以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
[熱処理システム]
図1は、本発明の実施形態に係る熱処理システム1の一例を模式的に示す図である。図1を参照して、熱処理システム1は、処理対象としての金属製の部材であるワーク16に対して熱処理を行うためのシステムとして設けられ、雰囲気置換装置10、熱処理室11、熱処理室12、雰囲気置換装置13を備えて構成されている。
熱処理システム1において、雰囲気置換装置10、熱処理室11、熱処理室12、雰囲気置換装置13は、この順番で連結されている。熱処理システム1にて処理されるワーク16は、まず、雰囲気置換装置10に搬入され、次いで、雰囲気置換装置10から熱処理室11、熱処理室12、雰囲気置換装置13へと順番に搬送され、雰囲気置換装置13から外部へ搬出される。
雰囲気置換装置10は、熱処理システム1においてワーク16が搬送される方向であるワーク搬送方向における最も上流側に配置されている。尚、図1では、ワーク搬送方向について、破線の矢印X1で示している。そして、雰囲気置換装置10は、ワーク搬送方向における下流側において、熱処理室11に連結されている。雰囲気置換装置10は、ワーク16の搬出先の熱処理室11内の雰囲気を熱処理システム1の外部の大気から遮断するために設けられている。ワーク16が雰囲気置換装置10の雰囲気置換室21に搬入された後、雰囲気置換室21の雰囲気が熱処理室11の雰囲気に応じたガスに置換される。そして、雰囲気置換室21の雰囲気が置換されて雰囲気置換室21が外部の大気から遮断された状態で、ワーク16が、雰囲気置換室21から搬出され、熱処理室11へと搬入される。尚、雰囲気置換装置10は、本発明の実施形態に係る雰囲気置換装置を構成しており、詳細については、後述する。
熱処理室11は、雰囲気置換室21に連結されて、雰囲気置換室21から搬出されたワーク16が搬入されてワーク16に対する熱処理を行うワーク搬出先の室として構成されている。また、本実施形態では、熱処理室11は、ワーク16に対する熱処理として、ワーク16を加熱してワーク16に付着した油脂を気化させて除去する脱脂処理を行う脱脂処理室として構成されている。熱処理室11において脱脂処理としての熱処理がワーク16に対して行われることで、熱処理システム1での処理の前の処理工程での機械加工等でワーク16に付着した油脂が、気化されてワーク16から除去される。
尚、ワーク16が、油脂成分を含むバインダーで結合された被焼結材として構成されており、熱処理システム1の熱処理室12において、ワーク16に対する熱処理として、ワーク16を焼結する焼結処理が行われる場合、脱脂処理室として構成される熱処理室11は、脱バインダー室として構成される。即ち、この場合、熱処理室11は、ワーク16を加熱してワーク16に付着した油脂成分を含むバインダーを気化させて除去する脱脂処理としてのバインダー処理を行う脱バインダー室として構成される。
熱処理室11には、雰囲気ガスとしての不活性ガスを室内に供給する不活性ガス供給部(図示省略)と、室内の雰囲気を加熱するヒータ(図示省略)とが設けられている。そして、熱処理室11は、室内に不活性ガスを供給して、室内の雰囲気を不活性ガスの雰囲気に維持した状態で加熱し、室内に搬入されたワーク16を加熱してその脱脂処理を行うように構成されている。
また、熱処理室11には、雰囲気置換室21に対向する端部側の入口60において、入口扉61と入口扉駆動部62とが設けられている。尚、熱処理室11の入口60は、ワーク16が雰囲気置換室21から搬入される開口として設けられている。そして、入口扉61は、熱処理室11の入口60を開閉する扉として設けられ、入口扉駆動部62は、入口扉61を上下方向に駆動することで、入口60を入口扉61によって開閉する機構として設けられている。ワーク16が雰囲気置換室21から搬出されて熱処理室11に搬入される際には、入口扉61が入口扉駆動部62によって上方に駆動されて熱処理室11の入口60が開放され、入口60からワーク16が熱処理室11内に搬入される。そして、ワーク16が熱処理室11に搬入されると、入口扉61が入口扉駆動部62によって下方に駆動されて熱処理室11の入口60が閉鎖される。
熱処理室12は、熱処理室11に連結されて、熱処理室11から搬出されたワーク16が搬入されてワーク16に対して更に熱処理を行う室として構成されている。また、本実施形態では、熱処理室12は、熱処理室11にて脱脂処理が行われたワーク16に対する熱処理として、例えば、焼鈍処理を行うように構成されている。熱処理室12には、雰囲気ガスとしての不活性ガスを室内に供給する不活性ガス供給部(図示省略)と、室内の雰囲気を加熱するヒータ(図示省略)とが設けられている。そして、熱処理室12は、室内に不活性ガスを供給して、室内の雰囲気を不活性ガスの雰囲気に維持した状態で加熱し、室内に搬入されたワーク16を加熱してその焼鈍処理を行うように構成されている。
また、熱処理室12には、ワーク搬送方向の下流側の端部において、雰囲気置換室13に連結されている。そして、熱処理室12には、雰囲気置換室13に対向する端部側の出口63において、出口扉64と出口扉駆動部65とが設けられている。尚、熱処理室12の出口63は、ワーク16が熱処理室12から搬出される開口として設けられている。そして、出口扉64は、熱処理室12の出口63を開閉する扉として設けられ、出口扉駆動部65は、出口扉64を上下方向に駆動することで、熱処理室12の出口63を出口扉64によって開閉する機構として設けられている。ワーク16が熱処理室12から搬出されて雰囲気置換室13に搬入される際には、出口扉64が出口扉駆動部65によって上方に駆動されて熱処理室12の出口63が開放され、出口63からワーク16が雰囲気置換室13内に搬入される。そして、ワーク16が雰囲気置換室13に搬入されると、出口扉64が出口扉駆動部65によって下方に駆動されて熱処理室12の出口63が閉鎖される。
雰囲気置換装置13は、熱処理システム1においてワーク搬送方向における最も下流側に配置されている。そして、雰囲気置換装置13は、ワーク搬送方向における上流側において、熱処理室12に連結されている。雰囲気置換装置13は、雰囲気置換装置13に搬入されるワーク16が搬出される熱処理室12内の雰囲気を熱処理システム1の外部の大気から遮断するために設けられている。ワーク16が熱処理室12から搬出される前に、雰囲気置換装置13の雰囲気置換室21の雰囲気が熱処理室12の雰囲気に応じたガスに置換される。そして、雰囲気置換室21の雰囲気が置換されて雰囲気置換室21が外部の大気から遮断された状態で、ワーク16が、熱処理室12から搬出され、雰囲気置換室13へと搬入される。その後、熱処理室12の出口63が閉鎖され、雰囲気置換装置13からワーク16が外部へと搬出される。尚、本実施形態では、雰囲気置換装置13は、雰囲気置換装置10と同様の構造を備えて構成されている。
[雰囲気置換装置]
図2は、本発明の実施形態に係る雰囲気置換装置10の一例を模式的に示す図である。図3は、雰囲気置換装置10の平面図である。図4は、雰囲気置換装置10の模式的な断面図であり、図2のA-A線矢視位置から見た状態を示す断面図である。図5は、雰囲気置換装置10の模式的な断面図であり、雰囲気置換装置10の雰囲気置換室21内にワーク16が搬入されている状態を示す断面図である。図6は、雰囲気置換装置10の模式的な断面図であり、図5のB-B線矢視位置から見た状態を示す断面図である。尚、本実施形態では、雰囲気置換装置10は、熱処理システム1の一部としても構成されており、図2及び図3においては、熱処理システム1の一部として図示している。一方、図4乃至図6においては、熱処理システム1における雰囲気置換装置10以外の構成についての図示を省略している。
図1乃至図6を参照して、雰囲気置換装置10は、雰囲気置換室21、ガス供給口22、ガス排出口(23、32)、第1ガス供給部24、第2ガス供給部25、制御部26、等を備えて構成されている。
(雰囲気置換室)
雰囲気置換室21は、外部に対して閉鎖される内部の領域を区画する部屋構造を備えており、ワーク16が内部に搬入されて配置されるように構成されている。また、雰囲気置換室21は、ワーク搬送方向におけるワーク16が搬入される側と反対側において熱処理室11に連結されており、内部に搬入されたワーク16が熱処理室11へと搬出されるように構成されている。また、雰囲気置換室21は、ワーク16が搬入及び搬出される内部の雰囲気が置換されるように構成されている。
雰囲気置換室21に搬入されるワーク16は、例えば、金属製の部材として設けられており、本実施形態では、外形が略リング状或いは略円筒状の部材として設けられた形態を例示している。外形が略リング状或いは略円筒状のワーク16としては、例えば、電動モータのコア(鉄心)、転がり軸受の外輪および内輪などのレース部材、平歯車などのギヤ、転がり軸受のころ、シャフト、ワッシャなどを例示することができる。尚、本実施形態では、ワーク16が略リング状又は略円筒状の部材として構成された場合を例にとって説明しているが、この通りでなくてもよく、ワーク16は、略リング状又は略円筒状以外の形状に形成された部材として構成されていてもよい。例えば、円柱状、角柱状、角筒状、直方体状、立方体状、棒状、板状、特殊な断面形状或いは表面形状を有する形状等、種々の形状であってもよい。
また、ワーク16は、雰囲気置換室21に搬入される際には、例えば、薄型の箱状に形成されたケース15内に配置された状態で、搬入される。ケース15には、複数のワーク16が、略均等間隔で広がって配置された状態で、収納される。ワーク16は、ケース15内に配置された状態で雰囲気置換室21内に搬入されて配置される。また、複数のワーク16を収納したケース15は、複数積み上げられた状態で(即ち、複数段に積層された状態で)、雰囲気置換室21内に搬入されて配置される。尚、図5では、5つのケース15が積み上げられて積層された状態が例示されている。
尚、複数のワーク16を収納するケース15には、周囲の気体がほぼ抵抗無く通過できるように、例えば、周囲側面及び底面に形成された多数の孔と、上面に形成された開口とが、設けられている。これにより、雰囲気置換室21内の雰囲気のガスがケース15を通過して流動するように構成されている。尚、ケース15は、雰囲気置換室21内の雰囲気のガスがケース15を通過するように流動できる構造であればよく、例えば、網状の部材で形成された形態であってもよい。
ここで、雰囲気置換室21について更に詳しく説明する。雰囲気置換室21は、一対の側壁(27、28)、底壁29、天井壁30、等を有している。一対の側壁(27、28)、底壁29、及び天井壁30は、前後方向における両端部が開口した中空の箱状の部分を構成しており、本実施形態では、角筒状の部分として設けられている。尚、雰囲気置換室21の前後方向は、ワーク搬送方向と平行な方向である。中空の箱状の部分の下端部には、脚部31が設けられ、中空の箱状の部分は、脚部31によって支持されるように構成されている。一対の側壁(27、28)は、平行に配置されており、それぞれ上下方向に延びる壁部として設けられている。底壁29は、雰囲気置換室21の底部分を区画する壁部として設けられ、一対の側壁(27、28)の下端部を一体に結合するように設けられている。底壁29は、その下端面において脚部31が固定され、脚部31によって支持されている。天井壁30は、雰囲気置換室21の上端の天井部分を区画する壁部として設けられ、一対の側壁(27、28)の上端部を一体に結合するように設けられている。
また、雰囲気置換室21には、入口32、入口扉33、入口扉駆動部34、出口35、出口扉36、出口扉駆動部37、複数の搬送ローラ38、等が設けられている。
入口32は、雰囲気置換室21におけるワーク16が搬入される開口として設けられている。入口32は、本実施形態では、一対の側壁(27、28)、底壁29、及び天井壁30にて構成される中空の箱状の部分の前後方向における一方の端部の開口として設けられている。また、入口32は、側壁27の端部、側壁28の端部、底壁29の端部、及び天井壁30の端部にて区画された開口として設けられている。そして、入口32は、雰囲気置換室21におけるワーク搬送方向の上流側において開口している。尚、ワーク16は、前述の通り、ケース15に収納された状態で、入口32から雰囲気置換室21内に搬入される。
入口扉33は、入口32を開閉する扉として設けられ、本実施形態では、矩形の板状の扉として設けられている。入口扉33は、後述する入口扉駆動部34によって上下方向に駆動されることで、入口32を開閉するように構成されている。また、入口扉33は、雰囲気置換室21にワーク16が搬入される際には入口32を開放し、雰囲気置換室21内にワーク16が搬入された後には入口32を閉鎖するように構成される。
入口扉駆動部34は、入口扉33による入口32の開閉動作のために入口扉33を駆動する機構として設けられている。入口扉駆動部34は、天井壁30におけるワーク搬送方向の上流側の端部において設置され、天井壁30の上方に配置されている。そして、入口扉駆動部34は、入口扉33を上下方向に駆動するように構成されている。入口扉駆動部34が入口扉33を上方に駆動することで、入口扉33による入口32の開放動作が行われ、入口扉駆動部34が入口扉33を下方に駆動することで、入口扉33による入口32の閉鎖動作が行われる。
入口扉駆動部34は、本実施形態では、一対のシリンダ機構(34a、34b)を備えて構成されている。一対のシリンダ機構(34a、34b)のそれぞれは、天井壁30におけるワーク搬送方向の上流側の端部において雰囲気置換室21の幅方向の両端部に設置されている。尚、雰囲気置換室21の幅方向は、上下方向及びワーク搬送方向の両方に対して垂直な方向であり、図3において両端矢印X2で示している。一対のシリンダ機構(34a、34b)のそれぞれは、例えば、空圧シリンダ機構として設けられている。各シリンダ機構(34a、34b)は、シリンダ本体39とシリンダ本体39に対して突出及び退避するロッド40とを備えて構成されている。
シリンダ本体39は、天井壁30に固定されたブラケット41に対して固定され、上下方向に延びた状態でブラケット41に支持されている。シリンダ本体39には、ロッド40に設けられたピストン(図示省略)で仕切られた一対の空圧室が設けられ、圧縮空気供給源42から供給される圧縮空気が供給されるように構成されている。また、シリンダ本体39における一対の空圧室と圧縮空気供給源42とは、電磁弁ユニット43における所定の電磁弁を介して連通している。電磁弁ユニット43における各電磁弁は、制御部26からの制御指令に基づいて作動する。電磁弁ユニット43における所定の電磁弁が作動することで、シリンダ本体39における一対の空圧室に圧縮空気が給排され、ロッド40がシリンダ本体39に対して突出及び退避する動作が行われる。
ロッド40は、ブラケット41を介して天井壁30に支持されたシリンダ本体39から突出することで下方に向かって変位するように設けられている。そして、ロッド40は、シリンダ本体39に退避することで上方に向かって変位するように設けられている。また、ロッド40の下端部は、入口扉33の上端部に固定されている。ロッド40が下方に向かってシリンダ本体39から突出することで、入口扉33が降下して入口32を塞ぎ、入口32が閉鎖される。そして、ロッド40が上方に向かってシリンダ本体39に退避することで、入口扉33が上昇して入口32が開放される。
尚、本実施形態では、入口扉駆動部34が、空圧式のシリンダ機構を備えて構成された形態を例示したが、この通りでなくてもよい。入口扉駆動部34は、油圧式のシリンダ機構を備えて構成されてもよい。また、入口扉駆動部34は、シリンダ機構以外の機構を備えて構成されてもよい。例えば、電動モータとラックアンドピニオンとを備えた機構、又は、電動モータとボールスクリューとを備えた機構、或いは、リニアモータを備えた機構、等として構成されてもよい。
また、雰囲気置換室21においては、入口32が入口扉33によって閉鎖された状態で入口扉33を入口32側に向かって押圧する入口扉押圧機構44が設けられている。入口扉押圧機構44は、例えば、一対で設けられ、一対の側壁(27、28)にそれぞれ設置され、入口扉33が入口32を閉鎖した状態において入口扉33の幅方向の両側に配置されている。そして、入口扉押圧機構44は、入口扉33が入口32を閉鎖した状態で入口扉33を入口32側に向かって押圧するプランジャーを備えて構成されている。尚、プランジャーは、例えば、圧縮空気で作動する機構として構成されていてもよく、励磁及び消磁されるソレノイドとバネとで作動する機構として構成されていてもよい。入口扉33が入口32を閉鎖した状態で入口扉押圧機構44のプランジャーが入口扉33を入口32側に向かって押圧することで、入口32を区画している一対の側壁(27、28)、底壁29、及び天井壁30の端部に対して、入口扉33が密着した状態で押し付けられる。これにより、入口32が隙間なく塞がれた状態で入口扉33によって閉鎖される。
出口35は、雰囲気置換室21におけるワーク16が搬出される開口として設けられている。出口35は、本実施形態では、一対の側壁(27、28)、底壁29、及び天井壁30にて構成される中空の箱状の部分の前後方向における入口32側の端部とは反対側の端部の開口として設けられている。また、出口35は、側壁27の端部、側壁28の端部、底壁29の端部、及び天井壁30の端部にて区画された開口として設けられている。そして、出口35は、雰囲気置換室21におけるワーク搬送方向の下流側において開口している。尚、ワーク16は、前述の通り、ケース15に収納された状態で、出口35から搬出される。
雰囲気置換室21における出口35が設けられている端部には、連結室47が設けられている。そして、雰囲気置換室21は、連結室47を介して熱処理室11に連結されている。連結室47は、連結される雰囲気置換室21と熱処理室11との間の領域を外部から遮断するために設けられている。雰囲気置換室21の出口35と熱処理室11の入口60とは、いずれも連結室47内で開口しており、連結室47内で対向して配置されている。そして、雰囲気置換室21の出口35と熱処理室11の入口60とが開放された状態においても、連結室47内は、外部から遮断されている。
出口扉36は、出口35を開閉する扉として設けられ、本実施形態では、矩形の板状の扉として設けられている。出口扉36は、連結室47内に配置され、連結室47内において出口35を開閉するように設けられている。また、出口扉36は、後述する出口扉駆動部37によって上下方向に駆動されることで、出口35を開閉するように構成されている。そして、出口扉36は、雰囲気置換室21からワーク16が搬出される際には出口35を開放し、雰囲気置換室21からワーク16が搬出された後には出口35を閉鎖するように構成される。
出口扉駆動部37は、出口扉36による出口35の開閉動作のために出口扉36を駆動する機構として設けられている。出口扉駆動部37は、天井壁30におけるワーク搬送方向の下流側の端部において連結室47を介して設置され、天井壁30の上方に配置されている。そして、出口扉駆動部37は、出口扉36を上下方向に駆動するように構成されている。出口扉駆動部37が出口扉36を上方に駆動することで、出口扉36による出口35の開放動作が行われ、出口扉駆動部37が出口扉36を下方に駆動することで、出口扉36による出口35の閉鎖動作が行われる。
出口扉駆動部37は、本実施形態では、一対のシリンダ機構(37a、37b)を備えて構成されている。一対のシリンダ機構(37a、37b)は、雰囲気置換室21におけるワーク搬送方向の下流側の端部に固定された連結室47に設置されている。そして、一対のシリンダ機構(37a、37b)のそれぞれは、雰囲気置換室21におけるワーク搬送方向の下流側の端部であって且つ雰囲気置換室21の幅方向の両端部に配置された状態で、連結室47に設置されている。また、一対のシリンダ機構(37a、37b)のそれぞれは、例えば、空圧シリンダ機構として設けられている。各シリンダ機構(37a、37b)は、シリンダ本体45とシリンダ本体45に対して突出及び退避するロッド46とを備えて構成されている。
シリンダ本体45は、連結室47に対して固定され、上下方向に延びた状態で連結室47に支持されている。尚、シリンダ本体45は、その中央部分及び上端部分が連結室47の外部で上方に突出した状態で、連結室47に支持されている。更に、シリンダ本体45は、ロッド46が突出する下端部が連結室47内に配置された状態で、連結室47に支持されている。また、シリンダ本体45には、ロッド46に設けられたピストン(図示省略)で仕切られた一対の空圧室が設けられ、圧縮空気供給源42から供給される圧縮空気が供給されるように構成されている。また、シリンダ本体45における一対の空圧室と圧縮空気供給源42とは、電磁弁ユニット43における所定の電磁弁を介して連通している。電磁弁ユニット43における各電磁弁は、制御部26からの制御指令に基づいて作動する。電磁弁ユニット43における所定の電磁弁が作動することで、シリンダ本体45における一対の空圧室に圧縮空気が給排され、ロッド46がシリンダ本体45に対して突出及び退避する動作が行われる。
ロッド46は、連結室47に支持されたシリンダ本体45から連結室47内で突出することで下方に向かって変位するように設けられている。尚、ロッド46は、連結室47内に配置されたシリンダ本体45の下端部から連結室47内にて下方に突出して変位する。そして、ロッド46は、シリンダ本体45に退避することで上方に向かって変位するように設けられている。また、ロッド46の下端部は、出口扉36の上端部に固定されている。ロッド46が下方に向かってシリンダ本体45から突出することで、出口扉36が降下して出口35を塞ぎ、出口35が閉鎖される。そして、ロッド46が上方に向かってシリンダ本体45に退避することで、出口扉36が上昇して出口35が開放される。
尚、本実施形態では、出口扉駆動部37が、空圧式のシリンダ機構を備えて構成された形態を例示したが、この通りでなくてもよい。出口扉駆動部37は、油圧式のシリンダ機構を備えて構成されてもよい。また、出口扉駆動部37は、シリンダ機構以外の機構を備えて構成されてもよい。例えば、電動モータとラックアンドピニオンとを備えた機構、又は、電動モータとボールスクリューとを備えた機構、或いは、リニアモータを備えた機構、等として構成されてもよい。
また、雰囲気置換室21においては、出口35が出口扉36によって閉鎖された状態で出口扉36を出口35側に向かって押圧する出口扉押圧機構48が設けられている。出口扉押圧機構48は、例えば、一対で設けられ、一対の側壁(27、28)にそれぞれ設置され、出口扉36が出口35を閉鎖した状態において出口扉36の幅方向の両側に配置されている。そして、出口扉押圧機構48は、出口扉36が出口35を閉鎖した状態で出口扉36を出口35側に向かって押圧するプランジャーを備えて構成されている。尚、プランジャーは、例えば、圧縮空気で作動する機構として構成されていてもよく、励磁及び消磁されるソレノイドとバネとで作動する機構として構成されていてもよい。出口扉36が出口35を閉鎖した状態で出口扉押圧機構48のプランジャーが出口扉36を出口35側に向かって押圧することで、出口35を区画している一対の側壁(27、28)、底壁29、及び天井壁30の端部に対して、出口扉36が密着した状態で押し付けられる。これにより、出口35が隙間なく塞がれた状態で出口扉36によって閉鎖される。
複数の搬送ローラ38は、ワーク16が収納されたケース15を雰囲気置換室21内において搬送する搬送機構として設けられている。そして、複数の搬送ローラ38は、図4乃至図6に示すように、雰囲気置換室21内における下方の領域に配置され、底壁29の上方で底壁29の壁面と平行にワーク搬送方向に沿って配置されている。
複数の搬送ローラ38のそれぞれには、回転軸38aが設けられ、各搬送ローラ38は、回転軸38a周りに回転するように設置されている。複数の搬送ローラ38の回転軸38aは、互いに平行に延びるように配置され、一対の側壁(27、28)に対して垂直な方向に沿って延びるように配置されている。また、各搬送ローラ38の回転軸38aは、一対の側壁(27、28)に対して、回転自在に支持されている。複数の搬送ローラ38は、図示が省略されたチェーン機構によって、同期して回転するように構成されている。例えば、各回転軸38aの一方の端部が側壁27を貫通しており、側壁27の外部において各回転軸38aの一方の端部にスプロケットが設けられ、このスプロケットが、チェーン機構によって回転されるように構成されている。チェーン機構は、制御部26からの制御指令に基づいて回転する電動モータによって周回駆動されるように構成されている。
ワーク16の雰囲気置換室21への搬入の際には、入口扉33が上昇して入口32が開放された状態で、ケース15内に配置されたワーク16が、ケース15とともに、雰囲気置換室21の外部から雰囲気置換室21内に搬入される。そして、雰囲気置換室21内に搬入されてワーク16を収納したケース15は、複数の搬送ローラ38の上に配置される。尚、雰囲気置換室21内においては、雰囲気置換室21に搬入されたワーク16が配置される領域であるワーク配置領域P1が、複数の搬送ローラ38上に設定されている。ケース15に収納された状態で雰囲気置換室21に搬入された複数のワーク16は、ケース15に収納された状態のままでワーク配置領域P1に一旦配置される。尚、図4では、ワーク配置領域P1を二点鎖線で図示しており、図5では、ケース15に収納されたワーク16がワーク配置領域P1に配置された状態を図示している。
ワーク16の雰囲気置換室21からの搬出の際には、複数の搬送ローラ38が回転することで、ワーク16を収納したケース15が、入口32から出口35に向かう方向であるワーク搬送方向に沿って搬送される。また、ワーク16の雰囲気置換室21からの搬出の際には、雰囲気置換室21の出口扉36が出口35を開放しているとともに熱処理室11の入口扉61が熱処理室11の入口60を開放した状態で、複数の搬送ローラ38の回転によって、ワーク16を収納したケース15が搬送される。そして、ケース15内に配置されたワーク16が、ケース15とともに、雰囲気置換室21の出口35から搬出され、熱処理室11へと搬入される。尚、熱処理室11においても、雰囲気置換室21における複数の搬送ローラ38と同様の搬送機構が設けられている。そして、熱処理室11は、複数の搬送ローラ38と同様に構成される搬送機構によって、熱処理室11内でのワーク16の搬送を行うように構成されている。
(ガス供給口、ガス排出口)
図3乃至図6を参照して、ガス供給口22は、雰囲気置換室21に設けられ、雰囲気置換室21内の雰囲気を置換するための雰囲気置換用ガスを雰囲気置換室21に供給するための供給口として設けられている。ガス供給口22は、雰囲気置換用ガスを供給する後述の第1ガス供給部24及び第2ガス供給部25に接続している。そして、第1ガス供給部24及び第2ガス供給部25から供給される雰囲気置換用ガスは、ガス供給口22を介して雰囲気置換室21内に供給される。
ガス供給口22は、雰囲気置換室21の上部に設けられており、本実施形態では、天井壁30に設けられた貫通孔として構成されている。そして、本実施形態では、ガス供給口22は、天井壁30において、ワーク搬送方向の下流側の端部側である出口35側に設けられ、更に、雰囲気置換室21の幅方向の両端部における一方の端部側に設けられている。また、ガス供給口22は、雰囲気置換室21において、上方から見た状態で、ワーク配置領域P1から外れた位置に配置されている。即ち、雰囲気置換室21において、天井壁30に設けられたガス供給口22と、ケース15に収納されたワーク16が配置されるワーク配置領域P1とは、上下方向において互いに重ならない位置に配置されている。尚、図4及び図5の熱処理室21の断面図では、天井壁38が表れていないため、ガス供給口22の配置を二点鎖線で図示している。
図3乃至図6を参照して、ガス排出口(23、32)は、雰囲気置換室21に設けられ、雰囲気置換用ガスが雰囲気置換室21に供給されて雰囲気置換室21内の雰囲気が置換される際に雰囲気置換室21内のガスを雰囲気置換室21外へ排出するための排出口として設けられている。また、本実施形態では、雰囲気置換室21に設けられるガス排出口(23、32)として、ガス排出口23とガス排出口32とが設けられている。
ガス排出口23は、後述する第1ガス供給部24から供給される雰囲気置換用ガスとしての第1のガスが雰囲気置換室21内に供給される際に雰囲気置換室21内のガスを雰囲気置換室21外へ排出する第1ガス排出口23として設けられている。また、本実施形態では、ガス排出口23は、後述する第2ガス供給部25から供給される雰囲気置換用ガスとしての第2のガスが雰囲気置換室21内に供給される際に雰囲気置換室21内のガスを雰囲気置換室21外へ排出する第2ガス排出口23としても設けられている。尚、以下の説明では、ガス排出口23について、第1ガス排出口23又は第2ガス排出口23とも称する。
ガス排出口23は、雰囲気置換室21の下部に設けられており、本実施形態では、底壁29に設けられた貫通孔として構成されている。また、ガス排出口23は、底壁29において、ワーク搬送方向の上流側の端部側である入口32側に設けられている。このため、雰囲気置換室21において、ガス排出口23は、ガス供給口22よりも入口32側に設けられ、ガス供給口22は、ガス排出口23よりも出口35側に設けられている。また、ガス排出口23は、底壁29における入口32側において、雰囲気置換室21の幅方向の両端部におけるガス供給口22が配置されている側と反対側の端部側に設けられている。このため、雰囲気置換室21において、ガス排出口23は、ガス供給口22に対して、上下方向だけでなく、前後方向(ワーク搬送方向)及び幅方向においても離れた位置に配置されている。また、ガス排出口23は、雰囲気置換室21において、上方から見た状態で、ワーク配置領域P1から外れた位置に配置されている。即ち、雰囲気置換室21において、底壁29に設けられたガス排出口23と、ケース15に収納されたワーク16が配置されるワーク配置領域P1とは、上下方向において互いに重ならない位置に配置されている。
尚、雰囲気置換室21は、一対の側壁(27、28)、底壁29、及び天井壁30が、前後方向における両端部が開口した中空の箱状の部分を構成し、入口扉33及び出口扉36が、両端部の開口としての入口32及び出口35を塞ぐように構成されている。このため、雰囲気置換室21は、上方から見て矩形の形状を有する直方体状に設けられている。そして、ガス供給口22とガス排出口23とは、雰囲気置換室21において、上方から見た状態で、矩形の形状の対角線に沿って配置されている。このため、ガス供給口22は、雰囲気置換室21の上部における4つのコーナー部分のうちの1つのコーナー部分に設けられている。そして、ガス排出口23は、雰囲気置換室21の下部における4つのコーナー部分のうちの1つのコーナー部分であってガス供給口22から最も離れた位置にあるコーナー部分に設けられている。
また、底壁29の貫通穴として設けられたガス排出口23は、排気弁49aが設けられた排気管49に接続している。尚、排気管49は、一端側がガス排出口23に接続し、他端側が外部に開口しており、ガス排出口23を介して雰囲気置換室21内と雰囲気置換室21外とを連通可能な配管として設けられている。そして、排気管49に設けられた排気弁49aは、電磁弁として設けられ、開閉動作を行うことで、排気管49の状態を開放状態と閉鎖状態とで切り替えるように構成されている。排気弁49aは、制御部26からの制御指令に基づいて作動する。制御部26からの制御指令に基づいて排気弁49aが開動作を行い、排気管49の状態が開放状態に切り替えられたときには、雰囲気置換室21内と雰囲気置換室21外とが連通し、雰囲気置換室21内のガスがガス排出口23から雰囲気置換室21外へ排出される。一方、制御部26からの制御指令に基づいて排気弁49aが閉動作を行い、排気管49の状態が閉鎖状態に切り替えられたときには、雰囲気置換室21内と雰囲気置換室21外との連通が遮断され、雰囲気置換室21内のガスのガス排出口23からの雰囲気置換室21外への排出は行われない。
ガス排出口32は、後述する第2ガス供給部25から供給される雰囲気置換用ガスとしての第2のガスが雰囲気置換室21内に供給される際に雰囲気置換室21内のガスを雰囲気置換室21外へ排出する第2ガス排出口32として設けられている。また、本実施形態では、ガス排出口32は、雰囲気置換室21の入口32として構成されている。即ち、入口32は、入口扉33が開いた状態で雰囲気置換室21内のガスを雰囲気置換室21外へ排出する第2ガス排出口32としても用いられるように構成されている。尚、以下の説明では、入口32について、ガス排出口32又は第2ガス排出口32とも称する。
(第1ガス供給部)
第1ガス供給部24は、雰囲気置換室21にワーク16が搬入されている状態で雰囲気置換用ガスとしての第1のガスをガス供給口22から雰囲気置換室21内に供給する機構として構成されている。本実施形態では、第1ガス供給部24が雰囲気置換室21内に供給する第1のガスは、不活性ガスであり、例えば、窒素ガスである。尚、第1ガス供給部24が供給する窒素ガス以外の不活性ガスとして、例えば、ヘリウムガス、および、アルゴンガスを例示できる。
第1ガス供給部24は、不活性ガス供給源50、不活性ガス供給配管51、不活性ガス供給弁52、共通供給配管53を備えて構成されている。
不活性ガス供給源50は、大気圧以上の高圧の不活性ガスを供給する供給源として設けられ、例えば、大気圧以上の高圧に圧縮された状態の不活性ガスが貯蔵されたタンク或いはボンベ等の容器として構成されている。不活性ガス供給配管51は、不活性ガス供給源50に接続され、不活性ガス供給源50から高圧の不活性ガスを供給する配管系統として設けられている。共通供給配管53は、不活性ガス供給配管51と雰囲気置換室21のガス供給口22とを接続する配管系統として設けられている。そして、共通供給配管53は、不活性ガス供給源50から不活性ガス供給配管51を経て供給された不活性ガスをガス供給口22から雰囲気置換室21内に供給するように構成されている。尚、共通供給配管53は、後述の第2ガス供給部25の空気供給配管55にも接続されている。
不活性ガス供給弁52は、電磁弁として設けられ、不活性ガス供給配管51に設けられている。そして、不活性ガス供給弁52は、開閉動作を行うことで、不活性ガス供給配管51の状態を開放状態と閉鎖状態とで切り替えるように構成されている。不活性ガス供給弁52は、制御部26からの制御指令に基づいて作動する。制御部26からの制御指令に基づいて不活性ガス供給弁52が開動作を行い、不活性ガス供給配管51の状態が開放状態に切り替えられたときには、不活性ガス供給源50と雰囲気置換室21とが、不活性ガス供給配管51及び共通供給配管53とを介して連通する。これにより、不活性ガス供給源50から供給される不活性ガスが、不活性ガス供給配管51、共通供給配管53、及びガス供給口22を介して、雰囲気置換室21内に供給される。一方、制御部26からの制御指令に基づいて不活性ガス供給弁52が閉動作を行い、不活性ガス供給配管51の状態が閉鎖状態に切り替えられたときには、不活性ガス供給源50と雰囲気置換室21との連通が遮断される。この状態では、不活性ガス供給源50の不活性ガスは、雰囲気置換室21へは供給されない。
(第2ガス供給部)
第2ガス供給部25は、雰囲気置換室21からワーク16が搬出された後に、雰囲気置換用ガスとしての第2のガスをガス供給口22から雰囲気置換室21内に供給する機構として構成されている。本実施形態では、第2ガス供給部25が雰囲気置換室21内に供給する第2のガスは、空気である。また、本実施形態では、第2ガス供給部25は、雰囲気置換室21の外部の空気を第2のガスとして雰囲気置換室21に誘導して供給するように構成されている。
第2ガス供給部25は、送風機54、空気供給配管55、空気供給弁56、共通供給配管53を備えて構成されている。
送風機54は、雰囲気置換室21の外部の空気を吸い込んで送風する機構として設けられ、ケーシングと、ケーシング内で回転するファンと、ファンを回転駆動する電動モータとを備えて構成されている。ケーシングには、ファンが回転することで外部の空気が吸い込まれる吸い込み口と、ケーシング内でファンが回転することで流動する空気が送風される送風口とが設けられている。送風機54は、制御部26からの制御指令に基づいて作動して、雰囲気置換室21の外部の空気を吸い込んで送風するように構成されている。
空気供給配管55は、送風機54に接続され、送風機54から送風される空気を供給する配管系統として設けられている。尚、空気供給配管55は、送風機54におけるケーシングの送風口に接続されている。共通供給配管53は、空気供給配管55と雰囲気置換室21のガス供給口22とを接続する配管系統として設けられている。そして、共通供給配管53は、送風機54から送風されて空気供給配管55を経て供給された空気をガス供給口22から雰囲気置換室21内に供給するように構成されている。尚、前述の通り、共通供給配管53は、空気供給配管55に接続されているとともに、第1ガス供給部24の不活性ガス供給配管51にも接続されている。
空気供給弁56は、電磁弁として設けられ、空気供給配管55に設けられている。そして、空気供給弁56は、開閉動作を行うことで、空気供給配管55の状態を開放状態と閉鎖状態とで切り替えるように構成されている。空気供給弁56は、制御部26からの制御指令に基づいて作動する。制御部26からの制御指令に基づいて空気供給弁56が開動作を行い、空気供給配管55の状態が開放状態に切り替えられたときには、送風機54と雰囲気置換室21とが、空気供給配管55及び共通供給配管53とを介して連通する。これにより、送風機54から送風されて供給される空気が、空気供給配管55、共通供給配管53、及びガス供給口22を介して、雰囲気置換室21内に供給される。一方、制御部26からの制御指令に基づいて空気供給弁56が閉動作を行い、空気供給配管55の状態が閉鎖状態に切り替えられたときには、送風機54と雰囲気置換室21との連通が遮断される。この状態では、送風機54から送風される空気は、雰囲気置換室21へは供給されない。
(制御部)
図2を参照して、雰囲気置換室21、第1ガス供給部24、第2ガス供給部25の動作は、制御部26によって制御される。具体的には、制御部26は、搬送ローラ38のチェーン機構を駆動する電動モータ、入口扉駆動部34及び出口扉駆動部37をそれぞれ作動させるための電磁弁ユニット43における各電磁弁、排気管49の排気弁49a、第1ガス供給部24の不活性ガス供給弁52、第2ガス供給部25の送風機54及び空気供給弁56の作動を制御することで、雰囲気置換室21、第1ガス供給部24、第2ガス供給部25の動作を制御する。
また、制御部26は、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェア・プロセッサ、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等のメモリ、ユーザによって操作される操作パネル等の操作部、インターフェース回路、等を備えて構成されている。制御部26のメモリには、電磁弁ユニット43における各電磁弁、排気弁49a、不活性ガス供給弁52、送風機54、空気供給弁56等の作動を制御する制御指令を作成するためのプログラムが記憶されている。例えば、作業者によって操作部が操作されることで、メモリから上記のプログラムがハードウェア・プロセッサによって読み出されて実行される。これにより、上記の制御指令が作成され、その制御指令に基づいて、電磁弁ユニット43における各電磁弁、排気弁49a、不活性ガス供給弁52、送風機54、空気供給弁56等が作動する。
[雰囲気置換装置の動作]
次に、雰囲気置換装置10における処理動作の一例について説明する。図7は、雰囲気置換装置10における処理動作の一例を説明するためのフローチャートである。以下では、フローチャートを参照して説明するときは、フローチャート以外の図も適宜参照しながら説明する。
図8は、雰囲気置換装置10の作動を説明するための図であって、図8(A)は、ワーク16が雰囲気置換室21に搬入される前の状態を示す図であり、図8(B)は、ワーク16が雰囲気置換室21に搬入された状態を示す図である。雰囲気置換装置10における処理動作が開始されると、まず、図8(A)に示すように、制御部26の制御に基づいて入口扉駆動部34が作動して入口扉33が開かれ、入口32が開放される(ステップS101)。
より具体的には、制御部26からの制御指令に基づいて、電磁弁ユニット43における所定の電磁弁が作動し、入口扉駆動部34のシリンダ本体39における一対の空圧室に圧縮空気が給排され、ロッド40がシリンダ本体39に退避する動作が行われる。ロッド40がシリンダ本体39に退避することで、ロッド40が上昇し、ロッド40に連結された入口扉33が上昇する。入口扉33が上昇して開かれることで、雰囲気置換室21の入口32が開放される。
尚、入口32が開放される際には、出口35は出口扉36で閉鎖され、雰囲気置換室21に連結された熱処理室11の入口60も入口扉61で閉鎖されている。また、このとき、第1ガス供給部24の不活性ガス供給弁52、第2ガス供給部25の空気供給弁56、及び、排気管49の排気弁49aは、いずれも閉じられた状態であり、送風機54は作動していない状態である。
入口32が開放されると、次いで、図8(B)に示すように、ワーク16が雰囲気置換室21内に入口32から搬入される(ステップS102)。ワーク16の雰囲気置換室21内への搬入の際には、例えば、作業者、または、機械による自動搬入装置(図示せず)によって、ワーク16が入口32から雰囲気置換室21内に搬入される。尚、ワーク16は、ケース15に収納された状態でケース15とともに雰囲気置換室21内に搬入される。雰囲気置換室21内に搬入されたワーク16は、雰囲気置換室21内において複数の搬送ローラ38の上のワーク配置領域P1に配置される。
図9は、雰囲気置換装置10の作動を説明するための図であって、図9(A)は、ワーク16が雰囲気置換室21に搬入されて入口32が閉鎖された状態を示す図であり、図9(B)は、雰囲気置換室21内の雰囲気が第1のガスに置換されている状態を示す図である。ワーク16が雰囲気置換室21内に搬入されると、次いで、図9(A)に示すように、制御部26の制御に基づいて入口扉駆動部34が作動して入口扉33が閉じられ、入口32が閉鎖される(ステップS103)。
より具体的には、制御部26からの制御指令に基づいて、電磁弁ユニット43における所定の電磁弁が作動し、入口扉駆動部34のシリンダ本体39における一対の空圧室に圧縮空気が給排され、ロッド40がシリンダ本体39から突出する動作が行われる。ロッド40がシリンダ本体39から突出することで、ロッド40が下降し、ロッド40に連結された入口扉33が下降する。入口扉33が下降して閉じられることで、雰囲気置換室21の入口32が閉鎖される。また、入口扉33が下降して閉じて入口32が閉鎖されると、制御部26からの制御指令に基づいて、入口扉押圧機構44が作動し、入口扉33を入口32側に向かって押圧する。これにより、入口32が隙間なく塞がれた状態で入口扉33によって閉鎖される。
入口32が入口扉33によって閉鎖されると、次いで、図9(B)に示すように、雰囲気置換室21内にワーク16が搬入されている状態で雰囲気置換室21内の雰囲気が雰囲気置換用ガスとしての第1のガスである不活性ガスに置換される処理が行われる(ステップS104)。
より具体的には、雰囲気置換室21内の雰囲気を不活性ガスに置換するステップS104の処理においては、まず、制御部26からの制御指令に基づいて、第1ガス供給部24の不活性ガス供給弁52の開動作が行われるとともに、排気管49の排気弁49aの開動作が行われる。不活性ガス供給弁52の開動作が行われることで、不活性ガス供給配管51の状態が開放状態に切り替えられて、不活性ガス供給源50から供給される不活性ガスが、不活性ガス供給配管51、共通供給配管53、及びガス供給口22を介して、雰囲気置換室21内に供給される。そして、排気弁49aの開動作が行われることで、排気管49の状態が開放状態に切り替えられて、雰囲気置換室21内のガスが、ガス排出口23及び排気管49を通過して雰囲気置換室21外へ排出される。
上記のように、ステップS104の処理では、不活性ガスがガス供給口22から雰囲気置換室21内に供給されるとともに、雰囲気置換室21内のガスがガス排出口23から雰囲気置換室21外へ排出される。このため、雰囲気置換室21内においては、上方のガス供給口22から下方のガス排出口23へと向かって雰囲気置換室21内で全体的に広がりながら流動する不活性ガスの流れが形成されて、下方のガス排出口23から雰囲気置換室21内のガスが雰囲気置換室21外へと押し出される流れが形成される。尚、図9(B)では、このときの雰囲気置換室21内における不活性ガス及び雰囲気置換室21内のガスの流れの方向を二点鎖線の矢印で模式的に示している。ステップS104の処理では、ガス供給口22からガス排出口23へと向かって雰囲気置換室21内で広がりながら流動する不活性ガスの流れと、ガス排出口23から雰囲気置換室21内のガスが外へと押し出される流れとが形成されることで、雰囲気置換室21内の雰囲気が不活性ガスに置換されていくことになる。
ステップS104の処理では、不活性ガスがガス供給口22から雰囲気置換室21内に供給されるとともに、雰囲気置換室21内のガスがガス排出口23から雰囲気置換室21外へ排出される状態が所定の時間に亘って維持される。これにより、不活性ガスが雰囲気置換室21内に供給される前に雰囲気置換室21内に存在していたガスのほとんどが雰囲気置換室21の外へ排出され、雰囲気置換質21内に存在しているガスのほとんどが不活性ガスである状態となる。即ち、雰囲気置換室21内の雰囲気が不活性ガスに置換された状態となる。
尚、不活性ガスが雰囲気置換室21内に供給されるとともに雰囲気置換室21内のガスが外へ排出される上記の所定の時間については、雰囲気置換室21内の雰囲気を不活性ガスに置換するために必要な時間が確保されるように適宜設定される。上記の所定の時間が経過し、雰囲気置換室21内の雰囲気が不活性ガスに置換された状態となると、制御部26からの制御指令に基づいて、不活性ガス供給弁52の閉動作が行われるとともに、排気弁49aの閉動作が行われる。これにより、不活性ガスの雰囲気置換室21内への供給と雰囲気置換室21内のガスの排出とが終了し、雰囲気置換室21内の雰囲気を不活性ガスへ置換するステップS104の処理が終了する。
図10は、雰囲気置換装置10の作動を説明するための図であって、図10(A)は、雰囲気置換室21内の雰囲気の不活性ガスへの置換が終了して出口35が開放された状態を示す図であり、図10(B)は、ワーク16が雰囲気置換室21から搬出された状態を示す図である。雰囲気置換室21内の雰囲気の不活性ガスへの置換が終了すると、次いで、図10(A)に示すように、制御部26の制御に基づいて出口扉駆動部37が作動して出口扉36が開かれ、連結室47内で出口35が開放される(ステップS105)。
より具体的には、制御部26からの制御指令に基づいて、電磁弁ユニット43における所定の電磁弁が作動し、出口扉駆動部37のシリンダ本体45における一対の空圧室に圧縮空気が給排され、ロッド46がシリンダ本体45に退避する動作が行われる。ロッド46がシリンダ本体45に退避することで、ロッド46が上昇し、ロッド46に連結された出口扉36が上昇する。出口扉36が上昇して開かれることで、雰囲気置換室21の出口35が連結室47内で開放される。
また、雰囲気置換室21の出口35が開放される際には、雰囲気置換室21に連結された熱処理室11の入口60も開放される。即ち、雰囲気置換室21の出口35の開放の際には、熱処理室11において、入口扉駆動部62が作動して入口扉61が開かれ、連結室47内で入口60も開放される。尚、熱処理室11の動作の制御は、制御部26によって行われてもよく、或いは、制御部26と通信可能で制御部26による雰囲気置換装置10の動作と連係して熱処理室11の動作を制御する他の制御装置によって行われてもよい。
雰囲気置換室21の出口35が開放されると、次いで、図10(B)に示すように、ワーク16が雰囲気置換室21から搬出される(ステップS106)。より具体的には、制御部26からの制御指令に基づいて、搬送ローラ38のチェーン機構を駆動する電動モータが駆動されて複数の搬送ローラ38が回転し、ケース15に収納されたワーク16が、ケース15とともに出口35に向かって搬送される。そして、搬送ローラ38で搬送されたワーク16は、出口35を通過して雰囲気置換室21の外へと搬出される。雰囲気置換室21から搬出されたワーク16は、ワーク搬出先である熱処理室11の入口60を通過して熱処理室11内へ搬入される。尚、ワーク16が雰囲気置換室21から搬出されて熱処理室11へ搬入される際には、連結室47内において、雰囲気置換室21の出口35と熱処理室11の入口60とが開放されている。このため、ワーク搬出先の熱処理室11の室内のガスの一部が、熱処理室11から雰囲気置換室21に流入する。
図11は、雰囲気置換装置10の作動を説明するための図であって、図11(A)は、ワーク16が雰囲気置換室21から搬出されて出口35が閉鎖された状態を示す図であり、図11(B)は、雰囲気置換室21内の雰囲気が第2のガスに置換されている状態を示す図である。ワーク16が雰囲気置換室21から搬出されると、次いで、図11(A)に示すように、制御部26の制御に基づいて出口扉駆動部37が作動して出口扉36が閉じられ、出口35が閉鎖される(ステップS107)。
より具体的には、制御部26からの制御指令に基づいて、電磁弁ユニット43における所定の電磁弁が作動し、出口扉駆動部37のシリンダ本体45における一対の空圧室に圧縮空気が給排され、ロッド46がシリンダ本体45から突出する動作が行われる。ロッド46がシリンダ本体45から突出することで、ロッド46が下降し、ロッド46に連結された出口扉36が下降する。出口扉36が下降して閉じられることで、雰囲気置換室21の出口35が閉鎖される。また、出口扉36が下降して閉じて出口35が閉鎖されると、制御部26からの制御指令に基づいて、出口扉押圧機構48が作動し、出口扉36を出口35側に向かって押圧する。これにより、出口35が隙間なく塞がれた状態で出口扉36によって閉鎖される。
尚、雰囲気置換室21の出口35が閉鎖される際には、雰囲気置換室21に連結された熱処理室11の入口60も閉鎖される。即ち、雰囲気置換室21の出口35の閉鎖の際には、熱処理室11において、入口扉駆動部62が作動して入口扉61が閉じられ、連結室47内で入口60も閉鎖される。
ワーク16が雰囲気置換室21から搬出された後に、出口35が出口扉36によって閉鎖されると、次いで、図11(B)に示すように、雰囲気置換室21内の雰囲気が雰囲気置換用ガスとしての第2のガスである空気に置換される処理が行われる(ステップS108)。
より具体的には、雰囲気置換室21内の雰囲気を空気に置換するステップS108の処理においては、まず、制御部26からの制御指令に基づいて、入口扉押圧機構44による入口扉33の押圧動作が解除される。そして、制御部26からの制御指令に基づいて入口扉駆動部34が作動して入口扉33が開かれ、入口32が開放される。尚、ステップS108の処理での入口32の開放動作は、ステップS101の処理での入口32の開放動作と同様に行われる。また、ステップS108の処理においては、上記の動作に加え、制御部26からの制御指令に基づいて、第2ガス供給部25の送風機54の作動が開始されるとともに、第2ガス供給部25の空気供給弁56の開動作が行われ、さらに、排気管49の排気弁49aの開動作が行われる。
送風機54の作動が開始されることで、雰囲気置換室21の外部の空気が吸い込まれて送風されて空気供給配管55に供給される。更に、空気供給弁56の開動作が行われることで、空気供給配管55の状態が開放状態に切り替えられ、送風機54によって供給される空気が、空気供給配管55、共通供給配管53、及びガス供給口22を介して、雰囲気置換室21内に供給される。そして、入口扉33が開いて入口32が開放されることで、雰囲気置換室21内のガスが、入口32から雰囲気置換室21の外へと排出される。即ち、ステップS108の処理においては、入口32は、入口扉33が開いた状態で雰囲気置換室21内のガスを雰囲気置換室21の外へ排出するガス排出口32として作動する。また、排気弁49aの開動作が行われることで、排気管49の状態が開放状態に切り替えられて、雰囲気置換室21内のガスが、ガス排出口23及び排気管49を通過して雰囲気置換室21の外へ排出される。即ち、雰囲気置換室21内のガスは、ガス排出口32としての入口32とガス排出口23との両方から雰囲気置換室21の外へ排出される。
上記のように、ステップS108の処理では、空気がガス供給口22から雰囲気置換室21内に供給されるとともに、雰囲気置換室21内のガスが入口32(ガス排出口32)とガス排出口23とから雰囲気置換室21外へ排出される。このため、雰囲気置換室21内においては、ガス供給口22から入口32及びガス排出口23へと向かって雰囲気置換室21内で全体的に広がりながら流動する不活性ガスの流れが形成されて、入口32及びガス排出口23から雰囲気置換室21内のガスが雰囲気置換室21外へと押し出される流れが形成される。尚、図11(B)では、このときの雰囲気置換室21内における空気及び雰囲気置換室21内のガスの流れの方向を二点鎖線の矢印で模式的に示している。
ステップS108の処理では、ガス供給口22から入口32及びガス排出口23へと向かって雰囲気置換室21内で広がりながら流動する空気の流れと、入口32及びガス排出口23から雰囲気置換室21内のガスが外へと押し出される流れとが形成されることで、雰囲気置換室21内の雰囲気が空気に置換されていくことになる。これにより、ワーク16を雰囲気置換室21からワーク搬出先の熱処理室11へと搬出する際に雰囲気置換室21に流入したワーク搬出先の熱処理室11内のガスを含む雰囲気置換室21内の雰囲気が空気に置換される。このため、ワーク16の搬出の際にワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスが雰囲気置換室21から効率よく排出される。
ステップS108の処理では、空気がガス供給口22から雰囲気置換室21内に供給されるとともに、雰囲気置換室21内のガスが入口32及びガス排出口23から雰囲気置換室21外へ排出される状態が所定の時間に亘って維持される。これにより、空気が雰囲気置換室21内に供給される前に雰囲気置換室21内に存在していたガスのほとんどが雰囲気置換室21の外へ排出され、雰囲気置換質21内に存在しているガスのほとんどが空気である状態となる。即ち、雰囲気置換室21内の雰囲気が空気に置換された状態となる。
尚、空気が雰囲気置換室21内に供給されるとともに雰囲気置換室21内のガスが外へ排出される上記の所定の時間については、雰囲気置換室21内の雰囲気を空気に置換するために必要な時間が確保されるように適宜設定される。上記の所定の時間が経過し、雰囲気置換室21内の雰囲気が空気に置換された状態となると、制御部26からの制御指令に基づいて、送風機54の作動が停止されるとともに、空気供給弁52の閉動作が行われ、更に、排気弁49aの閉動作が行われる。加えて、制御部26からの制御指令に基づいて入口扉駆動部34が作動して入口扉33が閉じられ、入口32が閉鎖される。これにより、空気の雰囲気置換室21内への供給と雰囲気置換室21内のガスの排出とが終了し、雰囲気置換室21内の雰囲気を空気へ置換するステップS108の処理が終了する。
雰囲気置換室21内の雰囲気を空気へ置換するステップS108の処理が終了することで、雰囲気置換装置10における処理動作が一旦全て終了する。
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態によると、雰囲気置換装置10は、雰囲気置換室21を備え、所定の雰囲気に維持された状態でワーク16に対して熱処理を施すワーク搬出先の熱処理室11に対して雰囲気置換室21が連結された状態で用いられる。そして、雰囲気置換装置10によると、雰囲気置換室21にワーク16が搬入された状態で、第1ガス供給部24からガス供給口22を介して雰囲気置換用ガスとしての第1のガス(不活性ガス)が雰囲気置換室21に供給される。第1のガスとしては、雰囲気置換室21が連結されたワーク搬出先の熱処理室11の雰囲気に応じたガスが選定される。そして、ガス供給口22から第1のガスが雰囲気置換室21に供給されながら、ガス排出口23から雰囲気置換室21内のガスが雰囲気置換室21外へ排出される。これにより、雰囲気置換室21内の雰囲気が第1のガスに置換される。このため、雰囲気置換装置10によると、雰囲気置換室21の雰囲気を雰囲気置換室21に連結されたワーク搬出先の熱処理室11の雰囲気に応じて雰囲気置換室21へのワーク16の搬入の際に効率よく置換できる。尚、雰囲気置換装置10によると、雰囲気置換室21の雰囲気を置換するときに雰囲気置換用のガスを供給すればよく、常時ガスを供給し続ける必要がないため、ガスの使用量を低減でき、コストの上昇を抑制することができる。
また、雰囲気置換装置10によると、ワーク16が雰囲気置換室21からワーク搬出先の熱処理室11に搬出された後に、第2ガス供給部25からガス供給口22を介して雰囲気置換用ガスとしての第2のガス(空気)が雰囲気置換室21に供給される。そして、ガス供給口22から第2のガスが雰囲気置換室21に供給されながら、ガス排出口(23、32)から雰囲気置換室21内のガスが雰囲気置換室21外へ排出される。これにより、ワーク16を雰囲気置換室21からワーク搬出先の熱処理室11へと搬出する際に雰囲気置換室21に流入したワーク搬出先の熱処理室11内のガスを含む雰囲気置換室21内の雰囲気が第2のガスに置換される。このため、ワーク16の搬出の際にワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスを雰囲気置換室21から効率よく排出することができる。よって、ワーク16を雰囲気置換室21から搬出した後に、ワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスが雰囲気置換室21に滞留することを防止し、ワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスに含まれる成分の影響がワーク16に生じてしまうことを防止することができる。より具体的には、ワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスが雰囲気置換室21に滞留することが防止されるため、ワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスに含まれる成分が雰囲気置換室21の天井壁30或いは側壁(27、28)の内壁面で結露してしまうことが防止され、新たに雰囲気置換室21に搬入されたワーク16への滴下が防止される。これにより、ワーク16に滴下した成分によるワーク16の汚れ或いはワーク16の処理不良の発生も防止されることになる。
従って、本実施形態によると、ワーク16が搬入及び搬出される雰囲気置換室21の雰囲気を雰囲気置換室21に連結されたワーク搬出先の熱処理室11の雰囲気に応じて雰囲気置換室21へのワーク搬入の際に効率よく置換できるとともに、ワーク16を雰囲気置換室21から搬出した後に、ワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスが雰囲気置換室21に滞留することを防止し、ワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスに含まれる成分の影響がワーク16に生じてしまうことを防止することができる、雰囲気置換装置10を提供することができる。
また、本実施形態によると、第1のガスは不活性ガスであり、第2のガスは空気である。この構成によると、雰囲気置換室21が連結されたワーク搬出先の熱処理室11の雰囲気が不活性ガスである場合に、雰囲気置換室21の雰囲気をワーク搬出先の熱処理室11の雰囲気に応じて雰囲気置換室21へのワーク搬入の際に効率よく置換できる。そして、ワーク搬出の際にワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスを雰囲気置換室21から排出して雰囲気置換室21内の雰囲気を置換する際には、雰囲気置換用ガスとして高価な不活性ガスではなく空気を用いることができる。このため、雰囲気置換用ガスとして使用する不活性ガスの使用量を更に低減でき、コストを更に低減することができる。尚、ワーク搬出後の雰囲気置換室21の雰囲気が空気に置換されても、新たにワーク16が搬入された際には、雰囲気置換室21内の空気が排出されるとともに雰囲気置換室21に不活性ガスが供給され、雰囲気置換室21の雰囲気がワーク搬出先の熱処理室11の雰囲気に応じた不活性ガスに置換される。このため、雰囲気置換室21からワーク16を搬出する際に、ワーク搬出先の熱処理室11の雰囲気に影響が生じることも防止される。
また、本実施形態によると、第2ガス供給部25は、雰囲気置換室21の外部の空気を第2のガスとして雰囲気置換室21に誘導して供給するように構成されている。この構成によると、ワーク搬出後に雰囲気置換室21内の雰囲気を置換する際に、雰囲気置換室21の外部の空気を第2のガスとして制約無く容易に取り込んで雰囲気置換室21に供給することができる。
また、本実施形態によると、雰囲気置換室21内において、雰囲気置換室21に搬入されたワーク16が配置される領域であるワーク配置領域P1が設定され、ガス排出口23は、雰囲気置換室21において、上方から見た状態で、ワーク配置領域P1から外れた位置に配置されている。雰囲気置換室21内の雰囲気の置換が行われる際には、ガス供給口22から雰囲気置換用ガスが雰囲気置換室21内に供給されることに伴って、雰囲気置換室21内のガスがガス排出口23から押し出されるようにして雰囲気置換室21外へ排出される。このため、雰囲気置換室21内にもし異物が混入した場合、その異物がガス排出口23の近傍に付着してしまう虞がある。そして、ガス排出口23の近傍に異物が付着した後に雰囲気置換室21内の雰囲気の置換が行われる際に、ガス排出口23からガスが排出される際に生じるガス排出口23の近傍でのガスの流動によって、異物がガス排出口23の近傍から剥離して飛散することが起こり得る。この場合であっても、上記の構成によると、ガス排出口23が、上方から見てワーク配置領域P1から外れた位置に配置されているため、ガス排出口23の近傍から飛散した異物がワーク16に付着してしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態によると、ガス供給口22は、雰囲気置換室21の上部に設けられ、ガス排出口23は、雰囲気置換室21の下部に設けられている。この構成によると、雰囲気置換室21内の雰囲気の置換が行われる際には、雰囲気置換室21の上部に設けられたガス供給口22から雰囲気置換用ガスが雰囲気置換室21内に供給され、雰囲気置換室21の下部に設けられたガス排出口23から雰囲気置換室21内のガスが排出される。このため、雰囲気置換室21においては、上方から下方へと向かう雰囲気置換用ガスの流れが形成されて、下方から雰囲気置換室21内のガスが室外へと押し出される流れが形成される。これにより、雰囲気置換室21内の雰囲気の置換を効率よく迅速に行うことができる。
また、本実施形態によると、雰囲気置換室21は、上方から見て矩形の形状を有する直方体状に設けられ、ガス供給口22とガス排出口23とは、雰囲気置換室21において、上方から見た状態で、上記の矩形の形状の対角線に沿って配置されている。この構成によると、雰囲気置換室21内の雰囲気の置換が行われる際には、雰囲気置換室21の上部における4つのコーナー部分のうちの1つのコーナー部分に設けられたガス供給口22から雰囲気置換用ガスが雰囲気置換室21内に供給される。そして、雰囲気置換室21の下部における4つのコーナー部分のうちの1つのコーナー部分であってガス供給口22から最も離れた位置にあるコーナー部分に設けられたガス排出口23から雰囲気置換室21内のガスが排出される。このため、雰囲気置換室21においては、上方における1つのコーナー部分から下方における最も離れたコーナー部分へと向かって雰囲気置換室21内で全体的に広がりながら流動する雰囲気置換用ガスの流れが形成されて、下方における1つのコーナー部分から雰囲気置換室21内のガスが室外へと押し出される流れが形成される。これにより、雰囲気置換室21内においてガスが排出され難い領域が発生してしまうことを抑制でき、雰囲気置換室21内の雰囲気の置換を更に効率よく迅速に行うことができる。
また、本実施形態によると、雰囲気置換室21において、ガス排出口23はガス供給口22よりも入口32側に設けられ、ガス供給口22はガス排出口23よりも出口35側に設けられている。この構成によると、雰囲気置換室21内の雰囲気の置換が行われる際には、雰囲気置換室21の出口35側に設けられたガス供給口22から雰囲気置換用ガスが雰囲気置換室21内に供給され、雰囲気置換室21の入口32側に設けられたガス排出口23から雰囲気置換室21内のガスが排出される。これにより、雰囲気置換室21においては、ワーク16が搬出される出口35側からワーク16が搬入される入口32側へと向かう雰囲気置換用ガスの流れが形成されて、入口32側から雰囲気置換室21内のガスが室外へと押し出される流れが形成される。一方、ワーク16の搬出の際には、ワーク搬出先の熱処理室11からのガスは、雰囲気置換室21の出口35側から流入する。このため、上記の構成によると、雰囲気置換用ガスが出口35側から入口32側へと流れて入口32側から雰囲気置換室21内のガスが室外へと押し出されるため、ワーク16の搬出の際にワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスを雰囲気置換室21からより効率よく迅速に排出することができる。
また、本実施形態によると、ガス排出口(23、32)として、第1のガスが雰囲気置換室21内に供給される際に雰囲気置換室21内のガスを雰囲気置換室21の外へ排出する第1ガス排出口23と、第2のガスが雰囲気置換室21内に供給される際に雰囲気置換室21内のガスを雰囲気置換室21の外へ排出する第2ガス排出口(23、32)とが設けられている。この構成によると、雰囲気置換室21内のガスは、第1のガスに置換される際には第1ガス排出口23から排出され、第2のガスに置換される際には第2ガス排出口(23、32)から排出される。即ち、第1のガスへの置換時と第2のガスへの置換時とにそれぞれ応じて、対応するガス排出口(23、32)が設けられる。このため、第1ガス排出口23及び第2ガス排出口(23、32)の排出能力の仕様を適宜設定することで、雰囲気置換用ガスとしての第1のガス及び第2のガスのそれぞれの特性に応じて容易に雰囲気置換室21内のガスの排出量を変更することができる。とくに、第1のガスが高価なガスである場合、第1のガスをより効率よく使用するため、第1のガスへの置換時に置換に用いられることなく無駄に排出されてしまう第1のガスを減らすように、ガスの排出量を抑制した第1ガス排出口23を用いることができる。そして、第2のガスが安価なガスである場合、ワーク16の搬出の際にワーク搬出先の室から流入したガスを雰囲気置換室21からより迅速に排出して第2のガスへの置換を速やかに行うため、ガスの排出量を増大した第2ガス排出口(23、32)を用いることができる。
また、本実施形態によると、入口32は、入口扉33が開いた状態で雰囲気置換室21内のガスを雰囲気置換室21の外へ排出する第2ガス排出口32としても用いられる。この構成によると、ワーク16が搬入される広い開口としての入口32が、第2のガスへの置換時に雰囲気置換室21内のガスを排出する第2ガス排出口32として用いられる。このため、ワーク16の搬出の際にワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスを雰囲気置換室21からより迅速に排出して第2のガスへの置換をより速やかに行うことができる。
また、本実施形態の熱処理システム1は、雰囲気置換装置10と、雰囲気置換室21に連結されて、雰囲気置換室21から搬出されたワーク16が搬入されてワーク16に対する熱処理を行う熱処理室11と、を備えている。この構成によると、雰囲気置換装置21と同様の効果を奏することができる。即ち、この構成によると、ワーク16が搬入及び搬出される雰囲気置換室21の雰囲気を雰囲気置換室21に連結された熱処理室11の雰囲気に応じて雰囲気置換室21へのワーク搬入の際に効率よく置換できるとともに、ワーク16を雰囲気置換室21から搬出した後に、ワーク搬出先の熱処理室11から流入したガスが雰囲気置換室21に滞留することを防止し、熱処理室11から流入したガスに含まれる成分の影響がワーク16に生じてしまうことを防止することができる、熱処理システム1を提供することができる。
また、本実施形態によると、熱処理システム1において、熱処理室11は、熱処理として、ワーク16を加熱してワーク16に付着した油脂を気化させて除去する脱脂処理を行うように構成されている。この構成によると、ワーク16を雰囲気置換室21から搬出した後に、ワーク搬出先であって脱脂処理を行う熱処理室11から流入したガスが雰囲気置換室21に滞留することを防止し、熱処理室11から流入したガスに含まれる油脂の成分の影響がワーク16に生じてしまうことを防止することができる。より具体的には、脱脂処理を行う熱処理室11から流入したガスが雰囲気置換室21に滞留することが防止されるため、熱処理室11から流入したガスに含まれる油脂の成分が雰囲気置換室21の天井壁30或いは側壁(27、28)の内壁面で結露してしまうことが防止され、新たに雰囲気置換室21に搬入されたワーク16への油脂の滴下が防止される。これにより、ワーク16に滴下した油脂によるワーク16の汚れ或いはワーク16の処理不良の発生も防止されることになる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例が実施されてもよい。
(1)前述の実施形態では、雰囲気置換室21に連結される熱処理室11が、脱脂処理室として構成された熱処理システム1の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。即ち、雰囲気置換室21に連結される熱処理室11が、脱脂処理以外の熱処理を行うように構成された熱処理システム1の形態が実施されてもよい。例えば、雰囲気置換室21に連結される熱処理室11が、浸炭処理、焼入処理、焼戻処理、或いは焼鈍処理、等の熱処理を行うように構成された熱処理システム1の形態が実施されてもよい。
(2)また、前述の実施形態では、ガス供給口22が雰囲気置換室21の上部の天井壁30に設けられた雰囲気置換室21の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。即ち、ガス供給口22が、雰囲気置換室21の上部以外の部分に設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。例えば、ガス供給口22が、側壁27又は側壁28或いは底壁29に設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。また、前述の実施形態では、ガス供給口22が天井壁30における出口35側に設けられた雰囲気置換室21の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。即ち、ガス供給口22が天井壁30における入口32側に設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。
(3)また、前述の実施形態では、ガス供給口22が1つ設けられた雰囲気置換室21の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。即ち、ガス供給口22が複数設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。また、この場合、複数のガス供給口22のうちのいずれかが雰囲気置換用ガスとしての第1のガスを供給するために設けられ、複数のガス供給口22のうちの他のいずれかが雰囲気置換用ガスとしての第2のガスを供給するために設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。
(4)また、前述の実施形態では、ガス排出口23が雰囲気置換室21の下部の底壁29に設けられた雰囲気置換室21の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。即ち、ガス排出口23が、雰囲気置換室21の下部以外の部分に設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。例えば、ガス排出口23が、側壁27又は側壁28或いは天井壁30に設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。また、前述の実施形態では、ガス排出口23が底壁29における入口32側に設けられた雰囲気置換室21の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。即ち、ガス排出口23が底壁29における出口35側に設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。
(5)また、前述の実施形態では、ガス排出口23が雰囲気置換室21の下部に設けられ、ガス排出口23が、雰囲気置換室21において、上方から見た状態で、ワーク配置領域P1から外れた位置に配置された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ガス排出口23が雰囲気置換室21の上部に設けられ、そのガス排出口23が、雰囲気置換室21において、上方から見た状態で、ワーク配置領域P1から外れた位置に配置された形態が実施されてもよい。この形態によると、雰囲気置換室21の上部に設けられたガス排出口23が、上方から見てワーク配置領域P1から外れた位置にある。このため、雰囲気置換室21内に異物が混入してその異物がガス排出口23の近傍に付着し、その後にガス排出口23の近傍でのガスの流動によってガス排出口23の近傍から異物が剥離した場合であっても、剥離した異物がワーク16上に落下してワーク16に付着してしまうことを抑制することができる。
(6)また、前述の実施形態では、雰囲気置換室21の下部に設けられたガス排出口23が1つ設けられた雰囲気置換室21の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。即ち、雰囲気置換室21の下部に設けられたガス排出口23が複数設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。また、この場合、複数のガス排出口23のうちのいずれかが、雰囲気置換室21の雰囲気を第1のガスに置換する際に用いられる第1ガス排出口として設けられ、複数のガス排出口23のうちの他のいずれかが、雰囲気置換室21の雰囲気を第2のガスに置換する際に用いられる第2ガス排出口として設けられた雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。
(7)また、前述の実施形態では、雰囲気置換室21の下部に設けられたガス排出口23が、第1ガス排出口23として用いられるとともに第2ガス排出口23としても用いられ、入口32として設けられたガス排出口32が、第2ガス排出口32として用いられる雰囲気置換室21の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、雰囲気置換室21の下部に設けられたガス排出口23のみが第1ガス排出口23として用いられ、入口32として設けられたガス排出口32のみが第2ガス排出口32として用いられる雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。
(8)また、前述の実施形態では、入口32が第2ガス排出口32として用いられる雰囲気置換室21の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。入口32が、ガス排出口として用いられない雰囲気置換室21の形態が実施されてもよい。この場合、ガス排出口23が、第1ガス排出口23として用いられるとともに第2ガス排出口23としても用いられる。また、ガス排出口23が第1ガス排出口23として用いられるとともに第2ガス排出口23としても用いられる場合、排気管49が分岐した配管部分を有し、更に、排気弁がそれぞれ設けられた複数の排気口を排気管49が備えた形態が実施されてもよい。この場合、複数の排気口のうちのいずれかが、雰囲気置換室21の雰囲気を第1のガスに置換する際に用いられ、複数の排気口のうちの他のいずれかが、雰囲気置換室21の雰囲気を第2のガスに置換する際に用いられる形態が実施されてもよい。