JP7352140B2 - 圧電磁器組成物の製造方法及び圧電セラミック電子部品 - Google Patents
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しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
本発明の圧電磁器組成物は、Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物であって、上記ニオブ酸カリウムナトリウムの結晶子内のXANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、MnOのXANESスペクトルにおいて観測されるMn2+のピーク位置PMnO[eV]を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]であることを特徴とする。
0.1≦α<1.429 (1)
0<β≦1.286 (2)
0≦γ≦0.143 (3)
0<β+γ≦1.286 (4)
0≦δ≦0.429 (5)
Mnは、酸素欠陥と電気的な対を形成して酸素欠陥の移動を妨げ、絶縁抵抗の低下を抑制する役割を担っている。XANESスペクトルにおいては、Mnの価数が高くなるほどピーク位置が高エネルギー側にシフトする。
従って、XANESスペクトルのMn由来のピーク位置をみることによって、KNN化合物中のMnの価数の遷移を測定することができる。ここで、Mnは、2価(Mn2+)、3価(Mn3+)及び4価(Mn4+)を取り得るが、KNN系化合物に添加した場合には、2価又は3価の状態であると推測される。なかでも3価のMn(Mn3+)は、Nbとイオン半径が近いため、酸素欠陥の形成を妨げる効果が大きいと考えられる。
従って、XANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、上記範囲であると、KNN化合物中のMnにおけるMn3+の割合が多くなるため、酸素欠陥の形成を妨げ、絶縁抵抗の低下を抑制することができると考えられる。
従って、本発明の圧電磁器組成物を用いることで、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を提供することができる。
本明細書において、「主成分」とは、圧電磁器組成物中の存在割合(mol%)が最も大きい成分を意味し、望ましくは、存在割合が50mol%を超える成分を意味する。
Mnは酸素欠陥の移動を妨げ、絶縁抵抗の低下を抑制するが、Mnの添加量が多いとセラミック焼結体中にMnを含む異相が形成される。この異相は圧電特性を示さないため、異相が多いと圧電磁器組成物全体の圧電特性が低下する。
そのため、主成分100モルに対してεモルのMnを副成分として含有する場合、εは、0<ε≦10であることが好ましく、2≦ε≦10であることがより好ましい。
KNN系化合物に加えて、上記一般式M2M4O3で表される化合物を含有する主成分は、{(1-x)(K1-a-bNaaLib)(Nb1-cTac)O3-xM2M4O3}で表される。上記xは、0≦x≦0.06であることが好ましい。
本発明の圧電磁器組成物の製造方法は、Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物の製造方法であって、主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムと、副成分であるMnとを含むセラミック材料を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0~0.4桁還元側となるように調整された雰囲気下において焼成する工程を含むことを特徴とする。
主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムと副成分であるMnとを含むセラミック材料を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0~0.4桁還元側となるように調整された雰囲気下において焼成することによって、Mnの還元を極力抑制し、ニオブ酸カリウムナトリウム化合物中に固溶するMnのうち、Mn3+の割合を増加させることができると考えられる。
本発明の圧電セラミック電子部品は、Niを主成分とする内部電極と圧電セラミック層とが交互に積層されて焼結されてなる圧電セラミック素体を備え、上記圧電セラミック素体の表面に外部電極が形成された圧電セラミック電子部品であって、上記圧電セラミック層が本発明の圧電磁器組成物で構成されていることを特徴とする。
以下、本発明の圧電セラミック電子部品の製造方法の一実施形態として、図1及び図2に示す積層圧電アクチュエータ10の製造方法の一例について説明する。
ドクターブレード法等を使用して上記セラミックスラリーを成形加工をすることによって、セラミックグリーンシートを作製する。
図3に示すように、導電層5a、5b、5c、5d、5e、5f及び5gがそれぞれ形成されたセラミックグリーンシート6a、6b、6c、6d、6e、6f及び6gを積層した後、導電層5gの表面に導電層が形成されていないセラミックグリーンシート7aを積層し、圧着する。これにより、セラミックグリーンシート6a、6b、6c、6d、6e、6f及び6gと導電層5a、5b、5c、5d、5e、5f及び5gとが交互に積層されたセラミック積層体を作製する。
一方、副成分であるMnも、上記雰囲気下において還元が進行し、Mn2+の割合が増加すると考えられる。従って、焼成は、Niが酸化しない雰囲気、かつ、Mnの還元が極力進行しない雰囲気であることが好ましい。
従って、本発明の圧電磁器組成物を作製するにあたっては、上記還元雰囲気を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0~0.4桁還元側(すなわち、Ni/NiOの平衡酸素分圧を1とした場合に、10-0.4以上、1以下の酸素分圧)とする。
上記還元雰囲気における酸素分圧が、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.4桁還元側よりもさらに還元側になる(すなわち、Ni/NiOの平衡酸素分圧の10-0.4倍未満である)と、Mnの還元が進行しすぎて、Mn2+の割合が増加してしまうと考えられる。
セラミック素原料として、炭酸カリウムK2CO3、炭酸ナトリウムNa2CO3、炭酸リチウムLi2CO3、酸化ニオブNb2O5、及び、炭酸マンガンMnCO3を用意した。そして、(K1-a-bNaaLib)NbO3(0≦a≦0.9、0≦b≦0.1)となるように、上記セラミック素原料を秤量した。具体的には、K2CO3:15.03重量%、Na2CO3:13.68重量%、Li2CO3:1.12重量%、Nb2O5:67.26重量%、MnCO3:2.91重量%とした。秤量物をボールミルに投入し、エタノールを溶媒として混合撹拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを乾燥した後、900℃で仮焼し、仮焼粉末を得た。
焼成中の酸素分圧を、NiとNiOの平衡酸素分圧より0.5桁還元側となる酸素分圧(Ni/NiOの平衡酸素分圧の1/3.16の酸素分圧)に変更し、焼成温度を1100℃、焼成時間を2時間に変更したほかは、試料1と同様の方法により、積層圧着体を作製した。焼成条件を表1に示す。
試料1及び試料2に対して、蛍光X線(XRF)元素分析及び誘導結合プラズマ(ICP)発光分析を併用して元素分析を行った。結果を表1に示す。
XRF元素分析では、ガラスビード法により試料を前処理し、測定径30μmの蛍光X線を照射し、スタンダードFP法を用いて、各元素(Liを除く)を定量した。
ICP発光分析では、試料をマイクロウェーブ分解した後、不溶分をろ過した試料溶液を用い、各元素(Liを含む)を定量した。
インピーダンスアナライザを使用し、共振-反共振法によって、試料の長さ方向の電気機械結合係数k31を測定した。結果を表2に示す。
圧電定数d31は、インピーダンスアナライザで測定した比誘電率ε33と電気機械結合係数k31より計算した。
キュリー点Tcは、インピーダンスアナライザで比誘電率ε33の温度特性を測定し、比誘電率ε33の極大値を算出することで得た。
結果を表2に示す。
試料1~2について、下記の方法に従って、蛍光X線マッピング法により、Mn及びNiの濃度分布を確認した。結果を図4及び図5に示す。図4は、試料1に対して行ったMn-Kα線の蛍光X線マッピング写真であり、図5は、試料1に対して行ったNi-Kβ線の蛍光X線マッピング写真である。
測定条件
測定装置:SPring-8(ビームライン:BL-05XU)
線源:X線[Si(111)二結晶モノクロメーターで分光後、KBミラーで集光]
X線エネルギー:9.2keV
ビームサイズ:約1μm×約1μm
測定領域:35μm×35μm(140pixel×140pixel)
1pixelあたりの積算時間:0.1sec
図4より、Mnが偏析していること、及び、ビームサイズを1.1μm×1.2μmとすることで、KNNの単一の結晶子を対象として元素分析を行えることを確認した。
また図5より、Niは偏析していないことを確認した。
まず、リファレンスサンプルとしてMnO(Mn2+)、Mn2O3(Mn3+)、MnO2(Mn4+)を準備した。これらのサンプルをBNと混合してプレス成形し、直径約1cmのペレットを作製した。1.1μm×1.2μmに集光した硬X線をペレットに照射して、XAFSスペクトルを測定した。
照射X線を6205.00~7281.75eVの範囲でエネルギー挿引し、発生した蛍光X線をSDD-4ch検出器で検出することでXAFSスペクトルを得た。スペクトルは4つのチャンネルで得た信号の平均値として得られる。なお、測定エネルギーステップ条件は0.355~0.365eVで、各点の積算時間は3secである。
得られたXAFSスペクトルから、まずバックグラウンド除去処理を行った後、ポストエッジ(エネルギー)範囲6550eV~6650eV程度で規格化し、Mn-K吸収端のXAFSスペクトルであるXANESスペクトルを得た。結果を図6に示す。図6は、MnO、Mn2O3及びMnO2のXANESスペクトルである。得られたスペクトルのピーク位置及びピーク強度を、表3に示す。
図7は、試料1及び試料2のXANESスペクトルである。図7には、MnO、Mn2O3及びMnO2のXANESスペクトルにおけるピーク位置も示している。得られたスペクトルのピーク位置及びピーク強度を、表3に示す。
下記の方法に従って、試料1及び試料2の高温負荷試験を行った。結果を表3に示す。
85℃で3.8kV/mmの電圧を印加し続け、絶縁抵抗が初期の1/100に低下するまでの時間(高温負荷試験寿命η)を測定した。
2a、2b 外部電極
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h 圧電セラミック層
4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g 内部電極
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g 導電層
6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、7a セラミックグリーンシート
10 積層圧電アクチュエータ(圧電セラミック電子部品)
Claims (6)
- Niを主成分とする内部電極と圧電セラミック層とが交互に積層されて焼結されてなる圧電セラミック素体を備え、前記圧電セラミック素体の表面に外部電極が形成された圧電セラミック電子部品であって、
前記圧電セラミック層が、Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物で構成されており、
前記ニオブ酸カリウムナトリウムの結晶子内のXANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、MnOのXANESスペクトルにおいて観測されるMn 2+ のピーク位置P MnO [eV]を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]であり、
前記圧電磁器組成物は、主成分としてニオブ酸カリウムナトリウムと、
副成分としてMnが固溶しており、
主成分である前記ニオブ酸カリウムナトリウムが、一般式{(K 1-a-b Na a Li b )(Nb 1-c Ta c )O 3 }(ただし、a、b及びcは、それぞれ、0<a≦0.9、0≦b≦0.1、0<a+b≦0.9、0≦c≦0.3である。)で表され、
前記主成分100モルに対して、εモルのMnを副成分として含有し、
前記εは、0<ε≦10であることを特徴とする、圧電セラミック電子部品。 - Niを主成分とする内部電極と圧電セラミック層とが交互に積層されて焼結されてなる圧電セラミック素体を備え、前記圧電セラミック素体の表面に外部電極が形成された圧電セラミック電子部品であって、
前記圧電セラミック層が、Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物で構成されており、
前記ニオブ酸カリウムナトリウムの結晶子内のXANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、MnOのXANESスペクトルにおいて観測されるMn 2+ のピーク位置P MnO [eV]を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]であり、
前記圧電磁器組成物は、主成分としてニオブ酸カリウムナトリウムと、
副成分としてMnが固溶しており、
主成分である前記ニオブ酸カリウムナトリウムが、K、Na、Li、Nb及びTaを含有し、前記主成分に含まれるNb1モルに対して、Kの含有量をαモル、Naの含有量をβモル、Liの含有量をγモル、Taの含有量をδモルとしたときに、以下の関係式(1)~(5)を満たし、
前記主成分100モルに対して、εモルのMnを副成分として含有し、
前記εは、0<ε≦10であることを特徴とする、圧電セラミック電子部品。
0.1≦α<1.429 (1)
0<β≦1.286 (2)
0<γ≦0.143 (3)
0<β+γ≦1.286 (4)
0<δ≦0.429 (5) - 前記εは、2≦ε≦10である、請求項1又は2に記載の圧電セラミック電子部品。
- 主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムに副成分であるMnが固溶しており、前記ニオブ酸カリウムナトリウムが、一般式{(K 1-a-b Na a Li b )(Nb 1-c Ta c )O 3 }(ただし、a、b及びcは、それぞれ、0<a≦0.9、0≦b≦0.1、0<a+b≦0.9、0≦c≦0.3である。)で表され、前記主成分100モルに対して、εモルのMnを副成分として含有し、前記εは、0<ε≦10であり、前記ニオブ酸カリウムナトリウムの結晶子内のXANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、MnOのXANESスペクトルにおいて観測されるMn 2+ のピーク位置P MnO [eV]を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]である圧電磁器組成物の製造方法であって、
主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムと、副成分であるMnとを含むセラミック材料を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0~0.4桁還元側となるように調整された雰囲気下において焼成する工程を含むことを特徴とする、圧電磁器組成物の製造方法。 - 主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムに副成分であるMnが固溶しており、前記ニオブ酸カリウムナトリウムが、K、Na、Li、Nb及びTaを含有し、前記主成分に含まれるNb1モルに対して、Kの含有量をαモル、Naの含有量をβモル、Liの含有量をγモル、Taの含有量をδモルとしたときに、以下の関係式(1)~(5)を満たし、前記主成分100モルに対して、εモルのMnを副成分として含有し、前記εは、0<ε≦10であり、前記ニオブ酸カリウムナトリウムの結晶子内のXANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、MnOのXANESスペクトルにおいて観測されるMn 2+ のピーク位置P MnO [eV]を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]である圧電磁器組成物の製造方法であって、
主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムと、副成分であるMnとを含むセラミック材料を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0~0.4桁還元側となるように調整された雰囲気下において焼成する工程を含むことを特徴とする、圧電磁器組成物の製造方法。
0.1≦α<1.429 (1)
0<β≦1.286 (2)
0<γ≦0.143 (3)
0<β+γ≦1.286 (4)
0<δ≦0.429 (5) - 前記εは、2≦ε≦10である、請求項4又は5に記載の圧電磁器組成物の製造方法。
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