JP7346278B2 - 回折光学素子、光学機器および撮像装置 - Google Patents

回折光学素子、光学機器および撮像装置 Download PDF

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本発明は、撮像装置や光学機器に使用される回折光学素子に関する。
レンズなどに用いられる光学素子として、2つの基材の間に光学特性が異なる2種の樹脂を設け、その2種の樹脂の界面に回折格子が形成された回折光学素子が知られている。この回折光学素子は、レンズなどに用いられ、密着2層型の回折光学素子と呼ばれている。密着2層型の回折光学素子を高温環境下で長期に使用した場合、基材と樹脂との界面で剥がれが発生することが知られている。特許文献1には、回折光学素子の樹脂の外周部分の厚みと幅を所定の範囲にすることにより、基材と樹脂の界面における剥がれを抑制することが開示されている。
特開2016-061796号公報
しかしながら、特許文献1に開示された手段では、樹脂の種類や形状によっては、高温高湿環境に長時間放置すると、基材と樹脂との界面で剥がれが生じ、光学性能が低下してしまうことがあった。
上記課題を解決するための回折光学素子は、第1基材と、第1樹脂と、前記第1樹脂と異なる第2樹脂および第2基材がこの順に積層され、前記第1樹脂と前記第2樹脂とが接する界面に同心円状の回折格子を有する回折光学素子であって、前記回折格子を有する第1領域と、前記第1領域の外周に隣接する前記第1樹脂が設けられていない第2領域と、を有し、前記第2領域は、前記第2樹脂と前記第1基材が空隙を介して対向しており、記第2樹脂の前記第2領域の径方向の長さをUとしたときに、前記空隙は前記第1樹脂の外周から径方向に向かって、距離0.5Uの位置から距離Uの位置まで設けられ、前記空隙の高さをtv、前記第1樹脂の外周の厚みをt1としたときに、前記t1に対する前記tvの割合が0.1以下であることを特徴とする。
本発明によれば、高温高湿環境下においても光学性能が変動しにくい回折光学素子を提供することができる。
(a)は実施形態に係る回折光学素子を示した模式的断面図である。(b)は図1(a)の破線を囲んだ領域の拡大図である。 回折光学素子の第1領域と第2領域を説明する図である。 図1(a)の破線を囲んだ領域の図1(b)とは異なる実施態様の拡大図である。 実施形態に係る回折光学素子の製造方法を示す工程図である 実施形態に係る撮像装置を示した概略図である。 比較例の回折光学素子を示した模式的断面図である。
[回折光学素子]
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る回折光学素子を示した模式的断面図である。図1(a)は全体図であり、図1(b)は、図1(a)の破線で囲んだ領域の拡大図である。図1(b)において、回折光学素子10の中心は図の左側に位置し、回折光学素子10の端部は図の右側に位置している。図1(a)と(b)に示すように、回折光学素子10は、第1基材2と、第1樹脂3と、第2樹脂8および第2基材7が、この順に積層されている。
(基材)
第1基材2は、第1樹脂3が設けられる第1面2Aを有する。第1基材2および第2基材7には、透明な樹脂や、透明なガラスを用いることができる。第1基材2および第2基材7は、ガラスを用いることが好ましく、例えば、珪酸ガラスや硼珪酸ガラス、リン酸ガラスに代表される一般的な光学ガラスや、石英ガラス、ガラスセラミックスを用いることができる。
第1基材2および第2基材7の形状は特に限定されず、樹脂と接する面の形状は、凹球面、凸球面、軸対称非球面、平面などから選択できる。ただし、第1基材2の第1樹脂3と接する面の形状と第2基材7の第2樹脂8と接する面の形状は、略同じ形状であることが好ましい。また、基材の外形は円形が好ましい。
(第1樹脂、第2樹脂)
図2は、回折光学素子10の第1領域S1と、第2領域S2を説明するための図であり、回折光学素子の側面図及び平面図である。なお、説明の便宜上、図2においては第2基材を省略している。回折光学素子10は、第1樹脂3と第2樹脂8が積層され、回折格子を有する第1領域S1を有する。また、回折光学素子10は、第1領域S1の外周に隣接する回折格子を有しない第2領域S2を有する。第2領域S2は、第1樹脂と第2樹脂が積層されていない。すなわち、第2領域S2には第1樹脂が設けられていない。
第1領域S1は、回折光学素子10の中心であるOが位置する。ここで、第1領域S1は、平面視した際に半径rの円である。また、第2領域S2は、平面視した際に半径rの円の同心円である半径Rの円から前記半径rの円を除いた部分であり、図2の平面図において斜線で示された箇所である。なお、図2に示すRおよびrと図1に示すUの間には、U=R-r>0の関係が成り立つ。後述するが、Uは第2樹脂8の第2領域S2における径方向の長さのことである。
第2領域S2は非光学有効領域である。一方、第1領域S1は光学有効領域を有する。ただし、第1領域S1も非光学有効領域を有していても構わない。ここで、前記Rと前記rは、0.80≦r/R≦0.99の関係を満たしていることが好ましい。r/Rが0.80未満であると、回折光学素子の光学有効領域が小さくなりすぎてしまう。一方、r/Rが0.99を超えると、第2領域S2に存在する第2樹脂8の量が少ないため、吸水した際に回折格子の形状が変化しやすくなってしまう。また、回折光学素子の製造時に第1樹脂の前駆体が第1基材の側面にあふれるおそれがある。
第1領域S1は、第1樹脂3と第2樹脂8が接する界面において、平面視した際に同心円状の回折格子を有する。回折格子とは、複数の回折格子が連続して形成されている形状である。格子形状は、素子の中心から外周に向かって径方向に緩やかに傾斜する傾斜面31Aと、所定の距離を進んだところで急激に傾斜の逆方向に変化する壁面31Bの繰り返しパターンである。繰り返しパターンの間隔は中心から外周に向かって(径方向に)連続的に小さくなり、段差はほぼ等しい。また、回折格子形状は、平面視した際に素子の中心Oを中心としたN個(Nは2以上の整数)の円からなる同心円状のレリーフパターンである。
第1樹脂3の外周の厚みはt1である。ここで外周の厚みとは、第1樹脂の外周面(外周端)30から素子の中心Oに向かって1mmまでの範囲における、第1基材の第1面2Aの法線方向における第1樹脂の厚みの平均値である。
第2樹脂8は、第1樹脂3とは異なる樹脂であり、第1樹脂3の上および第1樹脂3の外周面30の少なくとも一部に接して設けられる。また、第2樹脂7は第2基材8と接して設けられている。図1(a),(b)において、第2樹脂8は第1樹脂3の外周面30の全域と接して設けられているが、図3のように外周面30の一部のみに接して設けられていても構わない。
第2樹脂8の径方向の端部は、第2領域S2において、第1基材2と空隙を介して対向している。空隙は、第2樹脂8の第2領域S2における径方向の長さをUとしたときに、少なくとも第1樹脂の外周面30から径方向に距離0.5Uの位置から距離Uの位置まで設けられている。そして、空隙により、第2樹脂8は第1基材の第1面2Aの法線方向に対し、第1基材2と距離tv離間するよう設けられている。ここで、空隙の厚みtvは第1樹脂の外周の厚みt1の10分の1以下である。換言すると、第1樹脂の外周の厚みt1に対する空隙の厚みtvの割合は0.1以下である。この割合を0.1以下とすることで、高温環境下においても光学性能が変動しにくい回折光学素子を提供することができる。なお、tvは一定値である必要はない。また、tvの値はこの離間した領域の平均値を採用することができる。
図6は、比較例の回折光学素子を示した模式的断面図であり、図6(a)は全体図であり、図6(b)は図6(a)の破線で囲んだ領域の拡大図である。
回折光学素子10Xは、第1基材2Xと、第1樹脂3Xと、第2樹脂8Xおよび第2基材7Xが、この順に積層されている。回折光学素子10Xは、第1樹脂3Xと第2樹脂8Xが積層され、同心円状の回折格子を有する第1領域S1Xを有する。また、回折光学素子10Xは、第1領域S1Xの外周に隣接する回折格子を有しない第2領域S2Xを有する。ここで、第2領域S2Xは第1樹脂と第2樹脂が積層されておらず、第1樹脂が設けられていない。また、第2領域S2Xでは、第2樹脂8Xが第1基材2Xと空隙を介さずに直接的に、接している。この点において、回折光学素子10Xは回折光学素子10と構成が異なる。
しかしながら本願発明者は、回折光学素子10Xを温度60℃湿度85%といった高温高湿環境に長時間(2000時間)放置すると、第2基材7Xと第2樹脂8Xとの界面であるZ部分を起点に、第2樹脂8Xが第2基材7Xから剥がれてしまうことを見出した。Z部分を起点とした剥がれは、時間が経過するにつれ、素子の径方向のみならず中心方向にも伸展し、回折効率などの光学性能が低下してしまった。これは以下のことが原因だと考える。
まず、回折光学素子の第1樹脂3Xと第2樹脂8Xは材料が異なる。そのため、第1樹脂3Xと第2樹脂8Xは膨潤率が異なるため、吸水したときの体積膨張の量が異なる。第2樹脂8Xは第1樹脂3Xを完全に覆うように配置されているため、回折光学素子10Xは、高温高湿環境に長時間放置されると、第2樹脂8Xから水分が外周から浸透する。また、第2樹脂8Xに浸透した水分は、第1樹脂3Xにも浸透していく。ここで、第1樹脂3Xと第2樹脂8Xは膨潤率が異なるため、第1樹脂3Xが体積膨張することにより、第2樹脂8Xは、自身が体積膨張するだけでなく、第1樹脂3Xから応力を受ける。そのため、第2樹脂8Xには、Z部分において第2基材7Xから離れる方向に引っ張り応力が発生する。その引っ張り応力が第2基材7Xと第2樹脂8Xの密着力を上回ることにより、Z部分を起点とした剥がれが発生してしまう。
そこで本実施形態の回折光学素子10は、少なくとも第1樹脂の外周から径方向に距離0.5Uの位置から距離Uの位置まで、第1基材2と第2樹脂8とが、厚みtvの空隙を介して対向させる構成を採用した。そして、このtvを第1樹脂の外周の厚みt1の10分の1以下とすることにより、回折光学素子10Xと比べて、第1樹脂3の吸水膨張による第2樹脂8が受ける応力を低減させることができることを見出した。その結果、高温高湿環境下においても第2基材7と第2樹脂8との間には剥がれが発生しにくくなるため、光学性能が変動しにくい回折光学素子を提供することができる。なお、距離tvが第1樹脂の外周の厚みt1の10分の1より大きいと、第1樹脂3が吸水しやすくなるため、光学性能が変動するおそれがある。なお、ここでいう光学性能とは回折光学素子の透過波面のことである。また、空隙の厚みであるtvは2μm以下であることが好ましい。空隙の厚みtvが2μmを超えると第1樹脂3が吸水しやすくなるため、光学性能が変動するおそれがある。
ここで、空隙の径方向における位置は、少なくとも第1樹脂3の外周から径方向に距離0.5Uの位置から距離Uの位置までである。より好ましくは第1樹脂3の外周から距離Uの位置まで全てに空隙があることが好ましい。一方、空隙が第1樹脂3の外周から距離0.5Uの位置まで存在しないと、第2樹脂8に発生する第2基材7から離れる方向の引っ張り応力を十分に低減できない。
また、図1(b)に示した、第2領域S2における、第1基材2と第2樹脂8とが接する部分の径方向の距離wは1mm未満であることが好ましい。前記wが1mm以上であると、第2樹脂8に発生する第2基材7から離れる方向の引っ張り応力を十分に低減できないおそれがある。すなわち、空隙は第1樹脂の外周面30から径方向に1mm以内の位置にあることが好ましい。
第1樹脂3および第2樹脂8は、無色透明な樹脂から構成され、回折光学素子が所望の光学特性となるように屈折率やアッベ数を設計することができる。広い波長帯域で高い回折効率を得るために、第1樹脂3と第2樹脂8は低屈折率高分散樹脂と高屈折率低分散樹脂で形成することが好ましい。ここで、低屈折率および高屈折率とは第1樹脂3および第2樹脂8の屈折率(d線の屈折率nd)の相対的な関係を意味する。同様に、高分散および低分散とは第1樹脂3および第2樹脂8の分散特性(アッベ数νd)の相対的な関係を意味する。つまり、第1樹脂3が低屈折率高分散、第2樹脂8が高屈折率低分散であるとは、第1樹脂3の屈折率をnd1、アッベ数をνd1、第2樹脂8の屈折率をnd2、アッベ数をνd2としたときに、nd1<nd2及びνd1<νd2を満たすことを意味する。なお、所望の光学特性によっては、第1樹脂3を高屈折率低分散に、第2樹脂8は低屈折率高分散としても構わない。
第1樹脂3は、高屈折率低分散とするために、チオール化合物と、(メタ)アクリレート化合物と、を含有することが好ましい。第1樹脂3は、チオール化合物の単量体及び/又はそのオリゴマーと、(メタ)アクリレート系の単量体及び/又はそのオリゴマーと、を含有する未硬化の第1樹脂組成物3aを硬化することによって得られる。第1樹脂組成物3aは、エネルギー硬化性樹脂である。エネルギー硬化性樹脂とは、未硬化の状態から、光エネルギーおよび/又は熱エネルギーを与えることによって硬化する樹脂のことである。
第1樹脂3を形成するために用いる第1樹脂組成物3aに含有されるチオール化合物としては、例えば、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン(4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール)、4,8-ビス(メルカプトメチル)-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン(4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン)及び5,7-ビス(メルカプトメチル)-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン(5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン)が挙げられる。
第1樹脂3を形成するために用いる第1樹脂組成物3aに含有される(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
第1樹脂3を形成するために用いる第1樹脂組成物3aは、重合開始剤を含有する。重合開始剤は光重合開始剤でもよいし、熱重合開始剤であってもよく、選択する製造プロセスによって決定することができる。ただし、回折格子形状を製造しやすいレプリカ成形を行う場合は、光重合開始剤を含有していることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ビス(2,46,-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、4-フェニルベンゾフェノン、4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジフェニルベンゾフェノン、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノンが挙げられる。光重合開始剤の含有量は、第1樹脂組成物3a全体に対して0.01質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましい。
第2樹脂8は、低屈折率高分散とするために、官能基にフルオレンを備える芳香族ジオール化合物と、(メタ)アクリレート化合物及び/又はフッ素系の(メタ)アクリレート化合物と、を含有することが好ましい。第2樹脂8は、官能基にフルオレンを備える芳香族ジオール化合物の単量体及び/又はそのオリゴマーを含有する未硬化の第2樹脂組成物8aを硬化することによって得られる。また第2樹脂組成物8aには、(メタ)アクリレート化合物の単量体及び/又はオリゴマー、及び/又は、フッ素系の(メタ)アクリレート化合物の単量体及び/又はそのオリゴマーが含有される。第2樹脂組成物8aは、第1樹脂組成物3aと同様にエネルギー硬化性樹脂である。
第2樹脂8を形成するために用いる第2樹脂組成物8aに含有される官能基にフルオレンを備える芳香族ジオール化合物としては、例えば、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
第2樹脂8を形成するために用いる第2樹脂組成物8aに含有される(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
第2樹脂8を形成するために用いる第2樹脂組成物8aは、重合開始剤を含有する。その重合開始剤は第1樹脂組成物3aと同様に、重合開始剤は光重合開始剤でもよいし、熱重合開始剤であってもよく、選択する製造プロセスによって決定することができる。ただし、回折格子形状を製造しやすいレプリカ成形を行う場合は、光重合開始剤を含有していることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ビス(2,46,-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、4-フェニルベンゾフェノン、4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジフェニルベンゾフェノン、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノンが挙げられる。光重合開始剤の含有量も第1樹脂組成物3aと同様に、第2樹脂組成物8a全体に対して0.01質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましい。
第1樹脂3および第2樹脂8の膨潤率は特に限定されないが、第1樹脂3の膨潤率αが第2樹脂8の膨潤率βの1.1倍以上であると、本実施形態において引っ張り応力の低減効果が顕著となる。第1樹脂3の膨潤率αが、第2樹脂8の膨潤率βの1.1倍以上であると、第1樹脂3の吸水膨張による第2樹脂8に与える応力がより大きくなる。そのため、比較例の回折光学素子10Xのような構造は、第1樹脂の膨潤率αが第2樹脂の膨潤率βより大きければ大きいほど、第2樹脂が第2基材からはがれやすくなる。なお、膨潤率とは、樹脂が吸水したことによって生じる体積変化を百分率で表わしたものである。なお、第1樹脂3の膨潤率αが、第2樹脂8の膨潤率βの1.5倍以上であると、引っ張り応力の低減効果はより顕著なものとなる。
第1樹脂3と第2樹脂8の厚みは特に限定されないが、第2樹脂8の厚みt2が第1樹脂3の外周の厚みt1の1.5倍以上であると、本実施形態において引っ張り応力の低減効果は顕著となる。第2樹脂8の厚みt2が、第1樹脂3の外周の厚みt1の1.5倍以上であると、吸水膨張により第2樹脂8に生じる体積変動が大きくなり、第2樹脂8に発生する引っ張り応力がより大きくなる。そのため、比較例の回折光学素子10Xのような構造は、第2樹脂の厚みが第1樹脂の厚みより大きければ大きいほど、第2樹脂が第2基材からはがれやすくなる。なお、厚みt2とは、図1(b)に示した厚みのことである。具体的には、第1樹脂3の外周と接する部分の第2樹脂8の厚みであり、その厚みの平均値である。なお、第1樹脂3の外周とは、外周面30から素子の中心に向かって1mmまでの範囲のことである。さらに、第2樹脂8の厚みt2が第1樹脂3の外周の厚みt1の1.7倍以上であると、本実施形態において引っ張り応力の低減効果はより顕著となる。
なお、以下の観点においては、第1樹脂の外周の厚みt1は5μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。t1が5μm未満であると、第1樹脂組成物3aを硬化して第1樹脂3を得る際に、格子の山部と谷部と差である段差に応力が過度に発生し、格子形状を良好に転写することができないおそれがある。一方、t1が100μmを超えると、吸水した際に体積変動が大きくなり、光学特性が変動するおそれがある。
また、第2樹脂の厚みt2は5μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。t2が5μm未満であると、第2樹脂組成物8aを硬化して第2樹脂8を得る際に、格子形状が変形しやすく、変形してしまうと回折効率が低下するおそれがある。一方、t2が100μmを超えると、吸水を生じた際に体積変動が大きくなり、光学特性が変動するおそれがある。
[回折光学素子の製造方法]
回折光学素子の製造方法は、特に限定されないが、以下に2枚のガラス基材の間に紫外線硬化性樹脂を用いて2つの樹脂を形成する回折光学素子の製造工程の一例を説明する。回折光学素子の形状は上述した形態と同じであるため、以下、[回折光学素子]の項で用いた符号を用いて説明する。
ガラス基材は、樹脂との密着性を向上させるため、樹脂と密着する面に前処理をしておくことが好ましい。ガラス表面(第1面)の前処理は、樹脂との親和性が良いシランカップリング剤を用いてカップリング処理をすることが好ましい。具体的なカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等が挙げられる。
初めに、第1樹脂3を形成する。まず、図4(a)に示すように、金型1の上に第1樹脂の前駆体である第1樹脂組成物として未硬化の紫外線硬化性樹脂3aを滴下する。また、第1基材2をイジェクタ4に乗せて金型1に対向するよう配置する。ここで用いる金型1は、表面に所望の回折格子形状の反転形状を有し、例えば、ステンレス材や鋼材などの金属母材上にNiPメッキや無酸素銅メッキしたものを精密加工機で切削することで作製できる。
次に、図4(b)に示すように、イジェクタ4を降下させて金型1と第1基材2の間に未硬化の紫外線硬化樹脂3aを充填させたのちに、紫外線光源5を用いて第1基材2側から紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂3aを硬化させる。
その後、図4(c)に示すように、硬化した紫外線硬化樹脂を金型1から離型することにより、第1基材2上に回折格子形状を有する第1樹脂3を形成する。なお第1樹脂3を形成した後に、大気中もしくは無酸素雰囲気で紫外線の追加照射や熱処理を行っても構わない。
次いで、第2樹脂8を形成する。まず、図4(d)に示すように、第1樹脂3の上に第2樹脂の前駆体である第2樹脂組成物である未硬化の紫外線硬化樹脂8aを滴下する。また、第2基材7をイジェクタ9に乗せて第1基材2に対向するよう配置する。このとき、第1基材2の第1樹脂3が形成された領域を囲うように、離型剤11を塗布する。離型剤11の種類は特に限定されないが、例えば、フッ素コーティング剤、シリコーンオイルである。離型剤11を塗布した後、温度80℃で乾燥する。図1(b)におけるwは、この離型剤11を塗布する領域の位置および大きさによって調整することが可能である。なお、離型剤11を塗布する代わりに、第2樹脂の硬化後に取り外しが可能なスペーサー(例えば、ガラス製)を用いてもよい。第2樹脂を形成した後に、第1基材2を変形させて第1樹脂3を部分的にはがす方法でも良い。
次に、図4(e)に示すように、イジェクタ9を降下させて第1基材2および第1樹脂3と第2基材7の間に、第2樹脂組成物として未硬化の紫外線硬化樹脂8aを充填させる。その後、紫外線光源5を用いて第2基材7側から紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂8aを硬化させて第2樹脂8を形成することにより、回折光学素子10が得られる。このとき、紫外線照射により第2樹脂が硬化収縮する際に、離型剤11が塗布された領域において、第2樹脂8が第1基材2から離れる。そして、第2樹脂8の径方向の端部において、第1基材2の第1面と垂直な方向に、第2樹脂が第1基材と距離tvだけ離間することにより空隙が形成される。
ここで、距離tvは例えば、紫外線硬化樹脂8aの充填量で調整することが可能である。充填量を多くすることで距離tvを小さくすることができ、充填量を少なくすることで距離tvを大きくすることができる。また、離型剤11を塗布する代わりに、スペーサーを用いる場合は、用いるスペーサーの厚みによっても距離tvを調整することが可能である。なお、第2樹脂8を形成した後に、大気中もしくは無酸素雰囲気で紫外線の追加照射や熱処理を行っても構わない。
[光学機器]
本発明の回折光学素子の具体的な適用例としては、カメラやビデオカメラ用の光学機器(撮影光学系)を構成するレンズや液晶プロジェクター用の光学機器(投影光学系)を構成するレンズ等が挙げられる。また、DVDレコーダー等のピックアップレンズに用いることもできる。これらの光学系は、筐体と、該筐体内に配置された複数のレンズからなり、それらの複数のレンズの少なくとも1つを本発明の回折光学素子とすることができる。
[撮像装置]
図5は、本発明の回折光学素子を用いた撮像装置の好適な実施形態の一例である、一眼レフデジタルカメラ600の構成を示している。図5において、カメラ本体602と光学機器であるレンズ鏡筒601とが結合されているが、レンズ鏡筒601はカメラ本体602に対して着脱可能ないわゆる交換レンズである。
被写体からの光は、レンズ鏡筒601の筐体620内の撮影光学系の光軸上に配置された複数のレンズ603、605などからなる光学系を介して撮影される。本発明の回折光学素子は例えば、レンズ603、605に用いることができる。ここで、レンズ605は内筒604によって支持されて、フォーカシングやズーミングのためにレンズ鏡筒601の外筒に対して可動支持されている。
撮影前の観察期間では、被写体からの光は、カメラ本体の筐体621内の主ミラー607により反射され、プリズム611を透過後、ファインダレンズ612を通して撮影者に撮影画像が映し出される。主ミラー607は例えばハーフミラーとなっており、主ミラーを透過した光はサブミラー608によりAF(オートフォーカス)ユニット613の方向に反射され、例えばこの反射光は測距に使用される。また、主ミラー607は主ミラーホルダ640に接着などによって装着、支持されている。不図示の駆動機構を介して、撮影時には主ミラー607とサブミラー608を光路外に移動させ、シャッタ609を開き、撮像素子610がレンズ鏡筒601から入射して撮影光学系を通過した光を受光して撮影光像を結像するようにする。また、絞り606は、開口面積を変更することにより撮影時の明るさや焦点深度を変更できるよう構成される。
なお、ここでは、一眼レフデジタルカメラを用いて本発明の回折光学素子を用いた撮像装置を説明したが、本発明の回折光学素子はスマートフォンやコンパクトデジタルカメラなどにも同様に用いることができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明をする。まず、実施例および比較例の評価方法について説明する。
(評価方法)
<d線の屈折率nd/アッベ数νd>
実施例および比較例の回折光学素子の第1樹脂および第2樹脂の屈折率およびアッベ数は、光学特性評価用のサンプルを作成して評価した。なお、光学特性評価用のサンプルを用いずとも、回折光学素子から基材を剥がして樹脂を取り出して評価することも可能である。まず、光学特性評価用サンプルの作成方法について説明する。
厚さ1mmのガラス(S-TIH11)の上に、厚さ500μmのスペーサーと測定対象である樹脂の原料である未硬化の樹脂組成物を配置した。その上に厚み1mmの石英ガラスをスペーサーを介して載せ、未硬化の樹脂組成物を押し広げた。次に、スペーサーを外し、石英ガラスの上から、高圧水銀ランプ(HOYA CANDEO OPTRONICS製:UL750)を用いて、20mW/cm(=石英ガラスを通した照度)で2500秒の条件(50J)で光を照射した。樹脂組成物を硬化させ、石英ガラスをはがした後に、80℃16時間でアニールしたものを光学特性評価用のサンプルとした。硬化した樹脂の形状は、厚みが500μm、ガラス面内の大きさは5mm×20mmであった。
得られたサンプルに対し、屈折計(KPR-30、(株)島津製作所)を用いて、ガラス側から、f線(486.1nm)、d線(587.6nm)及びc線(656.3nm)の各波長の屈折率を測定した。
また、測定した各波長の屈折率からアッベ数を算出した。アッベ数νdは、以下の式(1)により算出した。
アッベ数νd=(nd-1)/(nf-nc) (1)
<膨潤率>
実施例および比較例の回折光学素子の第1樹脂の膨潤率αおよび第2樹脂の膨潤率βは、膨潤率評価用のサンプルを作成して評価した。なお、膨潤率評価用のサンプルを用いずとも、回折光学素子から基材を剥がして樹脂を取り出して評価することも可能である。膨潤率評価用のサンプルは光学特性評価用のサンプルと同じ手順で作成した。
まず、出来上がったサンプルの寸法を光学顕微鏡で測定し、体積を算出した。続いて、このサンプルを純水が入ったビーカーに入れて、24時間浸漬させた。その後、再度、サンプルの寸法を光学顕微鏡で測定し、体積を算出した。そして純水に浸した後の体積を、純水に浸す前の体積で除した百分率表記したものを膨潤率とした。
<樹脂厚みt1,t2、空隙の厚みtv、距離w>
製造した実施例および比較例の回折光学素子を素子中心Oを通る面で積層方向に切断した。その断面を、金属顕微鏡(ニコン社製、ECLIPSE ME600P)で倍率1000倍(接眼レンズ:10倍、対物レンズ:100倍)で観察した。観察像のXYステージの送り量から、空隙の厚みtvを測定した。このとき、tvは10箇所測定し、その平均値を採用した。第1樹脂3の外周の厚みt1は、第1樹脂3の外周面30から素子中心Oに向かう方向に1mmの領域を測定した。その1mmの領域を10等分に分割し、各領域の中央の厚みの平均値を第1樹脂の外周の厚みt1とした。このとき、外周面から内側へ1mmの領域に回折格子が存在する場合は、格子も含めた距離を厚みt1とした。第2樹脂の厚みt2についても第1樹脂と同様に測定を行った。距離wについても、第1樹脂3の外周面30から外周に向かう径方向への第2樹脂の距離を顕微鏡の観察像から測定した。
<回折光学素子の樹脂剥がれの評価>
製造した実施例および比較例の回折光学素子を高温高湿環境下(60℃、85RH%、2000時間)での耐久試験を行い、耐久試験後の素子の樹脂剥がれの有無を目視および光学顕微鏡で観察した。
<透過波面の測定>
製造した実施例および比較例の回折光学素子を高温高湿環境下(60℃、85RH%、2000時間)での耐久試験を行い、耐久試験前後の透過波面をそれぞれ測定、比較した。素子は回折レンズとして、1次回折光が焦点を結ぶように設計した。まず、干渉計(ZYGO社製:GPI)を用いて、干渉計に対して、被計測物、反射ミラーの順で配置した。そして、反射ミラーを素子の焦点位置に調整して、素子の透過波面を計測して、その変化量を算出した。
<総合評価>
高温高湿耐久試験後で樹脂の剥がれが確認されず、かつ高温高湿耐久試験前後の透過波面変形量が150nm未満のものをAとした。樹脂剥がれが確認されたもの、もしくは透過波面変形量が150nm以上のものをBと評価した。
(実施例1)
図4に示した製造方法で、実施例1の回折光学素子を作製した。第1基材2は、直径60mmの光学ガラス(オハラ社製、晶種:S-TIM8)を用いた。形状は、一方の面が平面で、他方の面がR190mmの凹球面形状であった。第2基材7は、直径58mmの光学ガラス(オハラ社製、晶種:S-FSL5)を用いた。形状は、一方の面がR70mmの凸球面形状、他方の面がR190mmの凸球面形状であった。金型1は、金属母材上にメッキしたNiP層を精密加工機で切削加工し、第1樹脂3の回折格子形状を反転した形状を形成したものを用いた。
金型1と第1基材2との間に、第1樹脂の前駆体である未硬化の紫外線硬化型のアクリル樹脂3aを充填した。その後、アクリル樹脂3aを硬化させるために、波長365nmの強度が10mW/cmの紫外線を200秒間全面に照射した。金型1を離型した後に、80℃で24時間加熱することにより、第1基材2上に第1樹脂3を形成した。
その後、第1基材2の第1樹脂3が形成された領域を囲うように離型処理を施した。離型処理は、フッ素コーティング剤であるDURASURF(株式会社ハーベス)を塗布後、80℃のオーブンで乾燥させることで行った。
続いて、第1樹脂3と第2基材7の間に、第2樹脂8の前駆体である未硬化の紫外線硬化型のアクリル樹脂8aを充填した。その後、アクリル樹脂8aを硬化させるために、波長365nmの強度が30mW/cmの紫外線を全面に1000秒間照射した。最後に、80℃で72時間加熱することにより、実施例1の回折光学素子10を得た。
実施例1の回折光学素子の第1樹脂3のd線の屈折率nd1は1.62、アッベ数νd1は40.0、第2樹脂8のd線の屈折率nd2は1.59、アッベ数νd2は29.0であった。また、第1樹脂の膨潤率αは0.042%であり、第2樹脂の膨潤率βは0.028%であった。すなわち、第1樹脂の膨潤率は第2樹脂の膨潤率より1.5倍大きかった。
実施例1の回折光学素子の格子形状は、ベースとなるR190mmの凹球面に対して緩やかな凸形状の傾斜を有していた。回折格子は、素子中心Oを囲む円である第1輪帯の輪帯幅が3.5mmであり、第2輪帯の輪帯幅が1.5mmであり、以下輪帯幅が連続的に狭くなり、最外周の輪帯は第40輪帯で、輪帯幅は0.30mmであった。また第2樹脂8の第2領域S2における径方向の長さUは2.0mmであった。第1樹脂の厚みt1、第2樹脂の厚みt2、空隙の厚みtvおよび距離wが、それぞれt1=30μm、t2=50μm、tv=0.3μm、w=0mmであった。
(実施例2)
実施例2では、第1基材に対し離型処理は行わず、厚さ1.1μmのガラス製のスペーサーを第1樹脂3に突き当てるように挿入した。また、第1樹脂3の厚みが薄くなるよう第1樹脂組成物3aの使用量を減らした。この点以外は、実施例1と同様の方法で実施例2の回折光学素子を作製した。実施例2の回折光学素子は、第1樹脂の厚みt1、第2樹脂の厚みt2、空隙の厚みtvおよび距離wが、それぞれt1=20μm、t2=50μm、tv=1.0μm、w=0mmであった。
(実施例3)
実施例3では、厚さ2.0μmのガラス製のスペーサーを第1樹脂3に突き当てるように挿入した。この点以外は、実施例2と同様の方法で実施例3の回折光学素子を作製した。実施例3の回折光学素子は、第1樹脂の厚みt1、第2樹脂の厚みt2、空隙の厚みtvおよび距離wが、それぞれt1=20μm、t2=50μm、tv=1.8μm、w=0mmであった。
(実施例4)
実施例4では、第1基材2の離型処理を素子外周から1.5mmの位置まで行った点以外は実施例1と同様の方法で、実施例4の回折光学素子を作製した。実施例4の回折光学素子は、第1樹脂の厚みt1、第2樹脂の厚みt2、空隙の厚みtvおよび距離wが、それぞれt1=30μm、t2=50μm、tv=0.3μm、w=0.5mmであった。
(実施例5)
実施例5では、第1基材2の離型処理を素子外周から1.1mmの位置まで行った点以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の回折光学素子を作製した。実施例5の回折光学素子は、第1樹脂の厚みt1、第2樹脂の厚みt2、空隙の厚みtvおよび距離wが、それぞれt1=30μm、t2=50μm、tv=0.3μm、w=0.9mmであった。
(比較例1)
比較例1では、第1基材に対し離型処理は行わなかった。また、第1樹脂の厚みが薄くなるよう第1樹脂組成物の使用量を減らした。この点以外は、実施例1と同様の方法で比較例1の回折光学素子を作製した。比較例1の回折光学素子は、第1樹脂の厚みt1、第2樹脂の厚みt2、空隙の厚みtvおよび距離wが、それぞれt1=20μm、t2=50μmであった。なお、第2樹脂と第1基材との間に空隙は存在していなかった。
(比較例2)
比較例2では、第1基材2の外周から0.9mmの位置まで厚さ1.1μmのガラス製のスペーサーを挿入した。この点以外は比較例1と同様の方法で、比較例2の回折光学素子を作製した。比較例2の回折光学素子は、第1樹脂の厚みt1、第2樹脂の厚みt2、空隙の厚みtvおよび距離wが、それぞれt1=20μm、t2=50μm、tv=1.0μm、w=1.1mmであった。
(比較例3)
比較例3では厚さ4.0μmのガラス製のスペーサーを第1樹脂に突き当てるように挿入した。この点以外は実施例1と同様の方法で、比較例3の回折光学素子を作製した。比較例3の回折光学素子は、第1樹脂の厚みt1、第2樹脂の厚みt2、空隙の厚みtvおよび距離wが、それぞれt1=30μm、t2=50μm、tv=3.6μm、w=0mmであった。
表1に、得られた回折光学素子の第1樹脂の厚みt1、第2樹脂の厚みt2、空隙の厚みtvおよび距離w等の測長結果をまとめた。
Figure 0007346278000001
また、表2に得られた回折光学素子の評価結果をまとめた。
Figure 0007346278000002
表2に示すように、比較例1および比較例2の回折光学素子は樹脂剥がれが発生した。これは比較例1の回折光学素子は第2樹脂と第1基材が密着していたため、第1樹脂の外周端の上部において第2樹脂に過剰な応力がかかったためだと推測される。また、比較例2の回折光学素子はwが1.1mm(0.55U)と大きかったため、第1樹脂の外周端の上部に位置する第2樹脂にかかる応力を十分に低減できなかったためだと推測される。
また、比較例3の回折光学素子は、樹脂剥がれは確認されなかったものの透過波面の変化が160nmと大きくなってしまった。これは空隙の厚みtvが第1樹脂の厚みt1に対して大きかったために、第1樹脂が吸水により光学性能が変化したためだと考えられる。
一方、wがUに対して0.5U以下であり、かつ、第1樹脂厚t1と空隙の厚みtvの関係がtv/t1≦0.1を満たした実施例1~5は樹脂剥がれが発生せず、透過波面の変化も小さい結果となった。
2 第1基材
3 第1樹脂
7 第2基材
8 第2樹脂
10 回折光学素子
600 一眼レフデジタルカメラ(撮像装置)
601 レンズ鏡筒(交換レンズ、光学機器)
602 カメラ本体
603 レンズ
604 内筒
605 レンズ
606 絞り
607 主ミラー
608 サブミラー
609 シャッタ
610 撮像素子
611 プリズム
621 筐体
S1 第1領域
S2 第2領域

Claims (11)

  1. 第1基材と、第1樹脂と、前記第1樹脂と異なる第2樹脂および第2基材がこの順に積層され、前記第1樹脂と前記第2樹脂とが接する界面に同心円状の回折格子を有する回折光学素子であって、
    前記回折格子を有する第1領域と、前記第1領域の外周に隣接する前記第1樹脂が設けられていない第2領域と、を有し、
    前記第2領域は、前記第2樹脂と前記第1基材が空隙を介して対向しており、
    記第2樹脂の前記第2領域の径方向の長さをUとしたときに、前記空隙は前記第1樹脂の外周から径方向に向かって、距離0.5Uの位置から距離Uの位置まで設けられ、
    前記空隙の高さをtv、前記第1樹脂の外周の厚みをt1としたときに、前記t1に対する前記tvの割合が0.1以下であることを特徴とする回折光学素子。
  2. 前記第2領域において前記第2樹脂と前記第1基材が接している部分の径方向の距離であるwが、1mm未満である請求項1に記載の回折光学素子。
  3. 前記第2領域において前記第2樹脂が前記第1基材と接していない請求項1に記載の回折光学素子。
  4. 前記空隙の高さtvは2μm以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  5. 前記第2領域は非光学有効領域である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  6. 前記第1樹脂の外周の厚みt1が、5μm以上100μm以下の範囲である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  7. 前記第1樹脂の膨潤率αが、前記第2樹脂の膨潤率βより1.1倍以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  8. 前記第2樹脂の前記第1樹脂と接する部分の厚みであるt2が、前記第1樹脂の厚みt1の1.5倍以上である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  9. 筐体と、該筐体内に配置された複数のレンズを有する光学系と、を有する光学機器であって、前記レンズの少なくとも1つが請求項1乃至8のいずれか1項に記載の回折光学素子であることを特徴とする光学機器。
  10. 筐体と、該筐体内に配置された複数のレンズを有する光学系と、該光学系を通過した光を受光する撮像素子と、を有する撮像装置であって、
    前記レンズの少なくとも1つが請求項1乃至8のいずれか1項に記載の回折光学素子であることを特徴とする撮像装置。
  11. 前記撮像装置がカメラであることを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
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