JP7389638B2 - 中華風味油の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中華風味油の製造方法に関するものである。さらに、この製造方法によって得られる中華風味油及びこれを用いた食品に関するものである。
食用油には、風味のある食材を油脂と一緒に加熱する等して、風味を油脂に移行させた風味油が知られている。風味油は、外食チェーン等の業務用として一般的には用いられてきたが、最近では、専門店のような味を家庭でも簡単に再現できるため、家庭用としても消費者に好評を博している。なお、香味のある食材を使用した場合、風味油は特に香味油と呼ばれることもある。
中華風味油の代表例としては、唐辛子油が挙げられる。唐辛子油は中華料理に風味を付与する嗜好品として一般家庭でもよく用いられ、その独特の風味は中華料理の味覚を高めるために必要不可欠であるといわれている。一般に、唐辛子油は、赤唐辛子や一味唐辛子等と一緒に食用油脂を加熱して、食用油脂に風味や色味を移行させて製造されている。また、唐辛子油に相応しい辛味などの風味を補うために、唐辛子油に豆板醤等の中華醤を加えて用いることもよく行われている。
例えば、特許文献1には、中華合わせ調味料のソース部分において、焙煎唐辛子油5kgと、ニンニク、豆板醤、醤油、グルタミン酸ナトリウムなどからなる調味液部45kgと水50kgを混合した後、レトルト殺菌して、当該ソース部分を製造したことが記載されている。また、特許文献2には、(A)植物油と、(B)唐辛子及び/又はその抽出物と、(C)野菜類、魚介類、肉類、それらの加工食品から選ばれた少なくとも1種を含む、細片状又は粒状の具材と、(D)酸発酵乳とを含有することを特徴とする具入りラー油に、更に、トウバンジャンとコチュジャンとを含ませることも記載されている。
このように、従来技術においては、唐辛子油などの中華風味油に、豆板醤などの中華醤を混ぜ合わせて調味料とすることはよく知られている。しかし、このような調味料では、調味料の中に中華醤がそのまま残っているため、ドロドロとした有色の液体状であり、そのまま喫食するのはよいが、様々な食品に添加して用いることは難しいという問題があった。そこで、様々な食品に風味付けを行うことができるような、サラサラとした透明な外観を有し、中華醤の良好な風味を有する中華風味油が求められていた。
特開2007-151484号公報 特開2012-19780号公報
本発明の目的は、中華醤の香ばしい風味を有し、透明な外観を有しているため、様々な食品に使用することができ、当該食品の風味をエンハンスさせることのできる、中華風味油の製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために、中華風味油の製造方法を鋭意検討した結果、中華醤から風味を抽出する際に、食用油脂を用いること、そして、加熱温度を二段階に分けて抽出を行うと、所望の中華風味油が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の態様を含み得る。
〔1〕中華醤を含む食用油脂を一次加熱する工程と、前記一次加熱によって生じた残渣を除去する工程と、前記工程で残渣が除去された食用油脂を二次加熱する工程とを含む、中華醤の風味が付与された中華風味油の製造方法。
〔2〕前記一次加熱する工程において、加熱温度が100~120℃であり、また、前記二次加熱する工程において、加熱温度が130~150℃である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕前記一次加熱する工程において、加熱時間が30~180分であり、また、前記二次加熱する工程において、加熱時間が1~60分である、〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕前記中華醤として、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤、豆鼓醤、XO醤、沙茶醤、海鮮醤、辣醤、麻辣醤、コチュジャン、牡蠣油 からなる群から選ばれる1種または2種以上が用いられる、〔1〕ないし〔3〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔5〕前記食用油脂として、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、亜麻仁油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、エゴマ油、パーム油、パーム核油、牛脂、豚脂、魚油、乳脂、米油、落花生油、オリーブ油、鶏油、アーモンド油、ココナッツ油 からなる群から選ばれる1種または2種以上が用いられる、〔1〕ないし〔4〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔6〕前記中華醤に加えて、花椒、山椒、八角、桂皮、丁香、陳皮、朝天辣椒、五香粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の中華香辛料が用いられる、〔1〕ないし〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔7〕前記中華醤に加えて、胡椒、唐辛子、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、クローブ、クレソン、コリアンダー、セージ、タイム、ローレル、パセリ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、レモングラス、ガーリック、ショウガ、ネギ、オニオンからなる群から選ばれる1種または2種以上を原料とする香辛料が用いられる、〔1〕ないし〔6〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔8〕中華風味油100重量部に対して、食用油脂を45質量部以上85質量部以下、中華醤を10重量部以上50重量部以下の割合で混合した混合物を一次加熱する、〔1〕ないし〔7〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔9〕前記混合物が、中華風味油100重量部に対して、さらに中華香辛料を1重量部以上12重量部以下及び/又は香辛料を0.1重量部以上5重量部以下含む、〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕〔1〕ないし〔9〕のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された、中華風味油。
〔11〕〔10〕に記載の中華風味油を含む、食品。
〔12〕前記食品が、炒め物、焼き物、煮物、和え物、麺類、冷奴、スープ、ドレッシングであることを特徴とする、〔11〕に記載の食品。
本発明の製造方法によると、中華醤の良好な風味を有する、サラサラとした透明な外観を有する中華風味油が得られるので、様々な食品の風味付けに使用することができる。また、食品に風味付けを行うことで、当該食品の風味をエンハンスさせることができる。特に、本発明の中華風味油は麻婆豆腐や担々麺等の中華料理に関する食品と相性がよい。また、中華醤と中華香辛料の両方で風味付けすることで、調理後にも風味がより持続し、美味しさを増強できる、中華風味油を提供することができる。また、このような中華風味油は他の油脂とブレンドして、味わい深い中華風の油脂組成物(調合油)を作成することもできる。
〔中華風味油の製造方法〕
本発明の一態様である、中華醤を含む食用油脂を一次加熱する工程と、前記一次加熱によって生じた残渣を除去する工程と、前記工程で残渣が除去された食用油脂を二次加熱する工程とを含む、中華醤の風味が付与された中華風味油の製造方法について、以下、原料および工程ごとに詳しく説明する。
(中華醤)
本発明の中華風味油の原料として使用される中華醤としては、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤、豆鼓醤、XO醤、沙茶醤、海鮮醤などの一般に知られている中華醤を挙げることができる。特に、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤、豆鼓醤、XO醤、沙茶醤、海鮮醤、辣醤、麻辣醤、コチュジャン、牡蠣油からなる群から選ばれる1種または2種以上の中華醤を用いることが好ましい。
本発明における中華醤の使用量は、中華風味油100重量部に対して、10重量部以上50重量部以下であり、より好ましくは、15重量部以上45重量部以下であり、さらに好ましくは、20重量部以上40重量部以下である。このような量にすることで、中華風味油に中華醤の風味をちょうどよく含ませることができる。
(食用油脂)
本発明の中華風味油の原料との1つである食用油脂は、特に限定されるものではなく、公知のものを使用できる。食用油脂としては、例えば、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、高オレイン酸大豆油、コーン油、綿実油、紅花油、高オレイン酸紅花油、オリーブ油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、米油、落花生油、パーム油、ゴマ油、紫蘇油、エゴマ油、亜麻仁油、ぶどう油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ油、くるみ油、椿油、茶油、小麦胚芽油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、魚油、乳脂等の動物油脂、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等の合成脂、及びこれらの硬化油、分別油あるいはエステル交換油が挙げられる。上記食用油脂は、1種類で使用されてもよいし、2種類以上の組み合せで使用されてもよい。特に、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、亜麻仁油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、エゴマ油、パーム油、パーム核油、牛脂、豚脂、魚油、乳脂、米油、落花生油、オリーブ油、鶏油、アーモンド油、ココナッツ油からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。
本発明における食用油脂の使用量は、中華風味油100重量部に対して、45質量部以上85質量部以下であり、より好ましくは、50質量部以上80質量部以下であり、さらに好ましくは、55質量部以上75質量部以下であり、殊更好ましくは、60質量部以上70質量部以下である。このような量にすることで、中華風味油に中華醤の風味をちょうどよく含ませることができる。
(中華香辛料)
本発明の中華風味油の原料には、中華醤、食用油脂のほか、必要に応じて、中華香辛料を用いることもできる。この中華香辛料としては、花椒、山椒、草果、三奈、茴香、甘草、白コウ、梔枝、八角、桂皮、丁香、陳皮、砂仁、香叶、杜仲、朝天辣椒、五香粉等の一般に用いられている中華香辛料を挙げることができる。特に、花椒、山椒、八角、桂皮、丁香、陳皮、朝天辣椒、五香粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の中華香辛料を用いることが好ましい。
中華香辛料を加えるタイミングは、一次加熱工程、二次加熱工程でもよいが、最後に添加することもあり得る。なお、中華香辛料の風味を十分に食用油脂に移すという観点から、一次加熱工程で加えることが好ましい。
本発明における中華香辛料の使用量は、中華風味油100重量部に対して、1重量部以上12重量部以下であり、より好ましくは、2重量部以上10重量部以下であり、さらに好ましくは、4重量部以上8重量部以下である。このような量にすることで、中華風味油に中華香辛料の風味をちょうどよく付与することができる。
(香辛料)
本発明の中華風味油の原料には、中華醤、食用油脂のほか、必要に応じて、香辛料が使用されることもある。前記香辛料は、中華香辛料と併用してもよいし、併用しなくても良い。本発明の香辛料として、より具体的には、例えば、ハーブやスパイスなどの香辛料(但し、上記「中華香辛料」は除く)ほか、ガーリック、ネギ、オニオンなどの野菜類等を挙げることができる。これらをロースト(焙煎)したもの、燻製したもの、あるいはフライしたものも前記香辛料に含まれる。本発明の香辛料の原料としては、特に、胡椒、唐辛子、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、クローブ、クレソン、コリアンダー、セージ、タイム、ローレル、パセリ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、レモングラス、ガーリック、ショウガ、ネギ、オニオンからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。
香辛料を加えるタイミングは、一次加熱工程、二次加熱工程でもよいが、最後に添加することもあり得る。なお、香辛料の風味を十分に食用油脂に移すという観点から、一次加熱工程で加えることが好ましい。
本発明における香辛料の使用量は、中華風味油100重量部に対して、0.1重量部以上5重量部以下であり、より好ましくは、0.5重量部以上4重量部以下であり、さらに好ましくは、1重量部以上3重量部以下である。このような量にすることで、中華風味油に香辛料の風味をちょうどよく付与することができる。
(その他の原材料)
本発明の中華風味油の原料には、中華醤、食用油脂のほか、必要に応じて、中華香辛料及び/又は香辛料が使用されることもあるが、さらに、その他の原材料が適宜用いられることがある。その他の原材料としては、一般的に風味油に配合される原材料であれば特に制限されず、使用することができる。例えば、食塩、岩塩などの塩分系、砂糖、デキストリンなどの甘味料系、野菜、魚貝、畜肉エキスなどのエキス類、脱脂粉乳などの乳製品、食物繊維、乳化剤、酸化防止剤、増粘剤、ミネラル、香料、色素などを挙げることができる。そして、これらその他の原材料を1種又は2種以上組み合わせて適宜使用することができる。上記その他の原材料を加える方法として、従来公知の方法で構わない。また、その他の原材料を加える量は、本発明の効果を損なわない範囲で当業者が適宜決定することができる。
[中華醤を含む食用油脂を一次加熱する工程]
上述したような中華醤と食用油脂(必要に応じて、中華香辛料及び/又は香辛料、その他の原材料を)を購入もしくは準備し、これらを一次加熱する工程である。より詳細には、中華醤に含まれる風味を食用油脂で抽出し、その風味を食用油脂に含ませる工程である。例えば、直火釜に中華醤と食用油脂(必要に応じて、中華香辛料及び/又は香辛料、その他の原材料)を入れて火にかける。中華醤と食用油脂がよく混ざるように攪拌しながら、温度を上げて、中華醤の風味を食用油脂へ移す。中華醤の風味が食用油脂によく移行することを考慮すると、一次加熱する際の加熱温度は、100~120℃が好ましく、105~115℃がより好ましく、108~112℃がさらに好ましい。他方、一次加熱する際の加熱時間は、中華醤や食用油脂等の原料の量に依存するので、特に制限されないが、例えば、30~180分が好ましく、35~160分がより好ましく、40~140分がさらに好ましい。上述のように一次加熱することによって、中華醤の風味を食用油脂に十分移行させることができる。
[前記一次加熱によって生じた残渣を除去する工程]
上述したような一次加熱により、中華醤などの原料は加熱され、食用油脂中に焦げ付いた中華風味油の原料の残渣が残るので、このような残渣を取り除く工程である。例えば、直火釜の火を一旦止め、直火釜の中にある中華醤などの残渣を、ろ紙、布、金網や濾し器等の器具を用いてろ過して取り除く。ろ過用器具の網目の大きさは、残渣が効率よく除ければ、特に制限されないが、例えば、50~200メッシュが好ましく、70~150メッシュがより好ましく、80~120メッシュがさらに好ましい。一次加熱で用いた直火釜には、焦げ付いた残渣が付着しているので、別の容器に移し替えた方が好ましい。上述のように残渣を除去することによって、サラサラとした透明な外観を有する中華風味油を得ることができる。
[前記工程で残渣が除去された食用油脂を二次加熱する工程]
上述のようにして得られた食用油脂を、一次加熱よりも高い温度で二次加熱する工程である。より詳細には、食用油脂に移行した中華醤の風味を強化するとともに、中華醤から移った水分を除去する工程である。例えば、直火釜にろ過した食用油脂を入れて火にかける。適温になるまで加熱し、香ばしい香りを付与し、余分な水分を飛ばす。香ばしい香りが付与され、水分が十分に除去されることを考慮すると、二次加熱する際の加熱温度は、130~150℃が好ましく、135~145℃がより好ましく、138~142℃がさらに好ましい。他方、二次加熱する際の加熱時間は、中華醤の風味を有する食用油脂の量に依存するので、特に制限されないが、例えば、1~60分が好ましく、10~50分がより好ましく、15~40分がさらに好ましい。上述のように二次加熱することによって、中華醤の風味に香ばしい香りを付与し、水分を除去することができる。
[特定の用途に適した中華風味油に加工する工程]
本発明の中華風味油は、二次加熱工程後の中華風味油をそのまま流通してもよいが、任意の工程として、この中華風味油をベースとして、さらに必要なその他の原材料を加えて、特定の使用用途に適した中華風味油に加工する工程を有してもよい。その他の原材料としては、上記で説明したその他の原材料を挙げることができる。すなわち、例えば、食塩、岩塩などの塩分系、砂糖、デキストリンなどの甘味料系、野菜、魚貝、畜肉エキスなどのエキス類、脱脂粉乳などの乳製品、食物繊維、乳化剤、酸化防止剤、増粘剤、ミネラル、色素などを挙げることができる。そして、これらその他の原材料を1種又は2種以上組み合わせて適宜使用することができる。上記その他の原材料を加える方法として、従来公知の方法で構わない。また、その他の原材料を加える量は、本発明の効果を損なわない範囲で当業者が適宜決定することができる。
〔本発明に係る中華風味油〕
本発明は、さらに上述のごとき製造方法で製造された、中華風味油自体にも関する。本発明に係る「中華風味油」は、中華醤から抽出された風味成分を含む中華風味油であって、食用油脂と中華醤などの原料とを一緒に一次加熱し、一次加熱によって生じた原料の残渣を除去したものであり、さらに二次加熱によって、香ばしい香りが付与され、余分な水分が除去された、サラサラとした透明な外観を有する中華風味油である。
上述したように、本発明の中華風味油には、中華醤から抽出された風味成分が含まれているが、これらを分析して、どのような成分であるのかを具体的に明らかにすることは膨大な時間とコストを要する作業である。したがって、不可能もしくは非実際的事情が存在するといえる。
〔本発明に係る食品〕
本発明に係る食品は、上記の中華風味油を用いて製造した、それを含む食品である。
かかる食品としては、例えば、チャーハン等の炒め物、焼き魚等の焼き物、大根煮等の煮物、ほうれん草のナムル等の和え物、麺類、冷奴、スープ、ドレッシングが挙げられる。特に、炒め物、焼き物、和え物、麺類、冷奴、スープ、ドレッシングであることが好ましい。特に、本発明の中華風味油は、麻婆豆腐や担々麺と相性が良い。これらの調理は、公知の一般的な方法により行なうことができる。
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を意味する。
<原料>
本発明の実施例および比較例においては以下の原料を用いて行った。本発明の原料は、いずれも市販のもの、もしくは自分で製造したものを使用することができる。
大豆油:日清オイリオグループ株式会社製、商品名「日清大豆白絞油」
甜麺醤:ユウキ食品株式会社製、商品名「甜麺醤」
豆鼓醤:山印醸造株式会社製、商品名「豆鼓醤」
山椒:株式会社ギャバン製、商品名「赤山椒ホール」
ローストネギ:市販の白ネギを高温(200~250℃)のオーブンで20~30分間ローストして製造した。
<実施例1>
中華風味油の原料として、大豆油200kgを用意し、350kgの直火釜に室温で投入した。これに、中華醤として、甜麺醤40kg、豆鼓醤40kgを用意し、中華香辛料として、山椒20kg、香辛料として、ローストネギ5kgを用意し、その他の原材料として、食塩5kg、酸化防止剤100gを用意し、これらを前記直火釜に加えた。そして、室温から110℃までガス直火で加熱した。約70分で適温になり、一次加熱を終了した。110℃では泡がぶくぶくと出てくる。加熱後の直火釜には焦げが付着しているのが観察された。その後、この直火釜を傾け、100メッシュの布を敷いた別の容器に中華風味油を移して、上記香ばしく加熱された原材料を取り除いた。次に、200kgの直火釜に前記ろ過した中華風味油を入れて、140℃までガス直火で加熱した。約30分で適温になり、二次加熱を終了した。実施例1の配合を表1にまとめた。
<実施例2>
実施例2は、中華香辛料(山椒)を含まない中華風味油の製造に関する。
中華風味油の原料として、大豆油200kgを用意し、直火釜に室温で投入した。これに、甜麺醤40kg、豆鼓醤40kg、ローストネギ5kg、食塩5kg、酸化防止剤100gを加えて、室温から110℃までガス直火で加熱した。以下、実施例1と同様に行った。実施例2の配合を表1にまとめた。
<比較例1>
比較例1は、実施例1において、二次加熱における温度を110℃とした製造に関する。
原料として、大豆油200kgを用意し、直火釜に室温で投入した。これに、甜麺醤40kg、豆鼓醤40kg、山椒20kg、ローストネギ5kg、食塩5kg、酸化防止剤1gを加えて、室温から110℃までガス直火で加熱した。その後、この直火釜を傾け、100メッシュの布を敷いた別の容器に中華風味油を移して、上記原料の焦げた固形物である残渣を取り除いた。次に、別の直火釜に前記ろ過した中華風味油を入れて、140℃ではなく、110℃までガス直火で加熱した。約20分で適温になり、二次加熱を終了した。比較例1の配合を表2にまとめた(実施例1の配合と同じ)。
<比較例2>
比較例2は、実施例1において、一次加熱時に中華醤を加えず、二次加熱終了後に中華醤を添加した製造に関する。
原料として、大豆油200kgを用意し、直火釜に室温で投入した。これに、山椒20kg、ローストネギ5kg、食塩5kg、酸化防止剤1gを加えて、室温から110℃までガス直火で加熱し、一次加熱を終了した。その後、この直火釜を傾け、100メッシュの布を敷いた別の容器に中華風味油を移して、上記原料の焦げた固形物である残渣を取り除いた。次に、別の直火釜に前記ろ過した中華風味油を入れて、140℃までガス直火で加熱し、二次加熱を終了した。その後、甜麺醤40kg、豆鼓醤40kgを加えて、中華風味油を製造した。比較例2の配合を表2にまとめた(実施例1の配合と同じ)。
<比較例3>
比較例3は、実施例1において、一次加熱時に、中華醤と、中華香辛料及び香辛料とを分けて加熱し、二次加熱終了後にこれらブレンドする製造に関する。
原料として、大豆油100kgを2つ用意し、それぞれ直火釜に室温で投入した。1つめの釜に甜麺醤40kg、豆鼓醤40kgを加え、2つめの釜に、山椒20kg、ローストネギ5kg、食塩5kg、酸化防止剤1gを加えて、それぞれの直火釜を室温から110℃までガス直火で加熱した。その後、この直火釜を傾け、100メッシュの布を敷いた別の容器に中華風味油を移して、上記原料の焦げた固形物である残渣を取り除いた。次に、別の直火釜にろ過した中華風味油の2種類をそれぞれ入れて、140℃までガス直火で加熱し、二次加熱を終了した。その後、前者の甜麺醤、豆鼓醤を加えて製造した中華風味油と、後者の山椒、ローストネギ等を加えて製造した中華風味油を混ぜ合わせて(ブレンドして)、本発明の中華風味油を製造した。比較例3の配合を表2にまとめた。
<比較例4>
比較例4は、実施例2において、食用油脂の代わりに水を用いた製造に関する。
原料として、食用油脂の代わりに、水200kgを用意し、直火釜に室温で投入した。これに、甜麺醤40kg、豆鼓醤40kg、ローストネギ5kg、食塩5kg、酸化防止剤1gを加えて、室温からガス直火で加熱し、沸騰状態を維持した。以下、実施例2と同様に行った。比較例4の配合を表2にまとめた。
<比較例5>
比較例5は、実施例2において、二次加熱における温度を110℃とした製造に関する。
原料として、大豆油200kgを用意し、直火釜に室温で投入した。これに、甜麺醤40kg、豆鼓醤40kg、ローストネギ5kg、食塩5kg、酸化防止剤1gを加えて、室温から110℃までガス直火で加熱した。その後、この直火釜を傾け、100メッシュの布を敷いた別の容器に中華風味油を移して、上記原料の焦げた固形物である残渣を取り除いた。次に、別の直火釜に前記ろ過した中華風味油を入れて、140℃ではなく、110℃までガス直火で加熱し、二次加熱を終了した。比較例5の配合を表1にまとめた(実施例2と同じ)。
Figure 0007389638000001
Figure 0007389638000002
実施例1~2、比較例1~5の特徴をわかりやすくするため、それぞれを特徴点を表3にまとめた。なお、表中、中華醤のほか、中華香辛料を加えるものは〇、加えないものは△とした。二次加熱温度が140℃であるものを〇、110℃であるものを×とした。中華醤の加え方について、一次加熱時に加えるものは〇、二次加熱終了後に加えるものは×とした。原料の同時抽出について、中華醤と中華香辛料等を一緒に加えて抽出するものを〇、別々に抽出するものを×とした。油で抽出について、食用油脂で抽出するものを〇、水で抽出するものを×とした。
Figure 0007389638000003
〔食品についての風味の評価〕
<風味の評価方法1>
実施例1~2の中華風味油と比較例1~4の風味油(水)を、市販のたれ(政宗担々麺のたれ:和弘食品株式会社製)を3倍量のお湯で希釈したものに、2質量%となるように加えて、その風味を旨味、風味、香り、後味余韻の4項目で評価した。風味の評価は、7名のパネルで5段階の総合評価を行なった。評価結果を表4に示す。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
Figure 0007389638000004
<風味の評価方法2>
実施例2の中華風味油と比較例5の風味油を、市販のスープの素(濃厚味噌ラーメンスープ:和弘食品株式会社製)を360mlのお湯で希釈したものに、2質量%となるように加えて、その風味を味の強さ、風味の強さ、香りの強さ、こうばしさの4項目で評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の総合評価を行なった。評価結果を表5に示す。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
Figure 0007389638000005
表4、5より、実施例1~2の中華風味油は、比較例1~5の風味油に比べて、スープ(食品)のバランスを崩さず、中華醤の香ばしい香りが感じられ、スープの風味などをエンハンスする効果があった。また、スープの色も悪くさせないので、見た目にも良いスープ(食品)が得られることがわかった。
実施例2と比較例4との対比で理解できるように、水で抽出したサンプル(比較例4)は、香りがほとんど着いておらず、味(塩味、うま味などの中華醤自体の味)が残っているために、スープのバランスを崩してしまうことがわかった。一方、食用油脂で抽出したサンプル(実施例2)は、中華醤の香りが油に移行しており、スープのバランスを崩さず風味をエンハンスする効果があることがわかった。
また、実施例1と比較例1との対比で理解できるように、二次加熱を110℃までしか行わないサンプル(比較例1)は、風味の変化はあまり感じられなかった。一方、二次加熱を140℃まで行ったサンプル(実施例1)は、食品の風味のエンハンス効果が感じられた。このことは中華醤のみで実験を行った、実施例2と比較例5との対比でも同様である。140℃で二次加熱することで、余分な水分が飛んで、風味が強くなると思われる。
また、実施例1と比較例3との対比で理解できるように、中華醤と中華香辛料等とを別々に抽出したものを混ぜたサンプル(比較例3)では、香りのまとまりがないように感じられ、香りの力価も実施例1に比べて若干弱い印象があった。中華醤と中華香辛料等とを一緒に加熱することで、香りの抽出に相乗効果が見られる可能性がある。
また、実施例1と比較例2との対比で理解できるように、中華醤を二次加熱終了後に添加したサンプル(比較例2)では、花椒の香りはするものの、醤の香りが弱く、生っぽい印象があった。そして、香りの力価も実施例1に比べて弱い印象があった。中華醤を後で加えるよりも、中華醤を食用油脂と一緒に加熱することで、香りの抽出がうまくいくと思われる。
以上の結果により、中華醤に関しては、食用油脂で一次加熱して風味を抽出するとともに、二次加熱の温度を140℃程度に設定することで、食品の本来の味のバランスを崩さず、中華醤に由来する香ばしい香りが付与できるとともに、当該食品の風味のエンハンスする効果を有する中華風味油が得られることがわかった。

Claims (12)

  1. 中華醤を含む食用油脂を一次加熱する工程と、前記一次加熱によって生じた残渣を除去する工程と、前記工程で残渣が除去された食用油脂を二次加熱する工程とを含む、中華醤の風味が付与された中華風味油の製造方法。
  2. 前記一次加熱する工程において、加熱温度が100~120℃であり、また、前記二次加熱する工程において、加熱温度が130~150℃である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記一次加熱する工程において、加熱時間が30~180分であり、また、前記二次加熱する工程において、加熱時間が1~60分である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記中華醤として、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤、豆鼓醤、XO醤、沙茶醤、海鮮醤、辣醤、麻辣醤、コチュジャン、牡蠣油からなる群から選ばれる1種または2種以上が用いられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記食用油脂として、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、亜麻仁油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、エゴマ油、パーム油、パーム核油、牛脂、豚脂、魚油、乳脂、米油、落花生油、オリーブ油、鶏油、アーモンド油、ココナッツ油からなる群から選ばれる1種または2種以上が用いられる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記中華醤に加えて、花椒、山椒、八角、桂皮、丁香、陳皮、朝天辣椒、五香粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の中華香辛料が用いられる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記中華醤に加えて、胡椒、唐辛子、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、クローブ、クレソン、コリアンダー、セージ、タイム、ローレル、パセリ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、レモングラス、ガーリック、ショウガ、ネギ、オニオンからなる群から選ばれる1種または2種以上を原料とする香辛料が用いられる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 中華風味油100重量部に対して、食用油脂を45質量部以上85質量部以下、中華醤を10重量部以上50重量部以下の割合で混合した混合物を一次加熱する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記混合物が、中華風味油100重量部に対して、さらに中華香辛料を1重量部以上12重量部以下及び/又は香辛料を0.1重量部以上5重量部以下含む、請求項8に記載の製造方法。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された、中華風味油。
  11. 請求項10に記載の中華風味油を含む、食品。
  12. 前記食品が、炒め物、焼き物、煮物、和え物、麺類、冷奴、スープ、ドレッシングであることを特徴とする、請求項11に記載の食品。
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