JP2021005627A - 圧電磁器組成物、圧電磁器組成物の製造方法及び圧電セラミック電子部品 - Google Patents

圧電磁器組成物、圧電磁器組成物の製造方法及び圧電セラミック電子部品 Download PDF

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Abstract

【課題】長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を製造することができる圧電磁器組成物及びその製造方法、並びに、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を提供すること。【解決手段】本発明の圧電磁器組成物は、Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物であって、上記ニオブ酸カリウムナトリウムの結晶子内のXANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、MnOのXANESスペクトルにおいて観測されるMn2+のピーク位置PMnO[eV]を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、圧電磁器組成物、圧電磁器組成物の製造方法及び圧電セラミック電子部品に関する。
従来から、圧電材料を使用した超音波センサ、圧電ブザー、圧電アクチュエータ等の圧電セラミック電子部品が広く知られている。そして、小さい電圧でも大きな変位量の取得が可能な圧電セラミック電子部品の需要が高まってきている。
圧電材料としては、これまで、一般式Pb(Zr,Ti)Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系化合物が用いられてきた。近年、非鉛系の圧電材料として、一般式(K,Na)NbOで表されるニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)系化合物が注目されている。
特許文献1には、内部電極と圧電セラミック層とが交互に積層されて焼結されてなる圧電セラミック素体を備え、該圧電セラミック素体の表面に外部電極が形成された圧電セラミック電子部品が開示されている。特許文献1に記載の圧電セラミック電子部品においては、上記内部電極が、Niを主成分とすると共に、上記圧電セラミック層が、主成分[一般式{(1−x)(K1−a−bNaLi)(Nb1−cTa)O−xM2M4O}(ただし、M2はCa、Ba、及びSrのうちの少なくともいずれか1種、M4はZr、Sn、及びHfのうちの少なくともいずれか1種、x、a、b、cはそれぞれ0≦x≦0.06、0≦a≦0.9、0≦b≦0.1、0≦c≦0.3である)]と副成分として、主成分100モルに対し、2αモルのNa、(α+β)モルのM4’元素(M4’はZr、Sn、及びHfのうちの少なくともいずれか1種の元素を示す。)、及びγモルのMnを含有し、α、β、及びγがそれぞれ0.1≦α≦β、1≦α+β≦10、及び0≦γ≦10を満足することが開示されている。
特許文献1に記載の圧電セラミック電子部品では、焼成により圧電セラミック層又は圧電セラミック素体が形成されている。
国際公開第2010/050258号
しかしながら、特許文献1に記載の圧電セラミック電子部品では、高温時の絶縁性が劣化しやすいという問題があった。
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を製造することができる圧電磁器組成物及びその製造方法、並びに、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を提供することを目的とする。
本発明の圧電磁器組成物は、Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物であって、上記ニオブ酸カリウムナトリウムの結晶子内のXANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、MnOのXANESスペクトルにおいて観測されるMn2+のピーク位置PMnO[eV]を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]であることを特徴とする。
本発明の圧電セラミック電子部品は、Niを主成分とする内部電極と圧電セラミック層とが交互に積層されて焼結されてなる圧電セラミック素体を備え、上記圧電セラミック素体の表面に外部電極が形成された圧電セラミック電子部品であって、上記圧電セラミック層が、本発明の圧電磁器組成物で構成されていることを特徴とする。
本発明の圧電磁器組成物の製造方法は、Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物の製造方法であって、主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムと、副成分であるMnとを含むセラミック材料を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0〜0.4桁還元側となるように調整された雰囲気下において焼成する工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を製造することができる圧電磁器組成物及びその製造方法、並びに、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を提供することができる。
図1は、本発明の圧電セラミック電子部品の一実施形態である積層圧電アクチュエータの一例を模式的に示す断面図である。 図2は、本発明の圧電セラミック電子部品の一実施形態である積層圧電アクチュエータの斜視図である。 図3は、積層圧電アクチュエータの製造工程で得られるセラミックグリーンシートを模式的に示す斜視図である。 図4は、試料1に対して行ったMn−Kα線の蛍光X線マッピング写真である。 図5は、試料1に対して行ったNi−Kβ線の蛍光X線マッピング写真である。 図6は、MnO、Mn及びMnOのXANESスペクトルである。 図7は、試料1及び試料2のXANESスペクトルである。
以下、本発明の圧電磁器組成物、圧電磁器組成物の製造方法及び圧電セラミック電子部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
[圧電磁器組成物]
本発明の圧電磁器組成物は、Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物であって、上記ニオブ酸カリウムナトリウムの結晶子内のXANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、MnOのXANESスペクトルにおいて観測されるMn2+のピーク位置PMnO[eV]を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]であることを特徴とする。
本発明の圧電磁器組成物は、主成分としてニオブ酸カリウムナトリウムと、副成分としてMnが固溶しており、主成分である上記ニオブ酸カリウムナトリウムが、一般式{(K1−a−bNaLi)(Nb1−cTa)O}(ただし、a、b及びcは、それぞれ、0<a≦0.9、0≦b≦0.1、0<a+b≦0.9、0≦c≦0.3である。)で表されることが好ましい。
また、本発明の圧電磁器組成物は、主成分としてニオブ酸カリウムナトリウムと、副成分としてMnが固溶しており、主成分である上記ニオブ酸カリウムナトリウムが、K、Na、Li、Nb及びTaを含有し、上記主成分に含まれるNb1モルに対して、Kの含有量をαモル、Naの含有量をβモル、Liの含有量をγモル、Taの含有量をδモルとしたときに、以下の関係式(1)〜(5)を満たすことが好ましい。
0.1≦α<1.429 (1)
0<β≦1.286 (2)
0≦γ≦0.143 (3)
0<β+γ≦1.286 (4)
0≦δ≦0.429 (5)
XANESスペクトルにおけるMnのピーク位置と、圧電磁器組成物の圧電特性との関係は定かではないが、以下のようなメカニズムと推測している。
Mnは、酸素欠陥と電気的な対を形成して酸素欠陥の移動を妨げ、絶縁抵抗の低下を抑制する役割を担っている。XANESスペクトルにおいては、Mnの価数が高くなるほどピーク位置が高エネルギー側にシフトする。
従って、XANESスペクトルのMn由来のピーク位置をみることによって、KNN化合物中のMnの価数の遷移を測定することができる。ここで、Mnは、2価(Mn2+)、3価(Mn3+)及び4価(Mn4+)を取り得るが、KNN系化合物に添加した場合には、2価又は3価の状態であると推測される。なかでも3価のMn(Mn3+)は、Nbとイオン半径が近いため、酸素欠陥の形成を妨げる効果が大きいと考えられる。
従って、XANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、上記範囲であると、KNN化合物中のMnにおけるMn3+の割合が多くなるため、酸素欠陥の形成を妨げ、絶縁抵抗の低下を抑制することができると考えられる。
従って、本発明の圧電磁器組成物を用いることで、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を提供することができる。
本発明の圧電磁器組成物は、主成分となるニオブ酸カリウムナトリウム(以下、KNN系化合物ともいう)と、副成分となるMnを含む。
本明細書において、「主成分」とは、圧電磁器組成物中の存在割合(mol%)が最も大きい成分を意味し、望ましくは、存在割合が50mol%を超える成分を意味する。
KNN系化合物は、ペロブスカイト型構造を有し、一般式(K,Na)NbOで表される。KNN系化合物は、アルカリ金属元素として、K及びNaを含有しており、K及びNaに加えてLiをさらに含有することが好ましい。また、KNN系化合物は、上述したアルカリ金属元素に加えて他の元素を含有してもよく、例えば、Taを含有してもよい。
本発明の圧電磁器組成物は、KNN系化合物を50mol%を超えて含有することが好ましく、90mol%以上含有することがより好ましい。一方、本発明の圧電磁器組成物は、KNN系化合物を99mol%以下含有することが好ましく、85mol%以下含有してもよい。
本発明の圧電磁器組成物は、さらに副成分としてMnが固溶している。
Mnは酸素欠陥の移動を妨げ、絶縁抵抗の低下を抑制するが、Mnの添加量が多いとセラミック焼結体中にMnを含む異相が形成される。この異相は圧電特性を示さないため、異相が多いと圧電磁器組成物全体の圧電特性が低下する。
そのため、主成分100モルに対してεモルのMnを副成分として含有する場合、εは、0<ε≦10であることが好ましく、2≦ε≦10であることがより好ましい。
本発明の圧電磁器組成物は、圧電特性の改善等を目的として、他の成分を含有してもよい。例えば、主成分は、KNN系化合物に加えて、一般式M2M4O(M2はBa、Ca及びSrからなる群より選択される少なくとも1種の2価元素を示し、M4はZr、Sn及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の4価元素を示す。)で表される化合物を適量含有してもよい。これにより、圧電特性をさらに向上させることが可能となる。また、本発明の圧電磁器組成物は、副成分として、Mn以外の元素を含有してもよい。
KNN系化合物に加えて、上記一般式M2M4Oで表される化合物を含有する主成分は、{(1−x)(K1−a−bNaLi)(Nb1−cTa)O−xM2M4O}で表される。上記xは、0≦x≦0.06であることが好ましい。
本発明の圧電磁器組成物は、複数の結晶子から構成される。結晶子の粒径は、10μm以下であることが好ましい。一方、結晶子の粒径は、例えば、0.1μm以上である。
[圧電磁器組成物の製造方法]
本発明の圧電磁器組成物の製造方法は、Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物の製造方法であって、主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムと、副成分であるMnとを含むセラミック材料を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0〜0.4桁還元側となるように調整された雰囲気下において焼成する工程を含むことを特徴とする。
以下、本発明の圧電磁器組成物の製造方法の一例を示す。
まず、セラミック素原料として、例えば、Kを含有したK化合物、Nbを含有したNb化合物、2価のMnを含有したMn化合物を用意する。必要に応じて、Naを含有したNa化合物、Liを含有したLi化合物などを用意する。化合物の形態は、酸化物、炭酸塩、水酸化物いずれであってもよい。
次に、上記セラミック素原料を所定量秤量した後、これら秤量物をPSZボール等の粉砕媒体が内有されたボールミルに投入し、エタノール等の溶媒下、十分に湿式粉砕し、混合物を得る。
得られた混合物を乾燥させた後、所定温度(例えば、800℃以上1000℃以下)で仮焼して合成し、仮焼物を得る。
得られた仮焼物を解砕した後、有機バインダ、分散剤を加え、純水等を溶媒としてボールミル中で湿式混合し、セラミックスラリーを得る。
最後に、セラミックスラリーを所定の形状に成形した後、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0〜0.4桁還元側(すなわち、Ni/NiOの平衡酸素分圧を1とした場合に、10−0.4以上、1以下の酸素分圧)で焼成することで、本発明の圧電磁器組成物が得られる。
主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムと副成分であるMnとを含むセラミック材料を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0〜0.4桁還元側となるように調整された雰囲気下において焼成することによって、Mnの還元を極力抑制し、ニオブ酸カリウムナトリウム化合物中に固溶するMnのうち、Mn3+の割合を増加させることができると考えられる。
[圧電セラミック電子部品]
本発明の圧電セラミック電子部品は、Niを主成分とする内部電極と圧電セラミック層とが交互に積層されて焼結されてなる圧電セラミック素体を備え、上記圧電セラミック素体の表面に外部電極が形成された圧電セラミック電子部品であって、上記圧電セラミック層が本発明の圧電磁器組成物で構成されていることを特徴とする。
本発明の圧電セラミック電子部品は、圧電セラミック層が本発明の圧電磁器組成物で構成されているため、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することができ、耐久性が高い。
図1は、本発明の圧電セラミック電子部品の一実施形態である積層圧電アクチュエータの一例を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の圧電セラミック電子部品の一実施形態である積層圧電アクチュエータの斜視図である。図1は、図2に示す積層圧電アクチュエータのI−I線断面図に対応する。
図1及び図2に示す積層圧電アクチュエータ10は、圧電セラミック素体1と、圧電セラミック素体1の表面に設けられた外部電極2a及び2bと、を備える。図1及び図2では、外部電極2a及び2bは、圧電セラミック素体1の両端部に設けられている。外部電極2a及び2bは、例えば、Ag等の導電性材料から構成される。
図1に示すように、圧電セラミック素体1では、圧電セラミック層3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g及び3hと内部電極4a、4b、4c、4d、4e、4f及び4gとが交互に積層されている。圧電セラミック層3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g及び3hは、後述する本発明の圧電磁器組成物から構成される。内部電極4a、4b、4c、4d、4e、4f及び4gは、Niを主成分とする導電性材料から構成される。
積層圧電アクチュエータ10においては、内部電極4a、4c、4e及び4gの一端が一方の外部電極2aと電気的に接続され、内部電極4b、4d及び4fの一端が他方の外部電極2bと電気的に接続されている。外部電極2aと外部電極2bとの間に電圧が印加されると、圧電縦効果により矢印Zで示す積層方向に変位する。
[圧電セラミック電子部品の製造方法]
以下、本発明の圧電セラミック電子部品の製造方法の一実施形態として、図1及び図2に示す積層圧電アクチュエータ10の製造方法の一例について説明する。
セラミック素原料からセラミックスラリーを得る手順は、本発明の圧電磁器組成物と同様である。
ドクターブレード法等を使用して上記セラミックスラリーを成形加工をすることによって、セラミックグリーンシートを作製する。
次いで、Ni等の導電性材料を主成分とした内部電極用導電性ペーストを使用し、上記セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷によって所定形状の導電層を形成する。
図3は、積層圧電アクチュエータの製造工程で得られるセラミックグリーンシートを模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、導電層5a、5b、5c、5d、5e、5f及び5gがそれぞれ形成されたセラミックグリーンシート6a、6b、6c、6d、6e、6f及び6gを積層した後、導電層5gの表面に導電層が形成されていないセラミックグリーンシート7aを積層し、圧着する。これにより、セラミックグリーンシート6a、6b、6c、6d、6e、6f及び6gと導電層5a、5b、5c、5d、5e、5f及び5gとが交互に積層されたセラミック積層体を作製する。
得られたセラミック積層体を所定寸法に切断してアルミナ製の焼成冶具に載置し、所定温度(例えば、250℃以上500℃以下)で脱バインダ処理を行った後、還元雰囲気下、所定温度(例えば、1000℃以上1160℃以下)で焼成し、内部電極4a、4b、4c、4d、4e、4f及び4gが埋設された圧電セラミック素体1を形成する。
Niを主成分とする導電層とKNN系化合物を主成分とするセラミックグリーンシートを共焼成するためには、非酸化雰囲気、すなわち、Ni/NiOの平衡酸素分圧またはNi/NiOの平衡酸素分圧よりも還元側で焼成する必要がある。
一方、副成分であるMnも、上記雰囲気下において還元が進行し、Mn2+の割合が増加すると考えられる。従って、焼成は、Niが酸化しない雰囲気、かつ、Mnの還元が極力進行しない雰囲気であることが好ましい。
従って、本発明の圧電磁器組成物を作製するにあたっては、上記還元雰囲気を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0〜0.4桁還元側(すなわち、Ni/NiOの平衡酸素分圧を1とした場合に、10−0.4以上、1以下の酸素分圧)とする。
上記還元雰囲気における酸素分圧が、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.4桁還元側よりもさらに還元側になる(すなわち、Ni/NiOの平衡酸素分圧の10−0.4倍未満である)と、Mnの還元が進行しすぎて、Mn2+の割合が増加してしまうと考えられる。
焼成により得られた圧電セラミック素体1を構成する圧電セラミック層を構成する焼結体が、本発明の圧電磁器組成物である。
次いで、圧電セラミック素体1の両端部にAg等の導電性材料からなる外部電極用導電性ペーストを塗布し、所定温度(例えば、750℃以上850℃以下)で焼付け処理を行って、外部電極2a及び2bを形成する。
その後、所定の分極処理を行うことにより、積層圧電アクチュエータ10が製造される。なお、外部電極2a及び2bは、圧電セラミック素体1との密着性が良好であればよく、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成方法で形成してもよい。
以下、本発明の圧電セラミック電子部品をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(試料1)
セラミック素原料として、炭酸カリウムKCO、炭酸ナトリウムNaCO、炭酸リチウムLiCO、酸化ニオブNb、及び、炭酸マンガンMnCOを用意した。そして、(K1−a−bNaLi)NbO(0≦a≦0.9、0≦b≦0.1)となるように、上記セラミック素原料を秤量した。具体的には、KCO:15.03重量%、NaCO:13.68重量%、LiCO:1.12重量%、Nb:67.26重量%、MnCO:2.91重量%とした。秤量物をボールミルに投入し、エタノールを溶媒として混合撹拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを乾燥した後、900℃で仮焼し、仮焼粉末を得た。
仮焼粉末をバインダ、分散剤、界面活性剤、及び、エタノールを主成分とする有機溶媒で分散し、仮焼原料入りスラリーを得た。得られた仮焼原料入りスラリーをキャリアフィルム上に塗布して乾燥することにより、仮焼原料を含むセラミックグリーンシートを作製した。
セラミックグリーンシートをカットし、Niを主成分とする内部電極用導電性ペーストを用いて導電層を印刷した上で積層、圧着し、積層圧着体を作製した。
積層圧着体をカットした後、アルミナ製の焼成冶具に載せて脱脂した。その後、酸素分圧を制御しながら焼成することで、Niを主成分とする内部電極を含む積層焼結体を作製した。なお、酸素分圧は、焼成中の各温度において、Ni/NiOの平衡酸素分圧より0.4桁還元側となる酸素分圧(Ni/NiOの平衡酸素分圧の1/2.51の酸素分圧)に制御した。また、焼成温度は1035℃、焼成時間は30分とした。焼成条件を表1に示す。
(試料2)
焼成中の酸素分圧を、NiとNiOの平衡酸素分圧より0.5桁還元側となる酸素分圧(Ni/NiOの平衡酸素分圧の1/3.16の酸素分圧)に変更し、焼成温度を1100℃、焼成時間を2時間に変更したほかは、試料1と同様の方法により、積層圧着体を作製した。焼成条件を表1に示す。
(組成分析)
試料1及び試料2に対して、蛍光X線(XRF)元素分析及び誘導結合プラズマ(ICP)発光分析を併用して元素分析を行った。結果を表1に示す。
XRF元素分析では、ガラスビード法により試料を前処理し、測定径30μmの蛍光X線を照射し、スタンダードFP法を用いて、各元素(Liを除く)を定量した。
ICP発光分析では、試料をマイクロウェーブ分解した後、不溶分をろ過した試料溶液を用い、各元素(Liを含む)を定量した。
表1の結果より、試料1と試料2とでKNNの組成及び固溶するMnの量がほとんど同じであることを確認した。
(電気機械結合係数k31、圧電定数d31及びキュリー点Tcの測定)
インピーダンスアナライザを使用し、共振−反共振法によって、試料の長さ方向の電気機械結合係数k31を測定した。結果を表2に示す。
圧電定数d31は、インピーダンスアナライザで測定した比誘電率ε33と電気機械結合係数k31より計算した。
キュリー点Tcは、インピーダンスアナライザで比誘電率ε33の温度特性を測定し、比誘電率ε33の極大値を算出することで得た。
結果を表2に示す。
表2の結果より、試料2よりも試料1のほうが、電気機械結合係数k31及び圧電定数d31が高くなっていることを確認した。
(Mn及びNiの元素マッピング)
試料1〜2について、下記の方法に従って、蛍光X線マッピング法により、Mn及びNiの濃度分布を確認した。結果を図4及び図5に示す。図4は、試料1に対して行ったMn−Kα線の蛍光X線マッピング写真であり、図5は、試料1に対して行ったNi−Kβ線の蛍光X線マッピング写真である。
測定条件
測定装置:SPring−8(ビームライン:BL−05XU)
線源:X線[Si(111)二結晶モノクロメーターで分光後、KBミラーで集光]
X線エネルギー:9.2keV
ビームサイズ:約1μm×約1μm
測定領域:35μm×35μm(140pixel×140pixel)
1pixelあたりの積算時間:0.1sec
図4中の白い領域は、Mn濃度が高い(すなわちMnが偏析している)領域である。図4中の黒い領域にもMnは存在している。一方、図5の白い領域は、Ni濃度が高い(すなわちNiが偏析している)領域を示している。Niが偏析している領域は、内部電極である。
図4より、Mnが偏析していること、及び、ビームサイズを1.1μm×1.2μmとすることで、KNNの単一の結晶子を対象として元素分析を行えることを確認した。
また図5より、Niは偏析していないことを確認した。
[XAFSによるMn−K吸収端の測定(XANESスペクトルの測定)]
まず、リファレンスサンプルとしてMnO(Mn2+)、Mn(Mn3+)、MnO(Mn4+)を準備した。これらのサンプルをBNと混合してプレス成形し、直径約1cmのペレットを作製した。1.1μm×1.2μmに集光した硬X線をペレットに照射して、XAFSスペクトルを測定した。
照射X線を6205.00〜7281.75eVの範囲でエネルギー挿引し、発生した蛍光X線をSDD−4ch検出器で検出することでXAFSスペクトルを得た。スペクトルは4つのチャンネルで得た信号の平均値として得られる。なお、測定エネルギーステップ条件は0.355〜0.365eVで、各点の積算時間は3secである。
得られたXAFSスペクトルから、まずバックグラウンド除去処理を行った後、ポストエッジ(エネルギー)範囲6550eV〜6650eV程度で規格化し、Mn−K吸収端のXAFSスペクトルであるXANESスペクトルを得た。結果を図6に示す。図6は、MnO、Mn及びMnOのXANESスペクトルである。得られたスペクトルのピーク位置及びピーク強度を、表3に示す。
続いて、MnO、Mn、MnOと同様の手順で、試料1及び試料2についても、XANESスペクトルを測定した。このとき、KNNの単一の結晶子に集光した硬X線が照射されるように、照射位置を調整した。結果を図7に示す。
図7は、試料1及び試料2のXANESスペクトルである。図7には、MnO、Mn及びMnOのXANESスペクトルにおけるピーク位置も示している。得られたスペクトルのピーク位置及びピーク強度を、表3に示す。
(高温負荷試験)
下記の方法に従って、試料1及び試料2の高温負荷試験を行った。結果を表3に示す。
85℃で3.8kV/mmの電圧を印加し続け、絶縁抵抗が初期の1/100に低下するまでの時間(高温負荷試験寿命η)を測定した。
図7及び表3より、試料1のXANESスペクトルのピーク位置P[eV]が、Mn2+の標準試料であるMnOのピーク位置を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]を満たすことが確認された。このため、試料1では、試料2と比較してKNN結晶子中に存在するMn+3の割合が多くなっていると推測される。Mn+3の割合が多くなることによって、KNN骨格の酸素の脱離が抑制され、試料2と比較して高温負荷寿命試験の結果が良好であったと考えられる。
1 圧電セラミック素体
2a、2b 外部電極
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h 圧電セラミック層
4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g 内部電極
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g 導電層
6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、7a セラミックグリーンシート
10 積層圧電アクチュエータ(圧電セラミック電子部品)

Claims (7)

  1. Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物であって、
    前記ニオブ酸カリウムナトリウムの結晶子内のXANESスペクトルにおけるMnのピーク位置P[eV]が、MnOのXANESスペクトルにおいて観測されるMn2+のピーク位置PMnO[eV]を0[eV]としたときに、0<P<+5[eV]であることを特徴とする、圧電磁器組成物。
  2. 前記圧電磁器組成物は、主成分としてニオブ酸カリウムナトリウムと、
    副成分としてMnが固溶しており、
    主成分である前記ニオブ酸カリウムナトリウムが、一般式{(K1−a−bNaLi)(Nb1−cTa)O}(ただし、a、b及びcは、それぞれ、0<a≦0.9、0≦b≦0.1、0<a+b≦0.9、0≦c≦0.3である。)で表される、請求項1に記載の圧電磁器組成物。
  3. 前記圧電磁器組成物は、主成分としてニオブ酸カリウムナトリウムと、
    副成分としてMnが固溶しており、
    主成分である前記ニオブ酸カリウムナトリウムが、K、Na、Li、Nb及びTaを含有し、前記主成分に含まれるNb1モルに対して、Kの含有量をαモル、Naの含有量をβモル、Liの含有量をγモル、Taの含有量をδモルとしたときに、以下の関係式(1)〜(5)を満たす、請求項1に記載の圧電磁器組成物。
    0.1≦α<1.429 (1)
    0<β≦1.286 (2)
    0≦γ≦0.143 (3)
    0<β+γ≦1.286 (4)
    0≦δ≦0.429 (5)
  4. 前記主成分100モルに対して、εモルのMnを副成分として含有し、
    前記εは、0<ε≦10である、請求項2又は3に記載の圧電磁器組成物。
  5. 前記εは、2≦ε≦10である、請求項4に記載の圧電磁器組成物。
  6. Niを主成分とする内部電極と圧電セラミック層とが交互に積層されて焼結されてなる圧電セラミック素体を備え、前記圧電セラミック素体の表面に外部電極が形成された圧電セラミック電子部品であって、
    前記圧電セラミック層が、請求項1〜5のいずれかに記載の圧電磁器組成物で構成されていることを特徴とする、圧電セラミック電子部品。
  7. Mnを固溶させたニオブ酸カリウムナトリウムを含む圧電磁器組成物の製造方法であって、
    主成分であるニオブ酸カリウムナトリウムと、副成分であるMnとを含むセラミック材料を、Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.0〜0.4桁還元側となるように調整された雰囲気下において焼成する工程を含むことを特徴とする、圧電磁器組成物の製造方法。
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