JP2018045238A - 回折光学素子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】回折光学素子における樹脂層の吸水による光学性能の劣化および高温下や低温下におかれた樹脂層の亀裂や界面での剥離の発生を防止する。
【解決手段】基材上に順次積層された第1の層と第2の層とを含み、第1の層と第2の層との界面が回折格子を形成する回折光学素子であって、その回折格子の格子部の高さd、第1の層の平均膜厚t1、第2の層の平均膜厚t2が、
1.1×d≦t1≦50μm
30μm≦t2≦(400μm−t1−d)
の関係を満たすことを特徴とする回折光学素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、回折光学素子およびその製造方法に関し、特にカメラやビデオ等の光学機器に使用される回折光学素子であって、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を用いたレプリカ成形により製造した素子、およびその製造方法に関するものである。
カメラやビデオ、またその他の光学機器の光学系には、基材(基板)の上に光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を成形することにより得られる複合型光学素子が広く用いられており、具体的には非球面レンズやピックアップレンズ、回折光学素子などが挙げられる。その中でも回折光学素子については様々な製法が提案されているが、例えば特許文献1には、レプリカ成形法による密着型の回折光学素子が、特に光学性能が高い素子として開示されている。特許文献1に記載されたレプリカ成形法による密着型の回折光学素子の製造においては、まず、微細形状をもつ型または基板に第1の材料を滴下して型と基板の間に充填する工程、次いで、エネルギーを与えて充填した第1の材料を硬化する工程、その後、硬化した第1の材料と基板を一体として型から剥離する工程を順次実行することにより、基板と硬化した第1の材料とが一体化した、表面に微細形状を有する素子を製造する。その後、得られた素子の上記表面に第2の材料が密着するように第2の層を成形することで密着型の回折光学素子が得られる。
特開2012−218394号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された密着型の回折光学素子では、第1および第2の材料を硬化して得られる2つの樹脂層の少なくともいずれかが水分を吸水し膨張することで、それらの樹脂層の界面に形成された回折格子の光学的面形状の変形やそれらを構成する樹脂の屈折率変化が生じ、素子の光学性能が劣化するという課題がある。また、高温下や低温下で用いた場合には、基板と樹脂との熱膨張の違いにより、樹脂層の亀裂や界面での剥離が発生するという課題がある。
本発明は、樹脂層の吸水による性能の劣化および高温下や低温下におかれた樹脂層の亀裂や界面での剥離の発生を防止した密着型の回折光学素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決する本発明の密着型の回折光学素子は、基材と、該基材の上に設けられた第1の層と、該第1の層の上に密着して設けられた第2の層とを含み、該第1の層と該第2の層との界面に回折格子を形成した回折光学素子であって、前記回折格子の格子部の高さd、前記第1の層の平均膜厚t1、前記第2の層の平均膜厚t2が、
1.1×d≦t1≦50μm
30μm≦t2≦(400μm−t1−d)
の関係を満たすことを特徴とする。
上記の課題を解決する本発明の密着型の回折光学素子の製造方法は、転写する回折格子形状を反転した形状を有する型と基材との間に少なくとも光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む第1の材料を充填する工程、該第1の材料を熱または光エネルギーを与えて硬化させる工程、硬化した第1の材料を型から剥離して該基材の上に第1の層を形成する工程、少なくとも光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含み該第1の材料とは異なる第2の材料を該第1の層の上に充填する工程、該第2の材料を熱または光エネルギーを与えて硬化させることにより該第1の層に密着した第2の層を形成する工程からなり、前記回折格子の格子部の高さd、前記第1の層の平均膜厚t1、前記第2の層の平均膜厚t2が、
1.1×d≦t1≦50μm
30μm≦t2≦(400μm−t1−d)
の関係を満たすことを特徴とする。
本発明によれば、樹脂層の吸水による性能の劣化、および高温下や低温下における樹脂層の亀裂や界面での剥離の発生が十分に抑制された回折光学素子およびその製造方法を提供することができる。
本発明の回折光学素子の断面図である。 本発明の回折光学素子の格子部の形状の一例を示す部分拡大断面図である。 本発明の回折光学素子の製造方法の一実施形態を示す工程図である。 本発明の回折光学素子の外周部の部分拡大断面図である。 本発明の回折光学素子の製造方法の別の実施形態を示す工程図である。
本実施の形態の光学機器は、光学素子を有する望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、カメラ、内視鏡等に用いることができる。
図1は、本発明の回折光学素子の断面図である。
図1の(a)に示す本発明の回折光学素子は、少なくとも光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む異なる2種の材料を用いて形成された回折格子を有する回折光学素子であって、基材(基板)1の上に第1の材料からなる第1の樹脂層2が形成され、その上に第1の樹脂層に密着した第2の材料からなる第2の樹脂層3が形成された構成を有する。回折格子は第1の樹脂層2と第2の樹脂層3の界面に形成され、該界面は、基材1の表面に対してほぼ垂直な複数の壁面と隣接する壁面の下端と上端とをつなぐ複数の光学有効面とを交互に有することで該回折格子を形成する。ここで、第1の樹脂層2の平均膜厚4は、回折光学素子の格子部の高さ5の1.1倍以上50μm以下であり、第2の樹脂層3の平均膜厚6は30μm以上であり、格子部の高さ5と第1の樹脂層の平均膜厚4、第2の樹脂層の平均膜厚6の和である樹脂層の総膜厚は400μm以下である。
すなわち、格子部の各壁面の下端と上端との垂直距離(基材の表面に対して垂直方向に測った距離)の算術平均を格子部の高さd、各壁面の下端と基材の表面との距離の算術平均を第1の樹脂層の平均膜厚t1、各壁面の上端と第2の樹脂層の上面との距離の算術平均を第2の樹脂層の平均膜厚t2とするとき、それらは
1.1×d≦t1≦50μm
30μm≦t2≦(400μm−t1−d)
の関係を満たす。
前記光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む材料としては、所望の光学特性と良好な成形性が得られるように、適切な屈折率、透過率、粘度、硬化収縮率等の材料特性を有するものを選択して用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂等が挙げられ、光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびフッ素樹脂等が挙げられる。
前記回折格子は、光学系や材料特性から計算される所望の光学特性を満足する形状に形成されるが、カメラやビデオ等の光学機器に用いられる場合は、一般に同心円状に形成される。また、同心円状の回折格子の場合、個々の壁面の高さが、図1の(a)および(b)に示すように中心から外周に向かって次第に高くなる形状でも良いし、逆に中心から外周に向かって次第に低くなる形状でも良い。なお、回折格子の光学有効面は、必ずしも平面とは限らず、基材の形状の如何とは別に、球面や非球面等の形状とされることもある。また、光学有効面以外の面の形状は、当該回折格子の光学特性を損なわない限り任意に設定することができる。
前記基材としては、平板ガラス、ガラスレンズ等、通常の光学機器に用いられる形状を有するものを用いることができ、特に平面や球面、非球面等の表面形状を有するものが好適に用いられる。また、基材の表面には反射防止膜や樹脂層との密着性を向上させる薄膜等が形成されていても良く、基材の端部には遮光の役割を持つ膜等が形成されていても良い。
前記第2の樹脂層は、前記第1の樹脂層の全面を覆っていても一部を覆っていても良い。また、第1の樹脂層と第2の樹脂層の間に薄膜が形成されていても良い。そのような薄膜としては、密着力を向上させるためのカップリング膜や反射率調整のための高屈折率膜あるいは低屈折率膜等が挙げられる。
前記第2の樹脂層の第1の樹脂層と密着していない面等の、光学性能に寄与する部分以外の面の形状は任意に設定することができる。更に、この面上には反射防止膜や封止膜等の薄膜が形成されていても良い。
また、図1の(b)に示すように、第2の樹脂層の第1の樹脂層と密着している側と反対側の面8に、第2の基材7を密着させても良い。この構成では、第1および第2の樹脂層のうち一方の樹脂層が端部で両方の基材に接しているときは、この樹脂層を第2の樹脂層とし、両方の基材に接していない樹脂層を第1の樹脂層とみなすことができる。また、両方の基材に接する樹脂層が存在しないときは、広がり径の大きい樹脂層を第1の樹脂層とし、広がり径の小さい樹脂層を第2の樹脂層とみなすことができる。
図2は、本発明の回折光学素子の格子部の形状の一例を示す部分拡大断面図である。
ここで、格子部の高さ5、第1の樹脂層2の平均膜厚4および第2の樹脂層3の平均膜厚6について、図2を用いて述べる。格子部の高さ5とは、各壁面の下端(基材1に近い側の端点)9と上端(基材1から遠い側の端点)10との垂直距離(基材1の表面に対して垂直な方向に測った距離)の全輪帯での算術平均である。また、第1の樹脂層の平均膜厚4とは、各壁面の下端9と基材1の表面との距離(交点11と端点9との距離)の全輪帯での算術平均である。同様に、第2の樹脂層の平均膜厚6とは、各壁面の上端10と第2の樹脂層3の上面(第1の樹脂層と密着する側と反対側の面)との距離(交点12と端点10との距離)の全輪帯での算術平均である。
第1の樹脂層の平均膜厚4を格子部の高さ5の1.1倍より小さくした場合、格子部の形状のばらつきが大きくなり、所望の光学性能を得ることができない。それは、格子部の上端(図2の端点10)付近で、第1の樹脂層の平均膜厚が相対的に薄いことにより応力集中が顕著になり、形状不良が発生するからである。発生した形状不良はランダムな形状を有しているため、初期の型形状の補正等による対応は困難となる。また、第1の樹脂層の平均膜厚4を50μmより大きくした場合、第1の樹脂層を成形する過程で所望の形状の反転形状を有する型から第1の樹脂層を剥離させる際に、樹脂層に強く力がかかり、剥離後の樹脂層の格子形状の先端部が割れる等の不良が発生しやすくなる。
上述した理由から、第1の樹脂層の平均膜厚を格子部の高さの1.1倍以上、50μm以下にすることで回折光学素子の光学性能を劣化させずに、基材上に所望の微細形状を有する第1の樹脂層を配置することができる。特に、第1の樹脂層の平均膜厚と格子部の高さの和を50μm以下にすれば、型から第1の樹脂層を剥離する際に当該樹脂層の格子形状の先端部にかかる力が更に弱くなり、より好ましい。
前記第2の樹脂層の平均膜厚を30μmより小さくした場合、図1の(a)に示される第2の樹脂層の上面(第1の樹脂層と密着していない側の面)8の平滑性が悪化し、所望の光学面を形成することが困難となるため、光学性能が劣化する。これは、平均膜厚が薄いことにより、第2の樹脂層を構成する材料が第1の樹脂層の格子形状に添った形で硬化収縮を起こすためである。平均膜厚を30μm以上にすることで、第2の樹脂層を構成する材料の硬化中に格子形状以外の膜厚を構成している部分から材料が補完され、第2の樹脂層の上面での平滑性が維持されるため、所望の光学面を好ましく形成することができる。
図1の(b)に示したように第2の樹脂層3と第2の基材7が密着している構成の場合には、第2の樹脂層の第2の基材と密着している面(すなわち上面)8の平滑性は第2の樹脂層の平均膜厚に因らずほぼ一定となる。しかしながら、第2の樹脂層の平均膜厚を30μmより小さくした場合には、第2の樹脂層の格子部に応力が蓄積された状態となり、格子形状の変形や格子部での樹脂層の屈折率分布を発生させることになるため、前述した第2の基材がない構成の回折光学素子と同様に光学性能が劣化することとなる。平均膜厚を30μm以上にすることで、第2の材料の硬化中に格子形状以外の膜厚を構成している部分から材料が補完され、第2の樹脂層の格子部における応力の蓄積を十分に低減させることができるため、所望の満足すべき光学性能をもたらすことができる。
樹脂層の総膜厚を示す格子部の高さと第1の樹脂層の平均膜厚と第2の樹脂層の平均膜厚の和を400μmより大きくした場合、第1および第2の樹脂層の吸水により、第2の樹脂層の第1の樹脂層に密着していない面(すなわち上面)や、回折格子を形成する界面、第1の樹脂層と基材との密着面等の形状が大きく変化することがある。また、吸水により第1および第2の材料の屈折率も変化する。このため、樹脂層の総膜厚を400μmより大きくすると光学性能が著しく劣化する可能性がある。また、高温下や低温下においては、基材と樹脂層との熱膨張の違いにより、樹脂層内部に大きな応力が生まれる。この応力が、材料の降伏応力以上、あるいは、基材と第1の樹脂層、第1の樹脂層と第2の樹脂層もしくは第2の樹脂層と第2の基材の界面での密着力以上になると、樹脂の内部での亀裂や界面での剥離が発生する。
樹脂層の総膜厚を400μm以下にすることで、吸水による性能劣化や高温下、低温下における樹脂層の亀裂や界面での剥離の発生を十分に抑制することができる。特に、樹脂層の総膜厚は、300μm以下であると吸水や温度変化による影響がより低減され、光学性能の劣化や亀裂や剥離の発生を更に抑制できるためより好ましく、200μm以下であることが最も好ましい。
吸水による面の変形や樹脂の屈折率分布の発生による光学性能の劣化や、高温下および低温下における亀裂や剥離の発生を防止するには、上に述べたように、樹脂層の総膜厚を薄くすることが有効となる。一方で、樹脂層を薄くしすぎると、回折光学素子としての光学性能の劣化や安定性の低下が見られる。本発明者らは、回折光学素子における格子形状不良の発生や内部応力による屈折率分布の発生と樹脂層の平均膜厚との関係を検討した結果、光学性能の劣化や安定性の低下が発生しない平均膜厚の範囲を見出した。特に、平均膜厚が光学性能に与える影響の度合いが第1の樹脂層と第2の樹脂層とで異なることを明らかにした。これにより、樹脂層の総膜厚を、光学性能の劣化を発生させず、かつ耐環境性(耐吸水性)が改善されるように調整された回折光学素子を製造することが可能になった。
また、本発明において、所望の満足できる光学特性を実現しようとした場合、現在回折格子に用いることができる公知の樹脂材料では、その光学特性上、格子部の高さは8μm以上となる。一方、格子部の高さが高すぎると、格子の壁面部に起因するフレアが発生し、光学性能が劣化するため、格子部の高さは8μm以上25μm以下であることが好ましい。
次に、本発明の回折光学素子の製造方法について、図3を用いて説明する。
図3の(a)から(f)は、本発明の回折光学素子の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
図3に示すように、本発明の回折光学素子の製造方法は、所望の回折格子形状を反転させた形状を有している型13と基材1の間に少なくとも光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む第1の材料2aを充填する工程(a)、第1の材料2aを熱または光エネルギー14を与えて硬化させる工程(b)、硬化した第1の材料を型13から剥離して基材1上に第1の樹脂層2を形成する工程(c)、少なくとも光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含み第1の材料とは異なる第2の材料3aを第1の樹脂層2上に(対向材15との間に)充填する工程(d)、第2の材料3aを熱または光エネルギー14を与えて硬化させる工程(e)、および硬化した第2の材料からなる第2の樹脂層3を対向材15から剥離して完成した回折光学素子を得る工程(f)からなる製造方法である。このとき、回折格子は第1の樹脂層2と第2の樹脂層3の界面に形成され、該界面は、基材1の表面に対してほぼ垂直な複数の壁面と隣接する壁面の下端と上端とをつなぐ複数の光学有効面とを交互に有することで該回折格子を形成する。このとき、第1の樹脂層2の平均膜厚4は、回折光学素子の格子部の高さ5の1.1倍以上50μm以下であり、第2の樹脂層3の平均膜厚6は30μm以上であり、格子部の高さ5と第1の樹脂層の平均膜厚4と第2の樹脂層の平均膜厚6の和である樹脂層の総膜厚は400μm以下である。ただし、格子部の高さとは各壁面の下端と上端との垂直距離(基材1の表面に対して垂直方向に測った距離)の算術平均であり、第1の樹脂層の平均膜厚とは、各壁面の下端と基材の表面との距離の算術平均であり、第2の樹脂層の平均膜厚とは各壁面の上端と第2の樹脂層の上面との距離の算術平均である。
前記型13は、転写する回折格子の反転形状を有している。型の材質としては、金属や樹脂等の公知の材質を用いることができる。例えば、金属母材上にNiPやCu等のメッキ層を形成し、メッキ層を切削や研磨することで製造されたもの等が挙げられる。または、マスター型から樹脂材料を用いて成形した型等を用いることもできる。型の表面には、公知の薄膜が構成されていても良く、薄膜としては窒化膜やDLC(Diamond-Like Carbon)膜等の離型膜やシリコーン系、フッ素系、非シリコーン系等の離型剤をコーティングした膜等が挙げられる。
前記第1の材料2aを前記型13に充填する方法としては、基材または型、もしくは基材と型の両方に材料を滴下し、基材と型の間に材料を広げる方法がある。材料を広げる方法としては、基材や型を互いが接近する方向に近づけていく方法や、基材や型に対して互いが接近する方向に荷重を与える方法、基材や型の自重で充填する方法、材料を加熱し粘度を下げることで充填させる方法等の公知の手法を用いることができる。なお、光学特性にかかわる範囲に材料を充填すれば、その他の部分への充填は任意とすることができる。
本発明の材料を硬化するには、硬化に必要な熱または光エネルギー14を材料に付与する必要がある。具体的には紫外光や可視光、熱エネルギー等を材料に与えることができる。材料を硬化する光エネルギーまたは熱エネルギーは、材料に均一に与えても、任意の分布を持って与えても良く、例えば格子形状や樹脂層の厚み等に依存した強度分布を持たせても良い。また、光エネルギーと熱エネルギーを同時に与えても良いし、段階的に双方を使用しても良い。
前記材料を型から剥離する方法として、基材の端部に対して型から剥離する方向に荷重を加える方法、型に対して基材から剥離する方向に荷重を加える方法等の公知の方法を用いることができる。
前記第2の材料を第1の樹脂層に密着するように充填する方法として、第1の樹脂層2または対向材15、もしくはその両方に第2の材料を滴下し、第1の樹脂層と対向材の間に材料を広げる方法がある。また、第2の基材を対向材としても良く、この場合には第2の材料を第1の樹脂層と第2の基材の間に充填する(図1(b)の形態)。
前記第2の材料を硬化させた第2の樹脂層を対向材から剥離することで回折光学素子が得られる。なお、対向材として第2の基材を用いた場合には剥離の必要はなく、第2の材料を硬化するだけで回折光学素子が得られる。
2つの基材を用いた回折光学素子では、基材に接している状態と樹脂層の広がり径により、第1の樹脂層と第2の樹脂層を判別することができる。図4は、本発明の回折光学素子の外周部の部分拡大断面図である。2つの基材を用いた回折光学素子の外周部の状態は、図4の(a)および(b)の2種に大別される。図4(a)は、型を用いて成形した第1の樹脂層2の外周縁を超えて第2の樹脂層3を形成した場合を示し、この場合には、第1の樹脂層を超えて形成された第2の樹脂層は、2つの基材に接している。図4(b)は、型を用いて成形した第1の樹脂層2の広がり径以下に第2の樹脂層3の広がり径を抑えた場合を示し、この場合には、2つの基材に接する樹脂層は存在しない。すなわち、2つの樹脂層のうち、2つの基材に接する樹脂層が存在する場合は、この樹脂層を第2の樹脂層とし、他方の樹脂層を第1の樹脂層とみなすことができる。また、2つの基材に接する樹脂層が存在しない場合は、広がり径が大きい樹脂層を第1の樹脂層とし、広がり径が小さい樹脂層を第2の樹脂層とみなすことができる。
上に述べたように、前記第1の材料を充填する際に、第1の樹脂層の平均膜厚が格子部の高さの1.1倍以下とした場合、格子部の形状ばらつきが大きくなり、所望の光学性能を得ることができない。樹脂層の平均膜厚を設定する方法としては、基材と型の間の端部に所望の厚みを有するスペーサーを入れる方法や、基材と型との距離を検知しながら充填する方法等の公知の方法を用いることができる。一般に、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂は、硬化する際に収縮を伴う。このとき、第1の樹脂層の平均膜厚が格子部の高さの1.1倍以下であると、第1の樹脂層の格子部の先端付近で、硬化収縮による応力集中が顕著となり、格子部の形状不良が発生する。発生する形状不良はランダムな形状を有しており、初期の型補正等により対応することは困難となる。
また、第1の樹脂層の平均膜厚を50μm以上にした場合、型から第1の樹脂層を剥離する際に、樹脂層に強く力がかかり、格子形状の先端部が割れる等の不良が発生しやすくなり、歩留まりが低下する。
上述した理由から、第1の樹脂層の平均膜厚を格子部の高さの1.1倍以上、50μm以下にすることで回折光学素子の光学性能を劣化させずに、好適に基材上に所望の格子形状を有する第1の樹脂層を配置することができる。また、第1の樹脂層の平均膜厚と格子部の高さの和を50μm以下にすれば、第1の樹脂層の格子部の下端9における剥離時の力を一定以下に制御できるため、より好ましい。
前記第2の材料を充填する際に、第2の樹脂層の平均膜厚を30μmより小さくした場合、第2の樹脂層の第1の樹脂層と密着していない面(すなわち上面)8の平滑性が悪化し、所望の光学面を形成することが困難となり、製造された回折光学素子の光学性能が劣化する。これは、平均膜厚が薄いことにより、第2の材料が硬化する際に第1の樹脂層の格子形状に添った形で硬化収縮を起こすためである。平均膜厚を30μm以上にすることで、第2の材料の硬化中に、膜厚を構成している格子形状以外の部分から材料が補完されるため、第2の樹脂層の第1の樹脂層と密着していない面での平滑性が維持され、所望の光学面を形成することができる。
また、第2の基材を用いた場合には、第2の樹脂層の第2の基材と密着している面の平滑性は、第2の樹脂層の平均膜厚に因らず、ほぼ一定となる。しかしながら、第2の樹脂層の平均膜厚を30μmより小さくした場合には、第2の材料の硬化収縮により第2の樹脂層の格子部に応力が蓄積された状態となる。この応力により、格子形状の変形や格子部での樹脂層の屈折率分布を発生し、第2の基材を用いない構成の素子と同様に光学性能が劣化することとなる。平均膜厚を30μm以上にすることで、第2の材料の硬化中に膜厚を構成している格子形状以外の部分から材料が補完され、第2の樹脂層の格子部の応力を十分好適に低減させることができ、所望の光学性能を満足することができる。
樹脂層の総膜厚を示す格子部の高さと第1の樹脂層の平均膜厚と第2の樹脂層の平均膜厚の和が400μmより大きくなるよう製造された回折光学素子では、樹脂層が吸水することにより、第2の樹脂層の第1の樹脂層に密着していない面(すなわち上面8)や、回折格子を形成する界面、基材面等の形状が大きく変化することとなる。また、吸水により第1の材料および第2の材料の屈折率も変化するため、前述の通り光学性能が著しく劣化する。また、高温下や低温下においては、基材と樹脂層との熱膨張の違いにより、樹脂層内部に大きな応力が生まれる。この応力が、材料の降伏応力以上もしくは、基材と第1の樹脂層、第1の樹脂層と第2の樹脂層あるいは第2の樹脂層と第2の基材の界面での密着力以上となると、樹脂層での亀裂や界面での剥離が発生する。
樹脂層の総膜厚を400μm以下にすることで、製造される回折光学素子の吸水による性能劣化や高温下、低温下における樹脂層の亀裂および界面の剥離の発生を十分に抑制することができる。特に、樹脂層の総膜厚は、300μm以下であると更に吸水や温度変化による影響が低減され、性能劣化や亀裂や剥離の発生を更に抑制することができるため好ましく、200μm以下であることが、最も好ましい。
製造される回折光学素子の吸水による面形状の変形や屈折率の変化による光学性能の劣化や、高温下、低温下における亀裂や剥離の発生を抑制するには、樹脂層の総膜厚を薄くすることが有効となる。一方で、樹脂層を薄くすると回折光学素子の格子形状を製造するにあたり、形状安定性の悪化や内部応力による屈折率分布の発生等が起こり、光学性能を悪化させる。本発明者らは、回折光学素子の製造において、格子形状不良の発生や内部応力による屈折率分布の発生が樹脂層の平均膜厚に依存していることを突き止め、光学性能の劣化や安定性の低下が発生しない平均膜厚の範囲を見出した。特に、平均膜厚が光学性能に与える影響の度合いが第1の樹脂層と第2の樹脂層とで異なることが明らかになった。これにより、樹脂層の総膜厚を好ましい範囲内に設定することで、光学性能の劣化を発生させず、かつ耐環境性が十分に改善された回折光学素子を製造することができる。
[実施例]
(実施例1)
本実施例における回折光学素子およびその製造方法(本発明の一実施形態)を、図3を用いて述べる。
基材1には、オハラ株式会社製ガラスS−BSL7(製品名)からなる径55mm、厚み3mmの両面とも概ね平面であるレンズを用いた。第1の材料2aおよび第2の材料3aは、光硬化性アクリル樹脂を主成分とするものとし、第1の材料には第2の材料よりも屈折率が低いものを用いた。
製造する回折光学素子は、格子部の高さが10.5μmから11.3μmであり、格子幅は0.15mmから3.0mmのブレーズ型回折格子である。格子は同心円状に形成されており、全74輪帯である。型13および対向材15の表面は、それぞれ所望の回折格子の反転形状および平面形状を有し、ウッデホルム社製STAVAX(製品名)からなる母材上に、NiPからなるメッキ層を150μm形成し切削することにより製造されたものである。
まず、基材1の第1の材料と接する面(図3(a)では下側の面)に、第1の材料との密着を強くするためのシランカップリング処理を施した。次に、基材のシランカップリング処理面の中央付近に、第1の材料2aを180mg滴下した。続いて、型の上部に第1の材料を滴下した基材を配置し、徐々に型と基材を近づけることで第1の材料を基材と型の間に充填した。この際に、第1の樹脂層の平均膜厚を所望の値に制御するため、基材と型との距離を±3μmの精度で位置センサで検知しながら充填を行い、第1の樹脂層の平均膜厚が30〜36μmになるよう充填を行った。図3(a)参照。
充填された第1の材料にHOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製UL−750(製品名)を用いて紫外光14を150秒間照射し、第1の材料を光硬化させた。図3(b)参照。
その後、基材1の外周部に型13から剥離する方向に力を加えることで、硬化した第1の樹脂層2と基材1を一体として型13から剥離した。基材上に成形された第1の樹脂層の平均膜厚は、32μmであった。得られた第1の樹脂層の格子形状にランダムな形状不良は観察されず、格子形状の先端部の割れも発生しなかった。図3(c)参照。
次いで、基材上の第1の樹脂層の中央付近に、第2の材料を250mg滴下し、対向材15と第2の材料を滴下した基材1とを徐々に近づけることで充填を行った。この際の第2の樹脂層の平均膜厚を所望の値に制御する方法は、前述した第1の樹脂層の充填方法と同様であり、第2の樹脂層の平均膜厚が40〜46μmになるよう総膜厚を制御しながら充填を行った。図3(d)参照。
充填された第2の材料に第1の樹脂層の成形と同様にして紫外光14を150秒間照射し、第2の材料を硬化させた。図3(e)参照。
その後、基材1の外周部に対向材15から剥離する方向に力を加えることで、硬化した第2の樹脂層3を基材1および第1の樹脂層2と一体的に対向材15から剥離することで、回折光学素子を得た。図3(f)参照。得られた回折光学素子の第2の樹脂層の平均膜厚は、総膜厚と格子部の高さと第1の樹脂層の平均膜厚とから46μmであると計算された。また、得られた回折光学素子の回折効率は所望の性能を満足した。
製造された回折光学素子の環境耐久性を確認するため、60℃・湿度90%の環境下で20日間保持したが、保持前後で光学特性である回折効率に変化は見られなかった。また、温度変化による耐久性を確認するため、−30℃で1時間放置した後、60℃まで1℃/分の速さで昇温させたのち、60℃で1時間放置し、さらに−30℃まで1℃/分の速さで降温させる工程を10度繰り返す試験を行ったが、樹脂層での亀裂発生や界面の剥離は見られなかった。
このように、本実施例によれば、吸水による光学性能の劣化や高温下低温下における亀裂および剥離の発生が抑えられ、かつ、満足すべき光学性能を備えた回折光学素子が得られた。これにより、カメラやビデオ等の光学機器に本実施例の回折光学素子を搭載することができる。
(実施例2)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第1の樹脂層の平均膜厚を14μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例1と変化なく、高温高湿下に保持した後の光学特性の変化や、温度変化による亀裂や剥離の発生も見られなかった。
(実施例3)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第1の樹脂層の平均膜厚を45μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例1と変化なく、高温高湿下に保持した後の光学特性の変化や、温度変化による亀裂や剥離の発生も見られなかった。
(比較例1)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第1の樹脂層の平均膜厚を10μmとした。得られた回折光学素子の第1の樹脂層には、格子形状にランダムな不良が発生し、その変形量は最大50nmであった。この形状不良により、回折効率が実施例1と比較して1%低下した。
(比較例2)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第1の樹脂層の平均膜厚を7μmとした。得られた回折光学素子の第1の樹脂層には、格子形状にランダムな不良が発生し、その変形量は最大135nmであった。この形状不良により、回折効率が実施例1と比較して1.3%低下した。
(比較例3)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第1の樹脂層の平均膜厚を52μmから55μmとした。得られた回折光学素子の第1の樹脂層の格子部先端で、割れが10個中1個の素子で発生した。この先端部の割れにより、回折効率は実施例1と比較して0.6%低下した。
下記の表1に、第1の樹脂層の平均膜厚と初期の光学性能(回折効率)を示す。格子部の高さは全て10.5μmから11.3μmであり、第2の樹脂層の平均膜厚は全て40μmから46μmである。表1から第1の樹脂層の平均膜厚を格子部の高さの1.1倍以上50μm以下にすることで、形状不良の発生が無く所望の光学性能を有する回折光学素子が製造できることが分かる。
Figure 2018045238
(実施例4)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を39μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例1と変化なく、高温高湿下に保持した後の光学特性の変化や、温度変化による亀裂や剥離の発生も見られなかった。
(実施例5)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を150μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例1と変化なく、高温高湿下に保持した後の光学特性の変化や、温度変化による亀裂や剥離の発生も見られなかった。
(実施例6)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を240μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例1と変化が無かった。高温高湿下に保持した後の回折効率は、実施例1と比較して0.2%の低下が見られたが、0.5%以内の変化であれば製品性能に大きな影響を与えないため使用することができる。また、温度変化による亀裂や剥離の発生は見られなかった。
(実施例7)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を330μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例1と変化が無かった。高温高湿下に保持した後の回折効率は、実施例1と比較して0.4%の低下が見られたが、0.5%以内の変化であれば製品性能に大きな影響を与えないため使用することができる。また、温度変化による亀裂や剥離の発生は見られなかった。
(比較例4)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を25μmとした。得られた第2の樹脂層の空気と接する面は格子形状に沿った凹凸が見られ、凹凸の高さは最大で100nmであった。この形状不良により、回折効率は実施例1と比較して2%低下した。
(比較例5)
実施例1の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を410μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例1と変化が無かった。高温高湿下に保持した後の回折効率は、実施例1と比較して1.3%の低下が見られた。また、温度変化による亀裂や剥離の発生は見られなかった。
下記の表2に、第2の樹脂層の厚みと初期の光学性能および高温高湿下に放置後の光学性能を示す。表2から、第2の樹脂層の平均膜厚を30μm以上とし樹脂層の総膜厚を400μm以下にすることで、所望の光学性能を有し、耐環境性の高い回折光学素子が製造できることが分かる。また、樹脂層の総膜厚が300μm以下である回折光学素子では、高温高湿下に保持した後の光学性能の変化がより少なくなり、200μm以下である回折光学素子では光学性能に変化が見られないため、より好ましい。
Figure 2018045238
(実施例8)
本実施例における回折光学素子およびその製造方法(本発明の別の実施形態)を、図5を用いて述べる。
第1の基材1には、オハラ株式会社製ガラスS−FSL5(製品名)からなる径63mm、中心の厚みが3mmのレンズを用いた。回折格子を形成する面は、40mmの曲率半径を有する凹面である。また、第2の基材7には、オハラ株式会社製ガラスS−BSL7(製品名)からなる径58mm、中心の厚みが13mmのメニスカスレンズを用いた。回折格子を形成する面は、40mmの曲率半径を有する凸面である。第1の材料2aには、光硬化性アクリル系樹脂を主成分とする材料を用い、第2の材料3aには、光硬化性フッ素系樹脂を主成分とする材料を用いた。
製造する回折光学素子は、格子部の高さが10.5μmから12.8μmであり、格子幅は0.12mmから3.0mmのブレーズ型回折格子である。格子は同心円状に形成されており、全89輪帯である。型13は、所望の回折格子の反転形状を有し、ウッデホルム社製STAVAX(製品名)からなる母材上に、共和産業株式会社製オプトカッパー(製品名)を150μm形成し、切削することにより製造されている。
まず、第1および第2の基材に、第1の材料および第2の材料との密着を強くするためのシランカップリング処理を施した。次に、第1の基材1のシランカップリング処理面(凹面側)の中央付近に、第1の材料2aを300mg滴下した。続いて、型13の上部に第1の材料2aを滴下した第1の基材1を配置し、徐々に型13と第1の基材1を近づけ、第1の樹脂層の平均膜厚が30μmから36μmになるよう充填を行った。図5(a)参照。
充填された第1の材料に実施例1と同様にして紫外光14を300秒間照射し、第1の材料を光硬化させて第1の樹脂層2とした。図5(b)参照。
その後、基材1の外周部に型13から剥離する方向に力を加えることで、第1の樹脂層2と基材1とを一体として型13から剥離した。基材1上に成形された第1の樹脂層2の平均膜厚は、32μmであった。得られた第1の樹脂層の格子形状にランダムな形状不良は観察されず、格子形状の先端部の割れも発生しなかった。図5(c)参照。
次に、基材上の第1の樹脂層2の中央付近に、第2の基材7のシランカップリング処理面(凸面側)の中央付近に、第2の材料3aを190mg滴下し、第2の材料3aを滴下した第2の基材7と第1の樹脂層2を形成した第1の基材1とを徐々に近づけることで第2の材料の充填を行った。この際に第2の樹脂層の平均膜厚が42μmから48μmになるよう充填を行った。第1の樹脂層の成形と同様にして紫外光14を照射することで、第2の材料を硬化して回折光学素子を得た。得られた回折光学素子の第2の樹脂層の平均膜厚は、総膜厚と格子部の高さと第1の樹脂層の平均膜厚とから46μmであると計算された。また、得られた回折光学素子の回折効率は所望の性能を満足した。
製造された回折光学素子の環境耐久性を確認するため、高温高湿の環境下で20日間保持したが、保持前後で光学特性である回折効率に変化は見られなかった。また、高温下低温下を2時間以内に10回繰り返すことで温度変化による耐久性を確認したが、樹脂層での亀裂発生や界面の剥離は見られなかった。
このように、本実施例によれば、吸水による光学性能の劣化や高温下低温下における亀裂および剥離の発生が抑えられ、かつ、満足すべき光学性能を備えた回折光学素子が得られた。これにより、カメラやビデオ等の光学機器に本実施例の回折光学素子を搭載することができる。
(実施例9)
実施例8の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を150μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例8と変化なく、高温高湿下に保持した後の光学特性の変化や、温度変化による亀裂や剥離の発生も見られなかった。
(実施例10)
実施例8の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を240μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例8と変化が無く、高温高湿下に保持した後の光学特性の変化も見られなかった。温度変化を与える試験では、回折光学素子の外周部において、第2の樹脂層と第2の基材の間で1mm弱の剥離が発生したが、光学性能に変化は見られなかった。
(実施例11)
実施例8の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を330μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例8と変化が無く、高温高湿下に保持した後の光学特性の変化も見られなかった。温度変化を与える試験では、回折光学素子の外周部において、第2の樹脂層と第2の基材の間の剥離の発生および第2の樹脂層に亀裂の発生が1mm弱の範囲で見られたが、光学性能に変化は無かった。
(比較例6)
実施例8の回折光学素子およびその製造方法において、第2の樹脂層の平均膜厚を400μmとした。得られた回折光学素子の光学性能は実施例8と変化が無く、高温高湿下に保持した後での光学特性の変化も見られなかった。温度変化を与える試験では、素子全面で第1の樹脂層と第2の樹脂層に亀裂が発生し、回折光学素子として機能を果たさない状態となった。
下記の表3に第2の樹脂層の平均膜厚と温度変化による亀裂や剥離の発生状況を示す。表2から、樹脂層の総膜厚を400μm以下にすることで、高温下低温下でも回折光学素子として使用できることが分かる。また、樹脂層の総膜厚が300μm以下である回折光学素子では、高温下低温下における耐久性が上がり、200μ以下である回折光学素子では剥離や亀裂の発生が見られないため、より好ましい。
Figure 2018045238
(実施例12)
実施例8の回折光学素子およびその製造方法において、格子部の高さを22μmから23μmとした。得られた回折光学素子の耐環境性は、実施例8の回折光学素子と変わらなかった。また、格子部に光を意図的に当てることでフレアの影響を検討したが、製品性能に影響を与えないことを確認した。
(比較例7)
実施例8の回折光学素子およびその製造方法において、格子部の高さを27μmから28μmとした。得られた回折光学素子の耐環境性は、実施例8の回折光学素子と変わらなかった。格子部に光を意図的に当てることでフレアの影響を検討したところ、製品性能に影響があり使用できないことが分かった。
以上より、回折光学素子の格子部の高さを25μm以下とすることで、光学機器に用いる際のフレアの影響が少ないことが確認された。
1 基材(基板)
2 第1の樹脂層
3 第2の樹脂層
4 第1の樹脂層の平均膜厚
5 格子部の高さ
6 第2の樹脂層の平均膜厚
7 第2の基材
8 第2の樹脂層の上面
9 格子を構成する各壁面の下端
10 格子を構成する各壁面の上端
11 壁面の下端から基材の表面に引いた垂線と基材表面との交点
12 壁面の上端から第2の樹脂層の上面に引いた垂線と第2の樹脂層の上面との交点
13 格子形状を反転させた形状を有する型
14 熱または光エネルギー
15 対向材

Claims (12)

  1. 基材と、該基材の上に設けられた第1の層と、該第1の層の上に密着して設けられた第2の層とを含み、該第1の層と該第2の層の界面に回折格子を形成した回折光学素子であって、前記回折格子の格子部の高さd、前記第1の層の平均膜厚t1、前記第2の層の平均膜厚t2が、
    1.1×d≦t1≦50μm
    30μm≦t2≦(400μm−t1−d)
    であることを特徴とする回折光学素子。
  2. 前記第1の層の平均膜厚t1と前記格子部の高さdの和が50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
  3. t2≦(300μm−t1−d)
    であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回折光学素子。
  4. t2≦(200μm−t1−d)
    であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の回折光学素子。
  5. 前記格子部の高さdが8μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の回折光学素子。
  6. 第1の層と第2の層との界面に回折格子を形成した回折光学素子の製造方法において、転写する回折格子形状を反転した形状を有する型と基材の間に少なくとも光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む第1の材料を充填する工程、該第1の材料を熱または光エネルギーを与えて硬化させる工程、硬化した第1の材料を型から剥離して該基材の上に第1の層を形成する工程、少なくとも光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含み該第1の材料とは異なる第2の材料を該第1の層の上に充填する工程、該第2の材料を熱または光エネルギーを与えることにより硬化させて該第1の層に密着した第2の層を形成する工程からなり、前記回折格子の格子部の高さd、前記第1の層の平均膜厚t1、前記第2の層の平均膜厚t2が、
    1.1×d≦t1≦50μm
    30μm≦t2≦(400μm−t1−d)
    の関係を満たすことを特徴とする回折光学素子の製造方法。
  7. 前記第1の層の平均膜厚t1と前記格子部の高さdの和が50μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の回折光学素子の製造方法。
  8. t2≦(300μm−t1−d)
    であることを特徴とする請求項6又は7に記載の回折光学素子の製造方法。
  9. t2≦(200μm−t1−d)
    であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の回折光学素子の製造方法。
  10. 前記格子部の高さdが8μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の回折光学素子の製造方法。
  11. 少なくとも1つの光学素子を有する光学機器であって、
    前記光学素子は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回折光学素子であることを特徴とする光学機器。
  12. 前記回折光学素子がレンズであり、前記光学機器がカメラであることを特徴とする請求項11に記載の光学機器。
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