JP4253203B2 - 石こう中のフッ素の除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石こう中のフッ素を除去する方法に関する。さらに詳しくは、石灰−石こう法による排煙脱硫装置で生産される脱硫石こうなどのフッ素含有石こう中のフッ素を除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭火力発電所などから排出される燃焼排ガス中のSO2を排煙脱硫装置で石灰−石こう法により除去する際に副産物として生産される石こう(脱硫石こうと呼ばれている)や、リン鉱石から湿式リン酸法によりリン酸を生産する際に副生する石こう中には、フッ素化合物が含まれることが多い。
【0003】
この種の石こうは、従来から、そのまま廃棄されることなく、石こうボードなどの建築材料として有効利用されている。そして、石こうボードは、表面の紙を剥がすと、「陶磁器くず」と見なされて、ガラスくず、がれき類などとともに一律安定型処分場への廃棄が可能となるものである。したがって、石こう中にフッ素が含有されたままの状態では、安定型廃棄物として廃棄される場合には、雨水などによりフッ素が溶出する可能性が残されていることが指摘されている。現状においては、石こうボードは安定型処分場への処分が可能なものであるため、含有フッ素の溶出量が問題となることはないが、環境に与える影響をより少ないものとするには、石こうボード中のフッ素の除去や不溶化による溶出量の低減が望まれる。
【0004】
この問題を解決する方法として、フッ素含有石こう材料やスラッジに由来する石こう材料に、硫酸カルシウム1モルに対して最大0.5モルのアルミニウム化合物、特定的にはアルミン酸またはアルミン酸ナトリウムを混合してフッ素不溶化石こう組成物を製造する技術が提案されている(特開2001−253755号公報)。この石こう組成物・石こうボードは、廃棄された場合においても有害なフッ素を溶出させず、安全で効率的な処理を可能とするものである。詳しい、フッ素不溶化メカニズムは開示されていないが、含有された大量のアルミニウム化合物が雨水などと反応して水酸化アルミニウムとなって石こうの周りに沈殿し、これがフッ素と結合してフッ素を外に溶出しないようにして石こう中に固定することを期待したものと推定される。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−253755号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このフッ素不溶化技術は、本来ならば不純物となるアルミニウム化合物を大量(硫酸カルシウム1モルに対して最大0.5モル)に石こう中に混合していることから、石炭火力発電所などから排出される燃焼排ガス中の脱硫装置から副産物として生産される脱硫石こうなどを廃棄せずに有効利用して廃棄物量を削減しているにもかかわらず、結果的には総廃棄物量を増量させることとなってしまう。
【0007】
また、硫酸カルシウム1モルに対して最大0.5モルもの大量の不純物となるアルミニウム化合物を予め石こう材料中に加えることは、石こう材料の品質や特性、加工工程などに影響を与える虞がある。
【0008】
更に、大量の不純物たるアルミニウム化合物の添加によりフッ素の石こう材料からの不溶化を意図していても、廃棄石こうボード中にはフッ素が依然として含まれている状態であることから、十分な理解が得られずに漠とした不安を与えかねない問題を含んでいる。
【0009】
一方、脱硫石こう中のフッ素化合物は、水に可溶であることから、石こう材料を水洗処理することにより、フッ素を除去できる。しかしながら、フッ素化合物の水に対する溶解度は溶解度積で規定されることから、石こう中のフッ素含有量が小さい場合には水洗処理によるフッ素の溶出率は大きくなる傾向にあるが、フッ素含有量が大きい場合にはフッ素の溶出率が小さく、水洗処理を繰り返したとしても、石こう中のフッ素含有量はそれほど低下せず、水洗処理の回数を相当増やさなければならない。しかし、それでは石こう成分そのものが溶解してなくなってしまうので、脱硫石こうの有効利用という観点からは無意味である。
【0010】
本発明は、フッ素含有石こう材料中からフッ素を除去してフッ素の溶出が問題とならない程度まで含有フッ素量を低減させる石こう中のフッ素の除去方法を提供することを目的とする。そしてさらには、フッ素除去処理に伴って排出されるフッ素含有排水からフッ素除去方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、脱硫石こうからのフッ素の溶出特性について鋭意研究した結果、溶出水中のフッ素濃度は不純物として含まれるアルミニウムの化合物の量が多いと溶出量が増えることを知見した。
【0012】
本発明の石こう中のフッ素の除去方法は、かかる知見に基づくものであって、アルミニウムイオンを含む洗浄水のpHを3.9〜5.5の範囲に維持しながら、この洗浄水によりフッ素含有石こうを洗浄することを特徴とする。より、具体的には、アルミニウム化合物を溶解した洗浄水のpHを3.9〜5.5の範囲に維持しながら、この洗浄水によりフッ素含有石こうを洗浄するものである。ここで、アルミニウム化合物は硫酸バンド(Al2(SO4)3・18H2O)であることが好ましく、更に洗浄水のpHは4〜5の範囲に維持することが好ましい。
【0013】
石こう中のフッ素の洗浄水への溶解は、化学式1に示す反応を主反応とする、水へのCaF2の溶解反応である。
【化1】
CaF2 → Ca2+ + 2F−
ここで、水中のフッ素濃度は、CaF2の溶解度積(Ksp=一定値)によって規定され(正しくは、濃度ではなく活量で定義される)、次の化学式2のように示される。
【化2】
Ksp=[Ca2 +濃度][F-濃度] 2
【0014】
しかし、水中にアルミニウムイオンが共存すると、フッ素イオンはフルオロ錯体(主としてAlF2 +とAlF3 0)を生成する。その結果、フッ素イオンは、フルオロ錯体の形態で溶存できることから、実際には化学式3に示すように上記の溶解度積で規定される量(下記のF−形態のフッ素量)よりも多くのフッ素がCaF2から溶出することとなる。
【化3】
CaF2から溶出した全フッ素量=F−形態のフッ素量+AlF2 +形態のフッ素量+AlF3 0形態のフッ素量
このため、少ない洗浄回数、通常は1回で所望のフッ素除去率が得られる。
【0015】
更に、本発明の洗浄排水中のフッ素の除去方法は、洗浄された石こうを洗浄水中から分離回収した後の洗浄排水を中和し、中和された洗浄排水に凝集剤を加えてフッ素含有汚泥を凝集沈澱させると共に、凝集沈澱を濃縮し脱水濾過してフッ素含有汚泥の脱水ケーキを得る一方、フッ素が除去された前記洗浄排水を濾過して放流もしくは洗浄水としてリサイクルするようにしている。したがって、さらに洗浄排水中に溶出したフッ素が濃縮して回収され、洗浄水は無害化されて排水ないし更に洗浄水としてリサイクルされる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0017】
本発明の石こう中のフッ素の除去方法は、図1に示したように、大別してフッ素除去工程S1と排水処理工程S2とを含んでいる。更に、フッ素除去工程S1は、フッ素含有石こうにアルミニウム化合物および洗浄水を添加し、要すればさらに酸を添加して、pH3.9〜5.5の条件下でフッ素含有石こうを洗浄する工程S11、および石こう分離機を用いて洗浄水を分離しフッ素の除去された石こうを回収する工程S12を少なくとも含む。
【0018】
また、排水処理工程S2は、フッ素除去された石こう分離後のフッ素含有洗浄排水(単に、洗浄排水と呼ぶ)にアルカリを加えて中和する工程S21、中和されたフッ素含有洗浄排水に凝集剤を加えてフッ素含有汚泥を凝集沈澱させる工程S22、凝集沈澱を濃縮し脱水濾過してフッ素含有汚泥の脱水ケーキを得る工程S23およびフッ素が除去された排水を濾過して浄化水とする浄化工程S24とを少なくとも含み、含有フッ素を除去した無害の水として放流あるいは洗浄水としてリサイクルするようにしている。
【0019】
本発明において、処理対象のフッ素含有石こうは、火力発電所などの石炭燃焼炉からの排煙を処理する石灰−石こう法による排煙脱硫装置で回収される回収石こう、湿式法リン酸製造設備で副生する副生石こうなどであり、二水塩(石こう)、1/2水塩(焼石こう)の形態の石こうである。たとえば、排煙脱硫装置からの石こうには、0.01〜5mg/gのフッ素が主にフッ化カルシウム(CaF2)の形で存在する。
【0020】
前記フッ素含有石こうを、アルミニウム化合物を溶解した洗浄水で、洗浄水のpHを3.9〜5.5の範囲に維持しながら洗浄することにより、水のみを用いて洗浄した場合に比較して高いフッ素除去率で洗浄水中に大量のフッ素が溶出し(図2参照)、石こう中の大部分のフッ素が除去される。したがって、少なくとも1回、場合によっては複数回の洗浄により、地下水環境基準を超過するような量のフッ素が溶出することがない石こうを回収することができ、建築材料等に有効利用した場合の廃棄時の問題を心配する必要がなくなる。
【0021】
前記アルミニウム化合物は、水または酸性の水に可溶性のアルミニウム化合物である。アルミニウム化合物として、例えば、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、明ばん、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、等を挙げることができ、それらは単独で、または2種類以上の混合物として使用することができる。特に硫酸バンド(Al2(SO4)3・18H2O)は安価で入手が容易な上に、その水溶液が弱酸性を示し、また洗浄水中の硫酸イオン濃度が増加し、石こうの溶解を抑制するため好適に使用することができる(石こうの溶解度は、その溶解度積 Ksp=[Ca2 +濃度][SO4 2 -濃度]で規定される)。
【0022】
アルミニウム化合物の使用量は、フッ素含有石こう中のフッ素含有量、およびそれ以外の不純物およびそれらの含有量によって異なるが、処理するフッ素含有石こうの重量基準で少なくとも1重量%以上、好ましくは5重量%程度である。5重量%を超えても、アルミニウム化合物のコストの増大の割にフッ素除去率の増大が望めないので、経済的な観点からも5重量%程度が望ましい。
【0023】
アルミニウムイオンを含む洗浄水は、弱酸性、好ましくは3.9〜5.5、より好ましくは4〜5、更に好ましくは4.5〜5の範囲に維持することである。pHが5.5より上のときには洗浄水中のアルミニウムイオンが水酸化アルミニウム(Al(OH)3)となって石こうの表面あるいは粒子間に沈殿して石こう中に含有されるフッ素が洗浄水中に溶出するのを阻害してフッ素除去率を低下するし、3.9未満で低すぎるとフッ素除去後の回収石こう原料が酸性となる問題があると共に装置腐食の問題があり、また、後工程の石こう分離後の洗浄排水の中和処理に大量のアルカリが必要となるので好ましくない。多くのアルミニウム化合物の水溶液は、弱酸性を示すが、洗浄中に洗浄水のpHが高くなる場合には、無機酸、好ましくは硫酸を加えてpHを調整・維持する。通常は硫酸アルミニウムを水に溶解させるだけで弱酸性になる。これは、アルミニウムイオン(Al3+) の加水分解が起こるためである。ただし、石こう中に炭酸カルシウム等の酸を中和する物質が多く含まれると酸性にはならず、水酸化アルミニウムが沈殿してしまう場合もある。このような石こうの場合には酸(塩酸または硫酸)を添加してpHを4〜5程度に調整する必要がある。
【0024】
洗浄水の量は、洗浄装置により異なるが、通常、石こうスラリー濃度を10〜30重量%に維持する量である。洗浄水量を多くして石こうスラリー濃度を低くすることにより、大きな洗浄効率が期待できるが、後工程である洗浄排水工程も含めて装置が大きくなり、また、石こうの溶解量も大きくなるので好ましくない。一方、洗浄水量が少なすぎると、洗浄水中のフッ素濃度が高くなり過ぎてフッ素の溶出速度が低下するばかりでなく、石こうスラリー濃度が高くなりすぎ装置に過大な負荷が掛かるので好ましくない。
【0025】
フッ素含有石こうの洗浄装置には、特に制限はなく、攪拌洗浄装置、流動洗浄装置など公知の洗浄装置を使用することができる。これらの洗浄装置は単段の洗浄装置であってもよく、多段洗浄装置であってもよい。多段洗浄装置を用いる場合、アルミニウム化合物を各段に分割して添加してもよい。これらの洗浄装置は、酸性条件下で耐食性を有するステンレス製、ゴムライニング製などであることが好ましい。
【0026】
前記方法で洗浄した石こうスラリーを、石こう分離機を使用して石こうとフッ素含有洗浄排水とに分離することにより、フッ素の除去された石こうが回収される。前記石こう分離機は、石こうと洗浄水とを分離できる分離機であれば特に制限はなく、通常、遠心分離機が使用される。特に連続往復動(エッシャーウイス)型遠心分離機が好適に使用される。
【0027】
また、石こうを回収した後の洗浄排水には、溶出したフッ素が含まれているので、これを次の排水処理工程S2において除去する。まず、中和工程S21においてフッ素含有洗浄排水に消石灰などのアルカリを添加してpHを6以上、好ましくは7〜8、さらに好ましくは7の中性に調整して中和する。次に、凝集沈澱工程S22において、中和されたフッ素含有洗浄排水に高分子凝集剤を加えてフッ素含有汚泥を凝集沈殿させる。フッ素含有洗浄排水中のアルミニウム分が水酸化アルミニウム(Al(OH)3)のフロックを形成させ、該フロックにフッ素を吸着させる。このフッ素を吸着したフロックを洗浄排水から分離することにより、洗浄排水からフッ素が除去される。脱水工程S23では、凝集沈澱を濃縮し脱水濾過してフッ素含有汚泥の脱水ケーキを得る。さらに、フッ素が除去された排水は浄化工程S24において濾過器を通して浄化水とする。これによって、含有フッ素を除去した無害の水として放流あるいは洗浄水としてリサイクルすることができる。
【0028】
中和のためのアルカリとしては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、それらの炭酸塩、水酸化アンモニウムなどを使用することができる。特に、中和によって水への溶解度が小さい金属フッ化物を生成するアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩、たとえば、水酸化カルシウム(石灰水)または炭酸カルシウム(消石灰)が好ましく使用される。
【0029】
前記フッ素を吸着した水酸化アルミニウムフロックは、該フロックを含む洗浄排水に高分子凝集剤を加えて凝集させ、静置して沈澱させる凝集沈澱工程、および凝集した沈澱を集めて濃縮し、脱水濾過する濃縮脱水工程を経て、洗浄排水からフッ素を含有する脱水ケーキとして分離される。この脱水ケーキ中のフッ素は容易には溶出しないので、脱水ケーキは廃棄物とすることができる。また、フッ素ガラス製造用原料として利用できる可能性がある。
【0030】
一方、凝集沈澱工程および濃縮脱水工程からの排水は、それを濾過して固形分を除去する工程を経て、洗浄水としてリサイクルされるか、もしくは放流される。
【0031】
このように本発明においては、フッ素含有石こうをアルミニウム化合物を溶解した洗浄水でpH3.9〜5.5の条件下に洗浄することにより、酸(H+)とアルミニウムイオン(Al3+)とが相乗的に作用し、石こう中にフッ化カルシウム(CaF2)の形で固定されているフッ素を引き抜いてフッ素イオン(F−)として遊離させる。さらにアルミニウムイオン(Al3+)が遊離したフッ素イオン(F−)を捕捉してアルミニウムフルオロ錯イオン(AlFn m(ここに、nは1〜6の整数、mは2+〜3−である)で表される)を生成して安定な形で洗浄水中に溶出させる。その結果、単に水のみでフッ素含有石こうを洗浄した場合に比較して10倍以上の石こう中のフッ素除去率が得られる。したがって、フッ素が除去された石こう材料として回収でき、これを有効利用した石こうボードなどの建築材料が安定型廃棄物として廃棄されても、石こう中に残留するフッ素が雨水などで溶出されたとしても地下水環境基準を超える量に達することがない。
【0032】
他方、洗浄排水中に溶出したフッ素は、洗浄排水中にアルミニウム分を含むことから、それを単に中和することにより水酸化アルミニウムのフロックが生成され、該フロックに洗浄排水中のフッ素が吸着され固定される。その結果、フッ素が吸着固定された水酸化アルミニウムフロックを、公知の手段たとえば凝集沈殿などの方法で分離除去することにより、フッ素が除去された放流可能な水質の排水が得られる。この排水は、勿論洗浄水にリサイクルして使用することができる。しかも、凝集沈殿物には石こうは含まれずフッ素だけであるので、脱水ケーキ量が少量となり、廃棄物量が減容化できる。
【0033】
【実施例】
本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明する。
実施例1および比較例1
表1に示す排煙脱硫装置からのフッ素含有率の異なる回収石こう試料A〜Sの各60gに蒸留水600mlと硫酸バンド0.6gまたは3.0g(回収石こうの1重量%および5重量%)を添加し、6時間振とうして回収石こうを洗浄した。また、比較のために、前記回収石こう試料A〜Sの各60gに蒸留水600mlのみを添加し、6時間振とうして回収石こうを洗浄した。石こうを濾過分離し、濾液中のフッ素濃度を水蒸気蒸留分離−ランタンアリザリンコンプレキソン吸光光度法により測定した。なお、洗浄中の洗浄水のpH調整は行わなかった。尚、試料A〜Sの脱硫石こう中のフッ素、カルシウム、硫酸塩及び不純物の含有量と使用炭中のフッ素含有量を表2に示す。
【0034】
洗浄結果を表3に示す。表3には、水洗いだけの比較例のフッ素除去率、硫酸バンド1重量%含有時のフッ素除去率、硫酸バンド5重量%含有時のフッ素除去率、硫酸バンド5重量%含有時の洗浄水のpHを示す。また、試験結果を図2に洗浄水中のアルミニウムイオン濃度とフッ素除去率との関係で示す。ここで、図2の横軸は、洗浄水に含まれるアルミニウムイオン濃度を示すが、石こう中には少量のアルミニウム(<4mg/L)が不純物として含まれるので、それが洗浄水に溶け出すことから、硫酸アルミニウムを添加しなくてもアルミニウムイオンが含まれる。また、縦軸のF除去率は、石こう中の全フッ素量に対する除去されたフッ素量の割合である。この結果は、1回の洗浄による除去率である。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
表3に示したように、硫酸バンド5重量%添加後のpHが6.4の試料Dにおいては、洗浄水中のアルミニウムイオンが水酸化アルミニウムとなって沈殿し、フッ素イオンと錯体を生成できないため、フッ素除去率が水洗浄のみの場合と同程度であった。それ以外の試料A,B,G,H,L,M,Q,R,SはいずれもpHが3.9〜5.5の弱酸性の範囲にあることから、アルミニウムイオンとフッ素イオンとがフルオロ錯体(主としてAlF2 +とAlF3 0)を生成し、CaF2の溶解度積(Ksp=一定値)によって規定されるフッ素イオンの量以上のフッ素を洗浄水中に溶出させ、フッ素除去率を大幅(比較例の10倍以上)に改善された大きなフッ素除去率が得られた。
【0039】
【発明の効果】
本発明においては、フッ素含有石こうをアルミニウムイオンを含む洗浄水、例えばアルミニウム化合物を含有する洗浄水でpH3.9〜5.5の条件下で洗浄することにより、フッ素含有石こう中のフッ素をアルミニウムイオンとの錯体を生成させてCaF2の溶解度積で規定されるフッ素イオンの量以上に溶出させることで高効率で除去可能とする。その結果、たとえ安定型廃棄物として廃棄された場合にも、環境に有害なフッ素を溶出する怖れの少ない安全な回収石こうを建築材料等として提供することができる。
【0040】
しかも、不純物としてのアルミニウム化合物を石こう材料中に大量に含むことがなく、廃水処理において生じる凝集沈殿物の脱水ケーキだけが廃棄物として生じるので、全体として廃棄物量が低減できる。
【0041】
また、フッ素含有洗浄排水中のフッ素も中和処理するだけで、放流可能な程度まで除去することができる。すなわち、この洗浄排水は、洗浄水としてリサイクルできることを意味する。しかも、凝集沈殿物には石こうは含まれずフッ素だけであるので、脱水ケーキ量が少量となり、廃棄物量が減容化できる。
【0042】
上記したように、本発明はフッ素含有石こう中のフッ素の除去方法を提供するものであり、その産業的意義、特に石炭燃焼路の排煙脱硫分野や建築材料分野における意義は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の石こう中のフッ素の除去方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施例で得られた洗浄水中のアルミニウムイオン濃度とフッ素除去率との関係を示すグラフである。
Claims (5)
- アルミニウムイオンを含む洗浄水のpHを3.9〜5.5の範囲に維持しながら、前記洗浄水によりフッ素含有石こうを洗浄することを特徴とする石こう中のフッ素の除去方法。
- アルミニウム化合物を溶解した洗浄水のpHを3.9〜5.5の範囲に維持しながら、前記洗浄水によりフッ素含有石こうを洗浄することを特徴とする石こう中のフッ素の除去方法。
- 前記アルミニウム化合物が硫酸バンド(Al2(SO4)3・18H2O)である請求項2に記載の石こう中のフッ素の除去方法。
- 前記洗浄水のpHを4〜5の範囲に維持する請求項1または2に記載の石こう中のフッ素の除去方法。
- 請求項1または2記載の石こう中のフッ素の除去方法において、洗浄された石こうを前記洗浄水中から分離回収した後の前記洗浄排水を中和し、中和された前記洗浄排水に凝集剤を加えてフッ素含有汚泥を凝集沈澱させると共に、前記凝集沈澱を濃縮し脱水濾過してフッ素含有汚泥の脱水ケーキを得る一方、フッ素が除去された前記洗浄排水を濾過して放流もしくは洗浄水としてリサイクルすることを特徴とする石こう中のフッ素の除去方法。
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