JP7375276B2 - 重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋 - Google Patents

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本発明は、重炭酸リンゲル液を長期間にわたり保存することができ、かつ、ピンホール等が発生した場合には検知が可能な包装袋に関する。
従来から、重炭酸リンゲル液は薬物中毒の際の排泄促進やアシドーシスの是正、あるいは急性蕁麻疹の治療に広く用いられている。またこれらの輸液用の容器としては、軽量で破損の恐れがない医療用合成樹脂製容器(以下、「輸液バッグ」とも称する。)が提案され、利用されている。
一般に、炭酸水素ナトリウム水溶液などの重炭酸リンゲル液は、分解して炭酸ガスを発生することがよく知られている。この分解反応は炭酸ナトリウムの生成を伴うため、反応が進むに従って水溶液のpHは上昇する。特に、当該水溶液を医療目的で使用する場合、加熱滅菌が必須であり、この加熱滅菌時の加温のために反応が促進され、pHは著しく上昇する。
この反応は可逆反応のため、容器がガラス容器のようなガス非透過性の容器であれば、発生した炭酸ガスは再び重炭酸リンゲル液に吸収されるため、結果としてpHは安定する。一方でガラス容器はアルカリ性の内容物によりガラスフレークが発生するという問題があり、また重く、破損しやすいという問題もあるため、合成樹脂製容器の利用が広まっている。
しかし輸液バッグは一般に高いガス透過性を有するため、バッグ内に重炭酸リンゲル液を充填すると、加熱滅菌時や長期保存時に発生した炭酸ガスは薬液中に再吸収されることなく、容易に容器壁を透過して外部に放出され、その結果、分解反応がさらに進行し、内容液のpHは経時的に上昇してしまうという問題があった。
それに対し従来は、例えば炭酸水素ナトリウムを常温よりも低い温度で炭酸ガスを混入しながら溶解・調製して、加熱滅菌時に上昇しうる溶液のpHを予め強制的に低下させた後、輸液バッグに充填して加熱滅菌し、更にガスバリア性の包装袋内に収容後、真空包装することにより炭酸ガスが外部へ放出されるのを防ぐ方法などが採用されていた。
あるいはまた、特許文献1に開示されている様に、包装袋内に炭酸ガス分圧コントロール剤を封入し、該コントロール剤が炭酸ガスを放出することで包装袋内の炭酸ガス濃度を高め、pHの上昇を抑制する様にした包装体も提案されていた。
特開平11-262514号公報
しかしながら上記のような従来の方法は、溶解・調製時に炭酸ガスの混入や薬液を低温に保つための操作が必要であり、炭酸水素ナトリウム含有薬液を充填した輸液バッグを更にガスバリア性の包装体内に収容後、真空包装やガス置換をしても、長期間保存した場合、炭酸ガスが反応系外に放出されて炭酸水素ナトリウムの分解反応が進行する形となり、内容液のpHの上昇を防ぐことはできず、長期間の保存には依然、適していないという問題点があった。
また特許文献1の様な包装体でも、合成樹脂製容器にピンホールが生じていた場合、薬液の充填後に炭酸ガスの放出や酸素の流入を防ぐことができず、またピンホールが生じていること自体を検知することができないという問題点があった。
以上のように、これまではガラス容器または合成樹脂製容器のいずれを使用しても、重炭酸リンゲル液を長期間安定に保存することは困難であり、他の医薬品が一般に3年程度の有効期間を有するのに対し、重炭酸リンゲル液の有効期間は1~1.5年と非常に短く設定せざるを得なかった。
そこで本発明は、包装袋の内部空間に対し炭酸ガス雰囲気形成手段である炭酸ガス発生型脱酸素剤を装着することにより、溶解・調製時の炭酸ガス混入や薬液を低温に保つための操作並びに真空包装するための特別の装置を要することなく、加熱滅菌時に上昇したpHを低下させ、かつ、包装袋にピンホールやシール不良が起きた場合には容易に検知して取り除くことができ、保存中の重炭酸リンゲル液の輸液バッグが使用可能であることが確実な状態で長期間保存が可能な包装体が得られる重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため本発明は、重炭酸リンゲル液の輸液バッグを収納する包装袋であって、包装袋がガスバリア性包装袋であり、酸素インジケーターが設けられた炭酸ガス発生型脱酸素剤が内部に装着されていることを特徴とする重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋を提供する。
本発明によれば、ガスバリア性の包装袋内に封入された炭酸ガス発生型脱酸素剤の作用で、輸液バッグとガスバリア性包装袋の間に存在する空気中の酸素が、次いで当該容器内に存在する空気中の酸素が炭酸ガスに急速に置換される。これにより、輸液バッグの周囲に存在する炭酸ガスが、輸液バッグの容器壁を通過して薬液中に溶け込むため、加熱滅菌時に上昇したpHを低下させることができる。また、長期保存時において、炭酸水素ナトリウムの分解により炭酸ガスが生成しても、輸液バッグ壁を透過して当該バッグから出て行く炭酸ガスと、当該バッグと当該包装体の間の空間から輸液バッグ壁を透過して再び薬液中に吸収される炭酸ガスとが速やかに平衡状態となる。その結果、炭酸水素ナトリウムの分解反応が抑制され、pHの変動が防止でき、長期間の保存が可能となる。
また、酸素インジケーターを使用することで、包装袋にピンホールやシール不良が起きた場合には酸素インジケーターが変色するなどして容易に検知して、不良となった輸液バッグを取り除くことができ、保存中の重炭酸リンゲル液の輸液バッグが使用可能であることが確実な状態として、安定して長期間保存が可能となっている。酸素インジケーターは、炭酸ガス発生型脱酸素剤の包装材表面に印刷等により設けることができるほか、別体として炭酸ガス発生型脱酸素剤の包装材表面に貼着する様にしても良い。
炭酸ガス発生型の脱酸素剤は、脱酸素作用と炭酸ガス発生作用を併有するものであればいずれのものでもよいが、包装袋の内部空間の酸素を速やかに除去し、かつ炭酸ガス発生量が多いものが好ましい。
また本発明の一態様として、ガスバリア性包装袋が、基材上に油性インキ層とバリア層、シーラント層が順次積層された積層体のシーラント層同士を対向させて貼り合わせて形成され、前記油性インキ層をバリア層が覆っていて良い。油性インキ層をバリア層が覆っていることで、油性インキにより包装袋に所定の情報を印刷により設けた場合でも均質なバリア性が得られる。
また本発明の一態様として、酸素インジケーターを、ポリビニルアセタール樹脂および酸化還元色素を含み、炭酸ガス発生型脱酸素剤表面に印刷されて設けられたものとして良い。ここで、酸素インジケーターは炭酸ガス発生型脱酸素剤自体の表面に直接印刷されていても良く、また炭酸ガス発生型脱酸素剤が包装材に収納されている場合はその包装材の表面に印刷されているのであっても良い。
また本発明の一態様として、炭酸ガス発生型脱酸素剤が、包装袋内の重炭酸リンゲル液の輸液バッグと重ならない位置に配置されていて良い。重ならない位置に配置されることで、炭酸ガス発生型脱酸素剤の表面に印刷された酸素インジケーターを視認するのが容易である。
本発明によれば、重炭酸リンゲル液を通常の方法により常温で調製し充填・密封した医療用合成樹脂製容器(輸液バッグ)周囲の環境を、炭酸ガス発生型脱酸素剤を配置することにより、炭酸ガス雰囲気を形成することができ、この炭酸ガス雰囲気の形成により、第1に、従来法のような常温よりも低い温度で炭酸ガスを吹き込みながら溶液を溶解・調製する工程を大幅に簡易化することができ、第2に、従来法のような真空包装プロセスに要するような特殊な装置が不要なため経済的であり、第3に、重炭酸塩化合物含有薬液の加熱滅菌時に上昇したpHを急速に低下させると共に長期保存時におけるpHの変動を防止することができ、第4に、酸素インジケーターが酸素の侵入を検知することができることで、従来の包装袋では不可能であった長期間にわたる保存に成功することができる。
本発明の重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋の一形態の模式図である。 本発明の重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋の別形態の模式図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋の一形態の模式図である。ここでは、重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋(以下、単に「包装袋」とも記す。)1に、重炭酸リンゲル液の輸液バッグ5を収納して密封した態様を示している。
包装袋1を構成する樹脂フィルムは、ガスバリア性を有するものであれば特に限定されず、通常包装材に使用されているものを単層、または多層の構成として使用できる。包装袋1は例えば、基材上に油性インキ層、ガスバリア層、シーラント層が順次積層された積層体のシーラント層同士を対向させ、周縁のシール部4で貼り合わせて袋状としたものである。基材としては、特に限定するものではないが、ガス難透過性のポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデンなどが例示でき、ガスバリア層を設ける場合はガス透過性のポリエチレン、ポリプロピレンなどでも良い。
ガスバリア層としては、透明で包装袋1の外側から内容物を視認できるものが好ましく、無機酸化物の蒸着膜、上述のガス難透過性樹脂層などが例示できる。シーラント層はヒートシール性のある樹脂が好ましく、特に限定するものではないが、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、無延伸のポリプロピレンなどが例示できる。
脱酸素剤2としては、例えば主成分として、アスコルビン酸またはエリソルビン酸およ
びそれらの塩などの還元性の多価アルコール類;ヒドロキノンまたはカテコールなどのポリフェノール類;鉄粉または亜ジチオン酸塩、亜硫酸塩、第一鉄塩などの無機塩類を含み、任意の触媒を含むものが好ましく用いられる。脱酸素剤、例えば、亜ジチオン酸塩は、水の存在下で酸素を吸収する一方、重炭酸塩または炭酸塩と反応して炭酸ガスを発生する。
脱酸素剤2の具体例としては、市販のものとして、鮮度保持剤(商品名)Cタイプ(凸版印刷(株)製)、エージレス(登録商標)GE(三菱瓦斯化学(株)製)、モデュラン(登録商標)TG(日本化薬フードテクノ(株)製)などが挙げられ、エージレスGEを用いた場合、当該脱酸素剤の量は、例えば当該空間内の酸素量100mlあたり20g以上、好ましくは30g以上である。
酸素インジケーター3としては、酸化還元色素、還元剤、親水基と疎水基を合わせもつポリビニルアセタール樹脂からなる結合剤、及び溶媒、を含むインキ組成物で構成されるものを採用することができる。上記インキ組成物には、吸水性粉末、保湿剤の少なくとも1つが添加されても良く、さらに着色剤が添加されても良い。
吸水性粉末としては、でんぷん、カオリン、合成シリカ、ガラス、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウム、イオン交換セルロースなどが例示できる。保湿剤としては、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、多価アルコールなどを例示できる。着色剤としては赤色色素が好適なものとして例示できる。
図2は、本発明の重炭酸リンゲル液バッグの包装袋の別形態の模式図である。本実施形態の包装袋1b、1cでは、脱酸素剤2および酸素インジケーター3が輸液バッグ5と重ならないような別領域6に収納されている。別領域6は輸液バッグ5が収納される領域と連通しているため、脱酸素剤2および酸素インジケーター3の機能に影響はない。
脱酸素剤2および酸素インジケーター3が輸液バッグ5と重ならないため、輸液バッグ5が酸素インジケーター3を目視する妨げにならない。別領域6は包装袋1bのように突出した形状でも、包装袋1cのように一部を部分シール部7で区切った形状でも良く、特に限定されない。別領域6を設ける部位やその形状は特に限定されず、任意である。
また本発明の包装袋には、ガスバリア性などの機能を損なわない限り、開封を容易にするための切り欠き、直線カットテープ、弱め線などを適宜設けることができる。
以下に実施例で本発明について具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
<実施例1>
以下の構成の積層体を作製した。
L-LDPE(60μm)/ドライラミネート用接着剤/酸化アルミニウム蒸着Nyフィルム(15μm)/LDPE(15μm)/OPP(30μm)
上記の構成において、所定の印刷を施したOPP(2軸延伸ポリプロピレンフィルム)と、酸化アルミニウム(アルミナ)蒸着2軸延伸ナイロンフィルム(凸版印刷(株)製、GL-AEY(商品名))とを、溶融したLDPE(低密度ポリエチレン)を用いたサンドイッチラミネーションにより積層した。
その際、アルミナ蒸着面がOPP側に向く様に配置した。
次いで、上記積層体のアルミナ蒸着Nyフィルム面にL-LDPE(線状低密度ポリエチレン)フィルムを、ドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネーション法により積
層した。
以上の様にして得られた積層体を貼り合わせてなる包装袋に、重炭酸リンゲル液の輸液バッグを、酸素インジケーターインキにより図1に示したパターンを印字した炭酸ガス発生型脱酸素剤(エージレス(登録商標)GE、三菱瓦斯化学(株)製)と共に収納し、密封した包装体を得た。
<比較例1>
前記炭酸ガス発生型脱酸素剤を、酸素インジケーターインキによる印字のないものとした以外は、実施例1と同様の包装体とした。
<比較例2>
重炭酸リンゲル液バッグを、実施例1と同様の包装袋内に収納し、密封した包装体を得た。炭酸ガス発生型脱酸素剤は使用しなかった。
(評価)
以上の様にして得られた包装体を、常温で7日間、14日間それぞれ保存し、以下の項目につき試験した。
<pH試験>
日本薬局方一般試験法pH測定法により、包装体内の重炭酸リンゲル液のpHを測定した。
<視認性試験>
包装体が脱酸素状態であるかどうかを目視にて確認できるか否か、で評価した。
上記各試験の結果を表1に示す。
Figure 0007375276000001
表1の結果によれば、実施例1においては、保存後も包装体内の重炭酸リンゲル液のpHの変動がなく、酸素インジケーターにより脱酸素状態を目視にて確認できた。一方、比較例1では包装体内の重炭酸リンゲル液のpHはほぼ変化がなかったが、脱酸素状態の目視による確認はできなかった。比較例2においてはpHの変動が見られ、脱酸素状態の目視による確認もできなかった。
1、1a、1b・・・ガスバリア性包装袋
2・・・炭酸ガス発生型脱酸素剤
3・・・酸素インジケーター
4・・・シール部
5・・・重炭酸リンゲル液バッグ
6・・・脱酸素剤収納部
7・・・部分シール部

Claims (4)

  1. 重炭酸リンゲル液の輸液バッグを収納する包装袋であって、包装袋がガスバリア性包装袋であり、酸素インジケーターが設けられた炭酸ガス発生型脱酸素剤が内部に装着されており、
    前記包装袋は、重炭酸リンゲル液の輸液バッグが収納される領域とは別の領域を有し、
    前記別の領域は、当該包装袋の一部を部分シール部で区切られた形状をしており、
    前記炭酸ガス発生型脱酸素剤は、前記別の領域に配置されている
    ことを特徴とする重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋。
  2. 前記ガスバリア性包装袋が、基材上に油性インキ層、ガスバリア層、シーラント層が順次積層された積層体のシーラント層同士を対向させて貼り合わせて形成され、前記包装袋の内部から見たときに前記油性インキ層を前記ガスバリア層が覆っていることを特徴とする請求項1に記載の重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋。
  3. 前記酸素インジケーターは、ポリビニルアセタール樹脂および酸化還元色素を含み、前記炭酸ガス発生型脱酸素剤表面に印刷されて設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の重炭酸リンゲル液の輸液バッグの包装袋。
  4. 請求項1からいずれかの包装袋に、重炭酸リンゲル液の輸液バッグを収納して密封した包装体。
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