JP7356950B2 - 車両の乗員保護装置 - Google Patents
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Description
シートベルトは、乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトにより、シートに着座している乗員がシートから変位しないように拘束する。エアバッグ装置は、シートに着座する乗員の周囲で展開し、シートの着座位置から変位した乗員に作用する可能性がある大きな衝撃を吸収する。これらの乗員保護装置を使用することにより、車両は、乗車している乗員を保護することができる。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるとは限らない。たとえばシートに着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシートの横方向へ倒れる乗員についてのシートの着座位置からの変位について、適切に衝撃を吸収することは難しい。このため、車両では、シートの周りに、それぞれの衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けている。
また、袋体は、様々な乗員の体形に対応するなどのために、シートの着座位置にいる乗員のたとえば上体から少し離れた位置において展開する。展開した袋体は、乗員のたとえば上体が明らかに動いてから、その衝撃を吸収するように機能し始める。この場合、展開した袋体は、既に動き始めている乗員のたとえば上体についての大きな衝撃を吸収する必要がある。
しかも、本発明では、袋体の上端は、シートの背部の上部において車両の左右方向に沿ってスライド可能なスライド機構により支持される。そして、スライド機構は、インフレータが高圧ガスを発生して袋体の展開を開始した後に、袋体の上端をシートの背部の上部において、シートの左右方向の中央へ向かってスライドする。これにより、袋体は、シートに着座している乗員の肩の上へ移動して、乗員の肩の上から前面に至るように展開することができる。したがって、シートに着座する乗員の上体は、肩から前面にかけて袋体により抑えられ、その着座している状態から動き難くなる。
これらの作用により、本発明では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突や斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側面衝突などにおいても、袋体により、乗員がシートの着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、袋体により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、袋体は、シートの着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開するので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。乗員の上体の振れそのものを好適に抑制し得る。
図1(A)は、自動車1の模式的な側面図である。図1(B)は、図1(A)の自動車1の上面図である。図1には、自動車1とともに、自動車1に乗車している乗員が図示されている。
自動車1は、車体2、を有する。車体2は、複数のシート4が前向きで配置される乗員室3を有する。シート4は、座部5と、座部5の後縁から上へ立設する背部6と、を有する。乗員は、その腰部および腿を座部5に載せ、その上体の背中を背部6に当ててシート4に着座する。
シートベルト装置は、シート4に着座している乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトを有する。シートベルトは、衝突の際にシート4に着座している乗員がシート4からずれて変位しないように乗員をシート4に拘束する。
エアバッグ装置は、シート4に着座する乗員の周囲で展開する袋体を有する。袋体は、たとえばシート4の前側において展開する。乗員の上体は、衝突の際にシート4に背をつけている着座位置からたとえば前へ倒れるが、展開している袋体に当たることにより衝撃が吸収される。乗員に作用する衝撃を吸収できる。
これらのシートベルト装置や、エアバッグ装置により、自動車1は、乗車している乗員を保護することができる。
しかしながら、たとえばシートベルトは、乗員の胸部を局所的に拘束する。このため、大きな衝撃が入力された際に、乗員の胸部に局所的な負担がかかる可能性がないとは言えない。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な位置およびタイミングに展開して衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切に衝撃を吸収できるとは限らない。たとえばシート4に着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシート4の横方向へ倒れる乗員についてのシート4の着座位置からの車幅方向への変位について、衝撃を吸収することは難しい。このため、自動車1では、シート4の周りに、複数の衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けることになる。シート4の周りには、衝突形態に対応する数の多数のエアバッグ装置が設けられることになる。この場合、乗員を保護するための装置の構造および制御は、複雑化する。
このように乗員保護装置には、さらなる改善が求められている。
本実施形態では、このような効果を実用的に期待することができる乗員保護装置10について説明する。
図3の乗員保護装置10は、ステレオカメラ11、赤外線カメラ12、LiDAR13、加速度センサ14、通信装置15、GPS受信機16、および、エアバッグ装置17、を有する。エアバッグ装置17は、右袋体21、左袋体22、右インフレータ23、左インフレータ24、および、これらが接続される制御部27、を有する。これら乗員保護装置10の各センサおよび各装置は、自動車1に設けられる不図示の車ネットワークにより、制御部27に接続されてよい。
赤外線カメラ12は、たとえばステレオカメラ11と同様に乗員室3の前部において前向きに配置される。赤外線カメラ12は、車外の人や他の移動体などを撮像した赤外線画像を撮像する。
LiDAR13は、たとえば車体2の前部において前向きに配置される。LiDAR13は、前方へ向かって光を照射し、車体2の前方の車外の人による反射光に基づいて、被写体の方向、距離、速度などを取得する。
加速度センサ14は、車体2に設けられる。加速度センサ14に作用する加速度を検出する。車体2が人などの移動体に当たると、加速度センサ14は、通常の走行では生じないような大きな加速度を検出する。この場合、加速度センサ14は、衝突検出を出力してよい。この場合、加速度センサ14は、車体2と他の動体との接触を予測または検出する衝突検出部として機能する。
通信装置15は、無線通信により他の移動体、たとえば他の自動車1や歩行者の他の通信装置、道路沿いに配置される基地局、などと通信する。通信装置15は、他の通信装置から、他の移動体の現在位置、移動方向、移動速度などを取得してよい。
GPS受信機16は、GPS衛星などから電波を受信し、自車の現在位置、移動速度、などを取得する。
制御部27としてのCPUは、たとえば自動車1の走行中の場合に、または自動車1に乗員が乗車している場合に、図4の処理を繰返し実行する。
これにより、制御部27としてのCPUは、自動車1の衝突が検出または予測された場合に、乗員保護装置10の右袋体21および左袋体22を展開できる。
図5(A)は、シート4の前面図である。図5(B)は、シート4の側面図である。図5(C)は、シート4の上面図である。
図6(A)は、シート4の前面図である。図6(B)は、シート4の側面図である。図6(C)は、シート4の上面図である。
このように右袋体21と左袋体22とは、図6に示すように、シート4に着座する乗員の上体についての左右両側において、シート4の背部6の上部から座部5の前部にかけて延在するように展開できる。
同様に、左袋体22はシート4の背部6から座部5にかけてシート4の左縁部分に沿って埋設されている場合、シートカバーを破ってシート4の外へ突出した後の左袋体22の長さは、左袋体22の両端が固定されているシート4の背部6の左上部から座部5の左前部分までの直線距離より長くなる。左袋体22は、2つの固定点の直線距離より長い長さで展開することになる。このため、左袋体22は、単に展開しただけでは、撓んで展開するようになり、図2のように乗員に密着して拘束するようにはなり難い。
そして、乗員の左右で撓んだままに展開される右袋体21および左袋体22は、シート4に着座している乗員の前面や左右の両肩に対して密着するようには展開し難い。
図7(A)から図7(C)は、シート4の上面図である。
シート4の背部6の上部には、右スライド機構31と、左スライド機構32とが設けられる。右スライド機構31と、左スライド機構32とは、シート4の背部6の左右方向に沿って延在するレール37と、レール37と擦接して移動可能に設けられるスライダ36と、を有する。
このように右袋体21の上端および左袋体22の上端は、右インフレータ23および左インフレータ24が高圧ガスを発生して袋体の展開が開始された後に、シート4の背部6の上部においてシート4の左右方向の中央へ向かってスライドする。
そして、右袋体21の上端および左袋体22の上端は、スライダ36およびスライダ37とともに、シート4の背部6の左右方向の中央へ向かって近接する。これにより、右袋体21の両端の距離は、収容時より増加し、撓んだ状態に展開している右袋体21の撓みは削減される。左袋体22の両端の距離は、収容時より増加し、撓んだ状態に展開している左袋体22の撓みは削減される。これらの結果、右袋体21および左袋体22は、シート4に着座している乗員の前面および左右の両肩に密着することができる。
図8は、シート4の前面図である。
その結果、シート4に着座している乗員の上体は、それに密着するように展開している右袋体21と左袋体22により抑えられ、前後上下左右へずれたり移動したりし難くなる。右袋体21と左袋体22とにより拘束される乗員の上体は、中央へ向けて寄った右袋体21と左袋体22とによりしっかりとホールドされて、それらの間からたとえば前へ抜け出し難くなる。
しかも、側突時に図9の状態となることにより、乗員の首の側方近傍に右袋体21と左袋体22とが存在することになり、乗員の上体が左右の側方へ移動してしまうことを効果的に抑制し得る。
しかも、本実施形態では、右袋体21および左袋体22の上端は、シート4の背部6の上部において自動車1の左右方向に沿ってスライド可能なスライド機構により支持される。スライド機構は、右インフレータ23および左インフレータ24が高圧ガスを発生して右袋体21および左袋体22の展開を開始した後に、右袋体21の上端および左袋体22の上端をシート4の背部6の上部においてシート4の左右方向の中央へ向かってスライドする。これにより、右袋体21および左袋体22は、シート4に着座している乗員の左右両肩の上へ移動して、乗員の両肩の上から前面に至るように展開することができる。したがって、シート4に着座する乗員の上体は、両肩から前面にかけての範囲が右袋体21および左袋体22により抑えられ、その着座している状態から動き難くなる。
特に、本実施形態では、袋体は、シート4の背部6の上部からシート4に着座する乗員の前へ展開可能な右袋体21および左袋体22であり、スライド機構は、右袋体21および左袋体22のそれぞれについて個別に設けられる。そして、左右のスライド機構は、右インフレータ23および左インフレータ24が高圧ガスを発生して右袋体21および左袋体22の展開を開始した後に、右袋体21の上端および左袋体22の上端をシート4の背部6の上部においてシート4の左右方向の中央へ向かってスライドする。
これらの作用により、本実施形態では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突や斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側面衝突などにおいても、右袋体21および左袋体22により、乗員がシート4の着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体21および左袋体22により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体21および左袋体22は、シート4の着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開するので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。乗員の上体の振れそのものを好適に抑制し得る。
この他にもたとえば、右袋体21および左袋体22は、それぞれの両端がシート4の背部6の上部とシート4の左右のアームレスト部とに固定されてよい。
この他にもたとえば、ワンウェイバルブ33は、右袋体21および左袋体22が展開を開始する際の右インフレータ23および左インフレータ24の内圧において開いても、これらの間の内圧において開いてもよい。
Claims (5)
- 車両のシートに設けられ、前記シートの背部の上部から前記シートに着座する乗員の前へ展開可能な袋体と、
前記袋体を高圧ガスにより展開するために接続されるインフレータと、
前記袋体の上端を前記シートの背部の上部において前記車両の左右方向に沿ってスライド可能に支持するスライド機構と、
を有し、
前記スライド機構は、前記インフレータが高圧ガスを発生して前記袋体の展開を開始した後に、前記袋体の上端を前記シートの背部の上部において前記シートの左右方向の中央へ向かってスライドする、
車両の乗員保護装置。
- 前記袋体は、前記シートの背部の上部から前記シートに着座する乗員の前へ展開可能な右袋体および左袋体であり、
前記スライド機構は、前記右袋体および前記左袋体のそれぞれについて個別に設けられ、前記インフレータが高圧ガスを発生して前記袋体の展開を開始した後に、前記右袋体の上端および前記左袋体の上端を前記シートの背部の上部において前記シートの左右方向の中央へ向かってスライドする、
請求項1記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記インフレータは、前記袋体の上端とともに前記スライド機構に支持され、高圧ガスを発生して前記袋体の展開を開始した後に、前記袋体の上端とともに前記シートの左右方向の中央へ向かってスライドする、
請求項1または2記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記インフレータは、
発生している高圧ガスの圧力が所定値より高くなると開くバルブ、を有し、
前記バルブから高圧ガスを噴き出すことにより前記スライド機構を前記シートの背部の上部において前記シートの左右方向の中央へ向かってスライドさせる、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
- 前記インフレータは、自身の前記バルブから高圧ガスを噴き出すことにより、前記スライド機構とともに前記シートの背部の上部において前記シートの左右方向の中央へ向かってスライドする、
請求項1から4のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
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