JP7436822B2 - ホットスタンプ部品用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ホットスタンプ部品用鋼板およびその製造方法に関する。
近年、使用する鋼材の高強度化を図ることにより自動車の重量を低減する努力が、自動車の燃費向上のために、強力に行われている。その結果、自動車に広く利用されている薄鋼板を冷間プレス成形して製造される部品(以下、「プレス成形部品」という)の製造において、複雑な形状を有するプレス成形部品を製造することが、鋼板の強度の増加に伴うプレス成形性の低下により、困難になっている。
具体的には、鋼板の延性の低下に起因して、プレス成形部品における加工度が高い部位で破断したり、いわゆるスプリングバックおよび壁反りが大きくなってプレス成形部品の寸法精度が低下するといった問題が多発している。特に780MPa以上の引張強度を有する高強度鋼板からなるプレス成形部品を製造することは容易なことではない。
冷間プレス成形ではなくロール成形によれば、高強度鋼板からなるロール成形部品を容易に製造することができる。しかし、ロール成形では、長手方向へ一定の横断面を有するロール成形部品しか製造できず、複雑な横断面形状を有するプレス成形部品を製造することはできない。
これに対し、加熱した鋼板をプレス成形するホットスタンプ法(熱間プレス成形法ともいう)では、成形時の高温の鋼板が軟質かつ高延性になっているため、複雑な形状を有するプレス成形部品を、破断およびスプリングバックさらには壁反りといった成形不良を生じることなく、寸法精度よく成形できる。
その上、ホットスタンプ法によれば、鋼板をオーステナイト単相域の温度に加熱してからプレス成形し、プレス成形に用いる金型の内部で成形品を急速に冷却して焼入れることによって、鋼板の成形と同時に、マルテンサイト変態によるプレス成形部品の高強度化を図ることもできる。このように、ホットスタンプ法は、高強度のプレス成形部品の製造に適した優れた技術である。なお、以降の説明では、ホットスタンプ法により製造されたプレス成形部品を「ホットスタンプ部品」という。
現在、ホットスタンプ部品の一例として、比較的単純な形状を有するバンパーレインフォースメントが知られている。引張強度が1.5GPa級のホットスタンプ部品は、既に、バンパーレインフォースメントなど、例えばBピラーレインフォースメントといったボディシェルの構造部材(骨格部材)に広く用いられている。
近年、より高強度、特に引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品を製造することが検討されており、例えばBピラーレインフォースメントといった、衝突の際に衝撃荷重を主に負担することになるボディシェルの構造部材(骨格部材)にも、引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品を用いることが検討されている。
ところが、ホットスタンプ部品の引張強度が1.8GPa以上という超高強度に達すると、ホットスタンプ部品の変形能が不足してホットスタンプ部品の耐破壊特性(例えば曲げ性)が低下し、衝突時に、ホットスタンプ部品の吸収エネルギーが低下したり、ホットスタンプ部品自体が破断したりするおそれが高まる。このため、引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品として実用化されているのは、1.8GPa級のバンパーレインフォースメントだけであり、実際、変形能の高い引張強さ1.8GPa以上のホットスタンプ部品を製造した例はこれまで報告されていない。
このため、引張強さが1.8GPa以上のホットスタンプ部品を製造するためには、ホットスタンプ部品に、さらに焼戻し処理を施して変形能を高める必要がある。しかし、ホットスタンプ工程に焼戻し工程を追加することは、作業効率の低下および設備費の上昇により、ホットスタンプ部品の製造コストが著しく上昇する。
特許文献1には、C:0.25~0.45%(本明細書では化学組成または濃度に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する)、Mn+Cr:0.5~3.0%、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種または2種以上を含有する鋼板をAc点以上(Ac点+100℃)以下の温度域に5分間以下保持した後にプレス成形を行い、次いでMs点までの冷却速度が上部臨界冷却速度以上で、かつMs点から150℃までの平均冷却速度が10~500℃/秒で、冷却を行うことによって、旧オーステナイト平均粒径が10μm以下である自動焼戻しマルテンサイトにより構成される鋼組織を有し、焼入れままで靱性に優れた引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品と、このホットスタンプ部品用鋼板が開示されている。
特許文献2,3には、C:0.26~0.45%、Mn+Cr:0.5~3.0%、Nb:0.02~1.0%、3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5を満たす量のTi、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種又は2種以上を含有する化学組成を有する鋼板をAc点以上(Ac点+100℃)以下の温度域に5分間以下保持した後にプレス成形を行い、次いでMs点までの冷却速度が上部臨界冷却速度以上で、かつMs点から150℃までの平均冷却速度が10~500℃/秒で、冷却を行うことによって、旧オーステナイト粒径10μm以下である自動焼戻しマルテンサイトを含む微細組織を有し、焼入れままで靱性に優れた引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品が開示されている。
特許文献4には、C:0.25~0.40%、Si:0.05%以上0.5%未満、Mn:1.0~1.7%、P:0.020%以下、S:0.0010%未満、Al:0.002~0.06%、N:0.006%以下、Cr:0.02~0.6%、B:0.00010~0.0040%、Ti:0.005~0.04%、Nb:0.03~0.12%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、最大長さ10μm以上の介在物および析出物の数密度が100個/mm以下であるとともに、ホットスタンプ後の旧オーステナイト粒径が10μm以下である金属組織を有する鋼板に対しホットスタンプを行うことにより得られる、1.8~2.5GPaの引張強度を有し、かつ優れた靱性を有するホットスタンプ鋼板部材が開示されている。
特開2006-152427号公報 国際公開第2007/129676号 特開2012-180594号公報 特開2017-43825号公報
特許文献1~4により開示された発明によれば、確かに、焼入れままで引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品が提供される。
しかし、上述したように、ボディシェルの構造部材(骨格部材)にも引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品を用いるためには、ホットスタンプ部品には、高強度化(引張強度1.8GPa以上)のみならず、さらなる変形能の改善による耐破壊特性(例えば曲げ性)の向上が必要である。このような観点から、特許文献1~4により開示されたホットスタンプ部品の変形能および耐破壊特性には、まだ改善の余地がある。
特に、引張強度が1.5GPa以上のホットスタンプ部品においても、さらなる変形能の改善による耐破壊特性を向上することにより板厚の低減および軽量化を図ることができる。
本発明は、従来の技術が有するこの課題に鑑みてなされたものであり、焼入れ後の焼戻しを行わずに、変形能と衝突時の耐破壊特性に優れ、かつ引張強さが例えば1.5GPa以上のホットスタンプ部品を製造する技術を提供することを目的とする。
一般的に、ホットスタンプ部品の引張強度が高くなると、ホットスタンプ部品の曲げ性の確保が難しくなる。本発明者らは、衝突時におけるホットスタンプ部品の耐破壊特性の改善に着目して鋭意研究を重ねた結果、以下に列記の知見A~Eを得て、本発明を完成した。
(A)ホットスタンプ部品用鋼板について三点曲げを行ったところ、その割れ部には延伸したMnSが存在し、このMnSに起因したディンプルが破面に多数確認された。すなわち、延伸したMnSが破壊の起点になる。このため、ホットスタンプ部品用鋼板では延伸したMnSを低減する必要がある。
(B)ホットスタンプ部品を確認したところ、ホットスタンプ法ではホットスタンプ部品用鋼板をオーステナイト単相域に十分に加熱するにも拘らず、低強度化および低変形能化を引き起こす未溶解の微細なセメンタイトが多数存在した。このため、セメンタイトの溶解を促進する必要がある。
(C)変形能の低下を回避するためにNbを添加すると、Nb系炭化物が生成してボイドの生成の起点になる。ボイドの生成を抑制するためには、Nb含有量を適正化する必要がある。
(D)すなわち、ホットスタンプ部品用鋼板およびホットスタンプ部品の製造過程において、鋼中の介在物および炭化物等の、衝突時のホットスタンプ部品の破壊の起点となる不純物をできるだけ低減することにより、ホットスタンプ部品の耐破壊特性を大きく改善することができ、これにより、例えばボディシェルの構造部材(骨格部材)にも用いることできるホットスタンプ部品を提供できる。
(E)一方、鋼中の介在物および炭化物は完全には排除できない。逆にこれを利用すれば、ホットスタンプ部品の強度を高めることができる。
本発明は以下に列記の通りである。
(1)化学組成が、質量%で、C:0.18~0.50%、Si:0.001~2.00%、Mn:0.001~3.00%、P:0.10%以下、S:0.0015%以下、Nb:0.010~0.100%、Cr:0.001~0.50%、Al:0.0001~0.100%、Ti:0.001~0.500%、O:0.0030%未満、B:0.0006~0.0030%、N:0.0100%以下、および残部:Feおよび不純物であり、
金属組織が、フェライトおよびパーライトの混合組織であり、板厚の1/4~3/4の深さ位置における100μm以上の長さを有するMnSの面積率が0.0100%以下であるとともに、鋼中に存在する粒径0.5μm以上の炭化物(セメンタイトおよびNbTi複合炭窒化物)のうち、粒径1.2μm以上の炭化物(セメンタイトおよびNbTi複合炭窒化物)の個数割合が10.0%以下である、ホットスタンプ部品用鋼板。
(2)前記化学組成が、質量%で、V:2.00%以下、Ta:0.50%以下、およびW:3.00%以下から選択される1種以上を有する、1項に記載のホットスタンプ部品用鋼板。
(3)前記化学組成が、質量%で、Ni:5.00%以下、Cu:3.00%以下、およびMo:0.50%以下から選択される1種以上を有する、1または2項に記載のホットスタンプ部品用鋼板。
(4)前記化学組成が、質量%で、Mg:0.0030%以下、Ca:0.0030%以下、La:0.030%以下、およびCe:0.030%以下から選択される1種以上を有する、1~3項のいずれかに記載のホットスタンプ部品用鋼板。
(5)1~4項のいずれかに記載のホットスタンプ部品用鋼板を製造する方法であって、
前記化学組成を有する鋼塊または鋼片を(i)式で示されるT(℃)以上で30分以上の時間で加熱後、1000~1150℃で粗圧延を完了し、Ae点以上で仕上圧延を完了する圧延工程と、
平均冷却速度10~200℃/秒で冷却する冷却工程と、
680~560℃で巻き取る巻取工程と、
酸洗によりスケールを除去する酸洗工程と、
圧下率10~60%で圧下する冷間圧延工程と、
730~900℃に加熱する焼鈍工程と、を含む、ホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
T(℃)=〔0.020+(質量%Mn)(質量%S)〕/(1.9×10-5) ・・・(i)
ただし、(i)式において、質量%Mn、質量%SはそれぞれMn、Sの含有量(質量%)を示す。
本発明により、焼戻しを行わずに、ホットスタンプ成形とその際の焼入れのままで、超高強度(特に引張強度が1.5GPa以上)を有するとともに耐破壊特性が大きく改善されたホットスタンプ部品を製造することが可能になる。これにより、引張強度が1.5GPa以上のホットスタンプ部品を、例えばボディシェルの構造部材(骨格部材)にも用いることが可能になるとともに、引張強度が1.5GPa以上のホットスタンプ部品の製造コストの上昇を防ぐことができる。
本発明を説明する。
1.本発明に係るホットスタンプ部品用鋼板
(1)化学組成
はじめに、必須元素を説明する。
(1-1)C:0.18~0.50%
Cは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を主に決定する非常に重要な元素である。特に、焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度1.5GPa以上を確保するために、C含有量は、0.18%以上であり、0.20%以上が好ましく、0.24%以上がさらに好ましい。一方、C含有量が0.50%を超えると、焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度が高くなり過ぎるために靱性の劣化が著しくなる。このため、C含有量は、0.50%以下であり、0.40%以下が好ましく、0.38%以下がさらに好ましい。
(1-2)Si:0.001~2.00%
Siは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の高強度を安定して達成することに効果がある。この効果を得るために、Si含有量は、0.001%以上であり、0.05%以上が好ましく、0.10%以上がさらに好ましい。一方、Si含有量が2.00%を超えても、上記効果は飽和し、コストの上昇を招くことになる。このため、Si含有量は、2.00%以下であり、1.50%以下が好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。
(1-3)Mn:0.001~3.00%
Mnは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の高強度を安定して得ることに非常に効果がある元素である。Mn含有量が0.001%未満ではこの効果を十分に得られない。このため、Mn含有量は、0.001%以上であり、0.5%以上が好ましく、1.00%以上がさらに好ましい。一方、Mn含有量が3.00%を超えても、上記効果は飽和し、逆に安定して引張強度を確保することが困難となる。このため、Mn含有量は、3.00%以下であり、2.50%以下が好ましく、2.00%以下がさらに好ましい。
(1-4)P:0.10%以下
Pは焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を大きく劣化させるため、P含有量は少ないほど好ましいが、0.10%の含有は許容される。したがって、P含有量は、0.10%以下である。しかし、P含有量を0.001%未満に低減するには製鋼コストの上昇が避けられない。このため、P含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
(1-5)S:0.0015%以下
Sは、少ないほど変形能と耐破壊特性が向上するため、S含有量は0.0015%以下とする。好ましくは0.0010%未満である。ただし、S含有量を少なくするには脱Sコストがかかるため、S含有量は、0.0001%以上とすることが好ましい。S含有量は、0.0003%以上がさらに好ましい。
(1-6)Nb:0.010~0.100%
Nbは、ホットスタンプ部品用鋼板をAc点以上に加熱したときに、再結晶を抑制し、かつ微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、ホットスタンプ部品の靱性を大きく改善する効果を有する。この効果を得るため、Nb含有量は、0.010%以上であり、0.020%以上が好ましく、0.040%以上がさらに好ましい。一方、後述するように、Nb含有量が0.100%を超えると鋼塊または鋼片のNb炭窒化物が粗大化する。このため、Nb含有量は、0.100%以下であり、0.080%以下が好ましく、0.060%以下がさらに好ましい。
(1-7)Cr:0.001~0.50%
Crは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の高強度を安定して得ることに非常に効果がある元素である。この効果を得るために、Cr含有量は、0.001%以上であり、0.10%以上が好ましく、0.20%以上がさらに好ましい。一方、Cr含有量が0.50%を超えても、上記効果は飽和し、逆に安定して引張強度を確保することが困難となる。このため、Cr含有量は、0.50%以下であり、0.40%以下が好ましく、0.30%以下がさらに好ましい。
(1-8)Al:0.0001~0.100%
Alは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。この効果を得るため、Al含有量は、0.0001%以上であり、0.010%以上が好ましく、0.020%以上がさらに好ましい。一方、Al含有量が0.100%を超えても、上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Al含有量は、0.100%以下であり、0.060%以下が好ましく、0.040%以下がさらに好ましい。
(1-9)Ti:0.001~0.500%
Tiは、ホットスタンプ部品用鋼板をAc点以上に加熱したときに、再結晶を抑制し微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするためにホットスタンプ部品の靱性を大きく改善する効果を奏する。この効果を確実に得るために、Ti含有量は、0.001%以上であり、0.010%以上が好ましく、0.020%以上がさらに好ましい。一方、Ti含有量が0.500%を超えても、上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Ti含有量は、0.500%以下であり、0.100%以下が好ましく、0.050%以下がさらに好ましい。
(1-10)O:0.0030%未満
Oは、不純物として鋼中に存在する。Oが存在すると、酸化物を形成し耐破壊特性を低下させるために、O含有量は少ないほうが好ましいが、0.0030%程度の含有は許容される。このため、O含有量は0.0030%未満である。
(1-11)B:0.0006~0.0030%
Bは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保する効果を高めることに有効である。また、Bは、結晶粒界に偏析して粒界強度を高め、ホットスタンプ部品の靱性を向上させる点でも重要な元素である。さらに、Bは、ホットスタンプ部品用鋼板の加熱時のオーステナイト粒の成長を抑制する効果も高い。この効果を得るため、B含有量は、0.0006%以上であり、0.001%以上が好ましく、0.0015%以上がさらに好ましい。一方、B含有量が0.0030%を超えても、上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、B含有量は、0.0030%以下であり、0.0025%以下が好ましく、0.0020%以下がさらに好ましい。
(1-12)N:0.0100%以下
Nは、不純物として鋼中に存在する。Nが存在すると、Bと結合しBNを生成し、Bの効果を減少させるため、N含有量は少ないほうが好ましいが、0.0100%程度の含有は許容される。このため、N含有量は、0.0100%以下であり、0.0080%以下が好ましく、0.0060%以下がさらに好ましい。
次に、任意元素を説明する。
(1-13)V:2.00%以下
Vは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、V含有量が2.00%を超えても上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、V含有量は、2.00%以下であり、1.50%以下が好ましく、1.00%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、V含有量は、0.001%以上であり、0.10%以上が好ましく、0.20%以上がさらに好ましい。
(1-14)Ta:0.50%以下
Taは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、Ta含有量が0.50%を超えると上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Ta含有量は、0.50%以下であり、0.40%以下が好ましく、0.30%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Ta含有量は、0.001%以上であり、0.005%以上が好ましく、0.10%以上がさらに好ましい。
(1-15)W:3.00%以下
Wは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、W含有量が3.00%を超えると上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、W含有量は、3.00%以下であり、2.00%以下が好ましく、1.00%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、W含有量は、0.01%以上であり、0.05%以上が好ましく、0.10%以上がさらに好ましい。
(1-16)Ni:5.00%以下
Niは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、Ni含有量が5.00%を超えると上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Ni含有量は、5.00%以下であり、3.00%以下が好ましく、2.00%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Ni含有量は、0.01%以上であり、0.10%以上が好ましく、0.20%以上がさらに好ましい。
(1-17)Cu:3.00%以下
Cuは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、Cu含有量が3.00%を超えても上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Cu含有量は3.00%以下であり、2.00%以下が好ましく、1.00%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Cu含有量は、0.10%以上であり、0.20%以上が好ましく、0.50%以上がさらに好ましい。
(1-18)Mo:0.50%以下
Moは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、Mo含有量が0.50%を超えても上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Mo含有量は0.50%以下であり、0.40%以下が好ましく、0.30%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Mo含有量は、0.005%以上であり、0.10%以上が好ましく、0.20%以上がさらに好ましい。
(1-19)Mg:0.0030%以下
Mgは、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を向上させる効果を有する。しかし、Mg含有量が0.0030%を超えるとこの効果は飽和し、コストが嵩む。このため、Mg含有量は、0.0030%以下であり、0.0025%以下が好ましく、0.0020%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Mg含有量は、0.0005%以上であり、0.0010%以上が好ましく、0.0015%以上がさらに好ましい。
(1-20)Ca:0.0030%以下
Caは、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を向上させる効果を有する。しかし、Ca含有量が0.0030%を超えるとこの効果は飽和し、コストが嵩む。このため、Ca含有量は、0.0030%以下であり、0.0025%以下が好ましく、0.0020%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Ca含有量は、0.0005%以上であり、0.0010%以上が好ましく、0.0015%以上がさらに好ましい。
(1-21)La:0.030%以下
Laは、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を向上させる効果を有する。しかし、La含有量が0.030%を超えるとこの効果は飽和し、コストが嵩む。このため、La含有量は、0.030%以下であり、0.020%以下が好ましく、0.010%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、La含有量は、0.001%以上であり、0.003%以上が好ましく、0.005%以上がさらに好ましい。
(1-22)Ce:0.030%以下
Ceは、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を向上させる効果を有する。しかし、Ce含有量が0.030%を超えるとこの効果は飽和し、コストが嵩む。このため、Ce含有量は、0.030%以下であり、0.025%以下が好ましく、0.020%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Ce含有量は、0.001%以上であり、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がさらに好ましい。
上記以外の残部は、Feおよび不純物である。不純物としては、鉱石およびスクラップ等の原材料に含まれるもの、製造工程において含まれるもの、が例示される。
(2)金属組織
(2-1)フェライトおよびパーライトの混合組織
本発明に係る鋼板は、ホットスタンプ用ブランクの加工性の観点、ホットスタンプ時の成形性および焼入れ性などの観点から、その金属組織は、フェライトおよびパーライトの混合組織である。
(2-2)板厚の1/4~3/4の深さ位置における100μm以上の長さを有するMnSの面積率:0.0100%以下
連続鋳造により製造したスラブの中心部は偏析が多くなる。スラブを圧延し薄板としても偏析は引き継がれ、薄板の中央部には偏析が多くなる。このため、本発明では、板厚中心部(1/4~3/4t)の位置に着目する。
MnSは割れの起点になることは知られている。本発明では、鋼中のS含有量を減少させることによりMnSの生成を抑制する。しかし、ホットスタンプ部品用鋼板の方向により異方性が大きいと、ホットスタンプメーカーでの製造オペレーティングが困難になるだけではなく、ホットスタンプ部品の特性に不具合が生じるおそれがある。
本発明者らは、この異方性の原因について詳細に調査したところ、MnSが靭性の異方性を悪化させる原因であることを知見した。MnSは、延伸し易い介在物である。MnSの長さが100μm以上になると、MnSの延伸に伴う異方性が大きくなる。ただし、100μm以上のMnSが鋼中に存在していても、その面積率が0.0100%以下であれば特に異方性の問題は生じない。
したがって、本発明では、長さ100μm以上のMnSの面積率を0.0100%以下と規定する。なお、MnSの面積率の下限は特に規定しないが、鋼中に存在するMnおよびSの含有量を考えれば、100μm以下のMnSも含めて0.0001%以上のMnSは存在する。
(2-3)鋼中に存在する粒径0.5μm以上の炭化物のうち、粒径1.2μm以上の炭化物(セメンタイトおよびNbTi複合炭窒化物)の個数割合:10.0%以下
本発明では、NbおよびTiを必須元素として含有するため、NbとTiの複合炭窒化物NbTi(C,N)が生成する。スラブ段階での複合炭窒化物NbTi(C,N)は粗大であり、これが圧延後の鋼板に残存すると、ホットスタンプ部品用鋼板あるいはホットスタンプ部品の靭性の低下の原因となる。
また、ホットスタンプ部品用鋼板にセメンタイト(FeC)が溶けずに残存すると、ホットスタンプ部品用鋼板を加熱中にオーステナイト中に溶解し、オーステナイト中のC濃度を上昇させる。ホットスタンプ工程での加熱が不十分な場合、例えば、製造効率を高めるために急速加熱して短時間加熱とした場合には、セメンタイトの溶解が不十分となり、ホットスタンプ部品の靭性の低下につながる。
このように複合炭窒化物NbTi(C,N)およびセメンタイト(以下、合わせて「炭化物」という。)が存在すると、靭性の低下が生じる。一方で、微細な複合炭窒化物NbTi(C,N)には、ピン止め作用による析出強化により鋼板の強度を高める効果がある。このことから、微細な複合炭窒化物NbTi(C,N)は一定量存在させておく必要がある。
本発明者らは、炭化物と靭性の関係について詳細に調査したところ、炭化物の種類によらず、一部の粗大な炭化物が多く存在するとホットスタンプ部品用鋼板あるいはホットスタンプ部品の靭性が低下することを知見した。すなわち、鋼中に存在する粒径0.5μm以上の炭化物のうち、粒径1.2μm以上の炭化物の個数割合が10.0%以下である場合にホットスタンプ部品用鋼板あるいはホットスタンプ部品の靭性を確保できる。
また、粒径1.2μm未満の複合炭窒化物NbTi(C,N)は鋼板の強度向上に寄与する。一方、粒径1.2μm未満のセメンタイトはホットスタンプ工程で容易に溶解させることができ、ホットスタンプ部品の靭性が低下することはない。言い換えれば、単に炭化物を減少させるのではなく、あえて鋼板中に存在する粒径0.5μm以上1.2μm未満の比較的微細な炭化物の個数割合が90.0%超とすれば、ホットスタンプ部品の強度と靭性を両立できる。
なお、粒径0.5μm未満の微細な炭化物を除いた個数割合で粒径1.2μm以上の炭化物の個数割合を規定する理由は、微細な炭化物が組織観察により観察できない場合もあることによる。
なお、フェライトおよびパーライトの面積率、MnSの面積率、ならびに炭化物の個数割合は、例えば、実施例に記載の方法で測定することができる。
(3)用途
本発明に係る鋼板は、ホットスタンプ部品に用いられるものである。対象とするホットスタンプ部品としては、バンパーレインフォースメントおよび自動車のボディシェルの構造部材(例えばAピラーレインフォースメント,Bピラーレインフォースメント,フロントサイドメンバ,リアーサイドメンバ,ルーフレール,各種クロスメンバ等)が例示される。
2.本発明に係るホットスタンプ部品用鋼板の製造方法
次に、本発明に係るホットスタンプ部品用鋼板の製造方法を説明する。
(1)圧延工程
上述した化学組成を有する鋼塊または鋼片を、(i)式:T(℃)=〔0.020+(質量%Mn)(質量%S)〕/(1.9×10-5)(質量%Mn,質量%SはそれぞれMn,Sの含有量を示す。)で示される温度T(℃)以上で30分間以上加熱後、1000~1150℃で粗圧延を完了する。上述した化学組成の成分系では、低S含有を基本としており、成分的な観点からMnSを低減する。これに加えて、加熱時の温度をMnSの溶体化を進めるために最適化する。
鋼塊または鋼片の加熱温度の制限、具体的には、(i)式で示される温度T(℃)以上にすることにより溶体化を促進し、好ましくは1200℃以上で1時間以上加熱することにより、鋼塊または鋼片に存在するMnSの影響を低減できる。
また、セメンタイトは、ホットスタンプ部品用鋼板に残存する粗大な炭化物を防止し、スラブで生じている粗大なセメンタイトを溶体化させるため、(i)式で示される温度T(℃)以上とする。
さらに、Nb系炭窒化物Nb(C,N)は、鋼塊または鋼片に存在する粗大なNb系炭窒化物の溶体化を進める。鋼塊または鋼片のNb系炭窒化物の粗大化防止の観点から、Nbの上限は0.100%とし、鋼塊または鋼片の加熱温度を(i)式で示される温度T(℃)以上、望ましくは1200℃以上とすることにより、Nbの影響を低減できる。
鋼塊または鋼片を以上のように加熱した後、粗圧延を開始し、1000~1150℃で粗圧延を完了する。粗圧延の終了温度が1000℃未満であると、再結晶が進まず圧延による異方性が強くなる。一方、粗圧延の終了温度が1150℃を超えると、再結晶は進行するものの、結晶粒の粗大化が進行し、仕上圧延での結晶粒の粗大化につながる。
この後、Ae点以上で仕上圧延を完了する。Ae点より低い温度で熱間圧延を施すと、加工フェライトが残存し、延性が大幅に劣化するからである。本発明で規定する化学組成の成分系では、熱間圧延の完了温度がAe点以上であれば、これらの問題は生じない。一方、熱間圧延の完了温度が1050℃を超えると、スケール噛み込み等の表面欠陥を生じるおそれがある。したがって、熱間圧延の完了温度は1050℃以下であることが好ましい。
なお、Ae点は下記式に従って算出する。
Ae(℃)=937-477C+56Si-20Mn-16Cu-15Ni-5Cr+38Mo+136Ti-19Nb+198Al+3315B
但し、上記式中の元素記号は、鋼板中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合には0を代入するものとする。
(2)冷却工程
仕上圧延終了後、10~200℃/秒の平均冷却速度で冷却する。これにより、熱間圧延後における上述した析出物の析出および成長を抑制できる。平均冷却速度の下限は、20℃/秒が好ましく、30℃/秒がより好ましい。一方、平均冷却速度の上限は、150℃/秒が好ましく、100℃/秒がより好ましい。
(3)巻取工程
熱間圧延後には、680~560℃でコイルに巻取る。この温度域で巻取ることにより、組織をフェライトおよびパーライトからなる混合組織とすることができる。巻取り温度が680℃以下であることにより上記析出物の粗大化を防止することができる。一方、巻取り温度が560℃未満であると、ベイナイト主体の組織となり、熱間圧延に引き続いて行われる冷間圧延での圧延荷重が高くなり、冷間圧延性が低下する。このため、巻取温度は、560℃以上であり、好ましくは600℃以上である。
(4)酸洗工程
熱間圧延後にコイルに巻取られたコイル(鋼帯)を一旦巻き戻してから酸洗して、表面に生成したスケールの除去処理(脱スケール)を行う。
(5)冷間圧延工程
酸洗後に、10~60%の圧下率で冷間圧延を行う。冷間圧延は、周知慣用の条件で行えばよい。圧下率が10%未満では、焼鈍後の組織が混粒となりやすく焼入れ性のばらつきを生じ、硬度のばらつきが出やすくなる。一方、圧下率が60%超では冷間圧延時の負荷が大きくなり工業レベルで圧延を行うことがコスト的にも難しくなる。
(6)焼鈍工程
冷間圧延後に、730~900℃に加熱する焼鈍を行う。冷間圧延後の焼鈍は、セメンタイトへのCr,Mnの濃化を防止する観点から、オーステナイト相が析出する730℃以上とし、オーステナイト相を活用してセメンタイトの再溶解を促進するとともにセメンタイトへのCr、Mn濃化を抑制する。しかし、焼鈍温度が900℃を超えると、この効果が飽和するだけでなく、工業的にも燃焼コストが増大する。このため、焼鈍の加熱温度は730~900℃とする。
冷間圧延された鋼帯に対する焼鈍は、アンコイル状態で行う連続焼鈍でもよいし、コイルに巻取って行う箱焼鈍でもよい。
このようにして、本発明に係るホットスタンプ部品用鋼板が製造される。
実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
表1および表2に示す化学組成(表1および表2に示す以外の残部はFeおよび不純物)を有するスラブを、表3に示すスラブ加熱温度およびスラブ加熱時間で加熱した後に粗圧延を開始し、表3に示す粗圧延終了温度で粗圧延を完了し、さらに、表3に示す仕上圧延終了温度で仕上圧延を完了して板厚1.6mmとし、冷却温度を制御しながら冷却した後、表3に示す巻取温度でコイルに巻取った。巻取ったコイルは巻戻した後に酸洗を行って脱スケールを行い、冷間圧延を施し、表3に示す焼鈍温度で焼鈍を行った。表2および表3における下線は本発明の範囲外であることを示す。
Figure 0007436822000001
Figure 0007436822000002
Figure 0007436822000003
製造したコイルについては、ホットスタンプ処理を施し、ホットスタンプ処理後のホットスタンプ部品の組織観察を行うとともに、ホットスタンプ部品用鋼板としての特性を有するか評価した。具体的には、No.1~28、x1~x10のホットスタンプ部品用鋼板を製造するとともに、下記(1)~(3)に示す組織観察を行った。
(1)フェライトおよびパーライトの面積率
鋼板の一部から試験片を切り出し、試料L断面を鏡面研磨し、ナイタール溶液を用いて金属組織を腐食させる。そして、板厚の1/4t領域を倍率500倍の光学顕微鏡で観察し、フェライトおよびパーライトの混合組織であることを確認した。
(2)板厚の1/4~3/4の深さ位置における100μm以上の長さを有するMnSの面積率
鋼板の一部から試料片を切り出し、試料L断面を鏡面研磨し、光学顕微鏡写真からの画像解析により、MnSの大きさを特定するとともに、その面積率を計算した。ここで、板厚の1/4~3/4t領域、すなわち、板厚1.6mmtの中央部の0.8mmの範囲について20mm幅の領域(0.8mm×20mm=16mm)を測定領域とした。
(3)鋼中に存在する粒径0.5μm以上の炭化物のうち、粒径1.2μm以上の炭化物(セメンタイト、NbTi複合炭窒化物)の個数割合
鋼板の一部から試料片を切り出し、試料L断面を鏡面研磨し、走査型電子顕微鏡にて、炭化物(セメンタイトおよびNbTi複合炭窒化物)の個数割合を測定した。ここで、板厚の1/4~3/4t領域、すなわち、板厚1.6mmtの場合、中央部の0.8mmの範囲について5mm幅の領域(0.8mm×5mm=4mm)を測定領域とし、EDXにて組成分析を行い炭化物であるかを確認するとともに、粒径0.5μm以上の炭化物について1.2μm以上、1.2μm未満の炭化物を区別してその個数をカウントし、1.2μm以上の炭化物の個数を粒径0.5μm以上の炭化物の個数で除算して1.2μm以上の炭化物の個数割合を算出した。
一方、鋼板特性に関し、下記(4)~(6)に示す方法により評価した。
(4)強度(TS,YS),伸びEL
JIS Z 2201に規定される5号試験片を鋼板より採取し、JIS Z 2241に準拠した引張試験を行い、強度(TS,YS)および伸びELを評価した。
(5)限界曲げR
曲げ性評価に関しては、鋼板から30mm×100mmの試験片を採取し、先端Rが2.0~5.0のパンチにて90度曲げ試験を行い、曲げ部に割れが発生する最大Rを求めた。割れが発生する最大Rは板厚tにも依存するため、得られた最大Rを板厚t(1.6mm)で除算して、限界R/tとして、R/tが2.20以下のものを曲げ性が良好なものとして評価した。
(6)L方向およびC方向のvTrsおよびvE
ホットスタンプ処理し、熱処理した後のホットスタンプ部品については、衝撃試験を行い、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)に関して部品の異方性を確認した。ホットスタンプ部品から切り出した厚み1.6mmの鋼片をその長辺が圧延方向に対して平行(L方向)または垂直(C方向)になるように採取し、同じ方向の鋼片を6枚積層してネジ止めした後、Vノッチ試験片を作成し、シャルピー衝撃試験を行った。
ここでは、圧延方向に対して平行(L方向)および垂直(C方向)の破面遷移温度(vTrs)がともに-40℃以下、同じく室温における吸収エネルギー(vE)がともに50J/cm以上となるものを○(良好)として評価した。
表4に、組織観察の結果を示す。また、表5にホットスタンプ部品の機械特性の結果を示す。表4における下線は本発明の範囲外であることを示し、表5における下線は機械特性が芳しくない値であることを示す。
Figure 0007436822000004
Figure 0007436822000005
表5におけるNo.1~No.28は本発明の規定を全て満足する本発明例であり、No.x1~x10は本発明の規定を満足しない比較例である。
表5に示すように、No.1~No.28の本発明例は、板厚の1/4~3/4の深さ位置における100μm以上の長さを有するMnSの面積率:0.0043~0.0090(%)、粒径0.5μm以上の炭化物のうち、粒径1.2μm以上の炭化物の個数割合:3.2~9.7(%)のホットプレス部品用鋼板を得られ、ホットスタンプ成形と成形部品への熱処理により、TS:1545~2520(MPa),YS:989~1600(MPa),EL:7.8~10.7(%),限界R/t:1.56~2.19,L方向およびC方向のvTrs:-40℃以下,vE:50J/cm以上の機械特性を有しており、高強度(特に引張強度が1.5GPa以上)を有するとともに耐破壊特性が大きく改善されたホットスタンプ部品を製造できることが分かる。
これに対し、No.x1は、S含有量が本発明の範囲の上限を超え、(i)式で計算されるTが大きくなり、結果としてスラブ加熱温度がTより低くなった。このため、上記MnSの面積率および上記炭化物の個数割合が本発明の範囲の上限を超える鋼板となり、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)が芳しくない値であった。
No.x2は、S含有量およびNb含有量が本発明の範囲の上限を超え、上記炭化物の個数割合が本発明の範囲の上限を超える鋼板となったため、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)が芳しくない値であった。
No.x3は、S含有量およびNb含有量が本発明の範囲の上限を超え、(i)式で計算されるTが大きくなり、結果としてスラブ加熱温度がTより低くなった。このため、上記MnSの面積率および上記炭化物の個数割合が本発明の範囲の上限を超える鋼板となり、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)が芳しくない値であった。
No.x4は、仕上圧延完了温度が本発明の範囲の下限を下回るため、引張強度(TS)が1.5MPa未満と芳しくない値であり、限界R/tも芳しくない値であった。
No.x5は、仕上圧延後の平均冷却速度が本発明の範囲の下限を下回るため、上記炭化物の個数割合が本発明の範囲の上限を超え、限界R/tが芳しくない値であり、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)も芳しくない値であった。
No.x6は、巻取温度が本発明の範囲の上限を超えるため、上記炭化物の個数割合が本発明の範囲の上限を超え、限界R/tが芳しくない値であり、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)も芳しくない値であった。
No.x7は、焼鈍加熱温度が本発明の範囲の下限を下回るため、上記炭化物の個数割合が本発明の範囲の上限を超え、限界R/tが芳しくない値であり、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)も芳しくない値であった。
No.x8は、Mn含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、上記MnSの面積率が本発明の範囲の上限を超え、限界R/tが芳しくない値であり、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)も芳しくない値であった。
No.x9は、Nb含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、上記炭化物の個数割合が本発明の範囲の上限を超え、限界R/tが芳しくない値であり、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)も芳しくない値であった。
さらに、No.x10は、Ti含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、上記炭化物の個数割合が本発明の範囲の上限を超え、限界R/tが芳しくない値であり、破面遷移温度(vTrs)および吸収エネルギー(vE)も芳しくない値であった。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.18~0.50%、
    Si:0.001~2.00%、
    Mn:0.001~3.00%、
    P :0.10%以下、
    S :0.0015%以下、
    Nb:0.010~0.100%、
    Cr:0.001~0.50%、
    Al:0.0001~0.100%、
    Ti:0.001~0.500%、
    O :0.0030%未満、
    B :0.0006~0.0030%、
    N :0.0100%以下、および
    残部:Feおよび不純物であり、
    金属組織が、フェライトおよびパーライトの混合組織であり、
    板厚の1/4~3/4の深さ位置における100μm以上の長さを有するMnSの面積率が0.0100%以下であるとともに、
    鋼中に存在する粒径0.5μm以上の炭化物のうち、粒径1.2μm以上の炭化物の個数割合が10.0%以下である、ホットスタンプ部品用鋼板。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    V :2.00%以下、
    Ta:0.50%以下、および
    W :3.00%以下
    から選択される1種以上を有する、請求項1に記載のホットスタンプ部品用鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Ni:5.00%以下、
    Cu:3.00%以下、および
    Mo:0.50%以下
    から選択される1種以上を有する、請求項1または2に記載のホットスタンプ部品用鋼板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    Mg:0.0030%以下、
    Ca:0.0030%以下、
    La:0.030%以下、および
    Ce:0.030%以下
    から選択される1種以上を有する、請求項1~3のいずれかに記載のホットスタンプ部品用鋼板。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のホットスタンプ部品用鋼板を製造する方法であって、
    前記化学組成を有する鋼塊または鋼片を(i)式で示されるT(℃)以上で30分以上の時間で加熱後、1000~1150℃で粗圧延を完了し、Ae点以上で仕上圧延を完了する圧延工程と、
    平均冷却速度10~200℃/秒で冷却する冷却工程と、
    680~560℃で巻き取る巻取工程と、
    酸洗によりスケールを除去する酸洗工程と、
    圧下率10~60%で圧下する冷間圧延工程と、
    730~900℃に加熱する焼鈍工程と、を含む、ホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
    T(℃)=〔0.020+(質量%Mn)(質量%S)〕/(1.9×10-5) ・・・(i)
    ただし、(i)式において、質量%Mn、質量%SはそれぞれMn、Sの含有量(質量%)を示す。
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