JP7370312B2 - 有害物質除去剤、有害物質除去剤の製造方法および有害物質除去剤を用いた有害物質の処理方法 - Google Patents
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Description
有害物質を含有する被処理水に上記有害物質除去剤を添加し、pH調整剤を用いてpHを7~9に調整し、有害物質を不溶性沈殿物として生成させる工程と、を含む。
本開示における有害物質除去剤は、セリウム(Ce)イオンを酸化セリウム(CeO2)換算で10~50質量%含む。有害物質除去剤は、セリウムイオンが溶解している溶液である。
上記有害物質除去剤は、Ceイオンを含む。Ceイオンは、3価および4価のイオンが存在するが、3価のイオンであることが好ましい。セリウムは、上記有害物質除去剤中にCeイオンとして存在し、有害物質と結合して効率的に不溶性沈殿物を生成することができる。これは、Ceイオンが有害物質の固定剤としての役割を果たすためである。
上記有害物質除去剤に用いられる溶媒は、特に限定されないが、例えば、水、塩酸、硝酸等が挙げられ、硝酸を使用することが好ましい。硝酸を使用することにより、上記Ceイオンを含むCe化合物の溶解性が上がり、より高濃度のCeイオンを含む有害物質除去剤が得られやすい。硝酸を使用する場合、上記有害物質除去剤は、5~50質量%含んでいることが好ましく、10~40質量%含んでいることがより好ましく、15~35質量%含んでいることがさらに好ましい。
上記有害物質除去剤は、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましく、MgおよびCaを含んでいることがより好ましい。これにより、有害物質除去剤の処理能力が向上するためである。
本開示における有害物質の処理方法は、上記有害物質除去剤を準備する工程(準備工程)と、有害物質を含有する被処理水に上記有害物質除去剤を添加し、pH調整剤を用いてpHを7~9に調整し、有害物質を不溶性沈殿物として生成させる工程(沈殿工程)と、を含む。以下、各工程について説明する。
準備工程は、上記有害物質除去剤を作製する工程である。上記有害物質除去剤は、例えば、上述のCeイオンを含むCe化合物を上述の溶媒に溶解することで得ることができる。
沈殿工程は、有害物質を含有する被処理水(以下、「被処理水」とも記す。)に上述の準備工程で準備した有害物質除去剤を添加し、pH調整剤を用いてpHを7~9に調整し、有害物質を不溶性沈殿物として生成させる工程である。
上記有害物質除去剤を添加後、被処理水のpHを7~9に調整することで、効率的に被処理水中に単独で存在するまたは2種以上混在する有害物質とCeイオンが結合して不溶性沈殿物を生成する。また、pHを高アルカリ域に調整する必要がないため、沈殿物の発生量が少なくなる。被処理水のpHは、7.5~9に調整することが好ましく、8~9に調整することがより好ましい。
上記有害物質の処理方法における有害物質としては、セレン(Se(VI))、ヒ素(As)、六価クロム(Cr(VI))、フッ素(F)、ホウ素(B)、リン(P)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)等を挙げることができ、これらからなる群から選択される1種もしくは2種以上を少なくとも含む被処理水を、本開示の処理方法を用いて処理することにより、有害物質を単独で、または2種以上を同時に除去することができる。特に、セレン、六価クロム、フッ素、ホウ素およびカドミウムからなる群から選択される1種もしくは2種以上を少なくとも含む被処理水を、本開示の処理方法を用いて処理することにより、有害物質を単独で、または2種以上を同時に効率良く除去することができる。また、セレン、ホウ素およびカドミウムからなる群から選択される1種もしくは2種以上を少なくとも含む被処理水を、本開示の処理方法を用いて処理することにより、有害物質を単独で、または2種以上を同時にさらに効率良く除去することができる。
本工程においては、必要に応じて、生成する沈殿物の沈降速度を加速させるために、凝集剤を使用することができる。被処理水中の浮遊物質が多い場合、生成する沈殿物の沈降速度は速く、分離に要する時間が短いため、凝集剤を必要としない場合が多い。一方、被処理水中の浮遊物質が少ない場合、生成する沈殿物の沈降速度は遅く、分離に要する時間が長い場合が多く、凝集剤を併用することができる。凝集剤は、特に限定されないが、例えば、一般的なアニオン系高分子凝集剤で十分な沈降速度の加速が可能である。
本開示の有害物質の処理方法は、上記沈殿工程の後に、生成した不溶性沈殿物を分離し、脱水する工程を有することが好ましい。分離としては、例えば、固液分離が挙げられる。固液分離は、常法により行うことができ、例えば、ろ過分離、遠心分離、沈降分離等が挙げられるが、通常は重力による沈降分離で十分な固液分離が可能である。分離された沈殿物は、乾燥させてもよい。
表1に示す配合組成で溶媒にCe化合物を添加し、ジャーテスターを用いて以下の条件で撹拌することで、試料1~試料9を得た。なお、試料1および試料2は、60℃に加熱して撹拌することで得た。また、試料9は、硝酸に炭酸セリウムを添加し、以下の条件で撹拌した後、塩化セリウムを添加し、再度以下の条件で撹拌することで得た。
[撹拌条件]
速度:100rpm~300rpm
時間:30分~180分
温度:10℃~30℃
処理排水として、表2に示す各有害物質を含む模擬排水を調製した。上記模擬排水は、一般に発電所で発生する脱硫排水や、化学工業、非鉄金属製造業、金属製品製造業、電気機械器具製造業等の洗浄処理、加工処理等で発生する廃液を想定して作製された。なお、表2の「排水基準」は、水質汚濁防止法で定められた処理排水に含まれる各元素の排水基準を示す。
<試験1>
試験1では、表2に示す各有害物質を含む模擬排水に上述の試料9を0.4体積%~1.6体積%添加し、25質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH=8~9に調整し、ジャーテスターを用いて以下の条件で撹拌を行った(実施例1~4)。また、上記模擬排水に上述の試料6を0.4体積%~2.4体積%添加し、25質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH=8~9に調整し、ジャーテスターを用いて以下の条件で撹拌を行った(実施例5~10)。
[撹拌条件]
速度:100rpm~300rpm
時間:10分~15分
温度:20℃~25℃
比較例1および比較例2は、上記模擬排水に酸化アルミニウムとして8質量%含有する硫酸アルミニウム水溶液(試薬A)を1.6体積%~2.4体積%添加し、20質量%水酸化カルシウム水溶液でpHを12以上に調整し、ジャーテスターを用いて上述の撹拌条件で撹拌を行った。また、比較例3および比較例4は、上記模擬排水に38質量%塩化第二鉄水溶液(試薬B)を1.6体積%~2.4体積%添加し、25質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH=7~8に調整し、ジャーテスターを用いて上述の撹拌条件で撹拌を行った。
[組成分析方法]
Se(VI)、Cd、Pb:電気加熱原子吸光法((株)日立ハイテクノロジーズ社製 電気加熱原子吸光装置 Z-2710)
B、P、Mn、Cu、Zn:ICP発光分光分析法((株)リガク社製 ICP発光分光分析装置 CIROS CCD)
As、Sb :水素化物発生ICP発光分光分析法(ThermoFisherScientific(株)社製 水素化物発生装置 HYD-10)
Cr(VI) :ジフェニルカルバジド吸光光度法((株)日立ハイテクノロジーズ社製 分光光度計 UH5300)
F :イオン電極法(蒸留分離実施後)((株)堀場製作所社製 水質分析計 F-73)
試験2では、上述の試料9と、以下で説明する試料10および11を準備した。試料10は、表1に示す試料9と同様の配合組成で硝酸に炭酸セリウムを添加し、上述の<有害物質除去剤の作製>と同様の条件で撹拌した後、塩化セリウム、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを添加し、再度同様の条件で撹拌することで得た。また、試料11は、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを添加しなかったことを除いては、試料10と同様の条件で作製された。作製した試料9~11のMgおよびCaの濃度を表5に示す。なお、試料9には、表5に示す濃度のMgおよびCaが不可避的に存在していた。
試験3では、表2に示す各有害物質を含む模擬排水に上述の試料9~11を0.8体積%添加し、以下の条件で5分間撹拌を行った後、25質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH=8~9に調整し、再度以下の条件で10~15分間撹拌を行った。
[撹拌条件]
速度:100rpm~300rpm
温度:10℃~30℃
撹拌後、発生した沈殿物の平均沈降速度を計測した。平均沈降速度は、撹拌停止後の沈殿物表面(沈殿物の最表面)の沈降距離から求めた。結果を表7および図1に示す。
Claims (7)
- 有害物質を除去するための有害物質除去剤であって、
前記有害物質除去剤は、溶媒およびセリウム化合物を含み、
前記溶媒は、硝酸を含み、
前記セリウム化合物は、塩化セリウムおよび炭酸セリウムを含み、
前記有害物質除去剤は、セリウムイオンを酸化セリウム換算で30~45質量%含み、
前記有害物質除去剤における前記溶媒の含有率は、15~35質量%であり、
前記有害物質除去剤は、マグネシウムおよびカルシウムを含み、
前記有害物質は、セレン、ヒ素、六価クロム、フッ素、ホウ素、リン、カドミウム、鉛、マンガン、銅、亜鉛およびアンチモンからなる群から選択される1種を少なくとも含む、有害物質除去剤。 - マグネシウムを10~60mg/Lおよびカルシウムを10~210mg/L含む、請求項1に記載の有害物質除去剤。
- 塩化セリウムおよび炭酸セリウムを、質量比で55:45~25:75含む、請求項1または2に記載の有害物質除去剤。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の有害物質除去剤の製造方法であって、
硝酸に塩化セリウムおよび炭酸セリウムを溶解させる工程を含み、
前記工程において、炭酸セリウムを硝酸に溶解させた後、塩化セリウムを加える、有害物質除去剤の製造方法。 - 前記工程において、炭酸セリウムを硝酸に溶解させた後、マグネシウム化合物およびカルシウム化合物を加える、請求項4に記載の有害物質除去剤の製造方法。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の有害物質除去剤を準備する工程と、
前記有害物質を含有する被処理水に前記有害物質除去剤を添加し、pH調整剤を用いてpHを7~9に調整し、前記有害物質を不溶性沈殿物として生成させる工程と、
前記不溶性沈殿物を分離し、脱水する工程と、を含み、
前記有害物質を2種以上同時に処理する、有害物質の処理方法。 - 前記有害物質除去剤の前記被処理水に対する添加量は、0.4~4.0体積%である、請求項6に記載の有害物質の処理方法。
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