JP7351597B2 - 車両のシート構造 - Google Patents

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Description

本発明は、シートバックと、シートベルト装置のバックル等が挿通される貫通部が設けられたシートクッションとを備える車両のシート構造に関する。
従来、自動車の後部座席を構成するシートクッションには、シートベルト装置のバックルを収納する切欠きや貫通孔が設けられている(例、特許文献1,2)。特許文献1,2は、上記切欠き等の開口部においてバックルの周囲に生じる隙間を隠す構造として、一対のシート片によって上記開口部を覆う構造を開示する。各シート片は、上記開口部の幅の半分程度の幅を有する長方形状である。各シート片における一方の長辺縁は、シートクッションのパッドを覆う表皮材において上記切欠き等の内周面を覆う箇所に縫合される。両シート片における他方の長辺縁がつくる合わせ目から、上記バックルが引き出される。
特開2014-004877号公報 特開2013-067344号公報
上述のようにシートクッションに設けられた切欠きや貫通孔においてシートベルト部材(例、バックル)の周囲に生じる隙間を隠して外観品質に優れつつ、製造性にも優れるシート構造が望まれる。
上述の従来の隠し構造では、各シート片の平面積が上記切欠き等の開口部の平面積に対して半分程度又はそれ以下であり、小さい。そのため、各シート片は縫合し難い。この点は、表皮材の製造性の低下、更には製造コストの増大を招く。
そこで、本発明の目的の一つは、外観品質に優れつつ、製造性にも優れる車両のシート構造を提供することにある。
本発明の一態様に係る車両のシート構造は、
シートクッションと、シートバックとを備える車両のシート構造であって、
前記シートクッションは、その表裏に貫通して、シートベルト部材が挿通される貫通部を備え、
前記シートクッションの表面に設けられる表皮部、及び前記シートバックの表面に設けられる表皮部の一方又は双方は、前記貫通部の開口部における前記シートベルト部材の周囲を覆う延設部を備える。
上記延設部は、上記貫通部の開口部においてシートベルト部材の周囲に生じる隙間を隠す。そのため、上記の車両のシート構造は、外観品質に優れる。また、上記の車両のシート構造は、以下に説明するように上述の従来の隠し構造に比較して、製造性にも優れる。
表皮部は局所的に広い箇所や長い箇所を有し、この増大箇所が上記延設部を構成する。このような表皮部は、代表的には上述の従来の隠し構造に備えられるシート片よりも大きな平面積を有するシート材、特に上記開口部の平面積以上の平面積を有するシート材を用いて製造できる。このシート材は、上記開口部の平面積の半分以下程度であるシート片に比較して大きいため、縫合等を行い易い。従って、上記延設部を備える表皮部は、製造性に優れる。
実施形態1の車両のシート構造を示す斜視図である。 実施形態1の車両のシート構造において、シートクッションと、シートバックとを分離して示す分解斜視図である。 実施形態1の車両のシート構造において、延設部の配置状態を説明する斜視図である。 図1に示す車両のシート構造において、(IV)-(IV)切断線で切断した状態を示す断面図である。 図1に示す車両のシート構造において、(V)-(V)切断線で切断した状態を示す断面図である。 図1に示す車両のシート構造において、(VI)-(VI)切断線で切断した状態を示す断面図であって、シートバックが直立した状態を示す。 図1に示す車両のシート構造において、(VI)-(VI)切断線で切断した状態を示す断面図であって、シートバックがリクライニング位置にある状態の一例を示す。 図1に示す車両のシート構造において、(VI)-(VI)切断線で切断した状態を示す断面図であって、シートバックがリクライニング位置にある状態の別例を示す。 実施形態1の車両のシート構造において、シートバックが前倒しされた状態を車両前後方向に平行な平面で切断した断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の車両のシート構造を具体的に説明する。
図中、同一符号は同一名称物を示す。
図中の「FR」は車両の前方、「RR」は車両の後方、「UP」は車両の上方、「LWR」は車両の下方、「RH」は車両の右方、「LH」は車両の左方を示す。以下、単に、前方、後方、上方、下方、右方、左方と呼ぶことがある。
[実施形態1]
図1~図7を参照して、実施形態1に係る車両のシート構造を説明する。
図1は、シートバック3が直立した状態において、左斜め前からみた斜視図である。
図4,図5は、シートクッション2の貫通部29を車幅方向(左右方向)に平行な平面で切断した断面図である。図4は、貫通部29における前後方向の中間部を示す。図5は、貫通部29の後端近くを示す。
図6A~図6Cは、シートクッション2の貫通部29を前後方向に平行な平面で切断した断面図である。図6A~図6Cでは、シートバック3の傾斜角度が異なる。
図7は、シートバック3が前倒しされた状態において、貫通部29の幅方向の中心位置(図1に示す(VI)-(VI)切断線と同様な位置)で、前後方向に平行な平面で切断した断面図である。図6,図7は、バックル9を実線で示す。
(概要)
実施形態1の車両のシート構造1は、シートクッション2と、シートバック3とを備えるシートを主体とし、車体等(図示せず)に固定されるシートベルト装置を備える車両に利用される。シートクッション2は、シートベルト部材が挿通される貫通部29を備える。貫通部29は、シートクッション2の表裏に貫通する(図4,図5)。本例のシートベルト部材はバックル9である。以下、バックル9をシートベルト部材として説明することがある。
シートクッション2の表面には表皮部4が設けられる。シートバック3の表面には表皮部5が設けられる。
特に、実施形態1の車両のシート構造1では、表皮部4及び表皮部5の双方が延設部49,59を備える(図2,図3)。延設部49,59は、貫通部29の開口部28におけるバックル9の周囲を覆う(図1,図3,図4,図5)。このような延設部49,59は、開口部28におけるバックル9の周囲に生じる隙間を隠す部材として機能する。また、延設部49,59は、後述するように比較的大きな平面積を有する裏面被覆部44の一部、帯部54の一部で構成される(図2)。いわば延設部49,59は、表皮部4,5の一部が開口部28を覆うように延長された箇所である。図2は、分かり易いように延設部49,59にハッチングを付して示す。
以下、まず、シートの基本構成、シートベルト装置の基本構成、貫通部29を簡単に説明する。次に、表皮部4,5を詳細に説明する。
(シート)
本例のシートは、シートクッション2と、シートバック3と、変位機構(詳細は図示せず)とを備える。変位機構によって、シートバック3は、シートクッション2に対して前倒し可能及びリクライニング可能に設けられる。また、本例のシートは、自動車の後部座席であって、右方に配置される一人用シートである。以下、このシートを例に説明する。左方に配置されるシートについては、「右方」を「左方」に読み替えるとよい。
シートクッション2は、フレーム20と、パッド21と、表皮部4とを備える(図7)。シートバック3は、フレーム30と、パッド31と、表皮部5とを備える(図7)。各フレーム20,30は、シートクッション2の骨格、シートバック3の骨格を構成する。図7は、フレーム20,30の概略を部分的に示す。シートクッション2は、更に、複数のばね材(図示せず)を備える。各ばね材は、Sバネ等であり、例えばフレーム20において対向配置される左右の部材間に渡される。各パッド21,31は、発泡ウレタン等の樹脂からなるクッション材から構成され、フレーム20,30を覆うように取り付けられる。各表皮部4,5は、主としてパッド21,31を覆って、シートクッション2の表層、シートバック3の表層を構成する。
本例の変位機構は、回転機構と、リンク機構と、リクライニング機構とを有する。変位機構は、主として、フレーム20,30に設けられる。
回転機構は、シートクッション2に対してシートバック3を直立状態(図1,図6A)と前倒し状態(図7)とに回転可能に支持する。
リンク機構は、シートバック3の前倒し動作に伴って、シートクッション2を下方に沈み込ませるように変位可能に支持する。具体的には、シートクッション2は、リンク機構によって、前後方向にスライド可能に支持されると共に、上下方向にスライド可能に支持される。
リクライニング機構は、シートバック3を所定の後傾角度に回転可能に支持する(図6B,図6C)。
図6,図7は、シートバック3の回転動作の中心となる回転軸Pを示す。図7は、リンク機構の連結軸A,B,Cを示す。回転軸Pと連結軸Aとを繋ぐリンクが固定リンクである。
シートの基本的な構成は公知の構成を利用できる。例えば、変位機構は、特開2010-012817号公報等を参照するとよい。
(シートベルト装置)
シートベルト装置は、代表的には、帯状のウェビングと、タングと、バックル9と、ショルダーアンカーと、リトラクターと、ベルトアンカーとを備える(詳細は図示せず)。
ウェビングの一端部は、ベルトアンカーに固定される。ウェビングの他端部は、リトラクターに連結される。リトラクターは、ウェビングの余長を巻き取る。ウェビングの中間部は、ショルダーアンカーに摺動可能に掛け通される。ベルトアンカーやリトラクターは、例えば車体の下方等に設けられる。ショルダーアンカーは、例えば車体の上方等に設けられる。
バックル9は、車体の下方等に固定され、シートクッション2の貫通部29を経てシートクッション2の座面側に配置される(図1)。
上述のシートに着座した乗員がシートベルトを装着する際には、リトラクターからウェビングを引き出しながら、ウェビングに装着されるタングをバックル9に挿入する。タングとバックル9とが固定されることで、ウェビングは乗員を拘束する。
本例ではバックル9が貫通部29から露出される場合を示すが、車体の下方等に固定されたタングが貫通部29から露出される場合がある(図示せず)。
(貫通部)
シートクッション2において後方の角部(ここでは左方の角部)近くに貫通部29が設けられている(図1,図2)。本例の貫通部29は、三方に開口する。具体的には貫通部29は、シートクッション2の座面側(上方)から座面に対向する裏面側(下方)に連続して開口すると共に、後面にも開口する。本例の貫通部29の内部空間は、後方が相対的に広幅の直方体状、前方が細幅の直方体状という段差形状である。座面側の開口部及び裏面側の開口部28(図4,図5)は、上下方向からの平面視で、後方が相対的に幅広の長方形状、前方が相対的に細幅の長方形状という段差形状である。
貫通部29は、バックル9やタングといったシートベルト部材を収納する。バックル9は、貫通部29の裏面側から貫通部29の座面側に向って挿通され(図6)、先端部が上述の座面側の開口部から露出される(図1)。
貫通部29は、主として、パッド21によって構成される。本例では、パッド21の後方の角部近くにU字状に切り欠かれたような箇所がある。この切欠き箇所が貫通部29である。パッド21における貫通部29を構成する箇所の表面(内周面)は、表皮部4の一部(後述の凹部被覆部43)によって覆われる(図2)。
本例では、パッド21における貫通部29を構成する箇所のうち、側方(左方)に位置する箇所(以下、腕部25と呼ぶ)の内部には、フレーム20の一部が収納される(図4,図5)。腕部25において、フレーム20の外周の少なくとも一部はカバー材27によって覆われる。腕部25において、パッド21は、上記カバー材27の少なくとも一部を覆うように設けられる。カバー材27は、樹脂等で構成される成形体である。
(表皮部)
〈概要〉
以下、主に図2を参照して、表皮部4,5を説明する。
表皮部4,5は、代表的には、布等のシート材が縫合される等して、パッド21,31の外形に沿った形状を有する被覆部材である。表皮部4,5は、パッド21,31の表面を覆うことで、外観品質の向上、耐久性の向上等に寄与する。本例のシートクッション2側の表皮部4は、貫通部29の開口部28の一部を覆う延設部49を備える(図3も参照)。本例のシートバック3側の表皮部5は、貫通部29の開口部28の実質的に全部を覆う延設部59を備える(図5~図7も参照)。そのため、延設部59は、バックル9等のシートベルト部材を引き出す挿通部として貫通孔5hを備える。
〈シートクッション側の表皮部〉
本例のシートクッション2側の表皮部4は、座面被覆部41と、側面被覆部42と、凹部被覆部43と、裏面被覆部44と、延設部49とを備える一体物である。
座面被覆部41は、主として、パッド21における座面(上面)を覆う。側面被覆部42は、主として、パッド21における前面、右側面、及び左側面を覆う。凹部被覆部43は、主として、パッド21における貫通部29を構成する内周面を覆う。
《裏面被覆部》
裏面被覆部44は、シートクッション2の裏面に配置され、主として、パッド21における裏面(下面)を覆う。本例の延設部49は、裏面被覆部44の一部である。
本例の裏面被覆部44は、前面部44fと、側面部44sとを備える。前面部44fは、側面被覆部42においてパッド21の前面を覆う箇所に連結される。側面部44sは、側面被覆部42においてパッド21の左側面を覆う箇所に連結される。
裏面被覆部44の側面部44sにおける後方の領域が延設部49を構成する。本例の延設部49は、側面部44sがシートクッション2の裏面に配置された状態(以下、装着状態と呼ぶ)において、貫通部29の開口部28の一部(ここでは左方寄りの領域)を覆い、開口部28の全部を覆わない(図3参照)。また、延設部49は、延設部49が開口部28の一部を覆った状態において、バックル9が開口部28に挿入された状態を阻害しない(図3参照)。延設部49がこのような大きさを有するように、側面部44sの大きさが調整される。なお、側面部44sにおける後方の領域の幅(装着状態において車幅方向の長さ、図2に示す装着前の状態において紙面上下方向の長さ)は、前方の領域の長さよりも短い。
更に、本例の裏面被覆部44における前方の領域は、上述のフレーム20に渡されるばね材に留め付けられるフック部47を備える。フック部47がばね材に留め付けられた状態では、裏面被覆部44は、シートクッション2の裏面側に引っ張られる。その結果、裏面被覆部44に連続する側面部44s、更には側面部44sに連続する座面被覆部41も引っ張られる。この張力によって、表皮部4のしわが低減される。
《腕被覆部》
次に、主に図5を参照して、腕被覆部45を説明する。
本例の表皮部4は、腕被覆部45を備える。腕被覆部45は、上述のパッド21において貫通部29の一部を構成する腕部25を覆う。腕被覆部45は、腕部25の下方から、貫通部29の内周面、腕部25の上面、腕部25の側面を経て、腕部25の裏面にわたって連続する。
腕被覆部45において腕部25の後方かつ下方に配置される箇所の端部は、フレーム20とカバー材27間に差し込まれて固定される。フレーム20とカバー材27とは、上記端部を把持する爪部(図示せず)を備える。
腕被覆部45において貫通部29の内周面を覆う箇所は、凹部被覆部43の一部である。腕部25の上面を覆う箇所は、座面被覆部41の一部である。腕部25の側面を覆う箇所は、側面被覆部42(左側面)の一部である。腕部25の裏面を覆う箇所は、裏面被覆部44の一部である。つまり、腕被覆部45は、裏面被覆部44の一部を含み、延設部49に連続する(図2も参照)。そのため、腕被覆部45は、上述のフック部47とばね材との係合による張力を受けられる。
なお、腕部25の後端からバックル9の後方までの範囲の下方において、凹部被覆部43は、貫通部29の内周面を覆う箇所から、開口部28を左方から右方に渡るように延びる箇所(以下、渡り部490)を備える(図4)。渡り部490の右方の端縁には、スナップボタンや面ファスナ等の固定部(図示せず)が設けられる。固定部は、凹部被覆部43において腕部25に対向する下方の箇所に連結される。渡り部490は、腕被覆部45を上記腕部25の対向側に引き留める機能を有すると共に、延設部49と同様な機能(後述参照)も期待できる。
《その他》
その他、上述の前面部44f、座面被覆部41、及び凹部被覆部43は、フレーム20等に留め付けられる固定部(図示せず)を適宜な箇所に備える。また、凹部被覆部43の前方の領域は、後述する表皮部5の帯部54が留め付けられる連結部48を備える(図6)。連結部48、及び後述する連結部58は、スナップボタンや面ファスナ等が挙げられる。
〈シートバック側の表皮部〉
本例のシートバック3側の表皮部5は、本体部50と、帯部54と、延設部59とを備える一体物である。
本体部50は、主として、パッド31を覆う袋状の部材であり、下方に開口する。帯部54は、本体部50の開口縁の一部に連結される。帯部54の中間部は、貫通部29の開口部28を覆うように配置される。即ち、本例の延設部59は、帯部54の一部である。
《帯部》
本例の帯部54は、本体部50の開口縁から垂下し、パッド31の下面よりも下方に配置可能に設けられる。また、帯部54は、貫通部29の開口部28の実質的に全体を覆う箇所を有する。この箇所が延設部59を構成する。
延設部59は、貫通孔5hと連結部58とを備える。貫通孔5hは、帯部54の表裏に貫通する。貫通孔5hにはバックル9等のシートベルト部材が挿通される(図3)。延設部59は、貫通孔5hにバックル9が挿通された状態で貫通部29の開口部28を塞ぐように配置される(図6)。帯部54の端部に設けられる連結部58は、上述の表皮部4の連結部48に留め付けられる。連結部48,58同士が留め付けられることで、延設部59は、開口部28の実質的に全体を塞いだ状態に維持される。なお、連結部48,58にスナップボタン等を用いることに代えて、連結部48を省略し、連結部58を例えばフックとすることが挙げられる。このフックは、凹部被覆部43に設けられた係止部やシートクッション2のフレーム20等に係止する。
貫通孔5hの大きさ、形状は、バックル9を挿通可能な範囲で調整するとよい。帯部54(延設部59)における貫通孔5hの形成位置は、貫通部29におけるバックル9の配置位置に応じて調整するとよい。帯部54の大きさ(幅、長さ)は、所定の大きさの延設部59を有するように調整するとよい。本例では、帯部54において延設部59を構成する箇所は、貫通部29の開口部28の平面積に対応した大きさ(幅、長さ)を有する。また、帯部54の長さは、連結部58を考慮して、開口部28の長さよりも長い。ここでの幅とは、表皮部5がシートバック3に配置された装着状態において車幅方向に沿った長さである。ここでの長さとは、上記装着状態において前後方向に沿った長さである。更に、本例の帯部54は、上述のシートの変位に追従するための余長を有する。
以下、図6,図7を参照して、帯部54の余長を説明する。
図6Aに示すシートバック3が直立した状態を基準状態とする。基準状態では、帯部54の余長は、貫通部29の前方に屈曲して配される。
図6B,図6Cに示すように、シートバック3が後傾すると、基準状態に対して、シートクッション2が後方かつ下方に変位する。その結果、貫通部29とシートバック3の下端部(変位機構の一部)との相対位置が変化して、貫通部29とシートバック3の下端部とがつくる空間の容積も変化する。
図6Bに示す後傾状態では、帯部54の余長は、貫通部29の内周形状に沿って延びた状態で配される。なお、直立状態や後傾状態では、バックル9は、貫通部29の前方に配置される。後傾状態では、帯部54の余長は、バックル9に押されて延ばされる。
図6Cに示すように、シートバック3が最も後傾した状態では、上述の空間の容積が小さく、帯部54の余長は、貫通部29の前方に屈曲して配される。
図7に示すように、シートバック3が前倒しされた状態では、シートクッション2が基準状態に対して前方にスライドする。その結果、シートバック3は、貫通部29の後方の開口部から離れる。そのため、上述の空間の容積は最も大きい。帯部54の余長は、シートの変位に伴って延ばされていき、貫通部29の開口部28を覆いつつ、更に開口部28よりも後方に延ばされて配される。なお、前倒し状態では、バックル9は、貫通部29の後方に配置される。
《その他》
その他、本体部50は、上述の開口縁において帯部54の連結箇所以外の適宜な箇所に、フレーム30等に留め付けられる固定部53を備える(図2)。
〈表皮部の装着〉
表皮部4,5は、例えば以下のようにパッド21,31に装着する。
(1)表皮部4の座面被覆部41、側面被覆部42、凹部被覆部43によって、パッド21の座面、側面、凹部及び腕部25を覆う。この段階では、裏面被覆部44はパッド21の裏面を覆わない。フック部47は、ばね材に留めない。腕被覆部45の後方の領域において端部は、上述のように腕部25(フレーム20とカバー材27)に差し込む。この段階では、上述の渡り部490の端部は、凹部被覆部43における腕部25の対向箇所に連結しない。
(2)表皮部5の本体部50によって、パッド31を覆った後、表皮部5の延設部59の貫通孔5hにシートベルト部材を挿通する。
(3)表皮部5の帯部54を貫通部29の開口部28の後方から前方に向かって配置し、両連結部58,48を留め付ける。連結部58,48の留め付けによって、表皮部5の延設部59が開口部28の実質的に全部を覆った状態を維持できる。
(4)表皮部4の裏面被覆部44において延設部49を構成する箇所によって、貫通部29の開口部28の一部を覆うと共に、上述の帯部54の延設部59を下方から覆うように上記箇所を配置し、フック部47をばね材に留め付ける(図3)。フック部47とばね材との留め付けによって、表皮部4の延設部49が開口部28の一部を覆った状態を維持できる。また、延設部59を下方から覆うように渡り部490を配置し、渡り部490の端部を凹部被覆部43の上記対向箇所に連結する。その結果、開口部28は、表皮部4側の延設部49と表皮部5側の延設部59との双方によって塞がれる。特に、開口部28の一部は、重複して配置される延設部49,59によって覆われる。
〈製造方法〉
表皮部4,5は、代表的には、布、皮革等といった可撓性を有する材料からなるシート材を所定の形状に切断して、切断されたシート材を縫合することで製造される。縫合の他、接着剤で接合したり、面ファスナ等で連結したりすることが挙げられる。
特に、本例では、上述の裏面被覆部44を構成するシート材や帯部54を構成するシート材はそれぞれ、連続した一つのシート材であり、大きな平面積を有する。そのため、上記シート材は取り扱い易く、縫合等も行い易い。
(主な効果)
実施形態1の車両のシート構造1は、表皮部4,5の延設部49,59によって、貫通部29の開口部28においてバックル9等のシートベルト部材の周囲に生じる隙間を隠すことができる。そのため、車両のシート構造1は、外観品質に優れる。
また、延設部49,59は、表皮部4の裏面被覆部44の一部、表皮部5の帯部54の一部である。そのため、製造過程では、延設部49,59を構成する材料として、上述の比較的大きな平面積を有するシート材を利用することができる。従って、実施形態1の車両のシート構造1は、取り扱い易く縫合等を行い易いシート材を用いて延設部49,59を製造可能であるため、製造性にも優れる。特に、裏面被覆部44を構成するシート材や帯部54を構成するシート材は、貫通部29の開口部28の幅及び長さよりも大きな幅及び長さを有する箇所を含む。このようなシート材は、上述の従来の隠し構造に備えられるシート片よりも格段に大きく、取り扱い易い。
本例の車両のシート構造1は、以下の効果も奏する。
(a)シートクッション2側の延設部49とシートバック3側の延設部59とは、重複して貫通部29の開口部28を覆う。そのため、開口部28における上述の隙間が低減され易い。従って、本例のシート構造1は、上記隙間から物が落ちることを防止し易い。本例では、シートバック3側の延設部59の一部が、シートクッション2側の延設部49と渡り部490とで挟まれて固定される(図4)。その結果、延設部59がずれ難く、上記隙間がより確実に低減され易い。
(b)帯部54が余長を有するため、シートの変位に追従して、貫通部29の開口部28を覆った状態を維持できる。いわば、表皮部5は、シートの変位状態によらず、開口部28を常時覆った状態に維持する延設部59を有する。
(c)裏面被覆部44をシートクッション2の裏面側に引っ張った状態でフック部47をばね材に留め付けることで、上述のように表皮部4に張力を付与することができる。この張力によって、表皮部4は、しわが無く、ぴんと張った状態に配される。特に、腕部25の角部においても、腕被覆部45がぴんと張った状態に配されるため、美観に優れる。
(d)製造過程で、大きな平面積を有するシート材を用いることで、縫合箇所が少なくなり易い。この点からも、本例の車両のシート構造1は、製造性に優れる。
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、実施形態1に対して、以下の変更が可能である。
(1)シートクッション2は、上述の三方に開口する貫通部29ではなく、座面側と裏面側との二方に開口し、後方に開口しない貫通部を備える(図示せず)。この貫通部は、座面側と裏面側との双方に環状の開口部を有する貫通孔である。
この場合、例えば、表皮部5の帯部54は、シートクッション2の裏面側に、貫通部の裏面側の開口部を覆うように配置することが挙げられる。
(2)シートクッション2の表皮部4の延設部49を省略し、シートバック3の表皮部5のみが延設部59を備える。
(3)シートバック3の表皮部5の延設部59を省略し、シートクッション2の表皮部4のみが延設部49を備える。この延設部49は、貫通部29の開口部28の実質的に全部を覆う。
この場合、裏面被覆部44における後方の領域の幅を実施形態1よりも広くすることが挙げられる。また、この延設部49は、シートベルト部材が挿通される貫通孔と、表皮部5との連結部と、余長とを備えることが挙げられる。余長によって、実施形態1と同様に、シートの変位に追従して、延設部49が開口部28を覆った状態を維持できる。また、この形態はフック部47を備えると、フック部47とばね材との係合によって、延設部49は、開口部28を覆った状態を適切に維持できる。
(4)表皮部4,5の双方が延設部を備える。両延設部によって、シートベルト部材を引き出す挿通部が構成される(図示せず)。
例えば、実施形態1で説明した帯部54の長さを半分程度にした短帯片をそれぞれ、表皮部4,5に備えることが挙げられる。各短帯片は、その一端縁から長さ方向に切れ目を有し、両短帯片の一端縁同士が連結されると、両切れ目によって貫通孔が構成される。この貫通孔が挿通部をなす。各短帯片の他端部は、表皮部4の凹部被覆部43、表皮部5の本体部50に連続する。
又は、例えば、実施形態1で説明した帯部54の幅を半分程度にした細帯片をそれぞれ、表皮部4,5に備えることが挙げられる。一方の細帯片の一端部は、表皮部4の凹部被覆部43に連続し、他端部は表皮部5の本体部50にスナップボタン等で固定される。他方の細帯片の一端部は、表皮部5の本体部50に連続し、他端部は表皮部4の凹部被覆部43にスナップボタン等で固定される。両細帯片の合わせ目を挿通部に利用することができる。
1 車両のシート構造
2 シートクッション
20 フレーム、21 パッド、25 腕部、27 カバー材
28 開口部、29 貫通部
3 シートバック
30 フレーム、31 パッド
4 表皮部
41 座面被覆部、42 側面被覆部、43 凹部被覆部、44 裏面被覆部
44f 前面部、44s 側面部
45 腕被覆部、47 フック部、48 連結部、49 延設部、490 渡り部
5 表皮部
50 本体部、53 固定部、54 帯部、58 連結部、59 延設部
5h 貫通孔
9 バックル(シートベルト部材)

Claims (1)

  1. シートクッションと、シートバックとを備える車両のシート構造であって、
    前記シートクッションは、その表裏に貫通して、シートベルト部材が挿通される貫通部を備え、
    前記シートクッションの表面に設けられる表皮部、及び前記シートバックの表面に設けられる表皮部の双方は、前記貫通部の開口部における前記シートベルト部材の周囲を覆う延設部を備え、
    前記シートクッションの表面に設けられる表皮部は、前記シートクッションの下面に配置される裏面被覆部を備え、
    前記裏面被覆部における後方の領域は、前記貫通部の下方を覆う前記延設部を構成しており、
    前記裏面被覆部における前方の領域は、前記シートクッションの前記下面に固定されている、
    車両のシート構造。
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