JP2019142731A - アルミニウム溶解量の制御方法と該方法に基づく石膏の製造方法 - Google Patents

アルミニウム溶解量の制御方法と該方法に基づく石膏の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミニウムの定量方法は使用機器が多く、また吸光度に基づく測定方法は吸光波長の処理が煩雑であり、アルミニウム濃度が把握されてもこれが全てAl−F錯イオンを形成しているとは限らないと云う問題がある。【解決手段】フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させるときのアルミニウム溶解量を制御する方法であって、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、次式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、該形成率Sによってアルミニウム溶解量を制御することを特徴とする方法、および該アルミニウム溶解量の制御方法に基づく石膏の製造方法。S=(C0−C1)/C0×100・・・(1)【選択図】図1

Description

本発明は、銅製錬所廃水のようにフッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させる際に、フッ化物イオン電極を用いて測定したAl−F錯イオン形成率Sに基づいてアルミニウム溶解量を制御する方法に関し、さらにフッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させた後にカルシウム化合物を添加して石膏を生成させる方法において、該アルミニウム溶解量の制御方法に基づいてフッ素含有量の少ない石膏を製造する方法に関する。
銅製錬所廃水のようなフッ素を含む硫酸酸性廃水からフッ素濃度が低い石膏を回収するには、廃水にアルミニウムを溶解させてAl−F錯イオンを形成させることによって、フッ素を液中に安定的に溶存させた状態で石膏を回収すればフッ素濃度が大幅に低い石膏を得ることができる。
しかし、水中のAl−F錯イオンの形成状態を正確に把握する方法は必ずしも容易ではなかった。例えば、従来は、液中のフッ素濃度とアルミニウム濃度の両方を定量分析し、その化学平衡関係に基づいてAl−F錯イオンの形成を間接的に推測しており、測定に時間がかっている。しかも、従来のアルミニウム濃度の測定には種々の課題があった。
例えば、JIS規格「JIS K 0102工場排水試験方法 58.アルミニウム(Al)」には、アルミニウムの定量法として、キノリノール吸光光度法、フレーム原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分光分析法またはICP質量分析法が掲げられている(非特許文献1)。これらの測定法は、厳密に排水中のアルミニウム濃度を測定できるが、溶液の前処理が必要であり、また比較的規模の大きい分析装置が用いられるので、初期投資やランニングコストが高くなり、また実際の水処理現場における測定には手間が大きくかかる問題がある。
特許第5463243号公報(特許文献1)には、溶解性アルミニウムが、pH4.6〜5.6の領域で、ECR試薬(リオクロムシアニンレッド:C2315NaS)と呈色反応を生じることを利用し、その吸光度を求めてアルミニウムを定量する測定装置が記載されている。また、特開2012−11287号公報(特許文献2)には、検水中のシリカ系スケールの要因となるアルミニウムの濃度を測定する方法であって、7−ヨード−8−ヒドロキシキノリン−5−スルホン酸と、緩衝液との組み合わせからなる反応試薬を検水に添加した後、アルミニウム分析波長において測定した吸光度に基づいてアルミニウム濃度を測定する方法が記載されている。
これらの吸光光度測定法では、鉄などがアルミニウムの吸光波長と類似しているため鉄寄与分の吸光度をアルミニウム分析波長の吸光度から差し引く煩雑な操作が必要になる。また、鉄以外にも同様の性質を示す元素が存在していると、アルミニウム溶解量が過剰に評価されるなどの問題がある。さらに、これらの装置は各種ポンプや撹拌槽、吸光光度測定装置などの多数の機器を備えているため、設備導入の費用や修繕などのランニングコストが高く、安価に実施することができない。フッ素のような腐食性の物質を含む場合には、機器の腐食や摩耗などを回避するため、簡素化された装置や方法が好ましい。
特許第3181658号公報(特許文献3)には、アルミニウムを含む金属材料を酸性化成処理する方法において、アルミニウムイオンなどを含有する水溶液を滴定液とし、フッ素イオン電極を指示電極として、pH4未満のフッ素含有酸性化成処理液をpH調整せずに電位差滴定し、フッ素イオン電極の電位曲線の変曲点までの滴定液滴下量を求める有効フッ素濃度の定量方法が記載されている。この定量方法は、酸性化成処理における液中の有効フッ素濃度を定量するものであり、処理液に濃度既知のアルミニウム溶液を滴定して独自の経験式でポイント換算して有効フッ素濃度を推計する方法であるので、適用範囲が狭く、酸性化成処理のみに適する経験的な有効フッ素濃度の定量に限られる。
また、アルミニウムの全溶存濃度が判明しても、このアルミニウムがAl−F錯イオンを形成していることを保証するものではなかった。たとえば、硫酸アルミニウムや塩化アルミニウムなど溶液の形態で添加供給した場合には、添加剤の溶液中でAl−SO錯イオンやAl−Cl錯イオンを形成して安定しており、Al−F錯イオンの形成には寄与しない可能性がある。
特許第5463243号公報 特開2012−11287号公報 特許第3181658号公報
JIS K 0102工場排水試験方法 58.アルミニウム(Al)
以上のように、従来のアルミニウムの定量方法は設備機器が多いため容易には実施できず、また吸光度に基づく測定方法は吸光波長の処理が煩雑であるなどの問題があった。さらに、アルミニウム濃度が把握されてもこれが全てAl−F錯イオンを形成しているとは限らないと云う問題もある。
本発明は、これら従来の問題を解決したものであり、フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させる際に、フッ化物イオン電極を用いて測定したAl−F錯イオン形成率Sに基づいてアルミニウム溶解量を制御する方法を提供する。さらにフッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させた後にカルシウム化合物を添加して石膏を生成させる方法において、該アルミニウム溶解量の制御方法に基づいてフッ素含有量の少ない石膏を製造する方法を提供する。
本発明は、以下の構成からなるアルミニウム溶解量の制御方法と該方法に基づく石膏の製造方法に関する。
〔1〕フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させるときのアルミニウム溶解量を制御する方法であって、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、次式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、該形成率Sによってアルミニウム溶解量を制御することを特徴とする方法。
S=(C0−C1)/C0×100・・・(1)
〔2〕上記Al−F錯イオンの形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御する上記[1]に記載するアルミニウム溶解量の制御方法。
〔3〕フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させた後にカルシウム化合物を添加して石膏を生成させる方法において、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、上記式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、アルミニウム溶解量を制御しつつ、カルシウム化合物を添加して石膏を生成させることを特徴とする石膏の製造方法。
〔4〕上記Al−F錯イオンの形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御する上記[3]に記載する石膏の製造方法。
〔具体的な説明〕
本発明は、フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させてAl−F錯イオンを生成させる処理方法において、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、次式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、該形成率Sによってアルミニウム溶解量を制御することを特徴とする方法である。
S=(C0−C1)/C0×100・・・(1)
また、本発明は、フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させた後にカルシウム化合物を添加して石膏を生成させる方法において、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、上記式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、該形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム溶解量を制御しつつ、カルシウム化合物を添加して石膏を生成させることを特徴とする石膏の製造方法である。
フッ化物イオン電極は、フッ素電極、フッ素複合電極、フッ素イオン電極などとも呼ばれ、フッ化ランタン単結晶を感応膜として用いている電極である。フッ化物イオン電極は、溶液中のフッ化物イオンFのみに選択的に応答して電極電位を出力し、この電極電位から検量線法によりフッ化物イオンFの濃度を測定することができる。
フッ化物イオン電極が応答するのは全フッ素化学種のうち、フッ化物イオンFのみであり、AlF2+、AlF 、AlF 、FeF2+、FeF 、FeF 、SiF 2−などの錯イオンについては応答しない。従って、アルミニウムを溶解させて液中のフッ素と反応させ、Al−F錯イオン(AlF2+、AlF 、AlF )を生成させたときに、生成したこれらのAl−F錯イオンには応答しないので、錯イオン生成反応後の液中に残るフッ化物イオンF濃度を把握することができる。
また、これらフッ素の種々の錯イオンにおいて、Al−F錯イオンはもっとも強固な錯イオンである。たとえば、水による希釈、イオン強度調整剤やpH緩衝剤の添加、クエン酸などのマスキング剤添加などの処理によってFe−F錯イオンやSi−F錯イオンは容易に解離しフッ化物イオンFを遊離するのに対し、Al−F錯イオンはこれらの操作によっては解離しない。Al−F錯イオンのこのような選択性を利用すれば、フッ化物イオン電極によって選択的に液中のフッ化物イオンF濃度を測定すれば、Al−F錯イオンの形成状態を把握することができる。
特に銅製錬所の廃水を原水として、これにアルミニウムを溶解させる場合、溶解処理前には、アルミニウムは殆ど溶存していないので、このようなアルミニウムを殆ど含まない溶液に対して、水希釈してイオン強度調整剤やマスキング剤を添加した後に、フッ化物イオン電極を用いてフッ化物イオン濃度を測定すれば、アルミニウム溶解前のフッ化物イオンFの測定濃度C0と、アルミニウム溶解後のフッ化物イオンFの測定濃度C1に基づき、次式(1)に基づいて、Al−F錯イオンの形成率Sを把握することができる。
S=(C0−C1)/C0×100・・・(1)
式(1)において、(C0−C1)はアルミニウムの溶解によるフッ化物イオンF濃度の減少量であり、この減少量に相当する量のAl−F錯イオンが生成したことになる。なお、アルミニウム溶解前のフッ化物イオンFの測定濃度C0は廃水原水の組成によってある程度変動する値であるため、(C0−C1)も廃水原水によって大きく変動しやすい。そのためAl−F錯イオンの形成については、(C0−C1)をC0で除して無次元の割合であるAl−F錯イオンの形成率Sとして表わせば種々のフッ素濃度域の廃水に対して比較や評価が容易になる。
フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させてAl−F錯イオンを生成させることによってアルミニウムとフッ素を安定に液中に溶存させる処理方法において、上記Al−F錯イオンの形成率Sに基づいてアルミニウム溶解量を制御することができる。例えば、Al−F錯イオンの形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御すれば、大部分のフッ素がAl−F錯イオンを形成して液中に溶存するようになる。
上記アルミニウム溶解量の制御方法は、フッ素含有量の少ない石膏の製造方法に好適に用いることができる。フッ素および重金属を含有する酸性廃液にアルミニウムを溶解して液中のフッ素をAl−F錯イオンにして安定に溶存させると共に液中の重金属を還元澱物にして分離した後に、酸性の液性下でカルシウム化合物を添加して石膏を生成させて分離すれば、フッ素は液中に残るので、フッ素を殆ど含まない石膏を回収することができる。
例えば、上記Al−F錯イオンの形成率Sが68%未満では、大部分のフッ素がAl−F錯イオンを形成しないので、石膏のフッ素濃度を0.02%未満にすることは難しい。一方、上記Al−F錯イオンの形成率Sが90%を超えるとアルミニウム溶解量が過剰になる。従って、上記Al−F錯イオンの形成率Sは68%以上〜90%以下を基準に制御するのが好ましく、アルミニウム溶解量の過剰を抑えるためには68%以上〜80%以下であることがさらに好ましい。
本発明の方法は、アルミニウム濃度を直接に測定する方法ではなく、フッ化物イオン電極を用いて、アルミニウム溶解前後のフッ化物イオンF濃度を測定することによって、Al−F錯イオン形成率Sを把握し、該形成率Sに基づいてアルミニウム溶解量を制御するので、アルミニウムの溶解量を簡便に制御することができる。従って、本発明の方法は、アルミニウムの添加形態を問わない。例えば、溶液(硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、その他のアルミニウム含有廃水など)、固体(金属アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、その他のアルミニウム含有固体廃棄物など)の状態では、それぞれアルミニウムの溶解速度が大きく変動し、あるいは供給から溶解まで時間差が生じたりしうる。そのためこれらの添加状態の供給量から実際の水中のアルミニウム濃度を推定することは難しい。しかし、本発明の方法は、Al−F錯イオン形成率Sを利用するのであり、アルミニウム濃度を直接に測定するのではないので、アルミニウムの添加形態に依存せずに正確かつ簡便にアルミ二ウム溶解量を制御することができる。
本発明の方法は大型の分析装置等を必要とせず、廃水処理現場においてアルミニウムによるAl−F錯イオンの形成状態を迅速かつ簡便に把握することができる。これにより、安価かつ安定的にアルミニウム供給量を制御することができ、アルミニウム溶解に伴う各種反応や、石膏製造においてはアルミニウムの溶解工程を安定に操業することができる。
また、アルミニウムの過剰な溶解や過剰な錯イオン化を抑制し、適切な溶解量を管理することができる。アルミニウムの過剰溶解はアルミニウム添加費用の増大に直結することから、本発明の方法によってそのようなコストの増大を避けることができる。具体的にはAl−F錯イオンの形成率Sが90%を超えるとアルミニウムが過剰に添加されることになるので、Al−F錯イオンの形成率Sが90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御すれば、アルミニウムの過剰添加を避けてフッ素を殆ど含まない石膏を製造することができる。
フッ化物イオンF濃度の測定値に対するAl−F錯イオン形成の割合を示すグラフ。
以下に本発明の実施例を示す。フッ化物イオン電極は堀場製作所製のフッ化物イオン電極 8010-10Cを用いた。試料液は銅製錬所廃水を原水とした。なお、濃度の%は質量%である。
〔実施例1〕
銅製錬所の硫酸酸性廃水を原水とし、該原水にアルミニウムを一定量添加して溶存させる試験を実施し、各アルミニウム添加量下における溶液について、フッ化物イオン電極によるフッ化物イオン濃度を測定した。該原水のアルミニウム添加前の初期状態は、フッ素濃度2.91g/L、Al濃度0.028g/Lであった。原水中の全Alのモル濃度と全Fのモル濃度の比、Al/Fモル濃度比は0.01以下であるので、Al/Fモル濃度比を実質的に0とした。このアルミニウム添加前の原水をウォーターバスで40℃に加温し、Al/Fモル濃度比が0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0になるように、金属アルミニウム(三菱アルミニウム製、純度99.5%以上、厚さ20μm、幅2mm、長さ4mm裁断物)を該廃水に添加し、60分撹拌してアルミニウムを溶解し、この溶解処理後に溶液を濾過してアルミ溶解液を得た。このアルミ溶解液をイオン交換水で500倍に希釈した後、イオン強度調整剤(Total Ion Strength Adjustment Buffer、関東化学製品、TISAB(1)、NaCl5.5%、クエン酸0.1%)を5v/v%添加した後に、フッ化物イオン電極を用い検量線法によりフッ化物イオンFの濃度を測定した。
一方、アルミニウムを全く添加していない原水について、同様にフッ化物イオン電極を用いてフッ化物イオンFの濃度を測定し、この測定値(2.91g/L)をAl/F=0におけるフッ化物イオンFの初期濃度値とした。
これらの測定値に基づいてAl−F錯イオン形成率を算出した。このAl−F錯イオン形成率(%)は、(2.91−フッ化物イオンF測定濃度値)/2.91×100として算出した。この結果を図1に示した。
表1および図1に示すように、アルミニウム溶解量の増大に伴ってフッ化物イオンFの濃度が減少している。これは溶存していたフッ化物イオンFが添加されたAlと反応し、Al−F錯イオン形成が進行したためである。このようにアルミニウム溶解処理前後のフッ化物イオン電極の測定値を確認することによって、Alの溶解やAl−F錯イオンの形成が進行していることを容易に確認することができる。
Figure 2019142731
〔実施例2〕
実施例1のアルミニウム溶解液について、液中にAl−F錯イオンが溶存した状態であり、該アルミニウム溶解液から回収した石膏にはフッ素が殆ど含まれないことを確認する試験を行った。まず、実施例1のアルミニウム溶解液について、液中に銅やヒ素が溶存していると、アルミニウムの溶解によって銅やヒ素が還元されて澱物を生じるので、これらを固液分離して除去した後に、炭酸カルシウムを添加して石膏を生成させ、固液分離して石膏を回収した。石膏の製造時のpHは全て2.0に調整した。この石膏に含まれるフッ素濃度は石膏試料をアルカリ融解処理後にイオンクロマトグラフィによって測定して定量した。この結果を表1に示した。
表1に示すように、Al/Fモル濃度比=0.4の条件でアルミニウムを溶解させた場合にはAl−F錯イオン形成率が68%以上になり、石膏中のフッ素濃度は0.20%未満であって十分にフッ素を含まない石膏を回収することができた。一方、Al/Fモル濃度比=0.8以上の条件では、Al−F錯イオン率は90%を超えるので、フッ素を殆ど含まない石膏を回収することができたが、アルミニウムの添加量が過剰であるためコスト高になる。さらに過剰のアルミニウムを添加した場合、石膏を回収した後の溶液を中和処理する際に発生する澱物の量が多くなり、廃水処理費用が嵩むので好ましくない。
〔実施例3〕
銅製錬所の硫酸酸性廃水を原水としてその一部を、流量1L/minの2系列に分流させ、そのうち1系統においてアルミニウムの添加処理を実施した。さらにアルミニウムを用いた石膏製造を行った。アルミニウムの添加条件については、添加量以外は実施例1と同条件として実施した。アルミニウムの添加量については、アルミニウム添加前のフッ化物イオン濃度C0とアルミニウム添加後のフッ化物イオン濃度C1をフッ化物イオン電極によって測定し、式(1)に従いAl−F錯イオン形成率が68%以上〜90%以下の範囲になるように2時間ごとに添加量を調整した。なお、フッ素濃度の測定はイオン強度調整などの調整のために約30分掛かるので、フッ化物イオン電極による濃度値に応じてアルミニウム添加量を変更するのは、各時間間隔2時間のうち最初に溶液を分取し、各30分後にフッ化物イオン電極による濃度値を求めてアルミニウム添加量を決め、その後、各時間間隔で所定量のアルミニウムを連続的に添加した。最初の経過時間0〜2.5時間のアルミニウム添加量は予めフッ化物イオン電極による濃度値を求めてアルミニウム投入量を決め、それ以降は2時間ごとにフッ化物イオン電極による濃度値に応じてアルミニウム添加量を変更した。
アルミニウム溶解後の溶液について連続的に固形分を固液分離した後に、2時間おきに分取し、炭酸カルシウムを添加して石膏を生成させ、固液分離して石膏を回収した。石膏の製造時のpHは全て2.0に調整した。この石膏に含まれるフッ素濃度について、石膏試料をアルカリ融解処理後にイオンクロマトグラフィによって測定し定量した。この結果を表2に示した。表2に示すように、アルミニウム溶解前のフッ化物イオン電極測定値、すなわち廃水原水中のフッ素濃度は時間ごとに変動していく。そこでAl−F錯イオン形成率68%以上〜90%以下を指標としてアルミニウム添加量を調整することによって安定してフッ素含有濃度0.20%以下の石膏製造を達成することができた。
Al−F錯イオン形成率Sの式、S=(C0−C1)/C0×100において、C0は各経過時間の流入液中のフッ化物イオン濃度測定値(アルミニウム添加前のフッ化物イオン濃度測定値)、C1は各経過時間後のフッ化物イオン濃度測定値(アルミニウム添加後のフッ化物イオン濃度測定値)である。
石膏中のフッ素含有濃度の平均値は0.12%、標準偏差は0.02%であった。Al−F錯イオン形成率を68%以上〜90%以下に管理する指標は実施例1、2から求めたフッ素含有硫酸酸性廃水中フッ化物イオン濃度が2.91g/Lの条件で求めた管理指標である。表2からわかるように、Al−F錯イオン形成率を68%以上〜90%以下にする管理指標に基づいて製造した石膏は、フッ素含有硫酸酸性廃水中のフッ化物イオン濃度が変動しても、安定してフッ素含有濃度0.20%以下の石膏を製造できることが確認された。このように、Al−F錯イオン形成率を石膏中のフッ素含有量の直接的な管理指標として用いているので、フッ素含有硫酸酸性廃水中のフッ化物イオン濃度が変動しても、石膏中のフッ素濃度が有効に管理されている。
Figure 2019142731
〔比較例1〕
銅製錬所の硫酸酸性廃水について、実施例3において2系統に分流して使用した残りの1系統について、アルミニウム添加量を一定にして連続的にアルミニウムの溶解処理を行った。さらにアルミニウム溶解液を用いた石膏製造試験を行った。アルミニウムの溶解処理条件については,アルミニウム添加量以外は実施例1と同条件にして実施した。アルミニウムの添加量については,実施例3の試験開始時のアルミニウム添加量と同一とし、試験中はアルミニウム添加量を変動調整せず一定とした。フッ素濃度の測定については実施例3と同様である。アルミニウム溶解後の溶液については連続的に固形分を固液分離した後に2時間おきに分取し,炭酸カルシウムを添加して石膏を生成させ、固液分離して石膏を回収した。石膏の製造時のpHは全て2.0に調整した。回収した石膏に含まれるフッ素濃度は、石膏試料をアルカリ融解処理後にイオンクロマトグラフィによって測定し定量した。この結果を表3に示した。表3に示すように、アルミニウム溶解前のフッ化物イオン濃度の測定値は時間ごとに変動する一方であり、アルミニウム添加量は一定であるため、Al−F錯イオン形成率も時間ごとに大きく変動している。とくに廃水中のフッ素濃度が上昇した際にはアルミニウムが不足してAl−F錯イオン形成率が68%未満になった。このような条件ではフッ素の安定な錯イオン化が不十分であり、製造された石膏中のフッ素濃度は0.20%を超えた。この結果からも、安定してフッ素含有濃度0.20%以下の石膏を製造するためにはAl−F錯イオン形成率を68%〜90%に管理することが必要であることが確認された。
石膏中のフッ素含有濃度の平均値は0.18%、標準偏差は0.08%であった。実施例3に比して、石膏中のフッ素含有濃度の平均値は0.06%高く、標準偏差は0.06%高い。このように、Al−F錯イオン形成率を68%〜90%に管理して石膏を製造することは、石膏のフッ素濃度を0.20%以下に抑制するだけでなく、石膏中のフッ素濃度のバラツキを少なくすることに資する。
Figure 2019142731

Claims (4)

  1. フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させるときのアルミニウム溶解量を制御する方法であって、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、次式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、該形成率Sによってアルミニウム溶解量を制御することを特徴とする方法。
    S=(C0−C1)/C0×100・・・(1)
  2. 上記Al−F錯イオンの形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御する請求項1に記載するアルミニウム溶解量の制御方法。
  3. フッ素を含む硫酸酸性溶液にアルミニウムを溶解させた後にカルシウム化合物を添加して石膏を生成させる方法において、フッ化物イオン電極を用い、アルミニウム溶解前に測定したフッ化物イオン濃度C0と、アルミニウム溶解後に測定したフッ化物イオン濃度C1に基づき、上記式(1)によってAl−F錯イオンの形成率Sを把握し、アルミニウム溶解量を制御しつつ、カルシウム化合物を添加して石膏を生成させることを特徴とする石膏の製造方法。
  4. 上記Al−F錯イオンの形成率Sが68%以上〜90%以下になるようにアルミニウム添加量を制御する請求項3に記載する石膏の製造方法。





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