JP2005129724A - 炭化珪素のエッチング方法、研磨方法及び加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 三フッ化塩素ガスを炭化珪素表面に、好ましくは、該炭化珪素表面を加熱して該表面の温度を300〜700℃とし且つ三フッ化塩素ガスの濃度を1〜100体積%として、接触させる。
【選択図】 なし
Description
このような用途に用いられる炭化珪素は、高純度及び高品質であることが要求され、そのため、炭化珪素を製造する場合には、化学気相堆積法(Cemical Vapor Deposition 法) を用いてプロパンガスとシランガスなどの化学反応により薄膜を形成する方法が採用されている。また、低温で炭化珪素薄膜を形成できる方法として、珪素−炭素結合を分子内に有するメチルシランを用いる方法も利用されている。
炭化珪素薄膜を炭化珪素基板上に形成する場合など、炭化珪素基板の表面が鏡面に研磨されていなければならない場合がある。炭化珪素は極めて硬い素材であるため、そのような場合には、炭化珪素基板の表面を長時間を掛けて研磨する方法が採用されていた。
そのため、従来は、炭化珪素が反応容器の内壁に堆積した場合には、次のような方法が採用されていた。
(1)鋭利な工具を用いて削り取る。
(2)一定の反応回数まで使用したら、反応容器を廃棄する。
また、無機物質を効率良くエッチングするガスとして、三フッ化塩素ガスの他に、三フッ化窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、四フッ化炭素ガスが知られているが、これらのガスは、主としてプラズマを併用して化学反応を励起しなければエッチング速度が実用的な値にならない。
特許文献2には、エピタキシャルシリコンなどに関しては、三フッ化窒素ガス、三フッ化塩素ガス、六フッ化硫黄ガス、四フッ化炭素ガスでも熱励起だけでエッチングできることが記載されているが、炭化珪素のエッチングについては言及されていない。後述する比較例から明らかなように、三フッ化窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、四フッ化炭素ガスを用いた場合、炭化珪素表面を実用的な速度でエッチングすることができない。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、三フッ化塩素ガスを炭化珪素表面に接触させることを特徴とする炭化珪素表面のエッチング方法を提供するものである。
また、本発明は、雰囲気温度が400〜700℃下で、濃度50〜100体積%の三フッ化塩素ガスを炭化珪素表面に接触させることにより、炭化珪素表面を平滑化することを特徴とする炭化珪素表面の研磨方法を提供するものである。
また、本発明は、三フッ化塩素ガスを炭化珪素表面に接触させて、炭化珪素を微細加工することを特徴とする炭化珪素の加工方法を提供するものである。
また、本発明は、化学反応装置の反応容器の内壁に付着した炭化珪素を三フッ化塩素ガスにより除去することを特徴とする炭化珪素の除去方法を提供するものである。
ガス供給部1は、三フッ化塩素(ClF3 )ガス供給部、希釈用ガス供給部及びCVD薄膜形成原料ガス供給部からなる。CVD薄膜形成原料ガス(CVD Source)としては、炭化珪素膜形成が可能なメチルシランガスや、プロパンガスなどの炭化水素ガスとシランガスなどが用いられる。また、希釈用ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガスなどが用いられる。尚、CVD薄膜形成原料ガスの殆どは可燃性ガスであるが、三フッ化塩素ガスは支燃性ガスであり、装置配管内で混合すると素早く反応し、燃焼に類似した状況をもたらすことがある。そのため、三フッ化塩素ガスとCVD薄膜形成原料ガスの接触を絶つための安全策、例えば、三フッ化塩素ガスと可燃性ガスを切り換える前に、窒素ガスを所定流量以上且つ所定時間以上流して装置配管内を完全に置換するまで次工程に進めないようにハードウエア上のタイマーとソフトウエア上の条件判断を行うインターロックを設けるなどの安全策を講じることが好ましい。
反応域部2は、例えば、石英ガラス容器、ステンレス容器などの反応容器からなり、その内部にシリコンウエハ、炭化珪素ウエハなどの炭化珪素薄膜を形成させたい基板を挿入しておく。反応域部2は、反応容器の上下から赤外線ランプ(図示せず)により加熱され、該ランプからの赤外線が石英ガラスを通り抜けて基板を加熱・昇温し、基板の表面で化学反応を起こさせることができるように構成されている。尚、反応容器の材質としては、石英ガラス、ステンレスなどが代表的であるが、三フッ化塩素と顕著に反応しない物質であれば適用可能である。
排気部3は、使用済みガスを反応容器から排出するものである。
(1)エッチング
エッチング速度は、反応容器内の炭化珪素薄膜形成基板の温度が高くなるほど、また三フッ化塩素ガスの濃度が高くなるほど、大きくなる。
基板温度が高すぎると、三フッ化塩素ガスが高温となり、三フッ化塩素ガスが気相分解してフッ素を形成するので、炭化珪素のエッチング速度が増大しにくくなるだけでなく、反応容器のエッチングが顕著となるので、基板温度は、好ましくは300〜700℃、より好ましくは300〜600℃である。
また、三フッ化塩素ガスの濃度は、好ましくは1〜100体積%、より好ましくは10〜100体積%である。ガス流量は、エッチングされる炭化珪素板の面積と装置の断面積及び容積により適宜決定すれば良い。
圧力は、通常、常圧の場合がエッチング速度が大きいので好ましいが、100〜100000パスカル程度の減圧下でも良い。
内壁に炭化珪素堆積物が付着した反応容器内の温度は、好ましくは300〜700℃、より好ましくは300〜600℃とする。
また、三フッ化塩素ガスの濃度は、好ましくは1〜100体積%、より好ましくは10〜100体積%である。ガス流量は、付着している炭化珪素の面積と装置の断面積及び容積により適宜決定すれば良い。
圧力は、通常、常圧の場合が好ましいが、100〜100000パスカル程度の減圧下でも良い。
三フッ化塩素ガスの濃度が高く、炭化珪素薄膜形成基板の温度が高いほど、面方位、粒界などに対するエッチング速度の選択性が小さくなるので、極めて効率的に炭化珪素薄膜形成基板の表面平滑化を行うことができる。
基板温度は、400〜700℃、好ましくは450〜700℃であり、三フッ化塩素ガスの濃度は、50〜100体積%、好ましくは60〜100体積%である。ガス流量は、平滑化される炭化珪素板の面積と装置の断面積及び容積により適宜決定すれば良い。
圧力は、エッチングの場合と同様、常圧の場合が好ましいが、100〜100000パスカル程度の減圧下でも良い。
尚、炭化珪素薄膜形成基板の表面の機械研削の後に鏡面研磨を行う場合に、該鏡面研磨の方法として、この本発明の表面平滑化(研磨)方法を用いることにより、機械研削跡(加工ダメージ層)を短時間で効率的に取り除くことができる。
本発明でいう微細加工の概念には、炭化珪素表面を局所的に加熱しながら三フッ化塩素ガスを接触させて、該局所的に加熱した部分を除去することにより、炭化珪素表面に溝などの微細な構造を形成することが含まれる。
局所的に加熱された炭化珪素表面の温度は、好ましくは400〜700℃、より好ましくは450〜700℃であり、三フッ化塩素ガスの濃度は、好ましくは1〜100体積%、より好ましくは10〜100体積%である。ガス流量は、加工される炭化珪素板の面積と装置の断面積及び容積により適宜決定すれば良い。
圧力は、エッチングの場合と同様、常圧の場合が好ましいが、100〜100000パスカル程度の減圧下でも良い。
図1に示す反応装置の反応容器内にCVD法により作製された高純度ベータ炭化珪素基板(幅3cm、長さ5cm、厚さ1mm)を挿入し、赤外線ランプで昇温・加熱した状態で、ガス供給部1から窒素ガスにより希釈された三フッ化塩素ガスを1気圧にてガス流量0.2リットル毎分で供給した。その時のエッチング速度は図2に示す通りであった。
図2から明らかなように、基板温度が高くなるほど、また、三フッ化塩素ガス濃度が高くなるほど、エッチング速度は大きくなる。尚、基板温度が常温〜250℃においては、三フッ化塩素ガス濃度を100体積%として30分間保持しても、炭化珪素基板の表面を殆どエッチングしなかった。
図1に示す反応装置を用い、CVD法で炭化珪素薄膜を成長する際に反応容器の内壁に形成された炭化珪素堆積物を除去した。
最初に、反応容器の内壁に炭化珪素膜を堆積させるため、炭化珪素薄膜のCVD成長を行った。シリコン基板を反応容器の中に入れて、1気圧で水素ガスを流しながら赤外線ランプで1100℃に昇温して10分間保ち、シリコン基板の表面の酸化膜と有機汚れを除去した。次いで、シリコン基板の温度を700℃に調整し、水素ガス中にメチルシランガスを10体積%混合して、30分間保持した。その後、メチルシランガスの供給を停止し、水素ガスを供給したままで赤外線ランプの通電を切り、常温まで冷却した。シリコン基板を取り出したところ、約2μmの厚さの炭化珪素薄膜が形成されていた。反応容器を観察したところ、シリコン基板が置かれていた領域の上壁の内壁面に黒褐色の堆積物が付着し、その下流側に褐色の堆積物が付着していた。
褐色の付着物はシリコンと思われたため、常温において三フッ化塩素ガスを窒素中10体積%にて5分間流したところ、褐色の付着物は除去され、黒褐色の堆積物のみが残った。
次いで、従来から用いられているクリーニングガスである塩化水素ガス(100体積%)を用いて1100℃にて5分間保持したが、この黒褐色の堆積物は除去されなかった。 そこで、次に、反応容器を400℃に保持しながら窒素中に10体積%の濃度で三フッ化塩素ガスをガス流量0.2リットル毎分で供給したところ、5分以内で上記黒褐色の堆積物が除去された。
図3(a)に示すように光学顕微鏡観察(700倍)において表面に直線状に機械研削の跡が観察される高純度ベータ炭化珪素基板を、図1に示す反応装置の反応容器内に置き、赤外線ランプにより400℃に加熱した状態で、三フッ化塩素ガスを100体積%にてガス流量0.2リットル毎分で15分間供給した。その後、該炭化珪素基板の表面を光学顕微鏡観察(700倍)した。その結果を図3(b)に示す。図3(b)から明らかなように、ソーマークと思われる表面の模様が削り取られ、炭化珪素基板の表面が平滑化していた。
また、炭化珪素基板の加熱温度を500℃、三フッ化塩素ガス(100体積%)の供給時間を5分間及びガス流量を0.2リットル毎分とした場合にも、上記と同様の結果が得られた。
図1に示す反応装置の反応容器内に、炭化珪素基板を置き、全体を約200℃に加熱した。そして、法線方向から赤外線を集光して1mm幅の光束として反応容器(石英ガラス)壁を通して炭化珪素基板に照射することにより、その照射箇所のみを更に加熱した。そこに、50体積%の濃度の三フッ化塩素ガスをガス流量0.2リットル毎分で流したところ、10分間で約1mm幅、深さ約50μmの穴を形成することができ、その底面には残渣は認められなかった。
三フッ化塩素ガスの代わりに、三フッ化窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、四フッ化炭素ガスを用いた以外は、実施例1と同じ条件にて炭化珪素表面のエッチングを行った。その結果、これらのガスにおいては、いずれも、高温(700℃)・高濃度(100体積%)において炭化珪素表面の外観に変化が認められたものの、エッチング速度を実測できる程度には至らず、実用的な速度でエッチングできないことが分かった。
2 反応域部
3 排気部
Claims (5)
- 三フッ化塩素ガスを炭化珪素表面に接触させることを特徴とする炭化珪素表面のエッチング方法。
- エッチングする炭化珪素表面を加熱して該表面の温度を300〜700℃とし、且つ三フッ化塩素ガスの濃度を1〜100体積%とする、請求項1記載の炭化珪素表面のエッチング方法。
- 雰囲気温度が400〜700℃下で、濃度50〜100体積%の三フッ化塩素ガスを炭化珪素表面に接触させることにより、炭化珪素表面を平滑化することを特徴とする炭化珪素表面の研磨方法。
- 三フッ化塩素ガスを炭化珪素表面に接触させて、炭化珪素を微細加工することを特徴とする炭化珪素の加工方法。
- 化学反応装置の反応容器の内壁に付着した炭化珪素を三フッ化塩素ガスにより除去することを特徴とする炭化珪素の除去方法。
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