JP5007965B2 - フッ素系化合物の処理方法 - Google Patents
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Description
〔1〕 フルオロカーボン鎖を有する有機化合物(フッ素系化合物と云う)がペルフルオロクタン酸化合物またはペルフルオロデカン酸化合物であり、該フッ素系化合物と含フッ素ポリマーを含む溶液のpHを4以上に調整し、二価の金属塩および三価の金属塩を添加して上記フッ素系化合物を層間に含む層状複水酸化物を形成させ、該層状複水酸化物と含フッ素ポリマーが凝集した沈澱を生成させることを特徴とするフッ素系化合物の処理方法。
〔2〕フッ素系化合物がペルフルオロクタン酸化合物またはペルフルオロデカン酸化合物であり、該フッ素系化合物と含フッ素ポリマーを含む溶液のpHを4以上に調整し、二価の金属塩および三価の金属塩を添加して上記フッ素系化合物を層間に含む層状複水酸化物を形成させ、該層状複水酸化物と含フッ素ポリマーが凝集した沈澱を生成させ、該沈澱を固液分離して回収し、この回収した固形分を酸に溶解してフッ素系化合物またはその塩を分離することを特徴とする処理方法。
〔3〕フッ素系化合物と含フッ素ポリマーを含む溶液にアルカリを添加して溶液のpHを4〜12に調整する上記[1]または上記[2]に記載するフッ素系化合物の処理方法。
〔4〕二価金属塩がマグネシウム、カルシウム、亜鉛、ニッケル、銅、マンガン(二価)、またはコバルト(二価)の塩であり、三価金属塩がアルミニウム、鉄、クロム、マンガン(三価)、コバルト(三価)、ガリウム、ランタン、スカンジウムの塩である上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するフッ素系化合物の処理方法。
〔5〕二価金属塩および三価金属塩が塩化物である請求項1〜請求項4の何れかに記載するフッ素系化合物の処理方法。
〔6〕含フッ素ポリマーがポリ四フッ化エチレンである上記[1]〜上記[5]の何れかに記載する処理方法。
〔7〕フッ素系化合物を層間に含む層状複水酸化物が次式〔1〕で表される上記[1]〜上記[6]の何れかに記載するフッ素系化合物の処理方法。
M(II)1-xM(III)x(OH)2Yx/m・nH2O……〔1〕
(式中、Yはフルオロカーボン鎖を有するフッ素系化合物の価数mのアニオン、M(II)は二価金属イオン、M(III)は三価金属イオン、Xは0.1〜0.5、nはゼロまたは正の実数)
〔8〕上記[2]の処理方法において、固液分離して回収した沈澱を鉱酸に溶解し、溶解せずに残留するフッ素系化合物またはその塩を固液分離して回収するフッ素系化合物の処理方法。
〔9〕上記[2]の処理方法において、固液分離して回収した沈澱を鉱酸に溶解し、この溶液をフッ素系化合物またはその塩の溶融温度以上に加熱した後に静置して、固形分の含フッ素ポリマーと液化したフッ素系化合物またその塩とに分離させ、固形分の含フッ素ポリマーを固液分離して回収するフッ素系化合物の処理方法。
〔10〕上記[9]の処理方法において、固形分の含フッ素ポリマーを固液分離した濾液の液温をフッ素系化合物またはその塩の溶融温度以上に保って静置することによって、二価金属イオンおよび三価金属イオンを含む水層と、フッ素系化合物ないしその塩を含むオイル層とに分離させ、分離したオイル層を分取してフッ素系化合物を回収するフッ素系化合物の処理方法。
〔11〕上記[1]に記載する処理方法によって層状複水酸化物と含フッ素ポリマーが凝集した沈澱を生成させた後に、これを固液分離して回収し、さらにこれを炭酸ナトリウム水溶液に接触させた後に固液分離し、回収した固形分を有機溶媒に溶解し、不溶解物を濾別してフッ素系化合物またはその塩を回収するフッ素系化合物の処理方法。
(イ)層状複水酸化物の形成
本発明は、フルオロカーボン鎖を有するカルボン酸イオン、スルホン酸イオンなどの有機フッ素化合物(フッ素系化合物)のアニオンとPTFE等の含フッ素ポリマーを含む水溶液に、二価金属イオンおよび三価金属イオンを添加し、層間に上記アニオンを含むLDHを形成することによって、上記アニオンをLDHの層間に固定させ、同時に含フッ素ポリマーの沈澱を生成させ、固液分離してこれらを溶液から分離することができる処理方法である。
M(II)1-xM(III)x(OH)2Yx/m・nH2O……〔1〕
(式中、Yはフルオロカーボン鎖を有するフッ素系化合物の価数mのアニオン、M(II)は二価金属イオン、M(III)は三価金属イオン、Xは0.1〜0.5、nはゼロまたは正の実数。)
M(II)1-xM(III)x(OH)2Ax/m・nH2O……〔2〕
(式中、Aは価数mのアニオン、M(II)、M(III)、X、nは式[1]に同じ)
回収した層状複水酸化物(式〔1〕で表される層状複水酸化物)からフッ素系化合物を分離するには、この層状複水酸化物の沈澱をpH1以下の鉱酸に溶解し、このときフッ素系化合物は強酸には溶解せずに残るので、これを固液分離して回収するか、またはこの溶液の液温がフッ素化合物ないしその塩の溶融温度以上であれば、このフッ素化合物が液化するので、これを静置して分離したオイル層を分取することによってフッ素系化合物またはその塩を回収することができる。また、層状複水酸化物と一緒に凝集沈澱した含フッ素ポリマーは強酸に溶解せずに残るので、液温をフッ素化合物ないしその塩の溶融温度以上にしてフッ素化合物を液化させることにより、含フッ素ポリマーを固形分として分離することができる。
以上のように本発明の処理方法は、層間にフッ素系化合物を有する層状複水酸化物を形成することによってフッ素系化合物を固定し、この沈澱の形成と共に溶液中に懸濁する含フッ素ポリマーを凝集して沈澱させることができる。なお、排水が夾雑物として炭酸イオンや硫酸イオンなどのLDHを形成しやすいアニオンを含む場合でも、夾雑アニオンの量よりも過剰の上記金属塩を投入することによって効果的に本発明の処理方法を適用することができる。
なお、これらの実施例において、水溶液中の陰イオンの濃度はLC/MS分析またはメチレンブルーによって比色定量した。検量線は上記陰イオンのアンモニウム塩を重量ベースで1〜5ppm含む標準水溶液5種類を調製し、それぞれ分液ロートに30mlとり、さらに10mlのクロロホルムと10mlのメチレンブルー溶液を加え、よく振った後に10分間静置し可視・紫外分光計を用いてそれぞれの吸光度を判定して検量線を作成した。測定波長は635nmに固定した。吸光度の値はこの濃度範囲で0〜1の範囲にあり、検量線は良い直線性を示した。実施例1〜11の試験条件および結果を表1に示した。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ148ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7に調整した。液温は26℃であった。次にこの溶液1Lに塩化アルミニウムと塩化亜鉛の混合水溶液[Al3+イオン0.378mmol(排水中APFOの1.1モル倍)、Zn2+イオン0.755mmol(排水中APFOの2.2モル倍)]約10mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて50rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHを6.5以上7.5以下に調整した。塩化アルミニウムと塩化亜鉛の混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降し、約5分で完全に沈降した。上澄液は無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取した。この沈殿物を濾紙ごと70℃で15時間乾燥した。沈殿物の乾燥重量は2.50gであった。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ200ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。液温は26℃であった。この溶液1Lに塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液[Al3+イオン0.603mmol(排水中APFOの1.3モル倍)、Mg2+イオン1.21mmol(排水中APFOの2.6モル倍)]約10mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて100rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHが9以上10以下になるように調整した。塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降し、約5分で完全に沈降した。上澄液は無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取した。この沈殿物を濾紙ごと70℃で15時間乾燥した。沈殿物の乾燥重量は2.54gであった。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ148ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7に調整した。液温は26℃であった。この溶液1Lに塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液[Al3+イオン4.46mmol(排水中APFOの13モル倍)、Mg2+イオン8.92mmol(排水中APFOの26モル倍)]約10mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて100rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHが10以上11以下になるように調整した。塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降して、約5分で完全に沈降した。上澄液は無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取した。この沈殿物を濾紙ごと70℃で15時間乾燥した。沈殿物の乾燥重量は3.56gであった。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ500ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7に調整した。液温は26℃であった。次にこの溶液20Lに塩化アルミニウムと塩化亜鉛の混合水溶液[Al3+イオン30.2mmol(排水中APFOの1.3モル倍)、Zn2+イオン69.6mmol(排水中APFOの3.0モル倍)]約100mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて75rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHが6.5以上7.5以下になるように調整した。塩化アルミニウムと塩化亜鉛の混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降し、約5分で完全に沈降した。上澄液は無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取した。この沈殿物を濾紙ごと70℃で15時間乾燥させた。沈殿物の乾燥重量は65.2gであった。
この乾燥した沈殿物40gをとり、120gの希硫酸(濃度10%)に加え、室温で3時間攪拌した。その後、溶液を70℃に加熱して不溶解物を濾別した。濾別した固形分の乾燥重量は27.6gであり、これをDTAおよびIRで分析したところ、ポリフッ化エチレン樹脂に帰属するピークが検出された。一方、濾液を70℃に保って静置し、上層のZnイオンとAlイオンを含む水溶液と下層のオイル層とに分離させた。オイル層を分取し、蒸留してペルフルオロクタン酸4.0gを得た。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ500ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7に調整した。液温は26℃であった。次に、この溶液20Lに塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液[Al3+イオン46.4mmol(排水中APFOの2.0モル倍)、Mg2+イオン92.8mmol(排水中APFOの4.0モル倍)]約1000mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて50rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHが9以上10以下になるように調整した。塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降して、約5分で完全に沈降した。上澄液は無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取した。この沈殿物を濾紙ごと70℃で恒量まで乾燥した。沈殿物の乾燥重量は66.6gであった。
この乾燥した沈殿物40gをとり、120gの希硫酸(濃度10%)に加え、室温で3時間攪拌した。その後、溶液を70℃に加熱して不溶解物を濾別した。濾別した固形分の乾燥重量は27.0gであり、これをDTAおよびIRで分析したところ、ポリフッ化エチレン樹脂に帰属するピークが検出された。一方、濾液を70℃に保って静置し、上層のAlイオンとMgイオンを含む水溶液と下層のオイル層とに分離させた。オイル層を分取し、蒸留してペルフルオロクタン酸4.0gを得た。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ500ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7に調整した。液温は26℃であった。次にこの溶液20Lに塩化アルミニウムと塩化亜鉛の混合水溶液[Al3+イオン30.2mmol(排水中APFOの1.3モル倍)、Zn2+イオン69.6mmol(排水中APFOの3.0モル倍)]約100mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて75rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリム水溶液を適宜滴下してpHが6.5以上7.5以下になるように調整した。塩化アルミニウムと塩化亜鉛の混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降し、約5分で完全に沈降した。上澄液は無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取した。この沈殿物を濾紙ごと70℃で15時間乾燥した。沈殿物の乾燥重量は65.0gであった。
この乾燥した沈殿物40gをとり、120gの濃塩酸に加え、室温で3時間攪拌した。その後、溶液を70℃に加熱して不溶解物を濾別した。濾別した固形分の乾燥重量は27.8gであり、これをDTAおよびIRで分析したところ、ポリフッ化エチレン樹脂に帰属するピークが検出された。一方、濾液を70℃に保って静置し、上層のZnイオンとAlイオンを含む水溶液と、下層のオイル層とに分離させた。このオイル層を分取し、蒸留してペルフルオロクタン酸3.9gを得た。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ500ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7に調整した。液温は26℃であった。次にこの溶液20Lに塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液[Al3+イオン46.4mmol(排水中APFOの2.0モル倍)、Mg2+イオン92.8mmol(排水中APFOの4.0モル倍)]約100mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて50rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHが9以上10以下になるように調整した。塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降し、約5分で完全に沈降した。上澄液は無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取した。この沈殿物を濾紙ごと70℃で恒量まで乾燥した。乾燥後の沈殿物は66.6gであった。
この乾燥した沈殿物40gをとり、120gの希硫酸(濃度10%)に加え、室温で3時間攪拌した。その後、溶液を70℃に加熱し、不溶解物を濾別せずにこの液温のまま静置し、上層のZnイオンとAlイオンを含む水溶液と下層のオイル層とに分離させた。オイル層を分取し、蒸留してペルフルオロクタン酸4.1gを得た。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ1000ppmであった。なお、排水中に残存しているポリ四フッ化エチレン樹脂微粒子の影響を除去するために前処理を行った後に吸光度測定を行った。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウムを添加してpHを7に調整した。液温は26℃であった。次に、この溶液1Lに塩化アルミニウムと塩化カルシウムの混合水溶液[Al3+イオン2.32mmol(排水中APFOの1.0モル倍)、Ca2+イオン4.64mmol(排水中APFOの2.0モル倍)]約10mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて50rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHが9以上10以下になるように調整した。塩化アルミニウムと塩化カルシウムの混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降し、約5分で完全に沈降した。上澄みは無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取した。この沈殿物を濾紙ごと70℃で15時間乾燥した。沈殿物の乾燥重量は3.22gであった。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロデカン酸アンモニウム(C9F19COONH4)の濃度を測定したところ500ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。液温は26℃であった。次に、この溶液1Lに塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液[Al3+イオン1.88mmol(排水中APFOの2.0モル倍)、Mg2+イオン3.77mmol(排水中APFOの4.0モル倍)]約100mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて50rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHが9以上10以下になるように調整した。塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降し約5分で完全に沈降した。上澄みは無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取し、この沈殿物を濾紙ごと70℃で恒量まで乾燥した。沈殿物の乾燥重量は2.82gであった。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ148ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7に調整した。さらに、この溶液を加熱して液温を60℃〜70℃に保った。次に、この溶液1Lに塩化アルミニウムと塩化亜鉛の混合水溶液[Al3+イオン0.378mmol(排水中APFOの1.1モル倍)、Zn2+イオン0.755mmol(排水中APFOの2.2モル倍)]約10mLを3時間かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いて50rpmで攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHが6.5以上7.5以下になるように調整した。塩化アルミニウムと塩化亜鉛の混合水溶液の滴下直後から極く薄い乳白色の液が凝集を始めると共に白色沈殿を生成し始めた。この混合水溶液の滴下開始後3時間で沈殿の生成は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿は速やかに沈降し、約5分で完全に沈降した。上澄液は無色透明であった。沈殿物を3μmのメンブランフィルターで濾取した。この沈澱物を濾紙ごと70℃で15時間乾燥した。沈殿物の乾燥重量は2.62gであった。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の乳化重合後の凝集後排水(PTFE濃度2300ppm)について、ペルフルオロクタン酸アンモニウム(C7F15COONH4)の濃度を測定したところ100ppmであった。この水溶液に0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7に調整した。液温は26℃であった。次に、この溶液に塩化アルミニウムと塩化亜鉛および塩化マグネシウムの混合水溶液[Al3+イオン0.232mmol(排水中APFOの1.0モル倍)、Zn2+イオン0.232mmol(排水中APFOの1.0モル倍)、Mg2+イオン0.232mmol(排水中APFOの1.0モル倍)]約10mLを3時間かけて滴下した。これ以降は溶液のpHを8〜9に調整した以外は実施例1と同様にして沈殿物を生成させた。沈殿物の乾燥重量は2.32gであった。この乾燥沈殿物について実施例1と同様にしてポリ四フッ化エチレン樹脂と陰イオン界面活性剤が層状複水酸化物と共に沈殿したものであることを確認した。この上澄液を分析したところペルフルオロクタン酸アンモニウムの濃度は4ppmであり、従って、層状複水酸化物の含まれるペルフルオロクタン酸の固定率は96%であった。また上澄液のポリ四フッ化エチレンの濃度は50ppm未満であり、従って沈澱率は98%以上であった。
本発明の方法によれば、ペルフルオロカーボン鎖を有する界面活性剤などのフッ素系化合物を層状複水酸化物の層間に吸着して安定に固定することができ、同時に溶液中のPTFEなどの含フッ素ポリマーを凝集して沈澱させることができる。溶液中で層状複水酸化物の形成とフッ素系化合物の吸着は同時に進行し、この層状複水酸化物は二価金属塩および三価金属塩の添加によって容易に形成されるので、上記フッ素系化合物を簡単に吸着固定することができる。また、好適な実施態様においては、ペルフルオロカーボン鎖を有する界面活性剤アニオン水溶液の濃度が数重量%以下、例えば0.01重量%程度の極めて低い濃度の場合でも、容易に90%以上の極めて高い割合でこのフッ素系化合物を固定することができる。しかも、添加する金属塩は環境に対して安全なものを用いることができる。
Claims (11)
- フルオロカーボン鎖を有する有機化合物(フッ素系化合物と云う)がペルフルオロクタン酸化合物またはペルフルオロデカン酸化合物であり、該フッ素系化合物と含フッ素ポリマーを含む溶液のpHを4以上に調整し、二価の金属塩および三価の金属塩を添加して上記フッ素系化合物を層間に含む層状複水酸化物を形成させ、該層状複水酸化物と含フッ素ポリマーが凝集した沈澱を生成させることを特徴とするフッ素系化合物の処理方法。
- フッ素系化合物がペルフルオロクタン酸化合物またはペルフルオロデカン酸化合物であり、該フッ素系化合物と含フッ素ポリマーを含む溶液のpHを4以上に調整し、二価の金属塩および三価の金属塩を添加して上記フッ素系化合物を層間に含む層状複水酸化物を形成させ、該層状複水酸化物と含フッ素ポリマーが凝集した沈澱を生成させ、該沈澱を固液分離して回収し、この回収した固形分を酸に溶解してフッ素系化合物またはその塩を分離することを特徴とする処理方法。
- フッ素系化合物と含フッ素ポリマーを含む溶液にアルカリを添加して溶液のpHを4〜12に調整する請求項1または請求項2に記載するフッ素系化合物の処理方法。
- 二価金属塩がマグネシウム、カルシウム、亜鉛、ニッケル、銅、マンガン(二価)、またはコバルト(二価)の塩であり、三価金属塩がアルミニウム、鉄、クロム、マンガン(三価)、コバルト(三価)、ガリウム、ランタン、スカンジウムの塩である請求項1〜請求項3の何れかに記載するフッ素系化合物の処理方法。
- 二価金属塩および三価金属塩が塩化物である請求項1〜請求項4の何れかに記載するフッ素系化合物の処理方法。
- 含フッ素ポリマーがポリ四フッ化エチレンである請求項1〜請求項5の何れかに記載する処理方法。
- フッ素系化合物を層間に含む層状複水酸化物が次式〔1〕で表される請求項1〜請求項6の何れかに記載するフッ素系化合物の処理方法。
M(II)1-xM(III)x(OH)2Yx/m・nH2O……〔1〕
(式中、Yはフルオロカーボン鎖を有するフッ素系化合物の価数mのアニオン、M(II)は二価金属イオン、M(III)は三価金属イオン、Xは0.1〜0.5、nはゼロまたは正の実数) - 請求項2の処理方法において、固液分離して回収した沈澱を鉱酸に溶解し、溶解せずに残留するフッ素系化合物またはその塩を固液分離して回収するフッ素系化合物の処理方法。
- 請求項2の処理方法において、固液分離して回収した沈澱を鉱酸に溶解し、この溶液をフッ素系化合物またはその塩の溶融温度以上に加熱した後に静置して、固形分の含フッ素ポリマーと液化したフッ素系化合物またその塩とに分離させ、固形分の含フッ素ポリマーを固液分離して回収するフッ素系化合物の処理方法。
- 請求項9の処理方法において、固形分の含フッ素ポリマーを固液分離した濾液の液温をフッ素系化合物またはその塩の溶融温度以上に保って静置することによって、二価金属イオンおよび三価金属イオンを含む水層と、フッ素系化合物ないしその塩を含むオイル層とに分離させ、分離したオイル層を分取してフッ素系化合物を回収するフッ素系化合物の処理方法。
- 請求項1に記載する処理方法によって層状複水酸化物と含フッ素ポリマーが凝集した沈澱を生成させた後に、これを固液分離して回収し、さらにこれを炭酸ナトリウム水溶液に接触させた後に固液分離し、回収した固形分を有機溶媒に溶解し、不溶解物を濾別してフッ素系化合物またはその塩を回収するフッ素系化合物の処理方法。
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