JP7395793B1 - 多結晶シリコンロッド製造用反応炉、ガス供給ノズル、多結晶シリコンロッドの製造方法および多結晶シリコンロッド - Google Patents

多結晶シリコンロッド製造用反応炉、ガス供給ノズル、多結晶シリコンロッドの製造方法および多結晶シリコンロッド Download PDF

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Abstract

【課題】 金属元素や炭素といった、不純物元素の混入が低減された高純度の多結晶シリコンロッドを製造するための反応炉及び、該反応炉を用いた多結晶シリコンロッドの製造方法を提供する。【解決手段】 ベルジャと底板とにより内部が密閉されてなり、前記底板には、シリコン芯線を保持するとともに該シリコン芯線に通電するための複数の電極対が設けられてなり、さらに前記底板には、前記ベルジャの内部空間にシリコン析出用原料ガスを供給するための、複数のガス供給ノズルが夫々に先端噴射口を上向きに設けられた構造の多結晶シリコンの製造用反応炉であって、前記ガス供給ノズルの前記ベルジャの内部空間との接触表面の少なくとも一部が、十点平均粗さRzが1.0~5.0μmである粗面化部を含む石英で構成されていることを特徴とする多結晶シリコンロッド製造用反応炉を提供する。【選択図】 図1

Description

本発明は、反応炉内に設けられたシリコン芯材上に化学気相析出法によって多結晶シリコンを析出させるための多結晶シリコンロッド製造用反応炉、該炉に反応ガスを供給するノズル及び、該反応炉を用いた多結晶シリコンロッドの製造方法に関する。また本発明は多結晶シリコンロッドに関する。
従来から、半導体あるいは太陽光発電用ウェハーの原料として使用されるシリコンを製造する方法は種々知られており、そのうちのいくつかは既に工業的に実施されている。例えばその一つはシーメンス法と呼ばれる方法であり、反応炉の内部に、シリコン芯線を設け、通電によってシリコン芯線をシリコンの析出温度に加熱し、この状態で反応室内にトリクロロシラン(SiHCl3)やモノシラン(SiH4)等のシラン化合物と還元ガスとからなるシリコン析出用原料ガスを供給し、化学気相析出法によりシリコン芯線上にシリコンを析出させるというものである。この方法は高純度な多結晶シリコンがロッドの形態で得られることが特徴であり、最も一般的な方法として実施されている。
このシーメンス法を、工業的に実施するためには、上記反応炉は一般的に、図1に示す構造をしている。即ち、反応炉1は、ベルジャ2と底板3とにより内部が密閉されてなり、前記底板3には、複数のシリコン芯線4が保持されるとともに、該シリコン芯線4に通電するための電極対5が設けられた構造のものが使用される。さらに、前記底板3には、ベルジャ2の内部空間にシリコン析出用原料ガスを供給するために、複数のガス供給ノズル6が夫々に先端噴射口を上向きに設けられた構造をしている(特許文献1参照)。なお、図1ではガス供給ノズル6を一つだけ示したが、実機では底板3の上面にほぼ均等な間隔で複数のガス供給ノズル6が設けられている。
半導体あるいは太陽光発電用ウェハーの原料として使用される多結晶シリコンは、不純物濃度の低い高純度なものである必要があり、具体的には、半導体用では比抵抗が1000Ωcm以上の高抵抗のものであることが求められ、太陽光発電用ウェハー用では300Ωcm以上が求められる。ここで、多結晶シリコンへの混入が懸念される不純物としては、主にP、Bなどのドーパントが挙げられ、これらに加えて半導体用途においては歩留まりに影響を与えるものとしてFe、Ni、Crなどの金属および炭素が挙げられる。
例えば、原料由来の不純物の混入を低減させるために、原料であるシラン系化合物を精製する技術が数多く開示されている(例えば特許文献2参照)。
一方、これらの不純物は、原料以外にも多結晶シリコン製造装置から混入する恐れもある。即ち、多結晶シリコン製造過程では、シリコン芯線を加熱する際、そして、シリコン芯線を通電して化学気相成長が進む際、反応室内は非常に高温となる。更に、化学気相成長が進む間、反応室内は、反応性ガスと反応により生成した副生成ガス(シラン系化合物のガス、水素ガス、テトラクロロシラン、及び、塩化水素等)に高温下で曝される。ベルジャ炉の内壁の炉材やベルジャ内部に設置される電極、ノズル、ホルダー等の多結晶シリコン製造装置に用いられる部材には、一般にステンレス鋼、カーボンといった無機材料が用いられる。ステンレス鋼はFeを主成分とし、Cr等の金属を含む。カーボン部材は炭素を主成分として(Fe,Cr,Ni)等の金属を含む。これらの無機材料が、高温下で反応性ガス及び副生成ガスと接触した場合、不純物の生成・放出、金属シリサイドの析出、無機材料の劣化が生じ、得られる多結晶シリコンの不純物濃度が増大する恐れがある。
そこで、多結晶シリコン製造装置由来の不純物の混入を低減させる技術も検討されている。例えば、特許文献3には、原料ガスを供給するためのカーボン製のノズルから発生する不純物が、原料ガスに混入することを防ぐために、コーティング層で被覆されたノズルが開示されている。また、特許文献4には、多結晶シリコンの製造装置に用いられるカーボン部品由来の不純物がシリコンロッド内に取り込まれることを防ぐために、多結晶シリコン製造用カーボン部品として使用されるカーボン部品を精製する方法が開示されている。
また、通電を停止してシリコン析出を終了する際に、通電量を調整して冷却する。シリコンは温度が高いほど電気抵抗率が高い性質があるため放熱によって冷却した表面の電気抵抗率が急速に減少し、シリコンロッド中心部に電流が集中して中心部が表面に対して大きな温度差を維持したまま冷却が進む。その結果シリコンロッド中に大きな残留応力が残り、冷却後の外力によって破断するリスクが高まる。そのため単結晶シリコン製造原料用途のうちFZ法原料やリチャージ用シリコンロッドに不適となる他、反応炉から取り出す前に崩れる危険性も高まる。そこで特許文献5のように、冷却開始前に水素などの熱伝達率が低い雰囲気に切替え、シリコンロッド表面を1030℃以上の高温に適切な期間置いて中心部と表面の温度を均一化したのちに通電を急激に低下する熱処理(アニール)技術等も提案されている。
特開2013-63884号公報 特許第5368909号 特許第5182608号 特許第5428692号 特許第3357675号
近年、半導体ウェハーの高性能、高微細化が進められるに従い、半導体材料としての多結晶シリコンに含有する上記不純物元素の混入をさらに厳しく低減させることが求められている。具体的には、数pptレベルでの品質管理が要求されており、上記対策に加えた更なる不純物元素の混入防止方法が望まれている。
すなわち、本発明の目的は、金属元素や炭素といった、不純物元素の混入が低減された高純度の多結晶シリコンロッドを製造するための反応炉、ガス供給ノズル及び、該反応炉を用いた多結晶シリコンロッドの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。シーメンス法による多結晶シリコン製造過程における金属成分の挙動の把握を行ったところ、金属化合物が生成していることを確認した。そこで、金属化合物の副生を低減する方法について検討を進めた結果、ガス供給ノズルのガス供給口付近の材質をカーボンから石英に変更することで、金属化合物の副生量を低減させることができることが判明した。しかしながら、ガス供給ノズルの材質を石英に変更してシリコンの析出を行ったところ、析出したシリコンロッドの外観不良が発生するという問題点が生じることも判明した。
そこで、更に検討を進めた結果、上記石英に変更したガス供給ノズルのガス供給口付近の表面を粗面化させることで、析出したシリコンロッドの外観不良の発生が抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、第1の本発明は、ベルジャと底板とにより内部が密閉されてなり、前記底板には、シリコン芯線を保持するとともに該シリコン芯線に通電するための複数の電極対が設けられてなり、さらに前記底板には、前記ベルジャの内部空間にシリコン析出用原料ガスを供給するための、複数のガス供給ノズルが夫々に先端噴射口を上向きに設けられた構造の多結晶シリコンの製造用反応炉であって、前記ガス供給ノズルの前記ベルジャの内部空間との接触表面の少なくとも一部が、十点平均粗さRzが1.0~5.0μmである粗面化部を含む石英で構成されていることを特徴とする多結晶シリコンロッド製造用反応炉である。
上記第1の本発明は以下の態様を好適に採りうる。
(1-1)前記ガス供給ノズルにおける前記接触表面の表面積の50%以上が、前記粗面化部を有する石英で構成されていること。
(1-2)前記粗面化部の算術平均表面粗さRaが0.3~3.0μmであること。
(1-3)前記ガス供給ノズルにシリコン析出用原料ガスを供給するための供給配管を有し、該ガス供給ノズル又は該供給配管の少なくともいずれかにシリコン析出用原料ガスに混入した不純物を除去する除去手段を有すること。
また、第2の本発明は、先端噴射口よりシリコン析出用原料ガスを供給するためのガス供給ノズルであって、前記ガス供給ノズルの前記ベルジャの内部空間との接触表面の少なくとも一部が、十点平均粗さRzが1.0~5.0μmである粗面化部を含む石英で構成されていることを特徴とするガス供給ノズルである。
上記第2の本発明は以下の態様を好適に採りうる。
(2-1)前記ガス供給ノズルにおける前記接触表面の表面積の50%以上が、前記粗面化部を有する石英で構成されていること。
(2-2)前記粗面化部の算術平均表面粗さRaが0.3~3.0μmであること。
さらに、第3の本発明は、ベルジャ内にシリコン芯線を収容し、前記シリコン芯線に通電しながら、前記シリコン芯線にシリコン析出用原料ガスを噴出させることにより、前記シリコン芯線に多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコンロッドの製造方法において、
上記第1の本発明のいずれかに記載の多結晶シリコンロッド製造用反応炉を用いて製造することを特徴とする多結晶シリコンロッドの製造方法である。
上記本発明の多結晶シリコンロッドの製造方法において、多結晶シリコンを析出させた後、前記多結晶シリコンロッド製造用反応炉内のガス供給ノズルを取り外し、次いで取り外したガス供給ノズルの前記ベルジャの内部空間との接触表面を洗浄する工程を含むことが好ましい。
上記本発明の多結晶シリコンロッドの製造方法において、シリコン析出用原料ガスに混入した不純物を除去する除去手段により不純物を除去したシリコン析出用原料ガスを前記シリコン芯線に噴出させることが好ましい。
多結晶シリコンロッドの製造をISO14644-1により定義されるClass1~3の清浄度に調整された雰囲気下で行うことが好ましい。
第4の本発明は、表面から4mmまでの深さの外皮部におけるFe濃度が5.0pptw以下、またはNi濃度が2.0pptw以下である多結晶シリコンロッドである。
該多結晶シリコンロッドにおいて、芯線部と中間部と外皮部の実測値から算出したFe濃度の体積平均値が10pptw以下、またはNi濃度が2.0pptw以下であることが好ましい。
また、多結晶シリコンロッド表面10万cm2当たりの、大きさ0.5~10cm、高さが0.5~5.0cmである異物が2個以下であることが好ましい。
本発明の多結晶シリコンロッド製造用反応炉を用いて、シーメンス法にて多結晶シリコンロッドを製造することで、金属元素や炭素といった、不純物元素の混入が低減された高純度の多結晶シリコンロッドを工業的に製造することができる。
上記本発明の反応炉を用いることで、高純度の多結晶シリコンロッドが得られる理由について詳細は不明であるが、本発明者らは以下のとおり推測している。すなわち上述のとおり、ベルジャ内で芯線表面上に多結晶シリコンの析出を行った場合、反応炉内は約1000℃という高温に長時間晒されるとともに、塩化水素という反応性の高いガスが副生する。このため、反応炉内のステンレス部材やカーボン部材表面で塩化水素が接触し、金属の化合物が生成する。その生成した金属の化合物が気化し、反応炉内のガス流によって拡散してその一部がシリコン表面を汚染しているものと推測される。ここで一般的に底板や電極対などは近傍に冷却水を流すなど表面温度の変動を小さくして構造材と塩化水素との反応を抑える構造としている。しかし、ガス供給ノズルは炉内に突出する形状から冷却機構を作りにくく高温化しやすいため、金属を含む材質を採用した場合、表面積としては小さいものの上記のメカニズムによる金属化合物の副生による汚染は非常に大きくなると考えられる。
そして、冷却開始前に水素などの熱伝達率が低い雰囲気に切替えるアニール技術を用いるとシリコンロッド表面に加え種々の炉材表面の温度も上昇し、金属化合物がさらに気化し、反応炉内のガス流によって拡散してその一部がシリコンロッドを汚染するものと推測される。本発明の反応炉では、ガス供給ノズルにおける少なくともガス供給口付近の材質を石英部材としている。石英部材は、カーボン部材と比べて金属元素の含有量が少なく、さらに、上記シリコンの析出条件下においては塩化水素によって腐食されることがないものと推測されるため、金属化合物の副生が低減されたものと推測される。加えて、シリコンロッドから発する輻射光に対し比較的高い透過性を有し加熱されにくいことで金属不純物の副生が減少する。したがって、冷却開始前に炉材表面の温度を上昇させる操作を行っても金属化合物の再気化量も減少すると推測される。
また、平滑化した石英をガス供給ノズルに用いた際にシリコンロッドの外観不良が発生するという問題点は、石英表面に析出したシリコンの密着力が弱く反応炉内のガス流、および表面温度変動による膨張変形によって剥離してシリコンロッドに付着することで該シリコンロッドの外観不良が発生するものと推測される。
これに対して、ガス供給ノズルにおける石英表面をある程度粗面化して接合面積を増加させることで表面に析出したシリコンの剥離を抑制し、シリコンロッドの外観不良が抑制出来るものと考えられる。
上記のとおり本発明の反応炉を用いることで、高純度の多結晶シリコンロッドを工業的に得ることが可能となり、本発明の産業上の利用可能性は極めて高い。
本発明で適用する代表的態様にある、多結晶シリコンロッド製造用反応炉の構造を示す概略図である。 本発明の多結晶シリコンロッド製造用反応炉において好適に用いられるガス供給ノズルの斜視図である。 本発明の代表的態様にある、ガス供給ノズルを多結晶シリコンロッド製造用反応炉に設置した一の構造の断面図である。 本発明の代表的態様にある、ガス供給ノズルを多結晶シリコンロッド製造用反応炉に設置した他の構造の断面図である。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
<多結晶シリコンロッド製造用反応炉>
本発明において、多結晶シリコンロッドの製造は、通電によってシリコンの析出温度に加熱したシリコン芯線に、トリクロロシラン(SiHCl3)やモノシラン(SiH4)等のシラン化合物と還元ガスとからなるシリコン析出用原料ガスを接触させて、化学気相析出法によりシリコン芯線上にシリコンを析出させる、所謂、シーメンス法に従って実施する。反応炉は、前記図1に示したような、ベルジャ2と底板3とにより内部が密閉されてなり、前記底板3には、シリコン芯線4を保持するとともに該シリコン芯線4に通電するための複数の電極対5が設けられてなり、さらに前記底板3には、前記ベルジャ2の内部空間にシリコン析出用原料ガスを供給するための、複数のガス供給ノズル6が夫々に先端噴射口を上向きに設けられた構造のものを用いる。斯様な構造の反応炉1に対し、シリコン芯線4に通電しながら、前記ガス供給ノズル6からシリコン析出用原料ガスを噴出させることにより、前記シリコン芯線4に多結晶シリコン7を析出させて多結晶シリコンロッドを製造する。
<ガス供給ノズル>
図2は、本発明の多結晶シリコンロッド製造用反応炉において好適に用いられるガス供給ノズルの斜視図である。ガス供給ノズル6は円筒状で構成されており、内部にシリコン析出用原料ガスを供給するガス供給部12、底板と接合するための接合部13を有している。シリコン析出用原料ガスは、ガス供給部12から先端噴射口11を介して反応炉1内に供給される。
本発明の最大の特徴は、ガス供給ノズル6の少なくとも前記ベルジャの内部空間との接触表面の少なくとも一部が、十点平均粗さRzが1.0~5.0μmである粗面化部14を含む石英で構成されていることが特徴である。石英とすることにより、金属化合物の副生を抑制することが可能となる。図2では、ガス供給ノズル全体が石英で構成されているが、ガス供給ノズルのおける石英とする箇所については特に制限されない。例えば、シリコン析出用原料ガスを供給するガス供給部を石英以外の部材とし、該供給部の外周を石英で覆う2重構造とすることも可能である。或いは、ガス供給ノズルの、先端噴射口12を含む周囲(すなわち、反応炉1に立設したガス供給ノズルの上部)を石英とし、底板との接続部13側を他の部材とすることも可能である。金属化合物の副生を抑制する効果の観点から、先端噴射口を含むノズル上部が石英で構成されていることが好ましい。また、前記接触表面の表面積の50%以上が石英で構成されていることが好ましい。また、ガス導入経路は、断面積を変えない直胴型でもよいし線速を調整するために先端噴射口を熱間加工し径を変化させているものを採用しても良く、他の材料と接続するためにネジ加工を施したものを採用しても良い。なお、「接触面積」とは、ガス供給ノズル6の全表面のうち、ベルジャの内部空間に露出している表面の面積の合計であり、ガス供給ノズルの外側面、ノズルの頂部の合計を意味し、ノズルの内周面および底板3よりも下部の部分は算入されない。しかしながら、ノズルの内周面および底板よりも下側のガス供給ノズルも石英で構成されていてもよく、また粗面化されていてもよい。
また、上記本発明の多結晶シリコンロッド製造用反応炉におけるガス供給ノズルの石英は十点平均粗さRzが1.0~5.0μmである粗面化部15を含む必要がある。ガス供給ノズルの表面を平滑化した場合、平滑化した上記表面に析出したシリコンの密着力が弱く反応炉内のガス流、および表面温度変動による膨張変形によって剥離するものと推測される。一方、本発明のガス供給ノズルは、このような高低差を有する凹凸がある粗面化部を有することで、該凹凸部に析出したシリコンを付着させるとともに付着したシリコンの剥離を抑制させることが可能になる。析出したシリコンの剥離を抑制させる効果の観点から、上記粗面化部14の十点平均粗さRzは1.5~5.0μmの範囲であることが好ましく、3.0~5.0μmの範囲であることが特に好ましい。上記粗面化部の十点平均粗さRzが1.0μmを下回る場合は析出したシリコンの剥離を抑制させる効果が十分に発揮されず、剥離したシリコンによる外観異常をもたらすことが考えられる。また上記粗面化部の十点平均粗さRzを5.0μm超とした場合、本部材の厚みによっては耐久性に懸念が生じること、析出したシリコンの除去が困難になり次回再使用時に製造する多結晶シリコンへの金属汚染要因となりうる。さらに、析出中シリコンロッドからの輻射光への透明性が過剰に低下するため、ガス供給ノズル自体の温度が上昇し金属不純物を含んだシリコンの析出を助長することになる。また、同様の観点から、上記粗面化部14の算術平均表面粗さRaが0.3~3.0μmであることが好ましく、0.5~3.0μmの範囲であることが好ましく、1.0~3.0μmの範囲であることが特に好ましい。
上記粗面化部の十点平均粗さRzの測定方法は、ガス供給ノズルの石英表面をシリコンゴム等に転写してレプリカを作成し、該レプリカの表面を原子間力顕微鏡(AFM)等により観察することにより行うことができる。具体的には、上記AFMによる観察により得られた該レプリカの画像を解析して粗さ曲線を作成し、平均線よりも最も高い5点の山の高さの平均値と最も低い5点の谷の高さの平均値との差からRzを求めることができる。図2では、ガス供給ノズルの側面全体が上記粗面化部14を有する石英で構成されているが、石英表面における上記粗面化部とする箇所については特に制限されず、ガス供給ノズルの、先端噴射口13を含む周囲(すなわち、反応炉1に立設したガス供給ノズルの上部)を上記粗面化部とすることも可能である。析出したシリコンを付着させるとともに付着したシリコンの剥離を抑制させる効果が高い点から前記ベルジャの内部空間との接触表面の表面積の50%以上が上記粗面化部を有することが好ましい。
本発明の上記ガス供給ノズルの石英表面の粗面化は、公知の方法により行うことができる。例えば研磨砂を石英表面に吹き付けるサンドブラスト処理等が挙げられる。
また、上記ガス供給ノズル6は底板3に固定された状態で使用される。図3はガス供給ノズル6を多結晶シリコンロッド製造用反応炉に設置した構造の断面図である。底板3に設けられた底板ガス供給口17を囲む底板接合部15と、ガス供給ノズル6の接合部13とで接続されている。内部に連続するガス供給部を有しており、シリコン析出用原料ガスは、ガス供給部16からガス供給ノズル6に供給され、先端噴射口11を介して反応炉1内に供給される。図3は底板接合部15とガス供給ノズル6の接合部13とで固定され、ガス供給ノズル6が着脱可能な構造とはなっていないが、図4に示すように底板接合部15とガス供給ノズル6の接合部13とを固定部材18で固定し、ガス供給ノズル6が着脱可能な構造とすることが好ましい。
シリコンの析出後、ガス供給ノズルには析出した金属の化合物、及びシリコン等が付着している。ガス供給ノズルがカーボン部材である場合には、カーボン部材が複雑な形状の開気孔を有するため、上記付着物がカーボン部材内部に取り込まれる結果、十分に除去することは不可能である。カーボン部材の洗浄をイソプロピルアルコール(IPA)のようなアルコールや純水で洗浄することは考えうる。しかし、IPAのなどのアルコールで洗浄した場合には残留した有機物が析出中に気化し次回再使用時にカーボン汚染源となると考えられる。純水を用いた場合は酸素源となりシリコン芯線の表面酸化やCO2などの副生物の生成によるカーボン汚染が懸念される。またどちらの洗浄液を使用した場合でもカーボン部材の複雑な形状の開気孔を有する特徴から開孔内に入り込んだ微量金属化合物の排出が困難であると考えられる。
一方本発明のガス供給ノズルは上記付着物が石英部材表面に存在するため、ガス供給ノズルを取り外した後に、ガス供給ノズルを洗浄することで上記付着物を除去すること可能である。そして該付着物を除去した後、再度多結晶シリコンロッド製造用反応炉内に設置し繰り返しシリコンの析出に用いることが可能である。洗浄方法は上記付着物を石英表面から剥離させることが可能であれば良く、例えば超純水を石英部材表面に吹き付けることで除去する方法や、ガス供給ノズルを超純水を満たした容器中に浸漬させ、物理的な摩擦を加えて該付着物を除去する方法等が挙げられる。前述の十点平均粗さRzを過剰にした表面に対して、アルカリ性の薬品で溶解洗浄する方法も考えられるが、洗浄液のコストや洗浄液の残留による次回再使用時に製造する多結晶シリコンへの汚染が懸念される。
<その他の構成>
上記本発明の多結晶シリコンロッド製造用反応炉において、シリコン析出用原料ガスは上記ガス供給ノズルから多結晶シリコンロッド製造用反応炉内に供給されるが、シリコン析出用原料ガスを供給するための供給流路には、配管等に使用される材料由来の不純物が流入することがある。シリコン析出用原料ガスが多結晶シリコンロッド製造用反応炉内へ供給されると、前記不純物が該反応炉内に飛散して、析出中の多結晶シリコンに付着することにより、製造される多結晶シリコンの不純物濃度が上昇することがある。したがって、シリコン析出用原料ガスをガス供給ノズルより多結晶シリコンロッド製造用反応炉内に供給する際に、当該不純物を除去するための除去手段を設けることが好ましい。
かかる除去手段としては、WO2021/065685に記載されたフィルタによる除去手段等が挙げられる。このような除去手段を経たシリコン析出用原料ガスを供給することで、さらに高純度の多結晶シリコンロッドを得ることができる。
上記フィルタは図1におけるガス供給ノズル6、該ガス供給ノズル6の下部に設けられる供給配管(図示せず)内に設置されることが好ましい。フィルタは、シリコン析出用原料ガスに対する耐腐食性が高い材料によって構成されることが好ましく、例えば、Niを10%以上含有するステンレス鋼、耐食材料(ハステロイ、インコネル600、インコロイ800、インコロイ800Hなど)やセラミック(アルミナ、チタニア、ジルコニア、石英、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミなど)によって構成されることが可能である。また、シリコン析出用原料ガスに混入する不純物の大きさは、約1μm以上であることから、フィルタの濾過精度は、粒子径が1μm以上である粒子に対して95%以上であることが好ましい。さらに上記フィルタの濾過精度の維持のため、1回ないし数回の製造が終了して多結晶シリコンロッドを回収する時に清浄なフィルタと交換することが望ましい。コストの面から上記フィルタは洗浄して再利用することが好ましく、上記フィルタを清浄にする方法としては、たとえば多結晶シリコンロッド製造工程における原料ガスの通流方向とは逆の方向に純度の高い水、不活性ガス、空気のいずれか、または複数の流体を通流させる方法が好適である。
また前記多結晶シリコン製造に用いるシリコン芯線は、良く採用される方法として、金属製のブレードを用いて多結晶シリコンロッドなどの一部を細棒に切り出したり、シリコン融液から引き上げ固化させたプルロッドと呼ばれる細棒を切り分けることにより得られる。金属製のブレードを用いるため、切断面やその周囲は、上記ブレードの摩擦等により金属微粉が付着しその表面が汚染されている。そのため、一般に、フッ化水素酸と硝酸との混合溶液からなる洗浄液を収容した洗浄槽に上記シリコン芯線を浸漬し、その表面に洗浄液を接触させて洗浄を行い、その後、水洗リンス、風乾などを経て、十分清浄化したものを多結晶シリコンの製造に使用する。しかしながら、上記シリコン芯線が重金属を含む外気と接触すると、それがたとえ極めて短い時間の接触であっても、上記シリコン芯線表面はすぐに汚染されるという知見がある。そして、上記汚染されたシリコン芯線を使用すると、芯線表面の重金属が多結晶シリコン成長とともにその多結晶シリコン中に拡散してしまい、その結果、多結晶シリコンロッド全体として多結晶シリコンの純度が低下する。したがって、ベルジャ内にシリコン芯線を収容する作業時の雰囲気を特定の条件に調整しそれを維持することが好ましい。
かかる除去手段としては、WO2021/039569に記載された雰囲気の調整が挙げられる。このような雰囲気にてベルジャ内にシリコン芯線を収容することで、さらに高純度の多結晶シリコンロッドを得ることができる。
上記雰囲気とは、ISO14644-1により定義されるClass1~3の清浄度に調整された雰囲気であることが好ましい。なおISO14644-1とは、クリーンルームの空気清浄度を規定するための国際規格であり、具体的には、1m3中の0.1μm以上の粒子数を規定する規格であり、ISO14644-1により定義されるClass1~3の清浄度とは、1m3中に0.1μm以上の粒子が10~1000個の清浄度を示す。上述の効果を確実に得るためには、調整した雰囲気内に作業者や搬送物が入るときに流入する異物による汚染も排除する手段を講じることが望ましい。例えば、収容作業スペース内の清浄度があらかじめ決めた水準に達した後に、シリコン芯線洗浄工程用クリーンルーム内でシリコン芯線を格納・封入した搬送容器と作業者が入室した場合、再度清浄度が同じ水準に達するまで待ってから搬送容器を開けてシリコン芯線をベルジャ内へ収容する作業を開始するなどの手順が好適である。
<多結晶シリコンロッドの製造方法>
前記多結晶シリコンロッド製造用反応炉による多結晶シリコンロッドの製造は、シリコン芯線に通電することにより、これを多結晶シリコンの析出温度である約600℃以上に加熱して実施する。多結晶シリコンを迅速に析出させるため、一般的には、900~1200℃程度の温度に加熱するのが好ましい。
シリコン析出用原料ガスにおいて、シラン化合物は、モノシラン、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、モノクロロシラン、ジクロロシランなどが使用され、一般的には、トリクロロシランが好適に使用される。また、還元ガスとしては、通常、水素ガスが使用される。例えば、シラン化合物としてトリクロロシランを使用し、シリコンの析出を1000℃で行う場合、シリコン表面積当たりのクロロシランガス供給量として、0.02~0.10mol/cm2・hの範囲で供給することが好適である。
<多結晶シリコンロッド>
上記本発明の多結晶シリコンロッド製造用反応炉を用いて、シーメンス法にて多結晶シリコンロッドを製造することで、多結晶シリコンの析出時における金属化合物の副生が抑制される。この結果、析出初期段階(すなわち多結晶シリコンロッドにおける芯線部付近)から析出終盤(すなわち、多結晶シリコンロッドの表面外皮部)にいたるまで、不純物元素の混入が低減された高純度の多結晶シリコンロッドを工業的に製造することができる。特に、前記シリコン析出用ガス中の不純物を除去するための除去手段を経たシリコン析出用原料ガスを用いることでさらに、高純度の多結晶シリコンロッドを得ることができる。具体的には、多結晶シリコンロッド表面から4mmまでの深さの外皮部におけるFe濃度が10.0pptw以下、好ましくは10.0~0.5pptw、特に好ましくは5.0~0.5pptw、またはNi濃度が2.0pptw以下、好ましくは2.0~1.0pptw、特に好ましくは1.5~1.0pptwである多結晶シリコンロッドを得ることができる。さらに、多結晶シリコンロッドの芯線部と中間部と外皮部の実測値から算出した金属不純物の濃度の体積平均値として、Fe濃度を体積平均として計算した値が20pptw以下、好ましくは20.0~10.0pptw、特に好ましくは10.0~5.0pptw、またはNi濃度が2.0pptw以下、好ましくは2,0~1.5pptw、特に好ましくは1.5~1.0pptwである多結晶シリコンロッドを得ることができる。ここで芯線部とは、多結晶シリコンロッド内の芯線中心から4mmだけ外側までの位置であり、中間部とは多結晶シリコンロッド内の芯線中心から外皮表面の最短距離を繋ぐ直線を等分する位置から、その直線方向に内外2mmまでの計4mmの区間を示す。
さらに、本発明の多結晶シリコンロッド製造用反応炉を用いることで、多結晶シリコンロッドの表面形状が平滑であり、表面の外観不良が抑制された多結晶シリコンロッドを製造することができる。ここで、多結晶シリコンロッド表面の外観不良とは、正常な析出形態である芯線棒から拡がる円形もしくは楕円形状に対して、芯線棒から拡がる同心円状もしくは楕円形状から逸脱した突起物である。当該突起物の大きさとしては通常、直径(シリコンロッド表面を上面視した際に当該突起物の端部から端部までの距離が最長となる箇所の長さ)が0.5~10cm、正常な析出表面からの高さが0.5~5.0cmである。具体的には、当該多結晶シリコンロッド表面10万cm2当たりの上記外観不良の個数が2個以下、好ましくは1個以下、特に好ましくは0.8個以下である多結晶シリコンロッドを得ることができる。多結晶シリコンロッド表面10万cm2当たりの上記外観不良の個数として好適な範囲としては、2~0個、好ましくは、1~0個、特に好ましくは、0.8~0個である。
得られた多結晶シリコンロッドは、多結晶シリコンロッド製造用反応炉から取り出された後、外観不良が生じた箇所を除いて所望の大きさに破砕され、表面を清浄化した後、種々の目的に使用される。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。
<粗面部の十点平均粗さRz及び算術平均粗さRaの測定>
ガス供給ノズルの表面を塩化メチレンで脱脂した後、レプリセットGF-1(Strusers社製)を粗面化部の上端・中間・下端に塗布、静置し表面に約5cm四方のレプリカ(解像度0.1μm)を硬化させた。硬化後、ガス供給ノズルの表面よりレプリカを剥離し、それぞれについて原子間力顕微鏡(AFM:Bruker社製 ASX/Dimension ICON)にて90μm視野において、90μmの線を引いたときの凹凸を解析し、基準面に対して凸部の絶対値大きい順に5点、凸部の絶対値大きい順に5点の平均値によってRzを算出した。上端・中間・下端の各ポイントにおいて硬化させたレプリカについて90μmの線を視野に対して縦方向に3本、横方向に3本ずつ計6本引き、得られたRzを平均して採用した。そして、上端・中間・下端で求めたRzの平均値をガス供給ノズルの十点平均粗さRzとした。また、算術平均粗さRaは、同視野における測定表面の凸凹の平均値を基準線として、その区間の基準線からの距離の平均値として算出した。そして、上端・中間・下端で求めたRaの平均値をガス供給ノズルの算術平均粗さRaとした。
<多結晶シリコンロッド製造用反応炉の構成>
以下の実施例1~3及び比較例1~3では、図1に示す構造の多結晶シリコンロッド製造用反応炉を用意した。ベルジャの内容積を3m3とし、底板にシリコン芯線を逆U字型となるように5対(すなわちシリコン芯線としては10本)設置した。またベルジャ内に図2の構造の内径12.7mm、底板から先端噴射口までの高さ370mmのガス供給ノズルを6本、底板の上面のほぼ全域に均等な間隔で分散配置した。
<多結晶シリコンロッドの製造>
多結晶シリコンの製造は、シリコン芯線に通電することによりこれを約1000℃に加熱し、シリコン析出用原料ガスとしてはトリクロロシランと水素の混合ガスを用い、これを最大時に700Nm3/hでガス供給ノズルより供給して、シーメンス法によりシリコン析出反応を100時間実施した。その結果、太さが約120mmの多結晶シリコンロッド10本を得た。
比較例1
粗面部を有しないカーボンで構成されたガス供給ノズルを用いて多結晶シリコンロッドの製造を行った。
析出終了後、約1050℃で1時間水素雰囲気での加熱を行い、析出終盤に析出したシリコンの歪みを除去するアニール工程を行った。析出序盤から高温となるガス供給ノズルにシリコンの析出が確認された。得られた多結晶シリコンロッドの表面に外観不良は発生していなかった。
上記多結晶シリコンロッドの重金属濃度は、多結晶シリコンロッドから芯線を含む様にドリルで円筒棒状サンプルを取得し、芯線部・外皮部・中間部にカットし、それぞれを溶解させICP-MSで測定した。測定結果のうちFe濃度は体積平均で27.2pptw、また特に外皮部で47.5pptwであった。
実施例1
外周表面全体を粒度が#180である研磨砂にてサンドブラスト加工を施した石英で構成されたガス供給ノズルを用いた。サンドブラスト加工により形成された粗面部の十点平均粗さRzは4.1μm、算術平均粗さRaは2.5μmであった。
析出終了後、約1050℃で1時間水素雰囲気での加熱を行い、析出終盤に析出したシリコンの歪みを除去するアニール工程を行った。析出序盤ではガス供給ノズルへのシリコンの析出は確認できず、中盤からシリコンの析出が確認された。得られた多結晶シリコンロッドの表面に外観不良は発生していなかった。多結晶シリコン中に含まれる重金属濃度を測定した結果、Fe濃度は体積平均で10.2pptw、また特に外皮部で12.9pptwであった。比較例1と比べてFe濃度の体積平均が約40%に低減し、特に析出終盤の外側部分に含まれるFe濃度は約25%に低減していた。
このガス供給ノズルを超純水500mlで洗浄したところ、表面に付着したシリコンは除去された。また洗浄後の洗浄水のICP-AES測定を実施した結果、Fe、Niが検出された。すなわち除去したシリコンにFe、Niが含まれることが確認できた。
実施例2
実施例1を行い、超純水で洗浄を行ったガス供給ノズルをベルジャに設置し、多結晶シリコンロッドの製造を行った。
析出終了後、約1050℃で1時間水素雰囲気での加熱を行い、析出終盤に析出したシリコンの歪みを除去するアニール工程を行った。また実施例1と同様に析出序盤ではガス供給ノズルへのシリコンの析出は確認できず、中盤からシリコンの析出が確認された。
得られた多結晶シリコンロッドの表面に外観不良は発生していなかった。また、多結晶シリコン中に含まれる重金属濃度を測定した結果、Fe濃度は体積平均で9.4pptw、また特に外皮部で11.7pptwであり、洗浄工程を挟むことで繰り返し使用しても製造する多結晶シリコンの品質を維持できることが確認できた。
実施例3
外周表面全体にサンドブラスト加工を施した石英で構成されたガス供給ノズルを用いた。サンドブラスト加工により形成された粗面部の十点平均粗さRzは1.1μm、算術平均粗さRaは0.88μmであった。
析出終了後、約1050℃で1時間水素雰囲気での加熱を行い、析出終盤に析出したシリコンの歪みを除去するアニール工程を行った。また実施例1と同様に析出序盤ではガス供給ノズルへのシリコンの析出は確認できず、中盤からシリコンの析出が確認された。得られた多結晶シリコンロッドの表面に外観不良は発生していなかった。
ガス供給ノズルを反応炉から取り出したところ、粗面部の表面にシリコンの付着が確認されたが、サンドブラスト加工により強く表面を粗面化させた実施例1および2で使用したガス供給ノズルと対比すると付着量は半分以下であった。多結晶シリコン中に含まれる重金属濃度を測定した結果、Fe濃度は体積平均で13.9pptw、また特に外皮部で10.5pptwであった。
比較例2
サンドブラスト加工を施さない石英で構成されたガス供給ノズルを用いた。表面の十点平均粗さRzは0.02μm、算術平均粗さRaは0.01μmであった。
析出終了後、約1050℃で1時間水素雰囲気での加熱を行い、析出終盤に析出したシリコンの歪みを除去するアニール工程を行った。また実施例1と同様に析出中盤ではガス供給ノズルへのシリコンの析出は確認できず、終盤でシリコンの析出が確認された。得られた多結晶シリコンロッドの表面に突起状の外観異常が確認された。ガス供給ノズルを反応炉から取り出したところ、表面にシリコンの付着がわずかに確認された。すなわち析出中に確認されていたシリコンの大半が飛散し、上記外観異常を形成したと考えられる。多結晶シリコン中に含まれる重金属濃度を測定した結果、Fe濃度は体積平均で8.5pptw、また特に外皮部で6.6pptwであった。一方で上記外観異常部に含まれる重金属濃度を測定した結果、Fe濃度が2179pptwであった。
また、上記多結晶シリコンロッドの表面の外観異常の個数後述する測定方法で確認したところ、約10万cm2の範囲に3個であった。
比較例3
比較例1を行った後のガス供給ノズル表面をワイプ拭きした後ベルジャに設置し、多結晶シリコンロッドの製造を行った。
析出終了後、約1050℃で1時間水素雰囲気での加熱を行い、析出終盤に析出したシリコンの歪みを除去するアニール工程を行った。析出序盤から高温となるガス供給ノズルにシリコンの析出が確認された。得られた多結晶シリコンロッドの表面に外観不良は発生していなかった。また、多結晶シリコン中に含まれる重金属濃度を測定した結果、Fe濃度は体積平均で29.2pptw、また特に外皮部で48.5pptwであった。
<フィルタ付き多結晶シリコンロッド製造用反応炉の構成>
以下の比較例4、実施例4、5では、図1に示す構造の多結晶シリコンロッド製造用反応炉において、ガス供給ノズルと底板の接続部の間に、材質がSUS316L製である不純物除去用のフィルタを介在させた。また、フィルタの濾過精度は、粒子径が0.3μm以上である粒子のうち90%以上の粒子を除去できる濾過精度であった。さらに、前記シリコン芯線をベルジャ内に設置する雰囲気はISO14644-1により定義されるClass1~3の清浄度に調整された雰囲気であることを確認した。1m3中に0.1μm以上の粒子が1000個以下の清浄度を維持した雰囲気であった。
<多結晶シリコンロッド分析試料の調製>
比較例4、実施例4、5で製造した多結晶シリコンロッドのそれぞれについて、金属不純物による汚染状況を確認した。当該汚染状況を確認するための測定は、以下に説明する通りに実施した。前記多結晶シリコンロッドから、当該多結晶シリコンロッドの長手方向の中間の位置付近で、当該長手方向に直交する水平方向に直径19mm、長さ120mmの円柱体をくり抜いた。
先ず、多結晶シリコンロッド5の側面より、シリコン芯線4に対して直交するように、且つ、シリコン芯線を含むように上記シリコンロッドをくり抜き、円筒状のコアリングロッド7を得る。かかるくり抜きは、コアドリルを用いて行うことができる。こうして得られた多結晶シリコンの円柱体は、析出開始直後から析出終了直前までのすべての時間帯の析出物が含まれている。まず、当該円柱体の表面の結晶形態を観察して、芯線と析出層の界面を確認する。そして、芯線中心と円柱体端の最短距離の直線上において、端側4mmを外皮部、直線を等分する点から内外2mmの区間を中間部、芯線中心から端向き4mmの区間を芯線部として、それぞれの区間を抜き取るようにして3か所の測定用サンプルを得た。コアリングサンプルの切断にはクリスタルカッター(ODソー(商品名:マルトー社製))を使用した。
<多結晶シリコンロッド中の重金属濃度>
上記のようにして切り出された試料は、フッ化水素酸と硝酸の混酸溶液にてエッチングを行い、切断時の金属汚染を取除き、質量測定を行った後、PTFE製気相分解容器内にセットし、ホットプレート上で容器の加熱を行い、フッ硝酸蒸気での気相分解を行った。容器を冷却後、硫酸1mlで残渣分を回収して、ICP-MS(Agilent8800)にて、各金属濃度の定量を行った。得られた実測値から、下式にてバルク金属濃度を算出した。
Figure 0007395793000002
Q:シリコン各部位のバルク金属濃度[pptw]
C:実測値[ng/L]
Cb:操作ブランク値[ng/L]
W:前処理後のシリコン重量[g]
L:回収に使用した硫酸量[L]。
前記により得られた各部位のバルク重金属濃度実測値を用い体積平均値を算出した。
Figure 0007395793000003
Ave:シリコンのバルク重金属濃度体積平均値[pptw]
sin:シリコン芯線部のバルク金属濃度[pptw]
mid:シリコン中間部のバルク金属濃度[pptw]
as:シリコン外皮部のバルク金属濃度[pptw]
<多結晶シリコンロッド中の外観異常の測定方法>
ベルジャから取り出された該当製造バッチの多結晶シリコンロッド全数について外観異常の個数をカウントし、多結晶シリコンロッド1本あたりつき多結晶シリコンロッドの長さ方向中心部および上端、下端と中心部の真ん中の位置の計3点の直径を測定した平均値および多結晶シリコンロッド長さを用いて算出した算出表面積から単位表面積あたりの外観異常の個数を測定した。
比較例4
比較例2で使用した後、超純水にて洗浄を行ったサンドブラスト加工を施さない石英で構成されたガス供給ノズルを設置したフィルタ付き反応炉を用い、前記製造条件にて多結晶シリコンロッドの製造を3バッチ行った。ガス供給ノズルは、各製造バッチ毎に超純水で洗浄を行い繰り返し用いた。各製造バッチにおける多結晶シリコンロッド中に含まれる重金属濃度を測定した結果を表1に記す。製造3バッチの平均として、Fe濃度は体積平均で3.5pptw、また特に外皮部で0.4pptwであった。比較例1と比べてFe濃度の体積平均が約13%に低減し、特に析出終盤の外側部分に含まれるFe濃度は約1%に低減していた。一方でサンドブラストを施していないため、外観異常が多数発生し、10万cm2当たりの外観異常は3個であった。
Figure 0007395793000004
実施例4
実施例3で使用した後に超純水にて洗浄を行ったサンドブラストを施した石英で構成されたガス供給ノズルを設置したフィルタ付き反応炉を用い、前記製造条件にて多結晶シリコンロッドの製造を3バッチ行った。ガス供給ノズルを各製造バッチ毎に超純水で洗浄を行い繰り返し用いた。シリコン析出用原料ガス中に含まれる不純物を除去するためのフィルタは各製造バッチ毎に全数洗浄を実施し繰り返し使用しており、芯線をベルジャ内へ収容する収容作業スペース内の清浄度の基準として1m3中の0.1μm以上の粒子数が1000個以下であることを確認した後にシリコン芯線洗浄工程用クリーンルーム内で格納・封入した搬送容器と作業者が収容作業スペースへ入室し、その後作業者や搬送物が入るときに流入した異物の除去を確認する工程として入室後1m3中の0.1μm以上の粒子数が再度1000個以下になったことを確認した後に搬送容器の蓋を開封し、ベルジャ内へ芯線の収容作業を開始した。各製造バッチにおける多結晶シリコンロッド中に含まれる重金属濃度を測定した結果を表に記す。製造3バッチの平均として、Fe濃度は体積平均で7.6pptw、また特に外皮部で1.1pptwであった。比較例1と比べてFe濃度の体積平均が約28%に低減し、特に析出終盤の外側部分に含まれるFe濃度は約2%に低減していた。一方でまた、多結晶シリコンロッド表面の外観異常が少数であるが発生し、10万cm2当たりの外観異常は0.7個であった。
Figure 0007395793000005
実施例5
実施例2で使用した後に超純水にて洗浄を行ったサンドブラストを施した石英で構成されたガス供給ノズルを設置したフィルタ付き反応炉を用い、前記製造条件にて多結晶シリコンロッドの製造を3バッチ行った。ガス供給ノズルを各製造バッチ毎に超純水で洗浄を行い繰り返し用いた。シリコン析出用原料ガス中に含まれる不純物を除去するためのフィルタは各製造バッチ毎に全数洗浄を実施し繰り返し使用しており、芯線をベルジャ内へ収容する収容作業スペース内の清浄度の基準として1m3中の0.1μm以上の粒子数が1000個以下であることを確認した後にシリコン芯線洗浄工程用クリーンルーム内で格納・封入した搬送容器と作業者が収容作業スペースへ入室し、その後作業者や搬送物が入るときに流入した異物の除去を確認する工程として入室後1m3中の0.1μm以上の粒子数が再度1000個以下になったことを確認した後に搬送容器の蓋を開封し、ベルジャ内へ芯線の収容作業を開始した。各製造バッチにおける多結晶シリコンロッド中に含まれる重金属濃度を測定した結果を表に記す。製造3バッチの平均として、Fe濃度は体積平均で10.3pptw、また特に外皮部で3.5pptwであった。比較例1と比べてFe濃度の体積平均が約38%に低減し、特に析出終盤の外側部分に含まれるFe濃度は約7%に低減していた。また、多結晶シリコンロッド表面の外観異常は1つも確認されなかった。
Figure 0007395793000006
1;反応炉
2;ベルジャ
3;底板
4;シリコン芯線
5;電極対
6;ガス供給ノズル
7:多結晶シリコン
11:先端噴射口
12:ガス供給部
13:接合部
14:粗面化部
15:底板接合部
16:ガス供給部
17:底板ガス供給口
18:固定部材

Claims (11)

  1. ベルジャと底板とにより内部が密閉されてなり、
    前記底板には、シリコン芯線を保持するとともに該シリコン芯線に通電するための複数の電極対が設けられてなり、
    さらに前記底板には、前記ベルジャの内部空間にシリコン析出用原料ガスを供給するための、複数のガス供給ノズルが夫々に先端噴射口を上向きに設けられた構造の多結晶シリコンの製造用反応炉であって、
    前記ガス供給ノズルの前記ベルジャの内部空間との接触表面の少なくとも一部が、十点平均粗さRzが1.0~5.0μmであり、算術平均表面粗さRaが0.3~3.0μmである粗面化部を含む石英で構成されていることを特徴とする多結晶シリコンロッド製造用反応炉。
  2. 前記ガス供給ノズルにおける前記接触表面の表面積の50%以上が、前記粗面化部を有する石英で構成されている請求項1記載の多結晶シリコンロッド製造用反応炉。
  3. 前記ガス供給ノズルにシリコン析出用原料ガスを供給するための供給配管を有し、
    該ガス供給ノズル又は該供給配管の少なくともいずれかにシリコン析出用原料ガスに混入した不純物を除去する除去手段を有する請求項1記載の多結晶シリコンロッド製造用反応炉。
  4. ベルジャと底板とにより内部が密閉されてなり、前記底板には、シリコン芯線を保持するとともに該シリコン芯線に通電するための複数の電極対が設けられてなり、さらに前記底板には、前記ベルジャの内部空間にシリコン析出用原料ガスを供給するための、複数のガス供給ノズルが夫々に先端噴射口を上向きに設けられた構造の多結晶シリコンの製造用反応炉に用いられるガス供給ノズルであって、
    前記ガス供給ノズルの前記ベルジャの内部空間との接触表面の少なくとも一部が、十点平均粗さRzが1.0~5.0μmであり、算術平均表面粗さRaが0.3~3.0μmである粗面化部を含む石英で構成されていることを特徴とするガス供給ノズル。
  5. 前記ガス供給ノズルにおける前記接触表面の表面積の50%以上が、前記粗面化部を有する石英で構成されている請求項記載のガス供給ノズル。
  6. ベルジャ内にシリコン芯線を収容し、前記シリコン芯線に通電しながら、前記シリコン芯線にシリコン析出用原料ガスを噴出させることにより、前記シリコン芯線に多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコンロッドの製造方法において、
    請求項1~のいずれか一項に記載の多結晶シリコンロッド製造用反応炉を用いて製造することを特徴とする多結晶シリコンロッドの製造方法。
  7. 多結晶シリコンを析出させた後、前記多結晶シリコンロッド製造用反応炉内のガス供給ノズルを取り外し、
    次いで取り外したガス供給ノズルの前記ベルジャの内部空間との接触表面を洗浄する工程を含む、
    請求項記載の多結晶シリコンロッドの製造方法。
  8. シリコン析出用原料ガスに混入した不純物を除去する除去手段により不純物を除去したシリコン析出用原料ガスを前記シリコン芯線に噴出させる請求項記載の多結晶シリコンロッドの製造方法。
  9. 多結晶シリコンロッドの製造をISO14644-1により定義されるClass1~3の清浄度に調整された雰囲気下で行う請求項記載の多結晶シリコンロッドの製造方法。
  10. 表面から4mmまでの深さの外皮部におけるFe濃度が10.0pptw以下、またはNi濃度が2.0pptw以下であり、多結晶シリコンロッド表面10万cm2当たりの、大きさ0.5~10cm、高さが0.5~5.0cmである異物が2個以下である多結晶シリコンロッド。
  11. 芯線部と中間部と外皮部の実測値から算出したFe濃度の体積平均値が10pptw以下、またはNi濃度が2.0pptw以下である請求項10記載の多結晶シリコンロッド。

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