JP7413350B2 - シアン化水素の精製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シアン化水素の精製方法に関する。さらに本発明は、本発明の精製方法から得られたシアン化水素を3-メルカプトプロピオンアルデヒドと反応させることによる2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルの製造方法にも関する。
発明の背景
シアン化水素(HCN)は、いわゆるアンドリュッソー法、またはいわゆるBMA法もしくはデグサ法で製造することができる。アンドリュッソー法は、白金触媒の存在下、メタン、アンモニア、および酸素からの気相反応で、シアン化水素を生成する:
CH+NH+1.5O→HCN+3HO,ΔH=-481.06kJ/mol
アンモニア、天然ガス(メタン)、および酸素を反応器内に供給し、白金触媒の存在下、800~1500℃の範囲の温度で反応させる。典型的には、メタンは天然ガスから供給され、さらに精製することができる。天然ガス中にはC、C、および高級炭化水素(たとえば、エタン、エテン、プロパン、プロペン、ブタン、ブテン、イソブテン等、まとめてC2+炭化水素と呼ばれるもの)が存在し得る。酸素源として空気を用いることができるが、非希釈酸素および酸素富化空気を用いて(すなわち酸素アンドリュッソー法で)反応を実施することもできる。主反応により提供される反応熱は複数の副反応を生じさせ、それらはたとえばWaletzko, N., Schmidt, L.D. “Modeling Catalytic Gauze Reactors: HCN Synthesis”, AIChE Journal vol. 34, no. 7, 1146-1156 (1988)などの文献で詳しく論じられている。
したがって、アンドリュッソー法では、反応器の一次生成物に、シアン化水素、未反応アンモニア、一酸化炭素、窒素、およびさらなる反応副生成物、特にアセトニトリル、アクリロニトリル、およびプロピオニトリルなどのニトリルが含まれる。
BMA法という名称は、ドイツ語の、Methan(メタン)およびAmmoniak(アンモニア)からのBlausaeure(シアン化水素)の略称である。したがって、BMAという名称自体が、この方法がメタンおよびアンモニアから白金触媒の存在下、シアン化水素を生成するものであることを示している。反応式は、メタンと水との水蒸気メタン改質(SMR)反応と類似している:
CH+NH→HCN+3H,ΔH=251kJ/mol
この反応は極めて吸熱性が高く、反応物であるメタンおよびアンモニアを、白金触媒が被覆されたアルミナチューブ内で、およそ1400℃で反応させる。こうして得られた生成物混合体は、約23体積%のシアン化水素および約72体積%の水素のほか、少量のアンモニアを含有している。
どちらの方法でも、シアン化水素および未反応アンモニアを含有する生成物気体流を、出口部で、約100~400℃の温度までクエンチする。その後、こうして冷却された生成物流をアンモニア除去方法に送り、そこでアンモニアを酸性水溶液、たとえばリン酸または硫酸と接触させることにより、アンモニアを非揮発性アンモニウム塩に転化させる。次に、このアンモニアを含まない生成物気体流をHCN吸収塔に送り、そこでHCNを水に吸収させる。こうして得られたHCN水溶液を、次に蒸留塔で精製して、シアン化水素を含有する塔頂流、および含水塔底流を得、後者は再利用される場合もあるし、廃棄される場合もある。詳しくは、HCN水溶液を標準的な蒸留塔で精製し、HCN水溶液は、蒸留塔の上部と底部との間の一箇所、いわゆる供給段から、該塔に導入される。この導入箇所または供給段は、該蒸留塔を、供給段よりも上の精留セクションと、供給段よりも下のストリッピングセクションとに分けてもいる。従来技術の方法では、塔の上部に達する蒸気を、蒸留塔上部の内側か蒸留塔の外側のいずれかに配置され得る塔頂凝縮器内で冷却し凝縮させて液体にする(たとえば概論的な論文、Cyano Compounds, Inorganic in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, 2012, Vol. 10の673~710ページ、特に1.2章の675~678ページおよび676ページの図3を参照)。この液体の一部は還流として塔へ戻され、残りは留出物または塔頂生成物として抜き出される。この蒸留塔での一連の流れパターンは、上昇する蒸気と、充填物またはトレイを降下する液体流との、塔全体のすべての充填物またはトレイ上での対流接触を提供する。しかし、シアン化水素の所望の純度を実現するのに必要とされる還流は、塔内の高級ニトリル、たとえばアセトニトリル、アクリロニトリル、およびプロピオニトリルの蓄積を招く。このようなニトリルが高濃度で存在すると、塔内で2つの別々の液相が発生することがあり、それが2つの液相間の相境界で典型的に生じる重合の問題、および泡形成を招く。
公開特許出願の国際公開第2017/011428号は、シアン化水素中のニトリルの量を減じる方法を開示している。具体的には、同文書は、HCN、水、およびニトリルを含む反応生成物を分離槽へ供給すること、該分離槽からHCN、水、およびニトリルを含む液体スリップ流を取ること、ならびに該液体スリップ流を側流ストリッパー内に供給して、HCNを含む混合体からニトリルをパージすること、を含む方法を教示している。しかし、国際公開第2017/011428号の実験データによると、この方法は、分離槽内のニトリルの蓄積を抑制しておらず、または少なくとも大幅に減じていない。側流ストリッパーから出ていくニトリルパージ流が、かなりの量のニトリルを含有している。
このように、シアン化水素の精製において、アンドリュッソー法またはBMA法から得られるような、ニトリルの蓄積、および同じく高分子副生成物の形成を抑制する方法が、必要とされていた。
発明の概要
この問題は、蒸留塔から抜き出されたシアン化水素が富化された塔頂蒸気流を、標準的な蒸留方法のように凝縮器または外部熱交換器内で液化しないことにより解決されることが見出された。したがって、蒸留塔の上部に戻る液化塔頂流の外部還流がない。標準的な蒸留方法と違って、シアン化水素を含有する液体供給流(1)を少なくとも2つの流れ(2)および(3)に分流することを含む特別な蒸留方法に、シアン化水素を含有する供給流を供給する。流れ(2)は、蒸留塔の上部と底部との間の箇所で該蒸留塔内に導入される。この流れ(2)に加えて、同じく供給流(1)から分流された任意選択のさらなる流れが、該蒸留塔の上部と底部との間の、流れ(2)の導入箇所とは別の箇所で該蒸留塔内に導入され得る。流れ(3)は、該蒸留塔の上部で該蒸留塔内に導入される。特に特定の精製度で塔内の構成成分の分離を実現するのに必要な還流を提供するために、流れ(3)が、流れ(2)および任意選択のさらなる流れの温度よりも低い温度で、該蒸留塔内に導入される。シアン化水素が枯渇した塔底流が、該蒸留塔の底部から抜き出され、シアン化水素が富化された塔頂蒸気流が、該蒸留塔から抜き出される。
したがって本発明の目的は、シアン化水素の精製方法であって、該方法は、
a)シアン化水素を含む液体供給流(1)を、少なくとも第1の液体流(2)と第2の液体流(3)とに分流するステップ、
b)温度T1の該第1の液体流(2)を、蒸留塔(4)の上部と底部との間の箇所で該蒸留塔に導入するステップ、
c)温度T2の該第2の液体流(3)を、該蒸留塔(4)の上部で該蒸留塔に導入するステップ、
d)シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)を、該蒸留塔(4)から抜き出すステップ、および
e)シアン化水素が枯渇した塔底流(6)を、該蒸留塔(4)から抜き出すステップ、を含み、
ステップc)の第2の液体流(3)の温度T2は、ステップb)の第1の液体流(2)の温度T1よりも低い。
本発明のシアン化水素の精製方法の概略図である。 第1の液体流(2)を塔底流(6)との熱交換により加熱してから蒸留塔(4)内に導入する、本発明の方法の一実施形態の図である。 蒸留塔(4)から抜き出された塔頂蒸気流(5)の全部または一部を凝縮させて、液化流(13)と、適宜、残渣蒸気流(14)とを得る、本発明の方法の一実施形態の図である。 図2および図3に示す特徴を組み合わせた、本発明の方法の一実施形態の図である。 蒸留塔(4)から抜き出された塔頂蒸気流(5)を凝縮させ、得られた液化流(13)の一部を還流(15)として蒸留塔(4)に戻す、従来技術のシアン化水素の精製方法の図である。
発明の詳細な説明
本発明の方法で用いられる蒸留塔は、少なくとも1つのボイラーまたはリボイラーを含み、それが蒸留塔内の構成成分を蒸発させるのに必要なエネルギーを提供する。
本発明の精製方法に用いられる蒸留塔は、特定のタイプの蒸留塔に限定されず、トレイ塔、不規則充填塔、または規則充填物を備えた塔であってもよい。
ステップa)の液体供給流(1)は、HCNが水に吸収されるHCN吸収塔から得ることができる。その場合、ステップa)の液体供給流(1)は、シアン化水素水溶液を含む流れであって、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも98重量%の水とシアン化水素との合算量を含む。同じことが、第1の液体流(2)および第2の液体流(3)、ならびに同じくシアン化水素を含む液体供給流(1)からの分流である任意選択のさらなる流れにも当てはまる。本発明の方法は、この液体供給流(1)中の特定の構成成分、特にシアン化水素の濃度に関して限定されない。この供給流(1)からの分流である第1の液体流(2)および第2の液体流(3)および任意のさらなる流れについても、必然的に同じことが当てはまる。したがって、液体供給流(1)は、1~99重量%のシアン化水素、好ましくは1~75重量%、1~50重量%、1~25重量%のシアン化水素を含有し得る。具体的には、液体供給流(1)は、1~7重量%のシアン化水素、さらに具体的には4~5重量%のシアン化水素を含む。典型的には、ニトリルの含有量は、シアン化水素反応器内に供給される、天然ガスを含む供給流の組成に大きく左右される。好ましくは、液体供給流(1)中アセトニトリルとアクリロニトリルとの合算量は、重量基準で1~5000ppmの範囲である。
本発明の精製方法は、蒸留塔内のニトリルおよび高分子副生成物の蓄積の大幅な減少をもたらすことが見出された。特に、本発明の方法では、アセトニトリルおよびアクリロニトリルの蓄積が大幅に減少することが見出された。具体的には、本発明の方法で用いられるトレイ蒸留塔の各トレイにおける副生成物のアセトニトリルおよびアクリロニトリルの量は、ゼロに近い。それと比べて、粗シアン化水素を精製する従来技術の蒸留方法では、副生成物のアセトニトリルおよびアクリロニトリルが蒸留塔の上部に60%ほども蓄積することがある。特定の理論に縛られるものではないが、この効果は、シアン化水素を精製する従来技術の蒸留方法の蒸留塔に沿っての温度プロファイルと比べて、本発明の方法の蒸留塔に沿っての異なる温度プロファイルに基づくと考えられる。従来技術の蒸留塔の上部の温度は、粗シアン化水素を還流比1で蒸留する場合、約26℃と測定される。アセトニトリルおよびアクリロニトリルなどの高級ニトリルは、HCNの沸点と水の沸点との間の沸点を有する。したがって、これらの副生成物は、典型的には蒸留塔内に蓄積する。ところが塔内にニトリルが蓄積すれば、2つの別々の液相の形成に影響を与えることは必至である。さらに問題なのは、これらの相間の相境界で起きる、高分子副生成物の形成である。したがって、この相分離が重合に影響を与え、必然的に蒸留装置内の付着を招き、蒸留停止が必要になることもある。従来技術の蒸留方法と比べて、本発明の方法は、蒸留塔の上部のより高い温度をもたらす。具体的には、本発明の方法では、蒸留塔(4)の上部で30℃を上回る温度が測定される。本発明の方法の蒸留塔の上部のこのようなより高い温度は、従来技術の方法の蒸留塔の上部と比べて、より高い水量をもたらす。こうして、本発明の方法の蒸留塔における相分離のみならず、別の液相中のアセトニトリルおよびアクリロニトリルなどの副生成物の蓄積も防止される。
また、本発明の方法は、従来技術のシアン化水素の精製方法と比べて、蒸留塔(4)運転用のエネルギー入力の大幅な節約ももたらす。具体的には、本発明の方法は、シアン化水素を精製する従来技術の蒸留方法と比べて、蒸留塔(4)のリボイラー使用を20%よりも多く減じることが見出された。
シアン化水素を含む液体流の精製中の相分離を回避するために、蒸留塔(4)は、塔上部の温度が好ましくは少なくとも30℃、好ましくは少なくとも35℃、40℃、または45℃で運転される。
本発明の方法のある実施形態では、蒸留塔(4)は、塔上部の温度が少なくとも30℃で運転される。
本発明の方法のある好ましい実施形態では、蒸留塔(4)は、塔上部の温度が30℃~50℃の範囲で運転される。
具体的には、蒸留塔(4)は、塔上部の温度が35℃~50℃、40℃~50℃、または45℃~50℃の範囲で運転される。
供給流(1)を分流することは、流れ(2)および(3)、ならびに流れ(2)および(3)に加えての任意のほかの流れの、それぞれの割合を調節することも可能にする。こうして得られた流れ(2)、(3)、および流れ(2)に加えての任意選択のさらなる流れの選択された流量は、これらの流れの所望の割合に相当する。流れ(2)および(3)ならびに流れ(2)に加えての任意の流れの総量は、供給流(1)の入力流と等しい。したがって、供給流(1)を分流することは、第1の液体流(2)対第2の液体流(3)の特定の質量流比または割合を調節することも可能にする。
第1の液体流(2)対第2の液体流(3)の95:5~50:50の範囲の質量流比が、蒸留塔(4)におけるニトリルの蓄積および高分子副生成物の形成の抑制に好適であるのみならず、蒸留塔の上部に達する蒸気を凝縮するのに必要な冷却の、および還流として再び蒸留塔へ供給される該凝縮された蒸気を蒸発させるのに必要なエネルギーの、全部または少なくとも一部の節約にもなることが、見出された。流れ(2)に対し相対的に既に小さい流れ(3)が、従来技術の手順に匹敵する品質のシアン化水素の精製を実現するのに十分である。本発明の方法では、第1の液体流(2)対第2の液体流(3)の質量流比は、好ましくは95:5~50:50、90:10~50:50、85:15~50:50、80:20~50:50、75:25~50:50、70:30~50:50、65:35~50:50、60:40~50:50、または55:45~50:50の範囲である。流れ(2)対流れ(3)の質量流比を85:15から75:25に減じることにより、蒸留塔のリボイラー使用は8%よりも多く減少する。同時に、塔頂蒸気流の含水量が13.9重量%から6.9重量%に減少する。さらに、流れ(2)を少なくとも50%とする流れ(2)対流れ(3)の質量流比は、蒸留塔内の液相中ニトリルの最大濃度を、シアン化水素を精製する従来技術の蒸留方法における56%超から1%未満の値まで低下させる。したがって、ニトリルの蓄積は大幅に減少する。
本発明の方法のある実施形態では、第1の液体流(2)対第2の液体流(3)の質量流比は、95:5~50:50の範囲である。
本発明の方法が、第1の液体流(2)に加えてさらなる流れを蒸留塔(4)内に導入することを含む場合、第1の液体流(2)の質量流についてこれまでに記載した、そしてこの後記載する数値は、第1の液体流(2)の質量流と該流れ(2)に加えてのさらなる流れの質量流との和に相当する。
第1の液体流(2)対第2の液体流(3)の90:10~75:25の範囲の質量流比には、一度にいくつかの利点がある。第1に、塔頂蒸気流の含水量が7重量%未満となり、それは大規模方法でのシアン化水素のさらなる処理でも許容される。第2に、蒸留塔(4)の上部の温度が約47℃と測定される。この条件は、ニトリルの蓄積を抑制し、かつ蒸留塔(4)における高分子副生成物の形成も抑制する。さらに、蒸留塔(4)のリボイラーのエネルギー消費が、従来技術の蒸留方法と比べて5分の1に減少する。
本発明の方法のある好ましい実施形態では、第1の液体流(2)対第2の液体流(3)の質量流比は、90:10~70:30の範囲である。
特定の理論に縛られるものではないが、リボイラー使用の節約は、従来技術の蒸留方法と比べて第1の液体流(2)の質量流を減じた結果と考えられる。したがって、質量流がより小さい流れ(2)を従来技術の蒸留手順の完全な供給流よりも高い温度に加熱することができ、したがって従来技術の蒸留手順よりもエネルギー消費が少なくなる。
還流比を下げれば、これと同様のエネルギー消費の低下が従来技術の蒸留手順でも生じるのでは、という考えもあろう。しかしシミュレーションの結果は、従来技術の粗HCNの蒸留の還流比の値をおよそ0.26まで下げても、水蒸気も冷水も節約できないことを実証している。それと比べて、本発明の方法で同じ生成物品質にまでHCNを精製すると、従来技術のシアン化水素の精製方法で必要とされる冷水がすべて節約されるのみならず、水蒸気も20%を上回る節約になる。冷水は、エネルギー集約的に、かつ高い費用をかけて生成しなければならない。こうして本発明の方法は、同じ生成物品質を提供する従来技術のHCN精製と比べて、全体的に34%を上回るエネルギー節約をもたらす。
本発明では、所望の精製度を実現するのに必要とされる還流が、供給流(1)から分流された第2の液体流(3)の導入によって提供される。HCNを精製するための標準的な蒸留手順と違って、第2の液体流(3)は、蒸留塔(4)への導入前に加熱されない。この流れ(3)は、本発明の方法における蒸留塔の頭部温度よりも好ましくは低い温度で、蒸留塔(4)内に導入される。好ましくは、ステップc)の第2の液体流(3)の温度は、30℃未満、25℃未満でかつ高くても20℃、高くても15℃、または高くても10℃である。好ましくは、ステップc)の第2の液体流(3)の温度は、5℃~30℃未満、5℃~25℃未満、5℃~高くても20℃、5℃~高くても15℃、または5℃~高くても10℃の範囲である。
本発明の方法の別の実施形態では、ステップc)の第2の液体流(3)の温度T2は、25℃未満である。
本発明の方法のさらなる実施形態では、第1の液体流(2)は、蒸留塔(4)への導入前に加熱される。
このように加熱された流れ(2)は、その後加熱流(8)として蒸留塔(4)内に導入される。
本発明の方法のある好ましい実施形態では、第1の液体流(2)は、25℃~高くても130℃の温度T1に加熱される。この25℃~高くても130℃の範囲は、流れ(2)対流れ(3)の50:50の比、全液体の加熱流(8)、および最低の熱容量を有する純水を含む塔底流を含む、本発明の方法を実施するためのすべての条件を含む。好ましくは、第1の液体流(2)は25℃~高くても95℃の温度T1に加熱される。実施例で示すように、この温度T1は、流れ(2)対流れ(3)の質量流比75:25に特に好適である。
本発明の方法では、ステップc)の第2の液体流(3)の温度T3が25℃未満であること、およびステップb)の第1の液体流(2)の温度T1が25℃~高くても130℃の範囲であることが好ましい。
最適な熱的統合のために、第1の液体流(2)を、蒸留塔(4)から得られた塔底流(6)との熱交換により加熱することが好ましい。この塔底流は、高い熱容量を有するので、ほとんどの熱を流れ(2)に伝達することができる。この加熱は、熱交換器(7)内で行うことができる。塔底流(6)から流れ(2)への熱伝達後、こうして加熱された流れ(8)は蒸留塔(4)内に導入され、こうして冷却された塔底流(6)は廃棄されるか、流れ(11)としてさらなる利用へ送られる。この流れ(11)は、主として水、およびせいぜい数ppmの高沸点の蒸留副生成物を含む。しかし、極めて低量のこうした副生成物は、シアン化水素に何ら影響しない。したがって、シアン化水素の製造において、流れ(11)を吸収塔へ送ることが好ましく、そこでシアン化水素が水に吸収される。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、第1の液体流(2)が、蒸留塔(4)から得られた塔底流(6)との熱交換により加熱される。
蒸留塔(4)への導入前に第2の液体流(3)を冷却することは、シアン化水素の純度に関するさらなる改善につながる。該冷却することは、熱交換器(9)によって実施することができ、こうして冷却された流れ(3)は、流れ(10)として蒸留塔(4)内に導入される。
好ましくは、第2の液体流(3)は蒸留塔(4)への導入前に冷却される。
第2の液体流(3)が蒸留塔(4)への導入前に5~20℃の温度T2に冷却されることが、さらに好ましい。
本発明では、第1の液体流(2)が、蒸留塔(4)の上部と底部との間の箇所で導入される。この特定の箇所は、しばしば供給段とも呼ばれ、蒸留塔を、供給段よりも下のストリッピングセクションと、供給段よりも上の精留セクションとに分ける。供給段は、蒸留塔(4)の分離段の30~70%、好ましくは50~65%をストリッピングセクションに、残りを精留セクションに供給するように、好ましくは選ばれる。たとえば、蒸留塔が20の分離段を有していて、1段目が塔上部に、20段目が塔底部にある場合、供給段は、該20の分離段の6段目~14段目、好ましくは該20の分離段の7段目~10段目にある。
しかし、本発明の方法は、供給流(1)が分流され、かつ蒸留塔内に導入される流れの数について、特に限定されない。したがって、本発明の方法は、同じく蒸留塔に沿った箇所で導入される、第1の液体流(2)に加えてのさらなる流れの数についても、特に限定されない。供給流(1)が2つ以上の流れに分流される場合、第1の液体流(2)に加えての1つまたは複数の流れは、蒸留塔の精留セクションに沿った箇所で好ましくは導入され、それは第1の液体流(2)の導入箇所とは異なる。好ましくは、この第1の液体流(2)に加えてのさらなる流れは、第1の液体流(2)の導入箇所とは異なる、蒸留塔(4)の上部と底部との間の箇所、具体的には第1の液体流(2)導入箇所と第2の液体流(3)の導入箇所との間の箇所で、導入される。該さらなる流れが、蒸留塔内への導入時の第1の液体流(2)の温度T1と、蒸留塔内への導入時の第2の液体流(3)の温度T2との間の温度T3で蒸留塔内に導入されることが、さらに好ましい。
本発明の精製方法のある実施形態では、
f)第1の液体流(2)に加えて、同じくシアン化水素を含む液体供給流(1)からの分流である少なくとも1つのさらなる液体流を、第1の液体流(2)導入箇所と第2の液体流(3)の導入箇所との間の箇所で、蒸留塔(4)内に導入するステップであって、該さらなる流れの温度T3が、ステップc)の第2の液体流(3)の温度T2と、ステップb)の第1の液体流(2)の温度T1との間である、ステップ、をさらに含む。
本発明の精製方法の好ましい実施形態では、ステップb)で蒸留塔内に導入される第1の液体流(2)の質量流は、第1の液体流(2)に加えて該蒸留塔内に導入される少なくとも1つのさらなる流れの質量流よりも大きい。
原則として、本発明の方法が目指すのは、シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)の一部または全部を凝縮することも、そうして液化された流れの還流を蒸留塔(4)の上部に供給することも、回避することである。したがって、ステップd)では、該シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)は、蒸留塔(4)から抜き出された後、好ましくは凝縮されない。したがって、該塔頂蒸気流(5)は、蒸留塔(4)から抜き出された後、好ましくは何ら凝縮なしでさらに処理される。
とはいえ、かわりに、塔頂蒸気流(5)の少なくとも一部を蒸留塔(4)から抜き出した後に凝縮させて液化流(13)を得てもよく、それはさらなる処理または貯蔵タンクのいずれかへ供給される。塔頂蒸気流(5)が完全には凝縮されない場合、塔頂蒸気流(5)の非凝縮部は残渣蒸気流(14)となる。この塔頂蒸気流(5)の(部分)凝縮は、凝縮器(12)内で実施される。この凝縮は、蒸留塔から抜き出された後で塔頂蒸気流のどれだけが凝縮されても、本発明の精製方法、およびそれによって実現される有益な効果に対し、何ら影響しない。この実施形態は、本発明の方法から得られるシアン化水素の消費の変動に対応すること、または所要の量のシアン化水素をもっと顧客に輸送しやすい形態で提供することを、可能にする。したがって、この特定の実施形態は、液化流(13)対残渣蒸気流(14)の特定の比に限定されない。
代替実施形態では、本発明の精製方法が、
g)蒸留塔(4)から抜き出された塔頂蒸気流(5)の少なくとも一部を凝縮させて、液化流(13)と、適宜、残渣蒸気流(14)とを得るステップ、および
h)ステップg)の液化流(13)をさらなる処理または貯蔵タンクへ供給するステップ、
をさらに含む。
ステップg)で塔頂蒸気流(5)が完全には凝縮されない場合、残渣蒸気流(14)となる塔頂蒸気流(5)の非凝縮部は、好ましくはそのまま、すなわち何ら凝縮なしで、さらなる処理へ供給される。あるいは、塔頂蒸気流(5)をステップg)で完全に凝縮させて液化流(13)を得る場合もあり、それがステップh)でさらなる処理または貯蔵タンクへ供給される。
本発明の方法では、シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)および/またはシアン化水素が富化された残渣蒸気流(14)は液化されず、したがって蒸留から得られた蒸気の形態でさらなる処理へ送ることができる。したがって、塔頂蒸気流(5)または残渣蒸気流(14)のさらなる処理には、流れの貯蔵は含まれない。これらの流れはいずれも、そのまま、すなわち本発明の精製方法から得られたまま、さらに処理されて、新たな化学生成物またはシアン化水素との混合体が得られる。
本発明の精製方法の一実施形態では、ステップd)で蒸留塔(4)から抜き出された塔頂蒸気流(5)は、該塔頂蒸気流の凝縮なしで、さらに処理される。
本発明の精製方法の別の実施形態では、ステップh)の残渣蒸気流(14)は、該蒸気流の凝縮なしで、さらに処理される。
本発明の文脈では、さらなる処理は、塔頂蒸気流(5)および/または残渣蒸気流(14)のいずれかの流れ自体の液化を除く、該流れのいずれかをさらに反応させ、かつ/または任意のさらなる構成成分と混合する、任意の処理である。
シアン化水素が富化され、かつ本発明の精製方法によって得られた塔頂蒸気流(5)または残渣蒸気流(14)が、より危険性の少ない化合物に転化される場合、安全面に関するさらなる改善が実現される。このことは、シアン化水素の潜在的リスクを大幅に低下させる。経済的な観点から、こうして得られたシアン化水素由来の化合物は、適切な最終または中間生成物となろう。中間生成物の場合、該シアン化水素由来の化合物は、経済的に適切なほかの化合物に容易に転化可能であろう。
シアン化水素は、必須アミノ酸D,L-メチオニンの大規模生成における重要な出発化合物であり、この方法では、シアン化水素を、3-メチルメルカプトプロピオンアルデヒドまたはその略称であるMMPとしても知られる、3-メチルチオプロパナールと反応させて、2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸ニトリル(2-hydroxy-4-methylthiobutytic acid nitrile)を得る。この反応は、ピリジンまたはトリメチルアミンなどの好適な触媒の存在下で実施することができる。こうして得られた2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸ニトリルを鉱酸の存在下で加水分解して、メチオニンヒドロキシの類似体またはその略称であるMHAとしても知られる、2-ヒドロキシ-4-メチル酪酸を得ることができる。あるいは、2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸ニトリルを炭酸水素アンモニウムとさらに反応させて、対応するヒダントインを得ることができ、それを塩基で鹸化してメチオン酸塩含有溶液を得て、該溶液を二酸化炭素または酸で酸性化することにより中性メチオニンを沈殿させる。シアン化水素を3-メチルチオプロパナールと反応させて2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸ニトリルを得ることのさらなる利点は、後者の化合物が3-メチルチオプロパナールよりもはるかに優れた貯蔵安定性を有することである。2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸ニトリルの製造は、たとえば公開特許出願の米国特許出願公開第2012/215022号明細書に開示されている。しかし、同文書に開示されている方法は、アンドリュッソー法によるシアン化水素の生成からの粗生成気体の使用を含み、したがってシアン化水素の含有量は低いが、ほかの構成成分の含有量のほうがむしろ高い。ところがそれらの付加的な構成成分は、2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸ニトリルの製造において何ら追加の利点に寄与しない。それらは非常に大きな物質流をもたらし、方法全体を通してその加熱および搬送には大きな装置設計および大きなエネルギー入力を必要とする。このことはしかし、米国特許出願公開第2012/215022号明細書の方法をエネルギーの観点からも経済的な観点からも魅力のないものにしている。それと比べて、本発明の精製方法は、シアン化水素が富化された蒸気流、すなわち塔頂蒸気流(5)または残渣蒸気流(14)のいずれか1つを3-メチルメルカプトプロピオンアルデヒドと反応させることにより、これらの流れを2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルの製造に用いることを可能にする。したがって、本発明の2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルの製造方法は、米国特許出願公開第2012/215022号明細書の方法よりも高い純度および少ないエネルギー入力で、2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルを得ることを可能にする。
したがって本発明の別の目的は、2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルの製造方法であって、
i)本発明のシアン化水素の精製方法でシアン化水素を精製して、シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)、またはシアン化水素が富化された残渣蒸気流(14)を提供するステップ、および
ii)該シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)、または該シアン化水素が富化された残渣蒸気流(14)を、3-メルカプトプロピオンアルデヒドと反応させて、2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルを得るステップ、を含む。
重合化および分解反応しやすい化合物である3-メルカプトプロピオンアルデヒドが、安定貯蔵できる化合物である2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルに転化されることは、この2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルの製造方法のさらなる利点である。
このさらなる目的のステップi)に関しては、本発明の精製方法の前述したすべての実施形態が適用される。
実施例
本明細書の実施例は、図2に示す蒸留方法に基づく、方法の電算モデルを用いて実施した。方法のモデル化は、エンジニアが実際のプラントを構築する前に複雑な化学方法をシミュレートするために用いる、確立された信頼できる方法である。本明細書の実施例の文脈では、市販のモデル化ソフトウェア、Aspen Plus(登録商標)(Aspen Technology, Inc., 20 Crosby Roads, Bedford, Massachusetts 01730, USA)を、公開データベースから入手可能な物理的性質データと組み合わせて用いた。
実施例1 本発明のシアン化水素を含むシアン化水素流の精製
図2に示す蒸留方法について、モデル化ソフトウェア、Aspen Plus(登録商標)を用いて、シアン化水素を含む流れの精製をシミュレートした:HCN吸収塔から得られた4~5重量%のシアン化水素を含む水溶液供給流(1)を、第1の液体流(2)と第2の液体流(3)とに分流する。流れ(2)は、熱交換器(7)内で、蒸留塔(4)から得られた塔底流(6)との熱交換により92℃の温度に加熱されて、加熱流(8)が得られる。この流れ(8)は、20段の蒸留塔(4)の7段目と10段目との間から導入される。こうして得られた主として水を含む冷却された塔底流(11)は、HCN吸収塔へと再利用される。流れ(3)は、24.9℃の温度で蒸留塔(4)の上部で導入される。シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)を蒸留塔(4)の上部で抜き出す。シアン化水素が枯渇しかつ水が富化された塔底流(11)を蒸留塔の底部から抜き出し、熱交換器(7)へ供給する。
蒸留塔(4)から抜き出される塔頂蒸気流(5)の含水量は、第1の液体流(2)対第2の液体流(3)の質量流比によって変わる。具体的には、塔頂蒸気流(5)の含水量は、流れ(3)の割合を15重量%から25重量%に増加させることにより、すなわち流れ(2)対流れ(3)の質量流比を85:15から75:25に減じることにより、ほぼ14重量%から7重量%未満まで減少する。同時に、蒸留塔(4)のリボイラー使用は、ほぼ9%低下する。流れ(3)の割合を25重量%よりさらに増加させても、塔頂蒸気流(5)含水量がさらに減少することも、蒸留塔(4)のリボイラー使用がさらに低下することもない。表1にこれらの結果をまとめる。この表では、従来技術(表1の一番下のエントリー)は、図5に示すシアン化水素を精製する従来技術の蒸留方法について計算した結果を示す。従来技術の方法と比べて、本発明の方法の塔頂蒸気流の含水量のほうが高いが、そのことはこうして得られたシアン化水素のさらなる処理に何ら問題ではない。それよりも重要なのは、本発明の方法が、液相中ニトリルアセトニトリルおよびアクリロニトリルの最大蓄積の非常に大きな減少(56重量%超から0.1重量%未満)と、蒸留塔のリボイラー使用の大幅な低下(7190kWから5700kW)とをもたらすことである。
Figure 0007413350000001
より良好な熱的な統合は、本発明の方法における蒸留塔(4)のリボイラー使用のさらなる改善をもたらす。詳しくは、供給流(1)の25重量%を占めた第2の液体流(3)が5~ほぼ25℃の範囲の温度に冷却されて、蒸留塔(4)の上部で導入される冷却流(10)が得られる。さらに、流れ(1)の75重量%を占める流れ(2)が93℃の温度に加熱されて、蒸留塔(4)の供給段から導入される加熱流(8)が得られる。冷却することにより、塔頂蒸気流(5)の含水量がさらに1.5重量%減少する。第2の液体流(3)の冷却に必要とされる冷却装置(9)のより高い冷却容量は、蒸留塔(4)のリボイラーによって補償されなくてはならない。したがって、蒸留塔(4)でのリボイラー使用は再び増加するが、ほんのわずかである(表2参照)。
Figure 0007413350000002
実施例2 従来技術の手順との比較
この実施例では、図5に示す従来技術の蒸留方法でシアン化水素を含む流れを精製した結果(実験データ)を、本発明の方法でシアン化水素を含む流れを精製した結果(図2に示す方法についてのAspen Plus(登録商標)を用いたシミュレーションデータ)と比較する。2つの方法の運転パラメーターを比較できるように、従来技術の方法を蒸留塔の上部の温度47.3℃で実施して、同一の組成および質の塔頂蒸気流(5)を得た。同じことが本発明の方法にも当てはまる。従来技術の蒸留方法では、蒸留塔の上部の温度を還流比0.26により調節した。本発明の方法では、第2の液体流(3)の割合を22.5重量%に調節することによって、蒸留塔(4)の上部の温度を調節する。2つの方法をよりよく比較できるように、2つの蒸留塔の運転のこれ以外の差異を避けた。したがって、本発明の方法では第2の液体流(3)は蒸留塔(4)内に導入される前に加熱されない。
従来技術の蒸留方法と比べて本発明の方法は、大幅に少ないエネルギー消費で同質の塔頂蒸気流を提供する。詳しくは、本発明の方法では還流を省くことにより、さもなくば冷蔵機により提供されなくてはならない冷水が大幅に節約されるのみならず、水蒸気も大きく節約される。表3にこれらの結果をまとめる。
Figure 0007413350000003
この比較例は、本発明の方法のより低い冷却要件およびより低い水蒸気消費を補償することは、従来技術の方法で還流比を下げても不可能であることを示している。
(1) シアン化水素を含む液体供給流
(2) 蒸留塔(4)の上部セクションと底部セクションとの間の箇所で蒸留塔(4)内に導入される、第1の液体分流
(3) 蒸留塔(4)の上部で蒸留塔(4)内に導入される、第2の液体分流
(4) 蒸留塔
(5) シアン化水素が富化された塔頂蒸気流
(6) シアン化水素が枯渇した塔底流
(7) 第1の液体流(2)を加熱する熱交換器
(8) 蒸留塔(4)の上部と底部との間の箇所で蒸留塔(4)内に導入される、熱交換器(7)から得られた加熱流
(9) 第2の液体流(3)を冷却する熱交換器
(10) 蒸留塔(4)の上部で導入される、熱交換器(9)から得られた冷却流
(11) 熱交換器(7)から得られた塔底流
(12) 塔頂蒸気流(5)の(部分)凝縮器
(13) (部分)凝縮器(12)から得られた液化流
(14) さらなる処理へ供給される残渣蒸気流
(15) 凝縮器(12)から得られた還流

Claims (14)

  1. シアン化水素の精製方法であって、
    a)シアン化水素を含む液体供給流(1)を、少なくとも第1の液体流(2)と第2の液体流(3)とに分流するステップ、
    b)温度T1の前記第1の液体流(2)を、蒸留塔(4)の上部と底部との間の箇所で前記蒸留塔に導入するステップ、
    c)温度T2の前記第2の液体流(3)を、前記蒸留塔(4)の上部で前記蒸留塔(4)に導入するステップ、
    d)シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)を、前記蒸留塔(4)から抜き出すステップ、および
    e)シアン化水素が枯渇した塔底流(6)を、前記蒸留塔(4)から抜き出すステップ、を含み、
    ステップc)の前記第2の液体流(3)の前記温度T2は、ステップb)の前記第1の液体流(2)の前記温度T1よりも低く、
    前記蒸留塔(4)の上部の温度を少なくとも30℃にして前記蒸留塔を運転する、
    方法。
  2. 前記蒸留塔(4)の上部の温度を30~50℃の範囲にして前記蒸留塔を運転する、請求項記載の方法。
  3. 前記第1の液体流(2)対前記第2の液体流(3)の質量流比が、95:5~50:50の範囲である、請求項1または2記載の方法。
  4. 前記第1の液体流(2)対前記第2の液体流(3)の質量流比が、90:10~70:30の範囲である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  5. ステップc)の前記第2の液体流(3)の前記温度T2が、25℃未満である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  6. 前記第1の液体流(2)を、前記蒸留塔への導入前に加熱する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  7. 前記第1の液体流(2)を、25℃~高くても130℃の温度T1に加熱する、請求項記載の方法。
  8. 前記第1の液体流(2)を、前記蒸留塔(4)から得られた前記塔底流(6)との熱交換により加熱する、請求項または記載の方法。
  9. f)前記第1の液体流(2)および第2の液体流(3)に加えて、同じくシアン化水素を含む前記液体供給流(1)からの分流である少なくとも1つのさらなる液体流を、前記第1の液体流(2)の誘導箇所と前記第2の液体流(3)の誘導箇所との間の箇所で、前記蒸留塔(4)内に導入するステップであって、前記さらなる流れの温度T3が、ステップc)の前記第2の液体流(3)の温度T2と、ステップb)の前記第1の液体流(2)の温度T1との間である、ステップ
    をさらに含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  10. 前記第1の液体流(2)を、ステップb)で、前記第1の液体流(2)に加えて前記蒸留塔内に導入される前記少なくとも1つのさらなる流れよりも大きい質量流量で前記蒸留塔内に導入する、請求項記載の方法。
  11. ステップd)で前記蒸留塔(4)から抜き出された前記塔頂蒸気流(5)を、凝縮させない、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
  12. g)前記蒸留塔(4)から抜き出された前記塔頂蒸気流(5)の少なくとも一部を凝縮させて、液化流(13)と、適宜、残渣蒸気流(14)とを得るステップ、および
    h)ステップg)の前記液化流(13)をさらなる処理または貯蔵タンクへ供給するステップ、
    をさらに含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  13. ステップh)の前記残渣蒸気流(14)を凝縮させない、請求項12記載の方法。
  14. 2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルの製造方法であって、
    i)請求項1から13までのいずれか1項記載のシアン化水素の精製方法によりシアン化水素を含む液体供給流(1)を精製して、シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)を提供するステップ、および
    ii)前記シアン化水素が富化された塔頂蒸気流(5)を3-メルカプトプロピオンアルデヒドと反応させて、2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルを得るステップ、
    を含む、方法。
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