JP6975406B2 - アルミニウム溶解量の制御方法と該方法に基づく石膏の製造方法 - Google Patents
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Description
〔1〕フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させるときのアルミニウム溶解量を制御する方法であって、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、次式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、該形成率Sによってアルミニウム溶解量を制御することを特徴とする方法。
S=(C0−C1)/C0×100・・・(1)
〔2〕上記Al−F錯イオンの形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御する上記[1]に記載するアルミニウム溶解量の制御方法。
〔3〕フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させた後にカルシウム化合物を添加して石膏を生成させる方法において、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、上記式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、アルミニウム溶解量を制御しつつ、カルシウム化合物を添加して石膏を生成させることを特徴とする石膏の製造方法。
〔4〕上記Al−F錯イオンの形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御する上記[3]に記載する石膏の製造方法。
本発明は、フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させてAl−F錯イオンを生成させる処理方法において、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、次式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、該形成率Sによってアルミニウム溶解量を制御することを特徴とする方法である。
S=(C0−C1)/C0×100・・・(1)
S=(C0−C1)/C0×100・・・(1)
銅製錬所の硫酸酸性廃水を原水とし、該原水にアルミニウムを一定量添加して溶存させる試験を実施し、各アルミニウム添加量下における溶液について、フッ化物イオン電極によるフッ化物イオン濃度を測定した。該原水のアルミニウム添加前の初期状態は、フッ素濃度2.91g/L、Al濃度0.028g/Lであった。原水中の全Alのモル濃度と全Fのモル濃度の比、Al/Fモル濃度比は0.01以下であるので、Al/Fモル濃度比を実質的に0とした。このアルミニウム添加前の原水をウォーターバスで40℃に加温し、Al/Fモル濃度比が0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0になるように、金属アルミニウム(三菱アルミニウム製、純度99.5%以上、厚さ20μm、幅2mm、長さ4mm裁断物)を該廃水に添加し、60分撹拌してアルミニウムを溶解し、この溶解処理後に溶液を濾過してアルミ溶解液を得た。このアルミ溶解液をイオン交換水で500倍に希釈した後、イオン強度調整剤(Total Ion Strength Adjustment Buffer、関東化学製品、TISAB(1)、NaCl5.5%、クエン酸0.1%)を5v/v%添加した後に、フッ化物イオン電極を用い検量線法によりフッ化物イオンF−の濃度を測定した。
一方、アルミニウムを全く添加していない原水について、同様にフッ化物イオン電極を用いてフッ化物イオンF−の濃度を測定し、この測定値(2.91g/L)をAl/F=0におけるフッ化物イオンF−の初期濃度値とした。
これらの測定値に基づいてAl−F錯イオン形成率を算出した。このAl−F錯イオン形成率(%)は、(2.91−フッ化物イオンF−測定濃度値)/2.91×100として算出した。この結果を図1に示した。
実施例1のアルミニウム溶解液について、液中にAl−F錯イオンが溶存した状態であり、該アルミニウム溶解液から回収した石膏にはフッ素が殆ど含まれないことを確認する試験を行った。まず、実施例1のアルミニウム溶解液について、液中に銅やヒ素が溶存していると、アルミニウムの溶解によって銅やヒ素が還元されて澱物を生じるので、これらを固液分離して除去した後に、炭酸カルシウムを添加して石膏を生成させ、固液分離して石膏を回収した。石膏の製造時のpHは全て2.0に調整した。この石膏に含まれるフッ素濃度は石膏試料をアルカリ融解処理後にイオンクロマトグラフィによって測定して定量した。この結果を表1に示した。
表1に示すように、Al/Fモル濃度比=0.4の条件でアルミニウムを溶解させた場合にはAl−F錯イオン形成率が68%以上になり、石膏中のフッ素濃度は0.20%未満であって十分にフッ素を含まない石膏を回収することができた。一方、Al/Fモル濃度比=0.8以上の条件では、Al−F錯イオン率は90%を超えるので、フッ素を殆ど含まない石膏を回収することができたが、アルミニウムの添加量が過剰であるためコスト高になる。さらに過剰のアルミニウムを添加した場合、石膏を回収した後の溶液を中和処理する際に発生する澱物の量が多くなり、廃水処理費用が嵩むので好ましくない。
銅製錬所の硫酸酸性廃水を原水としてその一部を、流量1L/minの2系列に分流させ、そのうち1系統においてアルミニウムの添加処理を実施した。さらにアルミニウムを用いた石膏製造を行った。アルミニウムの添加条件については、添加量以外は実施例1と同条件として実施した。アルミニウムの添加量については、アルミニウム添加前のフッ化物イオン濃度C0とアルミニウム添加後のフッ化物イオン濃度C1をフッ化物イオン電極によって測定し、式(1)に従いAl−F錯イオン形成率が68%以上〜90%以下の範囲になるように2時間ごとに添加量を調整した。なお、フッ素濃度の測定はイオン強度調整などの調整のために約30分掛かるので、フッ化物イオン電極による濃度値に応じてアルミニウム添加量を変更するのは、各時間間隔2時間のうち最初に溶液を分取し、各30分後にフッ化物イオン電極による濃度値を求めてアルミニウム添加量を決め、その後、各時間間隔で所定量のアルミニウムを連続的に添加した。最初の経過時間0〜2.5時間のアルミニウム添加量は予めフッ化物イオン電極による濃度値を求めてアルミニウム投入量を決め、それ以降は2時間ごとにフッ化物イオン電極による濃度値に応じてアルミニウム添加量を変更した。
アルミニウム溶解後の溶液について連続的に固形分を固液分離した後に、2時間おきに分取し、炭酸カルシウムを添加して石膏を生成させ、固液分離して石膏を回収した。石膏の製造時のpHは全て2.0に調整した。この石膏に含まれるフッ素濃度について、石膏試料をアルカリ融解処理後にイオンクロマトグラフィによって測定し定量した。この結果を表2に示した。表2に示すように、アルミニウム溶解前のフッ化物イオン電極測定値、すなわち廃水原水中のフッ素濃度は時間ごとに変動していく。そこでAl−F錯イオン形成率68%以上〜90%以下を指標としてアルミニウム添加量を調整することによって安定してフッ素含有濃度0.20%以下の石膏製造を達成することができた。
Al−F錯イオン形成率Sの式、S=(C0−C1)/C0×100において、C0は各経過時間の流入液中のフッ化物イオン濃度測定値(アルミニウム添加前のフッ化物イオン濃度測定値)、C1は各経過時間後のフッ化物イオン濃度測定値(アルミニウム添加後のフッ化物イオン濃度測定値)である。
石膏中のフッ素含有濃度の平均値は0.12%、標準偏差は0.02%であった。Al−F錯イオン形成率を68%以上〜90%以下に管理する指標は実施例1、2から求めたフッ素含有硫酸酸性廃水中フッ化物イオン濃度が2.91g/Lの条件で求めた管理指標である。表2からわかるように、Al−F錯イオン形成率を68%以上〜90%以下にする管理指標に基づいて製造した石膏は、フッ素含有硫酸酸性廃水中のフッ化物イオン濃度が変動しても、安定してフッ素含有濃度0.20%以下の石膏を製造できることが確認された。このように、Al−F錯イオン形成率を石膏中のフッ素含有量の直接的な管理指標として用いているので、フッ素含有硫酸酸性廃水中のフッ化物イオン濃度が変動しても、石膏中のフッ素濃度が有効に管理されている。
銅製錬所の硫酸酸性廃水について、実施例3において2系統に分流して使用した残りの1系統について、アルミニウム添加量を一定にして連続的にアルミニウムの溶解処理を行った。さらにアルミニウム溶解液を用いた石膏製造試験を行った。アルミニウムの溶解処理条件については,アルミニウム添加量以外は実施例1と同条件にして実施した。アルミニウムの添加量については,実施例3の試験開始時のアルミニウム添加量と同一とし、試験中はアルミニウム添加量を変動調整せず一定とした。フッ素濃度の測定については実施例3と同様である。アルミニウム溶解後の溶液については連続的に固形分を固液分離した後に2時間おきに分取し,炭酸カルシウムを添加して石膏を生成させ、固液分離して石膏を回収した。石膏の製造時のpHは全て2.0に調整した。回収した石膏に含まれるフッ素濃度は、石膏試料をアルカリ融解処理後にイオンクロマトグラフィによって測定し定量した。この結果を表3に示した。表3に示すように、アルミニウム溶解前のフッ化物イオン濃度の測定値は時間ごとに変動する一方であり、アルミニウム添加量は一定であるため、Al−F錯イオン形成率も時間ごとに大きく変動している。とくに廃水中のフッ素濃度が上昇した際にはアルミニウムが不足してAl−F錯イオン形成率が68%未満になった。このような条件ではフッ素の安定な錯イオン化が不十分であり、製造された石膏中のフッ素濃度は0.20%を超えた。この結果からも、安定してフッ素含有濃度0.20%以下の石膏を製造するためにはAl−F錯イオン形成率を68%〜90%に管理することが必要であることが確認された。
石膏中のフッ素含有濃度の平均値は0.18%、標準偏差は0.08%であった。実施例3に比して、石膏中のフッ素含有濃度の平均値は0.06%高く、標準偏差は0.06%高い。このように、Al−F錯イオン形成率を68%〜90%に管理して石膏を製造することは、石膏のフッ素濃度を0.20%以下に抑制するだけでなく、石膏中のフッ素濃度のバラツキを少なくすることに資する。
Claims (4)
- フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させるときのアルミニウム溶解量を制御する方法であって、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、次式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、該形成率Sによってアルミニウム溶解量を制御することを特徴とする方法。
S=(C0−C1)/C0×100・・・(1)
- 上記Al−F錯イオンの形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御する請求項1に記載するアルミニウム溶解量の制御方法。
- フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させた後にカルシウム化合物を添加して石膏を生成させる方法において、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、上記式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、アルミニウム溶解量を制御しつつ、カルシウム化合物を添加して石膏を生成させることを特徴とする石膏の製造方法。
- 上記Al−F錯イオンの形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御する請求項3に記載する石膏の製造方法。
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