cm幅で直線状に平行に重ね合わせ、4cm幅×30cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YTO-8A型:高周波出力8KW)を用い、陽極電流1.0Aでターポリンの高周波融着接合によってターポリン接合体を得る。この接合体より融着接合部を重ね合わせ幅8cmを含む、3cm幅×30cm長の試験片を採取し、耐クリープ試験片とし、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製:100LDR型)を使用して25℃×24時間の条件下、50kgf荷重、65kgf荷重、80kgf荷重の3条件での耐クリープ性を評価する。
評価の基準
1 :24時間経過後、接合部に異変や異常ない
2 :24時間未満で接合部が破壊し、試験片が分断した
〈破壊した時間を記録〉
3 :1時間以内に接合部が破壊し、試験片が分断した
〈破壊した時間を記録〉
破壊状態の判断 : 接合部糸抜け破壊(糸の断裂なし)
本体破壊等(糸の断裂あり)
本発明の産業資材シートは、シート同士のラップ(Lap)接合部分に糸抜破壊を生じることなく(接合部強度、及び接合部の耐クリープ性に優れ)、産業資材シート本体の強度性能、及び耐引裂強度を十二分に発現させることが可能となる(第一課題の解決)。特にポリアルキレンフラノエート繊維からなる糸条を布帛の構成要素とすることで、産業資材シート同士のラップ(Lap)接合部分に糸抜破壊を生じることなく、接合部強度、及び接合部の耐クリープ性に優れたものとする。従って本発明の産業資材シートは、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ファサードシート、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いられるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いられる帆布、さらには建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、ファサードなどに用いられるメッシュシートなどに利用でき、特にこれらの基材となる布帛が、バイオマス資源由来のポリアルキレンフラノエート繊維、またはアルキレンフラノエート/テレフタレート共重合体繊維とすることで、再生持続可能なバイオマス資源由来の布帛となり、上記構造物の廃材(すなわち産業資材シート)が焼却処分されたとしても、発生する二酸化炭素がカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス樹脂が自然に還る)にカウントされることで、低環境負荷かつ低炭素社会の構築に貢献可能な産業資材シートとなる(第二課題の解決)

Claims (3)

  1. 少なくともポリアルキレンフラノエート〔化1〕繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化2〕繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含む布帛を基材として、この布帛の片面以上に軟質塩化ビニル樹脂層が形成され、この軟質塩化ビニル樹脂層がフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化3〕を含んでなる産業資材シート。
  2. 1)前記ポリアルキレンフラノエート繊維が、ポリエチレンフラノエート繊維、ポリプロピレンフラノエート繊維、ポリブチレンフラノエート繊維、及びポリトリメチレンフラノエート繊維から選ばれた1種以上であり、2)前記アルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維が、ポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリプロピレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリブチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、及びポリトリメチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維から選ばれた1種以上である請求項1に記載の産業資材シート。
  3. 前記布帛の織編要素が、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、から選ばれた1種である請求項1または2に記載の産業資材シート。
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