JP2013219250A - 圧電セラミック電子部品、及び該圧電セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

圧電セラミック電子部品、及び該圧電セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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慎一郎 川田
Tadamasa Miura
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Abstract

【課題】非鉛系の強誘電体セラミック材料で圧電体層を形成した超薄型のユニモルフ型やバイモルフ型等の圧電セラミック電子部品、及びその製造方法を実現する。
【解決手段】金属板1の一方の主面に圧電体層2が形成され、該圧電体層2の表面で電極3が形成されている。圧電体層2は、ニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のNa、K、Li等のアルカリ金属元素Mが含有されている。また、ニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部の前記アルカリ金属元素Mを添加した圧電体ペーストを作製し、金属板1の一方の表面に圧電体ペーストを塗布した後、非酸化性雰囲気で焼成処理を行い、金属板の一方の表面に圧電体層2を形成して製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は圧電セラミック電子部品、及び圧電セラミック電子部品の製造方法に関し、より詳しくはユニモルフ型圧電アクチュエータやバイモルフ型圧電アクチュエータ等の圧電セラミック電子部品とその製造方法に関する。
今日、ユニモルフ型圧電アクチュエータやバイモルフ型圧電アクチュエータ等の圧電セラミック電子部品は、圧電スピーカや各種圧電振動子等に広く使用されている。
そして、例えば特許文献1には、中間板に圧電素子を組み合わせてなる圧電バイモルフ素子において、前記中間板が炭素を含むSK鋼の金属板であり、焼入れされた圧電バイモルフ素子が提案されている。
また、特許文献2には、圧電体層を焼成する温度に耐える耐熱性を有する材料によって形成された振動板の表面に、インクに吐出圧力を与えるための圧力室に対応して、チタン酸ジルコン酸鉛等を主成分とする圧電材料を含有する圧電体ペーストを印刷した後加熱、焼成して、上記圧電体層を形成するようにしたインクジェットヘッドの製造方法が提案されている。
一方、近年、環境面の配慮等から鉛を含有しない非鉛系の圧電体磁器組成物が注目されている。特に、ペロブスカイト構造(一般式ABO)のAサイトにKやNa等のアルカリ金属元素を主成分として配し、BサイトにNbを主成分として配したニオブ酸アルカリ化合物系の圧電体磁器組成物は、比較的大きな圧電定数が得られることから、盛んに研究・開発が行われている。
例えば、特許文献3には、主成分が、一般式{(1-x)(K1-a-bNaLi)(Nb1-cTa)O}−xM2M4O}(ただし、M2はCa、Ba、及びSrのうちの少なくともいずれか1種、M4はZr、Sn、及びHfのうちの少なくともいずれか1種、x、a、b、cはそれぞれ0≦x≦0.06、0≦a≦0.9、0≦b≦0.1、0≦c≦0.3である。)で表されると共に、副成分として、主成分100モルに対し、2αモルのNa、(α+β)モルのM4′元素(M4′はZr、Sn、及びHfのうちの少なくともいずれか1種の元素を示す。)、及びγモルのMnを含有し、前記α、β、及びγが、それぞれ0.1≦α≦β、1≦α+β≦10、及び0≦γ≦10を満足する圧電磁器組成物が提案されている。
この特許文献3では、内部電極材料にNiを使用しても、還元雰囲気下で焼成することにより、Niと共焼結することが可能であり、分極不良を招くこともなく圧電特性の良好な積層型圧電アクチュエータを得ようとしている。
特開昭63−17574号公報(特許請求の範囲第1項等) 特開平6−198855号公報(請求項1、段落番号〔0023〕〜〔0024〕等〕 国際公開2010/050258号(請求項1、段落番号〔0079〕〜〔0081〕等)
しかしながら、特許文献1は、金属板に圧電素子を貼り合わせているため、圧電体層の薄膜化には限界があった。すなわち、近年、この種の圧電セラミック電子部品では、圧電体層の厚みをより一層薄くして変位量を増加させることが要求されている。しかしながら、特許文献1のように金属板に圧電素子を貼り合わせたタイプでは、100μm程度しか薄膜化できず、圧電体層の薄膜化には限界があった。
また、特許文献2は、圧電体ペーストをシリコン単結晶ウエハからなる振動板上に印刷した後加熱、焼成していることから、特許文献1のように金属板に貼り合わせる場合に比べると、圧電体層の薄膜化は可能であるが、振動板にはシリコン単結晶ウエハ等の圧電体層の焼成温度に耐え得る耐熱性材料を使用する必要がある。すなわち、Ni等の圧電体層の焼成温度に耐えるのが困難な金属板を振動板に使用することができず、特許文献2をユニモルフ型やバイモルフ型等の圧電アクチュエータに適用するのは困難である。しかも、特許文献2では、圧電体ペーストの主成分としてチタン酸ジルコン酸鉛を使用しており、環境負荷も大きい。
さらに、特許文献3は、非鉛系の圧電磁器組成物を還元雰囲気で焼成することによりNi等の卑金属材料との共焼結を可能としているが、本発明者らが該圧電磁器組成物をNi製の金属板と共に焼結しようとしたところ、得られた焼結体は絶縁抵抗が小さく、このため強誘電体として使用するのが困難であることが判明した。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、非鉛系の強誘電体セラミック材料で圧電体層を形成した超薄型のユニモルフ型やバイモルフ型等の圧電セラミック電子部品、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を行なったところ、ペロブスカイト構造を有するニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mを含有させた圧電体ペーストを作製し、該圧電体ペーストを金属板の少なくとも一方の主面に塗布し、その後、非酸化性雰囲気で焼成することにより、強誘電体の圧電体層を得ることができ、これにより超薄型で変位量の大きなユニモルフ型やバイモルフ型の圧電セラミック電子部品を得ることができるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る圧電セラミック電子部品は、金属板の少なくとも一方の主面に圧電体層が形成された圧電セラミック電子部品であって、前記圧電体層が、ペロブスカイト型構造を有するニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mが含有されていることを特徴としている。
また、本発明の圧電セラミック電子部品は、前記アルカリ金属元素Mは、K、Nb、及びLiのうちの少なくとも1種であるのが好ましい。
さらに、本発明の圧電セラミック電子部品は、前記ニオブ酸アルカリ化合物を形成するアルカリ金属元素Aは、K及びNaのうちの少なくとも1種を主体とするのが好ましい。
また、本発明に係る圧電セラミック電子部品の製造方法は、ペロブスカイト型構造を有するニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mを添加した圧電体ペーストを作製し、金属板の少なくとも一方の主面に前記圧電体ペーストを塗布した後、非酸化性雰囲気で焼成処理を行い、前記金属板の少なくとも一方の表面に圧電体層を形成することを特徴としている。
また、本発明の圧電セラミック電子部品の製造方法は、少なくともニオブ化合物とアルカリ化合物とを含む所定量のセラミック素原料を混合して熱処理し、粉末状の主成分を作製し、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mを含有したM化合物を添加し混合処理を行って前記圧電体ペーストを作製することを特徴としている。
さらに、本発明の圧電セラミック電子部品の製造方法は、前記アルカリ金属元素Mは、K、Nb、及びLiのうちの少なくとも1種であるのが好ましい。
また、本発明の圧電セラミック電子部品の製造方法は、前記セラミック素原料中のアルカリ化合物Aを形成するアルカリ金属元素は、K及びNaのうちの少なくとも1種を主体とするのが好ましい。
本発明の圧電セラミック電子部品によれば、金属板の少なくとも一方の主面に圧電体層が形成された圧電セラミック電子部品であって、前記圧電体層が、ペロブスカイト型構造を有するニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mが含有されているので、絶縁抵抗が大きくなり、金属板の表面には強誘電体の圧電体層が形成され、これにより変位量の大きなユニモルフ型やバイモルフ型等の圧電セラミック電子部品を得ることができる。
また、本発明の圧電セラミック電子部品の製造方法によれば、ニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mを添加した圧電体ペーストを作製し、金属板の少なくとも一方の主面に前記圧電体ペーストを塗布した後、非酸化性雰囲気で焼成処理を行い、前記金属板の少なくとも一方の表面に圧電体層を形成するので、金属板が卑金属材料で形成されている場合であっても、圧電体ペーストを金属板と共に焼成することができ、強誘電体の圧電体層を得ることができる。したがって、従来のように金属板と圧電体とを貼り合わせる必要がなくなり、超薄型で変位量の大きなユニモルフ型圧電アクチュエータやバイモルフ型圧電アクチュエータや等の圧電セラミック電子部品を得ることができる。
本発明に係る圧電セラミック電子部品としてのユニモルフ型圧電アクチュエータの一実施の形態を示す断面図である。 実施例における試料番号4の電界−分極特性を示す特性図である。 実施例における試料番号6の電界−分極特性を示す特性図である。
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
図1は、本発明に係る圧電セラミック電子部品としてのユニモルフ型圧電アクチュエータ(以下、単に「圧電アクチュエータ」という。)の一実施の形態を示す断面図である。
すなわち、この圧電アクチュエータは、円板形状等に形成された金属板1の一方の表面に圧電体層2が形成され、該圧電体層2の表面に電極3が形成されている。
そして、この圧電アクチュエータでは、電極3と金属板1との間に交流電圧が印加されると、圧電体2が矢印A方向に伸縮し、その結果、矢印B方向に微小振動が発生する。
ここで、金属板1は、良導電性を有し、かつ低コストであるNi、Cu、及びこれらの合金類等の卑金属材料を好んで使用することができる。
また、電極3を形成する電極材料については、特に限定されるものではなく、上述した卑金属材料の他、Ag、Ag−Pd等を使用することができる。
そして、上記圧電体層2は、ペロブスカイト型構造(一般式ABO)を有するニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mが含有されている。
すなわち、近年、環境面の配慮等からPZT等のPb系圧電セラミック材料に代えて、鉛を含有しない非鉛系の圧電セラミック材料の開発が盛んに行なわれている。その中でも、ペロブスカイト型構造のAサイトにアルカリ金属元素Aを配し、Bサイトにニオブ(Nb)を配したニオブ酸アルカリ化合物系の圧電セラミック材料は、比較的大きな圧電定数が得られることから、注目を集めている。
一方、各種電子機器に搭載される電子部品では軽薄短小化が求められている。そして、特許文献1のように圧電体層2の主面に金属板を貼設した場合、薄型化には限界があることから、金属板1に圧電体ペーストを塗布し、該圧電体ペーストを金属板1と共に焼成することにより、薄層化することが望まれる。
しかしながら、例えば、特許文献3のような従来の圧電磁器組成物を使用して圧電体ペーストを作製し、該圧電体ペーストを金属板の主面に塗布し、圧電体ペースを金属板と共に焼成した場合、焼結体の絶縁抵抗が小さく、このため強誘電体の圧電体層を得るのが困難である。
そこで、本発明では、ニオブ酸アルカリ化合物を主成分とする圧電体ペーストにおいて、前記主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mを含有させ、この所定量のアルカリ金属元素Mを含有した圧電体ペーストを使用することにより、圧電体層2が強誘電体となるように絶縁抵抗を大きくし、これにより超薄型で変位量の大きな圧電アクチュエータを得ている。
このように圧電体層2が大きな絶縁抵抗が得られたのは、主成分100モル部に対し、30〜200モル部のアルカリ金属元素Mを添加したことから、圧電体ペーストを金属板と共に焼成しても、焼成時におけるセラミック材料の収縮挙動が金属板と整合し、良好な焼結体が得られたものと考えられる。
ここで、アルカリ金属元素Mの含有モル量を主成分100モル部に対し、30〜200モル部としたのは以下の理由による。
すなわち、アルカリ金属元素Mの含有モル量が30モル部未満になると、アルカリ金属元素Mの十分な添加効果を得ることができない。一方、アルカリ金属元素Mの含有モル量が200モル部を超えると、却って絶縁抵抗が低下し、強誘電体の実現が困難になるおそれがある。これは、アルカリ金属元素Mの含有モル量が200モル部を超えると、過剰に含有されたアルカリ金属元素Mが結晶粒界に残存して粒界抵抗が低下し、このため絶縁抵抗の低下を招くものと考えられる。
したがって、アルカリ金属元素Mの含有モル量を適切な範囲、すなわち、主成分100モル部に対し、30〜200モル部に調製する必要がある。
尚、圧電体層2に含有されるアルカリ金属元素Mの存在形態は特に限定されるものではなく、主成分に固溶されていてもよく、結晶粒界や結晶三重点に存在していてもよい。また、アルカリ金属元素Mの一部が主成分に固溶し、残りが結晶粒界や結晶三重点に存在していてもよい。すなわち、主成分に対し上述した適切な範囲のアルカリ金属元素Mが含有されていれば、本発明の効果を発現することができる。
また、主成分に対して添加されるアルカリ金属元素Mは、周期律表のIA族に属するものであれば限定されるものではないが、通常はK、Na、及びLiのうちの少なくとも1種以上が好んで使用される。
また、主成分のニオブ酸アルカリ化合物に含有されるアルカリ金属元素Aは、K及びNaのうちの少なくとも1種を主体としている。通常はK及びNaのうちの少なくとも1種、又はこれらを任意の割合で配合させて使用することができる。尚、Liについては許容されるものの、良好な圧電特性を確保する観点からは、極力少量であるのが好ましく、Liを含有する場合であっても、Liの含有量は、K、Na、Liの総含有量に対し、モル比で0.1以下が好ましい。
このように本圧電アクチュエータは、金属板1の一方の主面に圧電体層2が形成され、該圧電体層2が、ニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mが含有されているので、絶縁抵抗が大きく、強誘電体の圧電体層2を得ることができ、超薄型で変位量の大きな圧電アクチュエータを得ることができる。
次に、上記圧電アクチュエータの製造方法を詳述する。
まず、以下の方法で圧電体ペーストを作製する。
すなわち、セラミック素原料として、K、Na等のアルカリ金属元素Aを含有したA化合物、及びNbを含有したNb化合物をそれぞれ用意し、所定量秤量する。次いで、これら秤量物をアルカリ金属元素Mが内有されたボールミルやポットミル等の粉砕機に投入し、エタノール等の溶媒下、十分に湿式粉砕し混合物を得る。
そして、この混合物を乾燥させた後、所定温度(例えば、850〜1000℃)で仮焼して合成し、主成分粉末を得る。
次に、K、Na、Li等のアルカリ金属元素Mを含有したM化合物を用意する。そして、前記主成分粉末を解砕した後、該主成分粉末100モル部に対しアルカリ金属元素Mが30〜200モル部となるようにM化合物を添加し、更に、有機バインダ、分散剤、有機溶剤、ワニス、可塑剤等を粉砕媒体が内有されたボールミル中で湿式混合し、エバポレータ等で有機溶剤を除去し、圧電体ペーストを作製する。
次いで、卑金属材料で形成された金属板1の一方の主面に圧電体ペーストを塗布した後、乾燥させ、前記金属板1が酸化しないように中性雰囲気乃至還元雰囲気等の非酸化性雰囲気で1000〜1200℃程度の温度で所定時間焼成し、金属板1の一方の主面に圧電体層2が形成された焼結体を作製する。
次いで、スパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成法、或いは塗布法等を使用し、圧電体2の表面にAg等からなる電極を形成し、これにより圧電アクチュエータが作製される。
このように本製造方法は、ニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mを添加した圧電体ペーストを作製し、金属板1の一方の主面に前記圧電体ペーストを塗布した後、非酸化性雰囲気で焼成処理を行い、前記金属板1の少なくとも一方の表面に圧電体層2を形成しているので、超薄型で変位量の大きな圧電アクチュエータを得ることができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。また、本発明の効果は、ニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分に大量のアルカリ金属元素Mを含有させることにより発現するものであることから、特性に影響を与えない範囲で各種添加物を含有させるのも好ましい。
例えば、ニオブ酸アルカリ化合物を主成分とするのであれば、ジルコン酸カルシウム等の他のペロブスカイト型複合酸化物(以下、「第2の複合酸化物」という。)をニオブ酸アルカリ化合物に適量固溶させてもよい。ただし、第2の複合酸化物の含有量が過剰になると圧電特性が劣化するおそれがある。したがって、第2の複合酸化物をニオブ酸アルカリ化合物に固溶させる場合であっても、第2の複合酸化物の含有量は、ニオブ酸アルカリ化合物と第2の複合酸化物との総計に対し、モル比で0.06以下が好ましい。
また、Zr、Sn、Hf等の4価の元素を、必要に応じ酸化物形態で適量含有させたり、MnOを適量含有させてもよい。ただし、これらの添加物が過剰になると圧電特性の低下を招くおそれがあることから、これらの添加物を含有する場合であっても、その含有量は、主成分100モル部に対し、10モル部以下が好ましい。
また、希土類元素を必要に応じ適量含有させてもよい。ただし、希土類元素の含有量が過剰になると焼結不良を招き、絶縁抵抗が低下するおそれがある。したがって、希土類元素を含有させる場合であっても、その含有量は、主成分100モル部に対し5モル部以下が好ましい。尚、希土類元素を含有させる場合、好ましい希土類元素としては、Yb、Y、Nd、Eu、Gd、Dy、Sm、Ho、Er、Tb、Lu、Pr等がある。
また、上記実施の形態では、ユニモルフ型の圧電アクチュエータについて説明したが、金属板1の両面に圧電体層を形成したバイモルフ型のアクチュエータにも適用できるのはいうまでもない。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
〔試料の作製〕
まず、セラミック素原料として、KCO、NaCO、LiCO、Nb、CaCO、ZrO、MnCO、及びYbを用意した。
そして、固溶体を形成するニオブ酸アルカリ化合物とジルコン酸カルシウムとの比率が98:2となり、かつアルカリ金属元素(K、Na、Li)中のKのモル比が0.45、Naのモル比が0.53、Liのモル比が0.02となるようにKCO、NaCO、LiCO、Nb、CaCO、ZrOを秤量した。
次いで、前記固溶体100モル部に対しZrO:3モル部、MnO:5モル部、YbO1.5:0.5モル部となるように、ZrO、MnCO、及びYbを秤量した。
次いで、これら秤量物を、PSZボールが内有されたポットミルに投入し、エタノールを溶媒にして約90時間ポットミルを回転し、湿式で混合した。そして、得られた混合物を乾燥した後、900℃の温度で仮焼し、組成式[100{0.98(K0.45Na0.53Li0.02)NbO−0.02CaZrO}+3ZrO+5MnO+0.5YbO1.5]で表される主成分粉末を得た。
次いで、これら主成分粉末を解砕した後、該主成分粉末100モル部に対し、表1に示す添加物を表1に示すモル部となるように添加し、更に、有機バインダ、分散剤、アセトン、可塑剤、及びPSZボールと共に、ポットミルに投入し、該ポットミルを回転させながら十分に湿式で混合し、その後エバポレータでアセトンを除去し、これにより圧電体ペーストを得た。
次に、厚みが200μmのNi製金属板の一方の主面に対し、厚みが30μmとなるように前記圧電体ペーストを塗布して乾燥し、その後Ni/NiOの平衡酸素分圧の0.5桁還元側になるよう調整された還元雰囲気で1000〜1160℃の温度で2時間焼成し、金属板の一方の主面に圧電体が形成された焼結体を得た。
次いで、Agをターゲットにしてスパッタリングを行い、前記焼結体の表面に電極を形成し、これにより試料番号1〜8の試料を得た。
〔試料の評価〕
試料番号1〜8の各試料について、直流電流電圧計を使用し、絶縁抵抗logρ(ρ:Ω・cm)を測定した。
表1は試料番号1〜8の各試料について、主成分に添加された添加物、添加物の主成分100モル部に対する含有量、及び絶縁抵抗logρを示している。
尚、絶縁抵抗logρは10以上を良品、10未満を不良品と判断した。
Figure 2013219250
試料番号1は、アルカリ金属元素Mが添加されていないため、絶縁抵抗logρが2.0と小さく、強誘電体の圧電体層としては使用できないことが分かった。
試料番号2〜6は、添加物としてNa(CO1/2を使用したものである。
試料番号2は、添加物であるNa(CO1/2の含有モル量が主成分100モル部に対し10モル部と少なく、このため絶縁抵抗logρが3.0となって10未満となり、十分な絶縁抵抗が得られず、強誘電体の圧電体層としては使用できないことが分かった。
一方、試料番号6は、添加物であるNa(CO1/2の含有モル量が主成分100モル部に対し300モル部と過剰であり、このため絶縁抵抗logρが6.1となって10未満となり、十分な絶縁抵抗が得られず、強誘電体の圧電体層としては使用できないことが分かった。
これに対し試料番号3〜5は、主成分100モル部に対し、30〜200モル部のNaが含有されているので、絶縁抵抗logρが10.2〜11.0となって10以上と十分に大きく、強誘電体の圧電体層として使用できることが分かった。
すなわち、絶縁抵抗logρを向上させるためには、主成分にアルカリ金属元素Mを含有させるのが効果的であるが、含有量を適切な範囲に制御する必要のあることが確認された。
試料番号7は、試料番号4のNa(CO)1/2:100モル部に代えてK(CO1/2:100モル部を含有させた試料であり、試料番号8は、Li(CO1/2:100モル部を含有させた試料である。
この試料番号7、8から明らかなように、K(CO1/2、Li(CO)1/2を含有させた場合であっても、絶縁抵抗logρが10以上の良好な強誘電体が得られることが分かった。
次に、本発明範囲内の試料番号4及び本発明範囲外の試料番号6について、強誘電体測定装置(ラジアントテクノロジー社製RT6000)を使用し、電界−分極特性を測定した。
図2は試料番号4の電界−分極特性、図3は試料番号6の電界−分極特性の各特性図を示し、横軸が電界E、縦軸が分極Pである。
図3は、強誘電体で得られるヒステリシスカーブを得ることができなかった。これは表1からも明らかなように、絶縁抵抗logρが6.1と小さく、大きなリーク電流が発生し、強誘電体にはならなかったためと思われる。
これに対し図2は、絶縁抵抗が11.0と十分に大きく、強誘電体に特有のヒステリシスカーブが得られることが確認された。
非酸化性雰囲気で焼成しても、絶縁抵抗が大きく、超薄型のユニモルフ型圧電アクチュエータ等の圧電セラミック電子部品を実現できる。
1 金属板
2 圧電体

Claims (8)

  1. 金属板の少なくとも一方の主面に圧電体層が形成された圧電セラミック電子部品であって、
    前記圧電体層が、ペロブスカイト型構造を有するニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mが含有されていることを特徴とする圧電セラミック電子部品。
  2. 前記アルカリ金属元素Mは、K、Nb、及びLiのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の圧電セラミック電子部品。
  3. 前記ニオブ酸アルカリ化合物を形成するアルカリ金属元素Aは、K及びNaのうちの少なくとも1種を主体とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の圧電セラミック電子部品。
  4. ペロブスカイト型構造を有するニオブ酸アルカリ化合物を主成分とし、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mを添加した圧電体ペーストを作製し、
    金属板の少なくとも一方の表面に前記圧電体ペーストを塗布した後、非酸化性雰囲気で焼成処理を行い、前記金属板の少なくとも一方の表面に圧電体層を形成することを特徴とする圧電セラミック電子部品の製造方法。
  5. 少なくともニオブ化合物とアルカリ化合物とを含む所定量のセラミック素原料を混合して熱処理し、粉末状の主成分を作製し、該主成分100モル部に対し30〜200モル部のアルカリ金属元素Mを含有したM化合物を添加し混合処理を行って前記圧電体ペーストを作製することを特徴とする請求項4記載の圧電セラミック電子部品の製造方法。
  6. 前記金属板は、卑金属材料で形成されていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の圧電セラミック電子部品の製造方法。
  7. 前記アルカリ金属元素Mは、K、Nb、及びLiのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の圧電セラミック電子部品の製造方法。
  8. 前記セラミック素原料中のアルカリ化合物を形成するアルカリ金属元素Aは、K及びNaのうちの少なくとも1種を主体とすることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれかに記載の圧電セラミック電子部品の製造方法。
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