本発明は経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材に関するものである。このような防水性積層膜材は、特に日除け、雨除け空間を構築する膜構造物に有用なものである。さらに詳しく述べるならば、本発明は、建造物骨組構造に固定して、その外周を覆い、室内空間を構築する大型ドーム、大型〜小型パビリオン、シート倉庫などの膜構造物、及び、主にその天蓋部分を覆い、スタジアム雨除け、日除けモニュメントなどの環境空間を構築するために用いられ、特に施工後の寸法弛みが少なく、かつ、施工設計時の採寸が容易な経緯方向のクリープの間のバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材に関するものである。
大型ドーム、大型〜小型パビリオン、シート倉庫などの膜構造物、及び、主にその天蓋部分を覆い、スタジアム雨除け、日除けモニュメントなどの環境空間を構築するために用いられる繊維布帛複合膜材には、従来ポリエステル、ナイロン、ビニロンなどの合成樹脂から紡糸(延伸工程を含む)されたマルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸として織編された繊維布帛(例えば、特許文献1参照。)を基布として、その表裏面に軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層を被覆したターポリン、あるいは、ポリエステル、ナイロン、ビニロンなどの合成樹脂から紡糸された短繊維の紡績糸条を経糸及び緯糸として織編された繊維布帛(例えば、特許文献2参照。)を基布として、その表裏面に軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を含浸、かつ被覆した防水帆布などが使用されている。また、機械的強度が高く耐屈曲耐水性の優れたテント構造物用膜材として、基布の経糸と緯糸に、ポリエステルマルチフィラメント糸条の外周にポリエステルステープルファイバーを絡ませた複合糸条(コアスパンヤーン)を使用した防水性膜材(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。これらのターポリン及び防水帆布(膜材)は、通常、100cm〜300cmの幅を有する長尺の繊維布帛を基布として使用し、この基布を、その表面に軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層を形成する装置を通過させて連続長尺加工を施すことによって製造されている。
この連続長尺加工において繊維布帛の表裏面に軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層を均一な厚さで被覆するには、繊維布帛がフラットに緊張した状態にあることが必要であるが、このような連続加工では、繊維布帛の長手(経)方向には幅(緯)方向の張力よりも大きな張力が付加されるため、得られるターポリン又は防水帆布は、長手(経)方向に伸長され、幅(緯)方向では縮少される傾向、すなわち緯糸に較べて経糸がより伸長された状態になり、このため、ターポリン又は防水帆布の経緯方向に張力が掛かると、経時的に、緯糸(幅)方向の長さ経糸(長手)方向の長さ以上に伸びて、寸法が変化するという問題があった。またこれらの加工において、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層の形成には、フィルム、またはシートを加熱して繊維布帛上に積層する方法、またはポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物をコーティングする方法、またはポリ塩化ビニル樹脂液中に基布をディッピングし、樹脂を加熱ゲル化する方法などが知られている。これらのいずれの方法においても、繊維布帛には100〜250℃の加工熱が掛けられるため、マルチフィラメント糸条、及び短繊維紡績糸条を構成しているポリエステル、ナイロン、ビニロンなどの合成樹脂の軟化を促し、さらに加工機張力が加わることによって特に経糸は緊張状態で寸法が固定されるので、得られた膜材に張力が掛かった時に、緯糸(幅)方向の伸びが経糸(長手)方向よりも大きくなり、経緯方向のクリープのバランスが一層悪いものになっていた。
そして、これらの膜材を、建造物骨組構造に固定して、この構造の外周を覆い、室内空間を構築する大型ドーム、大型〜小型パビリオン、シート倉庫などの膜構造物を形成した時に、これらの膜材はその自重による張力と太陽熱による加熱とが相乗して、経時的に緯方向の伸びを誘引し、その結果、膜構造物に、前記骨組構造に対して部分的な弛みが発生する原因となり、この弛みは膜構造物の見栄えを悪くし、それと同時に、弛み部分に煤塵や土誇りなどの汚れが蓄積してさらに見栄えを悪くするという問題に発展していた。前記膜材の弛みを防ぐ方法としては、予め膜材の経方向と緯方向との伸びに配慮した採寸設計を施すことによって解決可能であるが、しかし膜材を経・緯のパーツとして使用する複雑なテント構造物においては、それぞれの採寸計算が面倒であり、また使用する膜材は、基布の種類や織組織、加工設計、加工条件などの違いなどによって、各々経方向と緯方向との伸度バランスが異なるため、採寸設計にしばしば混乱を招いていた。
これらの経・緯伸度のバランスを良好にするための対策として、繊維織物の経糸と緯糸とのそれぞれの一部分を特定間隔で芳香族ポリアミド繊維のような高弾性率繊維糸条により構成した基布(例えば、特許文献4参照。)を用いることも有効である。しかし、これらの基布では2種類の繊維糸条の熱収縮率が大きく異なるため、加工熱により基布全面に収縮歪み痕を生じ、得られるテント膜材の外観及び平滑性が不良になり、それと同時に、全芳香族ポリアミド繊維糸条部分は透光性が著しく低いため、太陽光にかざした時に、格子状の影となりテント膜材に必要な採光性を得ることが困難となる。一方、基布にポリエステルマルチフィラメント束を経糸及び緯糸として織編された繊維布帛を選び、この基布に軟質ポリ塩化ビニル樹脂コーティングを施す時に、基布に対し長手方向(機械方向)に掛かる張力と同一の張力を幅方向に掛けることができる特殊な加工機を用いることによって、得られる膜材の経・緯方向のクリープバランスが保たれた商品(例えば、非特許文献1参照。)が提案されている。確かにこのような加工方法を用いることによって経・緯方向のクリープバランスを得ることは可能であるが、その加工方法は、繊維布帛の左右耳部を固定して行うことが可能なコーティング法のみに限られ、ディッピング法、フィルムラミネート法などのロール圧搾やロール圧着などによる膜材製造には適用できず、従って大型ドーム、大型〜小型パビリオン、シート倉庫などの用途に応じて含浸工程、被覆工程、積層工程を適宜に組み合わせることを必要とする膜材設計に対応することは困難であり、特に目合いの開いた粗目織物に対しては、塗工液が裏漏れするため、工業的に加工することができないという欠点があった。また、この方法で得られる膜材は、ポリエステルマルチフィラメント基布の表面に軟質ポリ塩化ビニル樹脂によるコーティング被覆層が設けられただけのものとなるため、耐屈曲性が不十分であり、風によるはためきにより樹脂亀裂や樹脂剥離が発生し易いなど、長期間耐久性が不十分であった。また一方、テント膜材の色相は白やパステル色などの着色が特に好まれているが、これらの色相系では屋外において展張に使用する時に煤塵汚れ及び雨筋汚れなどの環境汚れが著しく目立ち、テント膜構造体の外観見栄えを悪くすると同時に、採光性にも悪い影響を及ぼすことが問題となっていた。
特開平7−279060号公報(2ページ)
特開平7−145571号公報(3〜4ページ)
特開2002−30572号公報(2〜3、5ページ)
特開昭59−9053号公報(2〜4ページ)
フェラーリ社、「プレコントランR ,膜構造用膜材料」株式会社サエラ発行、平成11年1月
本発明は、日除け、雨除け空間を構築する膜構造物の寸法弛みを改善した、経方向・緯方向のクリープバランスに優れ、さらにフラッタリング(はためき)などの動的耐久性にも優れ、しかも施工設計時の採寸設計が容易で、各種テント構造物に適した防水性積層膜材を提供しようとするものである。また、さらに本発明は優れた防汚性を有し、経方向・緯方向のクリープバランスに優れ、各種テント構造物に適した防水性積層膜材を提供しようとするものである。
本発明に係る経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材は、繊維布帛を基布として含み、かつその片面または両面に、熱可塑性樹脂組成物からなる1層以上の難燃性被覆層が形成されていて、前記繊維布帛が、その経糸に、短繊維紡績糸条を含み、かつ、緯糸に、マルチフィラメント糸条、並びにマルチフィラメント糸条からなる芯部と、この芯部の全周を被覆し、かつ短繊維からなる鞘部とを含むコアスパン糸条から選ばれた1種以上の糸条を含む交織織物からなることを特徴とするものである。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材の、JIS L1096に準拠した引張試験による経方向及び緯方向の、破断応力と破断伸び率との関係曲線(S-Sカーブ)において、経方向の破断応力の1/10の応力における伸び率と、緯方向の破断応力の1/10の応力における伸び率との差の絶対値が0〜1の範囲内にあることが好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材の、JIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向の破断応力の1/10の応力荷重下における24時間後のクリープ歪み率と、緯方向の破断応力の1/10の応力荷重下における24時間後のクリープ歪み率との差の絶対値が、0〜1の範囲内にあることが好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記難燃性被覆層上に、さらに防汚層が形成されていてもよい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記防汚層が、酸化チタン(TiO2)、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、から選ばれた1種以上の光触媒物質を含有していることが好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記防汚層が、アクリル系樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上からなる防汚性樹脂、又は前記防汚性樹脂と、シリカ微粒子とを含む樹脂混合物から選ばれた1種を含むことも好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記防汚層が、前記難燃性被覆層上に貼着されたフィルムにより形成され、このフィルムの少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されていることも好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記難燃性被覆層用熱可塑性樹脂組成物が、主成分として軟質塩化ビニル樹脂を含むことが好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記難燃性被覆層用熱可塑性樹脂組成物が、主成分としてポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系共重合体樹脂、ポリオレフィン系共重合体樹脂から選ばれた1種以上を含むことも好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記難燃性被覆層用熱可塑性樹脂組成物が、難燃性付与剤を含むことが好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記繊維布帛の経糸用短繊維紡績糸条が、ポリエステル短繊維、ビニロン短繊維、ポリプロピレン短繊維、ナイロン短繊維、及び天然短繊維から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記繊維布帛の緯糸用マルチフィラメント糸条が、ポリエステルマルチフィラメント、ビニロンマルチフィラメント、ポリプロピレンマルチフィラメント、及びナイロンマルチフィラメントから選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
本発明の経緯方向のクリープバランスに優れたテント構造物用防水性積層膜材において、前記繊維布帛の緯糸用コアスパン糸条の芯部が、ポリエステルマルチフィラメント、ビニロンマルチフィラメント、ポリプロピレンマルチフィラメント、及びナイロンマルチフィラメントから選ばれた1種以上を含み、また前記鞘部が、ポリエステル短繊維、ビニロン短繊維、ポリプロピレン短繊維、ナイロン短繊維、及び天然短繊維から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
本発明のテント用防水性積層膜材は、経糸と緯糸に特定の糸条を配置して交織して得られた繊維布帛を基布として用い、それによって、経・緯方向に、特定の応力−伸び挙動を有し、その結果、経・緯方向のクリープの間に優れたバランスを得ることができるものである。従って本発明の防水性積層膜材を大型テント構造物の構成に使用する場合、その膜材の経・緯方向の採寸設計が容易であり、また施工後には経時的にテント構造物に外観に目立った弛みを生ずることがなく、しかも、風によるはためきによる材料疲労にも強い耐久性を有する膜材なので、長期間にわたり使用される大型テント建造物用の膜材料としては極めて有用なものである。また、本発明のテント用防水性積層膜材には、さらに膜材表面に特定の防汚層を設けることによって、テント構造物の美観を長期間維持することができるから、このような本発明の耐久性積層膜材は、弛まず、かつ汚れない膜材料として理想的な性能を有している。
本発明のテント構造物用防水性積層膜材(以下、これを本発明の膜材と記す)に含まれる基布用繊維布帛の、経糸は短繊維紡績糸条を含み、かつ、緯糸は、マルチフィラメント糸条、及び/又はマルチフィラメント糸条からなる芯部と、この芯部の全周を被覆し、かつ短繊維からなる鞘部とを有するコアスパン糸条を含みこれらの経緯糸が交織されている。このような基布の片面または両面に、熱可塑性樹脂組成物からなる難燃性被覆層が形成されている。本発明の膜材は、上記基布の特定組織により、経・緯方向にバランスの良好な特定の応力−伸び挙動を有している。
本発明の膜材に用いる繊維布帛には、経糸条と緯糸条とからなる織布、または編物が使用できるが、経(長手)方向と緯(幅)方向の伸び率のバランスを良好に保つために特に織布を用いることが好ましい。本発明の膜材において、その基布として編物が用いられる場合、経糸とは、縦目(ウエール、wales)を形成する糸条を意味し、経方向とは、縦目方向を意味し、緯糸とは、横目(コース、course)を形成する糸条を意味し、緯方向とは横目方向を意味する。織布としては、平織物(経糸と緯糸とも最少2本ずつ用いた最小構成単位を有する)、綾織物(経糸と緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する)、朱子織物(経糸と緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する)などは、織構造の経糸条と緯糸条との交絡による立体ロスが少なく、良好な経・緯の物性バランスを維持できるので好ましく使用でき、中でも特に平織物を用いることが好ましい。上記織物組織の他に、拡大法、交換法、配列法、配置法、添糸法、削糸法などによって得られる変化平織物、蜂巣織物、梨子地織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、バスケット織物、二重織物なども使用できる。編布の場合は、ラッセル編物が引裂強度に優れ好ましい。これらの織布・編布の製織編は、シャットル織機、シャットルレス織機(レピア方式、グリッパ方式、ウオータージェット方式、エアジェット方式)などの従来公知の織機及び編機を用いて製織することができる。これらの繊維布帛には公知の繊維処理加工、例えば、精練処理、漂白処理、染色処理、柔軟化処理、撥水処理、吸水防水処理、防カビ処理、防炎処理、及びバインダー樹脂処理など施して使用することができる。
繊維布帛を構成する経糸は、ポリエステル短繊維、ビニロン短繊維、ポリプロピレン短繊維、及びナイロン短繊維、天然短繊維から選ばれた何れか1種の短繊維の紡績糸条、もしくはこれら繊維の混紡による短繊維紡績糸条の何れかである。また、繊維布帛を構成する緯糸は、ポリエステルマルチフィラメント、ビニロンマルチフィラメント、ポリプロピレンマルチフィラメント、及びナイロンマルチフィラメントから選ばれた何れか1種のマルチフィラメント糸条、もしくはこれら繊維の混紡によるマルチフィラメント糸条、またはこれらのマルチフィラメント糸条を含む芯部と、この芯部の全周を被覆し、かつポリエステル短繊維、ビニロン短繊維、ポリプロピレン短繊維、ナイロン短繊維、及び天然短繊維から選ばれた1種以上の短繊維を含む鞘部とから構成されるコアスパン糸条の何れかである。天然繊維は、例えば、綿、麻、ケナフ、竹などのセルロース系繊維が好ましい。本発明に用いる繊維布帛の経糸及び緯糸は、ポリエステル短繊維−ポリエステルマルチフィラメント、ビニロン短繊維−ビニロンマルチフィラメント、ポリプロピレン短繊維−ポリプロピレンマルチフィラメント、ナイロン短繊維−ナイロンマルチフィラメントなど同種の繊維を用いることは経(長手)方向と緯(幅)方向の伸び率のバランスを良好に保つために好ましい。前記マルチフィラメントは、それと同一種の重合体からなる短繊維とからなるコアスパン糸条であってもよい。例えば本発明に用いる繊維布帛の最良の形態は、経糸がポリエステル短繊維紡績糸条であり、緯糸がポリエステルマルチフィラメント糸条である交織ポリエステル繊維布帛と、及び経糸がポリエステル短繊維紡績糸条であり、緯糸が、ポリエステルマルチフィラメント糸条からなる芯部と、この芯部の全周がポリエステル短繊維により被覆されているコアスパン糸条である交織ポリエステル繊維布帛である。前記コアスパン糸条に占める短繊維の含有量の最大は50質量%であり、5〜35質量%であることが好ましい。短繊維含有量が50質量%を超えると、得られる膜材の経(長手)方向と緯(幅)方向の伸び率のバランスを良好に保つことが困難となることがある。ポリエステル繊維としては、具体的に、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンテレフタレート(PET)、テレフタル酸とブチレングリコールとの重縮合によって得られるポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート樹脂から紡糸されたポリエステル繊維が汎用性、繊維強度及び、耐熱クリープ性の全ての面で好ましい。
本発明のテント用膜材の繊維布帛の経糸に使用する短繊維紡績糸条としては、591dtex(10番手)〜97dtex(60番手)の範囲内のもの、特に591dtex(10番手)、422dtex(14番手)、370dtex(16番手)、295dtex(20番手)、246dtex(24番手)、197dtex(30番手)などの太さを有する紡績糸を用いることが好ましい。これらの短繊維紡績糸条は、単糸及び、双糸、さらには単糸3本以上の撚糸、またはこれらの2本合糸、あるいは2本合撚糸などの形態で用いることができる。繊維布帛に対する経糸打ち込み密度は、25.4mm(1インチ)当り30〜120本であることが好ましく、特に591〜295dtex(10〜24番手)の単糸、または422〜197dtex(14〜30番手)の双糸を経糸に用いて25.4mm(1インチ)当り40〜70本の織密度で糸を打込んで得られる繊維布帛が適している。また、糸の撚り回数は、普通撚糸で500〜2000回/m、強撚糸で2000回以上/mである。また、短繊維紡績糸条としては、糸番手と撚数との関係を表す比例定数、すなわち撚係数が、1.3〜3.0程度の甘撚り糸、撚係数が3.0〜4.5程度の普通撚り糸、撚係数が4.5〜5.5程度の強撚糸を用いることが好ましく、特に撚係数が3.0〜4.5の範囲の普通撚り糸を用いることが好ましい。また短繊維紡績糸条の引張破断伸び率は、0〜50%であることが好ましく、特に0〜30%であることがより好ましく、さらに150℃での乾熱収縮率は、0〜35%であることが好ましく、特に0〜20%であることがより好ましい。
また本発明の膜材の繊維布帛の緯糸に使用するマルチフィラメント糸条は、111〜2222dtex(100〜2000デニール)の範囲、特に277〜1111dtex(250〜1000デニール)のマルチフィラメント糸条が好ましい。マルチフィラメント糸条が111dtex(100デニール)よりも小さいと、得られる膜材の引裂強力が不十分になることがあり、またそれが2222dtex(2000デニール)よりも大きいと、得られる膜材の風合いが過度に硬くなることがある。繊維布帛に対する経糸の打ち込み密度は、25.4mm(1インチ)当り10〜80本であることが好ましく、特に555dtex(500デニール)のマルチフィラメント糸条を緯糸として25.4mm(1インチ)当り15〜50本の織密度で打込んで得られる繊維布帛が好ましく、特に1111dtex(1000デニール)のマルチフィラメント糸条を、緯糸として25.4mm(1インチ)当り10〜35本の織密度で打込んで得られる繊維布帛がより好ましい。これらのマルチフィラメント糸条は無撚であってもよく、或は、加撚されたものであってもよい。また、本発明の膜材において、繊維布帛の緯糸に使用するコアスパン糸条としては、マルチフィラメント糸条からなる芯部と、その全周を被覆し、かつ短繊維からなる鞘部とからなるコア−スパン糸条を用いると、得られる膜材の耐屈曲性が著しく向上する。芯部を形成するマルチフィラメント糸条は、277〜1666dtex(250〜1500デニール)の範囲、特に355〜1111dtex(320〜1000デニール)のマルチフィラメント糸条を用いることが好ましい。このマルチフィラメント糸条の太さが277dtex(250デニール)よりも小さいと、短繊維による被覆が困難となり、得られる膜材の引裂強力が不十分になることがある。またそれが、1666dtex(1500デニール)よりも大きいと、得られる膜材が必要以上に嵩高になることがある。前記コアスパン糸条に占める短繊維含有量の最大は50質量%であり、5〜35質量%であることが好ましく、鞘部の短繊維は、芯部を形成している加撚されたマルチフィラメント糸条のフィラメント−フィラメント間に絡まって捲回(マルチフィラメント糸条の加撚方向と反対方向でもよく同一方向でもよい)されていることが好ましい。これらのコアスパン糸条の2本以上を加撚して1本の糸条として、これを緯糸として用いることもできる。前記コアスパン糸条の鞘部用短繊維の繊度は、0.55〜11.1dtex(0.5〜10デニール)であることが好ましく、特に1.1〜5.5dtex(1〜5デニール)であることがより好ましく、その長さは30mm〜200mmであることが好ましく、特に50〜150mmであることがより好ましい。短繊維の含有量が50質量%を超えると、得られる膜材の経(長手)方向と緯(幅)方向の伸び率のバランスを良好に保つことが困難になることがある。繊維布帛において、経糸打ち込み密度は、25.4mm(1インチ)当り10〜60本であることが好ましい。例えば555dtex(500デニール)のマルチフィラメント糸条を芯とするコアスパン糸条(短繊維含有率:35質量%)を、緯糸として、25.4mm(1インチ)当り15〜50本の織密度で打込んで得られる繊維布帛、及び例えば1111dtex(1000デニール)のマルチフィラメント糸条を芯部として含むコアスパン糸条(短繊維含有率:35質量%)を、緯糸として25.4mm(1インチ)当り10〜35本の織密度で打込んで得られる繊維布帛などが本発明に適している。またマルチフィラメント糸条、及びコアスパン糸条の引張破断伸び率は、0〜50%であることが好ましく、特に0〜30%であることがより好ましく、さらに150℃における乾熱収縮率は、0〜35%であることが好ましく、特に0〜20%であることがより好ましい。
上記経糸として短繊維紡績糸条を用い、緯糸としてマルチフィラメント糸条、またはコアスパン糸条に用いて交織して得られる繊維布帛は、目抜け空隙率0〜5%の高密度織物であってもよく、もしくは目抜け空隙率5〜35%の目開き織物であってもよい。目抜け空隙率が35%を越えると、膜材に含む繊維糸条の含有量が過少になり、得られる膜材の斜め方向に対する寸法安定性が不十分になることがある。目抜け空隙率は、繊維布帛の単位面積に対する、繊維糸条の占める面積の百分率を計測し、その値を100から差し引いて算出することができる。例えば目抜け空隙率の計測に経方向10cm×緯方向10cmの100cm2を単位面積として用いることができる。特に簡便法として、市販の複写機を用いて繊維布帛の表面形状を撮影して得られた画像から経方向2.54cm×緯方向2.54cmの正方形を切り出し、これをさらに複写機で任意の倍率に拡大して紙又はフィルム上にコピーし、この紙またはフィルムから繊維布帛部分(正方形)を切り出し、この質量(S)を求め、さらに目抜け空隙部分を切り出して空隙部分の合計質量(S1)を求め、S1×100/Sの値をもって目抜け空隙率と見なす方法を用いることが好適である。本発明に用いる繊維布帛としては、その目付量が、好ましくは150〜500g/m2、特により好ましくは200〜350g/m2の高密度織物、或は好ましくは80〜300g/m2、特により好ましくは120〜200g/m2の目開き織物を用いることが好適である。また繊維布帛の引張破断伸び率は、0〜50%であることが好ましく、特に0〜30%であることが好ましく、さらに、150℃における乾熱収縮率が0〜35%であることが好ましく、特に0〜20%であることがより好ましい。
本発明の膜材に使用する繊維布帛において、目抜け空隙率0〜5%の高密度織物は、後述の熱可塑性樹脂組成物による難燃性被覆層形成の1手段として、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル、有機溶剤に可溶化した熱可塑性樹脂、水中で乳化重合された熱可塑性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは熱可塑性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂を用いるディッピング加工(繊維布帛への両面加工)、及びコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)に用いる基布として好適である。また一方、目抜け空隙率5〜35%の目開き織物(粗目織物)は、後述の熱可塑性樹脂組成物による難燃性被覆層形成の1手段として、カレンダー成形法、またはTダイス押出法により成形されたフィルム又はシートを、繊維布帛の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、あるいは繊維布帛の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法に用いる基布として好適である。また目抜け空隙率0〜5%の高密度織物は、ディッピング加工(繊維布帛への両面加工)、及びコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)を施した後、この表面にカレンダー成形法、またはTダイス押出法により成形されたフィルム又はシートを、熱ラミネート積層する方法に、基布として用いることもできる。これらの基布用繊維布帛は何れも本発明の膜体の製造用基布として有用なものである。
上記繊維布帛の少なくとも1面には、熱可塑性樹脂組成物を含む難燃性被覆層が形成されている。特に繊維布帛の両面に熱可塑性樹脂組成物による難燃性被覆層が形成されていることが、防水性と熱融着接合性を高めるという観点において好ましい。熱可塑性樹脂としては、汎用的には軟質ポリ塩化ビニル系樹脂が最も好ましく使用できるが、特に環境問題に配慮して、焼却廃棄時にハロゲン化水素ガスを排出しないハロゲン非含有膜材が所望される場合においては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系共重合体樹脂、ポリオレフィン系共重合体樹脂などを使用し、必要によりこれらに難燃性付与剤を配合した難燃性組成物を使用することもできる。ポリオレフィン系共重合体樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、及びプロピレン系共重合体樹脂などが挙げられる。上記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂に汎用の可塑剤を含む組成物であり、必要に応じてこれらに、塩化ビニル−エチレン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルエーテル共重合体樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、及び/又は塩化ビニル−ウレタン共重合体樹脂などの塩化ビニル系共重合体樹脂を併用したもの、またはこれらの塩化ビニル系共重合体樹脂と汎用可塑剤との組成物を用いることができる。本発明の膜材において、熱可塑性樹脂組成物による難燃性被覆層の厚さに特に制限はないが、難燃性被覆層の固形分付着量は、基布の片面当たり、50〜300g/m2であることが好ましく、特に100〜200g/m2であることがより好ましい。難燃性被覆層の付着量が50g/m2未満であると、得られる膜材の摩耗耐久性が不十分となり漏水の原因となることがある。また、それが300g/m2を超えると、得られる膜材の坪量が過大となり、施工時の取り扱いが困難となることがある。
上記ポリ塩化ビニル樹脂は、乳化重合によって得られ、好ましくは数平均分子量、P=700〜3800、より好ましくは1000〜2000のペーストポリ塩化ビニル樹脂、及び懸濁重合によって得られ、好ましくは数平均分子量、P=700〜3800、より好ましくは1000〜2000のストレートポリ塩化ビニルのものから選ばれる。また上記塩化ビニル系共重合体樹脂(数平均分子量、P=700〜3800)中に含まれる共重合成分は、2〜30質量%であることが好ましい。本発明において、繊維布帛を被覆するための熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂を用いる場合、その配合には公知の軟質配合を用いることができるが、特に軟質配合に使用する可塑剤には、平均分子量380〜560のフタル酸エステル系可塑剤、及び、防炎性の観点から、塩素化パラフィン系可塑剤を使用することが好ましく、又は可塑剤揮散防止効果の観点から、平均分子量が好ましくは900〜6000、特により好ましくは1000〜3200のポリエステル系可塑剤を使用することが好ましく、或は可塑剤揮散防止効果の観点から、平均分子量が好ましくは10000以上、より好ましくは特に20000以上のエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素3元共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素3元共重合体樹脂などの高分子可塑剤を使用することが好ましい。ポリエステル系可塑剤は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又はフタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコール、1,2−ブタンジオール、又は1,6−ヘキサンジオールなどのジオールとから合成されたものが使用できる。これらの可塑剤の好ましい使用例としては、1).ペースト塩化ビニル樹脂100質量部に対し、可塑剤を合計量40〜100質量部を配合する処方が例示できる、これらの組成のペースト塩化ビニル樹脂は、全可塑剤量の10〜50質量%としてポリエステル系可塑剤、または塩素化パラフィン系可塑剤を含むペースト組成物を用いて、コーティング加工、またはディッピング加工に用いられる。これらの組成物は必要に応じて有機溶剤で希釈して液粘度を調整することができる。また、2).ストレート塩化ビニル樹脂100質量部に対し、可塑剤として合計量50〜100質量部を配合する処方が用いられ、この場合、全可塑剤量の30〜100質量%として、ポリエステル系可塑剤、または塩素化パラフィン系可塑剤を含むコンパウンド組成物から、カレンダー成型、T−ダイ押出成型など、公知の成型法によってフィルムに成型される。また、3).ストレート塩化ビニル樹脂100質量部に対し、可塑剤として合計量60〜140質量部を配合する処方が用いられ、全可塑剤量の30〜100質量%として高分子可塑剤を含むコンパウンド組成物を、カレンダー成型、T−ダイス押出成型など、公知の成型法によってフィルムに成型する。上記方法(2)及び3)は、ストレート塩化ビニル樹脂の代わりに、ペースト塩化ビニル樹脂を使用することもできる)これらの軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物において、安定剤、及び顔料(着色剤)は公知のものから適宜選定して使用すればよく、必要に応じて、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、滑剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防カビ剤、抗菌剤など公知の添加剤を配合できる。
難燃性被覆層用ポリウレタン系樹脂としては、ジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を分子構造内に2個以上有するポリオール化合物の中から選ばれた1種以上と、イソシアネート基と反応する官能基を含有する化合物との付加重合反応によって得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂が使用できる。ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環式(水素添加物を包含する)のジイソシアネート化合物が用いられるが、本発明においては、脂肪族、脂環式(水素添加物を包含する)のジイソシアネート化合物を用いることが耐候性の観点において好ましく、これらは例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートなどを包含する。ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール化合物としては、分子量が好ましくは300〜10000であり、より好ましくは500〜5000であって、ジイソシアネート化合物と反応する量のヒドロキシル基を含有するもの、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ジヒドロキシポリエチレンアジペート、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどが用いられる。前記ポリウレタン系樹脂は、用いるポリオールの種類に応じて、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂を包含する。
難燃性被覆層用ポリエステル系エラストマーとしては、高融点結晶性ポリエステルセグメント(A)と、脂肪族ポリエーテル単位及び/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(B)と、からなるブロック共重合体樹脂が用いられる。前記(A)セグメントはジカルボン酸と、ジオールとの重合によって得られるポリエステル構造であり、ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが用いられる。ジオール成分としては、炭素原子数が2〜12の脂肪族ジオール、または脂環族ジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールなどである。また、前記(B)セグメントを構成する脂肪族ポリエーテル単位としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール、及びこれらの共重合体のグリコールなどが包含され、また、(B)セグメントを構成する脂肪族ポリエステル単位としては、ポリε−カプロラクトン、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが包含される。
難燃性被覆層用ポリオレフィン系共重合体樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂などの共重合体樹脂が包含され、これらは具体的に、チーグラー・ナッタ系触媒、あるいはメタロセン系触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数が3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂が挙げられる。前記α−オレフィンモノマーとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、及びデセン−1などが包含される。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーとをラジカル共重合して製造され、酢酸ビニル成分量が好ましくは6〜35質量%、より好ましくは15〜30質量%のエチレン系共重合体樹脂が用いられる。また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと、(メタ)アクリル酸モノマーとのラジカル共重合によって製造され、かつ(メタ)アクリル酸成分量が好ましくは6〜35質量%、より好ましくは15〜30質量%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、エチレンモノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとのラジカル共重合によって製造され、(メタ)アクリル酸エステル成分を好ましくは6〜35質量%、より好ましくは15〜30質量%含有するエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂など、及びこれらの共重合体樹脂の2種類以上の混合物からなるエチレン系共重合体樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタアクリル酸エステルを意味し、具体的に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどを包含する。プロピレン系共重合体樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、プロピレン−α−オレフィン共重合体樹脂、プロピレン・エチレン−プロピレン系共重合エラストマー(リアクターアロイ)、及びプロピレン−エチレン・プロピレン・非共役ジエン系共重合エラストマー(リアクターアロイ)などであり、これらはランダム共重合体、あるいはブロック共重合体の何れの共重合体であってもよい。これらのプロピレン系共重合体樹脂には、スチレン系共重合体樹脂の任意量をブレンドしてプロピレン系共重合体樹脂の柔軟化を図ることができる。
難燃性被覆層用スチレン系共重合体樹脂としては、A−B−A型スチレンブロック共重合樹脂(Aは、スチレン重合体ブロック、Bは、ブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、もしくはビニルイソプレン重合体ブロックを表す。)、A−B型スチレンブロック共重合樹脂(AとBは、上記と同義である。)、スチレンランダム共重合樹脂及び、これらのスチレン系共重合樹脂の水素添加樹脂(二重結合を水素置換したもの)などが用いられる。これら共重合体の市販品としては、例えば、シェル.ケミカル社のスチレン系ブロック共重合体樹脂(商標:クレイトンG)、旭化成工業(株)製のスチレン系ブロック共重合体樹脂(商標:タフテック)、(株)クラレ製のスチレン系ブロック共重合体樹脂(商標:ハイブラー、及び商標:セプトン)、日本合成ゴム(株)製のスチレン系ランダム共重合体樹脂(商標:ダイナロン)などが挙げられる。
本発明の膜材の難燃性被覆層形成用フィルムは、上記軟質塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系共重合体樹脂、ポリオレフィン系共重合体樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂に、難燃性付与剤を配合した熱可塑性組成物を、カレンダー成型法、又はT−ダイス押出成型法など公知のフィルム・シート成型法に供して製造することができる。また上記熱可塑性樹脂には、必要に応じて、着色剤、滑剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防カビ剤、抗菌剤など公知の添加剤を配合できる。また難燃性被覆層の形成には、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系共重合体樹脂、ポリオレフィン系共重合体樹脂などの水分散樹脂(エマルジョン、ディスパージョン)の塗工し及び乾燥する方法、または上記熱可塑性樹脂を塗料形態において塗工し乾燥する方法により行うことができる。これらの水分散樹脂は水酸基、カルボン酸基、4級アンモニウム塩基などを導入して得られた親水性変性体であることが好ましい。これらの水分散樹脂、及び塗料には難燃性付与剤を配合するので、その固形分濃度には特に限定はないが、その濃度は繊維布帛に対する塗工に都合の良い液体粘度が得られるように調整することが好ましい。塗工は例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、ナイフコート法、キスコート法、フローコート法など公知のコーティング法、またはディッピング法などによって行われ、難燃性付与剤を含む水分散樹脂、及び塗料を、基布表面に均一に塗布し、これを乾燥させることによって難燃性被覆層を形成することができる。本発明において難燃性被覆層の厚さに特に制限はないが、上記塗工方法のいずれか、もしくは、組み合わせなどによって、難燃性被覆層の固形分付着量が基布の片面当たり、好ましくは50〜300g/m2、特により好ましくは100〜200g/m2に形成される。難燃性被覆層の付着量が50g/m2未満であると、得られる膜材の摩耗耐久性が不十分となり、漏水の原因となることがある。また、それが300g/m2を超えると、得られる膜材の坪量が過大となり、施工時の取り扱いが困難となることがある。前記水分散樹脂、及び塗料には難燃性付与剤の他、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防カビ剤、抗菌剤など公知の添加剤を配合してもよい。
本発明の膜材において、繊維布帛からなる基布の少なくとも1面上に難燃性被覆層を形成(防水性積層膜材の製造)は、下記の方法を用いることができる。
1).ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系共重合体樹脂、ポリオレフィン系共重合体樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂に難燃性付与剤を配合した熱可塑性組成物、または軟質塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダー成型、T−ダイス押出成型などによって得た厚さ0.1〜1.0mmのフィルム・シートを用いて繊維布帛(目抜け空隙率5〜35%の目開き織物)の両面に積層し、目抜け空隙部において、両フィルタ又はシートを互に接着させる熱ラミネートする方法(繊維布帛の両面に積層する熱可塑性樹脂は同種であることが好ましい。例えば、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムと軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、とを用いるか、或はポリウレタン系樹脂フィルムとポリウレタン系樹脂フィルムとを用いる)
2).ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系共重合体樹脂、及びポリオレフィン系共重合体樹脂から選ばれた1種以上の水分散樹脂、または塗料、または軟質塩化ビニル系樹脂ペーストを、任意の固形分濃度で用い、繊維布帛(目抜け空隙率5〜35%の目開き織物)の片面又は両面に塗工し、これを乾燥した後、上記1).のフィルム又はシートを繊維布帛の両面に熱ラミネート積層する方法(繊維布帛への塗工樹脂とフィルム・シートの熱可塑性樹脂とは同種の組み合わせが好ましい。例えば、塩化ビニルペースト樹脂塗工と軟質塩化ビニル系樹脂フィルムとの組合せ、ポリウレタン系樹脂エマルジョン塗工とポリウレタン系樹脂フィルムとの組合せなど)
3).ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系共重合体樹脂、又はポリオレフィン系共重合体樹脂の水分散樹脂、または塗料、または軟質塩化ビニル系樹脂ペーストを、任意の固形分濃度で用い、繊維布帛(目抜け空隙率0〜5%の高密度織物)の両面に塗工し、これを乾燥、またはゲル化させて被膜形成する方法(繊維布帛への表面と裏面に用いられる塗工樹脂は、互に同種の樹脂の組み合わせが好ましい。例えば、塩化ビニルペースト樹脂塗工と塩化ビニルペースト樹脂塗工との組み合わせ、ポリウレタン系樹脂エマルジョン塗工とポリウレタン系樹脂エマルジョン塗工との組み合わせ)、
4).上記3)の被覆層の上に、さらに上記1).のフィルム又はシートを熱ラミネート積層する方法(繊維布帛への塗工樹脂とフィルム又はシートの熱可塑性樹脂とは同種の組み合わせが好ましい。例えば、塩化ビニルペースト樹脂塗工と軟質塩化ビニル系樹脂フィルム貼着との組合せ、ポリウレタン系樹脂エマルジョン塗工とポリウレタン系樹脂フィルム貼着との組合せ)
本発明において、難燃性被覆層に用いる難燃性付与剤としては、リン含有化合物、窒素含有化合物、無機系化合物、臭素系化合物のいずれか1種以上を用いることが好ましく、熱可塑性樹脂100質量部に対し、難燃性付与剤を10〜200質量部、特に30〜100質量部配合することで防炎性を付与することができる。具体的にリン含有化合物としては、赤リン、リン酸エステル系化合物、芳香族リン酸エステル化合物、芳香族リン酸エステル化合物のオリゴマー状縮合体、(金属)リン酸塩、(金属)有機リン酸塩、ポリリン酸アンモニウム、熱硬化樹脂表面被覆ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミンなどが挙げられ、また、窒素含有化合物としては、(イソ)シアヌレート誘導体、(イソ)シアヌル酸誘導体、グアニジン誘導体、尿素誘導体などが用いられ、無機系化合物としては、金属酸化物(三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化モリブデン)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、金属複合酸化物(ジルコニウム−アンチモン複合酸化物)、金属複合水酸化物(ヒドロキシ錫酸亜鉛)などが挙げられ、また、臭素系化合物としては、ビストリブロモフェノキシエタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモフタルイミドを用いることができる。難燃性付与剤の配合量が10質量部未満では、得られる膜材の防炎性が不十分であることがあり、また、それが200質量部を超えると、得られる膜材の加工性と樹脂被膜の摩耗耐久性とが不十分になることがある。
本発明の膜材の、繊維布帛上に形成される難燃性被覆層は、顔料着色されていることが、美観上及び、景観上好ましく、特に白、パステル色などに着色されている膜材は、二次加工で文字や絵柄をプリントする場合の自由度が高く、色映えにも優れる。着色は、公知の無機系顔料、及び有機系顔料から選んで任意に組み合わせ、熱可塑性樹脂に均一分散させることによってカラーバリエーションを充実させることができる。無機系顔料としては例えば、金属酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、クロム酸金属塩、カーボンブラック、スピネル型構造酸化物、ルチル型構造酸化物、アルミニウム粉顔料、ブロンズ粉、ニッケル粉、ステンレス粉、パール顔料などである。本発明においては特に難燃被覆層に隠蔽性を与える目的で、無機系顔料の一部に酸化チタン(TiO2)を使用することが好ましい。本発明に使用する酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタンを使用することが耐候性の観点で好ましく、その粒子径としては好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは平均粒子径が0.2〜0.35μmの酸化チタンが隠蔽性に優れ適している。また、有機系顔料としては例えば、アゾ系顔料、(不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料)、フタロシアニン顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン)、染付けレーキ顔料(酸性染料レーキ顔料、塩基性染料レーキ顔料)、縮合多環系顔料(アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料)、その他ニトロソ顔料、アリザリンレーキ顔料、金属錯塩アゾメチン顔料、アニリン系顔料などである。
本発明の膜材において、その基布の繊維布帛の経糸に短繊維紡績糸条を含み、かつ、緯糸にはマルチフィラメント糸条、及びマルチフィラメント糸条を芯として、その全周が短繊維により被覆されたコアスパン糸条から選ばれた1種以上の糸条を含み、これらの経糸及び緯糸を交織させて得られた繊維布帛が基布として用いられ、その表面または両面に熱可塑性樹脂組成物からなる難燃性被覆層が形成されている。本発明の膜材は、経・緯方向に、特定の応力−伸び挙動を有する防水性積層体であることが好ましい。すなわち本発明の膜材は、JIS L1096に準拠した引張試験による経方向用試験片及び、緯方向用試験片の応力と伸び率との関係曲線(S-Sカーブ)(図1参照)において、経方向用試験片破断応力の1/10の応力における伸び率と、緯方向用試験片の破断応力の1/10の応力における伸び率との差の絶対値が0〜1の範囲内にあることが好ましい。図1において、経方向用試験片又は緯方向用試験片の引張試験において、試験片に付加された応力(stress)を縦軸に示し、それに対応する試験片の伸び率(strain)を横軸にして、両者の関係を示す曲線(S−Sカーブ)を描くと、例えば、図1に示されているカーブが得られる。カーブの点1は、試験片の破断点を示し、点1に対応する応力の値は点2により示される。この破断応力2の1/10の値を縦軸上に点3で示すと、この点3に対応する伸び率は横軸上の点4の値として求めることができる。本発明の膜材において、経方向及び緯方向の伸び率が同値であることが好ましいが、伸び率差の絶対値が1以内であれば、縦方向と横方向の何れが大きくともよい。経方向用試験片と緯方向用試験片の伸び率差の絶対値が1を超えると、得られる膜材の経(長手)方向と緯(幅)方向の伸び率のバランスを良好に保つことが困難となることがあり、テント構造物施工後に展張膜材に寸法弛みを生じることがある。また、一方本発明の膜材は、JIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向用試験片の破断応力の1/10の応力荷重下における24時間後のクリープ歪み率と、緯方向用試験片の破断応力の1/10の応力荷重下における24時間後のクリープ歪み率との差の絶対値が0〜1の範囲内にあることが好ましい。クリープ歪み率は経方向と緯方向とにおいて同値であることが好ましいが、クリープ歪み率差の絶対値が1以内であれば、経方向と緯方向の何れが大きくともよい。経方向用試験片と緯方向用試験片とのクリープ歪み率差の絶対値が1を超えると、得られる膜材の経(長手)方向と緯(幅)方向の伸び率のバランスを良好に保つことが困難となることがあり、テント構造物施工後に展張膜材に寸法弛みを生じることがある。本発明のテント膜材は、その経方向と緯方向との伸び率差の絶対値が0〜1、かつ/もしくは経方向と緯方向とのクリープ歪み率差の絶対値が0〜1であることが好ましい。
本発明の膜材の色相は白やパステル色などの着色相が特に好まれて多いが、これらの色相系にあると屋外展張時に煤塵汚れ、雨筋汚れなどの環境汚れが著しく目立ち、テント膜構造体の外観見栄えを悪くするため、本発明の膜材においてはテント膜材の表面をなす難燃性被覆層上に防汚層を形成することが好ましい。本発明の膜材に形成する防汚層として好ましいものは、下記のとおりである。
1).酸化チタン、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化鉄から選ばれた1種以上の光触媒物質含有層、
2).アクリル系樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上による塗膜層、
3).アクリル系樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上と、シリカ微粒子とを含む塗膜層、
4).最外層に少なくともフッ素系樹脂層が配置されている1層以上のフィルム層である。
防汚層として用いられる光触媒物質含有層(1)は、光触媒物質を10〜70質量%と、金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルを25〜90質量%、またケイ素化合物を1〜20質量%含有する厚さ、0.1〜10μmの塗膜であることが好ましく、塗膜はこれらの化合物を含有する塗工組成物を難燃性被覆層の表面に塗布、乾燥して形成することができる。このとき難燃性被覆層と光触媒物質含有層との間には光触媒物質の活性作用から難燃性被覆層を保護するための中間保護層を設けることが好ましい。光触媒物質としては酸化チタン(TiO2)、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化鉄(Fe2O3)から選ばれた1種以上を使用でき、これらの光触媒物質にはPt、Rh、RuO2、Nb、Cu、Sn、NiOなどの金属及び金属酸化物をドープして光触媒活性を高めることもできる。また光触媒物質は上記光触媒物質を担持する無機系多孔質微粒子であってもよく、光触媒物質を担持する無機系多孔質微粒子としては、シリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイソウ土などを用いることができる。これらの粒子の平均一次粒子径は0.01〜10μm、特に0.05〜5μmであるものが好ましい。光触媒物質を無機系多孔質微粒子に担時させるには、光触媒物質を含有する金属アルコラートによるゾル−ゲル薄膜製造工程を応用した表面処理が好ましい。また金属酸化物ゲル、金属水酸化物ゲルとしては具体的に、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、酸化ニオブゾルなどであり、これらは光触媒物質を塗膜内に固着すると同時に、これらの有する多孔質性によって光触媒物質の分散面積を大きくすることで光触媒活性能を効率化することができる。ケイ素化合物としては、ポリシロキサンが使用でき、ゾ−ゲル法によりアルコキシシラン化合物を加水分解、重縮合して得られるものが好ましい。
なかでも光触媒物質としては酸化チタンを用いることが好ましく、酸化チタンは酸化チタンゾル、酸化チタンゾルのアルカリ中和物、ペルオキソチタン酸などが好ましい。酸化チタンはアナターゼ型とルチル型の何れも使用できるが、アナターゼ型の酸化チタンが光触媒活性の大きさの観点で好ましく、具体的には、平均結晶子径5〜20nmの塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾルなどが使用できる。光触媒含有層中の光触媒の含有量は10〜70質量%であることが好ましく、25〜50質量%であることがより好ましい。光触媒物質の含有量が10質量%未満では防汚性が不十分となり、また含有量が70質量%を越えると中間保護層、または下地難燃性被覆層との密着性を悪くし、さらに防汚層の摩耗強さを悪くするため、得られるテント膜材の防汚性が不十分となる。光触媒物質含有層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1〜5μmである。光触媒物質含有層の厚さが0.1μmよりも少ないと、本発明のテント膜材の防汚性が不十分となり、また10μmを超えると折り曲げにより防汚層に亀裂を生じ易くなる。また光触媒物質含有層には防汚層の摩耗強さ、及び折り曲げ強さを向上させる目的で、シランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)を光触媒物質含有層に対して好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲で併用添加することができ、これによりアルコキシシラン化合物をゾル−ゲル法で加水分解したものを防汚層内部で重縮合させることができる。また光触媒物質含有層と難燃性被覆層との間に設ける中間保護層としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル−シリコーン共重合体樹脂、フルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフルオロオレフィン樹脂とのブレンド物、オルガノシリケート化合物、またはその低縮合物(例えば、多量化度2〜10のテトラメトキシシラン、またはテトラエトキシシラン)の加水分解物(シラノール基含有シラン化合物)による薄膜などが挙げられ、これらには、必要に応じてシリカ、コロイダルシリカなどの親水性微粒子を含むことが、光触媒物質含有層との密着性向上の観点において好ましく、さらに塗膜耐久性を改良するためにシランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)を添加することができる。これらの中間保護層の形成は塗工組成物の塗布、乾燥により行うことができる。
また防汚層には、(2)アクリル系樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上を含む塗膜層(2)を用いてもよく、これらにさらにシリカ微粒子を含む塗膜層(3)を用いることができる。フッ素系樹脂としては有機溶剤に可溶であるフルオロオレフィン共重合体樹脂、またはフルオロオレフィン共重合体樹脂の水分散体が好ましい。また、フルオロオレフィン共重合体樹脂は、硬化剤との併用で架橋部位を生成可能である水酸基を分子構造内に含有するものが好ましい。フルオロオレフィンモノマーとしては、例えば、フッ化ビニル(VF)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン(TrEE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などフッ素原子を構成単位中に1個以上含有するエチレン、プロピレン、及びα−オレフィンなどのオレフィン骨格のモノマーであれば特に限定はない。フルオロオレフィン共重合体樹脂は上記フルオロオレフィンモノマーから選ばれた2種以上を共重合して得られるものであり、これらは薄膜形成の観点から塗料形態であることが好ましく、特にVdFを含有するVdF系共重合体樹脂は有機溶剤への溶解性に優れており、VdF含有量が50〜90モル%である共重合体樹脂が好ましい。具体的に有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂としては、VdF、TFE、CTFE成分を含有する共重合体樹脂が好ましく、これらは、VdF−TFE共重合体樹脂、VdF−CTFE共重合体樹脂、TFE−CTFE共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE共重合体樹脂などである。これらの共重合体樹脂は、VF、TrEE、HFPなどのフルオロオレフィンモノマーをさらに共重合して含むものであっても良い。また有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂は、CF2=CFX(Xは、−H、−F、−CF3)で示されるフルオロオレフィンとビニルモノマーとの共重合体樹脂であることが好ましい。このような塗料型のフッ素系樹脂の市販品としては、商標:ルミフロン(旭硝子(株)製)、商標:セフラルコート(セントラル硝子(株)製)、商標:ザフロン(東亜合成(株)製)、商標:ゼッフル(ダイキン工業(株)製)、商標:フルオネート(大日本インキ工業(株)製)、商標:フローレン(日本合成ゴム(株)製)、商標:カイナー(アトケム社製)などが挙げられる。これらのフルオロオレフィン共重合体樹脂は、共重合ビニル成分中に有する水酸基、カルボキシル基などの反応性基を、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物などの硬化剤(架橋剤)をフルオロオレフィン共重合体樹脂(固形分)に対して、固形分量換算で1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%用いて反応させることで得られる塗膜の耐摩耗性、耐候性などを改善することができる。中でも特にイソシアネート化合物が水酸基との反応性に優れ好ましく、特に脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物が耐候性の観点で好ましい。また有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂としては上記フルオロオレフィンモノマーとアクリルモノマーとの共重合体樹脂であっても良く、得られるフルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂には、フルオロオレフィン成分の合計量として35〜85モル%、特に40〜70モル%を含有することが好ましい。
また、防汚層用アクリル系樹脂は、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18のアクリル酸アルキルエステル類、これらは例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘキシルなどの重合体が挙げられる。また、アルキル基の炭素数が1〜18のメタアクリル酸アルキルエステル類、これらは例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸i−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸i−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸n−ヘキシルなどの重合体が挙げられ、アクリル系樹脂はこれら2種以上のマノマーからなる共重合体樹脂であっても良い。また、上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーと反応性を有する共重合モノマーをアクリル系モノマーと置換して最大30質量%程度まで含んでいてもよく、これらは例えば、エチレン性不飽和カルボン酸類、アクリルアミド化合物類、水酸基含有(メタ)アクリル酸類、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸類、α−オレフィン類、ビニルエーテル類、アルケニル類、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物類などが挙げられる。また、上記アクリル系樹脂はフルオロオレフィン共重合体樹脂とブレンドして用いることができ、アクリル系樹脂のブレンド量(固形分量)は、フルオロオレフィン共重合体樹脂(固形分量)100質量部に対して5〜75質量部であることが好ましく、特に10〜50質量部がより好ましい。特にアクリル系樹脂には、アクリル系樹脂に対し、0.01〜5質量%の紫外線吸収剤、特にアクリル系共重合体樹脂に紫外線吸収剤がグラフトした高分子化合物、アクリル系化合物に紫外線吸収剤がグラフトした重合性化合物をアクリル系樹脂に対し、1〜5質量%含むことが耐候性の観点において好ましい。
防汚層を形成するアクリル系樹脂、またはフッ素系樹脂(フルオロオレフィン共重合体樹脂)、またはフッ素系樹脂(フルオロオレフィン共重合体樹脂)とアクリル系樹脂とのブレンド物にはシリカ微粒子を含むことが雨筋汚れ抑制の観点において好ましく、特にフッ素系樹脂、またはフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド物のような疎水性を示す樹脂系に対し、シリカ微粒子を配合することにより、その表面を親水性に改良することができ、これらは雨筋汚れ抑制に効果的である。雨筋汚れ抑制効果はフッ素系樹脂にシリカ微粒子を配合したものが最も好ましいが、テント膜材の重ね合わせ接合、特に高周波融着、熱風融着などの2次加工性においては、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド物にシリカ微粒子を配合したものが最も好ましい。フッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド比は、フッ素系樹脂100質量部に対してアクリル系樹脂が5〜75質量部、特に10〜50質量部である。またシリカ(SiO2)微粒子は結晶質の天然シリカとは異なる、乾式法により合成された無水シリカ、湿式法により合成された含水シリカなどの合成シリカであり、何れも非晶質シリカである。特に表面にシラノール基(Si−OH基)数を多く有する湿式シリカが親水性付与効果に優れている。合成シリカは平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜20μmであることが好ましく、特に2〜10μmであることがより好ましい。またBET比表面積が40〜400m2/gであるシリカが親水性付与効果に優れ好ましい。本発明の防汚層は親水性が大きくなる程、雨筋汚れ抑制に効果的となる。シリカ微粒子の配合量は樹脂固形分100質量部に対し、10〜200質量部であることが好ましく、特に30〜100質量部であることがより好ましい。シリカ微粒子の配合量が10質量部未満では十分な雨筋汚れ抑制に効果が得られず、また配合量が200質量部を超えると、防汚層の摩耗強度が低くなり、テント膜材の耐久性が不十分となることがある。またコロイダルシリカを使用することもでき、これらはケイ酸ナトリウム溶液を陽イオン交換することによって得られる水分散媒のシリカゾル、有機系溶剤を分散媒とするBET平均粒子径10〜20nmのシリカゾルである。
防汚層の形成は、上記アクリル系樹脂、またはフッ素系樹脂、またはフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド物による塗工剤を防水性積層体の難燃性被覆層上に均一塗布可能なコーティング方式が望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、スクリーンコート法、フローコート法、スプレーコートなどが挙げられ、防汚層厚さは0.1〜50μmであることが好ましい。防汚層の厚さが0.1μmよりも少ないと、得られるテント膜材の防汚効果が不十分で長続きしないことがあり、また、防汚層の厚さが50μmを超えて厚くしても塗工回数が増えるばかりで、それに見合う防汚効果が得られるとは限らない。また防汚層が形成されたテント膜材の裏面には、アクリル系樹脂、またはフッ素系樹脂、またはフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド物による裏面塗工層が形成されていることがテント膜材のラップ接合の熱融着性の観点において好ましく、裏面塗工層は防汚層と同種の樹脂系の組み合わせが特に好ましい。
また防汚層には、最外層に少なくともフッ素系樹脂層を配置する1層以上のフィルム(4)を積層して用いることができる。これらは具体的に、フッ素系樹脂フィルム、フッ素系樹脂/アクリル系樹脂からなる2層フィルム、フッ素系樹脂/アクリル系樹脂/ポリ塩化ビニル樹脂からなる3層フィルムなどである。フッ素系樹脂としてはポリフッ化ビニル(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリトリフルオロエチレン(PTrEE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)などフッ素原子を構成単位中に1個以上含有するエチレン、プロピレン、及びα−オレフィンなどのオレフィン骨格のモノマーであれば特に限定はなく、これらは共重合体樹脂であってもよい。フィルムの厚さは10〜500μmであることが好ましく、特に50〜150μmがより好ましい。特に多層フィルムにおいては最外層フッ素系樹脂層の厚さが3〜50μmであることが好ましく、特に5〜25μmであればより好ましい。これらのフィルムは透明であっても着色されていても良く、積層は接着剤を用いて、または接着を用いずに熱融着によってテント膜材の難燃性被覆層上に貼着することができる。また防汚層が形成されたテント膜材の裏面には、フッ素系樹脂、またはフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド物による裏面塗工層が形成されていることがテント膜材のラップ接合の熱融着性の観点において好ましく、裏面塗工層は防汚層と同種の樹脂系の組み合わせが特に好ましい。
本発明のテント膜材の接合(ラップ接合)は、高周波融着、超音波融着、熱融着などの接着方法によって実施できる。高周波融着は高周波ウエルダー機を用いて2ヶ所の電極(一方の電極は、ウエルドバーである)間に膜材を重ね置き、ウエルドバーで加圧しながら電極に高周波(1〜200MHz)で発振する電位差を印加することで膜材の被覆層を分子摩擦熱で溶融させて接着するものである。超音波融着法は超音波振動子から発生する超音波エネルギー(16〜30KHz)の振幅を増幅させ、膜材の境界面に発生する摩擦熱を利用して融着するものである。熱融着はヒーターの電気制御によって20〜700℃に無段階設定された熱風をノズルを通じて膜材間に吹き込み膜材の表面を瞬時に溶融させて、直後に膜材同士を圧着して接着する方法である。この熱融着方法は連続融着が可能であるため、大型シート、大型膜材などの接合に適している。またヒーター内蔵加熱された金型(こて)を用いて、膜材の被覆層の溶融温度以上で圧着しながら接着する熱板融着法などによっても接合が可能である。本発明の膜材の接合において、特に防汚層が光触媒物質を含有している場合、これらの接合は防汚層が形成されていない部分で行うことができる。
[実施例]
次ぎに実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
本発明の実施例及び比較例に用いた試験方法は下記の通りである。
(1)巾保持率
膜材の巾保持率は下記式(1)から求めた。
加工上がり巾(両端部スリット前巾)÷基布巾×100…式(1)
(2)質量
膜材の質量をJIS L1096に従って測定した。
(3)厚み
膜材の厚みをJIS L1096に従って測定した。
(4)引張強さ
膜材から糸目に沿って長手方向30cm、巾方向3cmの短冊(経方向試料)、長手方向3cm、巾方向30cmの短冊(緯方向試料)を採取し、JIS L1096ストリップ法により破断強さを測定した。
(5)引張試験
膜材から糸目に沿って長手方向30cm、巾方向3cmの短冊(経方向試料)、長手方向3cm、巾方向30cmの短冊(緯方向試料)を採取し、JIS L1096ストリップ法により引張試験を行い、応力−伸び曲線(S−Sカーブ:1図)得た。この応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向試料及び緯方向試料各々の破断強さ(4)に対して1/10応力における経方向と緯方向との伸び率を測定した。(試料巾:30mm、試料つかみ間距離:200mm、引張速度:50mm/min、20℃)
また、破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との伸び率の差の絶対値は下記(2)式より求めた。
(|経方向の伸び率−緯方向の伸び率|)…(2)式
(6)引張クリープ試験
膜材から糸目に沿って長手方向30cm、巾方向3cmの短冊(経方向試料)、長手方向3cm、巾方向30cmの短冊(緯方向試料)を採取し、経方向試料及び緯方向試料の引張クリープ試験を、JIS K7115に準拠して行い、歪みゲージを用いて破断強さ(4)に対して1/10荷重下における20℃、24時間後クリープたわみを測定し、24時間後クリープ歪み率を計算した。(試料巾:30mm、試料つかみ間距離:200mm、試験荷重:破断強さの1/10荷重、たわみの測定:つかみ間、クリープ歪み(%)=「クリープたわみ/200」×100)
また、破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との歪み率の差の絶対値は下記(3)式より求めた。
(|経方向の歪み率−緯方向の歪み率|)…(3)式
(7)動的耐久性試験(繰り返し屈曲試験)図2参照
膜材から長さ5cm×幅4cmの試料1を採取し、試料1の幅方向に直角に折り目6に沿って2つ折りにして、これを「Y.S.S.式繰り返し永久疲労試験機」((株)安田精機製作所製)装着し、図2に示されている折り目7により形状(A)(屈曲形状)及び(B)(展張形状)の間を往復するように屈曲させて動的耐久性試験を実施した。試験後、ルーペを用いて試料1の外観の異常の有無を観察し、動的耐久性を下記のように評価判定した。
屈曲回数:50000回 試験雰囲気温度: 0℃、20℃
○:異常を認めない
△:樹脂被覆層に亀裂が認められる
×:樹脂被覆層の剥離と亀裂とが認められる
(8)難燃性
膜材の難燃性をJIS A 1322に従って測定し、防炎1級〜3級を判定した。
(9)防汚性
傾斜角30度の設置試料について、初期の試料を基準とし、屋外曝露6ケ月後の試料表面の色差ΔE値を測定し、防汚性を下記のように判定した。
ΔE= 〜10 : ○ : 汚れが認められない
〜30 : △ : 汚れが認められる
30〜 : × : 顕著な汚れが認められる
基布として、経糸にポリエステル短繊維紡績糸295.3dtex(20番手)双糸を配置し、緯糸にポリエステルマルチフィラメント糸条555dtex(500d)を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が38本/25.4mmの長尺平織物を用いた。基布の坪量は220g/m2であった。この基布を、ペースト塩化ビニル樹脂を含む下記配合1の難燃性樹脂組成物の溶剤希釈液バス中に浸漬して、基布に樹脂液を含浸し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間乾燥後、185℃で1分間熱処理ゲル化させ、さらにこれに鏡面エンボス処理を施した。これにより基布に難燃性樹脂組成物が330g/m2付着して、基布の両面に難燃性被覆層が形成された合計質量550g/m2の防水性積層体が得られた。この連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し95%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した結果を表1に示す。
<配合1> 難燃性樹脂組成
ペースト塩化ビニル樹脂(重合度=1700) 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 20質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系) 0.5質量部
無機系顔料(TiO2) 5質量部
トルエン(希釈溶剤) 20質量部
実施例1と同一の基布を用い、実施例1と同様にして防水性積層体を作製した。但し、難燃性被覆層の形成工程を下記のように変更した。基布を、ペースト塩化ビニル樹脂を含む下記配合2の下塗り樹脂組成物の溶剤希釈液バス中に浸漬して基布に樹脂液を含浸し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間乾燥後、185℃で1分間熱処理ゲル化させて、基布に難燃性樹脂組成物付着量100g/m2の下塗り層を形成した。次に、ストレート塩化ビニル樹脂を含む、下記配合3の難燃性樹脂組成物からなるフィルム(0.12mm厚)をカレンダー成形で製造し、このフィルムを前記下塗り層含浸基布の両面に160℃で熱貼着して、片面当り150g/m2の難燃性被覆層を形成し、合計質量620g/m2の防水性積層体を得た。この2工程の連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布幅に対し93%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した結果を表1に示す。
<配合2>下塗り樹脂組成物
ペースト塩化ビニル樹脂(重合度=1700) 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系) 0.5質量部
無機系顔料(TiO2) 5質量部
トルエン(希釈溶剤) 20質量部
<配合3>難燃性樹脂組成
ストレート塩化ビニル樹脂(重合度=1300) 100質量部
DOP(可塑剤) 60質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 20質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
Zn−St系滑剤 1質量部
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系) 0.5質量部
無機系顔料(TiO2) 5質量部
実施例1と同様にして防水性積層体を作製した。但し、基布を下記のように変更した。基布として、経糸にポリエステル短繊維紡績糸295.3dtex(20番手)双糸を配置し、緯糸に、ポリエステルマルチフィラメント糸条555.5dtex(500d)を芯として、その全周を1.56dtex(1.4d)、繊維長さ100mmのポリエステル短繊維により、重量比が65/35になるように被覆してなるコアスパン糸条を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が38本/25.4mmで、基布の質量が250g/m2の長尺平織物を使用し、合計質量570g/m2 の防水性積層体を得た。この連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅の95%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した結果を表1に示す。
実施例1〜3で得たテント構造物用防水性積層膜材は、表1に示されているようにJIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との伸び率の差の絶対値が全て1以下であり、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向との破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向との20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が全て1以下を満足するものであった。このため、膜材の連続加工において、巾方向の張力がフリー(解放)状態であったにも拘わらず、実施例1〜3で得たテント構造物用防水性積層膜材は、経・緯方向のクリープバランスに優れ、テント構造物の施工後の寸法弛みが極めて少なく、耐はためき性と相関性の高い、繰り返し屈曲試験にも優れていた。また実施例1〜3で得たテント構造物用膜材は、高周波ウエルダー、熱風融着性にも優れていた。
実施例1と同様にして防水性積層体を製造した。但し、難燃性被覆層の上に防汚層を形成した。防汚層は難燃性被覆層の表面に、下記配合4に示す組成の接着・保護層処理液をグラビヤコーターで15g/m2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、1.5g/m2の接着・保護層を形成し、さらに接着・保護層上に、下記配合5に示す組成の光触媒物質含有層形成用塗布液をグラビヤコーターで15g/m2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、1.5g/m2の光触媒物質による防汚層を形成し、合計質量550g/m2の防水性積層体を得た。この連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し95%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した。結果を表1に示す。
<配合4>接着・保護層処理液組成
シリコン含有量3mol%のアクリルシリコン樹脂を8質量%(固形分)
含有するエタノール−酢 酸エチル(50/50質量比)溶液 100質量部
ポリシロキサンとしてメチルシリケートMS51(コルコート(株))
の20%エタノール溶液 8質量部
シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシ
ラン 1質量部
<配合5>光触媒防汚層処理液組成
酸化チタン含有量10質量%に相当する硝酸酸性酸化チタンゾルを分散
させた水−エタノール(50/50重量比)溶液 50質量部
酸化珪素含有量10重量%に相当する硝酸酸性シリカゾルを分散させた
水−エタノール(50/50重量比)溶液 50質量部
実施例4と同様にして防水性積層体を製造した。但し、難燃性被覆層上に形成する防汚層を変更した。防汚層は難燃性被覆層の表面に、アクリル系樹脂として下記配合6の樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/m2のアクリル系樹脂による防汚層を形成し、合計質量560g/m2の防水性積層体を得た。この連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し95%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した。結果を表1に示す。
<配合6> アクリル系樹脂組成
アクリル系樹脂 20質量部
(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレン ペレットHBS001
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L)
〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン〕
とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂 1質量部
希釈溶剤(トルエン−MEK 50/50重量比) 80質量部
実施例4と同様にして防水性積層体を製造した。但し、難燃性被覆層上に形成する防汚層を下記のように変更した。防汚層は難燃性被覆層の上に、フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂)として下記配合7の樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/m2のフッ素系樹脂による防汚層を形成し、さらに裏面難燃性被覆層には配合6のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、3g/m2のアクリル系樹脂による裏面処理層を形成し、合計質量558g/m2の防水性積層体を得た。この連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し95%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した結果を表2に示す。
<配合7> フッ素系樹脂組成
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂 20質量部
(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201)
希釈溶剤(MEK) 80質量部
実施例4と同様にして防水性積層体を製造した。但し、難燃性被覆層上に形成する防汚層を下記のように変更した。防汚層の形成のために、表面側難燃性被覆層の上に、シリカ微粒子を25質量%含有する、フッ素系樹脂とアクリル樹脂とのブレンド(フッ素系樹脂:アクリル系樹脂比は3:1)として下記配合8の樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して、5g/m2のシリカ微粒子を含有する防汚層を形成した。さらに裏面側の難燃性被覆層上には、下記配合6のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、3g/m2のアクリル系樹脂による裏面処理層を形成した。合計質量553g/m2の防水性積層体が得られた。この連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し95%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した。結果を表2に示す。
<配合8> シリカ微粒子を含有するフッ素系樹脂とアクリル系樹脂のブレンド組成
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレン ペレット
HBS001) 4質量部
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合
体樹脂、(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー720
1) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635
L)〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフ
ェノン〕とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂 1質量部
シリカ微粒子(湿式法非晶質シリカ) 4質量部
(日本シリカ工業(株)製、商標:ニップシールE−220、平均粒子径
2μm、BET比表面積130m2/g)希釈溶剤(トルエン−MEK 5
0/50質量比) 80質量部
実施例4と同様にして防水性積層体を製造した。但し、難燃性被覆層上に形成する防汚層を下記のように変更した。防汚層の形成のために、表面側難燃被覆層の上に、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)樹脂/アクリル系樹脂構成の多層フィルムとして呉羽化学(株)製、品番:KFCフィルムST−50Y、厚さ50μmを160℃で熱ラミネートして、フッ素系樹脂層が最外層に配置された50g/m2のフィルム防汚層を形成した。さらに裏面側難燃性被覆層上に、配合6のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、3g/m2のアクリル系樹脂による裏面処理層を形成した。合計質量603g/m2の防水性積層体が得られた。この連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し93%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した。結果を表2に示す。
実施例4〜8で得たテント構造物用膜材は、表1及び表2に示されているように、その表面に防汚層が設ける工程を経ており、加工の長手方向に余分な張力履歴が掛かっているにも係わらず、JIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との伸び率の差の絶対値が全て1以下であり、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向との破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向との20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が全て1以下を満足するものであった。このため、実施例4〜8で得たテント構造物用膜材は、膜材の連続加工で、巾方向の張力がフリー(解放)状態であったにも係わらず、経・緯方向のクリープバランスに優れ、テント構造物施工後の寸法弛みが極めて少なく、耐はためき性と相関性の高い、繰り返し屈曲試験にも優れていた。またこれらのテント構造物用膜材には、その表面に特定の防汚層を有するため、外観が長期間に渡り美麗に保たれ、環境汚れが付着しても、その除去が容易なものであった。これらの防汚層は何れも実施例2及び3のテント構造物用膜材にも付加することが可能である。また実施例5〜8で得られたテント構造物用膜材は、高周波ウエルダー、熱風融着性にも優れていた。
実施例1と同様にして防水性積層体を製造した。但し、難燃性被覆層を下記のように変更した。難燃性被覆層は、難燃性付与剤を配合したウレタン系樹脂として、下記配合9のエマルジョン組成物バス中に基布を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、これを100℃で1分間乾燥し、140℃で1分間熱処理する工程を2回行い、最後に鏡面エンボス処理を行い、基布に難燃性樹脂組成物が350g/m2付着し、基布の両面に難燃性被覆層が形成された防水性積層体を得た。次ぎにこの防水性積層体の表面には配合8(実施例7)の樹脂組成物の溶剤希釈液を実施例7と同様の方法で塗布し、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド物(シリカ微粒子含有)からなる5g/m2の防汚層を形成し、さらに裏面には配合6(実施例5)の樹脂組成物の溶剤希釈液を実施例7と同様の方法で塗布し、3g/m2のアクリル系樹脂による裏面処理層を形成し、合計質量578g/m2の防水性積層体を得た。このとき、この樹脂固形分合計量に対するメラミンシアヌレート難燃性付与剤、及びカルボジイミド系架橋剤の添加量は、それぞれ40質量%、及び10質量%であった。この連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し95%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した。結果を表2に示す。
<配合9>エマルジョン樹脂組成物
ウレタン系樹脂(ポリカーボネート系無黄変ポリウレタン樹脂、固形分:
30質量%、旭電化工業(株)製、商標:アデカボンタイターHUX−3
86) 167質量部
メラミンシアヌレート(難燃性付与剤、日産化学(株)製、品番MC-6
40) 20質量部
トリイソプロピルベンゼンカルボジイミド
(架橋剤、日清紡(株)製、商標:カルボジライト) 5質量部
顔料(大日本インキ化学工業(株)製、商標:リュウダイ-W69) 3質量部
紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標:チヌ
ビン765) 0.5質量部
基布として経糸にポリエステル短繊維紡績糸295.3dtex(20番手)双糸を配置し、緯糸にポリエステルマルチフィラメント糸条555.5dtex(500d)を芯として、その全周を1.56dtex(1.4d)、繊維長さ:100mmのポリエステル短繊維で、重量比が65/35になるように被覆してなるコアスパン糸条を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が38本/25.4mmで、基布の質量が250g/m2の長尺平織物(実施例3と同一の基布)を用い、実施例2と同様の構成の防水性積層体を得た。但し、下塗り層は下記配合10の難燃性付与剤を配合したポリエステル系樹脂エマルジョン組成物を用いて形成し、また難燃性被覆層は下記配合11の難燃性付与剤を配合したポリエステル系エラストマー組成物を用いて形成した。下塗り層は下記配合10のエマルジョン組成物バス中に基布を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、これを100℃で1分間乾燥し、140℃で1分間熱処理し、さらに鏡面エンボス処理を行い、基布に対し75g/m2付着量で形成した。次ぎに、ポリエステルエラストマー樹脂組成物による、下記配合11の難燃性樹脂組成物からなるフィルム(0.12mm厚)をカレンダー成形で製造し、このフィルムを前記下塗り層含浸基布の片面に165℃で熱貼着して150g/m2の難燃性被覆層を形成した。次ぎにこの防水性積層体の表面には配合4(実施例4)の接着・保護層処理液を実施例4と同様の方法で塗布して1.5g/m2の接着・保護層を形成し、さらに接着・保護層上には、配合5(実施例4)の光触媒物質含有層形成用塗布液を実施例4と同様の方法で塗布して、1.5g/m2の光触媒物質による防汚層を形成した。合計質量478g/m2の防水性積層体が得られた。この3工程の連続加工において基布の長手方向の張力は基布巾1m当たり300Nの緊張状態にあったが、巾方向の張力はフリー(解放)状態であった。また、この防水性積層体の両縁端部間のスリット前の幅は、基布幅に対し93%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した。結果を表2に示す。
<配合10>下塗り層用エマルジョン樹脂組成物
ポリエステル系樹脂(固形分:30質量%、
東洋紡績(株)製、商標:バイロナールMD1930) 167質量部
メラミンシアヌレート(難燃性付与剤、日産化学(株)製、品番MC-6
40) 20質量部
トリイソプロピルベンゼンカルボジイミド
(架橋剤、日清紡(株)製、商標:カルボジライト) 5質量部
顔料(大日本インキ化学工業(株)製、商標:リュウダイホワイトW69) 3質量部
紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標:チヌ
ビン765) 0.5質量部
<配合11>難燃性被覆層用ポリエステルエラストマー組成物
ポリエステルエラストマー 100質量部
(東レ・デュポン(株)製、商標:ハイトレル3548W:ポリエーテル
・エステル:硬度85A)メラミンシアヌレート(難燃性付与剤、日産化
学(株)製、品番MC-640) 35質量部
酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標:イルガ
ノックスE201、ビタミンE系:) 0.2質量部
滑剤(クラリアントジャパン(株)製、商標:LicowaxE、モンタ
ン酸エステル) 0.2質量部
酸化チタン(石原産業(株)製、商標:タイペークCR、ルチル型) 5質量部
実施例9、10で得られたテント構造物用防水性積層膜材は、難燃性被覆層がそれぞれ、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系エラストマーなどの非塩ビ樹脂によって構成され、ポリ塩化ビニル樹脂を使わない設計の膜材であるが、塩ビを用いた膜材と同様に、防炎2級に適合する防炎性能を有し、またJIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との伸び率の差の絶対値が全て1以下であり、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向との破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向との20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が全て1以下を満足するものであるため、膜材の連続加工で巾方向の張力がフリー(解放)状態であったにも係わらず、実施例9、10で得たテント構造物用膜材は、縦・横方向のクリープバランスに優れ、テント構造物施工後の寸法弛みが極めて少なく、耐はためき性と相関性の高い、繰り返し屈曲試験にも優れていた。またこれらのテント構造物用膜材には、その表面に特定の防汚層を有しているため、外観が長期間に渡り美麗に保たれ、環境汚れが付着しても、その除去が容易なものであった。また実施例9で得たテント構造物用膜材は、高周波ウエルダー、熱風融着性にも優れていた。
基布を下記のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして防水性積層体を製造し得た。基布として、経糸、緯糸ともにポリエステル短繊維紡績糸295.3dtex(20番手)双糸を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が48本/25.4mmであり、質量230g/m2の長尺平織物を使用し、合計質量560g/m2の膜材を作製した。得られた膜材の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し95%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した。結果を表3に示す。比較例1の膜材は、実施例1と同じ加工方法、及び基布巾1m当たり300Nの張力(同じ巾保持率)にも係わらず、JIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との伸び率の差の絶対値が1を超え、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向との破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向との20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が1を超え、経方向と緯方向のクリープ性のバランスが悪いものであり、このため、テント構造物として経時的な膜材弛みを発生し易い膜材であった。
〔比較例2〕
基布を下記のように変更したこと以外は実施例2と同様にして防水性積層体を製造した。基布として、経糸、緯糸ともポリエステル短繊維紡績糸295.3dtex(20番手)双糸を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が48本/25.4mmで、質量230g/m2のある長尺平織物を使用し、合計質量630g/m2の膜材を作製した。得られた膜材の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し93%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した結果を表3に示す。比較例2の膜材は、実施例2と同じ加工方法、及び基布巾1m当たり300Nの張力(同じ巾保持率)にも係わらず、JIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との伸び率の差の絶対値が1を超え、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向との破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向との20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が1を超え、経方向と緯方向におけるクリープ値のバランスが悪いものであり、このため、テント構造物として経時的な膜材弛みを発生し易い膜材であった。
〔比較例3〕
基布を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして防水性積層体を製造した。基布として、経糸、緯糸ともポリエステルマルチフィラメント糸555dtex(500d)を配置し、経糸打ち込み密度が34本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が36本/25.4mmであり、質量145g/m2の長尺平織物を使用し、合計質量640g/m2の膜材を作製した。得られた膜材の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し93%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した。結果を表3に示す。比較例3の膜材は、実施例2と同じ加工方法、及び基布巾1m当たり300Nの張力(同じ巾保持率)にも係わらず、JIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との伸び率の差の絶対値が1を超え、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向との破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向との20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が1を超え、経方向と緯方向のクリープのバランスが悪いものであり、このため、テント構造物として経時的な膜材弛みを発生し易い膜材であり、さらに耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験の成績も不良であった。
〔比較例4〕
基布を下記のように変更したこと以外は、実施例3と同様にして防水性積層体を製造した。基布として、経糸、緯糸ともポリエステルマルチフィラメント糸555.5dtex(500d)を芯として、その全周を1.56dtex(1.4d)繊維長さ100mmのポリエステル短繊維紡績糸で重量比が65/35になるように被覆してなるカバリング条糸を配置し、経糸打ち込み密度が34本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が38本/25.4mmで、質量180g/m2の長尺平織物を使用し、合計質量570g/m2の膜材を作製した。得られた膜材の両縁端部間のスリット前の幅は、基布の幅に対し95%であった。スリット後の防水性積層体をテント構造物用膜材に用い各種試験に供した。結果を表3に示す。比較例4の膜材は、実施例3と同じ加工方法、及び基布巾1m当たり300Nの張力(同じ巾保持率)にも係わらず、JIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との伸び率の差の絶対値が1を超え、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向との破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向との20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が1を超え、緯方向の伸びが大きく、経方向と緯方向のクリープのバランスが悪く、テント構造物として経時的な膜材弛みを発生し易い膜材であった。
〔比較例5〕
市販のテント構造物用膜材「フェラーリ社、プレコントラント 702 フルオトップ」を各種試験に供した。結果を表3に示す。「フェラーリ社、プレコントラント 702 フルオトップ」シートは、経糸、及び緯糸にポリエステルマルチフィラメント糸条を配置した繊維布帛を基布に用い、その表面に軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を、経方向・緯方向の緊張下でコーティングして樹脂被覆した膜材であり、従って経・緯方向のクリープのバランスには優れているが、繊維布帛に経方向・緯方向の緊張を掛けた状態でコーティングを行っているためフィラメント糸条内部への樹脂含浸が不十分で、糸条の表面付近にのみ樹脂が固着されず、このため膜材の動的耐久性(繰り返し屈曲性)は、本発明のテント用膜材に較べて劣り、比較例5の膜材では風によるはためきなどで、本発明のテント用膜材よりも早い段階で膜材に樹脂亀裂や樹脂剥離などを発生することが予測されるものであった。
本発明のテント構造物用防水性積層膜材を、日除け、雨除け空間を構築する膜構造物の膜材として用いることにより、従来これらのテント膜材に生じていた、経時的な膜材弛みによる膜構造物の外観不良、及びしわ部分への煤塵汚れ蓄積を防ことができ、しかも風による耐はためき性にも優れているので、長期間施工当初の景観を維持することが可能である。また、本発明のテント構造物用防水性積層膜材は経方向・緯方向のクリープバランスに優れているので、これらの膜構造物の採寸設計も容易であるため、建造物骨組構造に固定して、その外周を覆い、室内空間を構築する大型ドーム、大型〜小型パビリオン、シート倉庫などの膜構造物、及び、主にその天蓋部分を覆い、スタジアム雨除け、日除けモニュメントなどの環境空間を構築するための膜材料として使用することができる。
本発明のテント用膜材の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)の一例を示す説明図。
本発明のテント用膜材の動的耐久性試験(繰り返し屈曲試験)の一例を示す説明図。
符号の説明
1…破断点
2…引張破断強さ
3…破断強さの1/10応力
4…破断強さの1/10応力における伸び率
5…膜体試験片
6…試験片調製折り目
7…屈曲試験用折り目
(A)…屈曲形状
(B)…展張形状