JP7436825B2 - ホットスタンプ部品用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ホットスタンプ部品用鋼板およびその製造方法に関する。
近年、使用する鋼材の高強度化を図ることにより自動車の重量を低減する努力が、自動車の燃費向上のために、強力に行われている。その結果、自動車に広く利用されている薄鋼板を冷間プレス成形して製造される部品(以下、「プレス成形部品」という)の製造において、複雑な形状を有するプレス成形部品を製造することが、鋼板の強度の増加に伴うプレス成形性の低下により、困難になっている。
具体的には、鋼板の延性の低下に起因して、プレス成形部品における加工度が高い部位で破断したり、いわゆるスプリングバックおよび壁反りが大きくなってプレス成形部品の寸法精度が低下するといった問題が多発している。特に780MPa以上の引張強度を有する高強度鋼板からなるプレス成形部品を製造することは容易なことではない。
冷間プレス成形ではなくロール成形によれば、高強度鋼板からなるロール成形部品を容易に製造することができる。しかし、ロール成形では、長手方向へ一定の横断面を有するロール成形部品しか製造できず、複雑な横断面形状を有するプレス成形部品を製造することはできない。
これに対し、加熱した鋼板をプレス成形するホットスタンプ法(熱間プレス成形法ともいう)では、成形時の高温の鋼板が軟質かつ高延性になっているため、複雑な形状を有するプレス成形部品を、破断およびスプリングバックさらには壁反りといった成形不良を生じることなく、寸法精度よく成形できる。
その上、ホットスタンプ法によれば、鋼板をオーステナイト単相域の温度に加熱してからプレス成形し、プレス成形に用いる金型の内部で成形品を急速に冷却して焼入れることによって、鋼板の成形と同時に、マルテンサイト変態によるプレス成形部品の高強度化を図ることもできる。このように、ホットスタンプ法は、高強度のプレス成形部品の製造に適した優れた技術である。なお、以降の説明では、ホットスタンプ法により製造されたプレス成形部品を「ホットスタンプ部品」という。
現在、ホットスタンプ部品の一例として、比較的単純な形状を有するバンパーレインフォースメントが知られている。引張強度が1.5GPa級のホットスタンプ部品は、既に、バンパーレインフォースメントなど、例えばBピラーレインフォースメントといったボディシェルの構造部材(骨格部材)に広く用いられている。
近年、より高強度、特に引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品を製造することが検討されており、例えばBピラーレインフォースメントといった、衝突の際に衝撃荷重を主に負担することになるボディシェルの構造部材(骨格部材)にも、引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品を用いることが検討されている。
ところが、ホットスタンプ部品の引張強度が1.8GPa以上という超高強度に達すると、ホットスタンプ部品の変形能が不足してホットスタンプ部品の耐破壊特性(例えば曲げ性)が低下し、衝突時に、ホットスタンプ部品の吸収エネルギーが低下したり、ホットスタンプ部品自体が破断したりするおそれが高まる。このため、引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品として実用化されているのは、1.8GPa級のバンパーレインフォースメントだけであり、実際、変形能の高い引張強さ1.8GPa以上のホットスタンプ部品を製造した例はこれまで報告されていない。
このため、引張強さが1.8GPa以上のホットスタンプ部品を製造するためには、ホットスタンプ部品に、さらに焼戻し処理を施して変形能を高める必要がある。しかし、ホットスタンプ工程に焼戻し工程を追加することは、作業効率の低下および設備費の上昇により、ホットスタンプ部品の製造コストが著しく上昇する。
特許文献1には、C:0.25~0.45%(本明細書では化学組成または濃度に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する)、Mn+Cr:0.5~3.0%、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種または2種以上を含有する鋼板をAc点以上(Ac点+100℃)以下の温度域に5分間以下保持した後にプレス成形を行い、次いでMs点までの冷却速度が上部臨界冷却速度以上で、かつMs点から150℃までの平均冷却速度が10~500℃/秒で、冷却を行うことによって、旧オーステナイト平均粒径が10μm以下である自動焼戻しマルテンサイトにより構成される鋼組織を有し、焼入れままで靱性に優れた引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品と、このホットスタンプ部品用鋼板が開示されている。
特許文献2,3には、C:0.26~0.45%、Mn+Cr:0.5~3.0%、Nb:0.02~1.0%、3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5を満たす量のTi、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種又は2種以上を含有する化学組成を有する鋼板をAc点以上(Ac点+100℃)以下の温度域に5分間以下保持した後にプレス成形を行い、次いでMs点までの冷却速度が上部臨界冷却速度以上で、かつMs点から150℃までの平均冷却速度が10~500℃/秒で、冷却を行うことによって、旧オーステナイト粒径10μm以下である自動焼戻しマルテンサイトを含む微細組織を有し、焼入れままで靱性に優れた引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品が開示されている。
特許文献4には、C:0.25~0.40%、Si:0.05%以上0.5%未満、Mn:1.0~1.7%、P:0.020%以下、S:0.0010%未満、Al:0.002~0.06%、N:0.006%以下、Cr:0.02~0.6%、B:0.00010~0.0040%、Ti:0.005~0.04%、Nb:0.03~0.12%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、最大長さ10μm以上の介在物および析出物の数密度が100個/mm以下であるとともに、ホットスタンプ後の旧オーステナイト粒径が10μm以下である金属組織を有する鋼板に対しホットスタンプを行うことにより得られる、1.8~2.5GPaの引張強度を有し、かつ優れた靱性を有するホットスタンプ鋼板部材が開示されている。
特開2006-152427号公報 国際公開第2007/129676号 特開2012-180594号公報 特開2017-43825号公報
特許文献1~4により開示された発明によれば、確かに、焼入れままで引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品が提供される。
しかし、上述したように、ボディシェルの構造部材(骨格部材)にも引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品を用いるためには、ホットスタンプ部品には、高強度化(引張強度1.8GPa以上)のみならず、さらなる変形能の改善による耐破壊特性(例えば曲げ性)の向上が必要である。このような観点から、特許文献1~4により開示されたホットスタンプ部品の変形能および耐破壊特性には、まだ改善の余地がある。
本発明は、従来の技術が有するこの課題に鑑みてなされたものであり、焼入れ後の焼戻しを行わずに、変形能と衝突時の耐破壊特性に優れ、かつ引張強さが例えば1.8GPa以上のホットスタンプ部品を製造する技術を提供することを目的とする。
一般的に、ホットスタンプ部品の引張強度が高くなると、ホットスタンプ部品の曲げ性の確保が難しくなる。本発明者らは、衝突時におけるホットスタンプ部品の耐破壊特性の改善に着目して鋭意研究を重ねた結果、以下に列記の知見A~Dを得て、本発明を完成した。
(A)ホットスタンプ部品用鋼板について三点曲げを行ったところ、その割れ部には延伸したMnSが存在し、このMnSに起因したディンプルが破面に多数確認された。すなわち、延伸したMnSが破壊の起点になる。このため、ホットスタンプ部品用鋼板では延伸したMnSを低減する必要がある。
(B)ホットスタンプ部品を確認したところ、ホットスタンプ法ではホットスタンプ部品用鋼板をオーステナイト単相域に加熱するにも拘らず、低強度化および低変形能化を引き起こす未溶解の微細なセメンタイトが多数存在した。このため、セメンタイトの溶解を促進する必要がある。
(C)変形能の低下を回避するためにNbを添加すると、Nb系炭化物が生成してボイドの生成の起点になる。ボイドの生成を抑制するためには、Nb含有量を適正化する必要がある。
(D)すなわち、ホットスタンプ部品用鋼板およびホットスタンプ部品の製造過程において、鋼中の介在物および炭化物等の、衝突時のホットスタンプ部品の破壊の起点となる不純物をできるだけ低減することにより、ホットスタンプ部品の耐破壊特性を大きく改善することができ、これにより、引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品を、例えばボディシェルの構造部材(骨格部材)にも用いることが可能になる。
本発明は以下に列記の通りである。
(1)化学組成が、C:0.27~0.50%、Si:0.001~2.00%、Mn:0.001~3.00%、P:0.100%以下、S:0.0050%未満、Nb:0.0001~0.100%、Cr:0.001~0.50%、Al:0.0001~0.1000%、Ti:0.001~0.500%、O:0.0030%未満、B:0.0006~0.0030%、N:0.0100%以下、および、残部:Feおよび不純物であり、
金属組織が、フェライトおよびパーライトの混合組織であって、面積%で、パーライト:40%以上であり、フェライト粒界に存在するとともに、パーライトを構成するセメンタイトを除く粒径0.2μm以上のセメンタイトの個数密度が10.0個/10000μm未満である、ホットスタンプ部品用鋼板。
(2)前記化学組成が、V:2.00%以下、Ta:0.50%以下、および、W:3.00%以下から選択される1種以上を含有する、1項に記載のホットスタンプ部品用鋼板。
(3)前記化学組成が、Ni:5.00%以下、Cu:3.00%以下、および、Mo:0.50%以下から選択される1種以上を含有する、1項または2項に記載のホットスタンプ部品用鋼板。
(4)前記化学組成が、Mg:0.0030%以下、Ca:0.0030%以下、La:0.030%以下、および、Ce:0.030%以下から選択される1種以上を含有する、1項~3項のいずれかに記載のホットスタンプ部品用鋼板。
(5)1項~4項のいずれかに記載のホットスタンプ部品用鋼板を製造する方法であって、
前記化学組成を有する鋼塊または鋼片を1150~1350℃に加熱後、1000~1150℃で粗圧延を完了し、Ae+50℃以上で仕上圧延を完了させる圧延工程と、
前記圧延工程後、5秒間以上保持した後に、平均冷却速度30℃/秒以下で800℃まで冷却する冷却工程と、
前記冷却工程後、600~750℃で巻き取る巻取工程と、
を含む、ホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
(6)前記巻取工程の後、脱スケールを実施して、冷間圧延を行う冷間圧延工程を含む、5項に記載のホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
(7)前記冷間圧延工程の後、焼鈍を行う焼鈍工程を含む、6項に記載のホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
(8)前記巻取工程の後、脱スケールを実施して、焼鈍を行う焼鈍工程を含む、5項に記載のホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
本発明により、焼戻しを行わずに、ホットスタンプ成形とその際の焼入れのままで、超高強度(特に引張強度が1.8GPa以上)を有するとともに耐破壊特性が大きく改善されたホットスタンプ部品を製造することが可能になる。これにより、引張強度が1.8GPa以上のホットスタンプ部品を、例えばボディシェルの構造部材(骨格部材)にも用いることが可能になる。
本発明を説明する。
1.本発明に係るホットスタンプ部品用鋼板
(1)化学組成
はじめに、必須元素を説明する。
(1-1)C:0.27~0.50%
Cは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を主に決定する非常に重要な元素である。特に、焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度1.8GPa以上を確保するために、C含有量は、0.27%以上であり、0.28%以上が好ましく、0.30%以上がさらに好ましい。一方、C含有量が0.50%を超えると、焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度が高くなり過ぎるために変形能の劣化が著しくなる。このため、C含有量は、0.50%以下であり、0.40%以下が好ましく、0.36%以下がさらに好ましい。
(1-2)Si:0.001~2.00%
Siは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の高強度を安定して達成することに効果がある。この効果を得るために、Si含有量は、0.001%以上であり、0.05%以上が好ましく、0.1%以上がさらに好ましい。一方、Si含有量が2.00%を超えると、曲げ性が大きく低下する。このため、Si含有量は、2.00%以下であり、1.5%以下が好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。
(1-3)Mn:0.001~3.00%
Mnは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の高強度を安定して得ることに非常に効果がある元素である。Mn含有量が0.001%未満ではこの効果を十分に得られない。このため、Mn含有量は、0.001%以上であり、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がさらに好ましい。一方、Mn含有量が3.00%を超えても、上記効果は飽和し、逆に安定して引張強度を確保することが困難となる。このため、Mn含有量は、3.00%以下であり、2.5%以下が好ましく、2.0%以下がさらに好ましい。
(1-4)P:0.100%以下
Pは焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を大きく劣化させるため、P含有量は少ないほど好ましいが、0.100%の含有は許容される。したがって、P含有量は、0.100%以下である。しかし、P含有量を0.001%未満に低減するには製鋼コストの上昇が避けられない。このため、P含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
(1-5)S:0.0050%未満
Sは、少ないほど変形能と耐破壊特性が向上するため、S含有量は0.0050%未満とする。好ましくは0.0010%未満である。ただし、S含有量を少なくするには脱Sコストがかかるため、S含有量は、0.0001%以上とすることが好ましい。S含有量は、0.0003%以上がさらに好ましい。
(1-6)Nb:0.0001~0.100%
Nbは、ホットスタンプ部品用鋼板をAc点以上に加熱したときに、再結晶を抑制し、かつ微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、ホットスタンプ部品の靱性を大きく改善する効果を有する。この効果を得るため、Nb含有量は、0.0001%以上であり、0.020%以上が好ましく、0.040%以上がさらに好ましい。一方、Nb含有量が0.100%を超えても、上記効果は飽和し、逆に安定して引張強度を確保することが困難となる。このため、Nb含有量は、0.100%以下であり、0.080%以下が好ましく、0.060%以下がさらに好ましい。
(1-7)Cr:0.001~0.50%
Crは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の高強度を安定して得ることに非常に効果がある元素である。この効果を得るために、Cr含有量は、0.001%以上であり、0.05%以上が好ましく、0.1%以上がさらに好ましい。一方、Cr含有量が0.50%を超えても、上記効果は飽和し、逆に安定して引張強度を確保することが困難となる。このため、Cr含有量は、0.50%以下であり、0.4%以下が好ましく、0.3%以下がさらに好ましい。
(1-8)Al:0.0001~0.1000%
Alは、溶鋼を脱酸し鋼板を健全化することに効果がある元素である。この効果を得るため、Al含有量は、0.0001%以上であり、0.0100%以上が好ましく、0.0200%以上がさらに好ましい。一方、Al含有量が0.1000%を超えると、アルミナが粗大化することにより曲げ性が低下する。このため、Al含有量は、0.1000%以下であり、0.0600%以下が好ましく、0.0400%以下がさらに好ましい。
(1-9)Ti:0.001~0.500%
Tiは、Nと優先的に結合しTiNを生成し、BNの生成によるBの消費を抑制し、Bを有効に機能させる効果を有する。この効果を確実に得るために、Ti含有量は、0.001%以上であり、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がさらに好ましい。一方、Ti含有量が0.500%を超えても、上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Ti含有量は、0.500%以下であり、0.040%以下が好ましく、0.030%以下がさらに好ましい。
(1-10)O:0.0030%未満
Oは、不純物として鋼中に存在する。Oが存在すると、酸化物を形成し耐破壊特性を低下させるために、O含有量は少ないほうが好ましいが、0.0030%程度の含有は許容される。このため、O含有量は0.0030%未満である。
(1-11)B:0.0006~0.0030%
Bは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保する効果を高めることに有効である。また、Bは、結晶粒界に偏析して粒界強度を高め、ホットスタンプ部品の靱性を向上させる点でも重要な元素である。さらに、Bは、ホットスタンプ部品用鋼板の加熱時のオーステナイト粒の成長を抑制する効果も高い。この効果を得るため、B含有量は、0.0006%以上であり、0.0010%以上が好ましく、0.0015%以上がさらに好ましい。一方、B含有量が0.0030%を超えると、B炭窒化物が生成し、固溶B量が低下することによって、曲げ性が劣化する。このため、B含有量は、0.0030%以下であり、0.0025%以下が好ましく、0.0020%以下がさらに好ましい。
(1-12)N:0.0100%以下
Nは、不純物として鋼中に存在する。Nが存在すると、Bと結合しBNを生成し、Bの効果を減少させるため、N含有量は少ないほうが好ましいが、0.0100%程度の含有は許容される。このため、N含有量は、0.0100%以下であり、0.0080%以下が好ましく、0.0060%以下がさらに好ましい。
次に、任意元素を説明する。
(1-13)V:2.00%以下
Vは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、V含有量が2.00%を超えても上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、V含有量は、2.00%以下であり、1.50%以下が好ましく、1.00%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、V含有量は、0.001%以上であり、0.10%以上が好ましく、0.20%以上がさらに好ましい。
(1-14)Ta:0.50%以下
Taは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、Ta含有量が0.50%を超えると上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Ta含有量は、0.50%以下であり、0.40%以下が好ましく、0.30%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Ta含有量は、0.001%以上であり、0.005%以上が好ましく、0.10%以上がさらに好ましい。
(1-15)W:3.00%以下
Wは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、W含有量が3.00%を超えると上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、W含有量は、3.00%以下であり、2.00%以下が好ましく、1.00%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、W含有量は、0.01%以上であり、0.05%以上が好ましく、0.10%以上がさらに好ましい。
(1-16)Ni:5.00%以下
Niは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、Ni含有量が5.00%を超えると上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Ni含有量は、5.00%以下であり、3.00%以下が好ましく、2.00%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Ni含有量は、0.01%以上であり、0.10%以上が好ましく、0.20%以上がさらに好ましい。
(1-17)Cu:3.00%以下
Cuは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、Cu含有量が3.00%を超えても上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Cu含有量は3.00%以下であり、2.00%以下が好ましく、1.00%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Cu含有量は、0.10%以上であり、0.20%以上が好ましく、0.50%以上がさらに好ましい。
(1-18)Mo:0.50%以下
Moは、ホットスタンプ部品用鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後のホットスタンプ部品の引張強度を安定して確保することに効果がある元素である。しかし、Mo含有量が0.50%を超えても上記効果は飽和し、コストが嵩むだけとなる。このため、Mo含有量は0.50%以下であり、0.40%以下が好ましく、0.30%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Mo含有量は、0.005%以上であり、0.10%以上が好ましく、0.20%以上がさらに好ましい。
(1-19)Mg:0.0030%以下
Mgは、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を向上させる効果を有する。しかし、Mg含有量が0.0030%を超えるとこの効果は飽和し、コストが嵩む。このため、Mg含有量は、0.0030%以下であり、0.0025%以下が好ましく、0.0020%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Mg含有量は、0.0005%以上であり、0.0010%以上が好ましく、0.0015%以上がさらに好ましい。
(1-20)Ca:0.0030%以下
Caは、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を向上させる効果を有する。しかし、Ca含有量が0.0030%を超えるとこの効果は飽和し、コストが嵩む。このため、Ca含有量は、0.0030%以下であり、0.0025%以下が好ましく、0.0020%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Ca含有量は、0.0005%以上であり、0.0010%以上が好ましく、0.0015%以上がさらに好ましい。
(1-21)La:0.030%以下
Laは、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を向上させる効果を有する。しかし、La含有量が0.030%を超えるとこの効果は飽和し、コストが嵩む。このため、La含有量は、0.030%以下であり、0.020%以下が好ましく、0.010%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、La含有量は、0.001%以上であり、0.003%以上が好ましく、0.005%以上がさらに好ましい。
(1-22)Ce:0.030%以下
Ceは、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後のホットスタンプ部品の靱性を向上させる効果を有する。しかし、Ce含有量が0.030%を超えるとこの効果は飽和し、コストが嵩む。このため、Ce含有量は、0.030%以下であり、0.025%以下が好ましく、0.020%以下がさらに好ましい。上記効果を確実に得るためには、Ce含有量は、0.001%以上であり、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がさらに好ましい。
上記以外の残部は、Feおよび不純物である。不純物としては、鉱石やスクラップ等の原材料に含まれるもの、製造工程において含まれるもの、が例示される。
(2)金属組織
金属組織は、フェライトおよびパーライトの混合組織であって、面積%で、パーライト:40%以上であるとともに、フェライト粒界に存在する粒径0.2μm以上のセメンタイト(ただし、パーライトを構成するセメンタイトを除く)の個数密度が10.0個/10000μm未満である。
(2-1)フェライトおよびパーライトの混合組織
本発明に係る鋼板は、ホットスタンプ用ブランクの加工性の観点、ホットスタンプ時の成形性および焼入れ性などの観点から、金属組織は、フェライトおよびパーライトの混合組織を有する。
(2-2)パーライト面積率:40%以上
パーライトは、フェライトとセメンタイトFeCが交互に層状に並んだ構造を有する組織であるため、溶融し易い特性を有する。ホットスタンプ工程での加熱では、短時間の間にホットスタンプ部品用鋼板の温度を高くでき、焼きも入り易くなるため、ホットスタンプ部品の高強度を確保できる。
一方、複合炭窒化物NbTi(C,N)およびパーライトを構成するセメンタイト以外のセメンタイト(パーライト外のセメンタイト)といった炭化物は、加熱しても溶解し難く、割れを誘発して耐破壊特性を損なう原因にもなる。
このため、鋼中の炭素は、できるだけパーライトを構成するセメンタイトとして存在させることが好ましい。したがって、パーライトを面積率で40%以上とする。
(2-3)フェライト粒界に存在し、かつパーライトを構成するセメンタイトを除く粒径0.2μm以上のセメンタイトの個数密度:10.0個/10000μm未満
パーライトを構成するセメンタイトとして消費されなかった炭素は、炭化物として鋼中に存在する場合がある。この場合、フェライト粒界にセメンタイトが濃化して形成され、これが割れの原因になる。
したがって、フェライト粒界に存在するセメンタイトの個数密度は、10.0個/10000μm未満であり、好ましくは8.0個/10000μm以下であり、さらに好ましくは6.0個/10000μm以下である。
ただし、粒径0.2μm未満のセメンタイトは割れに影響しないため、フェライト粒界に存在する粒径0.2μm以上のセメンタイト(ただし、パーライトを構成するセメンタイトを除く)の個数密度を10.0個/10000μm未満とする。
なお、フェライトおよびパーライトの面積率、ならびにセメンタイトの個数密度は、例えば、実施例に記載の方法で測定することができる。
(3)用途
本発明に係る鋼板は、ホットスタンプ部品に用いられるものである。対象とするホットスタンプ部品としては、バンパーレインフォースメントおよび自動車のボディシェルの構造部材(例えばAピラーレインフォースメント,Bピラーレインフォースメント,フロントサイドメンバ,リアーサイドメンバ,ルーフレール,各種クロスメンバ等)が例示される。
2.本発明に係るホットスタンプ部品用鋼板の製造方法
次に、本発明に係るホットスタンプ部品用鋼板の製造方法を説明する。
(1)圧延工程
上述した化学組成を有する鋼塊または鋼片を、1150~1350℃に加熱後、1000~1150℃で粗圧延を完了し、Ae+50℃以上で仕上圧延を完了させる。
鋼塊または鋼片の加熱によりMnS,複合炭窒化物NbTi(C,N)が固溶する。
MnSは、1200~1250℃程度で固溶する。また、複合炭窒化物NbTi(C,N)は、1150℃以上でNbが優先的に固溶し、さらに温度を上げるとTiも固溶する。Nbが優先的に固溶すれば、その後の冷却過程において複合炭窒化物NbTi(C,N)が微細に再析出する。このため、MnSと複合炭窒化物NbTi(C,N)の両方を固溶させ微細析出させるために、鋼塊または鋼片の加熱温度は、1150℃以上であり、好ましくは1200℃以上である。
一方、鋼塊または鋼片の加熱温度を高くし過ぎると、エネルギーコストが嵩むことから、鋼塊または鋼片の加熱温度は、1350℃以下であり、好ましくは1300℃以下である。
また、鋼塊または鋼片を十分に均熱化するために40分間以上加熱することが好ましく、1時間以上加熱することがより好ましい。しかし、鋼塊または鋼片の加熱時間が2.0時間を超えるとエネルギーコストが嵩むことから、鋼塊または鋼片の加熱時間は、2.0時間以下であることが好ましい。
鋼塊または鋼片を以上のように加熱した後、粗圧延を開始し、1000~1150℃で粗圧延を完了する。粗圧延の完了温度が1000℃未満であると、後述する仕上圧延の完了温度を満足することができなくなり、一方、粗圧延の完了温度が1150℃を超えると、再結晶は進行するものの、結晶粒の粗大化が進行し、仕上圧延での結晶粒の粗大化につながる。
この後、Ae+50℃以上で仕上圧延を完了する。Ae+50℃より低い温度で熱間圧延を施すと、冷却中に生成するフェライトが微細化し、フェライト粒界上にセメンタイトが生成しやすくなる。本発明の化学組成系では、熱間圧延の完了温度がAe+50℃以上であれば、これらの問題は生じない。一方、熱間圧延完了温度が1050℃を超えると、スケール噛み込み等の表面欠陥を生じるおそれがある。したがって、熱間圧延の完了温度は1050℃以下であることが好ましい。
なお、Ae点は下記式に従って算出する。
Ae(℃)=937-477C+56Si-20Mn-16Cu-15Ni-5Cr+38Mo+136Ti-19Nb+198Al+3315B
但し、上記式中の元素記号は、鋼板中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合には0を代入するものとする。
(2)冷却工程
前記圧延工程後、5秒間以上保持した後に、平均冷却速度30℃/秒以下で800℃まで冷却する。
Ae+50℃以上で仕上圧延を完了し、仕上圧延後5秒間以上保持した後に一次冷却を開始すること、すなわち仕上圧延から冷却開始までの間に5秒間以上の時間を確保することにより、再結晶オーステナイトからの変態とし、フェライト粒を粗大化させることによりフェライト粒界に存在するパーライト外の粒径0.2μm以上のセメンタイトの個数密度を、10.0個/10000μm未満に低減することができる。
このように、セメンタイトの個数密度を低減するために、800℃までの平均冷却速度を30℃/秒以下に抑制する。
(3)巻取工程
熱間圧延後には、金属組織をフェライトおよびパーライトからなる混合組織とし、フェライト粒界にセメンタイトを形成し難くするため、600~750℃でコイルに巻取る。
すなわち、セメンタイトへのCr,Mnの濃化は、鋼中のCr,Mnの拡散によって進行する。パーライト中のセメンタイトと比較してフェライト粒界上に存在するセメンタイトには粒界拡散によって速く濃化が進行する。したがって、セメンタイトの溶解を促進するには、粒界上のセメンタイトの生成を抑制することが有効である。粒界上のセメンタイトの生成を抑制するためには、駆動力の小さい温度域で変態させる必要がある。
このような観点から、本発明では、巻取温度を600~750℃とする。なお、巻取温度を600℃未満にすれば、そもそもセメンタイトへCr,Mnは濃化しないものの、冷間圧延を行う際の荷重が増大するといった製造性を阻害する場合があるため、本発明では、高温巻き取りでも溶け易いセメンタイトを得ることとする。一方、巻取温度が750℃を超えると熱延巻取後に強度が低下するため、上限を750℃とする。
その後、必要に応じて、コイルに巻取られたコイル(鋼帯)を巻き戻してから、酸洗、ショットブラスト、研削等の1種または2種以上の処理により、表面に生成したスケールの除去処理(脱スケール)を行ってもよい。
(4)冷間圧延工程
巻取り後、必要に応じて冷間圧延が行われる。冷間圧延は、上述した脱スケールを実施した後に行う。冷間圧延は、周知慣用の条件を行えばよく、冷間圧延温度は10~60℃とすることが好ましい。冷間圧延することにより、ホットスタンプ後の結晶粒径が微細化する、という効果がある。
(5)焼鈍工程
冷間圧延の後に、必要に応じて焼鈍が行われる。巻取り後、酸洗などを行い脱スケール後に冷間圧延工程を行わず直接焼鈍を行ってもよい。焼鈍は600℃以上で行えばよく、セメンタイトへのCr,Mnの濃化を防止する観点から、オーステナイト相が析出する700℃以上が好ましい。オーステナイト相を活用してセメンタイトの再溶解を促進することでセメンタイトへのCr、Mn濃化を抑制する。しかし、焼鈍温度が900℃を超えると、この効果が飽和するだけでなく、工業的にも燃焼コストが増大する。
焼鈍は、アンコイル状態で行う連続焼鈍でもよいし、コイルに巻取って行う箱焼鈍でもよい。
焼鈍条件は、周知慣用の条件を採用すればよく、例えば、冷延鋼帯を連続焼鈍する場合には、730~900℃に加熱し、その温度域で10秒間以上保時した後、1~100℃/秒の平均冷却速度で300~500℃の温度域まで冷却し、さらに300~500℃の温度域に30秒間~10分間保持し、その後に1~50℃/秒の平均冷却速度で室温まで冷却することにより、焼鈍を行う。
このようにして、本発明に係るホットスタンプ部品用鋼板が製造される。
実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
表1および表2に示す化学組成(表1および表2に示す以外の残部はFeおよび不純物)を有するスラブを、表3に示すスラブ加熱温度およびスラブ加熱時間で加熱した後に粗圧延を開始し、表3に示す粗圧延完了温度で粗圧延を完了し、さらに、表3に示す仕上圧延完了温度で仕上圧延を完了して板厚3.2mmとし、表3に示す巻取温度でコイルに巻取った。
巻取ったコイルのうちいくつかのものについては、巻戻して脱スケールを行い、焼鈍を行った。また、別の一部のものについては、コイルを巻戻した後に酸洗を行って脱スケールを行い、その後、冷間圧延を施して板厚1.6mmとした。
冷間圧延を施したもののうち一部のものについてはさらに焼鈍を行った。冷間圧延、焼鈍を行ったものについては表3に冷間圧延温度と焼鈍温度を示した。なお、表3中のRTは室温を示す。表2および表3における下線は本発明の範囲外であることを示す。
Figure 0007436825000001
Figure 0007436825000002
Figure 0007436825000003
製造したコイルについては、ホットスタンプ処理を施し、ホットスタンプ処理後のホットスタンプ部品の組織観察を行うとともに、ホットスタンプ部品用鋼板としての特性を有するか評価した。具体的には、No.1~34、x1~x14のホットスタンプ部品用鋼板を製造するとともに、下記(1)~(2)に示す組織観察を行った。
(1)金属組織
試料L断面を鏡面研磨した後、ナイタールエッチングを行い、板厚1/4厚における組織観察を光学顕微鏡にて行った。倍率500倍の光学顕微鏡写真から画像解析によりフェライトの面積率およびパーライトの面積率を求めた。
(2)フェライト粒界に存在するとともに、パーライトを構成するセメンタイトを除く粒径0.2μm以上のセメンタイトの個数密度
鋼板の一部から試料片を切り出し、試料L断面を鏡面研磨した後、ナイタールエッチングを行い、走査型顕微鏡内で観察を行った。ここで、組織観察は、平均的な位置でのセメンタイトの個数密度を調査する観点から、板厚1/4t位置における100μm×100μm領域において行い、粒径0.2μm以上のセメンタイトについてEDXで組成分析を行い、フェライト粒界に存在するとともに、パーライトを構成するセメンタイトを除く粒径0.2μm以上のセメンタイトの個数密度を測定した。
一方、鋼板特性に関し、下記(3)~(4)に示す方法により評価した。
(3)強度(TS,YS),伸びEL
JIS Z 2201に規定される5号試験片を鋼板より採取し、JIS Z 2241に準拠した引張試験を行い、引張強度TS,降伏強度YSおよび伸びELを評価した。
(4)限界曲げR
曲げ性評価に関しては、鋼板から30mm×100mmの試験片を採取し、先端Rが2.0~5.0のパンチにて90度曲げ試験を行い、曲げ部に割れが発生する最大Rを求めた。割れが発生する最大Rは板厚tにも依存するため、得られた最大Rを板厚tで除算して、限界R/tとして、R/tが2.20以下のものを曲げ性が良好なものとして評価した。
表4に、組織観察の結果を示す。また、表5に板厚および鋼板の機械特性の結果を示す。表4における下線は本発明の範囲外であることを示し、表5における下線は機械特性が芳しくない値であることを示す。
Figure 0007436825000004
Figure 0007436825000005
表5におけるNo.1~No.34は本発明の規定を全て満足する本発明例であり、No.x1~x14は本発明の規定を満足しない比較例である。
表5に示すように、No.1~No.34の本発明例は、40%以上のパーライトおよびフェライトの混合組織からなり、フェライト粒界に存在するとともに、パーライトを構成するセメンタイトを除く粒径0.2μm以上のセメンタイトの個数密度:9.8個/10000μm以下を得られ、焼戻しを行わずにホットスタンプ成形とその際の焼入れのままで、TS:1802~2510(MPa),YS:1221~1655(MPa),EL:7.6~10.8(%),限界R/t:1.9~2.2の機械特性を有しており、超高強度(特に引張強度が1.8GPa以上)を有するとともに耐破壊特性が大きく改善されたホットスタンプ部品を製造できることが分かる。
これに対し、No.x1およびNo.x2は、S含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x3は、粗圧延完了温度が本発明の範囲の下限を下回り、結果として仕上圧延完了温度も本発明の範囲の下限を下回るため、セメンタイト粒界上のセメンタイトの個数密度が高くなった。これにより、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x4は、仕上圧延完了後の保持時間が本発明の範囲の下限を下回るため、セメンタイト粒界上のセメンタイトの個数密度が高くなり、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x5は、800℃までの平均冷却速度が本発明の範囲の上限を上回るため、セメンタイト粒界上のセメンタイトの個数密度が高くなり、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x6は、Si含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x7は、Mn含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x8は、Cr含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x9は、Nb含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x10は、Ti含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x11は、B含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x12は、Al含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x13は、N含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。
No.x14は、O含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、限界R/tが芳しくない値であった。

Claims (8)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.27~0.50%、
    Si:0.001~2.00%、
    Mn:0.001~3.00%、
    P:0.100%以下、
    S:0.0050%未満、
    Nb:0.0001~0.100%、
    Cr:0.001~0.50%、
    Al:0.0001~0.1000%、
    Ti:0.001~0.500%、
    O:0.0030%未満、
    B:0.0006~0.0030%、
    N:0.0100%以下、および、
    残部:Feおよび不純物であり、
    金属組織が、フェライトおよびパーライトの混合組織であって、面積%で、
    パーライト:40%以上であり、
    フェライト粒界に存在するとともに、パーライトを構成するセメンタイトを除く粒径0.2μm以上のセメンタイトの個数密度が10.0個/10000μm未満である、ホットスタンプ部品用鋼板。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    V:2.00%以下、
    Ta:0.50%以下、および、
    W:3.00%以下、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載のホットスタンプ部品用鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Ni:5.00%以下、
    Cu:3.00%以下、および、
    Mo:0.50%以下、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1または請求項2に記載のホットスタンプ部品用鋼板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    Mg:0.0030%以下、
    Ca:0.0030%以下、
    La:0.030%以下、および、
    Ce:0.030%以下、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1~請求項3のいずれかに記載のホットスタンプ部品用鋼板。
  5. 請求項1~請求項4のいずれかに記載のホットスタンプ部品用鋼板を製造する方法であって、
    前記化学組成を有する鋼塊または鋼片を1150~1350℃に加熱後、1000~1150℃で粗圧延を完了し、Ae+50℃以上で仕上圧延を完了させる圧延工程と、
    前記圧延工程後、5秒間以上保持した後に、平均冷却速度30℃/秒以下で800℃まで冷却する冷却工程と、
    前記冷却工程後、600~750℃で巻き取る巻取工程と、
    を含む、ホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
  6. 前記巻取工程の後、脱スケールを実施して、冷間圧延を行う冷間圧延工程を含む、請求項5に記載のホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
  7. 前記冷間圧延工程の後、焼鈍を行う焼鈍工程を含む、請求項6に記載のホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
  8. 前記巻取工程の後、脱スケールを実施して、焼鈍を行う焼鈍工程を含む、請求項5に記載のホットスタンプ部品用鋼板の製造方法。
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