JP7356949B2 - 車両の乗員保護装置 - Google Patents
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Description
シートベルトは、乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトにより、シートに着座している乗員がシートから変位しないように拘束する。エアバッグ装置は、シートに着座する乗員の周囲で展開し、シートの着座位置から変位した乗員に作用する可能性がある大きな衝撃を吸収する。これらの乗員保護装置を使用することにより、車両は、乗車している乗員を保護することができる。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるとは限らない。たとえばシートに着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシートの横方向へ倒れる乗員についてのシートの着座位置からの変位について、適切に衝撃を吸収することは難しい。このため、車両では、シートの周りに、それぞれの衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けている。
また、袋体は、様々な乗員の体形に対応するなどのために、シートの着座位置にいる乗員のたとえば上体から少し離れた位置において展開する。展開した袋体は、乗員のたとえば上体が明らかに動いてから、その衝撃を吸収するように機能し始める。この場合、展開した袋体は、既に動き始めている乗員のたとえば上体についての大きな衝撃を吸収する必要がある。
しかも、展開する右袋体および左袋体は、巻きをほどく慣性力により、シートに着座する乗員の上体の前面の中央へ向かって移動できる。シートに着座する乗員の上体の前面の中央へ移動した右袋体および左袋体は、シートに着座する乗員の左右両肩の上に展開できる。右袋体および左袋体は、シートに着座する乗員の首部の左右に近接または密着できる。右袋体および左袋体が近接または密着することにより、頭部は振れ難くなる。
これらの作用により、本発明では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突だけでなく、斜め衝突やオフセット衝突などにおいても、右袋体および左袋体により、乗員がシートの着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体および左袋体により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体および左袋体は、シートの着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。
図1(A)は、自動車1の模式的な側面図である。図1(B)は、図1(A)の自動車1の上面図である。図1には、自動車1とともに、自動車1に乗車している乗員が図示されている。
自動車1は、車体2、を有する。車体2は、複数のシート4が前向きで配置される乗員室3を有する。シート4は、座部5と、座部5の後縁から上へ立設する背部6と、を有する。乗員は、その腰部および腿を座部5に載せ、その上体の背中を背部6に当ててシート4に着座する。
シートベルト装置は、シート4に着座している乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトを有する。シートベルトは、衝突の際にシート4に着座している乗員がシート4からずれて変位しないように乗員をシート4に拘束する。
エアバッグ装置は、シート4に着座する乗員の周囲で展開する袋体を有する。袋体は、たとえばシート4の前側において展開する。乗員の上体は、衝突の際にシート4に背をつけている着座位置からたとえば前へ倒れるが、展開している袋体に当たることにより衝撃が吸収される。乗員に作用する衝撃を吸収できる。
これらのシートベルト装置や、エアバッグ装置により、自動車1は、乗車している乗員を保護することができる。
しかしながら、たとえばシートベルトは、乗員の胸部を局所的に拘束する。このため、大きな衝撃が入力された際に、乗員の胸部に局所的な負担がかかる可能性がないとは言えない。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な位置およびタイミングに展開して衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切に衝撃を吸収できるとは限らない。たとえばシート4に着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシート4の横方向へ倒れる乗員についてのシート4の着座位置からの車幅方向への変位について、衝撃を吸収することは難しい。このため、自動車1では、シート4の周りに、複数の衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けることになる。シート4の周りには、衝突形態に対応する数の多数のエアバッグ装置が設けられることになる。この場合、乗員を保護するための装置の構造および制御は、複雑化する。
このように乗員保護装置10には、さらなる改善が求められている。
本実施形態では、このような効果を実用的に期待することができる乗員保護装置10について説明する。
図3の乗員保護装置10は、ステレオカメラ11、赤外線カメラ12、LiDAR13、加速度センサ14、通信装置15、GPS受信機16、および、エアバッグ装置17、を有する。エアバッグ装置17は、右袋体21、左袋体22、インフレータ23、右袋体21および左袋体22に接続されるテザー42を引込む引込装置41、および、これらが接続される制御部27、を有する。これら乗員保護装置10の各センサおよび各装置は、自動車1に設けられる不図示の車ネットワークにより、制御部27に接続されてよい。
赤外線カメラ12は、たとえばステレオカメラ11と同様に乗員室3の前部において前向きに配置される。赤外線カメラ12は、車外の人や他の移動体などを撮像した赤外線画像を撮像する。
LiDAR13は、たとえば車体2の前部において前向きに配置される。LiDAR13は、前方へ向かって光を照射し、車体2の前方の車外の人による反射光に基づいて、被写体の方向、距離、速度などを取得する。
加速度センサ14は、車体2に設けられる。加速度センサ14に作用する加速度を検出する。車体2が人などの移動体に当たると、加速度センサ14は、通常の走行では生じないような大きな加速度を検出する。この場合、加速度センサ14は、衝突検出を出力してよい。この場合、加速度センサ14は、車体2と他の動体との接触を予測または検出する衝突検出部として機能する。
通信装置15は、無線通信により他の移動体、たとえば他の自動車1や歩行者の他の通信装置、道路沿いに配置される基地局、などと通信する。通信装置15は、他の通信装置から、他の移動体の現在位置、移動方向、移動速度などを取得してよい。
GPS受信機16は、GPS衛星などから電波を受信し、自車の現在位置、移動速度、などを取得する。
制御部27としてのCPUは、たとえば自動車1の走行中の場合に、または自動車1に乗員が乗車している場合に、図4の処理を繰返し実行する。
これにより、制御部27としてのCPUは、自動車1の衝突が検出または予測された場合に、乗員保護装置10の右袋体21および左袋体22を展開できる。
図5(A)は、シート4の前面図である。図5(B)は、シート4の側面図である。図5(C)は、シート4の上面図である。
図6(A)は、シート4の前面図である。図6(B)は、シート4の上面図である。
左袋体22は、シート4の左側において、屈曲部31において屈曲する略棒形状に広げることができる。
右袋体21および左袋体22は、展開時の圧力によりシート4の表面を形成するシートカバーを破って、図6に示すようにシート4の外へ突出し得る。シート4の外へ突出する右袋体21および左袋体22は、撓んだ状態で、シート4から左右へ展開することができる。シート4から右へ展開した右袋体21は、シート4の背部6の右上部からシート4の座部5の右側部分にかけて延在するように展開し得る。シート4から左へ展開した左袋体22は、シート4の背部6の左上部からシート4の座部5の左側部分にかけて延在するように展開し得る。
同様に、左袋体22はシート4の背部6から座部5にかけてシート4の左縁部分に沿って埋設されている場合、シートカバーを破ってシート4の外へ突出した後の左袋体22の長さは、左袋体22の両端が固定されているシート4の背部6の左上部から座部5の左前部分までの直線距離より長くなる。左袋体22は、2つの固定点の直線距離より長い長さで展開することになる。このため、左袋体22は、単に展開しただけでは、撓んで展開するようになり、図2のように乗員に密着して拘束するようにはなり難い。
そして、乗員の左右で撓んだままに展開される右袋体21および左袋体22は、シート4に着座している乗員の前面や左右の両肩に対して密着するようには展開し難い。
図7(A)は、図5に対応する右袋体21および左袋体22の配置である。図7(A)は、シート4に設けられる右袋体21および左袋体22を、前上側の正面から見た図である。図7(A)において、右袋体21および左袋体22は、シート4の左右両側に広げた状態になる。
シート4の左側に設けられる左袋体22は、屈曲部31から巻かれる。具体的には、左袋体22は、屈曲部31を両端より後側へ回すようにして後向きに巻かれる。左袋体22は、最終的には、その両端の間に略棒状に延在する状態に巻かれる。左袋体22は、両端が外側となるように後向きに巻かれる。
右袋体21についても同様に、屈曲部31から巻かれ、屈曲部31を両端より後側へ回すようにして後向きに巻かれる。右袋体21は、最終的には、その両端の間に略棒状に延在する状態に巻かれる。右袋体21は、両端が外側となるように後向きに巻かれる。
図9は、図8に続く展開手順の説明図である。
また、このように撓んで展開することにより、右袋体21および左袋体22は、シート4に着座している乗員の上体などにより前への移動を阻害されることなく、着座している乗員の上体より前へ移動することができる。
ただし、右袋体21および左袋体22は、この段階でも撓んだ状態にあるため、シート4に着座している乗員の上体を拘束することは難しい。
図10(A)において、右袋体21および左袋体22は、図9(B)のように、着座している乗員の上体の前において展開している。
図11(A)は、前面図である。図11(B)は、側面図である。図11では、展開した右袋体21と左袋体22とは、図10(B)と同様にシート4に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着するように展開している。
また、右袋体21の屈曲部31および左袋体22の屈曲部31は、シート4に着座する乗員の上体の前へ至る状態に展開した状態で、シート4に着座する乗員の左右両肩の間に位置できる。
しかも、展開する右袋体21および左袋体22は、巻きをほどく慣性力により、シート4に着座する乗員の上体の前面の中央へ向かって移動できる。シート4に着座する乗員の上体の前面の中央へ移動した右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の左右両肩の上に展開できる。右袋体21および左袋体22は、シート4に着座する乗員の首部の左右に近接または密着できる。右袋体21および左袋体22が近接または密着することにより、頭部は振れ難くなる。
これらの作用により、本実施形態では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突だけでなく、斜め衝突やオフセット衝突などにおいても、右袋体21および左袋体22により、乗員がシート4の着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体21および左袋体22により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体21および左袋体22は、シート4の着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。
この他にもたとえば、屈曲部31は、右袋体21および左袋体22について複数ずつ設けられてよい。
この他にもたとえば、屈曲部31は、右袋体21および左袋体22の両端の中央部分に設けられてよい。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、その全体が両端の間で略棒形状でよい。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、シート4の左右両側に広げた状態から両端が外側となるように前向きに巻いた状態で、シート4に収容されている。
図12(A)は、変形例に係る右袋体21および左袋体22についての展開開始前の収容状態である。右袋体21は、左回りに巻き取られ、左袋体22は、右回りに巻き取られて収容されている。このように右袋体21および左袋体22は、前巻きに巻いた状態でシート4に設けられる。インフレータ23が高圧ガスを噴出することにより、右袋体21および左袋体22は、展開を開始する。右袋体21および左袋体22は、巻きをほどくようにしながら左右へ広がるように展開を開始し、図12(B)に示すようにシート4の左右の縁から飛び出し、規制板28に当たって前へ跳ね返される。巻きがほどけた右袋体21および左袋体22は、図12(C)に示すように、展開時の慣性力により、前へ移動する。
このように前巻きに巻いた状態でシート4に設けられる右袋体21および左袋体22は、図7と同様に、展開する勢いにより着座している乗員の上体より前へ移動できる。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、その一部に、他の部分たとえば両端の部分より幅広の幅広部、を有してよい。幅広部は、右袋体21の他の部分と同様に膨らんでよい。この場合、右袋体21および左袋体22は、屈曲部31ではなく幅広部から巻いてよい。幅広部は、他の部分より幅広に形成されることにより、他の部分と比べて重くなり得る。他の部分より重い幅広部から巻くことにより、幅広部をおもりとして、右袋体21および左袋体22を好適に広げることができる。特に、屈曲部31が幅広である場合、幅広にされて重くなっている屈曲部31は、最後まできちんと展開し得ると考えられる。
Claims (5)
- 車両のシートについての少なくとも背部の左右両側部に沿うように収容されて、前記シートに固定される両端の間で展開する右袋体および左袋体と、
前記右袋体および前記左袋体を展開するインフレータと、
を有し、
前記右袋体および前記左袋体は、前記シートに固定される両端が外側となるように巻いた状態で収容され、収容された状態から巻きをほどくように展開することにより前記シートに着座する乗員の上体の前へ至る状態に展開する、
車両の乗員保護装置。
- 前記右袋体および前記左袋体は、前記シートに固定される両端の間に屈曲部を有し、前記屈曲部が内側となるように巻かれた状態で収容され、前記屈曲部が前記シートに着座する乗員の上体の前に至るように展開する、
請求項1記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記屈曲部は、前記右袋体および前記左袋体についての前記シートに固定される両端から等距離となる中央部分または前記中央部分より上側の部分に設けられる、
請求項2記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記右袋体および前記左袋体は、前記屈曲部から巻かれた状態で収容される、
請求項2または3記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記右袋体および前記左袋体は、前記シートの左右両側に広げた状態から両端が外側となるように後向きに巻いた状態で収容される、
請求項1から4のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
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