JP2004205721A - 光学部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、透明基板上に密着した透明部材層の平坦な表面の一部に所定の凹凸形状が設けられ、その透明部材層の表面が誘電体多層膜によって被覆されている構造を有する光学部品を対象とし、その構成要素に対して望ましい条件を提供することによって、長期的な信頼性を備えた光学部品を提供する。
【解決手段】本発明においては、光学部品を構成する透明基板の線膨張係数を1.5×10-5℃-1以下、同じく透明部材層の線膨張係数を2〜15×10-5℃-1の範囲とし、かつ、この透明部材層の平坦な部分の厚さを3〜40μmの範囲とする。このような条件を満たす材料として、基板材料はガラス、透明部材層は樹脂が望ましい。このような光学部品としてはマイクロレンズアレイや回折格子が代表的である。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明においては、光学部品を構成する透明基板の線膨張係数を1.5×10-5℃-1以下、同じく透明部材層の線膨張係数を2〜15×10-5℃-1の範囲とし、かつ、この透明部材層の平坦な部分の厚さを3〜40μmの範囲とする。このような条件を満たす材料として、基板材料はガラス、透明部材層は樹脂が望ましい。このような光学部品としてはマイクロレンズアレイや回折格子が代表的である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は主として光通信分野で使用される光学部品に関し、とくに表面に反射防止対策を施した樹脂製光学部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の情報通信容量の増大に伴い、マイクロレンズアレイなどの光学部品に対する需要が高まってきている。とくに光の回折現象や屈折現象を応用する光学素子は、その表面に微細な凹凸構造を形成する必要がある場合が多い。
このような微細凹凸構造の製法に関しては数多くの報告があるが、その中でも量産性に優れ低コストな製法として、樹脂の成形加工が有望視されている。光硬化性樹脂の成形により母型を作製した後、この母型を用いて光硬化性樹脂を成形し光照射により硬化する方法が、いわゆる2P成形法として知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、光通信分野における光学素子としては、表面での反射戻り光を極力減らすことが要求される。このため、一般には、光学素子表面に誘電体多層膜を反射防止手段として形成する。この点は上記のように樹脂を成形して光学素子を作製する場合においても例外ではない。
【0004】
いずれにしても透明基板上に樹脂等の透明部材層を形成し、その平坦な表面の一部に所定形状の微細な凹凸構造を成形法によって作製し、さらにその表面を誘電体多層膜によって被覆した構造を有する光学部品は種々使用されている。マイクロレンズアレイや回折格子などがその代表的な例である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−49702号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記従来の技術には、以下のような問題点があった。
透明部材層が樹脂の場合、硬化によって膜内部に大きな収縮応力が発生しやすく、この応力が原因となって、透明部材層と透明基板とが剥離する場合がある。また、樹脂層表面に形成した誘電体多層膜は、温度変動によって樹脂が伸縮すると、亀裂が生じたり、剥離したりする場合がある。
【0007】
以上のような問題点は、光学部品の製造後、ある程度の時間経過後に発生してくるので、光通信用としてこれらの光学部品を使用するには信頼性が不十分である。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的は、上記の構造を有する光学部品に対してその構成要素に対して望ましい条件を提供し、これによって長期的な信頼性を備えた光学部品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明が対象とする光学部品は、透明基板上に密着した透明部材層の平坦な表面の一部に所定の凹凸形状が設けられ、その透明部材層の表面が誘電体多層膜によって被覆されているような構造を有するものである。本発明においては、この光学部品を構成する透明基板の線膨張係数を1.5×10-5℃-1以下、同じく透明部材層の線膨張係数を3〜10×10-5℃-1の範囲とし、かつ、この透明部材層の平坦な部分の厚さを3〜40μmの範囲とする。
【0010】
上記の条件を満足する透明基板および透明部材層を組み合わせることにより、本発明が対象とする光学部品全体としての信頼性を向上させることができる。
ただし、透明部材層は、流動性樹脂組成物を重合硬化させた固体樹脂組成物であることが望ましい。このような材料を使用することで成形により用意に所望の凹凸形状が形成できる。
【0011】
誘電体多層膜は、SiO2、TiO2、Ta2O5、ZrO2、Nb2O5及びMgF2よりなる群から選ばれた材料からなる少なくとも2層膜で構成され、少なくとも使用波長において反射防止機能を有するものとする。この膜の作用により、本発明が対象とする光学部品を光通信分野に適用する場合に、反射光を十分低減できる。
【0012】
さらにこの誘電体多層膜中に存在する粒塊または柱状構造物の直径が10nm未満であることが望ましい。このような膜は十分緻密であるので、光学部品の信頼性向上に寄与できる。
【0013】
また、透明部材層と誘電体多層膜の間に厚さ1〜200nmのSiO2膜を介在させることが望ましい。これにより透明部材層に対する誘電体多層膜の付着力が改善され、光学部品の信頼性向上に寄与できる。
【0014】
透明基板はガラスであることが望ましい。ガラスを基板として使用することにより、透明性が確保できるとともに、上記の基板の線膨張係数の条件を満たすことができる。
上記の光学部品はマイクロレンズアレイの機能が付与されたものが代表的である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の発明者らは、上記の目的を達成するため、光学部品を構成する基板、微細凹凸構造を有する透明部材層および誘電体多層膜について、それぞれに要求される条件を検討した。以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
微細凹凸構造を成形する代表的な方法としては、下記2つの方法を挙げることができる。
第1の方法(以下、型注ぎ法と称する)では、成形型に透明で流動性を有する樹脂組成物を注ぎ脱気した後、基材を流動性樹脂組成物を挟むように成形型に押し当て、そのままの状態で加熱または光照射を行い樹脂組成物を硬化させる。硬化した固体樹脂組成物を基材とともに成形型から離型し、必要に応じて最終加熱を行うことにより、微細凹凸構造を有する光学部品を得る。
【0017】
第2の方法(以下、基材注ぎ法と称する)では、透明で流動性を有する樹脂組成物を基材に直接注ぎ脱気した後、成形型を基材上の流動性樹脂組成物に押し当て、そのままの状態で加熱または光照射を行い樹脂組成物を硬化させる。硬化した固体樹脂組成物を基材とともに成形型から離型し、必要に応じて最終加熱を行うことにより、微細凹凸構造を有する光学部品を得る。
【0018】
上記いずれの方法においても流動性樹脂組成物の粘度は3〜2500mPa・mの範囲に調整するのが好ましい。
【0019】
成形型はその表面に凹部または凸部が設けられている。凹凸部としては、例えば球状、円錐状、角錐状、断面任意形状のスリット状等を例示できる。例えば、表面が平坦なガラス基板の表面を精密にエッチングして、目的とする形状の凹型を形成する。これを種型として、紫外線硬化樹脂を用いたいわゆる2P成型法により樹脂製母型を作製し、これを成形型として用いることもできる。
【0020】
この成形型の最表面には、フッ素樹脂あるいは金からなる離型膜を設けることが好ましい。フッ素樹脂は、スピンコート法またはディップコート法により成形型に均一に成膜される。一方、金は、成形材料に対して良好な離型性を示し、機械的強度や耐熱性、耐腐食性、耐酸化性にも優れているため、離型膜として優れた材料である。離型膜は表面が平滑であるほど離型性が高いことから、スパッタ法や真空蒸着法、無電解メッキ法、箔張り付け法などにより、均一かつ平滑に成膜されることが好ましい。
【0021】
透明基板としては、光学部品を使用する波長の光、例えば、可視域、紫外域、または赤外域の光に対して透明な物質を用いれば、マイクロレンズアレイなどの透過型光学部品として機能を発揮することができる。
【0022】
本発明における誘電体多層膜の主要な目的は、光学部品表面からの反射防止である。要求される反射防止特性を実現するため、TiO2/SiO2、Ta2O5/SiO2、ZrO2/SiO2、TiO2/MgF2等の2層あるいはそれ以上の多層に積層した膜を用い、使用波長、戻り光反射減衰量等の要求仕様により各層の膜厚や材料を設計する。
【0023】
誘電体多層膜は膜質が緻密なほど耐久性が高いことから、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト法などの成膜方法を用いて、平滑かつ緻密に成膜することが好ましい。
【0024】
この誘電体膜はさらには透明部材層表面に形成した微細凹凸構造を保護する保護層、あるいは透明部材層と誘電体多層膜との密着性を強化する層としての役割を担わせることもできる。とくに後者の目的のためには、透明部材層と誘電体多層膜の間にSiO2層を設けるのが望ましいが、SiO2以外を選ぶこともできる。
【0025】
本発明の光学部品を構成する各要素の好ましい条件範囲を特定するために行った試験についてつぎに説明する。
【0026】
試料とした光学部品(レンズアレイ)の製造工程を図1に示す。成形型10としては、直径が0.25〜1mm、凹部深さが0.02〜0.13mmの球面弧形状の凹部を有する石英成形型(厚み1.1mm、寸法152.4mm×152.4mm)を用いた。離型性を向上させるために、成形型の表面にはスピンコート法によりフッ素樹脂を成膜した(図示は省略している)。成形材料としては、表1に示すように硬化後の線膨張係数が4〜9×10-5℃-1の範囲にあるアクリルまたはエポキシ系樹脂A〜Dを用いた。
【0027】
【表1】
【0028】
これらの流動性樹脂組成物30を成形型10に滴下し(図1(a))、次いで超音波洗浄済みの石英ガラス基板20(線膨張係数6×10-7℃-1、厚み0.7mm、寸法152.4mm×152.4mm)を押し当てて樹脂30を展開した(図1(b))。この状態で紫外線を石英ガラス基板20側から強度120mW/cm2、室温で2〜3分間の照射条件で樹脂30に照射した。
【0029】
樹脂が硬化した後、これをガラス基板とともに成形型から離型する(図1(c))。得られる透明部材(樹脂)層32の平坦部34の厚みdは、成型時の樹脂塗布量や加重×加圧時間で制御できる。試験用としてdを3〜100μmの範囲で変化させた試料を作製した。
【0030】
その後、成形された樹脂層32の表面にイオンアシスト法により誘電体多層膜40を成膜した(図1(d))。各樹脂材料と誘電体多層膜40の付着力強化層42としてSiO2を50nm成膜した後、誘電体多層膜40としてTiO2(74.8nm)/SiO2(64.8nm)/TiO2(189.7nm)/SiO2(266.5nm)の4層膜を成膜した。誘電体多層膜の材料と膜厚は波長1.55μmにおける反射を最小にするように設計された。
【0031】
付着力強化層の膜厚はとくに50nmに限定されない。1nm未満では一様な膜が得にくく、200nmより厚くしても付着力がさらに高まることはなく、また成膜に要する時間が長くなるので好ましくない。したがって、1〜200nmが好適な膜厚範囲である。
【0032】
誘電体多層膜を成膜した後、石英ガラス基板をワックスで固定して2cm×2cmにサンプルを切断した。ワックスは有機溶剤中で超音波洗浄を実施することにより除去した。
【0033】
このような工程で製造した光学部品(レンズアレイ)100の耐候性を調べるため、温度範囲−45〜85℃、100サイクルの熱衝撃試験を行い、樹脂の剥離状態を目視により確認した。この目視検査の方法はつぎの通りである。2cm×2cmの各試料表面を1mm×1mmのマス目に区切り、各マス目内に樹脂剥がれが発生しているか否かを判定する。数量的評価は樹脂剥がれの生じているマス目の数を計数することにより行った。評価結果を図2に示す。図2の縦軸は上記のように計数したマス目の数に相当する。
【0034】
評価結果から、石英ガラス基板からの樹脂層の剥離は、平坦部の厚みに依存することが明らかになった。図2に示すように、平坦部の膜厚が約40μmを越えると剥離する割合が急激に増加する。この結果、透明部材(樹脂)層の厚みは3〜40μmの範囲が好適であると言える。平坦部の厚みが3μm未満では樹脂層が薄過ぎてかえって剥離が生じやすい。樹脂層が40μmより厚い場合に剥離が生じやすくなるのは、樹脂の硬化時の収縮が層が厚い程大きいため、硬化後に発生する応力が大きくなるためである。
【0035】
なお、上記の好適な平坦部の厚みの範囲は、図2からも明らかなように樹脂の種類にはよらないという結果を得た。ただし使用した樹脂の線膨張係数は4〜9×10-5℃-1の範囲にあり、透明部材層の線膨張係数は3〜10×10-5℃-1の範囲にあることが望ましいと言える。
【0036】
基板の線膨張係数は絶対値が小さいことが望ましいが、上記の試験に用いた石英ガラス(線膨張係数:6×10-7℃-1)には限られない。石英ガラスより大きい10-6℃-1台の線膨張係数をもつ光学ガラスや、負の線膨張係数(−4×10-7℃-1程度)をもつ結晶化ガラスにおいても樹脂剥がれの傾向に大きな変化はない。すなわち線膨張係数の絶対値が1.5×10-5℃-1以下であれば使用できる。
【0037】
つぎに熱衝撃試験の前後での誘電体多層膜の劣化の有無を検証した。樹脂層と誘電体多層膜の間の剥がれは認められず、両者の付着力は十分である。さらに樹脂層平坦部の厚みが3〜40μmの範囲の試料について反射スペクトル測定を実施した。その結果、試験による光学スペクトルの変動はほとんど認められず、良好な結果が得られた。走査型電子顕微鏡で観察したところ、誘電体多層膜を形成している粒塊または柱状構造物の直径は10nm未満であった。上記の条件の樹脂層表面に形成した誘電体多層膜は十分な耐候性を有していると言える。
【0038】
以上まとめると、線膨張係数の絶対値が1.5×10-5℃-1以下の透明基板上に、線膨張係数が3〜10×10-5℃-1の範囲にある透明部材層を平坦な部分の厚さが3〜40μmの範囲になるように成形し、その表面を誘電体多層膜で被覆した光学部品は、構造上十分な信頼性を有し、かつ光学特性の経時変化も小さい。
【0039】
【発明の効果】
本発明が対象とする光学部品は、樹脂等の透明部材層の表面に微細な凹凸構造を具備し、その表面を誘電体多層膜で被覆した構造を有する。この光学部品の構成要素に対し、本発明の条件を適用することにより、優れた耐候性を備えた光学部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学部品の製造工程を示す図である。
【図2】透明部材層の平坦部の厚みと剥がれ発生割合の関係を示す図である。
【符号の説明】
10 成形型
20 ガラス基板
30 流動性組成物
32 透明部材層
34 透明部材層の平坦部
40 誘電体多層膜
42 付着力強化層
100 光学部品
【発明の属する技術分野】
本発明は主として光通信分野で使用される光学部品に関し、とくに表面に反射防止対策を施した樹脂製光学部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の情報通信容量の増大に伴い、マイクロレンズアレイなどの光学部品に対する需要が高まってきている。とくに光の回折現象や屈折現象を応用する光学素子は、その表面に微細な凹凸構造を形成する必要がある場合が多い。
このような微細凹凸構造の製法に関しては数多くの報告があるが、その中でも量産性に優れ低コストな製法として、樹脂の成形加工が有望視されている。光硬化性樹脂の成形により母型を作製した後、この母型を用いて光硬化性樹脂を成形し光照射により硬化する方法が、いわゆる2P成形法として知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、光通信分野における光学素子としては、表面での反射戻り光を極力減らすことが要求される。このため、一般には、光学素子表面に誘電体多層膜を反射防止手段として形成する。この点は上記のように樹脂を成形して光学素子を作製する場合においても例外ではない。
【0004】
いずれにしても透明基板上に樹脂等の透明部材層を形成し、その平坦な表面の一部に所定形状の微細な凹凸構造を成形法によって作製し、さらにその表面を誘電体多層膜によって被覆した構造を有する光学部品は種々使用されている。マイクロレンズアレイや回折格子などがその代表的な例である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−49702号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記従来の技術には、以下のような問題点があった。
透明部材層が樹脂の場合、硬化によって膜内部に大きな収縮応力が発生しやすく、この応力が原因となって、透明部材層と透明基板とが剥離する場合がある。また、樹脂層表面に形成した誘電体多層膜は、温度変動によって樹脂が伸縮すると、亀裂が生じたり、剥離したりする場合がある。
【0007】
以上のような問題点は、光学部品の製造後、ある程度の時間経過後に発生してくるので、光通信用としてこれらの光学部品を使用するには信頼性が不十分である。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的は、上記の構造を有する光学部品に対してその構成要素に対して望ましい条件を提供し、これによって長期的な信頼性を備えた光学部品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明が対象とする光学部品は、透明基板上に密着した透明部材層の平坦な表面の一部に所定の凹凸形状が設けられ、その透明部材層の表面が誘電体多層膜によって被覆されているような構造を有するものである。本発明においては、この光学部品を構成する透明基板の線膨張係数を1.5×10-5℃-1以下、同じく透明部材層の線膨張係数を3〜10×10-5℃-1の範囲とし、かつ、この透明部材層の平坦な部分の厚さを3〜40μmの範囲とする。
【0010】
上記の条件を満足する透明基板および透明部材層を組み合わせることにより、本発明が対象とする光学部品全体としての信頼性を向上させることができる。
ただし、透明部材層は、流動性樹脂組成物を重合硬化させた固体樹脂組成物であることが望ましい。このような材料を使用することで成形により用意に所望の凹凸形状が形成できる。
【0011】
誘電体多層膜は、SiO2、TiO2、Ta2O5、ZrO2、Nb2O5及びMgF2よりなる群から選ばれた材料からなる少なくとも2層膜で構成され、少なくとも使用波長において反射防止機能を有するものとする。この膜の作用により、本発明が対象とする光学部品を光通信分野に適用する場合に、反射光を十分低減できる。
【0012】
さらにこの誘電体多層膜中に存在する粒塊または柱状構造物の直径が10nm未満であることが望ましい。このような膜は十分緻密であるので、光学部品の信頼性向上に寄与できる。
【0013】
また、透明部材層と誘電体多層膜の間に厚さ1〜200nmのSiO2膜を介在させることが望ましい。これにより透明部材層に対する誘電体多層膜の付着力が改善され、光学部品の信頼性向上に寄与できる。
【0014】
透明基板はガラスであることが望ましい。ガラスを基板として使用することにより、透明性が確保できるとともに、上記の基板の線膨張係数の条件を満たすことができる。
上記の光学部品はマイクロレンズアレイの機能が付与されたものが代表的である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の発明者らは、上記の目的を達成するため、光学部品を構成する基板、微細凹凸構造を有する透明部材層および誘電体多層膜について、それぞれに要求される条件を検討した。以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
微細凹凸構造を成形する代表的な方法としては、下記2つの方法を挙げることができる。
第1の方法(以下、型注ぎ法と称する)では、成形型に透明で流動性を有する樹脂組成物を注ぎ脱気した後、基材を流動性樹脂組成物を挟むように成形型に押し当て、そのままの状態で加熱または光照射を行い樹脂組成物を硬化させる。硬化した固体樹脂組成物を基材とともに成形型から離型し、必要に応じて最終加熱を行うことにより、微細凹凸構造を有する光学部品を得る。
【0017】
第2の方法(以下、基材注ぎ法と称する)では、透明で流動性を有する樹脂組成物を基材に直接注ぎ脱気した後、成形型を基材上の流動性樹脂組成物に押し当て、そのままの状態で加熱または光照射を行い樹脂組成物を硬化させる。硬化した固体樹脂組成物を基材とともに成形型から離型し、必要に応じて最終加熱を行うことにより、微細凹凸構造を有する光学部品を得る。
【0018】
上記いずれの方法においても流動性樹脂組成物の粘度は3〜2500mPa・mの範囲に調整するのが好ましい。
【0019】
成形型はその表面に凹部または凸部が設けられている。凹凸部としては、例えば球状、円錐状、角錐状、断面任意形状のスリット状等を例示できる。例えば、表面が平坦なガラス基板の表面を精密にエッチングして、目的とする形状の凹型を形成する。これを種型として、紫外線硬化樹脂を用いたいわゆる2P成型法により樹脂製母型を作製し、これを成形型として用いることもできる。
【0020】
この成形型の最表面には、フッ素樹脂あるいは金からなる離型膜を設けることが好ましい。フッ素樹脂は、スピンコート法またはディップコート法により成形型に均一に成膜される。一方、金は、成形材料に対して良好な離型性を示し、機械的強度や耐熱性、耐腐食性、耐酸化性にも優れているため、離型膜として優れた材料である。離型膜は表面が平滑であるほど離型性が高いことから、スパッタ法や真空蒸着法、無電解メッキ法、箔張り付け法などにより、均一かつ平滑に成膜されることが好ましい。
【0021】
透明基板としては、光学部品を使用する波長の光、例えば、可視域、紫外域、または赤外域の光に対して透明な物質を用いれば、マイクロレンズアレイなどの透過型光学部品として機能を発揮することができる。
【0022】
本発明における誘電体多層膜の主要な目的は、光学部品表面からの反射防止である。要求される反射防止特性を実現するため、TiO2/SiO2、Ta2O5/SiO2、ZrO2/SiO2、TiO2/MgF2等の2層あるいはそれ以上の多層に積層した膜を用い、使用波長、戻り光反射減衰量等の要求仕様により各層の膜厚や材料を設計する。
【0023】
誘電体多層膜は膜質が緻密なほど耐久性が高いことから、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト法などの成膜方法を用いて、平滑かつ緻密に成膜することが好ましい。
【0024】
この誘電体膜はさらには透明部材層表面に形成した微細凹凸構造を保護する保護層、あるいは透明部材層と誘電体多層膜との密着性を強化する層としての役割を担わせることもできる。とくに後者の目的のためには、透明部材層と誘電体多層膜の間にSiO2層を設けるのが望ましいが、SiO2以外を選ぶこともできる。
【0025】
本発明の光学部品を構成する各要素の好ましい条件範囲を特定するために行った試験についてつぎに説明する。
【0026】
試料とした光学部品(レンズアレイ)の製造工程を図1に示す。成形型10としては、直径が0.25〜1mm、凹部深さが0.02〜0.13mmの球面弧形状の凹部を有する石英成形型(厚み1.1mm、寸法152.4mm×152.4mm)を用いた。離型性を向上させるために、成形型の表面にはスピンコート法によりフッ素樹脂を成膜した(図示は省略している)。成形材料としては、表1に示すように硬化後の線膨張係数が4〜9×10-5℃-1の範囲にあるアクリルまたはエポキシ系樹脂A〜Dを用いた。
【0027】
【表1】
【0028】
これらの流動性樹脂組成物30を成形型10に滴下し(図1(a))、次いで超音波洗浄済みの石英ガラス基板20(線膨張係数6×10-7℃-1、厚み0.7mm、寸法152.4mm×152.4mm)を押し当てて樹脂30を展開した(図1(b))。この状態で紫外線を石英ガラス基板20側から強度120mW/cm2、室温で2〜3分間の照射条件で樹脂30に照射した。
【0029】
樹脂が硬化した後、これをガラス基板とともに成形型から離型する(図1(c))。得られる透明部材(樹脂)層32の平坦部34の厚みdは、成型時の樹脂塗布量や加重×加圧時間で制御できる。試験用としてdを3〜100μmの範囲で変化させた試料を作製した。
【0030】
その後、成形された樹脂層32の表面にイオンアシスト法により誘電体多層膜40を成膜した(図1(d))。各樹脂材料と誘電体多層膜40の付着力強化層42としてSiO2を50nm成膜した後、誘電体多層膜40としてTiO2(74.8nm)/SiO2(64.8nm)/TiO2(189.7nm)/SiO2(266.5nm)の4層膜を成膜した。誘電体多層膜の材料と膜厚は波長1.55μmにおける反射を最小にするように設計された。
【0031】
付着力強化層の膜厚はとくに50nmに限定されない。1nm未満では一様な膜が得にくく、200nmより厚くしても付着力がさらに高まることはなく、また成膜に要する時間が長くなるので好ましくない。したがって、1〜200nmが好適な膜厚範囲である。
【0032】
誘電体多層膜を成膜した後、石英ガラス基板をワックスで固定して2cm×2cmにサンプルを切断した。ワックスは有機溶剤中で超音波洗浄を実施することにより除去した。
【0033】
このような工程で製造した光学部品(レンズアレイ)100の耐候性を調べるため、温度範囲−45〜85℃、100サイクルの熱衝撃試験を行い、樹脂の剥離状態を目視により確認した。この目視検査の方法はつぎの通りである。2cm×2cmの各試料表面を1mm×1mmのマス目に区切り、各マス目内に樹脂剥がれが発生しているか否かを判定する。数量的評価は樹脂剥がれの生じているマス目の数を計数することにより行った。評価結果を図2に示す。図2の縦軸は上記のように計数したマス目の数に相当する。
【0034】
評価結果から、石英ガラス基板からの樹脂層の剥離は、平坦部の厚みに依存することが明らかになった。図2に示すように、平坦部の膜厚が約40μmを越えると剥離する割合が急激に増加する。この結果、透明部材(樹脂)層の厚みは3〜40μmの範囲が好適であると言える。平坦部の厚みが3μm未満では樹脂層が薄過ぎてかえって剥離が生じやすい。樹脂層が40μmより厚い場合に剥離が生じやすくなるのは、樹脂の硬化時の収縮が層が厚い程大きいため、硬化後に発生する応力が大きくなるためである。
【0035】
なお、上記の好適な平坦部の厚みの範囲は、図2からも明らかなように樹脂の種類にはよらないという結果を得た。ただし使用した樹脂の線膨張係数は4〜9×10-5℃-1の範囲にあり、透明部材層の線膨張係数は3〜10×10-5℃-1の範囲にあることが望ましいと言える。
【0036】
基板の線膨張係数は絶対値が小さいことが望ましいが、上記の試験に用いた石英ガラス(線膨張係数:6×10-7℃-1)には限られない。石英ガラスより大きい10-6℃-1台の線膨張係数をもつ光学ガラスや、負の線膨張係数(−4×10-7℃-1程度)をもつ結晶化ガラスにおいても樹脂剥がれの傾向に大きな変化はない。すなわち線膨張係数の絶対値が1.5×10-5℃-1以下であれば使用できる。
【0037】
つぎに熱衝撃試験の前後での誘電体多層膜の劣化の有無を検証した。樹脂層と誘電体多層膜の間の剥がれは認められず、両者の付着力は十分である。さらに樹脂層平坦部の厚みが3〜40μmの範囲の試料について反射スペクトル測定を実施した。その結果、試験による光学スペクトルの変動はほとんど認められず、良好な結果が得られた。走査型電子顕微鏡で観察したところ、誘電体多層膜を形成している粒塊または柱状構造物の直径は10nm未満であった。上記の条件の樹脂層表面に形成した誘電体多層膜は十分な耐候性を有していると言える。
【0038】
以上まとめると、線膨張係数の絶対値が1.5×10-5℃-1以下の透明基板上に、線膨張係数が3〜10×10-5℃-1の範囲にある透明部材層を平坦な部分の厚さが3〜40μmの範囲になるように成形し、その表面を誘電体多層膜で被覆した光学部品は、構造上十分な信頼性を有し、かつ光学特性の経時変化も小さい。
【0039】
【発明の効果】
本発明が対象とする光学部品は、樹脂等の透明部材層の表面に微細な凹凸構造を具備し、その表面を誘電体多層膜で被覆した構造を有する。この光学部品の構成要素に対し、本発明の条件を適用することにより、優れた耐候性を備えた光学部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学部品の製造工程を示す図である。
【図2】透明部材層の平坦部の厚みと剥がれ発生割合の関係を示す図である。
【符号の説明】
10 成形型
20 ガラス基板
30 流動性組成物
32 透明部材層
34 透明部材層の平坦部
40 誘電体多層膜
42 付着力強化層
100 光学部品
Claims (7)
- 透明基板上に密着した透明部材層の平坦な表面の一部に所定の凹凸形状が設けられ、該透明部材層の表面が誘電体多層膜によって被覆されている光学部品において、前記透明基板の線膨張係数の絶対値が1.5×10-5℃-1以下、前記透明部材層の線膨張係数が3〜10×10-5℃-1の範囲にあり、かつ、前記透明部材層の平坦な部分の厚さが3〜40μmの範囲であることを特徴とする光学部品。
- 前記透明部材層は、流動性樹脂組成物を重合硬化させた固体樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
- 前記誘電体多層膜は、SiO2、TiO2、Ta2O5、ZrO2、Nb2O5及びMgF2よりなる群から選ばれた材料からなる少なくとも2層膜で構成され、少なくとも使用波長において反射防止機能を有することを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
- 前記誘電体多層膜中に存在する粒塊または柱状構造物の直径が10nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
- 前記透明部材層と前記誘電体多層膜の間に厚さ1〜200nmのSiO2膜を介在させたことを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
- 前記透明基板はガラスであることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
- マイクロレンズアレイの機能が付与されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品。
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Cited By (3)
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JP2006126544A (ja) * | 2004-10-29 | 2006-05-18 | Toppan Printing Co Ltd | 背面投影型ディスプレイ用光学部材及びその製造方法及び背面投影型ディスプレイ |
WO2014065070A1 (ja) * | 2012-10-24 | 2014-05-01 | コニカミノルタ株式会社 | 光学部材及び結合光学系 |
WO2020251060A1 (ja) * | 2019-06-14 | 2020-12-17 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 光学素子 |
-
2002
- 2002-12-25 JP JP2002373470A patent/JP2004205721A/ja not_active Withdrawn
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